映像表示装置およびヘッドマウントディスプレイ
【課題】本発明は、映像と外界とを同時に観察することができるとともに、小型軽量で接合強度を向上することができる映像表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】映像を表示する表示手段と、映像光を光学瞳に導く接眼光学系13と、表示手段を覆う筐体とを備える映像表示装置において、接眼光学系13は映像光を反射する反射面24を備える第1の透明基板20と第1の透明基板20に接合する第2の透明基板22とで構成されており、第1の透明基板20の反射面24を除く接合面が、曲面に構成される。
【解決手段】映像を表示する表示手段と、映像光を光学瞳に導く接眼光学系13と、表示手段を覆う筐体とを備える映像表示装置において、接眼光学系13は映像光を反射する反射面24を備える第1の透明基板20と第1の透明基板20に接合する第2の透明基板22とで構成されており、第1の透明基板20の反射面24を除く接合面が、曲面に構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示装置及びその映像表示装置を用いたヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の透明基板を接合してなる接眼光学系を用い、LCD等の表示素子の表示画像と外界像とを同時に観察することのできる映像表示装置がある。
【0003】
上述した映像表示装置は、複数の透明基板を反射面を介して接合し、映像表示素子から射出される映像光を透明基板の内部に入射させて反射面で反射させることにより光学瞳に映像光を導くとともに、透明基板を透過する外界光を光学瞳に入射させることで、映像と外界とを同時に観察することができる。このような映像表示装置については、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開2007−10830号公報
【特許文献1】特開2001−166252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような映像表示装置は、反射面のみを介して複数の透明基板を接合しているために、映像表示装置に外力が負荷されると反射面に負荷がかかり、反射面が壊れて映像を観察することができなくなるという問題が生じる。そのため、上述したような映像表示装置においては、複数の透明基板を接合する接合強度を向上する必要がある。なお、接合強度を補うために、接眼光学系の全体を筐体で覆う構成も考えられるが、この場合は映像表示装置全体が大型化するという問題が生じてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、映像と外界とを同時に観察することができるとともに、小型軽量で接合強度を向上することができる映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、映像を表示する表示手段と、前記表示手段からの映像光を光学瞳に導く接眼光学系と、前記表示手段を覆う筐体とを備えた映像表示装置であって、前記接眼光学系は、前記表示手段からの映像光を内部で導光し、反射面を介して光学瞳に導く第1の透明基板と、前記第1の透明基板の前記反射面を含む複数の接合面で接合され、第1の透明基板での外光の屈折を相殺するための第2の透明基板とを有しており、前記筐体は、前記第1の透明基板で支持されており、前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、曲面で構成されていることを特徴としている。
【0007】
上記構成によると、表示手段からの映像光は、接眼光学系の第1の透明基板に入射してその内部を導光され、反射面を介して光学瞳に導かれる。したがって、観察者は、光学瞳の位置にて、表示手段に表示された映像の虚像を観察することができる。また、第1の透明基板に第2の透明基板が接合されているので、第1の透明基板(例えば反射面が形成されている部分)を透過する際の外光の屈折を第2の透明基板で相殺することができる。よって、観察者は、第1の透明基板および第2の透明基板を介して外界像を歪みなく観察することができる。
【0008】
また、第1の透明基板は、反射面以外にも接合面を有しており、しかもその接合面が曲面であるので、反射面のみで接合する場合に比べて、第2の透明基板との接合面積が確実に増大し、接合強度を向上させることができる。したがって、第1の透明基板および第2の透明基板の接合を補強すべく、筐体が接眼光学系の全体を覆う構成とする必要がなく、本発明のように、筐体が接眼光学系の一部である第1の透明基板で支持される構成を採用することができる。このように、筐体が接眼光学系の全体を覆わないので、小型の映像表示装置を実現することができる。
【0009】
また、本発明は上記構成の映像表示装置において、前記表示手段の表示面の中心と光学瞳の中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とすると、前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、2面からなり、前記2面の接合面は、前記反射面に入射する映像光の光軸と前記反射面で反射される映像光の光軸とを含む面に対して、略対称に配置されていることが好ましい。
【0010】
上記構成によると、接眼光学系に荷重が加わると、第1の透明基板と第2の透明基板とを接合する接合面に負荷がかかり、接合面に含まれる反射面が壊れ易くなる。そこで、反射面以外の接合面を2面で構成して、その2面を反射面に入射する映像光の光軸と反射面で反射される映像光の光軸とを含む面に対して略対称となるように配置する。これにより、第1の透明基板と第2の透明基板とを反射面以外の接合面でバランスよく強固に接合することができる。したがって、反射面に負荷がかかりにくくなり、反射面の機能が損なわれるのを回避することができる。
【0011】
また、本発明は上記構成の映像表示装置において、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板とは、同一材料で構成されており、前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、前記第2の透明基板と接着剤で接合されていることが好ましい。
【0012】
上記構成によると、第1の透明基板と、第2の透明基板とは、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の同一材料で構成される。そのため、第1の透明基板と第2の透明基板とを接合する接着剤は、ある特定の1つの材料に対して有効にはたらく接着剤を選択することができる。これにより、第1の透明基板と第2の透明基板とを、より強固に接合することができ、反射面への負荷を確実に軽減できる。
【0013】
また、本発明は上記構成の映像表示装置において、前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、光学瞳側に窪んだ凹面で構成されていることが好ましい。
【0014】
上記構成によると、第1の透明基板における反射面以外の接合面は、光学瞳側に窪んだ凹面で構成されている。そのため、例えば、第1の透明基板の曲面で構成された接合面に沿うように第2の透明基板の接合面を構成し、それらの間に接着剤を充填したときには、接着剤の厚さが均一となる。これにより、対称面とより短い距離にある第1の透明基板と第2の透明基板との間の接合線幅が、対称面とより遠い距離にある第1の透明基板と第2の透明基板との間の接合線幅と比較して狭くなる。つまり、光軸により近い距離にある第1の透明基板と第2の透明基板との接合線幅を小さくすることができる。したがって、観察者は、外界観察時でも瞳中心に近い上記接合線を認識しにくくなり、外界観察がしやすくなる。
【0015】
また、本発明は上記構成の映像表示装置において、前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、光学瞳とは反対側に突出した凸面で構成されており、前記対称面に垂直な断面内において、各凸面の曲率中心は、各凸面間で異なった位置にあることが好ましい。
【0016】
上記構成によると、第1に透明基板における反射面以外の接合面は、光学瞳とは反対側に突出した凸面で構成されており、対称面に垂直な断面内において、各凸面の曲率中心は、各凸面間で異なった位置となるように構成される。そのため、例えば、一方の接合面の曲率中心を軸とする回転方向の荷重が負荷されたとしても、他方の接合面で回転方向に加えられた荷重を分散して接合面の負荷を低減することができる。これにより、第1および第2の透明基板の接合強度をさらに向上させることができる。
【0017】
また、本発明は上記構成の映像表示装置において、第1の透明基板と第2の透明基板とは、接着剤で接合されており、接着剤の厚さは、略均一であることが好ましい。
【0018】
上記構成によると、第1の透明基板と第2の透明基板とを接合する接着層の厚みは、略均一である。そのため、接着剤の一部の領域に応力が集中することを避けることができる。これにより、接着剤による接着強度を向上させることができる。
【0019】
また、本発明は上記構成の映像表示装置において、第1の透明基板の反射面は、体積位相型の反射型ホログラム光学素子が形成された面であることが好ましい。
【0020】
上記構成によると、反射面に体積位相型の反射型のホログラム素子を用いる。体積位相型の反射型のホログラム素子は、波長に対する回折効率の依存性が高い。そのため、外界の透過率が高く、良好に外界を観察することができる。
【0021】
また、本発明は上記構成の映像表示装置において、前記第1の透明基板は、前記映像表示手段の映像光を全反射して前記反射面に導く全反射面を有することが好ましい。
【0022】
上記構成によると、第1の透明基板は、映像表示手段から入射してきた映像光を全反射することで反射面に導くために、第1の透明基板の厚さを薄くすることができる。また、増反射コート等を施す必要がなく、第1の透明基板の全反射面で外界光を透過して明るく外界を観察することができる。
【0023】
また、上記目的を達成するために本発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載の映像表示装置と、前記映像表示装置を観察者の眼前で支持する支持部材とを備えていることを特徴とする。
【0024】
上記構成によると、映像表示装置が支持手段によって観察者の眼前で支持されるので、観察者は、ハンズフリーで映像を観察することができる。また、本発明の映像表示装置は、透明基板を透過して外界を観察可能であるため、映像を表示しない際も眼前に装着して外界を観察することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、接眼光学系において、第1透明基板を屈折する外界光を第2透明基板で相殺することで、表示手段から射出される映像と、外界から得られる外界像とを同時に明瞭に観察することができる。そして、第1透明基板と第2透明基板とを接合する反射面以外の接合面が曲面に構成されていることで、接合面積を増大させて接合強度を向上させることができる。これにより、接合強度を増加させるために、接眼光学系を筐体等で覆う必要がなく、小型軽量な映像表示装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(ヘッドマウントディスプレイについて)
図2(a)は、本実施形態におけるヘッドマウントディスプレイの概略の構成を示す平面図であり、図2(b)は、ヘッドマウントディスプレイの側面図であり、図2(c)は、ヘッドマウントディスプレイの正面図である。ヘッドマウントディスプレイ1は、映像表示装置2と、それを支持する支持手段3とを有しており、全体として、一般の眼鏡から一方のレンズ(例えば左目用)のレンズを取り除いたような外観となっている。
【0027】
映像表示装置2は、観察者に外界像をシースルーで観察させるとともに、映像を表示して観察者にそれを虚像として提供するものである。図2(c)で示す映像表示装置2において、眼鏡の右目用レンズに相当する部分は、後述する第1の透明基板20および第2の透明基板22(図3参照)の貼り合わせによって構成されている。なお、映像表示装置2の詳細な構成については後述する。
【0028】
支持手段3は、映像表示装置2を観察者の眼前(例えば右目の前)で支持するものであり、ブリッジ4と、フレーム5と、テンプル6と、鼻当て7と、ケーブル8とを有している。なお、フレーム5、テンプル6および鼻当て7は、左右一体に設けられているが、これらを左右で区別する場合は、右フレーム5R、左フレーム5L、右テンプル6R、左テンプル6L、右鼻当て7R、左鼻当て7Lのように表現するものとする。
