説明

映像表示システム

【課題】 マウスのようなポインティングデバイスを使用する外部機器と、当該外部機器と接続され映像表示を行う表示装置とからなる映像表示システムに関し、ポインティングデバイスの操作に応じて画像処理のモードを切り換えるにあたり、映像の欠落や表示の静止といった課題を極力抑制した映像表示システムを提供する。
【解決手段】 映像モード切換え制御部116は、マウス使用可否情報とHPD情報によって、マウスの使用可否を判定し(S601)、マウスの使用が”可“の場合は、マウス操作有無情報に応じて、マウスの操作有無を判定する(S603)。マウスの操作が”有“の場合は、映像モードをゲームモードに設定することを画像処理部108に対して指示する(S605)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウスのようなポインティングデバイスを使用する外部機器と、当該外部機器と接続され映像表示を行う表示装置とからなる映像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の表示装置は複数の画像処理モードを有している。画像処理においては、入力された映像信号をフレームメモリなどにバッファして画像を解析し、高画質処理や色処理などを実行するため、画像が入力されてから実際に出力されるまで数フレーム〜数十フレームの遅延が生じる。一方、ゲームなどをプレイする場合には、ユーザの操作と実際の表示のズレが悪影響を操作性に悪影響を及ぼすため、最低限の画像処理機能に絞って画像処理を実行することでフレーム遅延を極力抑制したゲームモードが備えられている。たとえば、こうした表示装置の代表的な製品であるTVにPC等を接続し、マウスで操作をする場合には、操作レスポンスの早さが要求されるため、TVの映像モードはゲームモードのような低遅延モードが適している。また、既存のTVでは、ユーザが接続端子ごとに低遅延モードか他モードかを設定できる。
【0003】
今後はマウス接続が放送規格化されることから、マウス操作など、操作レスポンスが要求される場面と、コンテンツ視聴など高画質が要求される場面とが混在する機器が増えてくる。
【0004】
特許文献1に、ユーザ操作の有無に応じて、低遅延モードか他のモードかを切換える方法が開示されている。この方法を用いると、同じ接続端子からの入力に対して、外部機器のメニュー画面を表示したときや、トリックプレイの実行時には、自動的に低遅延モードに切り換える。これにより、メニュー画面の操作やトリックプレイなどの操作のレスポンスを向上させることができるため、ユーザにとって便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−33415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の技術は、高画質モードから低遅延モードへの切換は、遅れている映像を欠落させることになる。また、低遅延モードから高画質モードへの切換えは、高画質処理を実行するのに必要な大きなバッファリング処理が発生するため、モード切換時から高画質化処理をしている間は画面が静止状態になってしまうという課題が生じる。この2つのモードの映像遅延量の差が大きければ大きいほど、切換時の映像欠落、画面静止が目立ってしまい、好ましくない。
【0007】
そこで、本発明は、マウスのようなポインティングデバイスを使用する外部機器と、当該外部機器と接続され映像表示を行う表示装置とからなる映像表示システムに関し、ポインティングデバイスの操作に応じて画像処理のモードを切り換えるにあたり、映像の欠落や表示の静止といった課題を極力抑制した映像表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の映像表示システムは、映像を表示する表示装置と、当該表示装置と通信可能に接続され、ポインティングデバイスによる操作が可能であり、かつ前記表示装置に対して映像信号の出力が可能な外部機器とからなる映像表示システムであって、前記外部機器は、当該外部機器において実行中のアプリケーションがポインティングデバイスを使用可能なアプリケーションであるか否かを判定し、判定結果を示す使用可否情報を生成する第1の生成手段と、前記ポインティングデバイスの操作状態を検知し、当該操作状態を示す操作有無情報を生成する第2の生成手段と、前記使用可否情報及び前記操作有無情報を前記表示装置に出力する出力手段と、を有し、前記表示装置は、前記外部機器から入力された映像