易開封性及びバリア性を有する蓋
【課題】バリア性、カップに対する安定したシール性、更には易開封性が従来品に対して格段に優れた易開封性及びバリア性を有する蓋を提供する。
【解決手段】最内層は少なくとも最下層にポリエチレンのシーラント層を備えた層で、この最内層の外側にポリエチレンの押出し樹脂フィルムを介してアルミニウム箔が貼着され、最内層には複数本のミシン目からなる強度弱点部11が中心から放射状に、かつ、放射方向の先端が蓋4の周縁4Aまで到達しない位置に設けられていて、使用時にはこのミシン目からなる強度弱点部11によって最内層を含みアルミニウム箔も破れることで開封し易くしたものである。
【解決手段】最内層は少なくとも最下層にポリエチレンのシーラント層を備えた層で、この最内層の外側にポリエチレンの押出し樹脂フィルムを介してアルミニウム箔が貼着され、最内層には複数本のミシン目からなる強度弱点部11が中心から放射状に、かつ、放射方向の先端が蓋4の周縁4Aまで到達しない位置に設けられていて、使用時にはこのミシン目からなる強度弱点部11によって最内層を含みアルミニウム箔も破れることで開封し易くしたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔とプラスチックシートの積層体から成り、例えば紙カップの開口にシールされる蓋に関する。更に詳しくは、紙カップの開口をシールしてこれを密閉でき、バリア性を保ち、しかも押し破ることによって容易に開封できる蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
破ることで開封する蓋は、例えばストローで突き刺して開封するものが多数提案され、また、市販されている。また、ミシン目や破断線、更にはカット線などを設けて開封の便を図る提案も多くなされている。
【0003】
ところで、一般的に、紙カップの蓋はシールをしたときに紙カップのフランジやカールの段差を密閉できるように、蓋の最内層のシール層を厚くし、段差が埋まるように設計されている。紙カップは、矩形の用紙を円筒形や扇形の用紙を逆円錐台形状に夫々巻いてその端同士を重合し、この重合部を糊代としている。したがって、開口にフランジやカールがある場合には、この重合部でどうしても段差を生じ、気密性保持の観点から問題がある。これを解消するため、蓋の最下層の樹脂層を厚くして、気密性を保つようにしている。更には、紙カップ用の蓋には、ホットメルトを最内層にする場合が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の蓋の内、ストローで突き刺して破る形態のものは、大きく開口できる構造ではない。また、破れ方によっては、蓋の破片が発生し、誤飲などの不測の事態をまねくおそれがある。更に、カップのフランジやカールの段差が埋まるように最内層の樹脂層を厚くした場合は、その厚みのために、破って開封することはなかなか困難である。更に、ホットメルトを採用すると、ホットメルトの清浄性に問題の生じるおそれがある(ホットメルトの滓が生じる)。また、高温に晒されると溶融して不用意に開封してしまい、しかもホットメルト特有の臭気が商品価値を損ねるという問題もあった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたもので、バリア性、カップに対する安定したシール性、更には易開封性が従来品に対して格段に優れた易開封性及びバリア性を有する蓋を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の技術的な課題を解決するために、本発明の請求項1記載の易開封性及びバリア性を有する蓋は、最内層は少なくとも最下層にポリエチレンのシーラント層を含む層で、この最内層の外側に接着層を介してバリア性のあるフィルム層が貼着され、前記最内層には複数本の強度弱点部が中心から放射状に、かつ、その放射方向の先端が蓋の周縁まで到達しない位置に設けられている易開封性及びバリア性を有する蓋である。
【0007】
少なくとも最下層がポリエチレンのシーラント層で構成される最内層は、このポリエチレンのシーラント層の単体若しくは積層体から形成することができる。また、最外層はアルミ箔などの金属箔単体若しくはプラスチックフィルム等との積層体で構成される金属箔層などのバリア性のあるフィルム層で形成される。この最外層が前記最内層の外側に、例えば押出しポリエチレン樹脂層などの接着層を介して、貼着されている。更に、前記最内層には中心から放射状に、望ましくは3〜10本の、ミシン目やカット線で形成される強度弱点部が設けられている。この強度弱点部は、前記最内層を貫通するように設けられている。この強度弱点部を設けることによって、使用時には前記最内層を含みバリア性のあ
るフィルム層も破れることで開封し易くしたものである。
【0008】
このような易開封性及びバリア性を有する蓋では、最外層のバリア性のあるフィルム層によってバリア性を上手く確保する。最内層に放射状に設けられた強度弱点部は、これを押し破ろうとする外圧が負荷されると、強度弱点部に沿って、中心から周辺に向けて複数の扇状に容易に分割されて押し破られる。また、この最内層はポリエチレンのシーラント層を有しているので、紙カップに用いると、そのフランジやカールに生じる段差を埋めて気密性を実現する。更には、ホットメルトを採用しないために、高温に晒されても溶融が生じず、また、特有の臭気は全くない。
【発明の効果】
【0009】
したがって、この発明は以下の効果を奏する。
本発明の易開封性及びバリア性を有する蓋は、外層のバリア性のあるフィルムで気密性を十分に確保できる。併せて、内側の層にミシン目やカット線などの強度弱点部をその中心から放射状に設けることによって、容易に押し破ることができる。併せて蓋の破片が生じるおそれも上手く解消できるようになった。また、最内層はポリエチレンのシーラント層を有するので、カップのフランジやカールにある段差の存在にかかわらず、これを上手く密閉でき、気密性を十分に確保できるようになった。更には、ホットメルトを採用しないために、安定したシール性が得られ、また、臭気の影響もなくすことができるようになった。
【0010】
特に、複数本の強度弱点部は、放射方向の先端が蓋の周縁まで到達しない位置に設けられている。
容器本体の落下によって蓋が容易に破断されてしまう現象は、落下衝撃で容器本体の開口部にこれを内側に撓ませる応力が働くことに起因していると考えられる。この開口部の撓みは、蓋を部分的に広げる力として働き、この広げる力が破断を引き起こすと考えられる。したがって、その衝撃の及ぶ範囲を除いて強度弱点部を設けることによって、落下時の蓋の強度弱点部が容易に破断するのを防止できるようになった。
【0011】
以上の構成に於いて、本発明は請求項4に記載のよう、最内層に紙層を備えた構成を採用できる。
強度弱点部によって蓋が押し破られる際に、この紙層で破断音が発生し、利用者に一層良好な開封感を与えることができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の易開封性及びバリア性を有する蓋の一実施形態の底面図である。
