説明

映像表示装置およびその制御方法

【課題】映像表示装置において、制御手段に誤動作があった場合でも、誤って照明手段に電力が供給されることを確実に回避できるようにする。
【解決手段】CPU110が出力するバラスト制御信号は、ランプバラストユニット400には直接入力されず、AND回路153に入力される(監視結果C)。また、AND回路153には、NAND回路151から、第1および第2検出スイッチ201,202の検出結果に基づく、ミラーの状態の検出結果(監視結果A)が、そして、NAND回路152から、CPU110がリレーユニット300に出力する第1リレー301と第2リレー302の開閉制御用信号の内容(監視結果B)が、入力される。AND回路153は、入力される監視結果A〜監視結果Cの全てがリレーユニット300への電力供給に適切なものである場合にのみ、ランプバラストユニット400に対し当該電力供給を指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示装置に関し、特に、照明手段への電力供給の制御の安全性を向上させて映像表示装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ等の映像表示装置において、ランプ等の照明手段には比較的高い電圧での電力供給が必要とされている。このような理由などから、従来より、照明手段の点灯/消灯のための制御に関し、種々の技術が開示されてきた。
【0003】
たとえば、特許文献1(特開平5−234686号公報)には、電気回路上の複数の点における電圧値を検出することにより、照明手段を含む回路における異常を検出する技術が記載されている。なお、当該公報に記載の技術では、複数のアナログスイッチが設けられ、電圧値の検出対象となる位置が、当該複数のアナログスイッチの切換態様を変更されることによって、変更されている。
【0004】
また、特許文献2(特開平11−204286号公報)には、放電灯点灯装置において、発振制御回路の発振状態を制御することにより、放電ランプに電力を供給する高周波電源の出力を変化させ、そして、放電ランプの点灯状態を検出する異常検出回路が設けられ、そして、異常点灯状態にあると判断されると高周波電源の出力を停止させる技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献3(特表2007−521615号公報)には、ランプに電力を供給する電子バラストの制御に、過電流状態とランプ障害を検出するための電流検知フィードバックを含む技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献4(特開2000−292857号公報)には、投射型映像表示装置において、マイコン(マイクロコンピュータ)が、ランプ切れを検出した場合には当該ランプ切れに対応した音声信号を発生させることにより、音声により異常を報知する技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献5(特開2004−157201号公報)では、プロジェクタ装置において、光源の点灯状態を点灯回路手段の動作状態に基づいて監視し、光源に不具合が生じたときには、光源切換手段に光源を切換える動作を開始させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開平5−234686号公報
【特許文献2】特開平11−204286号公報
【特許文献3】特表2007−521615号公報
【特許文献4】特開2000−292857号公報
【特許文献5】特開2004−157201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の映像表示装置においては、照明手段への電力の供給が、最終的には、マイコンやIC(Integrated Circuit)などの制御手段によって、一括して行なわれていた。
【0009】
したがって、当該制御手段に誤動作があった場合、たとえば周辺の部材に異常があるなど、照明手段に電力が供給されるべきではない状態でも、照明手段に電力が供給される場合が想定される。
【0010】
本発明は係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、制御手段の誤動作があった場合でも、誤って照明手段に電力が供給されることを確実に回避できる映像表示装置およびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に従った映像表示装置は、照明手段と、前記照明手段に電力を供給する電源部と、前記電源部から前記照明手段への電力の供給態様を制御する制御手段と、前記制御手段と独立した制御系統を構成し、前記照明手段への電力の供給の条件となる部材の状態を検出する検出手段と、前記制御手段から、前記電源部に前記照明手段へ電力を供給させるための信号が出力された場合、前記検出手段の検出出力が、前記部材の状態が前記条件を満たすものであると判断したときに、前記照明手段への電力の供給を許可する許可手段とを備える。
