説明

易開封性包装体

【課題】ピロータイプの三方シール包装体の表面と背面とのそれぞれのフィルムを、手でつまんで左右に引っ張ることにより、シール部分を剥離して開封する易開封性包装体において、前記シール部分を少ない力で剥離開封することができる易開封性包装体を提供することを課題とする。
【解決手段】包装体のシール部分を左右に剥離して開封可能な包装体において、前記シール部分は、シールが剥離する界面の境界線である剥離線と直交する斜めシールを有することを特徴とする、易開封性包装体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体の開封性に関するもので、特にピロー包装体又はガゼットタイプのピロー包装体において、手で容易に剥離開封できるように改良した易開封性包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図15に示すように、ピロータイプの三方シール包装体1の背シール4と、その反対側の表面Aのフィルムと、の持ち位置O点をそれぞれ手でつまんで、左右に引っ張ることにより、シール部分3が左右に剥離して開口部Kを形成し開封する易開封性包装体1(以下、包装体1)が知られている。このような包装体1は、予め、開口部Kとなるシール部分3のシール強度を弱め、または、シール層が異なる樹脂からなる混合物であり、シール強度を適度に制御し、イージーピール性を持った積層フィルムを用いることにより、少ない力でシール部分3の剥離開封が可能な構成としている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、包装体1に用いられる前記シール部分3のシール形状は、例えば図16(a)に示すように、シール部分3と平行な線状のシールを形成することにより(以下、横シール3Y)、部分的に圧力を高め、密封性を高めた包装体1や、図16(b)に示すように、アイスなどでは昇華現象による袋の膨張を防止するために、シール部分3と垂直な線状のシールを形成して(以下、縦シール3T)、密封性を保ちながら袋内の気体が逃げ易くした包装体1や、図16(c)に示すように、シール部分3がベタシール3Mからなる包装体1等が知られている。さらには、図16(d)に示すように、シール部分3の剥離性を向上させるために、散点状に接着部を施した格子稿状のローレットシール3Rを形成した包装体1も知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−138874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シール部分3が前記横シール3Yや前記縦シール3Tからなる包装体1の場合、部分的に圧力を強めてシールを形成するため、シール強度が高くシール部分3の剥離に大きな力を要することとなり、シール部分3の剥離が困難であるという問題がある。
【0006】
また、前記ローレットシール3Rを有する包装体1では、ローレットのピッチ間が未接着であることから外気が通りやすく、この部分に内容物の食品が挟まれた場合、保存状態によってはカビの発生等のトラブルが生じる恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、これらの問題を解決するため鋭意研究に努めた結果、シール部分3のシール形状を、後述する、剥離線Lに対して常に垂直に交わる斜めシール3Sとすることにより、前記シール部分3と平行なシール形状を有する横シール3Yや、シール部分3と垂直なシール形状を有する縦シール3Tに比べて、シール部分3の剥離に必要な剥離線長を低下せしめ、シール部分3の開封に必要な力(開封強度)を低く抑えることができることを見出した。
【0008】
また、前記剥離線Lは持ち位置O点によって変化するため、包装体1の大きさやシール形状に合わせた持ち位置O点を包装体1に表示することにより、確実にシール部分3の易開封性を奏することが可能である。
【0009】
すなわち、上記課題を解決するため、本発明の請求項1記載の発明は、包装体のシール部分を左右に剥離して開封可能な包装体において、前記シール部分は、シールが剥離する界面の境界線である剥離線と直交する斜めシールを有することを特徴とする、易開封性包装体である。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、少なくとも前記斜めシールは、前記シール部分を剥離開封する際に、前記包装体の中心鉛直線上の前記包装体の持ち位置をO点とし、該O点を中心として前記シール部分の上辺と接する1点で接する仮想円周を描いたときに、前記仮想円周と前記シール部分の上辺とが接する1点と、前記仮想円周と前記シール部分の下辺とが接する2点と、を結ぶ仮想直線部分を含む箇所に形成されることを特徴とする、易開封性包装体である。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、前記斜めシールは、前記中心鉛直線の左右対称に形成されることを特徴とする、易開封性包装体である。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、前記持ち位置O点の位置が、印刷またはエンボスによって示されていることを特徴とする、易開封性包装体である。