【図2】図1中A−A線に沿った断面図である。
【図3】本発明の易開封性及びバリア性を有する蓋の実施例2の構造を示す、図2に対応する断面図である。
【図4】図1の易開封性及びバリア性を有する蓋が適用される容器の一部を取り出して拡大表示した拡大図を含む全体分解斜視図である。
【図5】図3の容器が閉まっているときのこの容器の一端の断面図である。
【図6】容器本体と蓋並びに保護キャップの関係を示す別の構成の、図4に対応する断面図である。
【図7】容器本体の積層構造を示す要部の説明断面図である。
【図8】図1の易開封性及びバリア性を有する蓋の作用の説明図で、ジャーへ内容物を補充する前の蓋と容器とジャーの関係を示す斜視図である。
【図9】図6に示される作用の説明図で、要部の断面図である。
【図10】図1の易開封性及びバリア性を有する蓋の作用の説明図で、ジャーへ内容物を補充する途中の蓋と容器とジャーの関係を示す斜視図である。
【図11】図8に示される作用の説明図で、要部の断面図である。
【図12】強度弱点部を周縁まで設けた比較例としての蓋の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の易開封性及びバリア性を有する蓋を、インスタントコーヒーの詰め替え用容器1に適用した場合の実施の形態について、図面に従って詳細に説明する。
蓋の最内層はポリエチレンのシーラント層を含む樹脂層で、この最内層の樹脂層の外側に接着層を介してバリア性のあるフィルム層が貼着されている。更にこの最内層には、前記接着層に達するようにして、当該蓋の中心から放射状に複数本のミシン目やカット線から成る強度弱点部が設けられている。そして、この強度弱点部によって前記最内層を含みバリア性のあるフィルム層も破れることで開封し易くしたものである。
尚、この発明は、基本的には、紙カップにシールされる易開封性及びバリア性を有する蓋で、蓋を破ることによって開封する態様のもの全般に適用できる。したがって、以下の実施例に記載の構造に限定されるものではないことは改めて言うまでもない。
【実施例1】
【0014】
先ず、詰め替え用容器1は、図4、5に示すように、筒状の容器本体2、ホッパ3、易開封性及びバリア性を有する蓋4、保護キャップ5からなる。
【0015】
容器本体2は有底の円筒形で、基材には矩形の紙片が用いられる。この紙製の円筒はその最外層から内に向かって順に、ポリエチレン、紙、アルミニウム箔、ポリエチレンテレフタレート、更にポリエチレンが積層されてなる複合積層シートから成る。湿気や通気を一切遮断するためである。内面のポリエチレン樹脂は蓋4との接着性を確保するためである。処理の手段は公知の技術が採用される。例えば、ラミネートや塗着などの一般的な手法である。容器本体2を作成するには、前記のように表面処理された矩形の紙片を筒状に丸め、左右両サイドを重合させ、この重合部を糊代として適宜に接着する。接着手段は、接着剤を使用したり、熱融着させたり、適宜公知の手段が採用される。そして、上端は、図4、5に示すように、外方へ環状に巻込んだ環状巻込み部(以下単にカール部と言う)6が形成されている。したがって、このカール部6の上面で前記両サイドの重合部では、どうしても上下方向で段差6Aが生じる。この段差6Aは気密性を損なうために、その始末が重要である。
【0016】
この容器本体2の開口部2A内には、図4、5に示すように、円筒形のホッパ3が嵌め込まれている。このホッパ3は前記容器本体2と同一の素材或いは厚みを0.8mmに設定された高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンなど適宜の樹脂素材で形成されている。このホッパ3は周囲に、上端に外向きフランジを備えないストレートな立ち上がり壁3Aを備える。この立ち上がり壁3Aが、図5に示すように、その上端を容器本体2の開口部2Aの上端、つまりカール部6の上端面と同じ高さ位置にして、この開口部2A内に嵌め込まれている。また、この立ち上がり壁3Aの下端縁から一体に、上方かつ中央に向かって順次傾斜した漏斗3Bが備わっている。そしてこの漏斗3Bのテーパ角αは、少なくとも20°〜45°、好ましくは20°に設定される。
【0017】
ホッパ3は、その漏斗3Bの上端が前記立ち上がり壁3A並びに容器本体2の開口部2Aの上端とほぼ同じ高さ位置に位置合わせされて、この開口部2Aに嵌め込まれる。つまり略同一平面上に配置できるように位置合わせされる。このホッパ3は嵌め込まれた後、開口部2Aの内周面に適宜に固定される。固定の手段は熱融着、高周波溶着、接着剤使用など、適宜最も好ましい手段が採用される。
【0018】
前記ホッパ3の上端には易開封性及びバリア性を有する蓋4がシールされている。
この易開封性及びバリア性を有する蓋4は、図2に示すように、最内層7とその外側に
貼着される金属箔層10の複合シートが採用される。更に具体的には、前記最内層7はポリエチレンのシーラント層8を含む樹脂層である。この最内層7の樹脂層の外側に接着層(後述)を介して前記金属箔層10が貼着された複合シートが形成される。また、前記最内層7にはその中央から放射状に複数本(3〜10本)の強度弱点部11が設けられていて、この強度弱点部11によって前記最内層7を含み金属箔層10も容易に破れ、開封し易くしたものである。
【0019】
以上の構成を更に具体的に詳述する。
最内層7は最下層が100μmのポリエチレン(線状低密度ポリエチレン:LLDPE)のシーラント層8である。そして、このポリエチレンのシーラント層8の上面に15μmのポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム12を介して12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)9がラミネートされている。また、金属箔層10は7μmのアルミニウム箔13が採用されている。このアルミニウム箔13の下面に15μmのポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム14を介して前記最内層7のポリエチレンテレフタレート9が接着されて複合シートが形成されている。前記ポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム14は接着層として機能するものである。この複合シートの処理の手段は、上記以外にも公知の技術が採用され、ラミネートや塗着などの一般的な手法である。
尚、接着層はドライラミネートを包含する広義の接着剤若しくは前記押出しポリエチレン等を包含する。本発明ではこれを総称して広義に接着層と言う。また、ポリエチレンのシーラント層8にラミネートされる前記ポリエチレンテレフタレート(PET)9は必要に応じて設けられれば良い。
【0020】
