説明

易接着性ポリエステルフィルム

【課題】優れた加熱白化防止性を有し、密着性に優れた易接着性ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】少なくとも片面に塗布層を有する二軸延伸ポリエステルフィルムであって、下記構成要件1〜4を満たす易接着性ポリエステルフィルム。1ヘイズ変化量△Hzが1.0未満、2環状三量体含有量が0.45質量%以下、3前記塗布層が脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とするウレタン樹脂と架橋剤を主成分とする、4前記塗布層の赤外分光スペクトルにおいて脂肪族系ポリカーボネート成分由来の1460cm−1付近のピークの吸光度(A1460)とウレタン成分由来の1530cm−1付近のピークの吸光度(A1530)との比率(A1460/A1530)が0.40〜1.55。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐湿熱性に優れた易接着性ポリエステルフィルムに関する。詳しくは、好適な熱による加熱白化を防止し、湿熱環境下の密着性に優れ、太陽電池などのフロントシート部材として好適な易接着性ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石化資源の枯渇、環境破壊の進行等の問題を解決する手段として太陽電池が急速に普及しつつある。一般に太陽電池は、結晶シリコンなどの太陽電池セルを使用し、表側表面保護材、封止膜、太陽電池用セル、封止膜、及び裏側表面保護材等を積層し、ラミネ−ション法等を利用して製造されている。
【0003】
表側表面保護材としては、ガラス基板を用いるのが一般的であったが、近年、耐衝撃性や軽量化の点で可とう性を有したポリエステルなど構成部材として積層したフロントシートが提案されている(特許文献1〜3)。フロントシートは、各種積層構成を有するが、例えば、入射光側から防汚層/硬化性樹脂層/ポリエステルフィルム/バリア層/接着剤層といった構成が例示されている。このように、フロントシートとしてはポリエステルフィルムを基材として各種機能層が積層されるが、ポリエステルフィルムはフィルム表面が高度に結晶配向しているため、各種機能層との密着性が乏しいという欠点がある。このため、従来からポリエステルフィルム表面に種々の方法で易接着性を付与する方法が提案されてきた。
【0004】
太陽電池は、種々の環境で用いられ、その構成部材となるフロントシートには屋外の高温多湿な環境下での長期間の使用にも耐えうる耐湿熱性が要求される場合がある。そのため、基材となるポリエステルフィルムについては高温高湿下でも層間剥離がおきないような高い密着性が求められる。下記特許文献4〜6では、塗布液にガラス転移温度の高い樹脂や架橋剤を添加し、インラインコート法による塗布層形成時に塗布層樹脂中に強硬な塗布層を形成させることで、耐湿熱性を付与した易接着性ポリエステルフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010―186932号公報
【特許文献2】特開2007―253463号公報
【特許文献3】特開2006−261287号公報
【特許文献4】特開2000−141574号公報
【特許文献5】特許第3900191号公報
【特許文献6】特開2007−253512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽電池では従来以上の長寿命化が期待されている。そのため、部材として用いられるポリエステルフィルムにおいても、高温高湿下でも長期間、密着性を保持することが必要であると考えられた。しかしながら、上記特許文献に開示されるような易接着性フィルムは、当初は良好な密着性を示すものの、高温高湿下の長期間の使用においては密着強度の低下は避けられないものであった。このような密着性の低下のため、初期性能が長期間維持しないという問題があった。
【0007】
加えて、太陽電池の光電変換効率を向上させるために、フロントシートには高い透明性が求められる。しかし、太陽電池を屋外で長期間高温に曝される環境下で使用すると、フロントシートの透明性が低下することが懸念された。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み、従来避けられないと考えられてきた高温高湿下における密着性の低下をほとんど引き起こさず、各種機能層に対しても良好な密着性を有し、高温でも透明性の低下が抑制される易接着性ポリエステルフィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、少なくとも片面に塗布層を有するポリエステルフィルムであって、脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とするウレタン樹脂と架橋剤を主成分とし、赤外分光スペクトルにおいて脂肪族系ポリカーボネート成分由来の1460cm−1付近の吸光度(A1460)とウレタン成分由来の1530cm−1付近の吸光度(A1530)との比率(A1460/A1530)が0.40〜1.55である塗布層を用いることにより、高温高湿下での密着性が向上することを見出し、さらにポリエステルフィルム中の環状オリゴマー量を特定範囲にすることにより長期間高温の高温環境下でも透明性が保持されることを見出し、本発明に至ったものである。
【0010】
すなわち、前記課題を解決することができる本発明は以下の構成を有する。
第1の発明は、少なくとも片面に塗布層を有する二軸延伸ポリエステルフィルムであって、下記構成要件(1)〜(4)を満たす易接着性ポリエステルフィルムである。
(1)170℃、20分間加熱したときのフィルムヘイズ変化量△Hz(△Hz=加熱後ヘイズ−加熱前ヘイズ)が1.0未満
(2)環状三量体含有量が0.45質量%以下
(3)前記塗布層が脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とするウレタン樹脂と架橋剤を主成分とする
(4)前記塗布層の赤外分光スペクトルにおいて脂肪族系ポリカーボネート成分由来の1460cm−1付近のピークの吸光度(A1460)とウレタン成分由来の1530cm−1付近のピークの吸光度(A1530)との比率(A1460/A1530)が0.40〜1.55である
第2の発明は、前記架橋剤がブロックイソシアネートである、前記易接着性ポリエステルフィルムである。
第3の発明は、前記ブロックイソシアネートの解離温度が130℃以下、かつ、ブロック剤の沸点が180℃以上である、前記易接着性ポリエステルフィルムである。
第4の発明は、前記ポリエステルフィルムのヒドロキシル(OH)末端量が70eq/ton以下である、前記易接着性ポリエステルフィルムである。
第5の発明は、前記塗布層中のウレタン樹脂と架橋剤の質量比(ウレタン樹脂/架橋剤)が1/9〜9/1である、前記易接着性ポリエステルフィルムである。
第6の発明は、ポリエステルフィルムのヘイズが2.0%以下である、前記易接着性ポリエステルフィルムである。
第7の発明は、下記要件(5)〜(7)を満たす加熱処理をしたポリエステル樹脂を用いて製造される前記易接着性ポリエステルフィルムである。
(5)ジカルボン酸成分とグリコール成分との重縮合反応によって得られた固有粘度が0.50〜0.70dl/gの粗製ポリエステルを、含水量が3.5〜30.0g/Nmである調湿不活性ガスを、粗製ポリエステル1kg当たり毎時1リットル以上、10,000リットル以下の流量で流通させる
(6)190℃〜260℃で加熱処理を行う
(7)ポリエステルの極限粘度の変化が下記式を満足するように加熱処理を行う
−0.05dl/g≦(加熱処理前の極限粘度)−(加熱処理後の極限粘度)≦0.05dl/g
第8の発明は、前記易接着性ポリエステルフィルムを構成部材とする太陽電池用フロントシートである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の易接着ポリエステルフィルムは、高温下での長期使用によっても透明性が低下せず、かつ多様な機能層との高温高湿下での密着性(耐湿熱性)に優れる。そのため、好ましい実施態様としては、太陽電池用フロントシートの構成部材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ポリエステルフィルム)
本発明のポリエステルフィルムは、機械的強度、耐薬品性、耐熱性などの点から、二軸延伸ポリエステルフィルムであることが望ましい。
【0013】
ポリエステルフィルムの延伸方法は特に限定されず、逐次二軸延伸方法、または同時二軸延伸方法が適宜使用される。
【0014】
ポリエステルフィルムは単層であっても、それぞれ同種あるいは異種のポリエステル樹脂からなる2層以上の複層構成であってもよい。
【0015】
また、フィルムの滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性や、耐摩耗性、耐スクラッチ性などの摩耗特性を改善するために、ポリエステルフィルム中に不活性粒子を含有させる場合がある。しかしながら、本発明のフィルムはフロントシート用部材の基材フィルムとして用いる場合は、高度な透明性を維持しながらハンドリング性に優れていることが要求される。この場合、具体的には、本発明の易接着性ポリエステルフィルムは、ヘイズ値が2.0%以下であることが好ましく、より好ましくは1.8%以下であり、さらに好ましくは1.5%以下である。また、易接着性ポリエステルフィルムの全光線透過率が85%以上であることが好ましく、87%以上がより好ましく、88%以上がさらに好ましく、89%以上がよりさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。
【0016】
また、高い鮮明度のためには、基材フィルム中への不活性粒子の含有量はできるだけ少ない方が好ましい。したがって、フィルムの表層のみに粒子を含有させた多層構成にするか、あるいは、フィルム中に実質的に粒子を含有させず、塗布層にのみ微粒子を含有させることが好ましい実施態様である。
【0017】
特に、透明性の点から、ポリエステルフィルム中に不活性粒子を事実上含有させない場合は、フィルムのハンドリング性を向上させるために、無機及び/または耐熱性高分子粒子を水系塗布液中に含有させ、塗布層表面に凹凸を形成させることも好ましい。
【0018】
なお、「不活性粒子が実質上含有されていない」とは、例えば、無機粒子の場合、蛍光X線分析で粒子に由来する元素を定量分析した際に、50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に粒子を基材フィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0019】
本発明のポリエステルフィルムを170℃、20分間加熱したときのフィルムヘイズ変化量△Hz(△Hz=加熱後ヘイズ−加熱前ヘイズ)は0.5未満である必要がある。△Hzが0.5以上である場合には、太陽電池用フロントシートのように高温下で長期間の使用により環状オリゴマーが析出し、透明性が低下する場合がある。逆に、△Hzが0.5未満である場合は、高温下で長期間の使用によっても加熱白化が抑制され、高い光電変換効率に適した良好な透明性の維持に好適である。発明における好ましい△Hzの上限は0.3であり、より好ましくは0.1である。△Hzは小さいことが好ましく、△Hzの下限は0である。
【0020】
また、ポリエステルフィルムのヒドロキシル(OH)末端量は70eq/ton以下であることも好ましい。ヒドロキシル(OH)末端量を上記範囲に低減すると、環状三量体の生成をより好適に低減することができる。そのため、フィルム製膜時の溶融工程における環状三量体の再生を抑制することができ、フィルム原料の低オリゴマー量を好適に保持しやすい。上記ヒドロキシル(OH)末端量は68eq/ton以下がより好ましく、65eq/ton以下がよりさらに好ましい。上記ヒドロキシル(OH)末端量は少ないことが好ましいが、少なすぎる場合はポリエステル樹脂の加水分解が生じやすくなる場合がある。よって、フィルムの耐久性の点からは、上記ヒドロキシル(OH)末端量の下限は40eq/ton以上が好ましく、50eq/ton以上がより好ましいポリエステルフィルムのヒドキシル(OH)末端量を制御する方法は特に問わないが、例えば、フィルム原料を水雰囲気下で熱処理を施すことにより好適にヒドキシル(OH)末端量を制御することができる。
【0021】