【0029】
映像表示装置2の一端は、ブリッジ4に支持されている。このブリッジ4は、映像表示装置2のほかにも左フレーム5Lおよび鼻当て7を支持している。左フレーム5Lは、左テンプル6Lを回動可能に支持している。一方、映像表示装置2の他端は、右フレーム5Rに支持されている。右フレーム5Rにおいて、映像表示装置2の支持側と反対に位置する側端部は、右テンプル6Rを回動可能に支持している。ケーブル8は、外部信号(例えば映像信号、制御信号)や電力を映像表示装置2に供給するための配線であり、右フレーム5Rおよび右テンプル6Rに沿って設けられている。
【0030】
観察者がヘッドマウントディスプレイ1を使用するときは、右テンプル6Rおよび左テンプル6Lを観察者の右側頭部および左側頭部に接触させるとともに、鼻当て7を観察者の鼻に当て、一般の眼鏡をかけるようにヘッドマウントディスプレイ1を観察者の頭部に装着する。この状態で、映像表示装置2にて映像を表示すると、観察者は、映像表示装置2の映像を虚像として観察することができるとともに、この映像表示装置2を介して外界像をシースルー(例えば、透過率50%以上)で観察することができる。
【0031】
上記構成のヘッドマウントディスプレイ1においては、映像表示装置2が支持手段3によって観察者の眼前で指示されるので、観察者は、ハンズフリーとなり、外界像および映像表示素子での表示映像を虚像として観察しながら、空いた手で所望の作業を行うことができる。
【0032】
なお、図2(a)(b)(c)で示したヘッドマウントディスプレイ1は、映像表示装置2を1個だけ備えた構成であるが、左右の両眼に対応して映像表示装置2を2個備えた構成であっても勿論かまわない。
【0033】
(映像表示装置について)
次に、上述した映像表示装置の詳細について説明する。
【0034】
図3は、映像表示装置の概略の構成を示す断面図である。映像表示装置2は、映像を表示する表示手段11と、表示手段11からの映像光を光学瞳Eに導く接眼光学系13と、表示手段11を覆って接眼光学系13の第1の透明基板20に支持される筐体12とを備える。表示手段11は、光源14と、一方向拡散板15と、集光レンズ16と、LCD17とを有している。
【0035】
光源14は、RGB一体型のLED(日亜化学製)で構成されている。図4は光源14の波長に対する発光強度を示すグラフである。図4に示すように、光源14は、RGBのそれぞれの波長域である、635nm±10nm、525nm±17nm、462nm±12nmにおいて、発光強度が高くなるように構成されている。LEDの強度は、後述するホログラム光学素子21の回折効率やLCD17の透過率等を考慮して設定され、これにより、LCD17で白色表示することができる。
【0036】
一方向拡散板15は、光源14からの照明光を拡散させるものであるが、その拡散度は方向によって異なっている。より詳細には、一方向拡散板15は、ヘッドマウントディスプレイ1を観察者が装着したときの左右方向に対応する方向(図3の紙面に垂直な方向)には、入射光を約40°拡散させ、ヘッドマウントディスプレイ1を観察者が装着したときの上下方向(図3の紙面に平行な方向)には、入射光を約0.5°拡散させる。
【0037】
集光レンズ16は、一方向拡散板15にて拡散された光を集光するものである。集光レンズ16は、光源14と光学瞳Eとが共役となるように配置されることで、上記拡散光が効率よく光学瞳Eを形成し、明るい映像を観察することができる。
【0038】
LCD17は、映像信号に基づいて光源11からの光を変調することにより、映像を表示する光変調素子である。なお、本実施形態では、LCD17は、波長制限フィルタ(カラーフィルタ)を備えた透過型であるが、反射型で構成されていてもよい。この場合、光源14などのほかの光学素子の配置位置を工夫する必要がある。また、LCD17以外の光変調素子(例えば、DMD(Digital Micromirror Device;米国テキサスインスツルメント社製))を用いてもよい。
【0039】
一方、接眼光学系13は、第1の透明基板20と、第2の透明基板22と、第1の透明基板20と第2の透明基板22との間に配置されるホログラム光学素子21とから構成されている。また第1の透明基板20と第2の透明基板22とは、その接合部で連続した面形状が形成されるように接合されている。
【0040】
第1の透明基板20および第2の透明基板22は、例えば、アクリル系樹脂(後述する)で構成されている。第1の透明基板20は、平行平板の下端部を楔状にし、その上端部を厚くした形状で構成されており、面20a、20b、20cを有している。面20aは、表示手段11からの映像光が入射する入射面であり、面20b、20cは互いに対向する面である。このうち、面20bは、全反射面兼射出面となっている。
【0041】
第2の透明基板22は、平行平板の上端部を第1の透明基板20の下端部に沿った形状とすることによって、第1の透明基板20と一体となって略平行平板となるように構成されている。第1の透明基板20に第2の透明基板22を接合させない場合、外界像の光が第1の透明基板20の楔状の下端部を透過するときに屈折するので、第1の透明基板20を介して観察される外界像に歪みが生じる。しかし、第1の透明基板20に第2の透明基板22を接合させて一体的な略平行平板を形成することで、外界像の光が第1の透明基板20の楔状の下端部を透過するときの屈折を第2の透明基板22でキャンセルすることができる。その結果、シースルーで観察される外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
【0042】
第1の透明基板20と第2の透明基板22とは、接着剤23(図7参照)により接合されており、第1の透明基板20と第2の透明基板22の間はホログラム光学素子21が配置されている。
【0043】
ホログラム光学素子21は、体積位相型の反射型のホログラムで構成され、例えば、フォトポリマーからなる。図5に、本実施形態におけるホログラム光学素子21の波長に対する回折効率のグラフを示す。本実施形態におけるホログラム光学素子21は、体積位相型の反射型のホログラムで構成されるため、波長に対する回折効率の依存性が高い。図5に示すように、ホログラム光学素子21は、465nm、521nm、634nmの波長域で強いピークが見られ、これらのピークはそれぞれB、G、Rの波長域の光に対応している。また、それぞれのピークにおける回折波長半値幅は±5nmであり、非常に狭い。そのため、本実施形態におけるホログラム光学素子21は波長選択性が良く、特定の波長を有する光を回折するので、外界光は、ホログラム光学素子21に殆ど影響されることなく、ホログラム光学素子21を透過して光学瞳Eに入射することができる。これにより、外界の透過率が高く、良好に外界を観察することができる映像表示装置2を実現することができる。また、図4および図5に示すように、光源14と、ホログラム光学素子21とのピーク波長が近似していることで、明るい映像を表示することができる映像表示装置2となる。
【0044】
このような映像表示装置2の構成により、光源14から出射された光は、一方向拡散板15にて拡散され、集光レンズ16にて集光されてLCD17へ入射する。LCD17に入射した光は、映像信号に基づいて変調され、映像光として出射される。このとき、LCD17には、その映像自体が表示される。
【0045】
LCD17からの映像光は、接眼光学系13の第1の透明基板20の上端部(面20a)から第1の透明基板20の内部に入射し、対向する2つの面20b、20cで複数回全反射されて、ホログラム光学素子21に入射する。ホログラム光学素子21に入射した光は、そこで反射されて面20bを介して射出され、光学瞳Eに達する。光学瞳Eの位置では、観察者は、LCD17に表示された映像の拡大虚像を観察することができる。光学瞳Eから虚像までの距離は数m程度であり、また、虚像の大きさはLCD17に表示された映像の10倍以上である。
【0046】
一方、第1の透明基板20、第2の透明基板22は、外界からの光をほとんど全て透過させるので、観察者は外界像を観察することができる。したがって、LCD17に表示された映像の虚像は、外界像の一部に重なって観察されることになる。
【0047】
以上のように、映像表示装置2では、LCD17から出射される映像光を第1の透明基板20内での全反射によって光学瞳Eに導く構成としたので、通常の眼鏡レンズと同様に第1の透明基板20および第2の透明基板22の厚さを3mm程度にすることができ、接眼光学系13ひいては映像表示装置2を小型化、軽量化することができる。また、外界像の光の透過率が高くなり、外界像を良好に観察することができる。さらに表示手段11を観察者の眼の直前から大きく離れた位置に配置することができ、観察者の外界に対する視野を広く確保することができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、光学瞳Eを、強度半値でX方向(図3の紙面に対して垂直な方向)に6mm、Y方向(図3の紙面に対して上下方向)に2mmの大きさとなるように設定する。ここで、表示手段11の表示面の中心と光学瞳Eの中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とすると、上述した構成はすなわち、Y方向(ホログラム光学素子21への光軸の入射面(YZ平面)に平行な方向)よりも、X方向(上記入射面に垂直な方向)に大きくなるように設定している。光学瞳Eを上述したように設定することによって、ホログラム光学素子21の波長特性(波長選択性)の影響をあまり受けずに、観察者は色ムラの少ない高画質な映像を観察することができる。その理由は以下のとおりである。
【0049】
まず、ホログラム光学素子21における入射角と波長選択性との関係について説明する。0度より大きい入射角を持つ光を回折させる干渉縞を持つホログラム光学素子21では、入射面(YZ平面)に平行な方向よりも入射面に垂直な方向において、波長選択性が小さい(入射角のずれによる回折波長のずれが小さい)。言い換えると、入射面に平行な方向よりも入射面に垂直な方向のほうが、干渉縞への入射角のずれに対する角度選択性が低い。これは、ホログラム光学素子21の干渉縞に光が入射する場合、入射面内での入射角の角度ずれは、そのまま入射角の角度のずれとなるため、回折波長に対する影響が大きいが、入射面に垂直な方向の角度ずれは、入射角のずれとしては小さく、回折波長に対する影響は小さいからである。
【0050】
したがって、ホログラム光学素子21の干渉縞に所定の入射角からずれた角度の光が入射すると、同じ角度ずれでも、入射面に平行な方向での角度ずれのほうが、入射面に垂直な方向の角度ずれよりも、大きく回折波長がずれる(すなわち入射面に平行な方向は、波長選択性が大きい)。
【0051】
ここで、図6は、本実施形態において、光学瞳Eにおける瞳位置と主たる回折波長(例えばR光)との関係をしめす説明図である。図6中、破線B1は、光学瞳EのX方向における回折波長の変化を示しており、実線B2は、光学瞳EのY方向の瞳における回折波長の変化を示している。このように、回折波長の変化は、入射面に平行なY方向の方が、入射面に垂直なX方向よりも大きい。
【0052】
したがって、回折波長の変化が大きいY方向に光学瞳Eを小さく形成することにより、回折波長の変化の範囲が狭くなるので、光学瞳E上での色むらを低減することができる。また、入射面に垂直な方向に光学瞳Eを大きく形成しても、色純度の高い映像を観察者に提供することができる。
【0053】
なお、光軸入射面以外の光は、入射面が光軸入射面と若干平行ではないが、前述のとおり、入射面に垂直な方向の角度ずれは回折波長に対する影響が小さいので、光軸入射面を基準にしても色むらが大きくなることはない。
【0054】
また、光源14は、光軸入射面に垂直なX方向では、一方向拡散板15により拡散されるので、光学瞳Eとは共役ではないが、光軸入射面に平行なY方向においては、光学瞳Eと略共役である。これにより、光源14の光利用効率を高くするとともに、色再現性の高い映像を提供することができる。
【0055】
また、ホログラム光学素子21は、LCD17にて表示された映像を拡大する正の非軸対称な光学パワーを有しており、上記表示映像を観察者の眼に虚像として導く接眼光学系13の少なくとも一部を構成しているので、接眼光学系13を小型にできるとともに、良好に収差補正された映像を観察者に提供することができる。また、観察者は映像光を観察できる光学瞳Eの大きさより広い範囲で第1の透明基板21、第2の透明基板22およびホログラム光学素子21を透過して外界を観察できる。言い換えれば、光学瞳Eの位置で第1の透明基板21、第2の透明基板22およびホログラム光学素子21を透過した広視野の外界を観察できる。