【0012】
また、本発明の映像表示装置は、前記電源部と前記照明手段の間の電気回路の開閉状態を切換えるリレーをさらに備え、前記検出手段は、前記制御手段から前記リレーを閉状態にする信号が出力されているか否かを検出し、前記許可手段は、前記電源部に前記照明手段へ電力を供給させるための信号が出力された場合に、前記検出手段が前記制御手段から前記リレーを閉状態にする信号が出力されていることを検出したことを条件として、前記電源部から前記照明手段への電力の供給を許可することが好ましい。
【0013】
また、本発明の映像表示装置は、前記照明手段が発する光を外部へ送る光学系部材をさらに備え、前記検出手段は、前記光学系部材が、前記照明手段の発する光を外部へ送るために適切な状態となったことか否かを判断し、前記許可手段は、さらに、前記光学系部材が前記適切な状態になったことを検出したことを条件として、前記電源部から前記照明手段への電力の供給を許可することが好ましい。
【0014】
また、本発明の映像表示装置では、前記リレーは、前記光学系部材が前記適切な状態となったことを条件として、前記電気回路の閉状態を維持するための電力を供給されることが好ましい。
【0015】
本発明に従った映像表示装置の制御方法は、照明手段と、前記照明手段に電力を供給する電源部と、前記電源部から前記照明手段への電力の供給態様を制御する制御手段とを備えた映像表示装置の制御方法であって、前記制御手段から、前記電源部に前記照明手段へ電力を供給させるための信号が出力されたか否かを判断するステップと、前記制御手段と独立した制御系統によって、前記照明手段への電力の供給の条件となる部材の状態を検出するステップと、前記制御手段から前記電源部に前記照明手段へ電力を供給させるための信号が出力された場合、前記部材の状態が前記条件を満たしたときに、前記電源部から前記照明手段へ電力を供給するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電源部から照明手段への電力の供給態様を制御する制御手段とは独立した制御系統を構成する検出手段によって、照明手段への電力の供給の条件となる部材の状態が検出される。そして、制御手段から、電源部に照明手段へ電力を供給させる信号が出力された場合、さらに、当該検出手段によって上記部材の状態が上記条件を満たすような内容であることが検出されなければ、電源部から照明手段への電力の供給は許可されない。
【0017】
つまり、制御手段からの信号だけでなく、当該制御手段とは独立した制御系統における検出結果に基づいて、照明手段への電力の供給の許可/不許可が決定されることになる。
【0018】
したがって、検出手段によって検出される周辺部材の異常状態を照明手段への電力供給の制御に確実に反映させることができる。
【0019】
また、当該制御手段とは独立した制御系統において検出される上記のような部材についての検出結果が、当該制御手段を経ず、直接、許可手段において、照明手段への電力供給の許可/不許可の決定に反映される。
【0020】
したがって、たとえ制御手段に誤動作があった場合でも、上記のような部材に異常があるときには、確実に、照明手段に電力が供給されることを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の映像表示装置の一実施の形態であるプロジェクタの主要部の構成を模式的に示す図である。
【0022】
図1を参照して、プロジェクタは、光学エンジン2と、投射レンズ3とを含み、その外郭をキャビティ(図示略)で覆われている。なお、プロジェクタは、スピーカ等の音声を出力するための構成要素や、光学エンジン2の構成要素および音声出力手段を電気的に制御するための回路基板なども搭載されているが、図1では、これらを含む一部の構成要素の図示は省略されている。
【0023】
光学エンジン2は、照明装置10を含む。照明装置10は、2つのランプ10A,10Bと、ミラー10Dの駆動等のためのミラーユニット(図2に示すミラーユニット120)を有する。ランプ10A,10Bは、たとえば超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプなどからなる。ランプ10A,10Bからの光は、リフレクタの作用により、ほぼ平行光となって出射される。
【0024】
