説明

映像変換装置および方法、並びにプログラム

【課題】映像信号の映像形式および色差形式を変換する場合に、映像信号の画質の劣化を抑制できるようにする。
【解決手段】IP変換部24は、映像形式がインターレース形式であり、色差形式が4:2:0である映像信号が供給された場合、その映像信号の輝度成分および色差成分の補間を行うことで、映像信号の映像形式をインターレース形式からプログレッシブ形式に変換する。色差形式変換部26は、映像形式がプログレッシブ形式であり、色差形式が4:2:0である映像信号の供給を受けると、その映像信号の色差形式を4:2:0から4:2:2に変換する。このように、映像信号の色差形式の変換前に映像形式の変換を行うことにより、映像信号に基づく画像の画質の劣化を抑制することができる。本発明は、映像変換装置に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は映像変換装置および方法、並びにプログラムに関し、特に、映像信号の映像形式および色差形式を変換する場合に、画質の劣化を抑制できるようにした映像変換装置および方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、デジタル画像を表示するための映像信号が記録媒体に記録される場合、データの圧縮率を上げる等の理由により、映像信号が、色差形式が4:2:0であり、映像形式がインターレース形式である映像信号に変換されてから記録されることがある。色差形式が4:2:0である映像信号は、輝度成分と色差成分とからなり、色差成分の解像度(情報量)が画像の水平方向および垂直方向ともに、輝度成分の半分の解像度とされた信号である。
【0003】
このような映像信号を記録媒体から読み出して、デジタルテレビジョン受像機などで表示させる場合、読み出された映像信号の色差形式は、フィルタ処理により4:2:0から4:2:2に変換される。そして、その後、映像信号の映像形式がインターレース形式からプログレッシブ形式に変換される。
【0004】
このようにして得られた、色差形式が4:2:2であるプログレッシブ形式の映像信号には、必要に応じて高画質化等の所定の処理が施される。処理の施された映像信号は、さらに色差形式が4:4:4であるR,G,Bの各成分からなる信号に変換されて、変換により得られた映像信号に基づいて画像が表示される。
【0005】
また、従来、映像信号の色差形式を変換する場合に、映像信号の映像形式がインターレース形式か否かを検出して、その検出結果に応じて用いるフィルタを動的に切り換える技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平8−33002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した技術では、色差形式が4:2:0であり、映像形式がインターレース形式である映像信号から、色差形式が4:2:2であり、映像形式がプログレッシブ形式である映像信号を得る場合に、映像信号に基づく画像の画質が劣化してしまう。
【0008】
すなわち、インターレース形式の映像信号の色差形式を4:2:0から4:2:2に変換する場合、補間対象の画素の空間的近傍に位置する画素が用いられて補間処理が行われる。そのため、情報量の少ない色差成分の補間処理を精度よく行うことができず、変換により得られる色差形式が4:2:2のインターレース形式の映像信号の画像の画質が劣化してしまうことが知られている。
【0009】
映像信号の色差形式を変換する場合に、上述した技術を用いてフィルタを動的に変化させても、やはり空間的に近傍の画素を用いた補間処理が行われるため、画質の劣化を抑制することはできない。
【0010】
また、映像信号の映像形式をインターレース形式からプログレッシブ形式に変換する場合にも、補間対象の画素の各成分について、その画素の空間的近傍の画素が用いられて補間処理が行われる。ところが、色差形式が4:2:2とされた映像信号の色差成分は既に劣化しているため、映像形式の変換により映像信号の画像には、ぼけやフリッカー、ジャギーなどが発生し、さらに画質が劣化してしまう。
【0011】
映像信号の映像形式を変換する場合に、画像の画素の時間的な変化を検出し、その検出結果に基づいて、画像上の画素の空間的または時間的に近傍の画素を用いて補間処理を行うことも考えられる。しかしながら、この場合においても、色差形式が4:2:2とされた映像信号は既に劣化しているため、画像上の色の濃い領域の境界部分でクロマアップサンプリングエラーと呼ばれる櫛状のノイズが発生し、画質が劣化してしまう。
【0012】
以上のように、色差形式が4:2:2であるプログレッシブ形式の映像信号を得るために、映像信号の色差成分に対して非線形処理を施すと、画像の画質が劣化してしまうため、その後段において映像信号に処理を施して画像を高画質化させることは困難であった。
【0013】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、映像信号の色差形式および映像形式を変換する場合に、映像信号に基づく画像の画質の劣化を抑制することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面の映像変換装置は、輝度成分および色差成分からなり、映像形式がインターレース形式である映像信号が供給された場合、前記映像信号の輝度成分および色差成分を補間することにより、前記映像信号の映像形式をプログレッシブ形式に変換する映像形式変換手段と、前記映像形式変換手段による変換により得られた前記映像信号の色差成分を補間することにより、前記映像信号の色差形式を、第1の色差形式から、前記第1の色差形式よりも色差成分が多く含まれる第2の色差形式に変換する色差形式変換手段とを備える。
【0015】
前記色差形式変換手段には、
前記映像信号に基づく画像の画素の輝度成分を用いて、所定の画素近傍において、互いに類似する画素が並ぶ類似方向を求める類似方向判定手段と、
前記類似方向により特定される画素を用いて、前記所定の画素近傍の画素の色差成分を補間する色差位相補間手段と
をさらに設けることができる。
【0016】
前記映像形式変換手段には、
連続するいくつかのフィールドの前記映像信号を用いて、前記映像信号に基づく画像上における画素の輝度成分の変化の有無を検出する輝度静止検出手段と、
前記輝度静止検出手段による検出結果に基づいて、処理対象のフィールドの前記画像における第1の注目画素の時間的または空間的に近傍に位置する画素を用いて、前記第1の注目画素の輝度成分を補間する輝度補間手段と、
前記連続するいくつかのフィールドの前記映像信号を用いて、前記映像信号に基づく画像上における画素の色差成分の変化の有無を検出する色差静止検出手段と、
前記色差静止検出手段による検出結果に基づいて、前記処理対象のフィールドの前記画像における第2の注目画素の時間的または空間的に近傍に位置する画素を用いて、前記第2の注目画素の色差成分を補間する色差補間手段と
をさらに設けることができる。
【0017】
前記色差静止検出手段には、前記輝度静止検出手段による検出結果を用いて、色差成分の変化の有無を検出させることができる。
【0018】
本発明の一側面の映像変換方法またはプログラムは、輝度成分および色差成分からなり、映像形式がインターレース形式である映像信号が供給された場合、前記映像信号の輝度成分および色差成分を補間することにより、前記映像信号の映像形式をプログレッシブ形式に変換し、映像形式の変換により得られた前記映像信号の色差成分を補間することにより、前記映像信号の色差形式を、第1の色差形式から、前記第1の色差形式よりも色差成分が多く含まれる第2の色差形式に変換するステップを含む。
【0019】
本発明の一側面においては、輝度成分および色差成分からなり、映像形式がインターレース形式である映像信号が供給された場合、前記映像信号の輝度成分および色差成分を補間することにより、前記映像信号の映像形式がプログレッシブ形式に変換され、その変換により得られた前記映像信号の色差成分を補間することにより、前記映像信号の色差形式が、第1の色差形式から、前記第1の色差形式よりも色差成分が多く含まれる第2の色差形式に変換される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一側面によれば、映像信号の色差形式および映像形式を変換することができる。特に、本発明の一側面によれば、映像信号の色差形式および映像形式を変換する場合に、映像信号に基づく画像の画質の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明を適用した実施の形態について説明する。
【0022】
[映像変換装置の構成]
図1は、本発明を適用した映像変換装置の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0023】
この映像変換装置11には、輝度信号(Y成分)と色差信号(Cr成分およびCb成分)とからなり、色差形式が4:2:0である映像信号が供給される。映像信号は、例えばMPEG(Moving Picture Experts Group)などの方式で符号化(デジタル圧縮)された、動画像を表示させる信号であり、映像信号の映像形式は、プログレッシブ形式またはインターレース形式の何れか一方の形式とされる。
【0024】
映像変換装置11は、供給された映像信号を、色差形式が4:2:2であり、映像形式がプログレッシブ形式である映像信号に変換して出力する。
【0025】
映像変換装置11は、フレームバッファ21、フレームバッファ22、映像形式判定部23、IP(Interlace/Progressive)変換部24、映像選択部25、および色差形式変換部26から構成される。
【0026】
また、映像変換装置11では、フレームバッファ21およびIP変換部24に映像信号が1フィールド(フレーム)分ずつ供給される。すなわち、映像信号の映像形式が、インターレース形式であれば1フィールド分ずつ映像信号が供給され、プログレッシブ形式であれば1フレーム分ずつ映像信号が供給される。
【0027】
なお、以下においては説明を簡単にするため、映像形式によらず、1フィールド分の映像信号ということとする。すなわち、映像形式がプログレッシブ形式であれば、1フィールド分の映像信号とは、1フレーム分の映像信号を意味するものとする。
【0028】
フレームバッファ21は、供給された映像信号を1フィールド分の時間だけ記憶した後、フレームバッファ22、映像形式判定部23、IP変換部24、および映像選択部25に供給する。すなわち、フレームバッファ21は、供給された映像信号を1フィールド分の時間だけ遅延させる。
【0029】
フレームバッファ22は、フレームバッファ21から供給された映像信号を1フィールド分の時間だけ記憶した後、IP変換部24に供給する。なお、以下、フレームバッファ21に供給される映像信号、フレームバッファ21から出力される映像信号、およびフレームバッファ22から出力される映像信号を、それぞれフィールドN乃至フィールド(N−2)の映像信号とも称する。つまり、フィールド(N−1)およびフィールド(N−2)は、それぞれフィールドNに対して、時間的に1つ前、および2つ前のフィールドとなる。
【0030】
映像形式判定部23は、フレームバッファ21から供給された映像信号に基づいて、その映像信号の映像形式がインターレース形式であるか否かを判定し、その判定結果を映像選択部25に供給する。
【0031】
IP変換部24は、供給されたフィールドNの映像信号、フレームバッファ21からのフィールド(N−1)の映像信号、およびフレームバッファ22からのフィールド(N−2)の映像信号を用いてIP変換処理を行い、映像信号の映像形式を変換する。すなわち、IP変換処理により、フィールド(N−1)の映像信号が処理対処とされて、その映像信号の映像形式がインターレース形式からプログレッシブ形式に変換され、変換により得られた映像信号が映像選択部25に供給される。ここで、IP変換処理により得られる映像信号の色差形式(映像フォーマット)は、4:2:0のままとされる。