【0056】
(接眼光学系について)
次に、上述した接眼光学系13の詳細について説明する。
【0057】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における接眼光学系の分解斜視図を示す。
本発明の第1実施形態における接眼光学系13(13a)は、表示手段11を覆う筐体12を支持する第1の透明基板20と、第1の透明基板20と複数の面で接合される第2の透明基板22とから構成されている。
【0058】
第1の透明基板20は、図1に示すように、全体として略4角錐台の形状をしており、その面20bおよび面20cは4つの側面で連結されている。4つの側面のうち、第2の透明基板22と接合される3面を、面20cに対して反時計周りに面20d、20e、20fとする。これらの面20d、20e、20fはそれぞれ法線方向が異なっている。なお、面20bは、映像表示装置2において映像光を全反射するとともに、光学瞳Eに映像光を射出する全反射面兼射出面であり、面20cは、映像表示装置2において映像光を全反射する全反射面である。なお、面20bは光学瞳E側に配置されており、面20cは、面20bと対向して光学瞳Eと反対側に配置されている。
【0059】
面20eは、表示手段から射出する映像光を反射する反射面24に構成されている。ここで、本実施形態において、面20eは、体積位相型の反射型のホログラム光学素子21を配置することで反射面24として構成される。
【0060】
なお、本実施形態においては、面20eにホログラム光学素子21を配置することにより、反射面24を構成したが、金属ミラーコートや多層膜による反射シートにより反射面24を構成してもよい。
【0061】
面20dおよび面20fは、反射面24に入射する映像光の光軸と反射面24で反射される映像光の光軸とを含む面(対称面)に対して略対称となるように配置されて、面20bから面20cに向かって凸型となるように弧を描いた曲面(光学瞳Eとは反対側に突出した凸面)に構成される。この曲面は、自由曲面であってもよいし、非球面に構成されていてもよい。なお、面20eに関しても曲面に構成されても構わない。
【0062】
本発明の接眼光学系13は、第1の透明基板20が反射面24以外にも接合面(面20d、面20f)を有しており、しかもその接合面が曲面であるので、反射面のみで接合する場合に比べて、第2の透明基板22との接合面積が確実に増大し、接合強度を向上させることができる。したがって、第1の透明基板20および第2の透明基板22の接合を補強すべく、筐体が接眼光学系13の全体を覆う構成とする必要がなく、本発明のように、筐体12が接眼光学系13の一部である第1の透明基板20で支持される構成を採用することができる。このように、筐体12が接眼光学系13の全体を覆わないので、小型の映像表示装置2を実現することができる。さらに、接合強度が向上することで、接眼光学系13を薄型化することができ、軽量な映像表示装置2を実現することができる。
【0063】
また、面20dおよび面20fを反射面24に対して略対称となるように配置されることで、映像表示装置2に外力が付加されたときに、反射面24にかかる負荷を、反射面24以外の接合面である面20d、20fに分散させることができ、第1の透明基板20と第2の透明基板22とを反射面24以外の接合面でバランスよく強固に接合することができる。これにより、反射面24を破壊から守ることができる。
【0064】
ここで、前記対称面に垂直な断面内において、第1の透明基板20の反射面24以外の接合面である各面20d、20fの曲率中心は、各接合面間で異なった位置にあるように構成される。そのため、例えば、一方の面20dの曲率中心を軸とする回転方向の荷重が映像表示装置2に負荷されたとしても、他方の面20fで回転方向に加えられた荷重を分散して面20dの負荷を低減することができる。これにより、第1透明基板20と第2の透明基板22との接合強度をさらに向上させることができる。
【0065】
第2の透明基板22は、図1に示すように、第1の透明基板20が接合することで平行平板が形成されるような形状となっている。つまり、第2の透明基板22は、平行平板から第1の透明基板20の形状をくりぬいた形状を有している。ここで、第2の透明基板22において、第1の透明基板20と接合したときに、第1の透明基板20の面20d、20e、20fと対向する面をそれぞれ面22a、22b、22cとする。これらの面22a、22b、22cの法線方向も互いに異なっている。第1の透明基板20の反射面24と対向する面22bは、反射面24に沿う形状となっているため、反射面24が曲面に構成されている場合は、面22bも反射面24に沿うような曲面に構成される。
【0066】
したがって、第2の透明基板22が、第1の透明基板20に沿う形状となっていることで、さらに接合面積を増加させることができ、接合強度を向上することができる。
【0067】
第1の透明基板20の接合面と、第2の透明基板22の接合面とは接着剤23を介して接合される。ここで、本実施形態においては、第1の透明基板20と第2の透明基板22とは、ともにPMMA(ポリメタクリル酸メチル)等の同一材料を用いて構成される。そのため、接着剤23は、ある特定の1つの材料に対して有効にはたらくものを選択することができる。これにより、第1の透明基板20の反射面24以外の面20d、20fと、第2の透明基板22の面22a、22cとを、より強固に接合することができ、反射面24への負荷を確実に軽減できる。
【0068】
図7は、本発明の接眼光学系の断面図である。図7に示すように、本実施形態における接眼光学系において、第1の透明基板20に沿うように第2の透明基板22を構成したことにより、第1の透明基板20の接合面と第2の透明基板22の接合面に配置する接着剤23の厚さを均一にすることができる。そのため、接着剤23の一部の領域に応力が集中することを避けることができ、接着剤23による接着強度を向上させることができる。
【0069】
ところで、接眼光学系13において、第1の透明基板20と第2の透明基板22とを接合する接着剤23の厚さを均一に構成すると、第1の透明基板20と第2の透明基板22との接合線幅が異なる。そこで、第1実施形態の接眼光学系13において、反射面24で反射されて光学瞳Eに入射する光軸により近い距離にある接合線幅が狭くなるように構成することで、接合線幅を認識しにくい接眼光学系を構成した構成例について以下に示す。
【0070】
図8は、本発明の第1実施形態における別の構成例である接眼光学系を示した分解斜視図である。
【0071】
本発明の第1実施形態における別の構成例である接眼光学系13(13b)は、表示手段11を覆う筐体12を支持する第1透明基板30と、第1透明基板30と複数の面で接合される第2透明基板31とから構成されている。
【0072】
第1の透明基板30は、図8に示すように、全体として略4角錐台の形状をしており、その面30bおよび面30cは4つの側面で連結されている。4つの側面のうち、第2の透明基板22と接合される3面を、面30cに対して反時計周りに面30d、30e、30fとする。これらの面30d、30e、30fはそれぞれ法線方向が異なっている。なお、面30bは、映像表示装置2において映像光を全反射するとともに、光学瞳Eに映像光を射出する全反射面兼射出面であり、面30cは、映像表示装置2において映像光を全反射する全反射面である。なお、面30bは光学瞳E側に配置されており、面30cは、面30bと対向して光学瞳Eと反対側に配置されている。
【0073】
面30eは、ホログラム光学素子21が配置することで、表示手段11から射出する映像光を反射する反射面34となる。そして、面30d、30fと反射面34は、第1の透明基板30と、第2の透明基板31とを接合する接合面となる。ここで、面30dおよび面30fは、反射面34に入射する映像光の光軸と反射面で反射される映像光の光軸とを含む面に対して略対称となるように配置されて、面30cから面30bに向かって窪んだ凹型となるように弧を描いた曲面(光学瞳E側に窪んだ凹面)に構成される。この曲面は、自由曲面であってもよいし、非球面に構成されていてもよい。なお、面30eに関しても曲面に構成されても構わない。
【0074】
第2の透明基板31は、図8で示すように、第1の透明基板30が接合することで平行平板が形成されるような形状となっている。つまり、第2の透明基板31は、平行平板から第1の透明基板30の形状をくりぬいた形状を有している。ここで、第2の透明基板31において、第1の透明基板30と接合したときに、第1の透明基板30の面30d、30e、30fと対向する面をそれぞれ面31a、31b、31cとする。これらの面31a、31b、31cの法線方向も互いに異なっている。第1の透明基板30の反射面34と対向する面31bは、反射面34に沿う形状となっているため、反射面34が曲面に構成されている場合は、面31bも反射面34に沿うような曲面に構成される。
【0075】
ここで、図9は接眼光学系13bを示す断面図である。第1の透明基板30と第2の透明基板31とを上述したように構成することで、図9に示すように、面30c側に位置する接合線幅のほうが、面30b側に位置する接合線幅よりも狭くなる。つまり、光軸により近い距離にある第1の透明基板30と第2の透明基板31との接合線幅を小さくすることができる。そのため、光学瞳Eの中心とより近くなるほど、接合線幅が狭くなる。これにより、観察者は、外界観察時でも瞳中心に近い上記接合線幅を認識しにくくなり、外界観察がしやすい映像表示装置2を構成することができる。
【0076】
(第2実施形態)
第2実施形態における接眼光学系18(18a)について以下に示す。図10は、本発明の第2実施形態における接眼光学系の分解斜視図を示す。なお、説明のため、第1実施形態の接眼光学系13と同様の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0077】
第2実施形態の接眼光学系18(18a)は、表示手段11を覆う筐体12を支持する第1の透明基板40と、第1の透明基板40と複数の面で接合される第2の透明基板41とから構成されている。
【0078】
第1の透明基板40は、図10に示すように、側面の一部が斜面に構成される柱体形状を有する。また、斜面は、面40a、40b、40cから構成されており、斜面の中心に配置する面40bには、ホログラム光学素子21が配置されて反射面42を構成している。そして、反射面42に入射する映像光の光軸と反射面42で反射される映像光の光軸とを含む面に対して略対称となるように反射面42を除く面40a、40cが配置される。ここで、面40a、40cは、光学瞳E側から見て凸型となるシリンドリカルあるいは自由曲面となるような曲面に構成される。なお、反射面42に関しても曲面に構成されても構わない。ただし、反射面42を曲面に構成した場合でも、面40a、40b、40cは、同一面とはならない。
【0079】
第2の透明基板41は、図10に示すように、第1の透明基板40が接合することで平行平板が形成されるような形状となっている。ここで、第2の透明基板41において、第1の透明基板40と斜面で接合したときに、第1の透明基板40の面40a、40b、40cと対向する面をそれぞれ面41a、41b、41cとする。第1の透明基板40の反射面42と対向する面41bは、反射面42に沿う形状となっているため、反射面42が曲面に構成されている場合は、面41bも反射面42に沿うような曲面に構成される。
【0080】
次に、第2実施形態の別の構成例における接眼光学系18(18b)について示す。図11は、本発明の第2実施形態の別の構成例である接眼光学系の分解斜視図を示す。
【0081】
第1の透明基板50は、図11に示すように、側面の一部が斜面に構成される柱体形状を有する。また、斜面は、面50a、50b、50cから構成されており、斜面の中心に配置する面50bには、ホログラム光学素子21が配置されて反射面52を構成している。そして、反射面52に入射する映像光の光軸と反射面52で反射される映像光の光軸とを含む面に対して略対称となるように反射面52を除く面50a、50cが配置される。ここで、面50a、50cは、光学瞳E側から見て窪んだ凹型となるシリンドリカルあるいは自由曲面となるような曲面に構成される。なお、反射面52に関しても曲面に構成されても構わない。
【0082】
第2の透明基板51は、図11に示すように、第1の透明基板50と接合することで平行平板が形成されるような形状となっている。第2の透明基板51において、第1の透明基板50の斜面と接合したときに、第1の透明基板50の面50a、50b、50cと対向する面をそれぞれ面51a、51b、51cとする。第1の透明基板50の反射面52と対向する面50bは、反射面52に沿う形状となっているため、反射面52が曲面に構成されている場合は、面51bも反射面に沿うような曲面に構成される。