信号に対して画像処理を実行する際に発生する遅延時間が異なる少なくとも3つの映像モードを備え、当該少なくとも3つの映像モードのうち、任意の1つの映像モードを選択して前記外部機器から入力された映像信号に対して画像処理を実行する処理手段と、前記外部機器から送信された前記使用可否情報及び前記操作有無情報を受信する受信手段と、前記受信手段で受信した前記使用可否情報が、前記ポインティングデバイスの使用可を示す場合であり、かつ、前記受信手段で受信した前記操作有無情報が無操作を示す場合に、前記映像モードが最も遅延時間の長い映像モードに設定されている場合には、最も遅延時間の短い映像モード及び最も遅延時間の長い映像モード以外の映像モードに切り換える制御を行う切換手段と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によればポインティングデバイスの操作に応じて画像処理のモードを切り換えるにあたり、映像の欠落や表示の静止といった課題を極力抑制した映像表示システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る映像表示システムの構成図である。
【図2】実施例1に係る映像表示システムのブロック図である。
【図3】実施例1に係るCECデータの内容を示す図である。
【図4】実施例1に係るTV100が有する映像モード種別を示す図である。
【図5】実施例1に係るフローチャートである。
【図6】実施例1に係るシーケンス図である。
【図7】実施例2に係る映像表示システムのブロック図である。
【図8】実施例2に係るTMDSデータに含まれるInfoframeの内容を示す図である。
【図9】実施例2に係るTV800が有する映像モード種別を示す図である。
【図10】実施例2に係るフローチャートである。
【図11】実施例2に係るシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例を説明する。図1は本発明の実施例1及び実施例2に係るシステム構成の概略図である。本システムは、TV100、録画再生装置200、マウス300から成る。TV100は表示装置、録画再生装置200は外部機器、マウス300はポインティングデバイスとして機能する。
【0012】
TV100は、HDMI規格に準拠したケーブルで録画再生装置200と通信可能に接続されている。TV100は録画再生装置200から供給された映像信号にI/P変換やノイズリダクション等の高画質処理を行なう高画質処理手段と、各種の画質処理の組み合わせによる複数の映像モードを備える。また、TV100はケーブルを介して、HDMI規格で定められる制御信号(CEC)またはInfoFrameパケットによって供給されるマウス使用可否情報、マウス操作有無情報に基いて前記映像モードを切換える手段を備える。
【0013】
録画再生装置200は放送波を受信して、放送波の映像を蓄積、再生する装置で前記TV100とHDMIケーブルで接続して、蓄積した映像を再生することでTV100の画面に映像の表示を行う。また、録画再生装置200は、マウス使用可否状態およびマウスの操作有無状態を監視し、前記2つのマウス状態の情報をTV100に送信する手段を備える。
【0014】
マウス300は録画再生装置200に接続されていて、ユーザーによるボタン押下、マウスの移動に応じた、マウスイベントや移動量などのマウス信号を録画再生装置200に送信する。
【実施例1】
【0015】
上述した映像表示システムに関し、本発明の実施例1の説明を行う。
【0016】
図2は図1で示した映像表示システムであり、TV100と録画再生装置200のブロック図である。
【0017】
チューナ部101は、デジタル放送波を受信し、復調処理を施す。更に復調後のデータから、映像や音声などを多重化したTS(トランスポートストリーム)データを再生成して後述のDEMUX部102へ出力する。またチューナ部101は、制御部118から与えられるチャンネル切換え指示に応じて、チャンネルを切換える。
【0018】
DEMUX部102はチューナ部101から与えられるTSデータを、映像信号、音声信号等に分離し、それぞれのデコード部へ出力する。音声デコード部103は、DEMUX部102から与えられる音声ストリームをデコードし、生成した音声信号を音声処理部104へ出力する。音声処理部104は、音声デコード部103からから与えられる放送波の音声信号、後述のパケット処理部114から与えられる外部機器の音声信号に対して、音質、臨場感等の音声処理、及び音量調整処理を施し、スピーカ出力部へ出力する。スピーカ出力部105は、音声処理部104から出力された音声信号をD/A変換、及び増幅処理を施し、また制御部118から与えられる音量UP/DOWN指示に応じて音量をUP/DOWNしてTV100に付随するスピーカに出力する。