本発明のポリエステルフィルムの環状三量体含有量は0.45質量%以下である必要がある。環状三量体含有量が0.45質量%以上である場合には、太陽電池用フロントシートのように高温下で長期間の使用によりオリゴマーが析出し透明性が低下しやすくなる。ポリエステルフィルムの環状三量体量を上記範囲にするためには、ポリエステル原料に熱処理などを施すことが好ましいが、ヒドロキシル(OH)末端量を低減させることにより、フィルム中の環状三量体量を上記範囲により好適に低減することができる。本発明における好ましい環状三量体含有量の上限は0.40質量%である。環状三量体量は少ないことが好ましいが、生産性の点を考えると、上記環状三量体量の下限は0.05質量%が好ましく、0.10質量%がより好ましく、0.20質量%よりさらに好ましい。
【0022】
本発明のポリエステルフィルムの固有粘度は、0.40dl/gから0.75dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.40dl/gよりも低いと、フィルムが裂けやすくなり、0.75dl/gより大きいと濾圧上昇が大きくなって高精度濾過が困難となる。PETの固有粘度の上限は0.70dl/gがより好ましく、0.65dl/gがさらに好ましく、0.63dl/gがよりさらに好ましい。さらに、上記下限は0.50dl/gが好ましく、0.55dl/gがより好ましい。
【0023】
(ポリエステル樹脂)
本発明のフィルムは、ジカルボン酸成分とグリコール成分との重縮合反応により得られるポリエステル樹脂からなる。ジカルボン酸成分としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、グリコール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。本発明では強度や透明性などの点からポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートが好適であり、中でもポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0024】
ポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETという)の重合法としては、テレフタル酸とエチレングリコール、および必要に応じて他のジカルボン酸成分およびジオール成分を直接反応させる直接重合法、およびテレフタル酸のジメチルエステル(必要に応じて他のジカルボン酸のメチルエステルを含む)とエチレングリコール(必要に応じて他のジオール成分を含む)とをエステル交換反応させるエステル交換法等の任意の製造方法が利用され得る。
【0025】
また、前記ポリエステルの固有粘度は、0.45dl/gから0.75dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.45dl/gよりも低いと、フィルムが裂けやすくなり、0.75dl/gより大きいと濾圧上昇が大きくなって高精度濾過が困難となる。PETの固有粘度の上限は0.70dl/gがより好ましく、0.68dl/gがさらに好ましく、0.65dl/gがよりさらに好ましい。さらに、上記下限は0.48dl/gが好ましく、0.50dl/gがより好ましい。
【0026】
粗製ポリエステル調製時の触媒として、従来公知のMn、Mg、Ca、Ti、Ge、Al、Sb、Co化合物、リン化合物、アンチモン化合物などが使用される。ポリエステル溶融時に環状オリゴマーの再生を抑制する方法として触媒を失活させる方法が提案されているが、本発明では係る工程を経ることなく好適に環状オリゴマーの再生を抑制することができる。なお、ここで「粗製ポリエステル」とは後述の熱処理前のポリエステルを区分して表現するものである。
【0027】
上記ジカルボン酸成分とグリコール成分とを含む組成物には、安定剤、顔料、染料、核剤、充填剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤などの添加剤が含有され得る。
【0028】
次に、得られた粗製ポリエステルをシートカット法、ストランドカット法などにより、適宜、チップ状(例えば、円柱状)、粒子状などに成形する。例えば、チップの成形は、粗製ポリエステルの溶融体をギヤーポンプでダイスから押出しストランドを形成し、このストランドをカッターで切断して、長軸×短軸×長さが約2.2×3.1×3.4mmの楕円柱状のチップを成形する。係るチップ形状に成型することにより、後述の熱処理により好適にフィルム原料のオリゴマー量の低減を図りつつ、チップ内部まで調湿効果を好適に及ぼすことができる。
【0029】
ポリエステル中の環状三量体含有量を低減する方法としては固相重合法などを挙げることができる。さらに、ポリエステル中の環状三量体含有量を低減しつつ、ポリエステルのヒドロキシル(OH)末端量を低減させる方法としては、ポリエステルの分子量を大きくして単位当たりの末端量を低減させる方法や、原料チップを水飽和させる方法などが挙げられる。なかでも、本発明ではフィルム原料となる粗製ポリエステルを水雰囲気下で熱処理を施すことにより、環状オリゴマー含有量を好適に低減させるとともに、ヒドロキシル(OH)末端量を好適に低減させることができるので好ましい。係る熱処理は、水含有の湿調不活性ガスの流量下で190〜260℃での高温の熱処理を施すことを特徴とする。熱処理を不活性ガスの流量下で行うことにより、PET固有粘度を必要以上に上昇させることなく、好適に環状オリゴマーの低減を図ることができる。また、従来、バッチ法で行なわれる固相重合法と異なり、流量下で連続的に処理ができる点で生産性にも優れる。
【0030】
さらに、係る熱処理を所定の水雰囲気下で行うことにより、ポリエステル樹脂中のヒドロキシル(OH)末端量を好適に低減させることができる。水雰囲気下でヒドロキシル(OH)末端量が低減する理由については、以下のように考えている。すなわち、加熱処理によりヒドロキシル(OH)末端同士が脱エチレングリコール反応により結合し、ヒドロキシル(OH)末端が消費される。一方、水雰囲気下によりエステル反応の逆反応が生じ、ポリエステル分子量が低減し、新たな分子鎖末端が生じる。これらの反応が混合して生じるため、結果としてヒドロキシル(OH)末端が低減することになると考えられる。
【0031】
以下に、本発明における粗製ポリエステルの熱処理条件について詳細に述べる。
熱処理においては不活性ガス中の含水量は好ましくは3.5〜30.0g/Nmであり、より好ましくは4.0〜20.0g/Nmである。調湿不活性ガス中の含水量が3.5g/Nm未満の場合には、得られるポリエステルの固有粘度の上昇が著しい。調湿不活性ガス中の含水量が過剰である場合には、加水分解反応が起こり、得られるポリエステルの固有粘度が低下するおそれがある。
【0032】
不活性ガスとしては、ポリエステルに対して不活性なガスが用いられ、例えば、窒素ガス、炭酸ガス、ヘリウムガスなどが挙げられる。特に、窒素ガスが安価であるため好ましい。
【0033】
加熱処理装置としては、上記粗製ポリエステルと不活性ガスとを均一に接触し得る装置が望ましい。このような加熱処理装置としては、例えば、静置型乾燥機、回転型乾燥機、流動床型乾燥機、攪拌翼を有する乾燥機などが挙げられる。
【0034】
また、熱処理を実施する前にポリエステルの水分は適度に除去しておくことと、熱処理時におけるポリマー同士の融着を防止するためにもポリマーを一部結晶化させておくのがより好ましい。
【0035】
熱処理において、加熱処理温度は好ましくは190℃〜260℃であり、より好ましくは200℃〜250℃である。加熱処理温度が190℃未満の場合には、粗製ポリエステル中の環状オリゴマーの減少速度が小さくなる場合がある。加熱処理温度がポリエステルの融点を越える温度の場合には、ポリエステルが融解してしまい、接着が起こりやすい。そのため、得られるポリエステルを加熱処理装置から取り出すことが困難となり、また、成形操作も困難となる場合がある。
【0036】
加熱処理時間は、通常、1〜70時間が好ましく、さらに好ましくは2〜60時間、さらに好ましくは、4〜50時間である。1時間未満の場合には、粗製ポリエステル中の環状オリゴマーが充分に減少せず、70時間を越える場合には、粗製ポリエステル中の環状オリゴマーの減少速度が小さく、逆に熱劣化などの問題が生じるおそれがあり、色調が損なわれる。
【0037】
不活性気体の流量は、ポリエステルの固有粘度と密接な関係がある。また、調湿不活性気体中に含まれる含水量もポリエステルの固有粘度の変化に影響する。そのため、不活性気体の流量は、含水量および所望のポリエステルの固有粘度、加熱処理温度などに応じて適宜選択されるべきである。
【0038】
例えば、調湿不活性気体の含水量が高い場合、水による加水分解などの悪影響を回避するために、流量は多くすることが好ましい。また、加熱処理温度を高温とする場合、ポリエステルの固有粘度の上昇を抑制するために、不活性気体の流量は少なくすることが好ましい。
【0039】
不活性気体の流量は、好ましくはポリエステル1kg当たり毎時1リットル以上、より好ましくは5リットル以上である。不活性気体の流量がポリエステル1kg当たり毎時1リットルより少ない場合には、酸素の混入などにより、得られる樹脂が黄色味を帯びるなどの悪影響が生じるおそれがある。不活性気体の流量の上限は、不活性気体中に含まれる含水量および加熱処理温度によって決定されるが、ポリエステル1kg当たり毎時10,000リットル以下、好ましくは5,000リットル以下、さらに好ましくは2,000リットル以下である。不活性気体の流量を、10,000リットル以上としても、本発明の目的から逸脱するようなことはないが、経済的な面を考慮すれば、むやみに流量を多くする必要はない。
【0040】
熱処理は、常圧から微加圧状態下で不活性ガスを流通させながら、加熱処理することにより実施される。
【0041】
この場合、加圧は、加熱処理中に大気中の水分や酸素が反応機に混入するのを抑制することが目的であるから、加圧条件は5.0kg/cm以下で充分である。加圧条件が5.0kg/cmを越える場合でも、本発明の目的を逸脱することはないが、設備にコストがかかるため、必要以上に圧力を高くすることは意味がない。
【0042】
さらに、色調の面から流通させる不活性ガス中の酸素濃度は、50ppm以下、好ましくは25ppm以下が必要である。酸素濃度が50ppm以上では、本発明のポリエステルの劣化による色調悪化、具体的には黄変が激しく製品品質上問題となる。
【0043】
このようにして得られたポリエステルは、好適には次式を満たす。
−0.05dl/g≦加熱処理前の極限粘度−加熱処理後の極限粘度≦0.05dl/g
【0044】
これらの処理によって、加熱処理後のポリエステル組成物の固有粘度(B)は0.50dl/g以上、0.70dl/g以下が好ましく、さらに加熱処理前のポリエステル組成物(粗製ポリエステル)の固有粘度(A)との間に、−0.05dl/g≦{(A)−(B)}≦0.05dl/gを満足することが好ましく、さらに、−0.02dl/g≦{(A)−(B)}≦0.02dl/gを満足することが好ましい。加熱処理後の固有粘度(B)を0.50dl/g以上とすることで製膜時の膜破れなどの発生が軽減され有利である。また、0.70dl/g以下とすることで、溶融成形時の剪断発熱で温度が上昇するのを軽減でき、製品中の環状オリゴマー量を抑えるのに有利である。
【0045】
また、−0.05dl/g≦{(A)−(B)}≦0.05dl/gを満足することで、フィルム成形時の不必要な温度上昇が無く、ポリエステルの環状オリゴマー量が少なく透明性・色調の良好なフィルムが得られる他、加熱処理前のポリエステル組成物(粗製ポリエステル)に関して、特別に低粘度又は高粘度の銘柄を新たに設ける必要が無く、他の製品として利用可能な既存のポリマーを用いて環状オリゴマー量を低くすることが可能となり、経済的に有利である。
【0046】
また、加熱処理後のポリエステル組成物の環状三量体の含有量は0.4質量%以下とする必要がある。さらに好ましくは0.35質量%である。0.4質量%を超える場合は、長期高温環境下での使用により透明性が低下する場合がある。
【0047】
さらに、加熱処理後のポリエステル組成物のヒドロキシル(OH)末端量は65eq/ton以下である必要がある。ヒドロキシル(OH)末端量が低いほど、ポリエステル原料のフィルム化工程における溶融押出し時のオリゴマー再生成を抑制できる。60eq/ton以下がさらに好ましい。
【0048】