【0032】
映像選択部25は、映像形式判定部23からの判定結果に基づいて、フレームバッファ21からの映像信号、またはIP変換部24からの映像信号の何れか一方を選択し、選択した映像信号を色差形式変換部26に供給する。
【0033】
具体的には映像選択部25は、フレームバッファ21からの映像信号の映像形式がプログレッシブ形式であれば、その映像信号を選択し、フレームバッファ21からの映像信号の映像形式がインターレース形式であれば、IP変換部24からの映像信号を選択する。何れの場合においても、映像選択部25から色差形式変換部26には、映像形式がプログレッシブ形式であるフィールド(N−1)の映像信号が供給されることになる。
【0034】
色差形式変換部26は、映像選択部25から供給された映像信号の色差形式を、4:2:0から4:2:2に変換する色差形式変換処理を行い、これにより得られた映像信号を出力する。したがって色差形式変換部26からは、色差形式が4:2:2であり、映像形式がプログレッシブ形式であるフィールド(N−1)の映像信号が出力されることになる。色差形式変換部26から出力された映像信号には、後段において高画質化等の処理が施されたり、色差形式が4:4:4であるR,G,Bの成分を有する映像信号に変換する処理が施されたりする。
【0035】
このように、映像変換装置11では、フィールドNの映像信号が供給されると、フィールド(N−1)の映像信号が出力される。つまり、映像変換装置11では、処理対象のフィールドの時間的に前後のフィールドが用いられて、映像信号の映像形式および色差形式が変換されるため、映像変換装置11全体で1フィールド(フレーム)分の処理遅延が発生する。
【0036】
ところで、映像変換装置11には、色差形式が4:2:0であり、映像形式がインターレース形式またはプログレッシブ形式である映像信号が供給されると説明した。
【0037】
映像信号がインターレース形式である場合、例えば、図2に示すように、映像信号として、トップフィールドと呼ばれる画像の信号と、ボトムフィールドと呼ばれる画像の信号とからなる映像信号が映像変換装置11に供給される。
【0038】
なお、図2において、図中、左側はトップフィールドの画像を示しており、図中、右側はボトムフィールドの画像を示している。また、各フィールドの画像において、1つの円および四角形は、映像信号の輝度成分(Y成分)、および色差成分(Cr成分およびCb成分)を有する1つの画素を表している。さらに、図2中の文字「Line0」乃至「Line10」は、各フィールドの画像における図中、水平方向のラインを表すためのものであり、実際には画像には含まれていない。
【0039】
図2において、図中、横方向をx方向と呼び、縦方向をy方向と呼ぶこととすると、各フィールドの画像は、x方向に並んだ画素からなるラインが、y方向に10だけ並べられて構成されている。また、各フィールドの画像では、特性のラインを構成する全ての画素が輝度成分を有しており、輝度成分を有するラインとy方向に隣接するラインのうちの特定のラインを構成するいくつかの画素が色差成分を有している。色差成分を有するラインでは、色差成分を有する画素が、x方向に1画素おきに存在するようになされている。
【0040】
さらに、トップフィールドの画像と、ボトムフィールドの画像とでは、一方のフィールドの画像における輝度成分または色差成分を有する画素と同じ位置にある、他方のフィールドの画素、つまり同じ位相の画素は、輝度成分も色差成分も有していない。
【0041】
このような、インターレース形式の映像信号は、トップフィールドの信号と、ボトムフィールドの信号とが交互に配置された信号とされる。つまり、映像信号に基づく画像が表示される場合には、トップフィールドの画像と、ボトムフィールドの画像とが交互に表示されることになる。
【0042】
一方、映像信号がプログレッシブ形式である場合、例えば、図3に示すように、1フィールド(フレーム)分の画像の映像信号は、1組のトップフィールドおよびボトムフィールドの映像信号が有する情報量(輝度成分および色差成分)を有している。つまり、映像変換装置11に供給される、プログレッシブ形式の1フィールド分の映像信号は、インターレース形式の1フィールド分の映像信号の倍の情報量を有している。
【0043】
なお、図3において、1つの円および四角形は、映像信号に基づく画像における輝度成分(輝度信号)、および色差成分(色差信号)を有する1つの画素を表している。また、図中の文字「Line0」乃至「Line10」は、1フィールド分の画像における図中、水平方向のラインを表すためのものであり、実際には画像には含まれていない。
【0044】
図3において、図中、横方向をx方向と呼び、縦方向をy方向と呼ぶこととすると、1フィールド分の画像は、図2に示した1フィールド分の画像と同様に、y方向に並べられた10個のラインから構成される。
【0045】
また、1フィールド分の画像では、特定のラインを構成する全ての画素が輝度成分を有しており、輝度成分を有するラインは、1ラインおきにy方向に並んでいる。さらに、輝度成分を有するラインとy方向に隣接するラインのうちの特定のラインの画素だけが色差成分を有しており、色差成分を有するラインでは、色差成分を有する画素が、x方向に1画素おきに存在するようになされている。色差成分を有するラインは、3ラインおきにy方向に並んでいる。
【0046】
図3のプログレッシブ形式の1フィールド分の画像において、図2のトップフィールドまたはボトムフィールドの画像上の輝度成分を有する画素と同じ位置にある画素は、必ず輝度成分を有しており、図3の画像上の他の画素は輝度成分を有していない。同様に、図3の画像において、図2のトップフィールドまたはボトムフィールドの画像上の色差成分を有する画素と同じ位置にある画素は、必ず色差成分を有しており、図3の画像上の他の画素は色差成分を有していない。
【0047】
さらに、映像変換装置11から出力されるプログレッシブ形式の映像信号は、例えば、図4に示すように、図3に示した映像信号と比べて、倍の色差成分を有している。
【0048】
なお、図4において、1つの円および四角形は、映像信号に基づく画像における輝度成分(輝度信号)、および色差成分(色差信号)を有する1つの画素を表しており、円と四角形が重なっている画素は、輝度成分および色差成分の両方を有する画素とされる。また、図中の文字「Line0」乃至「Line10」は、1フィールド分の画像における図中、水平方向のラインを表すためのものであり、実際には画像には含まれていない。
【0049】
図4において、図中、横方向をx方向と呼び、縦方向をy方向と呼ぶこととすると、1フィールド分の画像は、図2および図3に示した1フィールド分の画像と同様に、y方向に並べられた10個のラインから構成される。
【0050】
図4の画像では、図3において輝度成分を有するラインと同じ位置(位相)のライン、より詳細には、そのラインを構成する全ての画素が輝度成分を有している。また、図4の画像では、図3において色差成分を有する画素と同じ位置(位相)の画素に対して、y方向に隣接する全ての画素が色差成分を有している。すなわち、図3の画像と、図4の画像とでは、色差成分を有する画素のy方向(垂直方向)の位相が等しく、図4の画像において、色差成分を有する画素は必ず輝度成分も有している。
【0051】
なお、図2乃至図4に示した画像における色差成分を有する画素の位相は、映像信号の符号化方式がMPEG2方式である場合を想定した位相となっており、色差成分を有する画素の位相は、図2乃至図4の例と必ずしも同じである必要はない。
【0052】
次に、図5は、図1のIP変換部24の構成例を示す図である。
【0053】
IP変換部24は、静止判定部51およびフィールド補間部52から構成される。
【0054】
静止判定部51には、映像変換装置11に供給された映像信号、およびフレームバッファ22からの映像信号が供給される。また、フィールド補間部52には、映像変換装置11に供給された映像信号、フレームバッファ21からの映像信号、およびフレームバッファ22からの映像信号が供給される。
【0055】
静止判定部51は、供給された、処理対象となるフィールドの時間的に前後のフィールド、つまりフィールドNおよびフィールド(N−2)の映像信号を用いて、フィールド(N−1)の映像信号についての輝度静止回数および色差静止回数を求める。
【0056】
輝度静止回数とは、フィールド(N−1)の画像上の画素の輝度成分が静止していたフィールド数、すなわち画素の輝度成分が、変化せずにほぼ一定の値のままとされたフィールド数をいう。同様に、色差静止回数は、フィールド(N−1)の画像上の画素の色差成分が静止していたフィールド数、すなわち画素の色差成分が、変化せずにほぼ一定の値のままとされたフィールド数をいう。求められた輝度静止回数および色差静止回数は、静止判定部51からフィールド補間部52に供給される。
【0057】
フィールド補間部52は、供給された映像信号と、静止判定部51からの輝度静止回数および色差静止回数とを用いて、処理対象となっているフィールド(N−1)の映像信号の映像形式をインターレース形式からプログレッシブ形式に変換する。そして、フィールド補間部52は、変換により得られた映像信号を映像選択部25に供給する。
【0058】
なお、輝度静止回数および色差静止回数は、処理対象のフィールド(N−1)の画像上の画素であって、IP変換処理により輝度成分および色差成分が補間される各画素について求められる。
【0059】
例えば、図6に示すように、画像上において1つのオブジェクトが図中、右方向に移動する動画像の映像信号がIP変換部24に供給されたとする。なお、図6において、手前方向は時間を示しており、横方向および縦方向はx方向およびy方向を示している。また、図中、1つの長方形は1つのフィールドの画像を表しており、手前側から奥行き方向に順番に、フィールドN乃至フィールド(N−3)の画像であるものとする。
【0060】
このような映像信号が供給された場合、静止判定部51は、映像信号に基づく各フィールドの画像を用いて、画素ごとに画像の絵柄が時間的に静止していたか否か、つまり各画素の動きの有無を判定する。そして、静止判定部51は、その判定結果に基づいて、輝度成分および色差成分について、各画素が時間的に何フィールドの間静止していたかを示す輝度静止回数および色差静止回数を求める。
【0061】
図6の例では、各フィールドの画像の中央付近のオブジェクトがx方向に移動しているので、輝度静止回数および色差静止回数は、図7に示すように、画像の中央付近の画素の回数が少なく、画像の端近傍の画素の回数は多くなるはずである。
【0062】
なお、図7において図中、左側の長方形は輝度静止回数が求められる画素からなる画像を示しており、右側の長方形は色差静止回数が求められる画素からなる画像示している。処理対象の映像信号の色差形式は4:2:0であり、その画像が有する色差成分の量(画素数)は、x方向およびy方向ともに輝度成分の半分であるため、色差静止回数の画像は、輝度静止回数の画像に対して縦横ともに半分の大きさの画像となっている。
【0063】
また、図7において、画像上の各領域の濃淡が輝度静止回数または色差静止回数を示しており、濃度の濃い領域の画素ほど回数が多いことを示している。図7の例では、一定期間以上静止しているとされた画素の濃度(明るさ)はクリップされている。
【0064】
例えば、図6の映像信号に基づく画像では、オブジェクトがx方向(水平方向)に移動する。そのため、輝度静止回数の画像および色差静止回数の画像において、オブジェクトと背景(動きのない領域)の境界近傍の部分、すなわち矢印A11および矢印A12に示す領域の濃度が最も濃く(暗く)なっている。
【0065】
そして、それらの矢印A11および矢印A12に示す領域から、オブジェクトの移動方向とは反対方向、つまり図中、より左側の領域ほど静止していると判定される回数が増えるため、次第に濃度が薄く(明るく)なっていく。すなわち、矢印A11および矢印A12に示す領域よりも、それらの領域に左側に隣接する、矢印A13および矢印A14に示す領域の濃度が薄くなっている。また、矢印A13および矢印A14に示す領域と比べて、それらの領域の図中、左側の領域は、さらに濃度が薄くなっている。