【0019】
映像デコード部106は、DEMUX部102から与えられる映像ストリームをデコードし、生成した映像信号を入力信号切換え部107へ出力する。入力信号切換え部107は、映像デコード部106から与えられる映像信号と、TMDSデコード部113から与えられる映像信号とを、制御部118から与えられる入力信号切換え指示コードに応じて切換え、画像処理部108へ出力する。
【0020】
画像処理部108は、入力信号切換え部107から与えられる映像信号に対し、後述の映像モード切換え制御部116から与えられる映像モード設定を指示するコードに基いて映像モードを設定し、画像合成部110へ映像信号を出力する。
【0021】
メモリ部109は、各種ユーザ設定情報やGUIデータ等を保存する。画像合成部110は、前記画像処理部108から与えられる映像信号と、後述のGUI生成部119から与えられるGUI画面データを合成し、表示部111へ出力する。表示部111は画像合成部から出力される画像を表示する。表示部111は、TV100の外部にあるモニタであってもよい。
【0022】
HDM I/F部112は、外部の機器とHDMI規格に準拠したケーブルで接続するためのインターフェースである。HDMI I/F部112は、DDCライン、TMDSライン、CECライン、HPDラインを介し、外部機器認証やコピー制御、外部機器制御の為の制御情報の送受信、及び映像及び音声の受信を行う。本実施例では、外部の機器として、録画再生装置200が接続される。
【0023】
TMDSデコード部113はHDMI I/F部112から与えられるTMDSエンコードされたデータをTMDSデコードし、映像信号は入力信号切換え部107へ、パケットデータはパケット処理部114へそれぞれ出力する。パケット処理部は114、TMDSデコード部113から与えられるデータから音声信号を取り出し、前記音声処理部104に出力する。
【0024】
CEC解析部115は、HDMI I/F部112から与えられるCECコマンドを解析し、接続先の録画再生装置200のマウス使用可否情報およびマウス操作有無情報を取得し、後述の映像モード切換え制御部116へ出力する。なお、マウス使用可否情報およびマウス操作有無情報については後述する。
【0025】
映像モード切換え制御部116は、CEC解析部115から与えられるマウス使用可否情報、マウス操作有無情報および、HDMI I/F部112から与えられるHPD(hot plug detect)情報に基き、映像モードを選択する。具体的には、後述の図5に示す映像モード選択のフローチャートに従って、後述の図4に示す3種類の映像モードから設定すべき一つの映像モードを決定し、映像モードの設定指示コードを画像処理部108に出力する。
【0026】
リモコン受信部117は、TV用のリモコンから出力されるリモコンコードを受信し、受信したリモコンコードを制御部108へ転送する。制御部118は、リモコン受信部117から与えられるリモコンコードを解析する。解析したリモコンコードに応じて、チューナ部101へチャンネル切換え等のチューナ制御コード出力や、スピーカ出力部105へ音量調整のためスピーカ制御コード出力や、入力信号切換え部107へ入力信号切換え制御コードの出力を行なう。
【0027】
GUI生成部119は、制御部118から与えられるGUI表示指示コードに従って、GUI画面データを生成し、画像合成部110へ出力する。
【0028】
続いて、録画再生装置200について説明する。
【0029】
チューナ部201はデジタル放送波を受信し、復調処理を施す。更に復調後のデータから、映像や音声などを多重化したTS(トランスポートストリーム)データを再生成して後述のDEMUX部202へ出力する。また、チューナ部201は、制御部213から与えられるチューナ制御コードに応じてチャンネル切換え等の処理を行なう。
【0030】
DEMUX部202はチューナ部201から与えられるTSデータまたは、後述の蓄積部214から与えられるTSデータを、映像信号、音声信号、PSI/SI情報、アプリプログラム等に分離する。映像信号、音声信号はそれぞれのデコード部へ出力し、アプリプログラムおよびPSI/SI情報に含まれるAIT(Application Information Table)を後述のアプリケーション実行部206へ出力する。