上記熱処理を施したポリエステルは、湿熱処理により粗製ポリエステル内部の易動度が増大し、粗製ポリエステル中に含有される環状三量体がそのまま飛散または容易に開環重合され得る。従って、環状三量体の含有量が減少する。さらに、本発明のポリエステルは、湿熱処理により固有粘度変化が少ない。これは、不活性ガスに含有される水による加水分解と、不活性ガスを流通させることによる粘度上昇とを相殺させているためである。
【0049】
(塗布層)
本発明の易接着性ポリエステルフィルムには、脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とするウレタン樹脂と架橋剤を主成分とした塗布層が形成され、赤外分光法による測定で、前記塗布層の脂肪族系ポリカーボネート成分由来の1460cm−1付近の吸光度(A1460)とウレタン成分由来の1530cm−1付近の吸光度(A1530)の比率(A1460/A1530)が0.40〜1.55であることが重要である。ここで、「主成分」とは、塗布層に含まれる全固形成分中として50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有することを意味する。
【0050】
従来の技術常識では塗布層の耐湿熱性を向上させる点からは塗布層形成においてガラス転移温度の高い樹脂や架橋構造を積極的に導入し、強硬な塗布層にすることが望ましいと考えられていた。しかし、本発明ではポリウレタン樹脂と架橋剤を組み合わせ、赤外分光法による吸光度を一定の範囲に制御することで、高温高湿熱下での密着性を向上させるという顕著な効果を見出し、本発明に至った。このような構成により、高温高湿下での密着性を向上させることの機序はよくわからないが、本発明者は次のように考えている。
【0051】
基材フィルムに表面保護機能を有する硬化性樹脂からなる機能層を積層した場合、硬化型樹脂の硬化時の収縮や高温高湿処理時の膨潤により、機能層と塗布層との間に強い応力が生じる。係る積層フィルムを高温高湿下においた場合、硬化型樹脂に含まれる溶媒による溶解または膨潤や加水分解により、塗布層の劣化が進行する。その結果、上記応力に耐え切れず、機能層が剥離し、密着性が低下すると考えられた。そのため、高温高湿下での密着性を高度に保持するためには、単に塗布層を強固に架橋したり、耐加水分解性を付与するだけでなく、上記応力に耐えうる柔軟性を備えることが望ましいと考えられる。しかし、単に柔軟性を有するだけでは、耐溶剤性や強度の点で問題がある。そのためこれら相反する特性を両立させることが最も望ましい。
【0052】
本発明では、脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とするウレタン樹脂と架橋剤を主成分とする塗布層であって、赤外分光法による測定される脂肪族系ポリカーボネート成分由来の1460cm−1付近の吸光度(A1460)とウレタン成分由来の1530cm−1付近の吸光度(A1530)の比率(A1460/A1530)が0.40〜1.55とすることで、上記特性を両立させるものである。すなわち、架橋剤により耐溶剤性を付与しつつ、耐加水分解性かつ柔軟性を有する脂肪族系ポリカーボネート成分と、強硬性を奏するウレタン成分とを所定の割合で共存させることで、上記特性の両立を図るものである。これにより、硬化型樹脂の硬化時の収縮や高温高湿処理時の膨潤による応力を緩和することができるため、様々な硬化型樹脂等で良好な密着性を得ることができ、その後の高温高湿の環境下でも、塗布層に残留した溶剤や希釈モノマーによる溶解、膨潤や加水分解などの塗布層の劣化を防止できると考えている
【0053】
ここで、1460cm−1付近の吸光度(A1460)は、脂肪族系ポリカーボネート成分に含まれるメチレン基のC−H結合に特有の変角振動に由来する。よって、1460cm−1付近の吸光度(A1460)の大きさは塗布層に存在するウレタン樹脂を構成する脂肪族系ポリカーボネートポリオール成分量に依存する。一方、1530cm−1付近の吸光度(A1530)は、ウレタン成分に含まれるN−H結合に特有の変角振動に由来する。よって、1530cm−1付近の吸光度(A1530)の大きさは塗布層に存在するウレタン樹脂を構成するウレタン成分量(ウレタン結合数)に依存する。また、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を用いる場合、1530cm−1付近の吸光度(A1530)の大きさは塗布層に存在するウレタン樹脂と架橋剤量の総和としてのウレタン成分量(ウレタン結合数)に依存する。そのため、これらの吸光度比率(A1460/A1530)は、それぞれ異なる特性を有する両成分を特定の割合で共存していることを示すものである。本発明では、前記比率(A1460/A1530)が0.40〜1.55であるが、前記比率(A1460/A1530)の下限は好ましくは0.45であり、より好ましくは0.50である。また、前記比率(A1460/A1530)の上限は好ましくは1.50であり、より好ましくは1.40であり、さらに好ましくは1.30であり、よりさらに好ましくは1.20である。前記比率(A1460/A1530)が、0.40未満の場合は、強硬なウレタン成分が多くなりすぎ、塗布層の応力緩和が低下するため耐湿熱性が低下する。また、前記比率(A1460/A1530)が、1.55を越える場合は、柔軟な脂肪族系ポリカーボネートの脂肪族成分が多くなりすぎ、塗布層の耐溶剤性が低下するため耐湿熱性が低下する。
【0054】
本発明は、上記態様により、ハードコート層、防汚層、さらに他の機能層との高温高湿下での密着性(耐湿熱性)を向上させることができる。さらに、本発明の構成を以下に詳細する。
【0055】
(ウレタン樹脂)
本発明のウレタン樹脂は、構成成分として、少なくともポリオール成分、ポリイソシアネート成分を含み、さらに必要に応じて鎖延長剤を含む。本発明のウレタン樹脂は、これら構成成分が主としてウレタン結合により共重合された高分子化合物である。本発明では、ウレタン樹脂の構成成分として脂肪族系ポリカーボネートポリオールを有することを特徴とする。本発明の塗布層に脂肪族系ポリカーボネートを構成成分とするウレタン樹脂を含有させることで、耐湿熱性を向上させることができる。なお、これらウレタン樹脂の構成成分は、核磁気共鳴分析などにより特定することが可能である。
【0056】
本発明のウレタン樹脂の構成成分であるジオール成分には、耐熱、耐加水分解性に優れる脂肪族系ポリカーボネートポリオールを含有させる必要がある。本発明の用途においては、黄変防止の点からも脂肪族系ポリカーボネートポリオールを用いることが好ましい。
【0057】
脂肪族系ポリカーボネートポリオールとしては、脂肪族系ポリカーボネートジオール、脂肪族系ポリカーボネートトリオールなどが挙げられるが、好適には脂肪族系ポリカーボネートジオールを用いることができる。本発明のウレタン樹脂の構成成分である脂肪族系ポリカーボネートジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチルー1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール類の1種または2種以上と、例えば、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲンなどのカーボネート類とを反応させることにより得られる脂肪族系ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。脂肪族系ポリカーボネートジオールの数平均分子量としては、好ましくは1500〜4000であり、より好ましくは2000〜3000である。脂肪族系ポリカーボネートジオールの数平均分子量が小さい場合は、相対的にウレタン樹脂を構成する脂肪族系ポリカーボネート成分の比率が小さくなる。そのため、前記比率(A1460/A1530)を前述の範囲にするためには、脂肪族系ポリカーボネートジオールの数平均分子量を上記範囲で制御することが好ましい。脂肪族系ポリカーボネートジオールの数平均分子量が大きいと、脂肪族系ポリカーボネート成分由来の1460cm−1付近の吸光度(A1460)が増加し、脂肪族成分が増加してしまうため、耐溶剤性が低下し、密着性が低下する場合がある。脂肪族系ポリカーボネートジオールの数平均分子量が小さいと強硬なウレタン成分が増加し、光硬化型樹脂等の収縮、膨潤による応力を緩和できなくなり、密着性が低下する場合がある。
【0058】
本発明のウレタン樹脂の構成成分であるポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいはこれらの化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。芳香族イソシアネートを使用した場合、黄変の問題があり、高い透明性が要求されるフロントシート用としては、好ましくない場合がある。また、脂肪族系と比較して、強硬な塗膜になるため、光硬化型樹脂等の収縮、膨潤による応力を緩和できなくなり、密着性が低下する場合がある。
【0059】
前記比率(A1460/A1530)は、鎖延長剤によっても調整することができる。本発明の用いることができる。鎖延長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、およびピペラジン等のジアミン類、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミン等のアミノアルコール類、チオジエチレングルコール等のチオジグリコール類、あるいは水が挙げられる。ただし、主鎖の短い鎖延長剤を用いると、ウレタン成分由来の1530cm−1付近の吸光度(A1530)が増し、塗布層の柔軟性が低下する場合がある。よって、鎖延長剤としては主鎖の長いものが好ましい。また、塗布層の柔軟性を付与する点では、脂肪族系で主鎖の炭素数が4〜10の長さのジオールやジアミンの鎖延長剤が好ましい。これらの点から、本発明に用いる鎖延長剤としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサメチレンジアミンなどが好適である。
【0060】
本発明の塗布層は、水系の塗布液を用い後述のインラインコート法により設けることが好ましい。そのため、本発明のウレタン樹脂は水溶性であることが望ましい。なお、前記の「水溶性」とは、水、または水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液に対して溶解することを意味する。
【0061】
ウレタン樹脂に水溶性を付与させるためには、ウレタン分子骨格中にスルホン酸(塩)基又はカルボン酸(塩)基を導入(共重合)することができる。スルホン酸(塩)基は強酸性であり、その吸湿性能により耐湿性を維持するのが困難な場合があるので、弱酸性であるカルボン酸(塩)基を導入するのが好適である。また、ポリオキシアルキレン基などのノニオン性基を導入することもできる。
【0062】
ウレタン樹脂にカルボン酸(塩)基を導入するためには、例えば、ポリオール成分として、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などのカルボン酸基を有するポリオール化合物を共重合成分として導入し、塩形成剤により中和する。塩形成剤の具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミンなどのトリアルキルアミン類、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなどのN−アルキルモルホリン類、N−ジメチルエタノールアミン、N−ジエチルエタノールアミンなどのN−ジアルキルアルカノールアミン類が挙げられる。これらは単独で使用できるし、2種以上併用することもできる。
【0063】
水溶性を付与するために、カルボン酸(塩)基を有するポリオール化合物を共重合成分として用いる場合は、ウレタン樹脂中のカルボン酸(塩)基を有するポリオール化合物の組成モル比は、ウレタン樹脂の全ポリイソシアネート成分を100モル%としたときに、3〜60モル%であることが好ましく、5〜40モル%であることが好ましい。前記組成モル比が3モル%未満の場合は、水分散性が困難になる場合がある。また、前記組成モル比が60モル%を超える場合は、耐水性が低下するため耐湿熱性が低下する場合がある。
【0064】
本発明のウレタン樹脂のガラス転移点温度は0℃未満が好ましく、より好ましくは−5℃未満である。ガラス転移点温度が0℃未満の場合は塗布層の応力緩和の点から好適な柔軟性を奏しやすく好ましい。
【0065】