ミラー10Dは、同図X−Z平面に平行に回動可能であり、ランプ10Aの起動時には図1に示されるように、ランプ10Aからの光をフライアイインテグレータ11へと導く状態とされる。一方、ランプ10Bの起動時には、ミラー10Dは、同図Y軸方向を回転軸として時計回りに90°回動されて、ランプ10Bからの光をフライアイインテグレータ11へ導く状態とされる。
【0025】
照明装置10からの光は、フライアイインテグレータ11を介して、PBS(偏光ビームスプリッタ)アレイ12およびコンデンサレンズ13に入射される。フライアイインテグレータ11は、蝿の目状のレンズ群からなるフライアイレンズを備え、液晶パネル18,24,33に入射する光の光量分布が均一となるよう、照明装置10から入射される光に光学作用を付与する。
【0026】
PBSアレイ12は、複数のPBSと1/2波長板がアレイ上に配列されたものであり、フライアイインテグレータ11から入射された光の偏光方向を1方向に揃える。コンデンサレンズ13は、PBSアレイ12から入射された光に集光作用を付与する。コンデンサレンズ13を透過した光は、ダイクロイックミラー14に入射する。
【0027】
ダイクロイックミラー14は、コンデンサレンズ13から入射された光のうち、青色波長帯の光(以下、「B光」という)のみを透過し、赤色波長帯の光(以下、「R光」という)と緑色波長帯の光(以下、「G光」という)を反射する。ダイクロイックミラー14を透過したB光は、ミラー15に導かれ、そこで反射され、コンデンサレンズ16に入射される。
【0028】
コンデンサレンズ16は、B光がほぼ平行光で液晶パネル18に入射するよう、B光に光学作用を付与する。コンデンサレンズ16を透過したB光は、入射側偏光板17を介して液晶パネル18に入射される。液晶パネル18は、青色用の映像信号に応じて駆動され、その駆動状態に応じてB光を変調する。液晶パネル18によって変調されたB光は、出射側偏光板19を介して、ダイクロイックプリズム(以下、単に「プリズム」ともいう)20に入射される。
【0029】
ダイクロイックミラー14によって反射された光のうちG光は、ダイクロイックミラー21によって反射され、コンデンサレンズ22に入射される。コンデンサレンズ22は、G光がほぼ平行光で液晶パネル24に入射するよう、G光に光学作用を付与する。コンデンサレンズ22を透過したG光は、入射側偏光板23を介して液晶パネル24に入射される。液晶パネル24は、緑色用の映像信号に応じて駆動され、その駆動状態に応じてG光を変調する。液晶パネル24によって変調されたG光は、出射側偏光板25を介して、ダイクロイックプリズム20に入射される。
【0030】
ダイクロイックミラー21を透過したR光は、コンデンサレンズ26に入射される。コンデンサレンズ26は、R光がほぼ平行光で液晶パネル33に入射するよう、R光に光学作用を付与する。コンデンサレンズ26を透過したR光は、光路長調整用のリレーレンズ27,29,31と2つのミラー28,30からなる光路を進み、入射側偏光板32を介して液晶パネル33に入射される。液晶パネル33は、赤色用の映像信号に応じて駆動され、その駆動情報に応じてR光を変調する。液晶パネル33によって変調されたR光は、出射側偏光板34を介して、ダイクロイックプリズム20に入射される。
【0031】
ダイクロイックプリズム20は、液晶パネル18,24,33によって変調されたB光,G光およびR光を色合成し、投射レンズ3へと入射させる。投射レンズ3は、投射光を被投射面上に結像させるためのレンズ群と、これらレンズ群の一部を光軸方向に変位させて投射画像のズーム状態およびフォーカス状態を調整するためのアクチュエータを備えている。ダイクロイックプリズム20によって色合成された光は、投射レンズ3によって、スクリーン上に拡大投射される。
【0032】
なお、本実施の形態のプロジェクタでは、投射レンズ3とダイクロイックプリズム20との間に、シャッタ3Aが配置されている。本実施の形態のプロジェクタでは、シャッタ3Aを閉状態とすることにより、ランプ10Aまたはランプ10Bが発する光の、投射レンズ3を介しての外部への出射を遮断できる。
【0033】
図2は、本実施の形態のプロジェクタの主要部の制御ブロック図である。
図2を参照して、プロジェクタは、第1ランプ10A、第2ランプ10B、これらのランプに高電圧の電力を供給するランプバラストユニット400、単数または複数の制御基板を搭載されたメインユニット100、ミラーユニット200、リレーユニット300、および入力装置500を含む。
【0034】
メインユニット100は、プロジェクタの動作を全体的に制御するCPU(Central Processing Unit)110を含む。
【0035】
入力装置500は、外部からの操作を受付ける。入力装置500は、たとえば、プロジェクタの外郭となる筐体の表面に設けられたボタンから構成されてもよいし、また、当該筐体とは離間して設けられたリモートコントローラにおけるソフトキーやタッチパネル上のボタン等によって構成されてもよい。入力装置500に対して操作がなされると、当該操作に応じた情報が、入力装置500からCPU110へ入力される。