【0066】
また、輝度静止回数および色差静止回数は、フィールド(N−1)の画像の輝度成分および色差成分が補間される画素について求められるため、それらの算出には、図8に示すように、フィールド(N−1)に対して時間的に前後のフィールドが用いられる。
【0067】
なお、図8は、図6に示した各フィールドの画像の一部を拡大した図であり、図中、縦方向および横方向は、y方向およびx方向を示している。また、図8において、矢印F11乃至矢印F13のそれぞれにより示される長方形は、フィールドN乃至フィールド(N−2)の画像の一部分の領域を示しており、各画像上の円は、1つの画素を示している。
【0068】
静止判定部51では、処理対象となるフィールド(N−1)の画像の画素について、輝度静止回数および色差静止回数が求められる。
【0069】
例えば、フィールド(N−1)の画像の画素であって、図中、点線で囲まれる領域内に含まれる画素の輝度静止回数を求める場合について考えることとし、図中、円で表される画素が、輝度成分を有する画素であるとする。ここで、各フィールドの画像上の点線の領域内の画素からなるラインは、互いに位相が等しいライン、つまり各フィールドの画像上において同じ位置にあるラインである。
【0070】
具体的には、例えば、矢印F12に示されるフィールド(N−1)が図2に示したトップフィールドであるとすると、矢印F11および矢印F13に示されるフィールドNおよびフィールド(N−2)は、図2に示したボトムフィールドとされる。
【0071】
また図中、点線で囲まれるフィールド(N−1)の画像上の領域が、図2のLine2に相当する領域であるとすると、Line2上の各画素はIP変換処理により輝度成分が補間される画素であるため、それらの画素はIP変換処理前の段階では輝度成分を有していない。したがって、フィールド(N−1)の映像信号だけでは、それらのLine2上の画素の輝度静止回数を求めることはできない。
【0072】
そのため、Line2上の画素が輝度成分を有するフィールドNおよびフィールド(N−2)の映像信号が用いられて、フィールド(N−1)の画素の輝度静止回数が求められる。
【0073】
すなわち、フィールド(N−1)がトップフィールドであるのに対して、フィールドNおよびフィールド(N−2)は、ボトムフィールドである。したがって、それらのフィールドの画像における、図8中、点線で囲まれる領域内の画素、つまり図2のLine2上の全ての画素は、輝度成分を有している。
【0074】
そこで、静止判定部51は、フィールド(N−1)のLine2上の注目する画素の輝度静止回数を、その注目する画素と同じ位置にある、フィールドNおよびフィールド(N−2)の画像上の画素の輝度成分に基づいて求める。
【0075】
また、静止判定部51は、色差静止回数を求める場合においても、輝度静止回数の場合と同様に、フィールド(N−1)の画素の色差静止回数を、その画素と同じ位置にある、フィールドNおよびフィールド(N−2)の画像の画素の色差成分に基づいて求める。
【0076】
輝度静止回数および色差静止回数を求めることは、所定の画素の輝度成分および色差成分の時間的な変化の有無を検出して、輝度成分および色差成分が変化しなかった期間を求めることであるということができる。つまり、輝度静止回数および色差静止回数は、輝度成分および色差成分の静止が検出された回数(フィールド数)である。
【0077】
このようにして輝度静止回数および色差静止回数を求める静止判定部51は、より詳細には、図9に示すように構成される。すなわち、静止判定部51は、静止回数保持部81、輝度静止判定部82、および色差静止判定部83から構成される。
【0078】
静止回数保持部81は、輝度静止判定部82により求められた、映像信号に基づく画像上の画素の輝度静止回数を保持し、輝度静止判定部82から新たな輝度静止回数が供給されるたびに保持している輝度静止回数を更新する。
【0079】
輝度静止回数の更新は、処理対象となっているフィールドと同じ種別のフィールド、つまりトップフィールドまたはボトムフィールドの何れか一方において輝度静止回数が求められる画素についてのみ行われる。したがって、例えば、処理対象のフィールドがトップフィールドである場合には、トップフィールドにおいて輝度静止回数が求められる画素の輝度静止回数のみが更新され、ボトムフィールドにおいて輝度静止回数が求められる画素については更新されない。
【0080】
輝度静止判定部82には、映像変換装置11に入力されたフィールドNの映像信号と、フレームバッファ22から出力されたフィールド(N−2)の映像信号とが供給される。輝度静止判定部82は、供給されたそれらの映像信号を用いて、静止回数保持部81に保持されている輝度静止回数を参照しながら、処理対象のフィールド(N−1)の画像の画素ごとに輝度静止回数を求める。そして、輝度静止判定部82は、求めた輝度静止回数を色差静止判定部83およびフィールド補間部52に供給するとともに、輝度静止回数を静止回数保持部81に供給して保持させる。
【0081】
色差静止判定部83には、映像変換装置11に入力されたフィールドNの映像信号と、フレームバッファ22から出力されたフィールド(N−2)の映像信号とが供給される。色差静止判定部83は、供給されたそれらの映像信号と、輝度静止判定部82からの輝度静止回数とを用いて、処理対象のフィールド(N−1)の画像の画素ごとに色差静止回数を求め、求めた色差静止回数をフィールド補間部52に供給する。
【0082】
また、静止判定部51から輝度静止回数および色差静止回数の供給を受け、処理対象のフィールド(N−1)の映像信号の映像形式を変換するフィールド補間部52は、より詳細には図10に示すように構成される。
【0083】
すなわち、フィールド補間部52は、輝度フィールド補間部111および色差フィールド補間部112から構成される。
【0084】
輝度フィールド補間部111には、映像変換装置11に入力されたフィールドNの映像信号、フレームバッファ21から出力されたフィールド(N−1)の映像信号、およびフレームバッファ22から出力されたフィールド(N−2)の映像信号が供給される。
【0085】
輝度フィールド補間部111は、供給されたこれらの映像信号と、輝度静止判定部82からの輝度静止回数とを用いて、処理対象のフィールド(N−1)の画像の画素の輝度成分を補間する。補間により輝度成分が求められる画素は、フィールド(N−1)の画像上の輝度成分を有していない画素のうち、図3のプログレッシブ形式の画像において輝度成分を有する画素と同じ位置にある画素である。輝度フィールド補間部111は、輝度成分が補間された、フィールド(N−1)の画像の映像信号を色差フィールド補間部112に供給する。
【0086】
また、色差フィールド補間部112には、映像変換装置11に入力されたフィールドNの映像信号、フレームバッファ22から出力されたフィールド(N−2)の映像信号、および輝度フィールド補間部111からのフィールド(N−1)の映像信号が供給される。色差フィールド補間部112は、供給されたこれらの映像信号と、色差静止判定部83から供給された色差静止回数とを用いて、処理対象のフィールド(N−1)の画像の画素の色差成分を補間する。
【0087】
補間により色差成分が求められる画素は、フィールド(N−1)の画像上の色差成分を有していない画素のうち、図3のプログレッシブ形式の画像において色差成分を有する画素と同じ位置にある画素である。すなわち、例えば、フィールド(N−1)がトップフィールドであれば、そのフィールドの画像の画素のうち、ボトムフィールドの画像の色差成分を有する画素と同じ位置にある画素の色差成分が補間により求められる。
【0088】
色差フィールド補間部112により映像信号の色差成分が補間されると、映像形式がプログレッシブ形式であり、色差形式が4:2:0であるフィールド(N−1)の映像信号が得られる。すなわち、補間により得られた映像信号に基づく画像は、図3に示した画像と同じものとなる。色差フィールド補間部112は、補間により得られたフィールド(N−1)の映像信号を、映像選択部25に供給する。
【0089】
さらに、IP変換部24において得られた映像信号、またはフレームバッファ21から出力された映像信号の何れか一方が映像選択部25において選択され、選択された映像信号の色差形式が色差形式変換部26において変換される。
【0090】
映像信号の色差形式を変換する図1の色差形式変換部26は、より詳細には、図11に示すように構成される。
【0091】
すなわち、色差形式変換部26は、類似判定部141および色差位相補間部142から構成される。
【0092】
類似判定部141は、色差フィールド補間部112からの映像信号を用いて、その映像信号に基づく画像の画素について、その画素の周囲の2つの画素の組みのうち、画素同士の輝度成分が最も類似する組の画素の位置関係から定まる方向を類似方向とする。類似判定部141は、画素ごとに求めた類似方向を色差位相補間部142に供給する。
【0093】
なお、処理対象のフィールド(N−1)の画像において、類似方向の求められる画素は、画像上の色差成分を有する画素と、その画素とy方向に隣り合う、色差成分を有する他の画素との中間の位置(位相)にある画素とされる。
【0094】
色差位相補間部142は、色差フィールド補間部112からの映像信号と、類似判定部141から供給された類似方向とを用いて、処理対象のフィールド(N−1)の映像信号に基づく画像の色差成分を補間する。色差位相補間部142は、補間により得られた、色差形式が4:2:2である映像信号を出力する。
【0095】
例えば、図12に示す画像の映像信号が色差形式変換部26に供給されたとする。なお、図12において、実線の1つの円および四角形は、輝度成分および色差成分を有する画素を示しており、図中、縦方向および横方向はy方向およびx方向を示している。また、輝度成分を有する画素を表す円の濃淡は、その画素の有する輝度成分の値の大きさを示している。すなわち、濃度の同じ画素同士は、同じ輝度成分の値を有している。
【0096】
図12において、図中、左側の長方形はフィールド(N−1)の画像を表しており、その画像の図中、右側には、フィールド(N−1)の画像上の一部分の領域が拡大されて示されている。
【0097】
いま、例えば、点線の円で表される画素G11の類似方向を求めることを考える。画素G11は、y方向に並べられた、色差成分を有する画素G12と画素G13との中間の位置にある画素である。
【0098】
画素G11の類似方向は、画素G11近傍に位置する、予め定められた2つの画素の組みのうち、画素同士の輝度成分が最も類似する画素の組みから定まる。例えば、輝度成分が最も類似する画素の組みが、画素G14および画素G15からなる組みであるとすると、類似方向は、それらの画素G14および画素G15を結ぶ直線の方向とされる。
【0099】
なお、予め定められる画素の組み合わせは、2つの画素を結ぶ直線上に、類似方向を求めようとする画素G11が位置するような組み合わせとされる。また、類似方向は、実際には、選択された画素の組みを構成する2つの画素を示す情報、例えば、画素G14および画素G15を示す情報とされる。
【0100】
画素G11の類似方向が求められると、色差位相補間部142は、求められた画素G11の類似方向を用いて、画素G16および画素G17の色差成分を求める。画素G16は画素G11と画素G12との間の位相の画素であり、画素G17は画素G11と画素G13との間の位相の画素である。
【0101】
なお、これらの画素G16および画素G17の色差成分の求め方の詳細は後述するが、色差成分を有し、類似方向から定まる画素G11近傍の画素と、画素G12および画素G13とから、画素G16および画素G17の色差成分が求められる。このようにしてプログレッシブ形式のフィールド(N−1)の映像信号における色差成分を補間することで、色差形式が4:2:2であり、映像形式がプログレッシブ形式のフィールド(N−1)の映像信号が得られる。
【0102】
[映像変換装置の動作]