【0013】
また、請求項5記載の発明は、前記持ち位置O点は、前記包装体の中心鉛直線上の、前記シール部分の下辺から下方へと40mm以内に位置することを特徴とする、易開封性包装体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1記載の発明は、包装体のシール部分を左右に剥離して開封可能な包装体において、前記シール部分は、シールが剥離する界面の境界線である剥離線と直交する斜めシールを有することを特徴とするから、シール部分の剥離に必要な剥離線長を低下せしめ、開封に必要な力(開封強度)を低く抑えることが可能である。よって、シール部分をより少ない力で剥離開封することが可能である。
【0015】
また、請求項2記載の発明は、少なくとも前記斜めシールは、前記シール部分を剥離開封する際に、前記包装体の中心鉛直線上の前記包装体の持ち位置をO点とし、該O点を中心として前記シール部分の上辺と接する1点で接する仮想円周を描いたときに、前記仮想円周と前記シール部分の上辺とが接する1点と、前記仮想円周と前記シール部分の下辺とが接する2点と、を結ぶ仮想直線部分を含む箇所に形成されることを特徴とするから、シール部分の開封に要する最大開封強度を低下せしめ、シール部分をより少ない力で剥離開封することが可能である。
【0016】
また、請求項3記載の発明は、前記斜めシールは、前記中心鉛直線の左右対称に形成されることを特徴とするから、包装体の意匠性を損なうことなく、さらには包装体の開封時、シール部分の左右対称に均等に力が加わるため、少ない力で確実に剥離することが可能である。
【0017】
また、請求項4記載の発明は、前記持ち位置O点の位置が、印刷またはエンボスによって示されていることを特徴とするから、開封時の持ち位置の個人差を減らし、包装体の大きさやシール形状にあった斜めシールを形成することができるため、より少ない力で確実に剥離開封することが可能である。
【0018】
また、請求項5記載の発明は、前記持ち位置O点は、前記包装体の中心鉛直線上の、前記シール部分の下辺から下方へと40mm以内に位置することを特徴とするから、開封時の包装体の持ち位置の個人差や包装体の形状、大きさを考慮して、包装体を形成することが可能である。
【0019】
このように本発明の易開封性包装体によれば、シール部分の剥離に必要な剥離線長を低下せしめ、シール部分の開封に必要な力(開封強度)、特に、包装体の最大開封強度を下げることにより、子供や女性のみならず力の弱い老人でも容易に開封することが可能な易開封性包装体を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る易開封性包装体1(包装体1)の一例としては、図1(a)(b)に示すように、包装体1の上下および背面の3箇所をそれぞれヒートシールしてなる、ピロータイプの三方シール袋1が挙げられる。図1(a)は包装体1の表面Aを示し、図1(b)は包装体1の背面Bを示す。
【0021】
このような包装体1は、内容物を収納するため未シール部分からなる収容部2の上下部分をそれぞれヒートシールしたシール部分3および、包装体1の背面Bをヒートシールした背シール部分4とで密封されており、包装体1の開封時において、前記収容部2の表面Aを一方の手でつまみ、収容部2の背面Bのフィルム若しくは背シール部分4を他方の手でつまんで、それぞれの手を引き離すことにより、シール部分3を剥離して包装体1の開封を行なうものである。
【0022】
このように、包装体1を開封する際に、包装体1の表面Aと背面Bとをつまみつつ力を加えてこれらを引き離す必要があるが、シール部分3を剥離するためには一定以上の力を加えて表面Aと背面Bとを引き離し続ける必要がある。
【0023】
本発明においては、特に、シール部分3のシール形状に工夫を講じ、シール部分3のシール形状を、後述する、剥離線Lと常に直交する斜めシール3Sとすることにより、シール部分3の開封強度Fを低下せしめ、より少ない力でシール部分3の剥離開封を可能とするものである。ここで、剥離線Lと直交する斜めシール3Sとは、前記剥離線Lと前記斜めシールとが、概ね直交する状態を意味するものであって、必ずしも90°とするものではない。例えば、直交を90°の角度とした場合、常に90°±15°の範囲内であれば、上述同様の効果を奏することが可能である。