上記ポリエチレンのシーラント層8は望ましくは30〜200μmの範囲、また、その上のポリエチレンの押出し樹脂フィルム12は5〜50μmの範囲の厚さで適宜に選定される。また、金属箔層10のアルミニウム箔13は6〜50μmの範囲、更にその下面にラミネートされるポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム14は5〜50μm範囲の厚さで適宜に選定される。
【0021】
以上の蓋4の全体形状は、図1、4、5示すように、前記容器本体2の開口部2Aとほぼ同径、具体的には約90mmφの円形を呈する。そして、その周縁部4Aが容器本体2の開口部2Aの上端、つまりカール部6の上端面に適宜に貼着される。一般的には熱融着される。但し、前記ホッパの立ち上がり壁3Aの上端面に貼着されても良いが、このホッパ3の前記漏斗3Bの上端縁、つまりは開口3B1の上縁に対しては、単に接触するのみの構成としてある。
【0022】
更に、この易開封性及びバリア性を有する蓋4には、図1、4に示すように、中心から端縁に向かって放射状にほぼ等間隔で、具体的には6本の強度弱点部11としてのミシン目又はカット線(図例ではミシン目)が設けられている。設ける範囲は、最内層7を貫通するように設けられ、更に前記ポリエチレンの押出し樹脂フィルム14に至るようにしても良い。この強度弱点部11であるミシン目又はカット線によって前記最内層7を含み金属箔層10も容易に破れ、開封し易くしたものである。
【0023】
そして、本発明に係る易開封性及びバリア性を有する蓋の特徴点は、特に、容器が落下した時などに蓋4が強度弱点部11で容易に破断する不測の事態を可及的に少なくできるように、蓋4に設けられた強度弱点部11の一例であるミシン目やカット線の設け方に工夫が加えられている。即ち、ミシン目やカット線が蓋4の端縁4Aに至らない範囲で設けられている点にある。
【0024】
つまり、落下した時に、蓋4が強度弱点部11から容易に破断してしまう現象を観察し
た結果、以下の事実が判明した。破断の発生は、落下の衝撃により容器本体2の開口部2Aが内側に歪み、蓋4を部分的に広げる力が働くことに起因していた。更に詳細に分析した結果、この開口部2Aが歪み、蓋4が広げられる力は、容器本体2の開口部2Aから蓋4の中心側に向かって40mmの範囲内、特に5〜20mmに集中していることもわかった。本発明は、この新知見を基に蓋4の改良を図ったものである。
【0025】
即ち、強度弱点部11の先端11Aが蓋4の周縁部4Aから5〜40mmを残して、その内側に設けられた構成を採用したことである。図1、4に示す例では、強度弱点部11の先端11Aと蓋4の周縁部4A(容器本体2の開口部2A)との間隔Lが15mmの場合を示している。
【0026】
この図1、4に示されるミシン目は、ミシン目の長さは9mm、つなぎは1mmに設定されている。尚、3本という本数は、本発明の所期の目的を達成するための最低限の本数である。また、蓋4の大きさにもよるが、望ましい上限は10本である。11本以上であると逆にこの蓋4の強度を弱めることが懸念され、好ましくない。理想的には3〜10本である。
【0027】
保護キャップ5は、前記容器本体2と同一の素材或いは厚みを0.8mm程度に設定された高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンなど適宜の樹脂が採用される。図4、5に示すように、前記容器本体2の開口部2Aに外嵌合し、前記蓋4を保護し、併せて内部を衛生的に保つように働く。
【0028】
また、この実施例1で用いられた容器本体2は、具体的には図7に示すように、ラミネート加工法により、〔容器外側〕印刷層18/紙層19(350g/m2 )/エチレンメタクリル酸重合術樹脂(EMAA)の接着剤層20(25μm)/アルミニウム層21(7μm)/PET接着剤層22(12μm)/低密度ポリエチレン層23(60μm)〔容器内側〕構成の紙容器用積層材料を作製して用いた。
【0029】
この発明による前記詰め替え用容器1の内部に粉状のインスタントコーヒーPを収容する作業は、一般に、ホッパ3の開口3B1を介して行われる。
【0030】
次に、このように構成された実施例1の詰め替え用容器1の使用の仕方について説明する。
先ず、保護キャップ5を取り外し、次いで図8並びに図9に示すように、容器本体2を逆さにし、ホッパ3の漏斗3Bを補充用の容器の一例であるジャー15の円筒状の口部15Aに内嵌合出来る位置に宛がう。容器本体2内のインスタントコーヒーPはホッパ3から漏斗3B内にも流下してきているが、蓋4によって保持されている。次いで、図10並びに図11に示すように、容器本体2に、その漏斗3Bをジャー15の口部15Aへ向かって押し込むように押圧力を負荷する。この押圧力は、ジャー15の口部15A、一般的には本体から円筒状に立ち上がる筒上部分が蓋4を押し破るための力として働く。すなわち、このジャー15の口部15Aが蓋4を押し上げて、これをホッパ3の立ち上がり壁3Aと漏斗3Bとの間の断面三角形上の空間S内に押し込む力として機能する。この押圧力が付加された蓋4は、強度弱点部11であるミシン目が放射状に設けられているために、たちまちの内に極めて容易にこのミシン目に沿って複数の分割片に破断分割される。同時にこの漏斗3Bはジャー15の口部15A内に入り込む。その結果、前記ホッパ3の漏斗3Bの開口3B1が開放され、容器本体2内のインスタントコーヒーPが、ホッパ3の漏斗3Bによって、センターへと案内されつつ、一挙にジャー15内へ案内流下される。ジャー15へ補充を終えたこの詰め替え用容器1は破棄される。図8、10中2Bは容器本体2の底部である。
【0031】
したがって、ジャー15の口部15Aに内嵌合された漏斗3BはインスタントコーヒーPをジャー15の外部へ零れ落とすことも無くジャー15内へ案内流下させる。また、外気に必要以上触れさせるおそれもなく、したがって香りや風味が損なわれるおそれも可及的に少なくするように働く。
【0032】
出来上がった蓋の性能試験を行った結果、中央部分が上手く押し破られた。因みに押し破り強度は100N以下であった。また、紙カップを用いた開口部2Aの段差6Aにおける浸透液のチェック試験では、漏れの発生が全く見られなかった。更に、高温保存時にも蓋が紙カップの開口部2Aから剥離する例は見られなかった。また、蓋全体のバリア性はアルミ蓋と遜色なく好ましい結果を得た。ホットメルト蓋と比較して臭気の発生は全くなかった。
【0033】
このように、蓋4の最内層7がポリエチレン(線状低密度ポリエチレン:LLDPE)のシーラント層8を備えているために、紙カップ特有の口部の段差6Aの存在にかかわりなく、蓋4で直接紙カップの開口部をシールした場合でも、これを上手くシールでき、気密性を十分に確保できるようになった。更には、ホットメルトを採用しないために、安定したシール性が得られ、また、臭気の影響もなくすことができた。
【0034】
更に、本発明の優位性を確認するために、以下の落下耐性試験を行った。