【0031】
音声デコード部203は、DEMUX部202から与えられる音声ストリームをデコードし、生成した音声信号をパケット処理部204へ出力する。パケット処理部204は、音声デコード部203から与えられる音声信号をパケット化し、TMDSエンコード部210へ出力する。
【0032】
映像デコード部205は、DEMUX部202から与えられる映像ストリームをデコードし、生成した映像信号を画像合成部209へ出力する。
【0033】
アプリケーション実行部206は、DEMUX部202から与えられるアプリケーションプログラム、AITおよび、後述の制御部213から与えられるリモコンコードに従って、GUIの表示指示コードを後述のGUI生成部215へ出力する。また、アプリケーション実行部206ではJava(登録商標)のアプリケーションプログラムが実行中に、マウスを使用する際に必要な“MouseListener”の登録がComponentクラスのメソッド“addMouseListener”によって実行された場合に「MouseListener登録有り」をマウス使用可否情報作成部207に出力する。また、メソッド“removeMouseListener”が発行された場合、またはアプリケーション終了時には「MouseListener登録無し」をマウス使用可否情報作成部207に出力する。
【0034】
マウス使用可否情報作成部207は、後述のマウスI/F部218からマウス接続時および接続解除時に与えられるマウス接続状態(接続/非接続)と、アプリケーション実行部206からアプリケーション実行開始時および停止時に与えられる「MouseListener登録の有無」をメモリに保存する。これら2つの情報のうちいずれかが変化した際、2つの情報の論理積(マウス接続状態が「接続」で、且つMouseListener登録の有無が「有」である場合に「マウス使用可」。それ以外の組み合わせ時は「マウス使用不可」)をマウス使用可否情報として生成し、CEC作成部208へ出力する。マウス使用可否情報作成部207が第1の生成手段として機能する。
【0035】
CEC作成部208はマウス使用可否情報作成部207から与えられるマウス使用可否情報及びマウス操作有無状態解析部219から与えられるマウス操作有無情報を用いて、後述の図3に従った形式でCECデータを生成し、HDMI I/F部211へ出力する。
【0036】
画像合成部209は、前記映像デコード部205から与えられる映像信号と、後述のGUI生成部215から与えられるGUI画面データおよび、カーソル生成部216から与えられるカーソル表示データを合成し、TMDSエンコード部210へ出力する。
【0037】
TMDSエンコード部210は、画像合成部209から与えられる映像信号およびパケット処理部204から与えられるパケットデータをTMDSエンコードし、HDMI I/F部211へ出力する。
【0038】
HDMI I/F部211は、TMDSエンコード部210から与えられるTMDSデータおよび、後述のCEC作成部208から与えられるCECコマンドをHDMIケーブルで接続された外部の機器に送信する。
【0039】
リモコン受信部212は、録画再生装置200用のリモコンから出力されるリモコンコードを受信し、受信したリモコンコードを制御部213へ転送する。制御部213は、リモコン受信部212から与えられるリモコンコードを解析し、リモコンコードに応じて、蓄積部214へ録画開始・再生開始等の制御コード出力などを実行する。また、制御部213は、アプリケーション実行部206へのリモコンコードの転送も行なう。また、制御部213は、マウスI/F部218から与えられるマウスイベントコードおよびマウスカーソル移動量差分データに従い、それぞれアプリケーション実行部206へのイベントコードの出力およびカーソル表示生成部216へカーソル表示座標の出力を行う。
【0040】
蓄積部214は、制御部213から与えられる録画開始・再生開始等の制御コードに応じて、チューナ部201から与えられるTSデータの記録、再生等を行う。再生時は、記録したTSデータをDEMUX部202に出力する。
【0041】
GUI生成部215は、制御部213およびアプリケーション実行部206から与えられるGUI表示指示コードに従ってGUI画面データを生成し、画像合成部209へ出力する。
【0042】