【0036】
ミラーユニット200は、上記したミラー10Dの他に、ミラー10Dを駆動する駆動機構(図示略)を含む。さらに、ミラーユニット200は、第1ランプ10Aの発する光をプリズム20へ送る状態にあるか否かを検出する第1検出スイッチ201と、第2ランプ10Bが発する光をプリズム20へ送る状態にあるか否かを検出する第2検出スイッチ202とを含む。第1検出スイッチ201と第2検出スイッチ202は、CPU110とは独立して、ミラー10Dの状態を検出する。なお、CPU110とは独立して、とは、第1検出スイッチ201と第2検出スイッチ202による検出動作がCPU110の動作内容に影響を受けないものであることを意味している。
【0037】
本明細書では、以下、ミラー10Dについて、第1ランプ10Aの発する光をプリズム20へ送る状態を第1の状態といい、第2ランプ10Bが発する光をプリズム20へ送る状態を第2の状態という。
【0038】
リレーユニット300は、ランプバラストユニット400と第1ランプ10Aとの間の電気的接続の開閉を切換える第1リレー301と、ランプバラストユニット400と第2ランプ10Bとの間の電気回路の開閉を切換える第2リレー302を含む。
【0039】
第1リレー301および第2リレー302は、たとえば有接点のリレーから構成される。
【0040】
第1リレー301は、第1検出スイッチ201が回路を閉状態とすると、第1リレー用電源121から、第1検出スイッチ201を介して、駆動電力を供給される状態となる。第1検出スイッチ201は、ミラー10Dが上記した第1の状態となったときに、閉状態とされる。
【0041】
つまり、ミラー10Dが第1の状態となると、第1検出スイッチ201が第1リレー用電源121と第1リレー301とを結ぶ電気回路を閉状態とし、これにより、第1リレー301に第1リレー用電源121から電力が供給される。第1リレー301は、電力を供給された状態において、CPU110から回路を閉状態とする信号(第1リレー制御信号:H)を出力されると、ランプバラストユニット400と第1ランプ10Aとを繋ぐ電気回路を閉状態とする。これにより、第1ランプ10Aに電力が供給される。
【0042】
一方、第2リレー302は、第2検出スイッチ202が回路を閉状態とすると、第2リレー用電源122から、第2検出スイッチ202を介して、駆動電力を供給される状態となる。第2検出スイッチ202は、ミラー10Dが上記した第2の状態となったときに、閉状態とされる。
【0043】
つまり、ミラー10Dが第2の状態となると、第2検出スイッチ202が第2リレー用電源122と第2リレー302とを結ぶ電気回路を閉状態とし、これにより、第2リレー302に第2リレー用電源122から電力が供給される。第2リレー302は、電力を供給された状態において、CPU110から回路を閉状態とする信号(第1リレー制御信号:H)を出力されると、ランプバラストユニット400と第2ランプ10Aとを繋ぐ電気回路を閉状態とする。これにより、第2ランプ10Bに電力が供給される。
【0044】
ランプバラストユニット40は、CPU110と通信可能に構成されている。CPU110は、ランプバラストユニット400と通信することにより、その供給電力等を検出し、当該検出結果に基づいてランプバラストユニット400の異常の有無を検知する。検知結果は、CPU110内で処理され、後述するAND回路153からランプバラストユニット400へのバラスト制御信号へと反映される。なお、図2では、CPU110における上記検知結果が「バラスト異常検知結果」として示されている。バラスト異常検知結果は、正常な場合(つまり、異常が検知されない場合)には値Hとして処理され、異常が検知された場合には値Lとして処理される。
【0045】
メインユニット100には、第1検出スイッチ201の開閉に基づき第1リレー301に電力が供給されているか否かを検出するための電圧レベルシフトバッファ131が設けられている。また、メインユニット100には、第2検出スイッチ202の開閉に基づき第2リレー30に二電力が供給されているか否かを検出する電圧レベルシフトバッファ132が設けられている。
【0046】
電圧レベルシフトバッファ131と電圧レベルシフトバッファ132の検出出力は、それぞれ第1検出信号と第2検出信号としてCPU110へ入力される。また、これらの検出信号は、NAND回路151に入力される。NAND回路151は、その演算結果を、AND回路153に、監視結果Aとして出力する。
【0047】