前記ウレタン樹脂は塗布層の固形成分中に、10質量%以上90質量%以下含有することが好ましい。特に、レンズ層のように高い密着性が求められる場合、より好ましくは20質量%以上80質量%以下である。ウレタン樹脂の含有量が多い場合には、高温高湿下での密着性が低下し、逆に、含有量が少ない場合には、初期での密着性が低下する。
【0066】
本発明のウレタン樹脂には耐溶剤性を向上させるために、架橋剤の添加に加えてウレタン樹脂自体に自己架橋基を導入しても良い。これにより、樹脂の架橋度が増し、耐溶剤性が向上する。本発明に用いる自己架橋基としては特に限定されないが、水系塗布液中でも比較的安定性なシラノール基を好適に用いることができる。
【0067】
本発明のウレタン樹脂は、接着性を向上させるために2種類以上含有させても良い。
【0068】
本発明のウレタン樹脂以外の樹脂でも、密着性を向上させるために含有させても良い。例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0069】
(架橋剤)
本発明において、塗布層中に架橋剤を含有させる必要がある。架橋剤を含有させることにより、高温高湿下での密着性を更に向上させることが可能になる。架橋剤としては、カルボン酸基、水酸基、アミノ基などと反応して、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合を形成するものが高温高湿処理で劣化しにくいため好ましい。逆に、エステル結合、エーテル結合を伴う場合は加水分解性を有する場合があり好ましくない。本発明で好適に用いられる架橋剤としては、メラミン系、イソシアネート系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等が挙げられる。これらの中で、塗液の経時安定性、高温高湿処理下の密着性向上効果からイソシアネート系、カルボジイミド系、が好ましい。さらに、塗布層に適度な柔軟性を奏し、塗布層の応力緩和作用を好適に付与する点で、イソシアネート系架橋剤を用いることが特に好ましい。また、架橋反応を促進させるため、触媒等を必要に応じて適宜使用される。
【0070】
塗布層中のウレタン樹脂と架橋剤の質量比(ウレタン樹脂/架橋剤)は1/9〜9/1が好ましく、1/9〜8/2がより好ましく、2/8〜6/4がよりさらに好ましい。また、塗布層の固形成分中の架橋剤の含有量としては、10質量%以上90質量%以下が好ましい。より好ましくは、20質量%以上80質量%以下である。少ない場合には、塗布層の耐溶剤性が低下し、高温高湿下での密着性が低下し、多い場合には、塗布層の樹脂の柔軟性が低下し、常温、高温高湿下での密着性が低下する。架橋剤は2種類以上を組み合わせても良い。
【0071】
また、本発明で用いられる架橋剤としてはブロックイソシアネートも好適に用いることができる。イソシアネート架橋剤は、反応性が高いため水系の塗布液中で水と反応して架橋反応性を喪失したり、ウレタン樹脂と反応し、凝集物が生じやすい傾向がある。そのため、いわゆるポットライフが短い場合がある。そこで、安定した塗工性を維持する点から、熱付加により解離するブロック剤で官能基をブロックしたイソシアネートが好ましい。
【0072】
ブロックイソシアネートとしては、解離温度が130℃以下、かつ、ブロック剤の沸点が180℃以上であるブロックイソシアネートを採用することも好ましい。解離温度が上記温度を超える場合は、熱付加によるブロック剤の解離が不十分となり十分な架橋構造が得られず密着性、特に耐湿熱性が低下するものと考えられる。また、ブロック剤の沸点が上記温度を下回る場合は、塗布層に残存じたブロック剤が熱付加により揮発し、透明性が低下する場合がある。なお、解離温度、沸点は示差熱分析により測定することができる。
【0073】
ブロックイソシアネートの解離温度は130℃以下が好ましく、125℃以下がより好ましく、120℃以下がよりさらに好ましい。ブロック剤は塗布液の塗布後の乾燥工程やインラインコート法の場合はフィルム製膜工程における熱付加により官能基と解離し、再生イソシアネート基が生成される。そのため、ウレタン樹脂などとの架橋反応が進行し、常温、高温高湿下での接着性が向上する。ブロックイソシアネートの解離温度が上記温度以下である場合は、ブロック剤の解離が十分進行するため、接着性、特に耐湿熱性が良好となる。解離温度の上限は、塗布液の安定化のため室温以上であれば特に限定しないが、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。
【0074】
ブロック剤は活性水素を分子内に1個有する化合物が好適に用いられる。この場合、解離温度を上記のように比較的低くするためには、高い電子密度が得られるブロック剤を採用することが好ましい。例えば、分子内に複素環やそれに類似した構造を有するブロック剤などが好適に用いられる。
【0075】
ブロック剤の沸点は180℃以上が好ましく、190℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましく、210℃以上がよりさらに好ましい。ブロック剤の沸点が高い程、塗布液の塗布後の乾燥工程やインラインコート法の場合はフィルム製膜工程における熱付加によってもブロック剤の揮発が抑制され、微小な塗布面凹凸による塗布面外観欠点が良好になり、塗布外観や透明性が向上する。ブロック剤の沸点の上限は特に限定しないが、生産性の点から300℃程度が上限であると思われる。沸点は分子量と関係するため、ブロック剤の沸点を高くするためには、分子量の大きなブロック剤を用いることが好ましく、ブロック剤の分子量は50以上が好ましく、60以上がより好ましく、80以上がさらに好ましい。
【0076】
本発明のブロックイソシアネートに用いる解離温度が130℃以下、かつ、ブロック剤の沸点が180℃以上であるブロック剤としては、
重亜硫酸塩系化合物:重亜硫酸ソーダなど、
ピラゾール系化合物:3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ブロモー3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロー3,5−ジメチルピラゾールなど、
活性メチレン系:マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジ2−エチルヘキシル)等。
トリアゾール系化合物:1,2,4−トリアゾールなど
が挙げられる。なかでも、耐湿熱性、黄変の点から、ピラゾール系化合物が好ましい。
【0077】
本発明のブロックイソシアネートの前駆体であるポリイソシアネートは、ジイソシアネートを導入して得られる。例えば、ジイソシアネートのウレタント変性体、アロファネート変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、ウレトジオン変性体、ウレトイミン変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。
【0078】
ジイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類が挙げられる。透明性、接着性、耐湿熱性の点から、脂肪族、脂環式イソシアネートやこれらの変性体が好ましい。芳香族イソシアネートを使用した場合、黄変の問題があり、高い透明性が要求されるフロントシート用としては、好ましくない場合がある。また、脂肪族系と比較して、強硬な塗膜になるため、硬化型樹脂等の収縮、膨潤による応力を緩和できなくなり、密着性が低下する場合がある。
【0079】
本発明のブロックイソシアネートは、水溶性、または、水分散性を付与するために前駆体であるポリイソシアネートに親水基を導入することができる。親水基としては、(1)ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩やジアルキルアミノアルキルアミンの四級アンモニウム塩など、(2)スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩など、(3)アルコキシ基で片末端封鎖されたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。親水性部位を導入した場合は(1)カチオン性、(2)アニオン性、(3)ノニオン性となる。なかでも、他の水溶性樹脂はアニオン性のものが多いため、容易に相溶できるアニオン性やノニオン性が好ましい。また、アニオン性は他の樹脂との相溶性に優れ、ノニオン性はイオン性の親水基をもたないため、耐湿熱性を向上させるためにも好ましい。また、アニオン性やカチオン性のものは他の樹脂と凝集、もしくは自己凝集し、透明性や外観性に影響する場合があるため、上記のなかでもノニオン性のものがより好ましい。
【0080】
アニオン性の親水基としては、ポリイソシアネートに導入するための水酸基、親水性を付与するためのカルボン酸基を有するものが好ましい。例えば、グリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、オキシ酪酸、オキシ吉草酸、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、カルボン酸基を有するポリカプロラクトンが挙げられる。カルボン酸基を中和するには、有機アミン化合物が好ましい。例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミンなどの炭素数1から20の直鎖状、分岐状の1,2または3級アミン、モルホリン、N−アルキルモルホリン、ピリジンなどの環状アミン、モノイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの水酸基含有アミンなどが挙げられる。
【0081】
ノニオン性の親水基としては、アルコキシ基で片末端封鎖されたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドの繰り返し単位が3〜50が好ましく、より好ましくは、5〜30である。繰り返し単位が小さい場合は、樹脂との相溶性が悪くなり、ヘイズが上昇し、大きい場合は、高温高湿下の接着性が低下する場合がある。
【0082】
本発明のブロックイソシアネートは水分散性向上のために、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性界面活性剤を添加することができる。例えばポリエチレングリコール、多価アルコール脂肪酸エステル等のノニオン系、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン系、アルキルアミン塩、アルキルベタイン等のカチオン系、カルボン酸アミン塩、スルホン酸アミン塩、硫酸エステル塩等の界面活性剤などが挙げられる。
【0083】
また、水以外にも水溶性の有機溶剤を含有することができる。例えば、反応に使用した有機溶剤やそれを除去し、別の有機溶剤を添加することもできる。
【0084】
(添加剤)
本発明において、塗布層中に粒子を含有させることもできる。粒子は(1)シリカ、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、等の無機粒子、(2)アクリルあるいはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン/アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン/アクリル系、ポリスチレン/イソプレン系、ポリスチレン/イソプレン系、メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機粒子が挙げられる。
【0085】
前記粒子は、平均粒径が1〜500nmのものが好適である。平均粒子径は特に限定されないが、フィルムの透明性を維持する点から1〜100nmであれば好ましい。
【0086】
前記粒子は、平均粒径の異なる粒子を2種類以上含有させても良い。
【0087】
なお、上記の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率12万倍で積層フィルムの断面を撮影し、塗布層の断面に存在する10ヶ以上の粒子の最大径を測定し、それらの平均値として求めることができる。
【0088】
粒子の含有量としては、0.5質量%以上20質量%以下が好ましい。少ない場合は、十分な耐ブロッキング性を得ることができない。また、対スクラッチ性が悪化してしまう。多い場合は、塗布層の透明性が悪くなるだけでなく、塗膜強度が低下する。