次に、以上において説明した映像変換装置11の動作について説明する。
【0103】
映像変換装置11に映像信号が供給され、映像形式がプログレッシブ形式であり、色差形式が4:2:2である映像信号の出力が指示されると、映像変換装置11は、映像信号を、指示された形式の映像信号に変換して出力する映像変換処理を開始する。
【0104】
以下、図13のフローチャートを参照して、映像変換装置11による映像変換処理について説明する。
【0105】
ステップS11において、映像形式判定部23は、フレームバッファ21から供給された、フィールド(N−1)の映像信号に基づいて、その映像信号がインターレース形式の映像信号であるか否かを判定し、その判定結果を映像選択部25に供給する。
【0106】
例えば、映像信号のヘッダには、その映像信号の映像形式が記述される領域が設けられており、映像形式判定部23は、供給された映像信号のヘッダを参照することで、映像信号がインターレース形式かプログレッシブ形式かを特定する。
【0107】
ステップS11において、インターレース形式の映像信号であると判定された場合、ステップS12において、IP変換部24はIP変換処理を行う。なお、IP変換処理の詳細は後述するが、IP変換処理において、フレームバッファ21からIP変換部24に供給されたフィールド(N−1)の映像信号の映像形式が、インターレース形式からプログレッシブ形式に変換される。
【0108】
そして、IP変換処理の施された映像信号はIP変換部24から映像選択部25に供給され、その後、処理はステップS13に進む。
【0109】
一方、ステップS11において、インターレース形式の映像信号でないと判定された場合、映像信号はすでにプログレッシブ形式であるので、ステップS12の処理はスキップされて、処理はステップS13に進む。
【0110】
ステップS12においてIP変換処理が行われるか、ステップS11においてインターレース形式の映像信号ではないと判定されると、ステップS13において、映像選択部25は、映像形式判定部23からの判定結果に基づいて、映像信号を選択する。
【0111】
すなわち、映像選択部25は、映像形式判定部23からの判定結果が、フィールド(N−1)の映像信号の映像形式がインターレース形式である旨の判定結果である場合、IP変換部24の色差フィールド補間部112から供給された映像信号を選択する。
【0112】
これに対して、映像形式判定部23からの判定結果が、フィールド(N−1)の映像信号の映像形式がプログレッシブ形式である旨の判定結果である場合、映像選択部25は、フレームバッファ21から供給された映像信号を選択する。
【0113】
映像選択部25は、選択した映像信号を色差形式変換部26の類似判定部141および色差位相補間部142に供給する。
【0114】
ステップS14において、色差形式変換部26は、色差形式変換処理を行って、映像選択部25から供給された映像信号の色差形式を4:2:0から4:2:2に変換し、その結果得られた映像信号を出力する。これにより、映像形式がプログレッシブ形式であり、色差形式が4:2:2である映像信号が出力される。なお、色差形式変換処理の詳細は後述する。
【0115】
ステップS15において、映像変換装置11は、処理を終了するか否かを判定する。例えば、映像変換装置11への映像信号の供給が終了し、すべてのフィールドの映像信号の色差形式が変換された場合、処理を終了すると判定される。
【0116】
ステップS15において、処理を終了しないと判定された場合、処理はステップS11に戻り、上述した処理が繰り返される。すなわち、次のフィールドが処理対象とされて、そのフィールドの映像信号の色差形式が変換される。
【0117】
これに対して、ステップS15において、処理を終了すると判定された場合、映像変換装置11の各部は行っている処理を終了し、映像変換処理は終了する。
【0118】
このようにして、映像変換装置11は、供給された映像信号がインターレース形式である場合には、その映像信号の映像形式をプログレッシブ形式に変換し、さらにプログレッシブ形式の映像信号の色差形式を変換して、映像信号を出力する。
【0119】
このように、映像信号がインターレース形式である場合に、映像信号の映像形式をプログレッシブ形式に変換してから色差形式を変換することで、画像の画質の劣化を抑制することができる。
【0120】
すなわち、従来は、まず映像信号の色差形式が4:2:0から4:2:2に変換されていた。例えば、図2の左側に示したトップフィールドの画像の色差形式を変換するものとし、画像におけるLine0からLine6までの領域は青い色の領域であり、Line7からLine10までの領域は赤い色の領域であるものとする。
【0121】
いまLine4の図中、一番左端の画素を注目画素とし、その注目画素の色差成分を補間により求める場合、従来は、Line1の左端の画素とLine9の左端の画素とから注目画素の色差成分が求められる。この場合、Line1の左端の画素は青い領域の画素であり、Line9の左端の画素は赤い領域の画素であるから、注目画素の色差成分は、赤と青とが混ざった色を示す値となる。
【0122】
また、Line0からLine6までの領域は青い色の領域であるため、このトップフィールドに続くボトムフィールドのLine5の左端の画素の色差成分は青い色を示す値となる。したがって、これらの連続するフィールドの画像から最終的に得られた2つの画像を順番に表示させると、観察者には、青い領域中に、水平方向に赤と青の混ざった色の線が表示されるように見えることになり、画像の画質が劣化してしまう。
【0123】
これに対して、映像変換装置11では、映像信号の映像形式が変換されてから、色差形式の変換が行われる。
【0124】
例えば、図2の左側に示したトップフィールドの画像における、Line5の図中、一番左端の画素を注目画素とし、その注目画素の色差成分を補間により求めて、映像信号の映像形式を変換することを考える。
【0125】
ここで、図2の各フィールドの画像におけるLine0からLine6までの領域は青い色の領域であり、Line7からLine10までの領域は赤い色の領域であるものとする。この場合、仮に注目画素の色差成分を注目画素の空間的近傍の画素のみを用いて補間するとしても、従来の場合と比べて画質の劣化は少ない。
【0126】
すなわち、注目画素の色差成分がLine1の左端の画素とLine9の左端の画素とから求められると、注目画素の色差成分は、従来における場合と同様に赤と青とが混ざった色を示す値となる。しかし、トップフィールドの画像における注目画素と、そのトップフィールドに時間的に連続するボトムフィールドの画像の画素とを比較すると、ボトムフィールドの画像における、注目画素よりも図中、下側の画素の色差成分は、全て赤い色を示す値となる。
【0127】
したがって、これらの連続するフィールドの画像から最終的に得られた2つの画像を表示させても、青い領域中に水平方向に赤と青の混ざった色の線が表示されるようなことはない。つまり、色差形式を変換してから映像形式を変換する場合と比べて、より画像の画質の劣化を防止することができる。
【0128】
なお、このように色差成分の劣化の少ないプログレッシブ形式の映像信号を用いて、その映像信号の色差形式を変換すれば、色差形式の変換による画質の劣化もより少なくなる。したがって、色差形式が4:2:0であり映像形式がインターレース形式である映像信号から、色差形式が4:2:2であり映像形式がプログレッシブ形式である映像信号を得る場合、最終的に、従来の方法と比べて、より高画質な映像信号を得ることができる。
【0129】
以上のように、映像信号の映像形式をプログレッシブ形式に変換してから色差形式を変換することで、画像の画質を向上させることができる。
【0130】
次に、図14のフローチャートを参照して、図13のステップS12の処理に対応するIP変換処理について説明する。
【0131】
ステップS41において、輝度静止判定部82は、供給されたフィールドNおよびフィールド(N−2)の映像信号と、静止回数保持部81に保持されている輝度静止回数とから、フィールド(N−1)の画像の輝度成分の静止判定を行う。
【0132】
例えば、図15に示すように、フィールド(N−1)の画像上の画素G31の輝度静止回数を求める場合、輝度静止判定部82は、フィールドNおよびフィールド(N−2)の画像における、画素G31と同じ位置近傍の画素を用いて輝度静止回数を求める。
【0133】
なお、図15において、横方向は時間を示しており、縦方向および奥行き方向はy方向およびx方向を示している。また、図中、実線の1つの円および四角形は、各フィールドの画像における輝度成分および色差成分を有する画素を表している。
【0134】
さらに、時刻tがN,N−1,N−2のそれぞれの位置は、フィールドN乃至フィールド(N−2)の位置を示しており、それらの時刻tの位置における円または四角形は、時刻tにより特定されるフィールドの画像上の画素を示している。
【0135】
まず、輝度静止判定部82は、フィールドNの画像における、画素G31と同位相の画素G32を中心とし、画素G32と連続してx方向に隣接するいくつかの画素の輝度成分の値を用いて、画像の輝度成分に対してx方向にLPF(Low Pass Filter)処理を施す。
【0136】
図15の例では、画素G32と、その画素G32にx方向に隣接する画素G33および画素G34とが用いられてLPF処理が行われている。なお、これらの画素G32乃至画素G34を用いたLPF処理によって得られた値をフィルタ値L-LPF(N)と呼ぶこととする。
【0137】
同様に、輝度静止判定部82は、フィールド(N−2)の画像における、画素G31と同位相の画素G35を中心とし、画素G35と連続してx方向に隣接するいくつかの画素の輝度成分の値を用いて、画像の輝度成分に対してx方向にLPF処理を施す。
【0138】
図15の例では、画素G35と、その画素G35にx方向に隣接する画素G36および画素G37とが用いられてLPF処理が行われている。なお、これらの画素G35乃至画素G37を用いたLPF処理によって得られた値をフィルタ値L-LPF(N-2)と呼ぶこととする。
【0139】
このように、各フィールドの画像の輝度成分に対してLPF処理を施すことで、画像の輝度成分に含まれるノイズを除去し、輝度の静止判定、つまり画素G31の輝度成分の動きの有無の判定精度を向上させることができる。
【0140】
輝度静止判定部82は、フィールドNのフィルタ値L-LPF(N)、およびフィールド(N−2)のフィルタ値L-LPF(N-2)を求めると、それらのフィルタ値の絶対値差分L-ABS(N-1)を算出する。
【0141】
次に、輝度静止判定部82は、計算により得られた画素G31の絶対値差分L-ABS(N-1)を評価するための閾値L-TH(N-1)を求める。この閾値L-TH(N-1)の値は、フィールド(N−1)よりも時間的に前の連続するフィールドの画像における、画素G31と同じ位置にある画像上の画素が、どれくらいの時間だけ静止していたか(輝度成分が変化しなかったか)によって変化する。
【0142】
処理対象のフィールド(N−1)よりも時間的に2フィールド前、つまりフィールド(N−3)の画像における、画素G31と同じ位置にある画素の輝度静止回数を、SL(N-3)であるとすると、静止回数保持部81は、輝度静止回数SL(N-3)を保持している。
【0143】
輝度静止判定部82は、静止回数保持部81の輝度静止回数SL(N-3)と、予め保持している閾値テーブルとから、閾値L-TH(N-1)の値を定める。
【0144】
例えば、輝度静止判定部82が保持している閾値テーブルは、輝度静止回数(輝度静止回数SL(N-3))に対して、閾値L-TH(N-1)が図16に示すように変化するテーブルとされる。なお、図16において、縦軸は閾値L-TH(N-1)の値を示しており、横軸は輝度静止回数の値を示している。
【0145】
図16の例では、輝度静止回数が初期値SL0である場合には、閾値L-TH(N-1)の値はTH-SL0とされ、輝度静止回数がSL1となるまでは、輝度静止回数に比例して閾値L-TH(N-1)の値が低下する。すなわち、輝度静止回数が増加するにつれて、閾値L-TH(N-1)の値は小さくなる。そして、輝度静止回数がSL1以上となると、閾値L-TH(N-1)の値は一定となり、その値はTH-SL1とされる。