【0083】
第2実施形態の接眼光学系18(18a、18b)は、上述したような構成を備えることにより、第1実施形態の接眼光学系13に比べて射出成型の際の金型の構成が簡素となるため、容易に製造することができる。なお、第2実施形態の接眼光学系18は、第1の透明基板において反射面を除く接合面の曲率中心が同軸上となっているが、接合面によって曲率中心が異なる軸上にあるように構成することもできるし、あるいは、接合面と接合面とで凹凸が逆になるように構成することもできる。
【0084】
上述した映像表示装置2の構成においては、光源14としてLEDを1個用いた構成としていたが、光源としてLEDを2個用いた構成としてもよい。図12は、LEDを2個配置した光源の平面図である。図13は、上記光源を用いた映像表示装置の光路を展開して示す説明図である。
【0085】
光源60は、LED61aとLED61bとで構成され、LED61aおよびLED61bは、それぞれRGBの各色光を出射する発光素子62(62R、62G、62B)および発光素子63(63R、63G、63B)で構成されている。
【0086】
各LED61a、61bの各発光素子62、63は、ホログラム発光素子21への光軸の入射面(YZ平面)に対して垂直な方向に並んで配置されているが、さらに、上記入射面に対して各色ごとに面対称となるように配置されている。より詳細には、図12に示すように、発光素子62R・63Rが上記入射面に近い位置で面対称となるように配置され、そのX方向外側に発光素子62G・63Gが上記入射面に対して面対称となるように配置され、さらにそのX方向外側に発光素子62B・63Bが上記入射面に対して面対称となるように配置されている。つまり、各LED61a、61bでは、上記入射面側からX方向外側に向かうにつれて出射光の波長が短くなるような順序で、各発光素子が配置されている。
【0087】
このように、各発光素子を各色ごとに上記入射面に対して面対称に配置することにより、同じ色についての2つの発光素子(例えば62Rと63R)からの出射光の光強度を足し合わせたトータルの光強度の重心を、RGBの各色ともに対称面内(上記入射面内)に位置させることができる。つまり、RGBの各色ともにその強度分布を、対称面を中心にしてX方向に対称にすることができる。これにより、光学瞳Eの中心において色ムラの少ない映像を観察者に提供することができる。
【0088】
なお、各発光素子の面対称の中心となる面は、上記入射面に平行な面であってもよい。つまり、各発光素子の面対称の中心となる面は、上記入射面からX方向に多少ずれた面であっても構わない。この場合は、光学瞳Eの中心付近において色ムラの少ない映像を観察者に提供することができる。
【0089】
ここで、ホログラム発光素子21は、上述したように、回折効率ピークおよびその半値波長全幅で465nm±5nm、521nm±5nm、634nm±5nmの各波長の映像光を回折するように作製されている。このように、各色で回折効率の半値波長幅が同じなので、波長の長い光ほど角度選択性が大きい(波長の変化に対する入射角のずれが小さい)。したがって、LED61a、61bにおいて、光軸入射面側からX方向外側に向かうにつれて出射光の波長が短くなるような順序で各発光素子62、63が配置されていることにより、光学瞳E内での各色の強度差を小さくすることができ、光学瞳E内で色ムラの少ない映像を観察者に提供することができる。以下、この点について詳細に説明する。
【0090】
回折効率ピークの波長をλ、ホログラム発光素子21の媒質(干渉縞)の屈折率をn、媒質の厚さをh、入射角をθとすると、これらの間には、
λ=2nhcosθ
の関係が成り立つ。ここで、波長の短いB光および波長の長いR光において、それぞれの波長が例えば同じ5nmだけずれた場合、波長の変化の割合は、B光については465/470であり、R光については634/639である。つまり、波長の変化の割合は、波長の短いB光に比べて波長の長いR光のほうが小さい。したがって、波長の短いB光に比べて波長の長いR光のほうが、波長の変化に対する入射角θのずれ方は小さい(角度選択性が大きい)。よって、光源60からの出射光のRGBの波長幅が同じ場合には、ホログラム発光素子21によって回折されてできる光学瞳Eの大きさは、波長が長い光ほど小さい。なお、光学瞳Eは、各色の光学瞳の範囲を全て含むものとする
【0091】
一方、光源60のLED(各発光素子)からの出射光の強度は、一般的に中心付近ほど強く、周囲ほど弱い。また、各発光素子は、Y方向においては、光学瞳Eと略共役となるように配置されているが、X方向では、一方向拡散板15により拡散されるので、光学瞳Eとは共役ではない。しかし、光学瞳Eにおいて最も強度の強い位置は、一方向拡散板15がないとした場合の各発光素子と共役な位置にほぼ同じである。
【0092】
したがって、光学瞳Eが小さい長波長(R光)の瞳中心を光学瞳Eの中心側に位置させ、光学瞳Eが大きい短波長(B光)の瞳中心を光学瞳Eの中心よりも外側に位置させることで、光学瞳E内での瞳位置による強度差を各色について小さくすることができる。この点について、もう少し詳細に説明する。
【0093】
図14は、光学瞳EにおけるX方向の瞳位置と光強度との関係を示す説明図である。なお、光強度は、同じ色については相対値で示されている。また、図14中の62R、62G、62B、63R、63G、63Bで示される曲線は、それぞれの発光素子62(62R、62G、62B)、63(63R、63G、63B)から出射される光に対応している。
【0094】
上述したように、ホログラム発光素子21の角度選択性により、波長が長い光ほど光学瞳Eは小さいので、図14に示すように、波長が長い光ほど瞳位置による強度差が大きくなっている(光学瞳Eの中心と端部における強度差が大きくなっている)。逆に、波長が短い光ほど光学瞳Eは大きいので、波長が短い光ほど瞳位置による強度差が小さくなっている。
【0095】
また、波長が長い光を発光する発光素子62R(63R)ほど、光軸入射面側に配置されているので、光強度の高い位置は、波長が長い光ほど光学瞳Eの中心に近くなっている。逆に、波長が短い光を発光する発光素子62B(63B)ほど光軸入射面から離れた位置に配置されているので、光強度の高い位置は、光学瞳Eの周辺となっている。
【0096】
つまり、波長が長い光ほど瞳位置による強度差が大きいが、光軸入射面側からX方向外側に向かうにつれて出射光の波長が短くなるような順序で各発光素子を配置し、波長が長い光ほど光強度の高い位置を光学瞳Eの中心に近づけることで、波長が長い光について、瞳位置による強度差、すなわち、光学瞳Eの中心と端部における強度差を小さくすることができる。これにより、光学瞳Eの全体(瞳中心および瞳周辺)で色ムラの少ない映像を観察者に提供することができる。
【0097】
また、LED61a、61bの各発光素子62、63は、図13に示すように、一方向拡散板15での拡散が大きい波長順(波長が短いほど拡散する)に配置されているので、光学瞳E上での各色の強度差がさらに小さくなり、色ムラを更に低減することができる。つまり、色純度の高い映像を観察者に提供することができる。
【0098】
また、本実施形態においては、LED61aおよびLED61bの光の射出面に、マスク64を配置する。マスク64は、図12に示すように、LED61a・LED61bの発光素子62・63が配置されている領域を除いて上下に配置される。
【0099】
本実施形態の光源60においては、LED61aとLED61bとの射出面の前面にマスク64を配置することで、LED61a、61b内の乱反射や拡散で発生する不要な光を遮光して光学瞳EのY方向(紙面に対して上下方向)の大きさを制限し、ホログラム発光素子21の色むらを抑制したり、フレア光を軽減したりすることができる。なお、上述した光源60においては、LED61の封止剤に拡散剤を混ぜて、RGBの混色の補助を行うこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の映像表示装置は、例えばヘッドマウントディスプレイに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の第1実施形態における接眼光学系を示す分解斜視図である。
【図2】(a)は、本発明のヘッドマウントディスプレイを示す平面図である。(b)は、本発明のヘッドマウントディスプレイを示す側面図である。(c)は、本発明のヘッドマウントディスプレイを示す正面図である。
【図3】本発明の映像表示装置を示す断面図である。
【図4】本発明の光源の発光強度を示す説明図である。
【図5】本発明のホログラム光学素子の回折効率を示す説明図である。
【図6】本発明の光学瞳における瞳位置と主たる回折波長との関係を示す説明図である。
【図7】本発明の接眼光学系を示す断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態における接眼光学系の別の構成例を示す分解斜視図である。
【図9】本発明の上記接眼光学系を示す断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態における接眼光学系の分解斜視図である。
【図11】本発明の第2実施形態における接眼光学系の別の構成例を示す分解斜視図である。
【図12】本発明の光源を示す平面図である。
【図13】本発明の映像表示装置を示す光路展開図である。
【図14】本発明の光学瞳におけるX方向の瞳位置と光強度との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0102】
1 ヘッドマウントディスプレイ
2 映像表示装置
3 支持手段
11 表示手段
12 筐体
13 接眼光学系
20、30,40、50 第1の透明基板
21 ホログラム光学素子
22、31、41、51 第2の透明基板
23 接着剤
24,34、42、52 反射面
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示装置及びその映像表示装置を用いたヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の透明基板を接合してなる接眼光学系を用い、LCD等の表示素子の表示画像と外界像とを同時に観察することのできる映像表示装置がある。
【0003】
上述した映像表示装置は、複数の透明基板を反射面を介して接合し、映像表示素子から射出される映像光を透明基板の内部に入射させて反射面で反射させることにより光学瞳に映像光を導くとともに、透明基板を透過する外界光を光学瞳に入射させることで、映像と外界とを同時に観察することができる。このような映像表示装置については、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開2007−10830号公報
【特許文献1】特開2001−166252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような映像表示装置は、反射面のみを介して複数の透明基板を接合しているために、映像表示装置に外力が負荷されると反射面に負荷がかかり、反射面が壊れて映像を観察することができなくなるという問題が生じる。そのため、上述したような映像表示装置においては、複数の透明基板を接合する接合強度を向上する必要がある。なお、接合強度を補うために、接眼光学系の全体を筐体で覆う構成も考えられるが、この場合は映像表示装置全体が大型化するという問題が生じてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、映像と外界とを同時に観察することができるとともに、小型軽量で接合強度を向上することができる映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、映像を表示する表示手段と、前記表示手段からの映像光を光学瞳に導く接眼光学系と、前記表示手段を覆う筐体とを備えた映像表示装置であって、前記接眼光学系は、前記表示手段からの映像光を内部で導光し、反射面を介して光学瞳に導く第1の透明基板と、前記第1の透明基板の前記反射面を含む複数の接合面で接合され、第1の透明基板での外光の屈折を相殺するための第2の透明基板とを有しており、前記筐体は、前記第1の透明基板で支持されており、前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、曲面で構成されていることを特徴としている。
【0007】