【0089】
塗布層には、コート時のレベリング性の向上、コート液の脱泡を目的に界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系などいずれのものでも構わないが、シリコン系、アセチレングリコール系又はフッ素系界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤は、機能層との密着性を損なわない程度の範囲、例えば、塗布液中に0.005〜0.5質量%の範囲で含有させることも好ましい。
【0090】
なお、高い透明性を得るためには、前記ウレタン樹脂の平均粒子系を小さくすることが好ましい。これにより樹脂の分散性・相溶性が向上し、高い透明性が得られる。透明性の点から、塗布層に用いるウレタン樹脂の平均粒子系は150nm以下が好ましく、より好ましくは、100nm以下である。
【0091】
塗布層に他の機能性を付与するために、封止材との接着性を損なわない程度の範囲で、各種の添加剤を含有させても構わない。前記添加剤としては、例えば、蛍光染料、蛍光増白剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、抑泡剤、消泡剤、防腐剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0092】
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を設ける方法としては、溶媒、粒子、樹脂を含有する塗布液をポリエステルフィルムに塗布、乾燥する方法が挙げられる。溶媒として、トルエン等の有機溶剤、水、あるいは水と水溶性の有機溶剤の混合系が挙げられるが、好ましくは、環境問題の点から水単独あるいは水に水溶性の有機溶剤を混合したものが好ましい。
【0093】
(易接着性ポリエステルフィルムの製造)
本発明の易接着性ポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)フィルムを例にして説明するが、当然これに限定されるものではない。
【0094】
塗布層は、製膜したフィルムもしくはフィルム製造工程の任意の段階で、PETフィルムの少なくとも片面に、塗布液を塗布し、形成する。特に、ブロック剤の解離のために高い熱付加が可能なフィルム製増工程での塗布(インラインコート法)が好ましい。塗布層はPETフィルムの両面に形成させても特に問題はない。塗布液中の樹脂組成物の固形分濃度は、2〜35重量%であることが好ましく、特に好ましくは4〜15重量%である。
【0095】
塗布液をPETフィルムに塗布するための方法は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられる。これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて塗工する。
【0096】
インラインコート法による場合、塗布層は未延伸あるいは一軸延伸後のPETフィルムに前記塗布液を塗布、乾燥した後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱処理を行って形成させる。
【0097】
本発明において、最終的に得られる塗布層の厚みは20〜350nm、乾燥後の塗布量は、0.02〜0.5g/mであることが好ましい。塗布層の塗布量が0.02g/m未満であると、接着性に対する効果がほとんどなくなる。一方、塗布量が0.5g/mを越えると、ヘイズが増加してしまう。
【0098】
基材となるフィルムは、PETフィルムを例にすると、以下のようにして得ることができる。PET樹脂を十分に真空乾燥した後、押出し機に供給し、Tダイから約280℃の溶融PET樹脂を回転冷却ロールにシート状に溶融押出しし、静電印加法により冷却固化せしめて未延伸PETシートを得る。前記未延伸PETシートは、単層構成でもよいし、共押出し法による複層構成であってもよい。また、PET樹脂中に不活性粒子を実質的に含有させないことが好ましい。
【0099】
得られた未延伸PETシートを、80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍に延伸して、一軸延伸PETフィルムを得る。さらに、フィルムの端部をクリップで把持して、70〜140℃に加熱されたテンター内の熱風ゾーンに導き、幅方向に2.5〜5.0倍に延伸し、テンター内の熱処理ゾーンに導き、熱処理を行う。本発明のブロックイソシアネートが熱付加により好適にブロック剤が解離するために、熱処理の際のテンター内の最高温度および熱処理時間は160℃以上、1秒以上が好ましく、180℃以上、5秒以上がより好ましい。また、ブロック剤の揮発を好適に抑制するために、熱処理の際のテンター内の最高温度および熱処理温度は250℃以下、60秒以下が好ましく、240℃以下、50秒以下がより好ましい。
【0100】
本発明の易接着性ポリエステルフィルムを巻き取ってなる易接着性ポリエステルフィルムロールも本発明の好適な態様である。本発明の塗布層は、架橋剤の添加により耐ブロッキング性が良好なため、生産性向上のためにロール体とした場合であっても好適に用いることができる。
【0101】
本発明の易接着性ポリエステルフィルムの厚さは特に限定されないが、25〜500μmの範囲で、使用する用途の規格に応じて任意に決めることができる。易接着性ポリエステルフィルムの厚みの上限は、400μmが好ましく、特に好ましくは350μmである。一方、フィルム厚みの下限は、50μmが好ましく、特に好ましくは75μmである。フィルム厚みが25μm未満では、機械的強度が不十分となりやすい。一方、フィルム厚みが500μmを超えるとロール状に巻き取ることが困難になりやすい。
【0102】
本発明の易接着性ポリエステルフィルムをロールとする場合には、その巻き長及び幅は、当該フィルムロールの用途により適宜決定される。フィルムロールの巻き長は1500m以上が好ましく、より好ましくは1800m以上である。また、巻き長の上限としては5000mが好ましい。また、フィルムロールの幅は500mm以上であることが好ましく、より好ましくは800mmである。なお、フィルムロールの幅の上限としては2000mmが好ましい。
【0103】
(太陽電池用フロントシート)
本発明の太陽電池用フロントシートは前記塗布層を有するポリエステルフィルムを構成部材とする。係る構成により本発明の太陽電池用バックシートは他の機能層との強固な密着性を奏することができ、長期にわたる過酷な環境下においても良好な密着性と透明性を奏する。そのため、太陽電池素子の防湿性保持やバリア性向上に寄与しうる。
【0104】
本発明の太陽電池用フロントシートの態様としては、例えば、入射光側から防汚層/硬化性樹脂層/本発明のポリエステルフィルム/バリア層/接着剤層といった構成や、防汚層/硬化性樹脂層/バリア層/本発明のポリエステルフィルム/接着剤層といった構成が例示される。また本発明のポリエステルフィルムは両面に前記塗布層を有する構成であっても構わない。この場合、接着剤層を新たに設けることなく、好適に積層加工を施すことができる。ここで金属箔又は金属系薄膜層を有するフィルムとしては、水蒸気バリア性を有するものが好適に用いることができる。
【0105】
前記金属の種類としてはアルミニウム、錫、マグネシウム、銀、ステンレスなどが挙げられるが中でもアルミニウム、銀が比較的高い反射率を有し、工業的に入手しやすいため好適である。金属層は金属箔をして使用しても良いし、ポリエステルフィルム等に薄膜として積層してもよい。これら金属を薄膜として積層する方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)等を用いることができる。
【0106】
硬化性樹脂層には耐候性を向上させるために紫外線吸収剤を添加することも好ましい態様である。また、最外層に防汚層や反射防止層などを設けることは、太陽電池素子に入射する光線量を増加させ、光電変換効率を向上させる上で好ましい態様である。
【0107】
硬化性樹脂は特に限定されるものではなく、乾燥、熱、化学反応、もしくは電子線、放射線、紫外線のいずれかを照射することによって重合、および/または反応する樹脂化合物を用いることができる。このような、硬化性樹脂としては、メラミン系、アクリル系、シリコン系、ポリビニルアルコール系の硬化性樹脂が挙げられるが、高い表面硬度もしくは光学設計を得る点で光硬化性型のアクリル系硬化性樹脂が好ましい。このようなアクリル系硬化性樹脂としては、多官能(メタ)アクリレート系モノマーやアクリレート系オリゴマーを用いることができ、アクリレート系オリゴマーの例としては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系などが挙げられる。これらアクリル系硬化性樹脂に反応希釈剤、光重合開始剤、増感剤などを混合することで、前記機能層を形成するためのコート用組成物を得ることができる。
【実施例】
【0108】
次に、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は当然以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた評価方法は以下の通りである。
【0109】
[評価方法]
(1)ヘイズ
JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」ヘーズ(曇価)に準拠して測定した。測定器には、日本電色工業社製NDH−300A型濁度計を用いた。
【0110】
(2)ヘイズ変化量(△Hz)評価
フィルムを50mm四方に切り出し、JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」ヘーズ(曇価)に準拠して加熱前ヘイズを測定した。測定器には、日本電色工業社製NDH−300A型濁度計を用いた。測定後、フィルムを170℃に加熱したオーブン内にセットし、20分間経過後フィルムを取り出す。その加熱後フィルムを上記と同様の方法でヘイズを測定し、加熱後ヘイズを得る。この加熱前後ヘイズ差を△Hzとする。
△Hz=(加熱後ヘイズ)−(加熱前ヘイズ)
【0111】
(3)ポリエステルフィルム、ポリエステル樹脂のヒドロキシル(OH)末端量
ポリエステルフィルム、または樹脂を細かく粉砕し、15mgを秤量した。0.1mlのヘキサフルオロイソプロパノールール(HFIP)−d2に完全に溶解させた後、重クロロホルム0.6mlで希釈した。さらに、HFIPのOH基ピークをシフトさせるために、ピリジン−d5を30μl添加し、H−NMR(BBO−5mmプローブ)で測定した。
【0112】
(4)環状三量体量
ポリエステルフィルム、またはポリエステル樹脂を細かく粉砕し、0.1gをヘキサフルオロイソプロパノールール(HFIP)/クロロホルム(2/3(容量比))の混合溶媒3mlに溶解した。得られた溶液にクロロホルム20mlを加えて均一に混合した。得られた混合液にメタノール10mlを加え、線状ポリエステルを再沈殿させた。次いで、この混合液を濾過し、沈殿物をクロロホルム/メタノール(2/1(容量比))の混合溶媒30mlで洗浄し、さらに濾過した。得られた濾液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。濃縮乾固物にジメチルホルムアミド10mlを加え、環状三量体測定溶液とした。この測定溶液を横河電機(株)社製LC100型の高速液体クロマトグラフィーを使用して定量した。
【0113】
(5)固有粘度
ポリエステル0.2gをフェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。単位はdl/g。
【0114】
(6)融点測定
セイコ−電子工業株式会社製の示差熱分析計(DSC)、RDC−220で測定した。試料10mgを使用し、昇温速度20℃/分で昇温し、290℃で3分間保持した。昇温時に観察される融解ピ−クの頂点温度を融点(Tm)とした。
【0115】
(7)解離温度、沸点
ブロックイソシアネートの解離温度は示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製、DSC6200)によりDSC分析にて測定し、ブロック剤の沸点は熱重量・示差熱分析(TG/DTA)により測定した。なお、沸点の測定は1気圧下で行なった。
【0116】
(8)ガラス転移点温度
JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製、DSC6200)を使用して、DSC曲線からガラス転移開始温度を求めた。
