説明

易開封性缶蓋

【課題】開口性および物理的強度を損なうことなく、開口部の開口面積をさらに拡大し得るステイオンタブ方式の易開封性缶蓋を提供する。
【解決手段】リベット部3と缶蓋本体2の周縁部との間に開口予定領域4を画定するスコア5を刻設すると共に、スコア5のリベット部3近傍部分を一部開いて開口予定領域4の内部と外部をつなぐヒンジ部6とし、リベット部3に固定されるタブ7によって開口予定領域4を押し込んでスコア5を開口予定領域4の周縁に沿って破断して開口部8を形成し、破断した開口片9をヒンジ部6にて屈曲させて缶内に折り込む構造で、リベット部3の位置を缶蓋本体2の中心Oに対して基準線Nに沿って開口予定領域4と反対側に所定寸法(X)だけ偏芯させて開口部長さ(L)を長くし、開口部長さ(L)に対する開口部幅(W)の比率である開口部幅比α(=W/L)が一定の範囲に入るように、開口部幅(W)を広げて開口面積を拡大した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるステイオンタブ方式の易開封性缶蓋に関し、特に開口部を広口とした易開封性缶蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のステイオンタブ方式の易開封性缶蓋の開口部は、特許文献1に記載のような縦長形状が一般的であるが、近年、内容物の多様化に伴い、開口部の拡大が検討されている。
図3は、従来の開口部を広口とした易開封性缶蓋の一例である。
すなわち、従来の易開封性缶蓋101は、缶蓋本体102の中心Oに突設されたリベット部103と缶蓋本体102の周縁部との間に、開口予定領域104を画定する環状のスコア105が刻設されている。スコア105のリベット部103近傍部分は一部開いて開口予定領域104内部と外部をつなぐヒンジ部106となっており、リベット部103に固定されたタブ107の先端部107aによって開口予定領域104を押し込み、スコア105をヒンジ部106の一端から他端まで開口予定領域104の周縁に沿って破断して開口部108を形成し、破断した開口片109をヒンジ部106にて屈曲させて缶内に折り込む構造となっている。
【0003】
開口部108は一般的なステイオンタブ方式の易開封性缶蓋に比べて広口に拡大されている。開口部108を拡大する場合、リベット部103とタブ107の中心を通る線を基準線Nとすると、基準線Nと交差する外周側開口部先端位置105Cは蓋本体102の外周縁により規制され、リベット部103側の初期開口位置105Dはリベット部103により規制されるため、開口部108の左右横方向のスペースを利用し、基準線Nと直交する方向の最大幅である開口部幅Wを拡大して開口面積の増大が図られている。
【0004】
しかしながら、開口部幅Wを拡大すると、タブ107の先端部107aからスコア105の左右湾曲部105A,105Bまでの距離が長くなるために、スコア105を破断するためにはタブ107を強く押し込む必要があり、開口性が悪くなってしまう。そこで、従来からスコアの切り込み残厚(スコアレジデュアル)を薄くして対処しているが、切り込み残厚を薄くすると開口性はよくなるものの物理強度が低下するので、薄くするにも限界があり、結果的に開口性とスコアの物理強度により開口部の面積が制限されるのが現状である。現行の206径,204径では、開口部幅Wを25mm程度まで拡大するのが限界で、さらなる横幅の拡大が求められている。
【0005】
このような要請に応えるべく、開口性について鋭意検討した結果、開口部の開口部長さLに対する開口部幅Wの比率である開口部幅比α(=W/L)が小さいと開けやすく、大きくなると開けにくくなることから、開口部幅比αを一定値以下に保持した状態であれば開口部幅Wを拡大しても開口性を維持できるとの着想を得た。
【特許文献1】特開平10−245032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、開口性および物理的強度を損なうことなく、開口部幅を可及的に拡大し得るステイオンタブ方式の易開封性缶蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、缶蓋本体に突設したリベット部と缶蓋本体の周縁部との間に開口予定領域を画定する環状のスコアを刻設すると共に、スコアのリベット部近傍部分を一部開いて開口予定領域内部と外部をつなぐヒンジ部とし、リベット部に固定され先端部が開口予定領域に当接するタブによって開口予定領域を押し込んでスコアをヒンジ部の一端からヒンジ部の他端まで開口予定領域の周縁に沿って破断して開口部を形成し、破断した開口片をヒンジ部にて屈曲させて缶内に折り込む構造で、リベット部とタブの中心を通る線を基準線とすると、開口予定領域の基準線方向の最大長さである開口部長さ(L)よりも基準線と直交する方向の最大幅である開口部幅(W)を大きくして広口とした易開封性缶蓋であって、