上記構成によると、表示手段からの映像光は、接眼光学系の第1の透明基板に入射してその内部を導光され、反射面を介して光学瞳に導かれる。したがって、観察者は、光学瞳の位置にて、表示手段に表示された映像の虚像を観察することができる。また、第1の透明基板に第2の透明基板が接合されているので、第1の透明基板(例えば反射面が形成されている部分)を透過する際の外光の屈折を第2の透明基板で相殺することができる。よって、観察者は、第1の透明基板および第2の透明基板を介して外界像を歪みなく観察することができる。
【0008】
また、第1の透明基板は、反射面以外にも接合面を有しており、しかもその接合面が曲面であるので、反射面のみで接合する場合に比べて、第2の透明基板との接合面積が確実に増大し、接合強度を向上させることができる。したがって、第1の透明基板および第2の透明基板の接合を補強すべく、筐体が接眼光学系の全体を覆う構成とする必要がなく、本発明のように、筐体が接眼光学系の一部である第1の透明基板で支持される構成を採用することができる。このように、筐体が接眼光学系の全体を覆わないので、小型の映像表示装置を実現することができる。
【0009】
また、本発明は上記構成の映像表示装置において、前記表示手段の表示面の中心と光学瞳の中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とすると、前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、2面からなり、前記2面の接合面は、前記反射面に入射する映像光の光軸と前記反射面で反射される映像光の光軸とを含む面に対して、略対称に配置されていることが好ましい。
【0010】
上記構成によると、接眼光学系に荷重が加わると、第1の透明基板と第2の透明基板とを接合する接合面に負荷がかかり、接合面に含まれる反射面が壊れ易くなる。そこで、反射面以外の接合面を2面で構成して、その2面を反射面に入射する映像光の光軸と反射面で反射される映像光の光軸とを含む面に対して略対称となるように配置する。これにより、第1の透明基板と第2の透明基板とを反射面以外の接合面でバランスよく強固に接合することができる。したがって、反射面に負荷がかかりにくくなり、反射面の機能が損なわれるのを回避することができる。
【0011】
また、本発明は上記構成の映像表示装置において、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板とは、同一材料で構成されており、前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、前記第2の透明基板と接着剤で接合されていることが好ましい。
【0012】
上記構成によると、第1の透明基板と、第2の透明基板とは、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の同一材料で構成される。そのため、第1の透明基板と第2の透明基板とを接合する接着剤は、ある特定の1つの材料に対して有効にはたらく接着剤を選択することができる。これにより、第1の透明基板と第2の透明基板とを、より強固に接合することができ、反射面への負荷を確実に軽減できる。
【0013】
また、本発明は上記構成の映像表示装置において、前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、光学瞳側に窪んだ凹面で構成されていることが好ましい。
【0014】
上記構成によると、第1の透明基板における反射面以外の接合面は、光学瞳側に窪んだ凹面で構成されている。そのため、例えば、第1の透明基板の曲面で構成された接合面に沿うように第2の透明基板の接合面を構成し、それらの間に接着剤を充填したときには、接着剤の厚さが均一となる。これにより、対称面とより短い距離にある第1の透明基板と第2の透明基板との間の接合線幅が、対称面とより遠い距離にある第1の透明基板と第2の透明基板との間の接合線幅と比較して狭くなる。つまり、光軸により近い距離にある第1の透明基板と第2の透明基板との接合線幅を小さくすることができる。したがって、観察者は、外界観察時でも瞳中心に近い上記接合線を認識しにくくなり、外界観察がしやすくなる。
【0015】
また、本発明は上記構成の映像表示装置において、前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、光学瞳とは反対側に突出した凸面で構成されており、前記対称面に垂直な断面内において、各凸面の曲率中心は、各凸面間で異なった位置にあることが好ましい。
【0016】
上記構成によると、第1に透明基板における反射面以外の接合面は、光学瞳とは反対側に突出した凸面で構成されており、対称面に垂直な断面内において、各凸面の曲率中心は、各凸面間で異なった位置となるように構成される。そのため、例えば、一方の接合面の曲率中心を軸とする回転方向の荷重が負荷されたとしても、他方の接合面で回転方向に加えられた荷重を分散して接合面の負荷を低減することができる。これにより、第1および第2の透明基板の接合強度をさらに向上させることができる。
【0017】
また、本発明は上記構成の映像表示装置において、第1の透明基板と第2の透明基板とは、接着剤で接合されており、接着剤の厚さは、略均一であることが好ましい。
【0018】
上記構成によると、第1の透明基板と第2の透明基板とを接合する接着層の厚みは、略均一である。そのため、接着剤の一部の領域に応力が集中することを避けることができる。これにより、接着剤による接着強度を向上させることができる。
【0019】
また、本発明は上記構成の映像表示装置において、第1の透明基板の反射面は、体積位相型の反射型ホログラム光学素子が形成された面であることが好ましい。
【0020】
上記構成によると、反射面に体積位相型の反射型のホログラム素子を用いる。体積位相型の反射型のホログラム素子は、波長に対する回折効率の依存性が高い。そのため、外界の透過率が高く、良好に外界を観察することができる。
【0021】
また、本発明は上記構成の映像表示装置において、前記第1の透明基板は、前記映像表示手段の映像光を全反射して前記反射面に導く全反射面を有することが好ましい。
【0022】
上記構成によると、第1の透明基板は、映像表示手段から入射してきた映像光を全反射することで反射面に導くために、第1の透明基板の厚さを薄くすることができる。また、増反射コート等を施す必要がなく、第1の透明基板の全反射面で外界光を透過して明るく外界を観察することができる。
【0023】
また、上記目的を達成するために本発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載の映像表示装置と、前記映像表示装置を観察者の眼前で支持する支持部材とを備えていることを特徴とする。
【0024】
上記構成によると、映像表示装置が支持手段によって観察者の眼前で支持されるので、観察者は、ハンズフリーで映像を観察することができる。また、本発明の映像表示装置は、透明基板を透過して外界を観察可能であるため、映像を表示しない際も眼前に装着して外界を観察することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、接眼光学系において、第1透明基板を屈折する外界光を第2透明基板で相殺することで、表示手段から射出される映像と、外界から得られる外界像とを同時に明瞭に観察することができる。そして、第1透明基板と第2透明基板とを接合する反射面以外の接合面が曲面に構成されていることで、接合面積を増大させて接合強度を向上させることができる。これにより、接合強度を増加させるために、接眼光学系を筐体等で覆う必要がなく、小型軽量な映像表示装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(ヘッドマウントディスプレイについて)
図2(a)は、本実施形態におけるヘッドマウントディスプレイの概略の構成を示す平面図であり、図2(b)は、ヘッドマウントディスプレイの側面図であり、図2(c)は、ヘッドマウントディスプレイの正面図である。ヘッドマウントディスプレイ1は、映像表示装置2と、それを支持する支持手段3とを有しており、全体として、一般の眼鏡から一方のレンズ(例えば左目用)のレンズを取り除いたような外観となっている。
【0027】
映像表示装置2は、観察者に外界像をシースルーで観察させるとともに、映像を表示して観察者にそれを虚像として提供するものである。図2(c)で示す映像表示装置2において、眼鏡の右目用レンズに相当する部分は、後述する第1の透明基板20および第2の透明基板22(図3参照)の貼り合わせによって構成されている。なお、映像表示装置2の詳細な構成については後述する。
【0028】
支持手段3は、映像表示装置2を観察者の眼前(例えば右目の前)で支持するものであり、ブリッジ4と、フレーム5と、テンプル6と、鼻当て7と、ケーブル8とを有している。なお、フレーム5、テンプル6および鼻当て7は、左右一体に設けられているが、これらを左右で区別する場合は、右フレーム5R、左フレーム5L、右テンプル6R、左テンプル6L、右鼻当て7R、左鼻当て7Lのように表現するものとする。
【0029】
映像表示装置2の一端は、ブリッジ4に支持されている。このブリッジ4は、映像表示装置2のほかにも左フレーム5Lおよび鼻当て7を支持している。左フレーム5Lは、左テンプル6Lを回動可能に支持している。一方、映像表示装置2の他端は、右フレーム5Rに支持されている。右フレーム5Rにおいて、映像表示装置2の支持側と反対に位置する側端部は、右テンプル6Rを回動可能に支持している。ケーブル8は、外部信号(例えば映像信号、制御信号)や電力を映像表示装置2に供給するための配線であり、右フレーム5Rおよび右テンプル6Rに沿って設けられている。
【0030】
観察者がヘッドマウントディスプレイ1を使用するときは、右テンプル6Rおよび左テンプル6Lを観察者の右側頭部および左側頭部に接触させるとともに、鼻当て7を観察者の鼻に当て、一般の眼鏡をかけるようにヘッドマウントディスプレイ1を観察者の頭部に装着する。この状態で、映像表示装置2にて映像を表示すると、観察者は、映像表示装置2の映像を虚像として観察することができるとともに、この映像表示装置2を介して外界像をシースルー(例えば、透過率50%以上)で観察することができる。
【0031】
上記構成のヘッドマウントディスプレイ1においては、映像表示装置2が支持手段3によって観察者の眼前で指示されるので、観察者は、ハンズフリーとなり、外界像および映像表示素子での表示映像を虚像として観察しながら、空いた手で所望の作業を行うことができる。
【0032】
なお、図2(a)(b)(c)で示したヘッドマウントディスプレイ1は、映像表示装置2を1個だけ備えた構成であるが、左右の両眼に対応して映像表示装置2を2個備えた構成であっても勿論かまわない。
【0033】
(映像表示装置について)
次に、上述した映像表示装置の詳細について説明する。
【0034】
図3は、映像表示装置の概略の構成を示す断面図である。映像表示装置2は、映像を表示する表示手段11と、表示手段11からの映像光を光学瞳Eに導く接眼光学系13と、表示手段11を覆って接眼光学系13の第1の透明基板20に支持される筐体12とを備える。表示手段11は、光源14と、一方向拡散板15と、集光レンズ16と、LCD17とを有している。
【0035】
光源14は、RGB一体型のLED(日亜化学製)で構成されている。図4は光源14の波長に対する発光強度を示すグラフである。図4に示すように、光源14は、RGBのそれぞれの波長域である、635nm±10nm、525nm±17nm、462nm±12nmにおいて、発光強度が高くなるように構成されている。LEDの強度は、後述するホログラム光学素子21の回折効率やLCD17の透過率等を考慮して設定され、これにより、LCD17で白色表示することができる。
【0036】
一方向拡散板15は、光源14からの照明光を拡散させるものであるが、その拡散度は方向によって異なっている。より詳細には、一方向拡散板15は、ヘッドマウントディスプレイ1を観察者が装着したときの左右方向に対応する方向(図3の紙面に垂直な方向)には、入射光を約40°拡散させ、ヘッドマウントディスプレイ1を観察者が装着したときの上下方向(図3の紙面に平行な方向)には、入射光を約0.5°拡散させる。
【0037】
集光レンズ16は、一方向拡散板15にて拡散された光を集光するものである。集光レンズ16は、光源14と光学瞳Eとが共役となるように配置されることで、上記拡散光が効率よく光学瞳Eを形成し、明るい映像を観察することができる。
【0038】
LCD17は、映像信号に基づいて光源11からの光を変調することにより、映像を表示する光変調素子である。なお、本実施形態では、LCD17は、波長制限フィルタ(カラーフィルタ)を備えた透過型であるが、反射型で構成されていてもよい。この場合、光源14などのほかの光学素子の配置位置を工夫する必要がある。また、LCD17以外の光変調素子(例えば、DMD(Digital Micromirror Device;米国テキサスインスツルメント社製))を用いてもよい。