【0117】
(9)赤外分光法による吸光度測定
得られた易接着性ポリエステルフィルムについて塗布層を削り取り、約1mgの試料を採取した。採取した試料に圧力をかけ、厚み約1μmのフィルム状に成型した塗布層試料片(大きさ:約50μm×約50μm)を作成した。さらに、ブランク試料として基材フィルムと同質のPET樹脂についても前記手順と同様にして試料片(ブランク試料片)を作成した。
作成した試料片をKBr板上に載せ、下記条件の顕微透過法により赤外吸収スペクトルを測定した。塗布層の赤外分光スペクトルは、塗布層試料片から得た赤外分光スペクトルとブランク試料片のスペクトルとの差スペクトルとして求めた。
脂肪族系ポリカーボネート成分由来の1460cm−1付近の吸光度(A1460)は1460±10cm−1の領域に吸収極大をもつ吸収ピーク高さの値とし、ウレタン成分由来の1530cm−1付近の吸光度(A1530)は1530±10cm−1の領域に吸収極大をもつ吸収ピーク高さの値とした。なお、ベースラインはそれぞれの極大吸収のピークの両側の裾を結ぶ線とした。得られた吸光度から下記式により吸光度比率を求めた。
(吸光度比率)=A1460/A1530
【0118】
(測定条件)
装置:FT−IR分析装置SPECTRA TECH社製 IRμs/SIRM
検出器:MCT
分解能:4cm−1
積算回数:128回
【0119】
(10)易接着性ポリエステルフィルムの全光線透過率
得られた易接着性ポリエステルフィルムの全光線透過率はJIS K 7105に準拠し、濁度計(日本電色製、NDH2000)を用いて測定した。
【0120】
(11)接着性
得られた積層ポリエステルフィルムの光硬化型ハードコート層または光硬化型アクリル層または光硬化型ウレタン/アクリル層面(以下、光学機能層)に、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、機能層を貫通して基材フィルムに達する100個のマス目状の切り傷をつける。次いで、セロハン粘着テープ(ニチバン社製、405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって完全に密着させた。その後、垂直にセロハン粘着テープを積層ポリエステルフィルムの機能層面から引き剥がす作業を5回行った後、積層ポリエステルフィルムの光学機能層面から剥がれたマス目の数を目視で数え、下記の式から機能層と基材フィルムとの密着性を求めた。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥がれたマス目として数え、下記の基準でランク分けをした。
密着性(%)=(1−剥がれたマス目の数/100)×100
◎:100%、または、機能層の材破
○:99〜90%
△:89〜70%
×:69〜0%
【0121】
(12)耐湿熱性
得られた積層ポリエステルフィルムを、高温高湿槽中で80℃、95%RHの環境下48時間放置した。次いで、積層ポリエステルフィルムを取りだし、室温常湿で12時間放置した。その後、前記(11)と同様の方法で機能層と基材フィルムの接密着性を求め、下記の基準でランク分けをした。
◎:100%、または、機能層の材破
○:99〜90%
△:89〜70%
×:69〜0%
【0122】
(脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とするウレタン樹脂A−1の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4−ジシクロヘキシルジイソシアネート43.75質量部、ジメチロールブタン酸12.85質量部、数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール153.41質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.77質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450質量部を添加して、25℃に調整して、2000min−1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分35%の水溶性ポリウレタン樹脂(A−1)を調製した。得られたポリウレタン樹脂(A−1)のガラス転移点温度は−30℃であった。
【0123】
(脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とするウレタン樹脂A−2の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4−ジシクロヘキシルジイソシアネート29.14質量部、ジメチロールブタン酸7.57質量部、数平均分子量3000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール173.29質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン5.17質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450質量部を添加して、25℃に調整して、2000min−1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分35%の水溶性ポリウレタン樹脂(A−2)を調製した。
【0124】
(脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とするウレタン樹脂A−3の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4−ジシクロヘキシルジイソシアネート43.75質量部、ジメチロールブタン酸11.12質量部、ヘキサンジオール1.97質量部、数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール143.40質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.77質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450質量部を添加して、25℃に調整して、2000min−1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分35%の水溶性ポリウレタン樹脂(A−3)を調製した。
【0125】
(脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とするシラノール基含有ウレタン樹脂A−4の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート38.41質量部、ジメチロールプロパン酸6.95質量部、数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール158.99質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン4.37質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次にγ―(アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン3.84質量部、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール1.80質量部と水450質量部を添加して、ポリウレタンプレポリマー溶液を滴下して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分30%の水溶性シラノール基含有ポリウレタン樹脂(A−4)を調製した。
【0126】
(脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とするウレタン樹脂A−5の重合)
水溶性ポリウレタン樹脂(A−1)の数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオールを数平均分子量1000のポリヘキサメチレンカーボネートジオールに変更した以外は、同様の方法で固形分35%の水溶性ポリウレタン樹脂(A−5)を得た。
【0127】
(脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とするウレタン樹脂A−6の重合)
水溶性ポリウレタン樹脂(A−1)の数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオールを数平均分子量5000のポリヘキサメチレンカーボネートジオールに変更した以外は、同様の方法で固形分35%の水溶性ポリウレタン樹脂(A−6)を得た。
【0128】
(ポリエステルポリオールを構成成分とするウレタン樹脂の重合A−7)
水溶性ポリウレタン樹脂(A−1)の数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオールを数平均分子量2000のポリエステルジオールに変更した以外は、同様の方法で固形分35%の水溶性ポリウレタン樹脂(A−7)を得た。
【0129】
(ポリエーテルポリオールを構成成分とするウレタン樹脂の重合A−8)
水溶性ポリウレタン樹脂(A−1)の数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオールを数平均分子量2000のポリエーテルジオールに変更した以外は、同様の方法で固形分35%の水溶性ポリウレタン樹脂(A−8)を得た。
【0130】
(ブロックポリイソシアネート架橋剤B−1の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)100質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55質量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量 750)30質量部を仕込み、窒素雰囲気下、70℃で4時間保持した。その後、反応液温度を50℃に下げ、メチルエチルケトオキシム(解離温度:140℃、沸点:152℃)47質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認し、固形分75質量%のブロックポリイソシアネート水分散液(B−1)を得た。
【0131】
(ブロックポリイソシアネート架橋剤B−2の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)52.21質量部にポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量 1000)20.72質量部を滴下し、素雰囲気下、70℃で5時間保持した。その後、3,5−ジメチルピラゾール(解離温度:120℃、沸点:218℃)27.08質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認後、ジプロピレングリコールジメチルエーテル25質量部、水125質量部を加え、30℃で高速攪拌し、固形分40質量%のブロックポリイソシアネート水分散液(B−2)を得た。
【0132】
(ブロックポリイソシアネート架橋剤B−3の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたビウレット構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネート24A−100)52.54質量部にポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量 1000)19.78質量部素雰囲気下、70℃で5時間保持した。その後、3,5−ジメチルピラゾール(解離温度:120℃、沸点:218℃)27.67質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認後、ジプロピレングリコールジメチルエーテル25質量部、水125質量部を加え、30℃で高速攪拌し、固形分40質量%のブロックポリイソシアネート水分散液(B−2)を得た。
【0133】
(実施例1)
(1)塗布液の調整
下記の塗剤を混合し、塗布液を作成した。