試験対象品として、先ず本発明に係る、図1に示した、強度弱点部の先端11Aが蓋4の周縁4Aよりも中心側に15mm偏倚した位置の範囲内に収められている構造の蓋4と、図12に示した強度弱点部11が蓋4の周縁4Aまで設けられた比較例構造の蓋4を作製し、夫々の落下耐性の比較検討を以下の条件で行った。
尚、他の構成部品の形状や素材は共に同じで、上記実施例に示す構成を採用した。
【0035】
先ず、内容物を120gm入れ、夫々容器の開口部2Aに図1に示す本発明に係る構造の蓋4をシールしたものを10個、また、図12に示す比較例構造の蓋4をシールしたものを5つ作製した。これらの試験体を容器の開口部2Aが斜め45度下向きとなる姿勢で、図1に示した本発明に係る構造のものの内の5つと図12に示した比較例構造のものを地上60cmから、また、図1に示した本発明に係る構造のものの内の残りの5つを地上100cmから夫々落下させた。
結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
試験結果から理解されるように、先ず図12に示される比較例構造では、4例が1度から2度の落下に耐え、1例のみが1度の落下で強度弱点部11が破断した。これに対して、図1に示した本発明に係る構造は、地上高60cmから落下した場合では、5例ともが5回の落下に耐えて1例の破断も生じなかった。また、地上高100cmの場合も3例が5度の落下に耐え、残る2例が一つは2回、他の一つは4回と、何れも所期の目的を充分に達成することが分かった。この結果からも、本発明による蓋4の落下耐性の優位性が証明された。
【実施例2】
【0038】
次に、本発明に係る易開封性及びバリア性を有する蓋の実施例2に係る構造を、図3の記載を参照しながら、以下説明する。
尚、前記実施例1と同様の構成については同じ符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0039】
この実施例2の構成の特徴点は、蓋4が、前記実施例1に示した最内層7のポリエチレンテレフタレート9の上面に更に紙層16を備えた点である。実施例1と同等の効果を得ることができる上に、蓋の開封性をより分かり易くしたものである。
【0040】
具体的には、前記最内層7は、前述の実施例1に示したポリエチレンテレフタレート9の上面に接着剤17で紙層16が一体に接着されて形成されている。この紙層16には坪量40g/m2 の上質紙が用いられる。前記接着剤17はドライラミネート用で、エステル−ウレタン系2液硬化型のものが採用されている。尚、前記紙層16に採用される上質紙は、望ましくは坪量15〜150g/m2 の範囲から適宜のものが選定される。そして、前記アルミニウム箔13の下面にポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム14を介して前記最内層7の前記紙層16が接着されて複合シートに形成される。
【0041】
また、前記強度弱点部11であるミシン目又はカット線はこの紙層16の上面近傍まで達するように設けられている。
【0042】
中間に紙層16が設けられているために、強度弱点部11によって蓋4が押し破られる際に、この紙層16で破断音が発生し、利用者に一層良好な開封感を与えることができる。更には、ミシン目からなる強度弱点部11を形成するに当っての加工の安定性が一層向上するという効果もある。
【0043】
尚、前記容器本体2は、図6に示すように、開口部2Aの上端に外向きに張り出して形成されているフランジ2Bを備える構造も採用できる。したがって、蓋4の周縁部4Aもこのフランジ2Bの上端面に適宜に貼着される。一般的には熱融着される。また、図中5は保護キャップで、天板5Aの周囲から下方に一体に垂下される周壁5Bの下端にはフランジ2Bの下部周囲に係合する嵌合突起5Cが一体に設けられている。この嵌合突起5Cは、図例では全周にわたって一連に設けられた例を示しているが、その他にも、図示しないが、周方向部分的設けられても良く、更には周方向に等間隔で3〜4個設けられるものであっても良い。
【0044】
更に、この図6に採用される容器本体2は、先の実施例と同様でホッパ3を備える構成とした。しかし、種々実験の結果、ホッパ3を備えていない容器本体2と蓋4のみの構成であっても、内容物によっては移し替え上、特段に不都合の生じるケースが少なく、上記実施例と同等の効果を奏しえられることが分かった。
【0045】
また、前記実施例に示す前記立ち上がり壁3Aの上端には、図示しないが、容器本体2の開口縁に、気密的に当接する外向きのフランジが備わっていてもよい。蓋4そのものの上述した実施例に言う開封性、高温保持性、バリア性、臭気、開封感、更には強度弱点部11の加工安定性等の利点は全く削がれることはなく、同等の効果を発揮できる。
【0046】
前記実施例に示される蓋4のバリア材としてはアルミニウム箔が採用されている。しかし、これに代えて、例えばアルミ蒸着フィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA)などのバリア性フィルム、更にはポリ酢酸ビニル(PVAC)やポリビニルアルコールコートフィルムなどのバリア性コーティングフィルム
を採用できる。
【0047】
また、以上の実施例では内容物としてインスタンの粉コーヒーを対象としているが、その他にも食品、非食品の他の粉体に適用できる。例えば、水溶性のミルク(粉ミルク)、ココア、茶、またはこれらの組み合わせの粉など。更には乾燥マッシュポテトや他の乾燥食品、ソースまたはグレービー粉、スープ粉などの他に複写機のトナーなどである。
【0048】
また、ジャー15に替わるものとして、コーヒー作成装置のコーヒー粉タンク、更には複写機のトナーの補充容器にも適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1…詰め替え用容器
2…容器本体
2A…開口部
3…ホッパ
4…蓋
4A…周縁
5…保護キャップ
6…カール
6A…段差
7…最内層
8…シーラント層
10…金属箔層
11…強度弱点部
11A…先端
13…アルミニウム箔
14…接着層
15…ジャー
16…紙層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】登録実用新案第3035303号公報
【特許文献2】実開平06−085295号公報
【特許文献3】特開2002−104515号公報
【特許文献4】特開平09―110077号公報
【特許文献5】特開平06―001375号公報
【特許文献6】実開平07−017762号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔とプラスチックシートの積層体から成り、例えば紙カップの開口にシールされる蓋に関する。更に詳しくは、紙カップの開口をシールしてこれを密閉でき、バリア性を保ち、しかも押し破ることによって容易に開封できる蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