【0039】
一方、接眼光学系13は、第1の透明基板20と、第2の透明基板22と、第1の透明基板20と第2の透明基板22との間に配置されるホログラム光学素子21とから構成されている。また第1の透明基板20と第2の透明基板22とは、その接合部で連続した面形状が形成されるように接合されている。
【0040】
第1の透明基板20および第2の透明基板22は、例えば、アクリル系樹脂(後述する)で構成されている。第1の透明基板20は、平行平板の下端部を楔状にし、その上端部を厚くした形状で構成されており、面20a、20b、20cを有している。面20aは、表示手段11からの映像光が入射する入射面であり、面20b、20cは互いに対向する面である。このうち、面20bは、全反射面兼射出面となっている。
【0041】
第2の透明基板22は、平行平板の上端部を第1の透明基板20の下端部に沿った形状とすることによって、第1の透明基板20と一体となって略平行平板となるように構成されている。第1の透明基板20に第2の透明基板22を接合させない場合、外界像の光が第1の透明基板20の楔状の下端部を透過するときに屈折するので、第1の透明基板20を介して観察される外界像に歪みが生じる。しかし、第1の透明基板20に第2の透明基板22を接合させて一体的な略平行平板を形成することで、外界像の光が第1の透明基板20の楔状の下端部を透過するときの屈折を第2の透明基板22でキャンセルすることができる。その結果、シースルーで観察される外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
【0042】
第1の透明基板20と第2の透明基板22とは、接着剤23(図7参照)により接合されており、第1の透明基板20と第2の透明基板22の間はホログラム光学素子21が配置されている。
【0043】
ホログラム光学素子21は、体積位相型の反射型のホログラムで構成され、例えば、フォトポリマーからなる。図5に、本実施形態におけるホログラム光学素子21の波長に対する回折効率のグラフを示す。本実施形態におけるホログラム光学素子21は、体積位相型の反射型のホログラムで構成されるため、波長に対する回折効率の依存性が高い。図5に示すように、ホログラム光学素子21は、465nm、521nm、634nmの波長域で強いピークが見られ、これらのピークはそれぞれB、G、Rの波長域の光に対応している。また、それぞれのピークにおける回折波長半値幅は±5nmであり、非常に狭い。そのため、本実施形態におけるホログラム光学素子21は波長選択性が良く、特定の波長を有する光を回折するので、外界光は、ホログラム光学素子21に殆ど影響されることなく、ホログラム光学素子21を透過して光学瞳Eに入射することができる。これにより、外界の透過率が高く、良好に外界を観察することができる映像表示装置2を実現することができる。また、図4および図5に示すように、光源14と、ホログラム光学素子21とのピーク波長が近似していることで、明るい映像を表示することができる映像表示装置2となる。
【0044】
このような映像表示装置2の構成により、光源14から出射された光は、一方向拡散板15にて拡散され、集光レンズ16にて集光されてLCD17へ入射する。LCD17に入射した光は、映像信号に基づいて変調され、映像光として出射される。このとき、LCD17には、その映像自体が表示される。
【0045】
LCD17からの映像光は、接眼光学系13の第1の透明基板20の上端部(面20a)から第1の透明基板20の内部に入射し、対向する2つの面20b、20cで複数回全反射されて、ホログラム光学素子21に入射する。ホログラム光学素子21に入射した光は、そこで反射されて面20bを介して射出され、光学瞳Eに達する。光学瞳Eの位置では、観察者は、LCD17に表示された映像の拡大虚像を観察することができる。光学瞳Eから虚像までの距離は数m程度であり、また、虚像の大きさはLCD17に表示された映像の10倍以上である。
【0046】
一方、第1の透明基板20、第2の透明基板22は、外界からの光をほとんど全て透過させるので、観察者は外界像を観察することができる。したがって、LCD17に表示された映像の虚像は、外界像の一部に重なって観察されることになる。
【0047】
以上のように、映像表示装置2では、LCD17から出射される映像光を第1の透明基板20内での全反射によって光学瞳Eに導く構成としたので、通常の眼鏡レンズと同様に第1の透明基板20および第2の透明基板22の厚さを3mm程度にすることができ、接眼光学系13ひいては映像表示装置2を小型化、軽量化することができる。また、外界像の光の透過率が高くなり、外界像を良好に観察することができる。さらに表示手段11を観察者の眼の直前から大きく離れた位置に配置することができ、観察者の外界に対する視野を広く確保することができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、光学瞳Eを、強度半値でX方向(図3の紙面に対して垂直な方向)に6mm、Y方向(図3の紙面に対して上下方向)に2mmの大きさとなるように設定する。ここで、表示手段11の表示面の中心と光学瞳Eの中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とすると、上述した構成はすなわち、Y方向(ホログラム光学素子21への光軸の入射面(YZ平面)に平行な方向)よりも、X方向(上記入射面に垂直な方向)に大きくなるように設定している。光学瞳Eを上述したように設定することによって、ホログラム光学素子21の波長特性(波長選択性)の影響をあまり受けずに、観察者は色ムラの少ない高画質な映像を観察することができる。その理由は以下のとおりである。
【0049】
まず、ホログラム光学素子21における入射角と波長選択性との関係について説明する。0度より大きい入射角を持つ光を回折させる干渉縞を持つホログラム光学素子21では、入射面(YZ平面)に平行な方向よりも入射面に垂直な方向において、波長選択性が小さい(入射角のずれによる回折波長のずれが小さい)。言い換えると、入射面に平行な方向よりも入射面に垂直な方向のほうが、干渉縞への入射角のずれに対する角度選択性が低い。これは、ホログラム光学素子21の干渉縞に光が入射する場合、入射面内での入射角の角度ずれは、そのまま入射角の角度のずれとなるため、回折波長に対する影響が大きいが、入射面に垂直な方向の角度ずれは、入射角のずれとしては小さく、回折波長に対する影響は小さいからである。
【0050】
したがって、ホログラム光学素子21の干渉縞に所定の入射角からずれた角度の光が入射すると、同じ角度ずれでも、入射面に平行な方向での角度ずれのほうが、入射面に垂直な方向の角度ずれよりも、大きく回折波長がずれる(すなわち入射面に平行な方向は、波長選択性が大きい)。
【0051】
ここで、図6は、本実施形態において、光学瞳Eにおける瞳位置と主たる回折波長(例えばR光)との関係をしめす説明図である。図6中、破線B1は、光学瞳EのX方向における回折波長の変化を示しており、実線B2は、光学瞳EのY方向の瞳における回折波長の変化を示している。このように、回折波長の変化は、入射面に平行なY方向の方が、入射面に垂直なX方向よりも大きい。
【0052】
したがって、回折波長の変化が大きいY方向に光学瞳Eを小さく形成することにより、回折波長の変化の範囲が狭くなるので、光学瞳E上での色むらを低減することができる。また、入射面に垂直な方向に光学瞳Eを大きく形成しても、色純度の高い映像を観察者に提供することができる。
【0053】
なお、光軸入射面以外の光は、入射面が光軸入射面と若干平行ではないが、前述のとおり、入射面に垂直な方向の角度ずれは回折波長に対する影響が小さいので、光軸入射面を基準にしても色むらが大きくなることはない。
【0054】
また、光源14は、光軸入射面に垂直なX方向では、一方向拡散板15により拡散されるので、光学瞳Eとは共役ではないが、光軸入射面に平行なY方向においては、光学瞳Eと略共役である。これにより、光源14の光利用効率を高くするとともに、色再現性の高い映像を提供することができる。
【0055】
また、ホログラム光学素子21は、LCD17にて表示された映像を拡大する正の非軸対称な光学パワーを有しており、上記表示映像を観察者の眼に虚像として導く接眼光学系13の少なくとも一部を構成しているので、接眼光学系13を小型にできるとともに、良好に収差補正された映像を観察者に提供することができる。また、観察者は映像光を観察できる光学瞳Eの大きさより広い範囲で第1の透明基板21、第2の透明基板22およびホログラム光学素子21を透過して外界を観察できる。言い換えれば、光学瞳Eの位置で第1の透明基板21、第2の透明基板22およびホログラム光学素子21を透過した広視野の外界を観察できる。
【0056】
(接眼光学系について)
次に、上述した接眼光学系13の詳細について説明する。
【0057】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における接眼光学系の分解斜視図を示す。
本発明の第1実施形態における接眼光学系13(13a)は、表示手段11を覆う筐体12を支持する第1の透明基板20と、第1の透明基板20と複数の面で接合される第2の透明基板22とから構成されている。
【0058】
第1の透明基板20は、図1に示すように、全体として略4角錐台の形状をしており、その面20bおよび面20cは4つの側面で連結されている。4つの側面のうち、第2の透明基板22と接合される3面を、面20cに対して反時計周りに面20d、20e、20fとする。これらの面20d、20e、20fはそれぞれ法線方向が異なっている。なお、面20bは、映像表示装置2において映像光を全反射するとともに、光学瞳Eに映像光を射出する全反射面兼射出面であり、面20cは、映像表示装置2において映像光を全反射する全反射面である。なお、面20bは光学瞳E側に配置されており、面20cは、面20bと対向して光学瞳Eと反対側に配置されている。
【0059】
面20eは、表示手段から射出する映像光を反射する反射面24に構成されている。ここで、本実施形態において、面20eは、体積位相型の反射型のホログラム光学素子21を配置することで反射面24として構成される。
【0060】
なお、本実施形態においては、面20eにホログラム光学素子21を配置することにより、反射面24を構成したが、金属ミラーコートや多層膜による反射シートにより反射面24を構成してもよい。
【0061】
面20dおよび面20fは、反射面24に入射する映像光の光軸と反射面24で反射される映像光の光軸とを含む面(対称面)に対して略対称となるように配置されて、面20bから面20cに向かって凸型となるように弧を描いた曲面(光学瞳Eとは反対側に突出した凸面)に構成される。この曲面は、自由曲面であってもよいし、非球面に構成されていてもよい。なお、面20eに関しても曲面に構成されても構わない。
【0062】
本発明の接眼光学系13は、第1の透明基板20が反射面24以外にも接合面(面20d、面20f)を有しており、しかもその接合面が曲面であるので、反射面のみで接合する場合に比べて、第2の透明基板22との接合面積が確実に増大し、接合強度を向上させることができる。したがって、第1の透明基板20および第2の透明基板22の接合を補強すべく、筐体が接眼光学系13の全体を覆う構成とする必要がなく、本発明のように、筐体12が接眼光学系13の一部である第1の透明基板20で支持される構成を採用することができる。このように、筐体12が接眼光学系13の全体を覆わないので、小型の映像表示装置2を実現することができる。さらに、接合強度が向上することで、接眼光学系13を薄型化することができ、軽量な映像表示装置2を実現することができる。
【0063】
また、面20dおよび面20fを反射面24に対して略対称となるように配置されることで、映像表示装置2に外力が付加されたときに、反射面24にかかる負荷を、反射面24以外の接合面である面20d、20fに分散させることができ、第1の透明基板20と第2の透明基板22とを反射面24以外の接合面でバランスよく強固に接合することができる。これにより、反射面24を破壊から守ることができる。
【0064】
ここで、前記対称面に垂直な断面内において、第1の透明基板20の反射面24以外の接合面である各面20d、20fの曲率中心は、各接合面間で異なった位置にあるように構成される。そのため、例えば、一方の面20dの曲率中心を軸とする回転方向の荷重が映像表示装置2に負荷されたとしても、他方の面20fで回転方向に加えられた荷重を分散して面20dの負荷を低減することができる。これにより、第1透明基板20と第2の透明基板22との接合強度をさらに向上させることができる。