【0146】
画素G31の輝度成分の動きの有無の判定では、絶対値差分L-ABS(N-1)が閾値L-TH(N-1)以下である場合に画素G31は静止しているとされ、絶対値差分L-ABS(N-1)が閾値L-TH(N-1)を超える場合に画素G31は静止していないとされる。
【0147】
これは、絶対値差分L-ABS(N-1)が、画素G31と同位相の画素G32と画素G35の差分の絶対値を示しており、その絶対値が小さければフィールドN乃至(N−2)において、画素G31と同位相の画素の輝度成分はほとんど変化していないからである。
【0148】
このような閾値テーブルにより定まる閾値L-TH(N-1)を用いて、画素G31の輝度成分の動きの有無を判定する場合、輝度静止回数が比較的小さいときには、輝度成分の動きの有無は、大きい値の閾値L-TH(N-1)により緩く評価される。つまり、過去のフィールドの画素G31と同じ位相の画素が静止していると判定されなかったとき、またはその画素が静止してからあまり時間が経過していないときには、閾値L-TH(N-1)は比較的大きい値とされる。
【0149】
また、輝度静止回数が増加するにしたがって、より小さい値の閾値L-TH(N-1)が用いられ、画素G31の輝度成分の動きの有無の判定が、より厳密に行われる。さらに輝度静止回数がSL1を超えると一定の大きさの閾値L-TH(N-1)により、画素G31の輝度成分の動きの有無が判定される。これは、LPF処理により輝度成分からノイズ成分を除去しきれなかった場合にも、画素G31の輝度成分が静止していると判定され続けるようにするためである。
【0150】
以上のようにして、閾値L-TH(N-1)が得られると、輝度静止判定部82は、閾値L-TH(N-1)と絶対値差分L-ABS(N-1)とを比較して、画素G31の輝度成分の動きの有無を判定する。
【0151】
そして、輝度静止判定部82は、絶対値差分L-ABS(N-1)が閾値L-TH(N-1)以下である場合、画素G31の輝度成分が静止しているとして、輝度静止回数SL(N-3)に1を加えた値を、フィールド(N−1)の画素G31の輝度静止回数SL(N-1)とする。
【0152】
また、輝度静止判定部82は、絶対値差分L-ABS(N-1)が閾値L-TH(N-1)を超える場合、画素G31の輝度成分が静止していないとして、予め定められた初期値SL0を、フィールド(N−1)の画素G31の輝度静止回数SL(N-1)とする。
【0153】
さらに、輝度静止判定部82は、新たに求めた輝度静止回数SL(N-1)を静止回数保持部81に供給し、画素G31に相当する画素の輝度静止回数を更新させる。静止回数保持部81は、これまで保持していた、画素G31に相当する画素の輝度静止回数SL(N-3)を、供給された輝度静止回数SL(N-1)に書き換えることにより、輝度静止回数を更新する。
【0154】
このようにして、輝度静止判定部82は、フィールド(N−1)の画像における、輝度の静止判定をすべき、すなわち輝度静止回数を求めるべき全ての画素について、輝度静止回数を求める。また、輝度静止判定部82は、求めた各画素の輝度静止回数を、色差静止判定部83および輝度フィールド補間部111に供給する。
【0155】
なお、輝度静止判定部82が保持する閾値テーブルは、各画素の静止判定の判定精度を決めるものとなる。すなわち、閾値L-TH(N-1)が大きすぎると、画像上の輝度成分が動いている画素が静止していると誤判定され、逆に閾値L-TH(N-1)が小さすぎると、画像上の輝度成分が静止している画素が動いていると誤判定される。画素の静止判定の処理は、IP変換処理の処理性能を決めるのに非常に重要な処理であるため、一般的に静止判定の演算には高い計算精度が要求される。
【0156】
また、以上において説明した画素の輝度成分の静止判定の方法は、静止判定の一例であり、画素単位で輝度成分の静止回数が求まるのであれば、どのような方法であってもよい。
【0157】
図14のフローチャートの説明に戻り、ステップS41において輝度成分の静止判定が行われると、その後、処理はステップS42に進む。
【0158】
ステップS42において、色差静止判定部83は、供給されたフィールドNおよびフィールド(N−2)の映像信号と、輝度静止判定部82から供給された輝度静止回数とから、フィールド(N−1)の画像の色差成分の静止判定を行う。
【0159】
例えば、図17に示すように、フィールド(N−1)の画像上の画素G51の色差静止回数を求める場合、色差静止判定部83は、フィールドNおよびフィールド(N−2)の画像における、画素G51と同じ位置近傍の画素を用いて色差静止回数を求める。
【0160】
なお、図17において横方向は時間を示しており、縦方向および奥行き方向はy方向およびx方向を示している。また、図中、実線で表される1つの円および四角形は、各フィールドの画像における輝度成分および色差成分を有する画素を示しており、点線で表される1つの円は、各フィールドの画像における輝度静止回数の求められた画素を示している。
【0161】
さらに、時刻tがN,N−1,N−2のそれぞれの位置は、フィールドN乃至フィールド(N−2)の位置を示しており、それらの時刻tの位置における円または四角形は、時刻tにより特定されるフィールドの画像上の画素を示している。
【0162】
まず、色差静止判定部83は、フィールドNの画像における、画素G51と同じ位置にある画素G52を中心とし、画素G52と連続してx方向に隣接するいくつかの画素の色差成分の値を用いて、画像の色差成分に対してx方向にLPF処理を施す。
【0163】
図17の例では、画素G52と、その画素G52にx方向に隣接する画素G53および画素G54とが用いられてLPF処理が行われている。なお、これらの画素G52乃至画素G54を用いたLPF処理によって得られた値をフィルタ値C-LPF(N)と呼ぶこととする。
【0164】
また、色差静止判定部83は、フィールド(N−2)の画像における、画素G51と同位相の画素G55を中心とし、画素G55と連続してx方向に隣接するいくつかの画素の色差成分の値を用いて、画像の色差成分に対してx方向にLPF処理を施す。
【0165】
図17の例では、画素G55と、その画素G55にx方向に隣接する画素G56および画素G57とが用いられてLPF処理が行われている。なお、これらの画素G55乃至画素G57を用いたLPF処理により得られた値をフィルタ値C-LPF(N-2)と呼ぶこととする。
【0166】
このように、各フィールドの画像の色差成分に対してLPF処理を施すことで、画像の色差成分に含まれるノイズを除去し、色差の静止判定、つまり画素G51の色差成分の動きの有無の判定精度を向上させることができる。
【0167】
色差静止判定部83は、フィールドNのフィルタ値C-LPF(N)、およびフィールド(N−2)のフィルタ値C-LPF(N-2)を求めると、それらのフィルタ値の絶対値差分C-ABS(N-1)を算出する。
【0168】
次に、色差静止判定部83は、計算により得られた画素G51の絶対値差分C-ABS(N-1)を評価するための閾値C-TH(N-1)を求める。この閾値C-TH(N-1)の値は、画素G51の色差静止回数SC(N-1)と、色差静止判定部83が予め保持している閾値テーブルとから、輝度静止回数の閾値L-TH(N-1)と同様の処理により求められる。
【0169】
すなわち、色差静止判定部83は、画素G51の空間的近傍にある画素G58および画素G59、並びに画素G51の時間的近傍にある画素G60のそれぞれの輝度静止回数のうち、最も小さい輝度静止回数を画素G51の色差静止回数SC(N-1)とする。
【0170】
ここで、画素G58および画素G59は、フィールド(N−1)の画像上における画素G51近傍に位置し、画素G51とx方向の位置が等しい画素である。つまり、画素G51、画素G58、および画素G59は、y方向に1列に並ぶように位置している。また、画素G60は、画素G51とx方向の位置の等しいフィールド(N−2)の画像上の画素である。
【0171】
このように、画素G51近傍の画素の輝度静止回数のうちの最も小さいものが、色差静止回数SC(N-1)とされるのは、画像の絵柄として輝度成分に変動がある場合、色差成分も変動することが非常に多いためである。
【0172】
つまり、輝度成分と色差成分には相関が成り立つという仮定に基づいて、輝度静止回数が近似的に色差静止回数とされる。また、画素G51近傍の1つの画素の輝度成分が静止していない場合、例え、その画素よりも画素G51に近い他の画素の輝度成分が静止していたとしても、画素G51が輝度成分の動いている画素の影響受け、画素G51の色差成分が静止していないこともある。
【0173】
そこで、画素G51から画素G58乃至画素G60のそれぞれまでの距離は異なるが、それらの画素が画素G51からの距離によらず同等に扱われ、画素G58乃至画素G60のうちの最も少ない輝度静止回数が色差静止回数とされる。
【0174】
さらに、色差静止判定部83は、画素G51の色差静止回数SC(N-1)を求めると、その色差静止回数SC(N-1)と、予め保持している閾値テーブルとから閾値C-TH(N-1)を求める。
【0175】
例えば、色差静止判定部83が保持している閾値テーブルは、色差静止回数(色差静止回数SC(N-1))に対して、閾値C-TH(N-1)が図18に示すように変化するテーブルとされる。なお、図18において、縦軸は閾値C-TH(N-1)の値を示しており、横軸は色差静止回数の値を示している。
【0176】
図18の例では、色差静止回数が初期値SC0からSC1未満のときには、閾値C-TH(N-1)の値はTH-SC0とされ、色差静止回数がSC1のときは、閾値C-TH(N-1)の値はTH-SC1とされる。そして、色差静止回数がSC1からSC2となるまでは、色差静止回数に比例して閾値C-TH(N-1)の値が低下する。すなわち、色差静止回数が増加するにつれて、閾値C-TH(N-1)の値は小さくなる。さらに、色差静止回数がSC2以上となると、閾値C-TH(N-1)の値は一定となり、その値はTH-SC2とされる。
【0177】
画素G51の色差成分の動きの有無の判定では、絶対値差分C-ABS(N-1)が閾値C-TH(N-1)以下である場合、画素G51は静止しているとされ、絶対値差分C-ABS(N-1)が閾値C-TH(N-1)を超える場合に画素G51は静止していないとされる。
【0178】
色差静止判定部83は、絶対値差分C-ABS(N-1)が閾値C-TH(N-1)以下である場合には、求めた色差静止回数SC(N-1)を、そのまま最終的な画素G51の色差静止回数として、色差フィールド補間部112に供給する。また、色差静止判定部83は絶対値差分C-ABS(N-1)が閾値C-TH(N-1)を超える場合、画素G51の色差成分に動きがあったので、求めた色差静止回数ではなく、画素G51の最終的な色差静止回数SC(N-1)として「0」を色差フィールド補間部112に供給する。
【0179】
このように、絶対値差分C-ABS(N-1)と閾値C-TH(N-1)とを比較して画素の色差成分の動きの有無を判定するのは、以下のような理由からである。つまり、絶対値差分C-ABS(N-1)が、画素G51と同位相の画素G52と画素G55の差分の絶対値を示しており、その絶対値が小さければフィールドN乃至(N−2)において、画素G51と同じ位相の画素の色差成分は変化していないからである。
【0180】
閾値テーブルにより定まる閾値C-TH(N-1)を用いて、画素G51の色差成分の動きの有無を判定する場合、色差静止回数が比較的小さいときには、小さい値の閾値C-TH(N-1)により厳密に判定が行われる。これは、色差静止回数が充分な回数に達していない場合には、閾値を用いた画素G51の色差成分の動きの有無の判定結果は、信頼性が低いとすることを意味している。
【0181】