【0024】
このような包装体1を形成する方法の一例としては、ヒートシール性を有する剥離開封可能なシーラントを持つ積層フィルムの両端を積層フィルムの内面が合掌貼りになるように合わせ、ヒートシールにより合掌貼りの背シール部分4を形成して筒状とし、次いで、開封時の剥離線と垂直に交わるように溝を施したシール板を用いて、筒状にした積層フィルムの一端を、水平にヒートシールして下方のシール部分3を形成した後、上方の開口部Kから既定重量の内容物を充填し、最後に開口部Kを水平にヒートシールして上方のシール部分3を形成することにより、ピロータイプの包装体1を形成するものである。
【0025】
以下、シール部分3の開封強度Fを低下させて、少ない力でもって開封可能な易開封性包装体1の構成および原理について説明する。
【0026】
まず、包装体1のシール部分3を剥離開封する際に要する開封強度Fと最大開封強度Fmaxとについて、「2次元円弧モデル」を用いて説明する。
【0027】
「2次元円弧モデル」とは、図2に示すように、包装体1の持ち位置をO点とした場合、包装体1を開封する際に、前記O点を中心として円周状(仮想円周C)に力が波及すると仮定して、シール部分3に直接作用する剥離力Dを、仮想円周Cとシール部分3とが重なる円弧D部分(図中実線)を用いて、シール部分3の剥離開封を説明するモデルである。
【0028】
すなわち、包装体1を開封する際には、まず包装体1の持ち位置O点をつまんで表裏のフィルム(表面Aおよび背面Bのフィルム又は背シール4)を引き離すことにより、持ち位置O点を中心とした円周状(仮想円周C)に力が生じるとともに、シール部分3と仮想円周Cとが接する円弧D(図中実線)からなる剥離力Dがシール部分3に作用して、シール部分3の下辺3Bから上方へと剥離を開始することとなる「C1」。
【0029】
そして、表裏のフィルムA、Bをさらに引き離すと、持ち位置O点上の鉛直線Hから左右対称の方向へと、さらに円弧状の剥離力Dが作用して、シール部分3が上方かつ外方へと剥離を進行する「C2」。
【0030】
特に、持ち位置Oを中心とする仮想円周Cと、シール部分3の上辺3Aとが1点で接する箇所X点において、シール部分3と交わる部分の円弧長Dが最大となる「C3」。
よって、X点と交わる仮想円周C3部分において、シール部分3の剥離に要する開封強度Fが最大となり、最大開封強度Fmaxを要することがわかる。
【0031】
以降の開封操作においては、仮想円周Cがさらに増大するとともに、シール部分3と交わる円弧長Dが徐々に小さくなるため、シール部分3の剥離開封に要する開封強度Fも小さくなる「C4」。
【0032】
このように、シール部分3に作用する剥離力Dを、シール部分3と交わる円弧長Dの推移に置き換えて近似することが可能であり、特に、仮想円周Cとシール部分3の上辺3Aとが一点で交わる箇所Xにおいて、最大開封強度Fmaxを要することがわかる。
【0033】
以上のように、シール部分3の剥離開封に要する開封強度Fの推移を、円弧D(仮想円周Cとシール部分3とが交わる実線部分)の広がりによる「2次元円弧モデル」として説明することができるが、実際の包装体1では、シール部分3の剥離開封時に生じる剥離界面の境界線は、前記円弧Dと、前記シール部分3の上辺3Aおよび下辺3Bとが交わる点3a、3bと、を結ぶ直線状の弦L(剥離線L)となる。そして、この剥離界面の境界線である剥離線Lの推移に伴いシール部分3の剥離が進行することとなる。
【0034】
すなわち、実際の開封界面(剥離界面の境界線)となる前記剥離線Lは、図3に示すように、シール部分3の剥離開始から、仮想円周Cが前記X点に接するまでの間は、仮想円周Cと鉛直線Hとの交点Qと、仮想円周Cと前記シール部3の下辺3Bとの交点3bと、を結ぶ仮想の二等辺三角形の斜辺部分L(剥離線L)で示される。他方、これ以降の開封操作においては、図4に示すように、前記円弧Dがシール部分3の上辺3Aとが交わる点3aと、前記円弧Dがシール部分3の下辺3Bとが交わる点3bと、を結ぶ直線状の弦L(剥離線L)で示される。また、シール部3の開封による剥離線Lの進行に伴い、剥離線Lとシール部3とのなす角度θが増大することとなる。
【0035】
そして、シール部分3を剥離するために要する力F(開封強度F[N])は、前記剥離線Lの長さ[mm]と、シール部分3の単位接着長さ当たりのシール剥離強度G[N/mm]との積によって下記式1を用いて表すことができる。
【数1】