リベット部の位置を缶蓋本体の中心に対して基準線に沿って開口予定領域と反対側に偏芯させて開口部長さ(L)を長くし、開口部長さLに対する開口部幅Wの比率である開口部幅比α(=W/L)が適正範囲に入るように、開口部幅(W)を広げたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、開口部幅比αの適正範囲は1.2〜1.4程度としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、リベット部位置を缶蓋本体の中心に対して開口予定領域と反対側に偏芯させることにより、その分だけ開口部長さを長くして開口部幅比を小さくできるので、スコアの物理的強度および適切な開口性を維持しながら開口部幅を可及的に大きくして開口面積増大を図ることができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、開口部幅比を1.2〜1.4程度に設定しているので、スコアの適切な強度を保ちつつ、開口性を良好に維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
図1及び図2は、本発明の実施の形態に係る易開封性缶蓋を示している。
図に示すように、この易開封性缶蓋1は、缶蓋本体2に突設したリベット部3と缶蓋本体2の周縁部との間に開口予定領域4を画定する環状のスコア5を刻設すると共に、スコア5のリベット部3近傍部分を一部開いて開口予定領域4の内部と外部をつなぐヒンジ部6とし、リベット部3に固定され先端部が開口予定領域に当接するタブ7によって開口予定領域4を押し込んでスコア5をヒンジ部6の一端から他端まで開口予定領域4の周縁に沿って破断して開口部8を形成し、破断した開口片9をヒンジ部7にて屈曲させて缶内に折り込む構造となっている。
【0012】
缶蓋本体2は、円板状のパネル部21と、このパネル部21の周縁から立ち上がる周壁部22と、この周壁部22から外側に向かって延びて不図示の缶本体に巻き締められる巻締めカール部23と、を備えた構成となっている。缶蓋本体2のパネル部21には、開口予定領域4とタブ6を取り囲むように一段低くした扇状形状の段差25が設けられている。
【0013】
スコア5は、主スコア51と主スコア51の内側に所定間隔でもって並行して形成される補助スコア52とを備えた二重構造で、リベット部3近傍の初期破断部5Aと、基準線Nに対してヒンジ部6と反対側の(図示例では右側)に位置する第1湾曲部5Bと、基準線Nに対してヒンジ部8側に位置する第2湾曲部5Cとを備えている。初期破断部5Aは基準線Nを横切るように形成され、中央部がリベット部3を迂回するように開口予定領域4の中心側に凹状に歪み、両端部が凸形状となっている。第1湾曲部5Bのリベット部3側の端部は初期破断部5Aの一端と接続され、第1湾曲部5Bの外周側端部が第2湾曲部5Cの外周側端部と基準線N上の外周側開口部先端位置5Dにて接続されている。
スコア5は、初期破断部5Aから時計回り方向に、第1湾曲5Bから第2湾曲部5Cに破断が進行する構成で、第2湾曲部5Cのスコア終端は、ヒンジ部7を隔てて初期破断部5Aの一端と対向している。
【0014】
タブ7は剛性のある板状部材で、タブ7の先端部71は開口予定領域4内に延びて開口予定領域4を押圧する押圧作用部として機能し、タブ7の他端はリベット部3に対して開口予定領域4と反対側に延びる指掛け部72となっている。指掛け部72はリング状で、その中心が基準線N上に位置する指掛け孔72aが設けられ、押圧作用部71は基準線N上に曲率中心を有する円弧形状に成形されている。
【0015】
前記リベット部3とタブ7の中心を通る線を基準線Nとすると、開口予定領域4の基準線N方向の最大長さである開口部長さLよりも基準線Nと直交する方向の最大幅である開口部幅Wが大きくなっている。
開口部長さLは、リベット部3側の初期破断部5Aと外周側開口部先端位置5D間の距離である。初期破断部5A両端の凸状部分はリベット部3の位置とほぼ等しいので、開口部長さLはリベット部3と外周側開口部先端位置5D間の距離とほぼ等しい。開口部幅Wは第1円弧部5Bと第2円弧部5C間の間隔である。
【0016】