破ることで開封する蓋は、例えばストローで突き刺して開封するものが多数提案され、また、市販されている。また、ミシン目や破断線、更にはカット線などを設けて開封の便を図る提案も多くなされている。
【0003】
ところで、一般的に、紙カップの蓋はシールをしたときに紙カップのフランジやカールの段差を密閉できるように、蓋の最内層のシール層を厚くし、段差が埋まるように設計されている。紙カップは、矩形の用紙を円筒形や扇形の用紙を逆円錐台形状に夫々巻いてその端同士を重合し、この重合部を糊代としている。したがって、開口にフランジやカールがある場合には、この重合部でどうしても段差を生じ、気密性保持の観点から問題がある。これを解消するため、蓋の最下層の樹脂層を厚くして、気密性を保つようにしている。更には、紙カップ用の蓋には、ホットメルトを最内層にする場合が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の蓋の内、ストローで突き刺して破る形態のものは、大きく開口できる構造ではない。また、破れ方によっては、蓋の破片が発生し、誤飲などの不測の事態をまねくおそれがある。更に、カップのフランジやカールの段差が埋まるように最内層の樹脂層を厚くした場合は、その厚みのために、破って開封することはなかなか困難である。更に、ホットメルトを採用すると、ホットメルトの清浄性に問題の生じるおそれがある(ホットメルトの滓が生じる)。また、高温に晒されると溶融して不用意に開封してしまい、しかもホットメルト特有の臭気が商品価値を損ねるという問題もあった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたもので、バリア性、カップに対する安定したシール性、更には易開封性が従来品に対して格段に優れた易開封性及びバリア性を有する蓋を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の技術的な課題を解決するために、本発明の請求項1記載の易開封性及びバリア性を有する蓋は、最内層は少なくとも最下層にポリエチレンのシーラント層を含む層で、この最内層の外側に接着層を介してバリア性のあるフィルム層が貼着され、前記最内層には複数本の強度弱点部が中心から放射状に、かつ、その放射方向の先端が蓋の周縁まで到達しない位置に設けられている易開封性及びバリア性を有する蓋である。
【0007】
少なくとも最下層がポリエチレンのシーラント層で構成される最内層は、このポリエチレンのシーラント層の単体若しくは積層体から形成することができる。また、最外層はアルミ箔などの金属箔単体若しくはプラスチックフィルム等との積層体で構成される金属箔層などのバリア性のあるフィルム層で形成される。この最外層が前記最内層の外側に、例えば押出しポリエチレン樹脂層などの接着層を介して、貼着されている。更に、前記最内層には中心から放射状に、望ましくは3〜10本の、ミシン目やカット線で形成される強度弱点部が設けられている。この強度弱点部は、前記最内層を貫通するように設けられている。この強度弱点部を設けることによって、使用時には前記最内層を含みバリア性のあ
るフィルム層も破れることで開封し易くしたものである。
【0008】
このような易開封性及びバリア性を有する蓋では、最外層のバリア性のあるフィルム層によってバリア性を上手く確保する。最内層に放射状に設けられた強度弱点部は、これを押し破ろうとする外圧が負荷されると、強度弱点部に沿って、中心から周辺に向けて複数の扇状に容易に分割されて押し破られる。また、この最内層はポリエチレンのシーラント層を有しているので、紙カップに用いると、そのフランジやカールに生じる段差を埋めて気密性を実現する。更には、ホットメルトを採用しないために、高温に晒されても溶融が生じず、また、特有の臭気は全くない。
【発明の効果】
【0009】
したがって、この発明は以下の効果を奏する。
本発明の易開封性及びバリア性を有する蓋は、外層のバリア性のあるフィルムで気密性を十分に確保できる。併せて、内側の層にミシン目やカット線などの強度弱点部をその中心から放射状に設けることによって、容易に押し破ることができる。併せて蓋の破片が生じるおそれも上手く解消できるようになった。また、最内層はポリエチレンのシーラント層を有するので、カップのフランジやカールにある段差の存在にかかわらず、これを上手く密閉でき、気密性を十分に確保できるようになった。更には、ホットメルトを採用しないために、安定したシール性が得られ、また、臭気の影響もなくすことができるようになった。
【0010】
特に、複数本の強度弱点部は、放射方向の先端が蓋の周縁まで到達しない位置に設けられている。
容器本体の落下によって蓋が容易に破断されてしまう現象は、落下衝撃で容器本体の開口部にこれを内側に撓ませる応力が働くことに起因していると考えられる。この開口部の撓みは、蓋を部分的に広げる力として働き、この広げる力が破断を引き起こすと考えられる。したがって、その衝撃の及ぶ範囲を除いて強度弱点部を設けることによって、落下時の蓋の強度弱点部が容易に破断するのを防止できるようになった。
【0011】
以上の構成に於いて、本発明は請求項4に記載のよう、最内層に紙層を備えた構成を採用できる。
強度弱点部によって蓋が押し破られる際に、この紙層で破断音が発生し、利用者に一層良好な開封感を与えることができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の易開封性及びバリア性を有する蓋の一実施形態の底面図である。
【図2】図1中A−A線に沿った断面図である。
【図3】本発明の易開封性及びバリア性を有する蓋の実施例2の構造を示す、図2に対応する断面図である。
【図4】図1の易開封性及びバリア性を有する蓋が適用される容器の一部を取り出して拡大表示した拡大図を含む全体分解斜視図である。
【図5】図3の容器が閉まっているときのこの容器の一端の断面図である。
【図6】容器本体と蓋並びに保護キャップの関係を示す別の構成の、図4に対応する断面図である。
【図7】容器本体の積層構造を示す要部の説明断面図である。
【図8】図1の易開封性及びバリア性を有する蓋の作用の説明図で、ジャーへ内容物を補充する前の蓋と容器とジャーの関係を示す斜視図である。
【図9】図6に示される作用の説明図で、要部の断面図である。
【図10】図1の易開封性及びバリア性を有する蓋の作用の説明図で、ジャーへ内容物を補充する途中の蓋と容器とジャーの関係を示す斜視図である。
【図11】図8に示される作用の説明図で、要部の断面図である。
【図12】強度弱点部を周縁まで設けた比較例としての蓋の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の易開封性及びバリア性を有する蓋を、インスタントコーヒーの詰め替え用容器1に適用した場合の実施の形態について、図面に従って詳細に説明する。