ここで、シール剥離強度Gは、シール部分3の単位長あたりに必要な剥離力[N/mm]を示し、フィルムの種類とヒートシールの条件等により決まる定数である。
【0036】
よって、前記開封強度F[N]は、前記剥離線L[mm]を変数とする下記の方程式で表すことができる。
まず、図3に示すように、仮想円周Cの半径rが、持ち位置OからX点までの長さxより小さいとき(図2「C(1)」「C(2)に相当」、すなわち、r≦xの場合、仮想円周の半径をr[mm]、持ち位置OからX点までの長さx[mm]、持ち位置Oからシール部分3の下辺3Bまでの長さy[mm]とし、鉛直線Hから交点3bまでの距離をb[mm]とすると、前記剥離線L[mm]の長さは、式2で表される。
【数2】

【0037】
そして、開封強度F[N]は、式3で表される。
【数3】

【0038】
次に、図4に示すように、仮想円周Cの半径rが、持ち位置O点からX点までの長さxより大きいとき(図2「C(4)」に相当)、すなわち、r≧xの場合、鉛直線Hから交点3aまでの距離をa[mm]とし、シール部分の高さをw[mm]とすると、剥離線L[mm]の長さは、式4で表される。
【数4】

【0039】
よって、開封強度F[N]は、式5で表される。
【数5】

【0040】
そして、上記式2〜式5より、特にa=0のとき、すなわち、図5に示すように、仮想円周CがX点と交わるとき、剥離線L[mm]の長さが最大となることがわかる。よって、式6の最大剥離長Lmaxおよび式7〜式8の最大開封強度Fmaxを得る。
【数6】

【0041】
よって、シール部分3の剥離に要する最大開封強度Fmaxは、図5に示すように、剥離線Lの長さが最大となる最大剥離線Lmax部分であることがわかり、最大剥離線Lmaxは、仮想円周Cとシール部分3の上辺3Aとが1点で交わるX点と、前記仮想円周Cとシール部分3の下辺3Bとが接する交点3bとを結ぶ、二等辺三角形の斜辺部分Lmaxであることが分かる(図2「C3」に相当)。よって、最大開封強度Fmax以上の力を加えない限り包装体1の開封を行うことが不可能である。
【0042】
なお、背シール部分4を有する包装体1では、シール部分3の中に背シール部分4が重なる領域と重ならない領域が存在している。この二つの領域では、重なり合うフィルムの総厚が異なるため、シール条件によってはシール剥離強度G[N/mm]の値に違いが生じ易い。そのため、より正確に開封強度F[N]を求めるには、剥離線Lがどちらの領域にどれだけ含まれるのかを考慮し、二つの領域のシール剥離強度G[N/mm]を使い分けて計算することが望ましい。
【0043】
以上のように、「2次元円弧モデル」を用いて、開封に伴う剥離線Lの推移、および開封に必要な最大開封強度Fmaxを知ることが可能である。
【0044】
次に、実際のシール部分3のシール形状は、前述のとおりシール部分3と水平かつ直線状にシールしてなる横シール3Yや、シール部分3と垂直かつ直線状にシールしてなる縦シール3T等のシール形状があるため、各シール形状(縦シール3T、横シール3Y)による前記剥離線Lの推移を考慮する必要があり、各シール形状毎の剥離線Lの推移を示す、「剥離線長モデル」について以下に説明する。
【0045】
この「剥離線長モデル」とは、例えば図6に示すように、シール部分3の開封に伴い、前記剥離線Lの角度θ(剥離線Lとシール部3の下辺3Bとのなす角度θ)が徐々に増すとともに、後述する、シール部分3と剥離線Lとの交わる部分の剥離線長(La、Lb、Lc)が変化することとなる。
そして、この剥離線長の推移を各シール形状(3S、3Y、3T)毎に調べることにより、それぞれのシール形状に応じてシール部分3の剥離に必要な剥離線長(La、Lb、Lc)を知る方法である。
【0046】
以下に、シール部分3の開封に伴い増す前記剥離線Lの角度θを、θ=30°、θ=45°、θ=60°とした場合、各シール形状(斜めシール3S、横シール3Y、縦シール3T)についての「剥離線長モデル」の一例を示す。
【0047】
ただし、前記斜めシール3Sと交わる部分の剥離線長をLa[mm]とし、横シール3Yと交わる部分の剥離線長をLb[mm]とし、縦シール3Tと交わる部分の剥離線長をLc[mm]とし、各シール部分(3S、3Y、3T)の幅をそれぞれd[mm] とする。
【0048】
まず、図7(a)に示すように、剥離線Lの角度θが30°のとき、斜めシール3Sと交わる部分の剥離線Lの長さLa[mm]は、斜めシール3Sと剥離線Lとが垂直に交差しているため、斜めシール3Sの幅d[mm] と等しい(d=La)。
【0049】
次に、図7(b)に示すように、横シール3Yと交わる部分の剥離線Lの長さLb[mm] は、横シール3Yの幅dを高さとする二等辺三角形の斜辺部分Lbに相当し、前記剥離線長Lb[mm]は下記の関係(式9〜式12)で示すことができる。
【数7】