【0065】
第2の透明基板22は、図1に示すように、第1の透明基板20が接合することで平行平板が形成されるような形状となっている。つまり、第2の透明基板22は、平行平板から第1の透明基板20の形状をくりぬいた形状を有している。ここで、第2の透明基板22において、第1の透明基板20と接合したときに、第1の透明基板20の面20d、20e、20fと対向する面をそれぞれ面22a、22b、22cとする。これらの面22a、22b、22cの法線方向も互いに異なっている。第1の透明基板20の反射面24と対向する面22bは、反射面24に沿う形状となっているため、反射面24が曲面に構成されている場合は、面22bも反射面24に沿うような曲面に構成される。
【0066】
したがって、第2の透明基板22が、第1の透明基板20に沿う形状となっていることで、さらに接合面積を増加させることができ、接合強度を向上することができる。
【0067】
第1の透明基板20の接合面と、第2の透明基板22の接合面とは接着剤23を介して接合される。ここで、本実施形態においては、第1の透明基板20と第2の透明基板22とは、ともにPMMA(ポリメタクリル酸メチル)等の同一材料を用いて構成される。そのため、接着剤23は、ある特定の1つの材料に対して有効にはたらくものを選択することができる。これにより、第1の透明基板20の反射面24以外の面20d、20fと、第2の透明基板22の面22a、22cとを、より強固に接合することができ、反射面24への負荷を確実に軽減できる。
【0068】
図7は、本発明の接眼光学系の断面図である。図7に示すように、本実施形態における接眼光学系において、第1の透明基板20に沿うように第2の透明基板22を構成したことにより、第1の透明基板20の接合面と第2の透明基板22の接合面に配置する接着剤23の厚さを均一にすることができる。そのため、接着剤23の一部の領域に応力が集中することを避けることができ、接着剤23による接着強度を向上させることができる。
【0069】
ところで、接眼光学系13において、第1の透明基板20と第2の透明基板22とを接合する接着剤23の厚さを均一に構成すると、第1の透明基板20と第2の透明基板22との接合線幅が異なる。そこで、第1実施形態の接眼光学系13において、反射面24で反射されて光学瞳Eに入射する光軸により近い距離にある接合線幅が狭くなるように構成することで、接合線幅を認識しにくい接眼光学系を構成した構成例について以下に示す。
【0070】
図8は、本発明の第1実施形態における別の構成例である接眼光学系を示した分解斜視図である。
【0071】
本発明の第1実施形態における別の構成例である接眼光学系13(13b)は、表示手段11を覆う筐体12を支持する第1透明基板30と、第1透明基板30と複数の面で接合される第2透明基板31とから構成されている。
【0072】
第1の透明基板30は、図8に示すように、全体として略4角錐台の形状をしており、その面30bおよび面30cは4つの側面で連結されている。4つの側面のうち、第2の透明基板22と接合される3面を、面30cに対して反時計周りに面30d、30e、30fとする。これらの面30d、30e、30fはそれぞれ法線方向が異なっている。なお、面30bは、映像表示装置2において映像光を全反射するとともに、光学瞳Eに映像光を射出する全反射面兼射出面であり、面30cは、映像表示装置2において映像光を全反射する全反射面である。なお、面30bは光学瞳E側に配置されており、面30cは、面30bと対向して光学瞳Eと反対側に配置されている。
【0073】
面30eは、ホログラム光学素子21が配置することで、表示手段11から射出する映像光を反射する反射面34となる。そして、面30d、30fと反射面34は、第1の透明基板30と、第2の透明基板31とを接合する接合面となる。ここで、面30dおよび面30fは、反射面34に入射する映像光の光軸と反射面で反射される映像光の光軸とを含む面に対して略対称となるように配置されて、面30cから面30bに向かって窪んだ凹型となるように弧を描いた曲面(光学瞳E側に窪んだ凹面)に構成される。この曲面は、自由曲面であってもよいし、非球面に構成されていてもよい。なお、面30eに関しても曲面に構成されても構わない。
【0074】
第2の透明基板31は、図8で示すように、第1の透明基板30が接合することで平行平板が形成されるような形状となっている。つまり、第2の透明基板31は、平行平板から第1の透明基板30の形状をくりぬいた形状を有している。ここで、第2の透明基板31において、第1の透明基板30と接合したときに、第1の透明基板30の面30d、30e、30fと対向する面をそれぞれ面31a、31b、31cとする。これらの面31a、31b、31cの法線方向も互いに異なっている。第1の透明基板30の反射面34と対向する面31bは、反射面34に沿う形状となっているため、反射面34が曲面に構成されている場合は、面31bも反射面34に沿うような曲面に構成される。
【0075】
ここで、図9は接眼光学系13bを示す断面図である。第1の透明基板30と第2の透明基板31とを上述したように構成することで、図9に示すように、面30c側に位置する接合線幅のほうが、面30b側に位置する接合線幅よりも狭くなる。つまり、光軸により近い距離にある第1の透明基板30と第2の透明基板31との接合線幅を小さくすることができる。そのため、光学瞳Eの中心とより近くなるほど、接合線幅が狭くなる。これにより、観察者は、外界観察時でも瞳中心に近い上記接合線幅を認識しにくくなり、外界観察がしやすい映像表示装置2を構成することができる。
【0076】
(第2実施形態)
第2実施形態における接眼光学系18(18a)について以下に示す。図10は、本発明の第2実施形態における接眼光学系の分解斜視図を示す。なお、説明のため、第1実施形態の接眼光学系13と同様の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0077】
第2実施形態の接眼光学系18(18a)は、表示手段11を覆う筐体12を支持する第1の透明基板40と、第1の透明基板40と複数の面で接合される第2の透明基板41とから構成されている。
【0078】
第1の透明基板40は、図10に示すように、側面の一部が斜面に構成される柱体形状を有する。また、斜面は、面40a、40b、40cから構成されており、斜面の中心に配置する面40bには、ホログラム光学素子21が配置されて反射面42を構成している。そして、反射面42に入射する映像光の光軸と反射面42で反射される映像光の光軸とを含む面に対して略対称となるように反射面42を除く面40a、40cが配置される。ここで、面40a、40cは、光学瞳E側から見て凸型となるシリンドリカルあるいは自由曲面となるような曲面に構成される。なお、反射面42に関しても曲面に構成されても構わない。ただし、反射面42を曲面に構成した場合でも、面40a、40b、40cは、同一面とはならない。
【0079】
第2の透明基板41は、図10に示すように、第1の透明基板40が接合することで平行平板が形成されるような形状となっている。ここで、第2の透明基板41において、第1の透明基板40と斜面で接合したときに、第1の透明基板40の面40a、40b、40cと対向する面をそれぞれ面41a、41b、41cとする。第1の透明基板40の反射面42と対向する面41bは、反射面42に沿う形状となっているため、反射面42が曲面に構成されている場合は、面41bも反射面42に沿うような曲面に構成される。
【0080】
次に、第2実施形態の別の構成例における接眼光学系18(18b)について示す。図11は、本発明の第2実施形態の別の構成例である接眼光学系の分解斜視図を示す。
【0081】
第1の透明基板50は、図11に示すように、側面の一部が斜面に構成される柱体形状を有する。また、斜面は、面50a、50b、50cから構成されており、斜面の中心に配置する面50bには、ホログラム光学素子21が配置されて反射面52を構成している。そして、反射面52に入射する映像光の光軸と反射面52で反射される映像光の光軸とを含む面に対して略対称となるように反射面52を除く面50a、50cが配置される。ここで、面50a、50cは、光学瞳E側から見て窪んだ凹型となるシリンドリカルあるいは自由曲面となるような曲面に構成される。なお、反射面52に関しても曲面に構成されても構わない。
【0082】
第2の透明基板51は、図11に示すように、第1の透明基板50と接合することで平行平板が形成されるような形状となっている。第2の透明基板51において、第1の透明基板50の斜面と接合したときに、第1の透明基板50の面50a、50b、50cと対向する面をそれぞれ面51a、51b、51cとする。第1の透明基板50の反射面52と対向する面50bは、反射面52に沿う形状となっているため、反射面52が曲面に構成されている場合は、面51bも反射面に沿うような曲面に構成される。
【0083】
第2実施形態の接眼光学系18(18a、18b)は、上述したような構成を備えることにより、第1実施形態の接眼光学系13に比べて射出成型の際の金型の構成が簡素となるため、容易に製造することができる。なお、第2実施形態の接眼光学系18は、第1の透明基板において反射面を除く接合面の曲率中心が同軸上となっているが、接合面によって曲率中心が異なる軸上にあるように構成することもできるし、あるいは、接合面と接合面とで凹凸が逆になるように構成することもできる。
【0084】
上述した映像表示装置2の構成においては、光源14としてLEDを1個用いた構成としていたが、光源としてLEDを2個用いた構成としてもよい。図12は、LEDを2個配置した光源の平面図である。図13は、上記光源を用いた映像表示装置の光路を展開して示す説明図である。
【0085】
光源60は、LED61aとLED61bとで構成され、LED61aおよびLED61bは、それぞれRGBの各色光を出射する発光素子62(62R、62G、62B)および発光素子63(63R、63G、63B)で構成されている。
【0086】
各LED61a、61bの各発光素子62、63は、ホログラム発光素子21への光軸の入射面(YZ平面)に対して垂直な方向に並んで配置されているが、さらに、上記入射面に対して各色ごとに面対称となるように配置されている。より詳細には、図12に示すように、発光素子62R・63Rが上記入射面に近い位置で面対称となるように配置され、そのX方向外側に発光素子62G・63Gが上記入射面に対して面対称となるように配置され、さらにそのX方向外側に発光素子62B・63Bが上記入射面に対して面対称となるように配置されている。つまり、各LED61a、61bでは、上記入射面側からX方向外側に向かうにつれて出射光の波長が短くなるような順序で、各発光素子が配置されている。
【0087】
このように、各発光素子を各色ごとに上記入射面に対して面対称に配置することにより、同じ色についての2つの発光素子(例えば62Rと63R)からの出射光の光強度を足し合わせたトータルの光強度の重心を、RGBの各色ともに対称面内(上記入射面内)に位置させることができる。つまり、RGBの各色ともにその強度分布を、対称面を中心にしてX方向に対称にすることができる。これにより、光学瞳Eの中心において色ムラの少ない映像を観察者に提供することができる。
【0088】
なお、各発光素子の面対称の中心となる面は、上記入射面に平行な面であってもよい。つまり、各発光素子の面対称の中心となる面は、上記入射面からX方向に多少ずれた面であっても構わない。この場合は、光学瞳Eの中心付近において色ムラの少ない映像を観察者に提供することができる。
【0089】
ここで、ホログラム発光素子21は、上述したように、回折効率ピークおよびその半値波長全幅で465nm±5nm、521nm±5nm、634nm±5nmの各波長の映像光を回折するように作製されている。このように、各色で回折効率の半値波長幅が同じなので、波長の長い光ほど角度選択性が大きい(波長の変化に対する入射角のずれが小さい)。したがって、LED61a、61bにおいて、光軸入射面側からX方向外側に向かうにつれて出射光の波長が短くなるような順序で各発光素子62、63が配置されていることにより、光学瞳E内での各色の強度差を小さくすることができ、光学瞳E内で色ムラの少ない映像を観察者に提供することができる。以下、この点について詳細に説明する。
【0090】
回折効率ピークの波長をλ、ホログラム発光素子21の媒質(干渉縞)の屈折率をn、媒質の厚さをh、入射角をθとすると、これらの間には、
λ=2nhcosθ