蓋の最内層はポリエチレンのシーラント層を含む樹脂層で、この最内層の樹脂層の外側に接着層を介してバリア性のあるフィルム層が貼着されている。更にこの最内層には、前記接着層に達するようにして、当該蓋の中心から放射状に複数本のミシン目やカット線から成る強度弱点部が設けられている。そして、この強度弱点部によって前記最内層を含みバリア性のあるフィルム層も破れることで開封し易くしたものである。
尚、この発明は、基本的には、紙カップにシールされる易開封性及びバリア性を有する蓋で、蓋を破ることによって開封する態様のもの全般に適用できる。したがって、以下の実施例に記載の構造に限定されるものではないことは改めて言うまでもない。
【実施例1】
【0014】
先ず、詰め替え用容器1は、図4、5に示すように、筒状の容器本体2、ホッパ3、易開封性及びバリア性を有する蓋4、保護キャップ5からなる。
【0015】
容器本体2は有底の円筒形で、基材には矩形の紙片が用いられる。この紙製の円筒はその最外層から内に向かって順に、ポリエチレン、紙、アルミニウム箔、ポリエチレンテレフタレート、更にポリエチレンが積層されてなる複合積層シートから成る。湿気や通気を一切遮断するためである。内面のポリエチレン樹脂は蓋4との接着性を確保するためである。処理の手段は公知の技術が採用される。例えば、ラミネートや塗着などの一般的な手法である。容器本体2を作成するには、前記のように表面処理された矩形の紙片を筒状に丸め、左右両サイドを重合させ、この重合部を糊代として適宜に接着する。接着手段は、接着剤を使用したり、熱融着させたり、適宜公知の手段が採用される。そして、上端は、図4、5に示すように、外方へ環状に巻込んだ環状巻込み部(以下単にカール部と言う)6が形成されている。したがって、このカール部6の上面で前記両サイドの重合部では、どうしても上下方向で段差6Aが生じる。この段差6Aは気密性を損なうために、その始末が重要である。
【0016】
この容器本体2の開口部2A内には、図4、5に示すように、円筒形のホッパ3が嵌め込まれている。このホッパ3は前記容器本体2と同一の素材或いは厚みを0.8mmに設定された高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンなど適宜の樹脂素材で形成されている。このホッパ3は周囲に、上端に外向きフランジを備えないストレートな立ち上がり壁3Aを備える。この立ち上がり壁3Aが、図5に示すように、その上端を容器本体2の開口部2Aの上端、つまりカール部6の上端面と同じ高さ位置にして、この開口部2A内に嵌め込まれている。また、この立ち上がり壁3Aの下端縁から一体に、上方かつ中央に向かって順次傾斜した漏斗3Bが備わっている。そしてこの漏斗3Bのテーパ角αは、少なくとも20°〜45°、好ましくは20°に設定される。
【0017】
ホッパ3は、その漏斗3Bの上端が前記立ち上がり壁3A並びに容器本体2の開口部2Aの上端とほぼ同じ高さ位置に位置合わせされて、この開口部2Aに嵌め込まれる。つまり略同一平面上に配置できるように位置合わせされる。このホッパ3は嵌め込まれた後、開口部2Aの内周面に適宜に固定される。固定の手段は熱融着、高周波溶着、接着剤使用など、適宜最も好ましい手段が採用される。
【0018】
前記ホッパ3の上端には易開封性及びバリア性を有する蓋4がシールされている。
この易開封性及びバリア性を有する蓋4は、図2に示すように、最内層7とその外側に
貼着される金属箔層10の複合シートが採用される。更に具体的には、前記最内層7はポリエチレンのシーラント層8を含む樹脂層である。この最内層7の樹脂層の外側に接着層(後述)を介して前記金属箔層10が貼着された複合シートが形成される。また、前記最内層7にはその中央から放射状に複数本(3〜10本)の強度弱点部11が設けられていて、この強度弱点部11によって前記最内層7を含み金属箔層10も容易に破れ、開封し易くしたものである。
【0019】
以上の構成を更に具体的に詳述する。
最内層7は最下層が100μmのポリエチレン(線状低密度ポリエチレン:LLDPE)のシーラント層8である。そして、このポリエチレンのシーラント層8の上面に15μmのポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム12を介して12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)9がラミネートされている。また、金属箔層10は7μmのアルミニウム箔13が採用されている。このアルミニウム箔13の下面に15μmのポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム14を介して前記最内層7のポリエチレンテレフタレート9が接着されて複合シートが形成されている。前記ポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム14は接着層として機能するものである。この複合シートの処理の手段は、上記以外にも公知の技術が採用され、ラミネートや塗着などの一般的な手法である。
尚、接着層はドライラミネートを包含する広義の接着剤若しくは前記押出しポリエチレン等を包含する。本発明ではこれを総称して広義に接着層と言う。また、ポリエチレンのシーラント層8にラミネートされる前記ポリエチレンテレフタレート(PET)9は必要に応じて設けられれば良い。
【0020】
上記ポリエチレンのシーラント層8は望ましくは30〜200μmの範囲、また、その上のポリエチレンの押出し樹脂フィルム12は5〜50μmの範囲の厚さで適宜に選定される。また、金属箔層10のアルミニウム箔13は6〜50μmの範囲、更にその下面にラミネートされるポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム14は5〜50μm範囲の厚さで適宜に選定される。
【0021】
以上の蓋4の全体形状は、図1、4、5示すように、前記容器本体2の開口部2Aとほぼ同径、具体的には約90mmφの円形を呈する。そして、その周縁部4Aが容器本体2の開口部2Aの上端、つまりカール部6の上端面に適宜に貼着される。一般的には熱融着される。但し、前記ホッパの立ち上がり壁3Aの上端面に貼着されても良いが、このホッパ3の前記漏斗3Bの上端縁、つまりは開口3B1の上縁に対しては、単に接触するのみの構成としてある。
【0022】
更に、この易開封性及びバリア性を有する蓋4には、図1、4に示すように、中心から端縁に向かって放射状にほぼ等間隔で、具体的には6本の強度弱点部11としてのミシン目又はカット線(図例ではミシン目)が設けられている。設ける範囲は、最内層7を貫通するように設けられ、更に前記ポリエチレンの押出し樹脂フィルム14に至るようにしても良い。この強度弱点部11であるミシン目又はカット線によって前記最内層7を含み金属箔層10も容易に破れ、開封し易くしたものである。
【0023】
そして、本発明に係る易開封性及びバリア性を有する蓋の特徴点は、特に、容器が落下した時などに蓋4が強度弱点部11で容易に破断する不測の事態を可及的に少なくできるように、蓋4に設けられた強度弱点部11の一例であるミシン目やカット線の設け方に工夫が加えられている。即ち、ミシン目やカット線が蓋4の端縁4Aに至らない範囲で設けられている点にある。