本発明では、リベット部3の位置を缶蓋本体2の中心Oに対して基準線Nに沿って開口予定領域4と反対側に所定寸法Xだけ偏芯させて開口部長さLを長くし、開口部長さLに対する開口部幅Wの比率である開口部幅比α(=W/L)が一定の範囲に入るように、開口部幅Wを広げて開口面積を拡大している。開口部長さLは、缶蓋本体2の中心Oと外周側開口部先端位置5D間の中心部長さL0と偏芯量Xとの和(L=L0+X)である。
【0017】
開口性を良好に維持する適切な開口部幅比αは、缶蓋本体2の材質、直径寸法、肉厚寸法、スコアの残厚等に応じて適宜設定されるが、204径,206径の缶蓋で、材質がアルミニウムやアルミニウム系合金製、肉厚が.022〜0.26mm、スコア残厚が0.070〜0.100mmの場合、1.2〜1.4程度の範囲に設定することが有効である。
【0018】
また、偏芯量Xとしては5mm程度まで偏芯させることが可能である。なお、偏芯量Xは、蓋の径サイズ、求める開口部の大きさ、タブの長さ等により決定される。
【0019】
たとえば、204径の缶蓋の場合、リベット部を偏芯させない従来タイプの場合には、開口部長さが20mmで、開口部幅を25.4mmまで拡大させると開口部幅比αが1.27と上限に近い値となったのに対して、リベット部3を1.2mm偏芯させて開口部長さLを22.8mmまで長くした本発明の実施品の場合、開口部幅Wを28.0mm程度まで拡大しても、開口部幅比αは1.23程度に収まり、開口性を保持しつつ開口部を拡大することができた。仮に、開口部幅比αを1.3とすると、開口部幅を30mmまで拡大することができる。
開口部について、開口部長さLを短径、開口部幅Wを長径とする楕円として開口面積を計算すると、リベット部を偏芯させない場合には405mmであったのに対して、リベット部を偏芯させた場合には495mmまで開口面積を増大させることができた。
また、206径の缶蓋に適用した場合、リベット部3を2.5mm偏芯させて開口部長さLを25.4mmまで長くした場合、開口部幅Wを32.0mm程度まで拡大しても、開口部幅比αは1.26程度に収まり、開口性を保持しつつ開口部を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る易開封性缶蓋を示すもので、同図(A)は開口前の状態の平面図、同図(B)は同図(A)の開口状態の平面図である。
【図2】図2(A)は図1の缶蓋のスコア形状を示す図、同図(B)は図1の缶蓋を取り付けた缶の開口状態を示す部分斜視図である。
【図3】図3(A)は従来の広口の易開封性缶蓋の開口状態の平面図、同図(B)は同図(A)の開口前の状態の平面図、同図(C)は同図(A)のスコア形状を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 易開封性缶蓋
2 缶蓋本体
21 パネル部、22 周壁部、23 巻締めカール部、25 段差
3 リベット部
4 開口予定領域
5 スコア
51 主スコア、52 補助スコア
5A 初期破断部、5B 第1湾曲部、5C 第2湾曲部、
5D 外周側開口部先端位置
6 ヒンジ部
7 タブ
71 先端部、72 指掛け部、72a 指掛け孔
8 開口部
9 開口片
L 開口部長さ
W 開口部幅
N 基準線
O 缶蓋本体の中心




【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶蓋本体に突設したリベット部と缶蓋本体の周縁部との間に開口予定領域を画定する環状のスコアを刻設すると共に、該スコアのリベット部近傍部分を一部開いて開口予定領域内部と外部をつなぐヒンジ部とし、
前記リベット部に固定され先端部が開口予定領域に当接するタブによって開口予定領域を押し込んでスコアをヒンジ部の一端からヒンジ部の他端まで開口予定領域の周縁に沿って破断して開口部を形成し、破断した開口片をヒンジ部にて屈曲させて缶内に折り込む構造で、
前記リベット部とタブの中心を通る線を基準線とすると、開口予定領域の基準線方向の最大長さである開口部長さ(L)よりも基準線と直交する方向の最大幅である開口部幅(W)を大きくして広口とした易開封性缶蓋であって、
リベット部の位置を缶蓋本体の中心に対して基準線に沿って開口予定領域と反対側に偏芯させて開口部長さ(L)を長くし、開口部長さ(L)に対する開口部幅(W)の比率である開口部幅比α(=W/L)が所定比率となるように、開口部幅(W)を広げたことを特徴とする易開封性缶蓋。
【請求項2】
開口部幅比αを1.2〜1.4程度としたことを特徴とする請求項1に記載の易開封性缶蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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