の関係が成り立つ。ここで、波長の短いB光および波長の長いR光において、それぞれの波長が例えば同じ5nmだけずれた場合、波長の変化の割合は、B光については465/470であり、R光については634/639である。つまり、波長の変化の割合は、波長の短いB光に比べて波長の長いR光のほうが小さい。したがって、波長の短いB光に比べて波長の長いR光のほうが、波長の変化に対する入射角θのずれ方は小さい(角度選択性が大きい)。よって、光源60からの出射光のRGBの波長幅が同じ場合には、ホログラム発光素子21によって回折されてできる光学瞳Eの大きさは、波長が長い光ほど小さい。なお、光学瞳Eは、各色の光学瞳の範囲を全て含むものとする
【0091】
一方、光源60のLED(各発光素子)からの出射光の強度は、一般的に中心付近ほど強く、周囲ほど弱い。また、各発光素子は、Y方向においては、光学瞳Eと略共役となるように配置されているが、X方向では、一方向拡散板15により拡散されるので、光学瞳Eとは共役ではない。しかし、光学瞳Eにおいて最も強度の強い位置は、一方向拡散板15がないとした場合の各発光素子と共役な位置にほぼ同じである。
【0092】
したがって、光学瞳Eが小さい長波長(R光)の瞳中心を光学瞳Eの中心側に位置させ、光学瞳Eが大きい短波長(B光)の瞳中心を光学瞳Eの中心よりも外側に位置させることで、光学瞳E内での瞳位置による強度差を各色について小さくすることができる。この点について、もう少し詳細に説明する。
【0093】
図14は、光学瞳EにおけるX方向の瞳位置と光強度との関係を示す説明図である。なお、光強度は、同じ色については相対値で示されている。また、図14中の62R、62G、62B、63R、63G、63Bで示される曲線は、それぞれの発光素子62(62R、62G、62B)、63(63R、63G、63B)から出射される光に対応している。
【0094】
上述したように、ホログラム発光素子21の角度選択性により、波長が長い光ほど光学瞳Eは小さいので、図14に示すように、波長が長い光ほど瞳位置による強度差が大きくなっている(光学瞳Eの中心と端部における強度差が大きくなっている)。逆に、波長が短い光ほど光学瞳Eは大きいので、波長が短い光ほど瞳位置による強度差が小さくなっている。
【0095】
また、波長が長い光を発光する発光素子62R(63R)ほど、光軸入射面側に配置されているので、光強度の高い位置は、波長が長い光ほど光学瞳Eの中心に近くなっている。逆に、波長が短い光を発光する発光素子62B(63B)ほど光軸入射面から離れた位置に配置されているので、光強度の高い位置は、光学瞳Eの周辺となっている。
【0096】
つまり、波長が長い光ほど瞳位置による強度差が大きいが、光軸入射面側からX方向外側に向かうにつれて出射光の波長が短くなるような順序で各発光素子を配置し、波長が長い光ほど光強度の高い位置を光学瞳Eの中心に近づけることで、波長が長い光について、瞳位置による強度差、すなわち、光学瞳Eの中心と端部における強度差を小さくすることができる。これにより、光学瞳Eの全体(瞳中心および瞳周辺)で色ムラの少ない映像を観察者に提供することができる。
【0097】
また、LED61a、61bの各発光素子62、63は、図13に示すように、一方向拡散板15での拡散が大きい波長順(波長が短いほど拡散する)に配置されているので、光学瞳E上での各色の強度差がさらに小さくなり、色ムラを更に低減することができる。つまり、色純度の高い映像を観察者に提供することができる。
【0098】
また、本実施形態においては、LED61aおよびLED61bの光の射出面に、マスク64を配置する。マスク64は、図12に示すように、LED61a・LED61bの発光素子62・63が配置されている領域を除いて上下に配置される。
【0099】
本実施形態の光源60においては、LED61aとLED61bとの射出面の前面にマスク64を配置することで、LED61a、61b内の乱反射や拡散で発生する不要な光を遮光して光学瞳EのY方向(紙面に対して上下方向)の大きさを制限し、ホログラム発光素子21の色むらを抑制したり、フレア光を軽減したりすることができる。なお、上述した光源60においては、LED61の封止剤に拡散剤を混ぜて、RGBの混色の補助を行うこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の映像表示装置は、例えばヘッドマウントディスプレイに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の第1実施形態における接眼光学系を示す分解斜視図である。
【図2】(a)は、本発明のヘッドマウントディスプレイを示す平面図である。(b)は、本発明のヘッドマウントディスプレイを示す側面図である。(c)は、本発明のヘッドマウントディスプレイを示す正面図である。
【図3】本発明の映像表示装置を示す断面図である。
【図4】本発明の光源の発光強度を示す説明図である。
【図5】本発明のホログラム光学素子の回折効率を示す説明図である。
【図6】本発明の光学瞳における瞳位置と主たる回折波長との関係を示す説明図である。
【図7】本発明の接眼光学系を示す断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態における接眼光学系の別の構成例を示す分解斜視図である。
【図9】本発明の上記接眼光学系を示す断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態における接眼光学系の分解斜視図である。
【図11】本発明の第2実施形態における接眼光学系の別の構成例を示す分解斜視図である。
【図12】本発明の光源を示す平面図である。
【図13】本発明の映像表示装置を示す光路展開図である。
【図14】本発明の光学瞳におけるX方向の瞳位置と光強度との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0102】
1 ヘッドマウントディスプレイ
2 映像表示装置
3 支持手段
11 表示手段
12 筐体
13 接眼光学系
20、30,40、50 第1の透明基板
21 ホログラム光学素子
22、31、41、51 第2の透明基板
23 接着剤
24,34、42、52 反射面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示する表示手段と、
前記表示手段からの映像光を光学瞳に導く接眼光学系と、
前記表示手段を覆う筐体とを備えた映像表示装置であって、
前記接眼光学系は、
前記表示手段からの映像光を内部で導光し、反射面を介して光学瞳に導く第1の透明基板と、
前記第1の透明基板の前記反射面を含む複数の接合面で接合され、第1の透明基板での外光の屈折を相殺するための第2の透明基板とを有しており、
前記筐体は、前記第1の透明基板で支持されており、
前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、曲面で構成されていることを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記表示手段の表示面の中心と光学瞳の中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とすると、
前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、2面からなり、
前記2面の接合面は、前記反射面に入射する映像光の光軸と前記反射面で反射される映像光の光軸とを含む面に対して、略対称に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記第1の透明基板と前記第2の透明基板とは、同一材料で構成されており、
前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、前記第2の透明基板と接着剤で接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、光学瞳側に窪んだ凹面で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項5】
前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、光学瞳とは反対側に突出した凸面で構成されており、
前記対称面に垂直な断面内において、各凸面の曲率中心は、各凸面間で異なった位置にあることを特徴とする請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項6】
第1の透明基板と第2の透明基板とは、接着剤で接合されており、
接着剤の厚さは、略均一であることを特徴とする請求項1、2、4、または5に記載の映像表示装置。
【請求項7】
第1の透明基板の反射面は、体積位相型の反射型ホログラム光学素子が形成された面であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項8】
前記第1の透明基板は、前記映像表示手段の映像光を全反射して前記反射面に導く全反射面を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の映像表示装置と、
前記映像表示装置を観察者の眼前で支持する支持部材とを備えていることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項1】
映像を表示する表示手段と、
前記表示手段からの映像光を光学瞳に導く接眼光学系と、
前記表示手段を覆う筐体とを備えた映像表示装置であって、
前記接眼光学系は、
前記表示手段からの映像光を内部で導光し、反射面を介して光学瞳に導く第1の透明基板と、
前記第1の透明基板の前記反射面を含む複数の接合面で接合され、第1の透明基板での外光の屈折を相殺するための第2の透明基板とを有しており、
前記筐体は、前記第1の透明基板で支持されており、
前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、曲面で構成されていることを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記表示手段の表示面の中心と光学瞳の中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とすると、
前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、2面からなり、
前記2面の接合面は、前記反射面に入射する映像光の光軸と前記反射面で反射される映像光の光軸とを含む面に対して、略対称に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記第1の透明基板と前記第2の透明基板とは、同一材料で構成されており、
前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、前記第2の透明基板と接着剤で接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、光学瞳側に窪んだ凹面で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項5】
前記第1の透明基板における前記反射面以外の接合面は、光学瞳とは反対側に突出した凸面で構成されており、
前記対称面に垂直な断面内において、各凸面の曲率中心は、各凸面間で異なった位置にあることを特徴とする請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項6】
第1の透明基板と第2の透明基板とは、接着剤で接合されており、
接着剤の厚さは、略均一であることを特徴とする請求項1、2、4、または5に記載の映像表示装置。
【請求項7】
第1の透明基板の反射面は、体積位相型の反射型ホログラム光学素子が形成された面であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項8】
前記第1の透明基板は、前記映像表示手段の映像光を全反射して前記反射面に導く全反射面を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の映像表示装置と、
前記映像表示装置を観察者の眼前で支持する支持部材とを備えていることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−151043(P2009−151043A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328186(P2007−328186)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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