つまり、本実施の形態では、第1検出信号と第2検出信号は、CPU110に入力されるとともに、当該CPU110とは独立して演算を行なうNAND回路151に入力され、当該NAND回路における演算結果がNAND回路151に出力される。ここで、「CPU110とは独立して」とは、NAND回路151の演算処理がCPU110の動作内容に影響を受けないものであることを意味している。
【0048】
CPU110は、メモリ111に記憶されたプログラムを実行することにより、種々の制御を行なう。なお、当該プログラムは、プロジェクタ出荷時からメモリ111内に記録されていても良いし、プロジェクタが通信機能を備える場合に、ネットワーク等を介してダウンロードされてメモリ111内に記録されても良いし、または、プロジェクタが当該プロジェクタから離間した記録媒体に記録された情報の読込みが可能な場合に、当該記録媒体に記録されていたものをメモリ111内に書込むことにより記録されても良い。
【0049】
CPU110が、入力装置500を介した外部からの情報の入力等に基づき第1ランプ10Aを点灯させる際には、CPU110は、ミラー10Dを上記の第1の状態にするようにミラーユニット200に制御信号を出力するとともに、第1ランプ10Aを点灯させるための処理を実行する。
【0050】
第1ランプ10Aを点灯させるための処理としては、具体的には、CPU110は、第1リレー301を閉状態とするような第1リレー制御信号を出力する。そして、ランプバラストユニット400に対して、リレーユニット300への電力の供給を実行させるようなバラスト制御信号を出力する。
【0051】
本明細書では、第1リレー制御信号とは、CPU110からリレーユニット300に対して出力される、第1リレー301の開閉状態を指示するための信号である。H(High)とL(Low)のいずれかの値をとる。Hは、第1リレー301をオンして、第1リレー301に回路を閉じさせるための信号である。Lは、第1リレー301に回路を開放させるための信号である。
【0052】
なお、第2リレー制御信号とは、CPU110からリレーユニット300に対して出力される、第2リレー302の開閉状態を指示するための信号である。第2リレー制御信号は、HとLのいずれかの値をとる。Hは、第2リレー302をオンして、第2リレー302に回路を閉じさせるための信号である。Lは、第2リレー302に回路を開放させるための信号である。
【0053】
CPU110から出力される第1リレー制御信号と第2リレー制御信号とは、リレーユニット300へ出力されるとともに、NAND回路152にも出力される。NAND回路152は、これらの制御信号に対して演算を行ない、その結果を、監視結果Bとして、AND回路153に出力する。
【0054】
CPU110は、第1ランプ10Aまたは第2ランプ10Bを点灯させるときに、バラスト制御信号を出力する。バラスト制御信号は、ランプバラストユニット400に対する制御信号であって、CPU110からAND回路153に出力される。バラスト制御信号は、HとLのいずれかの値をとる。Hは、ランプバラストユニット400からリレーユニット300への電力の供給を行なわせるための信号である。Lは、当該電力の供給を停止させるための信号である。そして、CPU110が出力するバラスト制御信号は、監視結果Cとして、AND回路に出力される。
【0055】
AND回路153は、監視結果Aと監視結果Bと監視結果Cの入力を受け、これらに対して演算を実行し、その結果に基づいて、HまたはLのいずれかの信号を出力する。AND回路から出力される信号は、ランプバラストユニット400へ入力される。
【0056】
ランプバラストユニット400は、AND回路153から入力される信号がHであれば、リレーユニット300への電力の供給を実行し、Lであれば、当該電力の供給を停止する。
【0057】
表1に、第1検出信号と第2検出信号の内容について説明する。
【0058】
【表1】

【0059】
第1検出信号は、第1検出スイッチ201がオンされていれば、つまり、ミラー10Dが第1の状態にあれば、その値はHとなる。そして、それ以外のときには、第1検出信号はLとなる。
【0060】
第2検出信号は、ミラー10Dが第2の状態であるとに、Hとされる。そして、第2検出信号は、それ以外のときには、Lとなる。
【0061】
ミラー10Dが第1の状態と第2の状態との間で状態を切換えられるときの一例として、第1の状態から第2の状態へ状態が切換えられる際の第1検出信号と第2検出信号の変化について、表1を参照して説明する。
【0062】
ミラー10Dが第1ランプ10Aから発する光をプリズム20へ送る第1の状態(表1中の「第1ランプ側」)にあるときには、第1検出スイッチ201はオンされているが、第2検出スイッチ202はオフであるため、第1検出信号はHであるが、第2検出信号はLである。
【0063】