カーソル表示生成部216は、制御部213から与えられるカーソル表示座標に基づいて、カーソル表示データを生成し、画像合成部209へ出力する。メモリ部217は、各種ユーザ設定情報やGUIデータ、カーソル表示データ等を保存する。マウスI/F部218は、マウス300から与えられるマウスイベントコード、マウスカーソル移動量差分データを検知し、制御部213および後述のマウス操作有無状態解析部219へ出力する。また、マウスI/F部218は、マウス接続時および接続解除時に、マウス接続状態をマウス使用可否情報作成部207に出力する。
【0043】
マウス操作有無状態解析部219は、マウスI/F部218から与えられるマウスイベントコードおよびマウスカーソル移動量差分データに基づいて、マウスの操作状態を示すマウス操作有無情報を生成し、CEC作成部208へ出力する。マウス操作有無状態解析部219が第2の生成手段として機能する。
【0044】
本件の特徴となる、映像欠落や画面静止時間を低減する映像モードの切換え動作について、その詳細を図3、図4、図5、図6を用いて以下に説明する。
【0045】
まず、図3では、本実施例において、録画再生装置200からTV100に送出するCECデータの内容を説明する。
【0046】
図3(a)は、HDMI規格で定義されているCECのベンダーコマンドのコマンドフレームを説明したものである。Data Block1のOpcodeの値“89h”がベンダー定義コマンドであることを意味している。Data Block2乃至4には、ベンダーを識別する値が入る(例:0000FF)。Data Block5以降はベンダーが定義する内容であり、以下に本実施例における定義内容を図3(b)、図3(c)を用いて説明する。
【0047】
図3(b)は、本実施例におけるベンダー定義コマンドの内容を示している。Report Mouse Status(0x81)は、録画再生装置200からTV100にマウス状態を通知するコマンドである。Parameters欄に記載の[Mouse Status]については、後述の図3(c)で説明する。なお、Give Mouse Status(0x80)はTV100から録画再生装置200に対してマウス状態を問い合わせるコマンドであり、本実施例では使用していないが、このコマンドを用いてマウス状態を取得する実施形態でも良い。
【0048】
図3(c)は、Report Mouse Status(0x81)のパラメータ[Mouse Status]の内容である。bit0はマウス使用可否状態で、0:否/1:可と定義する。bit1 はマウス操作有無状態で、0:無/1:有と定義する。
【0049】
図4は、本実施例のTV100が持つ映像モードの種類と、画像処理のために必要なフレーム数および遅延時間を示した表である。本実施例のTV100は遅延量の低い順に、ゲームモード、スタンダードモード、ダイナミックモードの3種類の映像モードを持つ。通常、これらの映像モードのうち、任意の映像モードが1つ選択された状態となっている。
【0050】
図5は、本発明の実施例1に係るTV100の映像モード切換え制御部116が行なう映像モード切換え判定処理のフローチャートである。映像モード切換え制御部116は、HDMI I/F部112から与えられるHPD(hot plug detect)情報及びCEC解析部115から与えられるマウス使用可否情報の論理積(HPD情報が「接続」且つマウス使用可否情報が「可」である場合に「マウス使用可」。それ以外の組み合わせ時は「マウス使用不可」)によって、マウスの使用可否を判定し(S601)、“否“の場合は映像モードをダイナミックモードに設定することを画像処理部108に対して指示する(S602)。
【0051】
S601の判定が“可“の場合は、CEC解析部115から与えられるマウス操作有無情報に応じて、マウスの操作有無を判定する(S603)。S601の判定が“無“の場合(無操作の場合)は、映像モードを「中間モード」と定めたスタンダードモードに設定することを画像処理部108に対して指示する(S604)。なお前記「中間モード」は3種類の映像モードの遅延時間を昇順(または降順)に並べた際に中央に位置する値(中央値)である「スタンダードモード」と予め定め、固定値として持っている。”有“の場合(操作有りの場合)は、映像モードをゲームモードに設定することを画像処理部108に対して指示する(S605)。
【0052】