水 53.66質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリウレタン樹脂(A−1) 11.29質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−1) 4.23質量%
粒子 0.71質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子 0.07質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量%
(シリコン系、固形分濃度100質量%)
【0134】
(2)易接着性ポリエステルフィルムの製造
ジメチルテレフタレート1,000部、エチレングリコール700部、および酢酸亜鉛・2水塩0.3部をエステル交換反応缶に仕込み、120〜210℃でエステル交換反応を行い、生成するメタノールを留去した。エステル交換反応が終了した時点で、リン酸0.13および三酸化アンチモン0.3部を加え、系内を徐々に減圧にし、75分間で1mmHg以下とした。同時に徐々に昇温し、280℃とした。同条件で70分間重縮合反応を実施し、溶融ポリマーを吐出ノズルより水中に押し出し、カッターによって、直径約3mm、長さ約5mmの円柱状チップとした。得られた粗製ポリエステルの固有粘度は0.610dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は70eq/tonであり、環状三量体の含有量は1.05質量%、融点は252℃であった。なお、実施例中にある「部」とは全て重量部を表す。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(A)とする。
【0135】
PET樹脂(A)を減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が6.4g/Nmに調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時70リットルの割合で流通し、207℃で48時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.631dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は59eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.27質量%であった。
【0136】
得られたポリエステル樹脂を、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機に供給した。押出機に供給された原料を、押出機の溶融部、混練り部、ポリマー管、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂温度は280℃、その後のポリマー管では275℃とし、口金よりシート状に溶融押し出した。また、前記のフィルターには、いずれもステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度:10μm粒子を95%カット)を用いた。また、口金の温度は、押出された樹脂温度が275℃になるように制御した。
【0137】
押し出した樹脂を、表面温度30℃の冷却ドラム上にキャスティングして静電印加法を用いて冷却ドラム表面に密着させて冷却固化し、厚さ1360μmの未延伸フィルムを作成した。
【0138】
得られた未延伸シートを、78℃に加熱されたロール群でフィルム温度を75℃に昇温した後、赤外線ヒータで105℃に加熱し、周速差のあるロール群で、長手方向に3.4倍に延伸した。
【0139】
次いで、前記塗布液をロールコート法でPETフィルムの片面に塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。なお、最終(二軸延伸後)の乾燥後の塗布量が0.15g/mになるように調整した。
【0140】
次いで、得られた一軸延伸フィルムをクリップで把持し、横延伸を行った。横延伸温度は120℃、横延伸倍率は4.0倍とした。次いで、240℃で15秒間の熱処理を行い、210℃で3%の弛緩処理を行った。両端をトリミングし、巻き取り装置にて巻き取り、さらにこれを幅方向に2等分してスリットし、幅1300mm、フィルム長さ3000m、フィルム厚さ100μmのフィルムロールを得た。得られた易接着性ポリエステルフィルムについての評価結果を表1に示す。
【0141】
(3)積層ポリエステルフィルムの製造
(ハードコート層を有する積層ポリエステルフィルム)
前記の易接着性ポリエステルフィルムの塗布層面に、下記組成のハードコート層形成用塗布液(E)を#10ワイヤーバーを用いて塗布し、70℃で1分間乾燥し、溶剤を除去した。次いで、ハードコート層を塗布したフィルムに高圧水銀灯を用いて300mJ/cmの紫外線を照射し、厚み5μmのハードコート層を有する積層ポリエステルフィルムを得た。
ハードコート層形成用塗布液(E)
メチルエチルケトン 65.00質量%
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 27.20質量%
(新中村化学製A−DPH)
ポリエチレンジアクリレート 6.80質量%
(新中村化学製A−400)
光重合開始剤 1.00質量%
(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア184)
【0142】
(光硬化型ウレタン/アクリル層を有する積層ポリエステルフィルム)
清浄に保った厚さ1mmのSUS板上(SUS304)に、下記光硬化型アクリル系塗布液を約5gのせ、フィルム試料の塗布層面と光硬化型アクリル系塗布液が接するように重ね合わせ、フィルム試料の上から幅10cm、直径4cmの手動式荷重ゴムローラーで光硬化型ウレタン/アクリル系塗布液(F)を引き延ばすように圧着した。次いで、フィルム面側から、高圧水銀灯を用いて500mJ/cmの紫外線を照射し、光硬化型ウレタン/アクリル樹脂を硬化させた。厚み20μmの光硬化型ウレタン/アクリル層を有するフィルム試料をSUS板から剥離し、積層ポリエステルフィルムを得た。
光硬化型ウレタン/アクリル系塗布液(F)
光硬化型アクリル樹脂 67.00質量%
(新中村化学製A−BPE−4)
光硬化型アクリル樹脂 15.00質量%
(新中村化学製AMP−10G)
光硬化型ウレタン/アクリル樹脂 15.00質量%
(新中村化学製U−6HA)
光重合開始剤 3.00質量%
(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア184)
【0143】
(光硬化型アクリル層を有する積層ポリエステルフィルム)
光硬化型ウレタン/アクリル層を有する積層ポリエステルフィルムの光硬化型ウレタン/アクリル系塗布液(F)を光硬化型アクリル系塗布液(G)に変更した以外は同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
光硬化型アクリル系塗布液(G)
光硬化型アクリル樹脂 67.00質量%
(新中村化学製A−BPE−4)
光硬化型アクリル樹脂 30.00質量%
(新中村化学製AMP−10G)
光重合開始剤 3.00質量%
(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア184)
【0144】
(比較例1)
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表3に示す。
水 53.04質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリウレタン樹脂(A−1) 16.13質量%
粒子 0.71質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子 0.07質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量%
(シリコン系、固形分濃度100質量%)
【0145】
(比較例2)
ポリウレタン樹脂をポリウレタン樹脂(A−5)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表3に示す。
【0146】
(比較例3)
ポリウレタン樹脂をポリウレタン樹脂(A−6)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表3に示す。
【0147】
(比較例4)
ポリウレタン樹脂をポリウレタン樹脂(A−7)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表3に示す。
【0148】
(比較例5)
ポリウレタン樹脂をポリウレタン樹脂(A−8)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表3に示す。
【0149】
(実施例2)
ブロックポリイソシアネート水分散液をブロックポリイソシアネート水分散液(B−2)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0150】
(実施例3)
ブロックポリイソシアネート水分散液をブロックポリイソシアネート水分散液(B−3)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0151】
(実施例4)
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
水 53.25質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリウレタン樹脂(A−1) 14.51質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−1) 1.41質量%
粒子 0.71質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子 0.07質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量%
(シリコン系、固形分濃度100質量%)
【0152】
(実施例5)
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
水 53.46質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリウレタン樹脂(A−1) 12.90質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−1) 2.81質量%
粒子 0.71質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子 0.07質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量%
(シリコン系、固形分濃度100質量%)
【0153】
(実施例6)
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
水 54.06質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリウレタン樹脂(A−1) 8.06質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−1) 7.05質量%
粒子 0.71質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子 0.07質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量%
(シリコン系、固形分濃度100質量%)
【0154】
(実施例7)
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
水 54.66質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリウレタン樹脂(A−1) 3.23質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−1) 11.28質量%
粒子 0.71質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子 0.07質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量%