ミラー10Dが第1の状態から第2の状態へ切換えられている途中(表1中の「切換動作中」)では、ミラー10Dは、第1の状態でも第2の状態でもないため、第1検出スイッチ201と第2検出スイッチ202は、いずれも、オフされている。これにより、このときの第1検出信号および第2検出信号は、いずれもLとなる。
【0064】
そして、ミラー10Dが第2の状態となると(表1中の「第2ランプ側」)、第1検出スイッチ201はオフされたままであるが、第2検出スイッチ202は、オンされる。
【0065】
これにより、この状態では、第1検出信号はLであるが、第2検出信号はHとなる。
次に、NAND回路151における、入力信号と演算結果の関係を、表2を参照して説明する。
【0066】
【表2】

【0067】
表2を参照して、NAND回路151に入力される第1検出信号と第2検出信号の組合せが、いずれもがLまたはいずれか一方がHで他方がLである場合には、NAND回路151は、監視結果Aとして、HをAND回路153に出力する。一方、第1検出信号と第2検出信号のいずれもHである場合には、NAND回路151は、監視結果Aとして、LをAND回路153に出力する。
【0068】
第1検出信号と第2検出信号のいずれもがHであるということは、第1検出スイッチ201および第2検出スイッチ202の双方がオンされていることに相当し、これは、ミラー10Dが第1の状態と第2の状態の双方を取っていることに相当する。
【0069】
ミラー10Dは、回動することにより、第1の状態または第2の状態のいずれかを取るのであって、同時に第1の状態と第2の状態を取ることはできない。
【0070】
NAND回路151では、第1検出信号と第2検出信号の双方がHである場合、つまり、ミラー10Dが第1の状態と第2の状態の双方を取っているとされる場合には、異常が発生しているとして、監視結果AとしてLを出力する。
【0071】
次に、表3を参照して、NAND回路152における入力信号と演算結果との関係を説明する。
【0072】
【表3】

【0073】
表3を参照して、NAND回路152は、第1リレー制御信号と第2リレー制御信号のいずれもがLまたはいずれか一方がLで他方がHである場合に、正常にリレーが制御されているとしてHを出力し、いずれの信号もHである場合には、リレーに対する制御に異常があるとしてLを出力する。
【0074】
本実施の形態のプロジェクタでは、ミラー10Dが第1ランプ10Aまたは第2ランプ10Bのいずれかの光のみをプリズム20へ送ることができるように構成されているため、ランプバラストユニット400からの電力供給は、第1ランプ10Aまたは第2ランプ10Bのいずれか一方とされる。これに対し、第1リレー制御信号と第2リレー制御信号のいずれもがHであるということは、第1リレー301と第2リレー302の双方が閉状態とされる制御信号が出力されていることになる。したがって、このような場合には、NAND回路152は、AND回路153に、Lを出力する。そして、これ以外の場合には、NAND回路152は、Hを、AND回路153に監視結果Bとして出力する。
【0075】
次に、CPU110が出力するバラスト制御信号の内容について説明する。
CPU110は、上記したような入力装置500からの入力などに基づいて第1ランプ10Aまたは第2ランプ10Bの点灯の要否を判断し、点灯が必要であると判断した方のランプを点灯させるべく、第1および第2リレー制御信号を出力し、その上で、バラスト制御信号を出力する。なお、CPU110は、当該制御信号を、第1検出信号、第2検出信号およびバラスト異常検知結果の内容に基づいて生成する。生成されるバラスト制御信号の内容を、表4に示す。
【0076】
【表4】

【0077】
表4を参照して、第1検出信号と第2検出信号のいずれもがLであり、かつ、バラスト異常検知結果がHである場合、つまり、ミラー10Dが第1の状態でも第2の状態でもなく、かつ、バラスト異常検知結果が正常であると判断される場合には、バラスト制御信号はHとされる。
【0078】
また、第1検出信号と第2検出信号のいずれか一方がHであり他方がLであり、かつ、バラスト異常検知結果がHである場合、つまり、ミラー10Dが第1の状態または第2の状態のいずれかであることが検出されており、かつ、バラスト異常検知結果が正常である場合も、バラスト制御信号はHとされる。
【0079】
一方、第1検出信号と第2検出信号のいずれもがHとされる場合には、ミラー10Dが第1の状態でありかつ第2の状態であることが検出されていることとなるため、異常であるとして、バラスト制御信号はLとされる。また、バラスト異常検知結果がLと判断された場合には、ランプバラストユニット400の状態がランプの点灯には不適切であるため、異常であるとして、バラスと制御信号はLとされる。
【0080】