【0024】
つまり、落下した時に、蓋4が強度弱点部11から容易に破断してしまう現象を観察し
た結果、以下の事実が判明した。破断の発生は、落下の衝撃により容器本体2の開口部2Aが内側に歪み、蓋4を部分的に広げる力が働くことに起因していた。更に詳細に分析した結果、この開口部2Aが歪み、蓋4が広げられる力は、容器本体2の開口部2Aから蓋4の中心側に向かって40mmの範囲内、特に5〜20mmに集中していることもわかった。本発明は、この新知見を基に蓋4の改良を図ったものである。
【0025】
即ち、強度弱点部11の先端11Aが蓋4の周縁部4Aから5〜40mmを残して、その内側に設けられた構成を採用したことである。図1、4に示す例では、強度弱点部11の先端11Aと蓋4の周縁部4A(容器本体2の開口部2A)との間隔Lが15mmの場合を示している。
【0026】
この図1、4に示されるミシン目は、ミシン目の長さは9mm、つなぎは1mmに設定されている。尚、3本という本数は、本発明の所期の目的を達成するための最低限の本数である。また、蓋4の大きさにもよるが、望ましい上限は10本である。11本以上であると逆にこの蓋4の強度を弱めることが懸念され、好ましくない。理想的には3〜10本である。
【0027】
保護キャップ5は、前記容器本体2と同一の素材或いは厚みを0.8mm程度に設定された高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンなど適宜の樹脂が採用される。図4、5に示すように、前記容器本体2の開口部2Aに外嵌合し、前記蓋4を保護し、併せて内部を衛生的に保つように働く。
【0028】
また、この実施例1で用いられた容器本体2は、具体的には図7に示すように、ラミネート加工法により、〔容器外側〕印刷層18/紙層19(350g/m2 )/エチレンメタクリル酸重合術樹脂(EMAA)の接着剤層20(25μm)/アルミニウム層21(7μm)/PET接着剤層22(12μm)/低密度ポリエチレン層23(60μm)〔容器内側〕構成の紙容器用積層材料を作製して用いた。
【0029】
この発明による前記詰め替え用容器1の内部に粉状のインスタントコーヒーPを収容する作業は、一般に、ホッパ3の開口3B1を介して行われる。
【0030】
次に、このように構成された実施例1の詰め替え用容器1の使用の仕方について説明する。
先ず、保護キャップ5を取り外し、次いで図8並びに図9に示すように、容器本体2を逆さにし、ホッパ3の漏斗3Bを補充用の容器の一例であるジャー15の円筒状の口部15Aに内嵌合出来る位置に宛がう。容器本体2内のインスタントコーヒーPはホッパ3から漏斗3B内にも流下してきているが、蓋4によって保持されている。次いで、図10並びに図11に示すように、容器本体2に、その漏斗3Bをジャー15の口部15Aへ向かって押し込むように押圧力を負荷する。この押圧力は、ジャー15の口部15A、一般的には本体から円筒状に立ち上がる筒上部分が蓋4を押し破るための力として働く。すなわち、このジャー15の口部15Aが蓋4を押し上げて、これをホッパ3の立ち上がり壁3Aと漏斗3Bとの間の断面三角形上の空間S内に押し込む力として機能する。この押圧力が付加された蓋4は、強度弱点部11であるミシン目が放射状に設けられているために、たちまちの内に極めて容易にこのミシン目に沿って複数の分割片に破断分割される。同時にこの漏斗3Bはジャー15の口部15A内に入り込む。その結果、前記ホッパ3の漏斗3Bの開口3B1が開放され、容器本体2内のインスタントコーヒーPが、ホッパ3の漏斗3Bによって、センターへと案内されつつ、一挙にジャー15内へ案内流下される。ジャー15へ補充を終えたこの詰め替え用容器1は破棄される。図8、10中2Bは容器本体2の底部である。
【0031】
したがって、ジャー15の口部15Aに内嵌合された漏斗3BはインスタントコーヒーPをジャー15の外部へ零れ落とすことも無くジャー15内へ案内流下させる。また、外気に必要以上触れさせるおそれもなく、したがって香りや風味が損なわれるおそれも可及的に少なくするように働く。
【0032】
出来上がった蓋の性能試験を行った結果、中央部分が上手く押し破られた。因みに押し破り強度は100N以下であった。また、紙カップを用いた開口部2Aの段差6Aにおける浸透液のチェック試験では、漏れの発生が全く見られなかった。更に、高温保存時にも蓋が紙カップの開口部2Aから剥離する例は見られなかった。また、蓋全体のバリア性はアルミ蓋と遜色なく好ましい結果を得た。ホットメルト蓋と比較して臭気の発生は全くなかった。
【0033】
このように、蓋4の最内層7がポリエチレン(線状低密度ポリエチレン:LLDPE)のシーラント層8を備えているために、紙カップ特有の口部の段差6Aの存在にかかわりなく、蓋4で直接紙カップの開口部をシールした場合でも、これを上手くシールでき、気密性を十分に確保できるようになった。更には、ホットメルトを採用しないために、安定したシール性が得られ、また、臭気の影響もなくすことができた。
【0034】
更に、本発明の優位性を確認するために、以下の落下耐性試験を行った。
試験対象品として、先ず本発明に係る、図1に示した、強度弱点部の先端11Aが蓋4の周縁4Aよりも中心側に15mm偏倚した位置の範囲内に収められている構造の蓋4と、図12に示した強度弱点部11が蓋4の周縁4Aまで設けられた比較例構造の蓋4を作製し、夫々の落下耐性の比較検討を以下の条件で行った。
尚、他の構成部品の形状や素材は共に同じで、上記実施例に示す構成を採用した。
【0035】
先ず、内容物を120gm入れ、夫々容器の開口部2Aに図1に示す本発明に係る構造の蓋4をシールしたものを10個、また、図12に示す比較例構造の蓋4をシールしたものを5つ作製した。これらの試験体を容器の開口部2Aが斜め45度下向きとなる姿勢で、図1に示した本発明に係る構造のものの内の5つと図12に示した比較例構造のものを地上60cmから、また、図1に示した本発明に係る構造のものの内の残りの5つを地上100cmから夫々落下させた。
結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
試験結果から理解されるように、先ず図12に示される比較例構造では、4例が1度から2度の落下に耐え、1例のみが1度の落下で強度弱点部11が破断した。これに対して、図1に示した本発明に係る構造は、地上高60cmから落下した場合では、5例ともが5回の落下に耐えて1例の破断も生じなかった。また、地上高100cmの場合も3例が5度の落下に耐え、残る2例が一つは2回、他の一つは4回と、何れも所期の目的を充分に達成することが分かった。この結果からも、本発明による蓋4の落下耐性の優位性が証明された。
【実施例2】
【0038】
次に、本発明に係る易開封性及びバリア性を有する蓋の実施例2に係る構造を、図3の記載を参照しながら、以下説明する。