(シリコン系、固形分濃度100質量%)
【0155】
(実施例8)
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
水 54.87質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリウレタン樹脂(A−1) 1.61質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−1) 12.69質量%
粒子 0.71質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子 0.07質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量%
(シリコン系、固形分濃度100質量%)
【0156】
(実施例9)
ポリウレタン樹脂をポリウレタン樹脂(A−2)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0157】
(実施例10)
ポリウレタン樹脂をポリウレタン樹脂(A−3)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0158】
(実施例11)
ポリウレタン樹脂をシラノール基含有ポリウレタン樹脂(A−4)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0159】
(実施例12)
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表2に示す。
水 61.83質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリウレタン樹脂(A−1) 5.64質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−1) 2.12質量%
粒子 0.35質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子 0.04質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.02質量%
(シリコン系、固形分濃度100質量%)
【0160】
(実施例13)
ポリエステル樹脂(A)を減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が15.3g/Nmに調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時300リットルで流通し、230℃で12時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.617dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は71eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.28質量%であった。新たに得られたポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。得られたフィルム物性を表2に示す。
【0161】
(実施例14)
実施例1と同様にして、固有粘度が0.648dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は64eq/tonであり、環状三量体の含有量が1.2質量%、融点が245℃である粗製ポリエステルを得た。得られた粗製ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が15.3g/Nmに調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時300リットルで流通し、220℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.623dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は57eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.27質量%であった。新たに得られたポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。得られたフィルム物性を表2に示す。
【0162】
(実施例15)
実施例1と同様にして、固有粘度が0.613dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は70eq/tonであり、環状三量体の含有量が1.03質量%、融点が255℃である粗製ポリエステルを得た。該ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が6.4g/Nmに調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時70リットルで流通し、この反応系を1.2kg/cm2の微加圧に調整し、207℃で48時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.629dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は60eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.28重量であった。新たに得られたポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様にして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。得られたフィルム物性を表3に示す。
【0163】
(比較例6)
実施例1と同様にして得られた粗製ポリエステルを減圧下160℃にて乾燥し、窒素雰囲気下0.1kg/cm2の微加圧に調整し、215℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.622dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は73eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.30質量%であった。
【0164】
加熱処理後のポリエステルを実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルム物性を表3に示す。
【0165】
(比較例7)
実施例1と同様にして、固有粘度が0.592dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は83eq/tonであり、環状三量体の含有量が1.2質量%、融点が250℃である粗製ポリエステルを得た。得られた粗製ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が35.0g/Nmに調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時180リットルで流通し、220℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステル中の固有粘度は0.482dl/gであった。
【0166】
加熱処理後のポリエステルを実施例1と同様にして未延伸フィルムを得たが、延伸工程で破断が起き、フィルムを得ることができなかった。
【0167】
(比較例8)
実施例1と同様にして得られた粗製ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が18.1g/Nmに調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時40リットルで流通し、170℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステル中の環状三量体の含有量は1.00質量%と全く減少しなかった。
【0168】
加熱処理後のポリエステルを実施例1と同様にしてフィルムを得たが、得られたフィルムを加熱するとオリゴマーが析出し、所定の機能を得ることができなかった。
【0169】
(比較例9)
実施例1と同様にして得られた粗製ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が18.1g/Nmに調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時40リットルで流通し、263℃で12時間加熱処理を行った。得られたポリエステルは、缶内で融着を起こしており、得ることができなかった。
【0170】
【表1】

【0171】
【表2】

【0172】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明の易接着性ポリエステルフィルムは優れた加熱白化防止性を有し、湿熱環境下でも良好な密着性を有する。そのため、太陽電池用フロントシートの基材フィルムとして好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に塗布層を有する二軸延伸ポリエステルフィルムであって、下記構成要件(1)〜(4)を満たす易接着性ポリエステルフィルム。
(1)170℃、20分間加熱したときのフィルムヘイズ変化量△Hz(△Hz=加熱後ヘイズ−加熱前ヘイズ)が1.0未満
(2)環状三量体含有量が0.45質量%以下
(3)前記塗布層が脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とするウレタン樹脂と架橋剤を主成分とする
(4)前記塗布層の赤外分光スペクトルにおいて脂肪族系ポリカーボネート成分由来の1460cm−1付近のピークの吸光度(A1460)とウレタン成分由来の1530cm−1付近のピークの吸光度(A1530)との比率(A1460/A1530)が0.40〜1.55である
【請求項2】
前記架橋剤がブロックイソシアネートである、請求項1に記載の易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記ブロックイソシアネートの解離温度が130℃以下、かつ、ブロック剤の沸点が180℃以上である、請求項2に記載の易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記ポリエステルフィルムのヒドロキシル(OH)末端量が70eq/ton以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記塗布層中のウレタン樹脂と架橋剤の質量比(ウレタン樹脂/架橋剤)が1/9〜9/1である、請求項1〜4のいずれかに記載の易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項6】
ポリエステルフィルムのヘイズが2.0%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項7】
下記要件(5)〜(7)を満たす加熱処理をしたポリエステル樹脂を用いて製造される請求項1〜6のいずれかに記載の易接着性ポリエステルフィルム。
(5)ジカルボン酸成分とグリコール成分との重縮合反応によって得られた固有粘度が0.50〜0.70dl/gの粗製ポリエステルを、含水量が3.5〜30.0g/Nmである調湿不活性ガスを、粗製ポリエステル1kg当たり毎時1リットル以上、10,000リットル以下の流量で流通させる
(6)190℃〜260℃で加熱処理を行う
(7)ポリエステルの極限粘度の変化が下記式を満足するように加熱処理を行う
−0.05dl/g≦(加熱処理前の極限粘度)−(加熱処理後の極限粘度)≦0.05dl/g
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載する易接着性ポリエステルフィルムを構成部材とする太陽電池用フロントシート。

【公開番号】特開2012−162058(P2012−162058A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26008(P2011−26008)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】