次に、AND回路153が出力するバラスト制御信号と上記した監視結果A〜監視結果Cとの関係について、表5を参照して説明する。
【0081】
【表5】

【0082】
表5を参照して、AND回路153は、監視結果A〜監視結果CのいずれもがHである場合にのみ、ランプバラストユニット400に対して、バラスト制御信号としてHを出力する。つまり、NAND回路151とNAND回路152とCPU110のいずれにおいても、異常が検出されなかった場合にのみ、AND回路153は、ランプバラストユニット400に対して、リレーユニット300への電力の供給を許可することとなる。
【0083】
以上説明した本実施の形態では、CPU110がバラスト制御信号を出力した場合、当該制御信号は、ランプバラストユニット400に直接入力されず、AND回路153に、監視結果Cとして入力される。また、AND回路153には、NAND回路151から、第1検出スイッチ201と第2検出スイッチ202の検出結果に基づいた、ミラー10Dの状態についての検出結果(監視結果A)が入力される。さらに、AND回路153には、NAND回路152から、CPU110からリレーユニット300に出力される第1リレー301および第2リレー302の開閉制御についての制御信号の内容(監視結果B)が入力される。そして、AND回路153は、入力される監視結果A〜監視結果Cのいずれもが、ランプバラストユニット400からリレーユニット300に電力を供給するのに適切な内容である場合にのみ、ランプバラストユニット400へ電力を供給することを指示する信号を出力する。
【0084】
本実施の形態では、バラスト制御信号を出力するCPU110により、第1ランプ10Aまたは第2ランプ10Bへの電力の供給態様を制御する制御手段が構成されている。
【0085】
なお、監視結果Aの元となる検出結果を出力する第1検出スイッチ201と第2検出スイッチ202、および、監視結果Bを出力するNAND回路152は、いずれも、監視結果Cを出力するCPU110とは独立して、検出動作を行ない、そして、信号を出力する。これにより、本実施の形態では、第1検出スイッチ201と第2検出スイッチ202およびこれらからの検出出力に基づいて監視結果Aを出力するNAND回路151、ならびに、監視結果Bを出力するNAND回路152により、検出手段が構成されていることになる。
【0086】
本実施の形態では、CPU110からのバラスト制御信号の出力のためのメモリ111やCPU110によるCPU制御系統901と、NAND回路151とNAND回路152を含み、CPU110から独立して監視結果B,Cを出力する電気的制御系統902と、ミラー10Dの物理的な状態を検出するための機械的制御系統903とが、組み合わされて、リレーユニット300への給電制御、つまり、第1ランプ10Aおよび第2ランプ10Bへの給電制御が実現されている。本発明に従った映像表示装置は、このように、互いに独立した異なる種類の制御系統を含むようにシステムを構築することによって、CPU110に信号の誤送信があっても、誤ってランプバラストユニット400がリレーユニット300へ電力を供給することを回避できる。なお、本発明に従った映像表示装置のシステム構成は、このように制御系統を混成させることに限定されない。CPUを複数設ける等、同じ種類の制御系統を複数設けて、つまり、制御系統を多重化させてシステムを構成されても良い。
【0087】
また、本実施の形態では、監視結果Aおよび監視結果Bを出力する論理回路として、それぞれNAND回路のみを用いたが、他の回路を用いても良い。CPU110から独立した電気的な制御系統に関して、両方の監視結果を出力する回路をEXOR回路とした例について、以下に説明する。
【0088】
NAND回路151が用いられれば表2に示したように第1検出信号と第2検出信号のいずれか一方がLであれば監視結果AがHとされたところ、監視結果Aを出力する論理回路としてEXOR回路を用いた場合には、第1検出信号と第2検出信号の両方がLのときにのみ監視結果AがHとなる。
【0089】
また、NAND回路152が用いられれば表3に示したように第1リレー制御信号と第2リレー制御信号のいずれか一方がLであれば監視結果BがHとされたところ、監視結果Bを出力する論理回路としてEXOR回路を用いた場合には、第1リレー制御信号と第2リレー制御信号の両方がLのときにのみ監視結果BがHとなる。
【0090】
このように監視結果Aおよび監視結果Bが出力されることにより、ミラー10Dの回動中やリレー(第1リレー301または第2リレー302)の接点を開放状態に制御している期間など、ランプ(第1ランプ10Aまたは第2ランプ10B)が消灯されるように制御する必要がある場合に、電磁気的なノイズのCPU110やプロジェクタ内のその他の回路への混入やCPU110の動作不良などが原因で、監視結果CがHとなる事態が発生したとしても、監視結果Aおよび監視結果BはLとなるため、AND回路153から出力されるバラスト制御信号はLとなり、AND回路153は、ランプを消灯状態に制御できる。これにより、万が一上記した事態が発生しても誤ってリレーユニット300へ電力が供給されることを回避できる。