【0050】
そして、d=Laより
【数8】

【0051】
よって、横シール3Yと交わる部分の剥離線長Lb[mm] は、前記斜めシール3Sと交わる部分の剥離線長La[mm]の2倍であることがわかる。
【0052】
次に、図7(c)に示すように、縦シール3Tと交わる部分の剥離線Lの長さLc[mm] は、縦シール3Tの幅dを底辺とする二等辺三角形の斜辺部分Lcに相当し、前記剥離線長Lc[mm]は下記の関係式(式13〜式16)で示すことができる。
【数9】

【0053】
そして、d=Laより
【数10】

【0054】
よって、縦シール3Tと交わる部分の剥離線長Lc[mm] は、前記斜めシール3Sと交わる部分の剥離線長La[mm]のおよそ1.15倍であることがわかる。
【0055】
このように、剥離線Lの角度θが30°のとき、各シール形状(3S、3Y、3T)によるそれぞれの剥離線長(La、Lb、Lc)は、斜めシール3Sの剥離線長La[mm] に対して、横シール3Yの剥離線長Lb=2La[mm]、縦シール3Tの剥離線長Lc=1.15La[mm]であり、斜めシール3Sの剥離線長Laに比べて、横シール3Y、縦シール3Tの何れにおいても剥離線長Lb、Lcが大きいことがわかる。
【0056】
また、上記例では、剥離線Lの角度θが30°のときを示したが、これは、開封開始直後において、剥離線Lとシールとのなす角度θが30°であった場合の一例であり、前述のように、シール部3の剥離開封に伴う仮想円周Cの増大により、シール部分3と剥離線Lとのなす角度θが徐々に増すために、前記縦シール3Tと前記横シール3Yとでは、剥離線長Lb、Lcの推移が異なることとなる。
そして、特に横シール3Yの場合、開封開始直後に最も大きな剥離線長Lbを要することがわかる。
【0057】
次に、図8(a)(b)(c)に示すように、シール部3の剥離開封が進行して、剥離線Lの角度θが45°となったときの「剥離線長モデル」を示す。
【0058】
この場合、図8(a)に示すように、斜めシール3Sと交わる部分の剥離線Lの長さLa[mm]は、斜めシール3Sと剥離線Lとが垂直に交差しているため、斜めシール3Sの幅d[mm] と等しい(d=La)。
【0059】
そして、図8(b)に示すように、横シール3Yと交わる部分の剥離線Lの長さLb[mm] は、横シール3Yの幅dを高さとする二等辺三角形の斜辺部分Lbに相当し、剥離線長Lb[mm]は下記の関係式(式17〜式20)で示すことができる。
【数11】

【0060】
そして、d=Laより
【数12】

【0061】
よって、横シール3Yと交わる部分の剥離線長Lb[mm] は、斜めシール3Sと交わる部分の剥離線長La[mm]のおよそ1.4倍であることがわかる。
【0062】
次に、図8(c)に示すように、縦シール3Tと交わる部分の剥離線Lの長さLc[mm] は、縦シール3Tの幅dを底辺とする二等辺三角形の斜辺部分Lcに相当し、剥離線長Lc[mm]は下記の関係式(式21〜式24)で示すことができる。
【数13】

【0063】
そして、d=Laより
【数14】

【0064】
よって、縦シール3Tと交わる部分の剥離線長Lc[mm] は、斜めシール3Sと交わる部分の剥離線長La[mm]のおよそ1.4倍であることがわかる。
【0065】
このように、剥離線Lのなす角度θが45°のとき、斜めシール3Sの剥離線長La[mm]に対して、横シール3Yおよび縦シール3Tの剥離線長Lb=Lc=1.4La[mm]であり、斜めシール3Sの剥離線長Laに比べて、横シール3Y、縦シール3Tの何れも剥離線長Lb、Lcが大きいことがわかる。
【0066】
次に、図9(a)(b)(c)に示すように、シール部の剥離開封がさらに進行して、開封終了直前に前記剥離線Lの角度θが60°となったときの「剥離線長モデル」を示す。
【0067】
この場合、図9(a)に示すように、斜めシール3Sと交わる部分の剥離線Lの長さLa[mm]は、斜めシール3Sと剥離線Lとが垂直に交差しているため、斜めシール3Sの幅d[mm] と等しい(d=La)。
【0068】
そして、図9(b)に示すように、横シール3Yと交わる部分の剥離線Lの長さLb[mm] は、横シール3Yの幅dを高さとする二等辺三角形の斜辺部分Lbに相当し、剥離線長Lb[mm]は下記の関係式(式25乃至式28)で示すことができる。
【数15】