図6は、本発明の実施例1に係るTV100の映像モード切換え時のシーケンス図である。録画再生装置200のマウス使用可否状態が“否”から“可”に変わり、TV100にマウス使用可能であることを通知するタイミングに着目する。この時の録画再生装置200のマウス操作有無状態は”無“であるため、映像モードをスタンダードモードに設定する。この切換えに必要な時間は33msであり、遅延時間が減少する方向への切換え時には必要フレーム数の差分の映像欠落を伴うため、6フレームの映像欠落となる。
【0053】
次に、録画再生装置200のマウス操作有無状態が“無“から”有“に変わり、TV100にマウス操作が無いことを通知するタイミングに着目する。映像モードの設定はスタンダードモードからゲームモードに変わり、切換えに必要な時間は33msであり、2フレームの映像欠落となる。従って、ダイナミックモードからゲームモードにダイレクトに切換える場合と比べると、映像の欠落を抑えられている。
【0054】
次に録画再生装置200のマウス操作有無状態が“有“から“無“に変わり、TV100にマウス操作があることを通知するタイミングに着目する。映像モードの設定はゲームモードからスタンダードモードに変わり、切換えに必要な時間は、遅延時間が増加する方向への切換え時には遅延時間の差分の時間が必要であることを考慮すると66msとなる。ゲームモードからダイナミックモードにダイレクトに切換える場合と比べると、切換えに必要な時間を抑えられている。
【0055】
次に、録画再生装置200のマウス使用可否状態が“可”から“否”に変わり、TV100にマウス使用不可能であることを通知するタイミングに着目する。映像モードの設定はスタンダードモードからダイナミックモードに変わり、切換えに必要な時間は133msとなる。
【0056】
以上、本実施例によれば、TV100、録画再生装置200、マウス300からなる映像表示システムにおいて、録画再生装置200がマウス使用不可状態である場合はTV100の映像モードを画質を優先したモード(ダイナミックモード)にする。一方、録画再生装置200がマウス使用可能状態である場合は、切換え時に映像欠落や画面静止が発生し難い2つのモード(ゲームモードとスタンダードモード)を録画再生装置200のマウス操作有無情報に応じて切換える。つまり、マウス使用可能状態でマウスが操作されていない場合に、最も遅延時間の長い映像モードが選択されている場合には、最も遅延時間の短い映像モード及び最も遅延時間の長い映像モード以外の映像モードを選択する。これにより、映像の欠落や表示の静止といった課題を極力抑制した映像表示システムを提供することが可能となる。
【実施例2】
【0057】
続いて、本発明の第2の実施例を説明する。図7は、本実施例2に係るTV800のブロック図である。構成としては、実施例1に係るTV100とほぼ同様となるため、ここでは全てのブロックの説明は割愛し、実施例2にのみ存在するInfoFrame解析部815の説明を行う。また、実施例1とは処理が異なる、パケット処理部814、映像モード切換え制御部816、制御部818についても以下に説明する。
【0058】
InfoFrame解析部815は、後述のパケット処理部814から与えられるInfoFrameデータを解析し、接続先の録画再生装置900のマウス使用可否情報およびマウス操作有無情報を取得し、後述の映像モード切換え制御部816へ出力する。
【0059】
パケット処理部814は、TMDSデコード部813から与えられるデータから、音声信号およびInfoFrameデータを取り出し、それぞれ音声処理部804、InfoFrame解析部815へ出力する。
【0060】
映像モード切換え制御部816は、InfoFrame解析部815から与えられるマウス使用可否情報、マウス操作有無情報、HPD情報及び記憶されている映像モードに基き、図10に示すフローチャートに従って一つの映像モードを決定する。そして、決定した映像モードの設定指示コードを画像処理部808に出力する。
【0061】
実施例2においては、ユーザが映像モードを選択することも可能であり、制御部818が画像処理部808に対して映像モード設定制御コードを出力すると共に、メモリ部809へユーザが設定した映像モードを記憶する。
【0062】
録画再生装置900については、実施例1に係る録画再生装置200とほぼ同様となるため、ここでは全てのブロックの説明は割愛し、実施例2にのみ存在するInfoFrame作成部908についてのみ、以下に説明する。
【0063】
Infoframe作成部908は、マウス使用可否情報作成部907からのマウス使用可否情報及びマウス操作有無状態解析部919から与えられるマウス操作有無情報を用いて、後述のInfoframeデータを作成し、パケット処理部904へ出力する。