尚、前記実施例1と同様の構成については同じ符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0039】
この実施例2の構成の特徴点は、蓋4が、前記実施例1に示した最内層7のポリエチレンテレフタレート9の上面に更に紙層16を備えた点である。実施例1と同等の効果を得ることができる上に、蓋の開封性をより分かり易くしたものである。
【0040】
具体的には、前記最内層7は、前述の実施例1に示したポリエチレンテレフタレート9の上面に接着剤17で紙層16が一体に接着されて形成されている。この紙層16には坪量40g/m2 の上質紙が用いられる。前記接着剤17はドライラミネート用で、エステル−ウレタン系2液硬化型のものが採用されている。尚、前記紙層16に採用される上質紙は、望ましくは坪量15〜150g/m2 の範囲から適宜のものが選定される。そして、前記アルミニウム箔13の下面にポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム14を介して前記最内層7の前記紙層16が接着されて複合シートに形成される。
【0041】
また、前記強度弱点部11であるミシン目又はカット線はこの紙層16の上面近傍まで達するように設けられている。
【0042】
中間に紙層16が設けられているために、強度弱点部11によって蓋4が押し破られる際に、この紙層16で破断音が発生し、利用者に一層良好な開封感を与えることができる。更には、ミシン目からなる強度弱点部11を形成するに当っての加工の安定性が一層向上するという効果もある。
【0043】
尚、前記容器本体2は、図6に示すように、開口部2Aの上端に外向きに張り出して形成されているフランジ2Bを備える構造も採用できる。したがって、蓋4の周縁部4Aもこのフランジ2Bの上端面に適宜に貼着される。一般的には熱融着される。また、図中5は保護キャップで、天板5Aの周囲から下方に一体に垂下される周壁5Bの下端にはフランジ2Bの下部周囲に係合する嵌合突起5Cが一体に設けられている。この嵌合突起5Cは、図例では全周にわたって一連に設けられた例を示しているが、その他にも、図示しないが、周方向部分的設けられても良く、更には周方向に等間隔で3〜4個設けられるものであっても良い。
【0044】
更に、この図6に採用される容器本体2は、先の実施例と同様でホッパ3を備える構成とした。しかし、種々実験の結果、ホッパ3を備えていない容器本体2と蓋4のみの構成であっても、内容物によっては移し替え上、特段に不都合の生じるケースが少なく、上記実施例と同等の効果を奏しえられることが分かった。
【0045】
また、前記実施例に示す前記立ち上がり壁3Aの上端には、図示しないが、容器本体2の開口縁に、気密的に当接する外向きのフランジが備わっていてもよい。蓋4そのものの上述した実施例に言う開封性、高温保持性、バリア性、臭気、開封感、更には強度弱点部11の加工安定性等の利点は全く削がれることはなく、同等の効果を発揮できる。
【0046】
前記実施例に示される蓋4のバリア材としてはアルミニウム箔が採用されている。しかし、これに代えて、例えばアルミ蒸着フィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA)などのバリア性フィルム、更にはポリ酢酸ビニル(PVAC)やポリビニルアルコールコートフィルムなどのバリア性コーティングフィルム
を採用できる。
【0047】
また、以上の実施例では内容物としてインスタンの粉コーヒーを対象としているが、その他にも食品、非食品の他の粉体に適用できる。例えば、水溶性のミルク(粉ミルク)、ココア、茶、またはこれらの組み合わせの粉など。更には乾燥マッシュポテトや他の乾燥食品、ソースまたはグレービー粉、スープ粉などの他に複写機のトナーなどである。
【0048】
また、ジャー15に替わるものとして、コーヒー作成装置のコーヒー粉タンク、更には複写機のトナーの補充容器にも適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1…詰め替え用容器
2…容器本体
2A…開口部
3…ホッパ
4…蓋
4A…周縁
5…保護キャップ
6…カール
6A…段差
7…最内層
8…シーラント層
10…金属箔層
11…強度弱点部
11A…先端
13…アルミニウム箔
14…接着層
15…ジャー
16…紙層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】登録実用新案第3035303号公報
【特許文献2】実開平06−085295号公報
【特許文献3】特開2002−104515号公報
【特許文献4】特開平09―110077号公報
【特許文献5】特開平06―001375号公報
【特許文献6】実開平07−017762号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最内層は少なくとも最下層にポリエチレンのシーラント層を含む層で、この最内層の外側に接着層を介してバリア性のあるフィルム層が貼着され、前記最内層には複数本の強度弱点部が中心から放射状に、かつ、その放射方向の先端が蓋の周縁まで到達しない位置に設けられている易開封性及びバリア性を有する蓋。
【請求項2】
強度弱点部はミシン目又はカット線のいずれかである請求項1記載の易開封性及びバリア性を有する蓋。
【請求項3】
強度弱点部は、中心から端縁に向かって放射状に同一の中心角をもって少なくとも3本以上設けられている請求項1又は請求項2の何れかに記載の易開封性及びバリア性を有する蓋。
【請求項4】
最内層に紙層を備えた請求項1〜4のいずれかに記載の易開封性及びバリア性を有する蓋。
【請求項1】
最内層は少なくとも最下層にポリエチレンのシーラント層を含む層で、この最内層の外側に接着層を介してバリア性のあるフィルム層が貼着され、前記最内層には複数本の強度弱点部が中心から放射状に、かつ、その放射方向の先端が蓋の周縁まで到達しない位置に設けられている易開封性及びバリア性を有する蓋。
【請求項2】
強度弱点部はミシン目又はカット線のいずれかである請求項1記載の易開封性及びバリア性を有する蓋。
【請求項3】
強度弱点部は、中心から端縁に向かって放射状に同一の中心角をもって少なくとも3本以上設けられている請求項1又は請求項2の何れかに記載の易開封性及びバリア性を有する蓋。
【請求項4】
最内層に紙層を備えた請求項1〜4のいずれかに記載の易開封性及びバリア性を有する蓋。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−254337(P2010−254337A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105946(P2009−105946)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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