【0069】
そして、d=Laより
【数16】

【0070】
よって、横シール3Yと交わる部分の剥離線長Lb[mm] は、斜めシール3Sと交わる部分の剥離線長La[mm]のおよそ1.15倍であることがわかる。
【0071】
次に、図9(c)に示すように、縦シール3Tと交わる部分の剥離線Lの長さLc[mm] は、縦シール3Tの幅dを底辺とする二等辺三角形の斜辺部分Lcに相当し、剥離線長Lc[mm]は下記の関係式(式29〜式32)で示すことができる。
【数17】

【0072】
そして、d=Laより
【数18】

【0073】
よって、縦シール3Tと交わる部分の剥離線長Lc[mm] は、斜めシール3Sと交わる部分の剥離線長La[mm]の2倍であることがわかる。
【0074】
このように、剥離線Lのなす角度θが60°のとき、各シール形状による剥離線長(La、Lb、Lc)は、斜めシール3Sの剥離線長La[mm]に対して 、横シール3Yの剥離線長Lb=1.15La[mm]、縦シール3Tの剥離線長Lc=2La[mm]であり、斜めシール3Sの剥離線長Laに比べて、横シール3Y、縦シール3Tの何れにおいても剥離線長Lb、Lcが大きいことがわかる。
特に、縦シール3Tの場合、開封終了直前において、最も剥離線長Lcが大きいことがわかる。
【0075】
以上のように、シール部分3(縦シール3T、横シール3Y、斜めシール3S)と、剥離線Lとのなす角度θの変化によって、シール形状毎に剥離線長(La、Lb、Lc)が異なることがわかる。
そして、剥離線Lと斜めシール3Sとが直交することにより、常に剥離線長Laが斜めシール3Sの幅dと等しくなり、前記縦シール3Tや前記横シール3Yの場合と比較しても剥離線長Laが小さいことがわかる。
【0076】
よって、このような「剥離線長モデル」理論に基づき、本発明の易開封性包装体1においては、図10に示すように、シール部分3のシール形状を、常に剥離線Lと直交する斜めシール3Sとすることにより、前記剥離線長Laが常にシール幅dと等しくなり、前記横シール3Yや縦シール3Tの場合に比べて、シール部分3の剥離に要する剥離線長La[mm]を低下せしめることが可能である。
【0077】
以上のように、「2次元円周モデル」を用いてマクロ的視点から最大開封強度Fmaxを推測するとともに、「剥離線長モデル」を用いてミクロ的な視点から剥離線長Laを推測することにより、包装体1の開封に必要な開封強度Fを総合的に推測し、シール部分3の剥離開封に要する開封強度Fを低下せしめることが可能である。
【0078】
すなわち、より少ない力で包装体1の剥離開封を可能とするために、本発明の易開封性包装体1は、シール部分3のシール形状を、前記剥離線Lと直交する斜めシール3Sとすることにより、シール部分3の開封に必要な剥離線長を、横シール3Yや縦シール3Tに比べて低下せしめ、全体としての開封強度Fを大幅に低下させることが可能である。
さらには、最大開封強度Fmaxを要するシール部分3の最大剥離線Lmax部分に、前記斜めシール3Sを形成することにより、包装体1の最大開封強度Fmaxをも低下せしめることが可能である。
【0079】
このような理論に基づき、本発明の易開封性包装体1の好適な一例としての実施例を以下に示す。
(実施例1)
本発明の易開封性包装体1の一例としては、図11に示すように、前記剥離線Lが最大となる最大剥離線Lmax部分にのみ、前記斜めシール3Sを形成しても良い。
【0080】
これにより、包装体1の最大開封強度Fmaxを低下せしめることが可能である。さらには、水平方向の横シール3Y部分を残すことで、包装体1の密封性が高くなる効果がある。
【0081】
(実施例2)
また、本発明の易開封性包装体1のさらに別の一例としては、図12に示すように、シール部分3の開封開始箇所から最大剥離長Lmax部分にかけて、前記斜めシール3Sを形成してもよい。
【0082】
これにより、開封開始から最大開封強度Fmaxに至る開封強度Fを低下せしめることが可能であり、特に、少ない力で以ってシール部3の剥離を開始することが可能であるから、包装体1の開封フィーリングが向上する効果がある。さらには、水平方向の横シール3Yを残すことにより、包装体1の密封性を保持することが可能である。
【0083】
(実施例3)引っぱり試験による開け易さの検証
本発明の易開封性包装体1として、図13(a)に示すような、シール部分3の最大剥離線Lmax部分に前記斜めシール3Sを形成した包装体αを形成し、該包装体αと、図13(b)に示すような、通常の横シール3Yからなる包装体βとの、引っぱり試験による開封強度Fの比較を行なった。