【0091】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の映像表示装置の一実施の形態であるプロジェクタの主要部の構成を模式的に示す図である。
【図2】図1のプロジェクタの制御ブロック構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0093】
2 光学エンジン、3 投射レンズ、3A シャッタ、10 照明装置、10A 第1ランプ、10B 第2ランプ、10D,15,28,30 ミラー、11 フライアイインテグレータ、12 PBSアレイ、13,16,22、31 コンデンサレンズ、14 ダイクロイックミラー、17,23,32 入射側偏光板、18,24,33 液晶パネル、19,25,34 出射側偏光板、20 プリズム、21 ダイクロイックミラー、100 メインユニット、110 CPU、11 メモリ、121 第1リレー用電源、122 第2リレー用電源、131,132 電圧レベルシフトバッファ、151,152 NAND回路、153 AND回路、200 ミラーユニット、201 第1検出スイッチ、202 第2検出スイッチ、300 リレーユニット、301 第1リレー、302 第2リレー、400 ランプバラストユニット、500 入力装置、901 CPUによる制御系統、902 電気的制御系統、903 機械的制御系統。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明手段と、
前記照明手段に電力を供給する電源部と、
前記電源部から前記照明手段への電力の供給態様を制御する制御手段と、
前記制御手段と独立した制御系統を構成し、前記照明手段への電力の供給の条件となる部材の状態を検出する検出手段と、
前記制御手段から、前記電源部に前記照明手段へ電力を供給させるための信号が出力された場合、前記検出手段の検出出力が、前記部材の状態が前記条件を満たすものであると判断したときに、前記照明手段への電力の供給を許可する許可手段とを備える、映像表示装置。
【請求項2】
前記電源部と前記照明手段の間の電気回路の開閉状態を切換えるリレーをさらに備え、
前記検出手段は、前記制御手段から前記リレーを閉状態にする信号が出力されているか否かを検出し、
前記許可手段は、前記電源部に前記照明手段へ電力を供給させるための信号が出力された場合に、前記検出手段が前記制御手段から前記リレーを閉状態にする信号が出力されていることを検出したことを条件として、前記電源部から前記照明手段への電力の供給を許可する、請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記照明手段が発する光を外部へ送る光学系部材をさらに備え、
前記検出手段は、前記光学系部材が、前記照明手段の発する光を外部へ送るために適切な状態となったことか否かを判断し、
前記許可手段は、さらに、前記光学系部材が前記適切な状態になったことを検出したことを条件として、前記電源部から前記照明手段への電力の供給を許可する、請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記リレーは、前記光学系部材が前記適切な状態となったことを条件として、前記電気回路の閉状態を維持するための電力を供給される、請求項3に記載の映像表示装置。
【請求項5】
照明手段と、前記照明手段に電力を供給する電源部と、前記電源部から前記照明手段への電力の供給態様を制御する制御手段とを備えた映像表示装置の制御方法であって、
前記制御手段から、前記電源部に前記照明手段へ電力を供給させるための信号が出力されたか否かを判断するステップと、
前記制御手段と独立した制御系統によって、前記照明手段への電力の供給の条件となる部材の状態を検出するステップと、
前記制御手段から前記電源部に前記照明手段へ電力を供給させるための信号が出力された場合、前記部材の状態が前記条件を満たしたときに、前記電源部から前記照明手段へ電力を供給するステップとを備える、映像表示装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−134251(P2010−134251A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310974(P2008−310974)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】