なお、色差静止回数は、輝度静止回数からフィールドごとに計算されて求められるため、初期の閾値C-TH(N-1)が最小値であったとしても、処理対象の画素の色差成分が継続して静止していれば、その色差静止回数は時間とともに増加する。
【0182】
以上のようにして、閾値C-TH(N-1)が得られると、色差静止判定部83は、閾値C-TH(N-1)と絶対値差分C-ABS(N-1)とを比較して、画素G51の色差成分の動きの有無を判定する。なお、より詳細には、色差静止判定部83は、画素G51の色差静止回数として、Cr成分の色差静止回数およびCb成分の色差静止回数を個別に求める。この場合、絶対値差分C-ABS(N-1)は、色差成分(Cr成分およびCb成分)ごとに求められる。
【0183】
また、画素G51の色差静止回数と同様に、色差静止判定部83は、フィールド(N−1)の画像における、色差静止回数を求めるべき全ての画素について、色差静止回数を求め、色差フィールド補間部112に供給する。
【0184】
このように、輝度静止回数を用いて、フィールドごとに色差静止回数を求めることにより、色差静止回数を保持しておくメモリを削減することができるとともに、色差静止回数の計算コストを削減することができる。また、色差成分よりも画像に多く含まれ、かつより変動の大きい輝度成分を用いて得られた輝度静止回数を、色差静止回数の算出に用いることで、色差静止回数の算出精度を向上させることができる。
【0185】
なお、以上においては、輝度静止回数を用いて色差静止回数を求めると説明したが、輝度静止回数を用いずに、輝度静止回数と同様の処理等により色差静止回数を求めるようにしてもよい。
【0186】
図14のフローチャートの説明に戻り、ステップS42において色差成分の静止判定が行われると、その後、処理はステップS43に進む。
【0187】
ステップS43において、輝度フィールド補間部111は、フィールドNおよびフィールド(N−2)の映像信号と、輝度静止判定部82からの輝度静止回数とを用いて、フレームバッファ21からのフィールド(N−1)の映像信号の輝度成分の補間を行う。
【0188】
例えば、図19に示すように、フィールド(N−1)の画像上の画素G31の輝度成分を補間する場合、輝度フィールド補間部111は、画素G31の空間的または時間的に近傍にあり、輝度成分を有する画素を用いて補間を行う。
【0189】
なお、図19において、図15における場合と同一の部分には、同じ符号を付してあり、その説明は適宜、省略する。また、図19では、横方向は時間を示しており、縦方向および奥行き方向はy方向およびx方向を示している。また、図中、実線の1つの円および四角形は、各フィールドの画像における輝度成分および色差成分を有する画素を表している。
【0190】
さらに、時刻tがN,N−1,N−2のそれぞれの位置は、フィールドN乃至フィールド(N−2)の位置を示しており、それらの時刻tの位置における円または四角形は、時刻tにより特定されるフィールドの画像上の画素を示している。
【0191】
まず、輝度フィールド補間部111は、フィールド(N−1)の画像上における輝度成分を有する画素のうち、画素G31にy方向に隣接する画素G81および画素G82の輝度成分の平均値LII(N-1)を求める。同様に、輝度フィールド補間部111は、フィールド(N−1)に対して時間的に前後するフィールドの画像における、画素G31と同じ位相の画素G32および画素G35の輝度成分の平均値LIT(N-1)を求める。
【0192】
そして、輝度フィールド補間部111は、これらの平均値LII(N-1)および平均値LIT(N-1)を、画素G31の輝度静止回数から定まる比率RL(N-1)で混ぜ合わせることにより、画素G31の補間された輝度成分の値である輝度補間値を算出する。すなわち、平均値LIT(N-1)にRL(N-1)を乗算して得られる値と、平均値LII(N-1)に(1−RL(N-1))を乗算して得られる値との和が画素G31の輝度補間値とされる。
【0193】
この比率RL(N-1)は、平均値LII(N-1)に対する平均値LIT(N-1)の混ぜ合わせの比率を示すものであり、輝度補間値には、比率RL(N-1)が高いほど平均値LIT(N-1)の成分がより多く含まれ、比率RL(N-1)が低いほど平均値LII(N-1)の成分がより多く含まれることになる。
【0194】
また、比率RL(N-1)は、輝度フィールド補間部111が予め保持している比率テーブルと、画素G31の輝度静止回数とから定められる。
【0195】
例えば、輝度フィールド補間部111が保持している比率テーブルは、輝度静止回数に対して、比率RL(N-1)が図20に示すように変化するテーブルとされる。なお、図20において、縦軸は比率RL(N-1)の値を示しており、横軸は輝度静止回数の値を示している。
【0196】
図20の例では、輝度静止回数が初期値SL0である場合には、比率RL(N-1)の値はRL-SL0とされ、輝度静止回数がSL1となるまでは、輝度静止回数に比例して比率RL(N-1)の値が増加する。すなわち、輝度静止回数が増加するにつれて、比率RL(N-1)の値は大きくなる。そして、輝度静止回数がSL1以上となると、比率RL(N-1)の値は一定となり、その値はRL-SL1とされる。
【0197】
画素G31の輝度静止回数が少ない場合、画素G31の輝度成分は動いているため、画素G31の時間的に近傍に位置する画素の輝度成分よりも、画素G31の空間的に近傍に位置する画素の輝度成分の方が、より画素G31の輝度成分に近いと推定される。逆に、画素G31の輝度静止回数が多い場合、画素G31の輝度成分は静止しているため、画素G31の時間的に近傍に位置する画素の輝度成分の方が、画素G31の空間的に近傍に位置する画素の輝度成分よりも、より画素G31の輝度成分に近いと推定される。
【0198】
そこで、画素G31の輝度静止回数が少ない場合には、より比率RL(N-1)が小さく、輝度静止回数が多くなるほど比率RL(N-1)がより大きくなるように、予め比率テーブルが定められている。
【0199】
輝度フィールド補間部111は、このような比率テーブルを参照して、輝度静止回数により定まる値を比率RL(N-1)の値とし、画素G31の輝度補間値を求める。同様にして、輝度フィールド補間部111は、フィールド(N−1)の画像における、輝度成分を求めるべき全ての画素について、輝度補間値を求める。
【0200】
これにより、輝度成分の補間されたフィールド(N−1)の映像信号が得られる。輝度フィールド補間部111は、得られた映像信号を色差フィールド補間部112に供給する。
【0201】
図14のフローチャートの説明に戻り、ステップS43において輝度成分の補間が行われると、その後、処理はステップS44に進む。
【0202】
ステップS44において、色差フィールド補間部112は、フィールドNおよびフィールド(N−2)の映像信号と、色差静止判定部83からの色差静止回数とを用いて、輝度フィールド補間部111からのフィールド(N−1)の映像信号の色差成分の補間を行う。
【0203】
例えば、図21に示すように、フィールド(N−1)の画像上の画素G51の色差成分を補間する場合、色差フィールド補間部112は、画素G51の空間的または時間的に近傍にある、色差成分を有する画素を用いて補間を行う。
【0204】
なお、図21において、図17における場合と同一の部分には、同じ符号を付してあり、その説明は適宜、省略する。また、図21では、横方向は時間を示しており、縦方向および奥行き方向はy方向およびx方向を示している。また、図中、実線で表される1つの円および四角形は、各フィールドの画像における輝度成分および色差成分を有する画素を示している。
【0205】
さらに、時刻tがN,N−1,N−2のそれぞれの位置は、フィールドN乃至フィールド(N−2)の位置を示しており、それらの時刻tの位置における円または四角形は、時刻tにより特定されるフィールドの画像上の画素を示している。
【0206】
まず、色差フィールド補間部112は、フィールド(N−1)の画像上における色差成分を有する画素のうち、画素G51にy方向に隣接する画素G111および画素G112の色差成分の平均値CII(N-1)を求める。同様に、色差フィールド補間部112は、フィールド(N−1)に対して時間的に前後するフィールドの画像における、画素G51と同じ位相の画素G52および画素G55の色差成分の平均値CIT(N-1)を求める。
【0207】
そして、色差フィールド補間部112は、これらの平均値CII(N-1)および平均値CIT(N-1)を、画素G51の色差静止回数から定まる比率RC(N-1)で混ぜ合わせることにより、画素G51の補間された色差成分の値である色差補間値を算出する。すなわち、平均値CIT(N-1)にRC(N-1)を乗算して得られる値と、平均値CII(N-1)に(1−RC(N-1))を乗算して得られる値との和が画素G51の色差補間値とされる。
【0208】
この比率RC(N-1)は、平均値CII(N-1)に対する平均値CIT(N-1)の混ぜ合わせの比率を示すものである。色差補間値には、比率RC(N-1)が高いほど平均値CIT(N-1)の成分がより多く含まれ、比率RC(N-1)が低いほど平均値CII(N-1)の成分がより多く含まれることになる。
【0209】
また、比率RC(N-1)は、色差フィールド補間部112が予め保持している比率テーブルと、画素G51の色差静止回数とから定められる。
【0210】
例えば、色差フィールド補間部112が保持している比率テーブルは、色差静止回数に対して、比率RC(N-1)が図22に示すように変化するテーブルとされる。なお、図22において、縦軸は比率RC(N-1)の値を示しており、横軸は色差静止回数の値を示している。
【0211】
図22の例では、色差静止回数が初期値SC0(例えば0)である場合には、比率RC(N-1)の値はRC-SC0とされ、色差静止回数がSC1となるまでは、色差静止回数に比例して比率RC(N-1)の値が増加する。すなわち、色差静止回数が増加するにつれて、比率RC(N-1)の値は大きくなる。そして、色差静止回数がSC1以上となると、比率RC(N-1)の値は一定となり、その値はRC-SC1とされる。
【0212】
画素G51の色差静止回数が少ない場合、画素G51の色差成分は動いているため、画素G51の時間的に近傍に位置する画素の色差成分よりも、画素G51の空間的に近傍に位置する画素の色差成分の方が、より画素G51の色差成分に近いと推定される。逆に、画素G51の色差静止回数が多い場合、画素G51の色差成分は静止しているため、画素G51の時間的に近傍に位置する画素の色差成分の方が、画素G51の空間的に近傍に位置する画素の色差成分よりも、より画素G51の色差成分に近いと推定される。
【0213】
そこで、画素G51の色差静止回数が少ない場合には、より比率RC(N-1)が小さく、色差静止回数が多くなるほど比率RC(N-1)がより大きくなるように、予め比率テーブルが定められている。
【0214】
色差フィールド補間部112は、このような比率テーブルを参照して、色差静止回数により定まる値を比率RC(N-1)の値とし、画素G51の色差補間値を求める。なお、より詳細には、色差フィールド補間部112は、画素G51の色差成分として、Cr成分およびCb成分を個別に求める。この場合、平均値CII(N-1)、平均値CIT(N-1)、および比率RC(N-1)は、色差成分(Cr成分およびCb成分)ごとに求められる。
【0215】
また、同様にして、色差フィールド補間部112は、フィールド(N−1)の画像における、色差成分を求めるべき全ての画素について、色差補間値を求める。
【0216】
このようにして色差成分が補間されると、映像形式がプログレッシブ形式に変換されたフィールド(N−1)の映像信号が得られる。色差フィールド補間部112は、得られた映像信号を映像選択部25に供給する。
【0217】
プログレッシブ形式の映像信号が映像選択部25に供給されると、図14のIP変換処理は終了し、その後、処理は、図13のステップS13に進む。
【0218】
以上のようにして、IP変換部24は、処理対象のフィールドの画像における、輝度成分および色差成分の静止回数を求める。そして、IP変換部24は、求めた静止回数に応じて、注目する画素の時間的または空間的に近傍に位置する画素を用いて輝度成分および色差成分を補間し、映像信号の映像形式をインターレース形式からプログレッシブ形式に変換する。