【0084】
前記シール部分3は、延伸ナイロンフィルムを基材としヒートシール性を有するトーセロパックス株式会社製のイージーピール材LCMPS(三井・デュポンケミカル株式会社登録商標)をラミネートした積層フィルムを用いて、前記LCMPS側が内面に位置するように、シール部分3の高さが10mm、かつ剥離線Lと直交する溝(斜めシール部を形成するための溝)を施したシールヘッドを用いてシール部分3を形成し、本発明のサンプル(包装体α)を作製した。他方、図13(b)に示すように、比較例として、同条件かつシール部分3のみを水平方向に横シール3Yした包装体βを作成した。
【0085】
作製したサンプルαの背シール部分4と、表面Aのフィルムとをそれぞれチャックでつまみ、引っ張り試験機を用いて左右方向に剥離させ、最大開封強度Fmaxを測定した結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
表1に示すように、本発明のシール部分3を斜めシール3Sとしてなる包装体αは、比較例のシール部分3を横シール3Yとした包装体βに比べて、シール部分3の最大開封強度Fmaxを低く抑える事ができた。
【0088】
以上のように、本発明の易開封性包装体1は、剥離線Lと直交する斜めシール3Sを形成する簡単な構成により、シール部分3の開封強度Fを低下せしめ、より少ない力でシール部分3を剥離開封することが可能である。また、前記斜めシール3Sは、前記理論に基づくところの、最大開封強度Fmax箇所に形成することにより、シール部3の最大開封強度Fmaxを低下させることが可能である。
【0089】
なお、上記例では、シール部分3のシール形状を、常に剥離線Lと直交する斜めシール3Sとすることにより、シール部分3の剥離に要する剥離線長La[mm]を低下せしめる構成であるが、前記直交とは、概ね直交する状態を意味するものであって、必ずしも90°とするものではない。例えば、直交を90°の角度とした場合、常に90°±15°の範囲内であれば、上述同様の効果を奏することが可能である。
【0090】
また、前記斜めシール3Sは、前記鉛直線Hの左右対称に形成することが望ましく、剥離線Lが左右均等に及ぶため、シール部分3をよりスムーズかつ確実に剥離開封することが可能である。また、上記例では、斜めシール3Sを、包装体の上方シール部分3および下方シール部分3のそれぞれに形成した例を示したが、これに限らず、開封する方(上方)のシール部分3にのみ、前記斜めシール3Sを形成してもよい。
【0091】
また、包装体1の持ち位置O点としては、消費者によって多少の個人差があるが、20代〜40代の男女20人を対象に、背シール部分4を有するピロー袋状の包装体を剥離開封する際の持ち位置O点を調査した結果、概ねシール部分3の下辺3Bからさらに下方へと40mm以内の範囲内であることがわかった。
【0092】
よって、包装体1の持ち位置O点からシール部分3の下辺3Bまでの長さYを40mm以内として、前記斜めシール3Sを形成するとともに、図14に示すように、前記持ち位置O点を、印刷Pやエンボス等を用いて表示することにより、確実に包装体1の易開封効果を奏することが可能である。
【0093】
本発明の易開封性包装体1は、主に、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(NY)、アルミ箔(AL)、紙、セロハン等の単層またはそれらをラミネートした多層のフィルムをシーラントとした積層フィルムを基材フィルムとし、ヒートシール性を有する剥離開封可能なフィルムまたはワックスをシーラントとした積層フィルムを用いても良い。また、前記基材フィルムは、特に限定はしないが、低密度ポリエチレン(AL蒸着CPP)または、熱可塑性を有するワックスが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の易開封性包装体の一例を示す斜視図である。 (a)包装体の表面を示す図である。 (b)包装体の背面を示す図である。
【図2】包装体の開封時において、剥離力の推移を示すモデル図である。
【図3】包装体の開封時において、剥離力の推移が、r≦Xのとき、ピロー袋の剥離界面を示す説明図である。
【図4】包装体の開封時において、剥離力の推移が、r≧Xのとき、ピロー袋の剥離界面を示す説明図である。
【図5】包装体の開封時において、剥離線Lが最大となる場合を示す説明図である。
【図6】包装体の開封時において、剥離線の推移を示すモデル図である。