【0064】
本件の特徴となる、映像欠落や画面静止時間を低減する映像モードの切換え動作について、その詳細を図8、図9、図10、図11を用いて説明する。
【0065】
まず、図8では、本実施例において、録画再生装置900からTV800に送信するTMDSデータに含まれるフレーム情報であるInfoFrameの内容を説明する。
【0066】
図8(a)は、HDMI規格で定義されているInfoFrameのVender Specific InfoFrameを説明したものである。InfoFrame Type Codeの値が“01h”であり、InfoFrame Version Number の値が”01h“であることがVender Specific InfoFrameであることを意味している。Length of Vendor Specific InfoFrameにはInfoFrameの全バイト数が入る。Data Byte1乃至3にはベンダーを識別する値が入る(例: 0000FF)。Data Byte4はベンダーが定義する内容であり、以下に本実施例における内容を図8(b)、図8(c)を用いて説明する。
【0067】
図8(b)は、Vendor Specific InfoFrameのData Byte4[bit7]を示している。本実施例においてはこのビットをマウス使用可否状態:Mouse Use Possibility(MUP)とし、0:否/1:可と定義する。
【0068】
図8(c)は、Vendor Specific InfoFrameのData Byte4[bit6]を示しており、本実施例においてはこのビットをマウス操作有無状態:Mouse Operation Presence(MOP)とし、0:無/1:有と定義する。
【0069】
なお、本実施例ではベンダー定義のInfoFrame(Vender Specific InfoFrame)を用いたが、標準のInfoFrame(AVI InfoFrame等)を用いても良い。
【0070】
図9は、実施例2に係るTV800が持つ映像モードの種類に対応する画像処理のために必要なフレーム数および遅延時間を示した表である。本実施例のTV800は遅延量の低い順に、ゲームモード、ナチュラルモード、スタンダードモード、シネマモード、ダイナミックモードの5種類の映像モードを持つ。
【0071】
図10は、本発明の実施例2に係るTV800の映像モード切換え制御部816が行なう映像モード切換え判定処理のフローチャートである。映像モード切換え制御部816は、HDMI I/F部812から与えられるHPD(hot plug detect)情報および、InfoFrame解析部815から与えられるマウス使用可否情報に基づいて、マウスの使用可否を判定する(S1201)。判定結果が“否“の場合は映像モードをユーザが選択している映像モードに設定することを画像処理部808に対して指示する(S1202)。判定結果が”可“の場合は、ユーザが選択している映像モードの遅延時間と予め定めてある「中間モード」の遅延時間を比較する(S1203)。比較において「中間モード」の遅延時間が長い又は等しい場合(“Y”の場合)は、ユーザのマウス操作が無い場合に設定する映像モードの記憶領域として用意する「マウス操作無し時設定モード」に”ユーザーが設定した映像モード”を記憶する(S1204)。「中間モード」の遅延時間が短い場合(“N”の場合)は、「マウス操作無し時設定モード」に「中間モード」を記憶する(S1205)。なお前記「中間モード」は5種類の映像モードの遅延時間を昇順(または降順)に並べた際に中央に位置する値(中央値)である「スタンダードモード」と予め定め、固定値として持っている。次にInfoframe解析部815から与えられるマウス操作有無情報に応じて、マウスの操作有無を判定する(S1206)。判定結果が”無“の場合は、映像モードを「マウス操作無し時設定モード」として記憶しておいた映像モードに設定することを画像処理部808に対して指示する(S1207)。判定結果が”有“の場合は、映像モードをゲームモードに設定することを画像処理部808に対して指示する(S1208)。
【0072】
図11は、実施例2に係るTV800の映像モード切換え処理における、前述のフローチャートのS1203の判定が“Y”の場合のシーケンス図である。
【0073】