【0219】
このように、IP変換処理において、画像の画素の色差静止回数に応じて、処理対象の画素の空間的または時間的に近傍の画素を用いて補間処理を行うことで、より精度よく画素の色差成分を推定することができる。これにより、色のフリッカーやジャギー、クロマアップサンプリングエラー等の発生を抑制し、画像の画質を向上させることができる。
【0220】
つまり、上述のように、色差形式の変換前にIP変換処理を行えば、画質の劣化を抑制することができるが、IP変換処理において、各成分の静止回数に応じて空間的または時間的に近傍の画素を用いた補間処理を行うことで、さらに画質の劣化を抑制できる。
【0221】
また、輝度成分と色差成分との相関関係を利用し、処理対象の画素近傍の画素の輝度静止回数を用いて処理対象の画素の色差静止回数を求めるようにしたので、色差静止回数を求めるのに必要となるメモリの記憶容量を削減することができる。
【0222】
さらに、輝度成分と色差成分との相関関係を利用し、輝度静止回数を用いて色差静止回数を求めることで、より精度よく、かつより簡単な計算で色差静止回数を得ることができる。すなわち、輝度成分は色差成分と比べて変化が大きく、画素の輝度成分が静止しているか否かの判定を精度よく行うことができるので、輝度静止回数を利用して色差静止回数を求めれば、色差静止回数の算出精度を向上させることができる。
【0223】
次に、図23のフローチャートを参照して、図13のステップS14の処理に対応する色差形式変換処理について説明する。
【0224】
ステップS71において、類似判定部141は、色差フィールド補間部112からの映像信号を用いて類似判定処理を行い、映像信号に基づく画像の画素ごとに類似方向を求める。そして、類似判定部141は、求めた類似方向を色差位相補間部142に供給する。
【0225】
例えば、図24に示すように、供給されたフィールド(N−1)の映像信号に基づく画像上の画素G141の類似方向を求めることを考える。なお、図24において、縦方向および横方向はy方向およびx方向を示しており、1つの円および四角形(但し、画素G141を除く)は、画像における輝度成分および色差成分を有する画素を示している。
【0226】
画素G141の類似方向の算出には、画素G141にy方向に隣接する画素G142を含み、その画素G142を中心としてx方向に連続して並べられたいくつかの画素が用いられる。例えば、図24の例では、画素G142乃至画素G146である。また、類似方向の算出には、画素G141にy方向に隣接する画素G147を含み、その画素G147を中心としてx方向に連続して並べられたいくつかの画素も用いられる。例えば、図24の例では、画素G147乃至画素G151である。
【0227】
つまり、類似判定部141は、画素G141の空間的近傍に位置する、これらの画素G142乃至画素G151を用いて画素G141の類似方向を求める。
【0228】
具体的には、類似判定部141は、画素G146と画素G148の輝度成分の絶対値差分AL(5-1)、画素G145と画素G149の輝度成分の絶対値差分AL(4-2)、および画素G142と画素G147の輝度成分の絶対値差分AL(3-3)を求める。また、類似判定部141は、画素G144と画素G150の輝度成分の絶対値差分AL(2-4)、および画素G143と画素G151の輝度成分の絶対値差分AL(1-5)を求める。
【0229】
つまり、画素G141の近傍に位置し、輝度成分を有する画素G142乃至画素G151のなかから、それらの画素のうちの2つの画素と、画素G141とが直線上に並ぶような2つの画素が選択され、選択された2つの画素の輝度成分の絶対値差分が求められる。
【0230】
各画素の組みの絶対値差分が求められると、類似判定部141は、それらの絶対値差分AL(5-1)乃至絶対値差分AL(1-5)のうちの最も値の小さい絶対値差分を選択し、選択した絶対値差分を求めるのに用いた2つの画素を結ぶ直線の方向を類似方向とする。
【0231】
例えば、絶対値差分AL(5-1)が最も小さい絶対値差分である場合、画素G146と画素G148とを示す情報が、類似方向を示す情報とされる。この場合、類似方向は、画素G146と画素G148とを結ぶ直線と平行な方向である。
【0232】
この類似方向は、画素G141近傍において最も輝度成分の変化の少ない方向、つまり互いに類似する画素が並ぶ方向である。換言すれば、画素G141近傍において、画素G141と最も類似する画素が並んでいる方向である。類似方向を求めるために輝度成分が用いられるのは、輝度の特徴として、輝度と色差とはある程度相関関係を有しており、色差と比べて輝度の方がより大きく変化するため、より確実に画素同士の類似の度合いを検出できるからである。
【0233】
図23のフローチャートの説明に戻り、類似方向が求められると処理はステップS71からステップS72に進む。
【0234】
ステップS72において、色差位相補間部142は、類似判定部141からの類似方向を用いて、色差フィールド補間部112から供給された映像信号に基づく画像の色差成分の補間を行う。
【0235】
例えば、図25に示すように、供給されたフィールド(N−1)の映像信号に基づく画像上の画素G142および画素G147の色差成分を補間により求めることを考える。なお、図25において、図24における場合と対応する部分には同一の符号を付してあり、その説明は適宜、省略する。
【0236】
まず、色差位相補間部142は、画素G141近傍に位置する画素のうち、供給された類似方向により特定される2つの画素の色差成分の平均値を求めて、その平均値を画素G141の色差成分の値である色差値C0とする。
【0237】
この色差値C0の算出に用いられる2つの画素は、類似方向により示される2つの画素と、画素G141とを結ぶ直線上に位置し、かつ色差成分を有し、類似方向により示される画素のそれぞれに最も近い位置にある画素のそれぞれとされる。換言すれば、画素G141の色差値C0は、画素G141を含み、互いに類似する画素が並ぶ画素の列上において、画素G141近傍に位置する2つの画素の色差成分の平均値である。
【0238】
具体的には、色差値C0の算出に用いられる画素G141近傍の画素は、画素G181乃至画素G190のなかから選択される。画素G181乃至画素G185は、x方向に連続して並ぶ画素であり、それらの画素の中心に位置する画素G183は、画素G142にy方向に隣接している。また、画素G186乃至画素G190は、x方向に連続して並ぶ画素であり、それらの画素の中心に位置する画素G188は、画素G147にy方向に隣接している。
【0239】
例えば、類似方向、より詳細には類似方向を示す情報が、画素G146および画素G148を示している場合、色差位相補間部142は、画素G185および画素G186の色差成分の平均値を、画素G141の色差値C0とする。ここで、画素G141、画素G146、画素G148、画素G185、および画素G186は、一直線上に並んでいる。
【0240】
また、類似方向が画素G145および画素G149を示している場合、画素G184および画素G187の色差成分の平均値が色差値C0とされる。また、類似方向が画素G142および画素G147を示している場合、画素G183および画素G188の色差成分の平均値が色差値C0とされる。
【0241】
同様に、類似方向が画素G144および画素G150を示している場合、画素G182および画素G189の色差成分の平均値が色差値C0とされる。また、類似方向が画素G143および画素G151を示している場合、画素G181および画素G190の色差成分の平均値が色差値C0とされる。
【0242】
このようにして画素G141の色差値C0が求められると、色差位相補間部142は、この色差値C0を用いて画素G142の色差成分の補間値である色差補間値を求める。
【0243】
すなわち色差位相補間部142は、求めた画素G141の色差値C0、および画素G183の色差成分の平均値CD(1)を求める。
【0244】
また、色差位相補間部142は、画素G183および画素G188の色差成分から、画素G142に相当する位相における色差成分の値である色差値CL(1)を求める。例えば、画素G183から画素G142までの距離は1画素であり、画素G188から画素G142までの距離は3画素であるので、それらの距離に応じた比率で画素G183および画素G188の色差成分が足し合わされる。具体的には、画素G183の色差成分に(3/4)を乗算して得られる値と、画素G188の色差成分に(1/4)を乗算して得られる値とが足し合わされて色差値CL(1)とされる。
【0245】
さらに、色差位相補間部142は、画素G141の色差値C0と、画素G183の色差成分との絶対値差分CA(1)を求め、求められた絶対値差分CA(1)、および予め保持している比率テーブルを用いて比率RDLを求める。この比率RDLは、平均値CD(1)に対する色差値CL(1)の混ぜ合わせの比率を示すものであり、平均値CD(1)に(1−RDL)を乗算して得られる値と、色差値CL(1)にRDLを乗算して得られる値との和が画素G142の色差成分の補間値である色差補間値とされる。
【0246】
例えば、色差位相補間部142が保持している比率テーブルは、絶対値差分CA(1)に対して、比率RDLが図26に示すように変化するテーブルとされる。なお、図26において、縦軸は比率RDLの値を示しており、横軸は絶対値差分の値を示している。
【0247】
図26の例では、絶対値差分がCA0以下である場合には、比率RDLの値はRDL0とされ、絶対値差分がCA0からCA1までの間は、絶対値差分に比例して比率RDLの値が増加する。すなわち、絶対値差分が増加するにつれて、比率RDLの値は大きくなる。そして、絶対値差分がCA1以上となると比率RDLの値は一定となり、その値はRDL1とされる。
【0248】
色差位相補間部142は、保持している比率テーブルと、絶対値差分CA(1)とから比率RDLを求めると、求めた比率RDLと、平均値CD(1)および色差値CL(1)とから画素G142の色差補間値を求める。
【0249】
図26に示した比率テーブルによれば、絶対値差分CA(1)が小さいほど、つまり画素G141近傍におけるy方向の色差成分の勾配が小さいほど、比率RDLは低くなり、画素G142の色差補間値には平均値CD(1)の成分がより多く含まれることになる。これは、y方向の色差成分の勾配が小さければ色差成分の変化も小さいため、画素G142の色差成分の値は、y方向に隣接する画素G183および画素G141に近い値になると推定されるためである。
【0250】
逆に、比率テーブルでは、絶対値差分CA(1)が大きいほど、つまり画素G141近傍におけるy方向の色差成分の勾配が大きいほど、比率RDLは高くなり、画素G142の色差補間値には色差値CL(1)の成分がより多く含まれることになる。これは、y方向の色差成分の勾配が大きければ色差成分の変化も大きいため、画素G142に隣接する画素だけを用いるよりも、画素G142に隣接する画素183と、画素G142からある程度離れた位置の画素G188とを用いた方が、より精度よく画素G142の色差補間値を予測することができるからである。
【0251】
このようにして、画素G142の色差補間値が求められると、色差位相補間部142は、画素G142における場合と同様の処理を行って、画素G147の色差成分の補間値である色差補間値を求める。
【0252】
すなわち、色差位相補間部142は、求めた画素G141の色差値C0、および画素G188の色差成分の平均値CD(2)を求める。
【0253】
また、色差位相補間部142は、画素G183および画素G188の色差成分から、画素G147に相当する位相における色差成分の値である色差値CL(2)を求める。例えば、色差値CL(1)における場合と同様に、画素G183から画素G147までの距離と、画素G188から画素G147までの距離とに応じた係数が、それぞれ画素G183および画素G188の色差成分に乗算される。そして、係数の乗算された画素G183および画素G188の色差成分の和が色差値CL(2)とされる。