【図7】包装体のシール形状による剥離線長の推移を示す説明図である(剥離線Lの角度θが30°の時)。(a)斜めシールの場合を示す説明図である。(b)横シールの場合を示す説明図である。(c)縦シールの場合を示す説明図である。
【図8】包装体のシール形状による剥離線長の推移を示す説明図である(剥離線Lの角度θが45°の時)。(a)斜めシールの場合を示す説明図である。(b)横シールの場合を示す説明図である。(c)縦シールの場合を示す説明図である。
【図9】包装体のシール形状による剥離線長の推移を示す説明図である(剥離線Lの角度θが60°の時)。(a)斜めシールの場合を示す説明図である。(b)横シールの場合を示す説明図である。(c)縦シールの場合を示す説明図である。
【図10】本発明の易開封性包装体を示す説明図である。
【図11】本発明の易開封性包装体の一例を示す図である。(a)包装体の表面を示す図である。(b)包装体の背面を示す図である。
【図12】本発明の易開封性包装体のさらに別の例を示す図である。(a)包装体の表面を示す図である。(b)包装体の背面を示す図である。
【図13】本発明の易開封性包装体と、従来の包装体とを示す説明図である。(a)本発明の易開封性包装体を示す正面図である。(b)従来の包装体を示す正面図である。
【図14】本発明の易開封性包装体のさらに別の例を示す図である。
【図15】包装体の剥離開封時を示す説明図である。
【図16】従来の包装体を示す図である。(a)横シールを有する包装体を示す正面図である。(b)縦シールを有する包装体を示す正面図である。(c)ベタシールを有する包装体を示す正面図である。(d)ローレットシールを有する包装体を示す正面図である。
【符号の説明】
【0095】
1 易開封性包装体(包装体)
2 収容部
3 シール部分
3A シール部分の上辺
3B シール部分の下辺
4 背シール部分
C 仮想円周(円周)
D 円弧
H 鉛直線(中心鉛直線)
K 開口部
X 接点
O 持ち位置(O点)
3R ローレットシール
3M ベタシール
3S 斜めシール
3T 縦シール
3Y 横シール
w シール部分の高さ
x 持ち位置O点からX点までの長さ
y 持ち位置O点からシール部分3の下辺3Bまでの長さ
3a シール部分の上辺3Aと、仮想円周Cとの交点
3b シール部分の下辺3Bと、仮想円周Cとの交点
a 鉛直線Hから3aまでの長さ
b 鉛直線Hから3Bまでの長さ
d 各種シールの幅
L 剥離線(弦)(剥離界面の境界線)
A 包装体の表面
B 包装体の背面
P 印刷(持ち位置O点を示す印刷)
La 剥離線長(斜めシールと剥離線とが交わる部分の剥離線長)
Lb 剥離線長(横シールと剥離線とが交わる部分の剥離線長)
Lc 剥離線長(縦シールと剥離線とが交わる部分の剥離線長)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装体のシール部分を左右に剥離して開封可能な包装体において、前記シール部分は、シールが剥離する界面の境界線である剥離線と直交する斜めシールを有することを特徴とする、易開封性包装体。
【請求項2】
少なくとも前記斜めシールは、前記シール部分を剥離開封する際に、前記包装体の中心鉛直線上の前記包装体の持ち位置をO点とし、該O点を中心として前記シール部分の上辺と接する1点で接する仮想円周を描いたときに、前記仮想円周と前記シール部分の上辺とが接する1点と、前記仮想円周と前記シール部分の下辺とが接する2点と、を結ぶ仮想直線部分を含む箇所に形成されることを特徴とする、請求項1記載の易開封性包装体。
【請求項3】
前記斜めシールは、前記中心鉛直線の左右対称に形成されることを特徴とする、請求項1乃至2記載の易開封性包装体。
【請求項4】
前記持ち位置O点の位置が、印刷またはエンボスによって示されていることを特徴とする、請求項2乃至3記載の易開封性包装体。
【請求項5】
前記持ち位置O点は、前記包装体の中心鉛直線上の、前記シール部分の下辺から下方へと40mm以内に位置することを特徴とする、請求項2乃至4記載の易開封性包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−162664(P2008−162664A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355955(P2006−355955)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000006699)雪印乳業株式会社 (155)
【Fターム(参考)】