録画再生装置900のマウス使用可否状態が“否”から“可”に変わり、TV800にマウス使用可能であることを通知するタイミングに着目する。この時TV800の映像モードは、「中間モード」の遅延時間以下の映像モードであるため、映像モードの切換えは行なわない。録画再生装置900のマウス使用可否状態が“可”から“否”に変わり、TV800にマウス使用不可能であることを通知するタイミングにおいても、既にユーザが選択した映像モードが設定されているため、映像モードの切換えは行なわない。なお、録画再生装置900のマウス操作有無状態変化時については、実施例1と同様の動作となるため説明は割愛する。また、前述のフローチャートのS1203の判定が“N”の場合のシーケンスについても、実施例1のシーケンスと同様の動作となるため説明は割愛する。
【0074】
以上、本実施例によれば、録画再生装置900がマウス使用不可状態である場合はTV800の映像モードをユーザが選択した映像モードにする。一方、録画再生装置900がマウス使用可能状態である場合は、ユーザが選択している映像モードの遅延時間が「中間モード」の遅延時間より長いか否かを判定する。長いと判定した場合には、切換え時に映像欠落や画面静止が発生し難い2つのモード(ゲームモードと、「中間モード」)を、録画再生装置900のマウス操作有無情報に応じて切換える。これにより、映像の欠落や表示の静止といった課題を極力抑制した映像表示システムを提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示する表示装置と、当該表示装置と通信可能に接続され、ポインティングデバイスによる操作が可能であり、かつ前記表示装置に対して映像信号の出力が可能な外部機器とからなる映像表示システムであって、
前記外部機器は、
当該外部機器において実行中のアプリケーションがポインティングデバイスを使用可能なアプリケーションであるか否かを判定し、判定結果を示す使用可否情報を生成する第1の生成手段と、
前記ポインティングデバイスの操作状態を検知し、当該操作状態を示す操作有無情報を生成する第2の生成手段と、
前記使用可否情報及び前記操作有無情報を前記表示装置に出力する出力手段と、
を有し、
前記表示装置は、
前記外部機器から入力された映像信号に対して画像処理を実行する際に発生する遅延時間が異なる少なくとも3つの映像モードを備え、当該少なくとも3つの映像モードのうち、任意の1つの映像モードを選択して前記外部機器から入力された映像信号に対して画像処理を実行する処理手段と、
前記外部機器から送信された前記使用可否情報及び前記操作有無情報を受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した前記使用可否情報が、前記ポインティングデバイスの使用可を示す場合であり、かつ、前記受信手段で受信した前記操作有無情報が無操作を示す場合に、前記映像モードが最も遅延時間の長い映像モードに設定されている場合には、最も遅延時間の短い映像モード及び最も遅延時間の長い映像モード以外の映像モードに切り換える制御を行う切換手段と、
を有することを特徴とする映像表示システム。
【請求項2】
前記受信手段で受信した前記使用可否情報が、前記ポインティングデバイスの使用可を示す場合であり、かつ、前記受信手段で受信した前記操作有無情報が無操作を示す場合に、前記映像モードが最も遅延時間の長い映像モードに設定されている場合には、最も遅延時間の短い映像モード及び最も遅延時間の長い映像モード以外の映像モードに切り換える制御が前記切換手段によって実行された後、前記操作有無情報が無操作を示す状態から操作が有ることを示す状態に変化した場合、前記切換手段は、映像モードを最も遅延時間の短い映像モードに切り換える制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の映像表示システム。
【請求項3】
前記表示装置と前記外部機器とは、HDMI規格に準拠したケーブルにより通信可能に接続されており、
前記使用可否情報及び前記操作有無情報は、HDMI規格におけるCECコマンドまたはTMDSデータに含まれるフレーム情報に含めて、前記外部機器から前記表示装置に送信されることを特徴とする請求項1または2に記載の映像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−120024(P2011−120024A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275912(P2009−275912)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】