【0254】
さらに、色差位相補間部142は、画素G141の色差値C0と、画素G188の色差成分との絶対値差分CA(2)を求め、求められた絶対値差分CA(2)、および予め保持している図26の比率テーブルを用いて比率RDLを求める。
【0255】
そして、色差位相補間部142は、求めた比率RDLと、平均値CD(2)および色差値CL(2)とから画素G147の色差補間値を求める。すなわち、平均値CD(2)に(1−RDL)を乗算して得られる値と、色差値CL(2)にRDLを乗算して得られる値との和が画素G147の色差補間値とされる。
【0256】
以上のようにして求めた画素G142および画素G147の色差補間値は、例えば図4における、Line0およびLine2の図4中、左端の画素のそれぞれの色差成分の値に相当する。なお、より詳細には、色差位相補間部142は、画素G142および画素G147の色差補間値として、Cr成分およびCb成分を個別に求める。
【0257】
また、同様にして、色差位相補間部142は、フィールド(N−1)の画像における、色差成分を求めるべき全ての画素について、色差補間値を求める。
【0258】
このようにして色差成分が補間されると、色差形式が4:2:2であり、映像形式がプログレッシブ形式であるフィールド(N−1)の映像信号が得られる。色差位相補間部142が、得られた映像信号を出力すると、色差形式変換処理は終了し、処理は図13のステップS15に進む。
【0259】
このようにして、色差形式変換部26は、プログレッシブ形式の映像信号を処理対象として類似判定を行い、その類似判定の結果を用いて色差成分を補間することで、映像信号の色差形式を4:2:0から4:2:2に変換する。
【0260】
類似判定の結果を用いて色差成分の補間を行うことは、画素が有する色差の特徴に応じて補間に用いるフィルタを選択することと等価である。このようにフィルタを可変にし、色差の特徴に応じた補間処理を行うことで、より精度よく色差成分を推定することができ、その結果、従来、映像信号の色差形式を変換する際に発生するジャギーや解像度感の劣化を抑制することができる。したがって、映像信号に基づく画像の画質を向上させることができる。また、このようにして得られた劣化の少ない映像信号に対して、後段において高画質化の処理等を施せば、より画像の画質を向上させることができる。
【0261】
さらに、フィルタを選択するための色差の特徴、すなわち画素の類似方向を、色差成分よりも変化が大きく、画素の特徴の検出精度の高い輝度成分を用いて求めるようにしたので、より精度よく各画素の色差の特徴を推定することができる。これにより、各画素の色差成分の補間精度を向上させて偽色やノイズの発生を抑制し、画質を向上させることができる。
【0262】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0263】
図27は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【0264】
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)201,ROM(Read Only Memory)202,RAM(Random Access Memory)203は、バス204により相互に接続されている。
【0265】
バス204には、さらに、入出力インターフェース205が接続されている。入出力インターフェース205には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部206、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部207、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記録部208、ネットワークインターフェースなどよりなる通信部209、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア211を駆動するドライブ210が接続されている。
【0266】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU201が、例えば、記録部208に記録されているプログラムを、入出力インターフェース205及びバス204を介して、RAM203にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0267】
コンピュータ(CPU201)が実行するプログラムは、例えば、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)等)、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリなどよりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア211に記録して、あるいは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供される。
【0268】
そして、プログラムは、リムーバブルメディア211をドライブ210に装着することにより、入出力インターフェース205を介して、記録部208にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部209で受信し、記録部208にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM202や記録部208に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0269】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0270】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0271】
【図1】本発明を適用した映像変換装置の一実施の形態の構成例を示す図である。
【図2】インターレース形式の画像について説明する図である。
【図3】プログレッシブ形式の画像について説明する図である。
【図4】色差形式が4:2:2である画像について説明する図である。
【図5】IP変換部の構成例を示す図である。
【図6】入力される各フィールドの画像の例を示す図である。
【図7】輝度静止回数および色差静止回数について説明する図である。
【図8】輝度静止回数および色差静止回数の算出について説明する図である。
【図9】静止判定部の構成例を示す図である。
【図10】フィールド補間部の構成例を示す図である。
【図11】色差形式変換部の構成例を示す図である。
【図12】類似方向について説明する図である。
【図13】映像変換処理を説明するフローチャートである。
【図14】IP変換処理を説明するフローチャートである。
【図15】輝度静止回数について説明する図である。
【図16】閾値テーブルについて説明する図である。
【図17】色差静止回数について説明する図である。
【図18】閾値テーブルについて説明する図である。
【図19】輝度成分の補間について説明する図である。
【図20】比率テーブルについて説明する図である。
【図21】色差成分の補間について説明する図である。
【図22】比率テーブルについて説明する図である。
【図23】色差形式変換処理について説明するフローチャートである。
【図24】類似方向について説明する図である。
【図25】色差成分の補間について説明する図である。
【図26】比率テーブルについて説明する図である。
【図27】コンピュータの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0272】
11 映像変換装置, 23 映像形式判定部, 24 IP変換部, 25 映像選択部, 26 色差形式変換部, 51 静止判定部, 52 フィールド補間部, 82 輝度静止判定部, 83 色差静止判定部, 111 輝度フィールド補間部, 112 色差フィールド補間部, 141 類似判定部, 142 色差位相補間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輝度成分および色差成分からなり、映像形式がインターレース形式である映像信号が供給された場合、前記映像信号の輝度成分および色差成分を補間することにより、前記映像信号の映像形式をプログレッシブ形式に変換する映像形式変換手段と、
前記映像形式変換手段による変換により得られた前記映像信号の色差成分を補間することにより、前記映像信号の色差形式を、第1の色差形式から、前記第1の色差形式よりも色差成分が多く含まれる第2の色差形式に変換する色差形式変換手段と
を備える映像変換装置。
【請求項2】
前記色差形式変換手段は、
前記映像信号に基づく画像の画素の輝度成分を用いて、所定の画素近傍において、互いに類似する画素が並ぶ類似方向を求める類似方向判定手段と、
前記類似方向により特定される画素を用いて、前記所定の画素近傍の画素の色差成分を補間する色差位相補間手段と
を備える請求項1に記載の映像変換装置。
【請求項3】
前記映像形式変換手段は、
連続するいくつかのフィールドの前記映像信号を用いて、前記映像信号に基づく画像上における画素の輝度成分の変化の有無を検出する輝度静止検出手段と、
前記輝度静止検出手段による検出結果に基づいて、処理対象のフィールドの前記画像における第1の注目画素の時間的または空間的に近傍に位置する画素を用いて、前記第1の注目画素の輝度成分を補間する輝度補間手段と、
前記連続するいくつかのフィールドの前記映像信号を用いて、前記映像信号に基づく画像上における画素の色差成分の変化の有無を検出する色差静止検出手段と、
前記色差静止検出手段による検出結果に基づいて、前記処理対象のフィールドの前記画像における第2の注目画素の時間的または空間的に近傍に位置する画素を用いて、前記第2の注目画素の色差成分を補間する色差補間手段と
を備える請求項1に記載の映像変換装置。
【請求項4】
前記色差静止検出手段は、前記輝度静止検出手段による検出結果を用いて、色差成分の変化の有無を検出する
請求項3に記載の映像変換装置。
【請求項5】
輝度成分および色差成分からなり、映像形式がインターレース形式である映像信号が供給された場合、前記映像信号の輝度成分および色差成分を補間することにより、前記映像信号の映像形式をプログレッシブ形式に変換する映像形式変換手段と、
前記映像形式変換手段による変換により得られた前記映像信号の色差成分を補間することにより、前記映像信号の色差形式を、第1の色差形式から、前記第1の色差形式よりも色差成分が多く含まれる第2の色差形式に変換する色差形式変換手段と
を備える映像変換装置の映像変換方法であって、
前記映像形式変換手段が、前記映像信号の映像形式をインターレース形式からプログレッシブ形式に変換し、
前記色差形式変換手段が、映像形式の変換された前記映像信号の色差形式を、前記第1の色差形式から前記第2の色差形式に変換する
ステップを含む映像変換方法。
【請求項6】
輝度成分および色差成分からなり、映像形式がインターレース形式である映像信号が供給された場合、前記映像信号の輝度成分および色差成分を補間することにより、前記映像信号の映像形式をプログレッシブ形式に変換し、
映像形式の変換により得られた前記映像信号の色差成分を補間することにより、前記映像信号の色差形式を、第1の色差形式から、前記第1の色差形式よりも色差成分が多く含まれる第2の色差形式に変換する
ステップを含む処理をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−93672(P2010−93672A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263513(P2008−263513)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】