説明

映像送出装置及び映像送出方法

【課題】制御が簡単でしかも映像送出までの時間を短縮した映像送出装置及び映像送出方法を提供すること。
【解決手段】本発明一例の映像送出装置によれば、複数チャネルに対応する複数の映像データを蓄積する、順次読み出し可能なデータ蓄積部11と、前記複数チャネルの各々に対応する各映像データを受信し各々独立に映像信号に変換し、各々でこの映像信号が得られるまでの最長遅延時間後に、映像を送出する指示を契機に前記映像信号を送出する複数の再生ユニット1301〜1340と、前記データ蓄積部11に蓄積されている映像データを前記複数の再生ユニット1301〜1340にチャネル毎に順次、転送するチャネル切替スイッチ12と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像送出装置に係わり、特に、デジタル符号化された映像データを複数チャネルの映像として同時に送出する映像送出装置及び映像送出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデジタル符号化された映像データを複数チャネルの映像として送出する装置は、各チャネル毎の処理をフレーム同期により行っていた。
【0003】
このような映像送出装置の構成例を図6に示す。複数、例えば40チャネルのデジタル符号化された独立の映像データが、例えばハードディスクであるデータ蓄積部61に記憶されている。このデータ蓄積部61に記憶されている各チャネルの映像データが、チャネル切替スイッチ62を介して40個の再生ユニット6301〜6340に順次、供給される。再生ユニット6301〜6340の各々は、受信バッファ部64、誤り訂正部65、デコード部66、再生バッファ部67から成っている。これらの各部は処理制御部68により制御される。処理制御部68には、フレーム同期信号と再生開始コマンドが入力される。再生開始コマンドが入力されると、処理制御部68はデータ制御蓄積部61に制御信号を送り、データ蓄積部61に記憶されている40チャネルの映像データを検索し、チャネル切替スイッチ62を介して各再生ユニット6301〜6340に送出する。各再生ユニットでは、受信バッファ部64にて映像データを受信し、誤り訂正部65でデータの誤り訂正を行い、デコード部66にて映像データのデコードを行い、再生バッファ部67に蓄積する。
【0004】
これらの各処理は、図7に示すように、処理制御部68に供給されるフレーム処理同期信号に基づいて順次行われる。即ち、第1フレーム期間F1に再生開始コマンドが検知されると、次の第2フレームF2でデータ蓄積部11内のデータ検索がなされ、第3フレームF3内で各再生ユニットへのデータ転送がなされ、第4フレームF4で誤り訂正がなされ、第5フレームF5でデコードがなされる。各再生ユニットへのデータ転送は順次行われるので、転送タイミングは再生ユニットによって異なる。
【0005】
第5フレームF5でデコードがなされ再生バッファ部67にデコードされた映像信号が記憶されると次の第6フレームにおいて、各再生ユニットから並列に、40チャネルの映像信号が送出される。したがって、この例では再生開始コマンドが検知されてから映像信号が送出されるまでに6フレームを必要とする。
【0006】
このように従来の映像送出装置においては、再生開始コマンドが検知されてから各チャネルに映像信号を出力するまでに比較的長い時間がかかるという問題があった。
【0007】
なお、デジタル符号化された映像音声データを2チャネル以上で同期して再生するデジタルビデオ再生システムが知られている(特許文献1参照)。このシステムは、マスタ装置に同期してスレーブ装置の再生処理を行うものであるが、両装置間で複雑な制御が必要となる問題がある。
【特許文献1】特開2001−268517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述のような、複数チャネルの映像を送出する映像装置の従来の問題点に鑑みてなされたもので、制御が簡単でしかも映像送出までの時間を短縮した映像送出装置及びその映像送出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1の映像送出装置によれば、複数チャネルに対応する複数の映像データを蓄積する、順次読み出し可能なデータ蓄積部と、前記複数チャネルの各々に対応する各映像データを受信し各々独立に映像信号に変換し、各々でこの映像信号が得られるまでの最長遅延時間後に、映像を送出する指示を契機に前記映像信号を送出する複数の再生ユニットと、前記データ蓄積部に蓄積されている映像データを前記複数の再生ユニットにチャネル毎に順次、転送するチャネル切替スイッチと、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4の映像送出方法によれば、映像再生の開始を要求する再生開始コマンドを検知した後、複数チャネルに対応する複数の映像データを蓄積する、順次読み出し可能なデータ蓄積部に、各チャネルの前記映像データの検索を指示するステップと、前記データ蓄積部に蓄積されている映像データを、チャネル切替スイッチを介して複数の再生ユニットにチャネル毎に順次、転送するステップと、前記再生ユニットにおいて前記複数チャネルの各々に対応する各映像データを受信し各々独立に映像信号に変換してこの映像信号を一旦再生バッファ部に記憶するステップと、前記再生開始コマンドを受けてから前記複数の再生ユニットにおいて映像信号が得られるまでに最も長くかかる最長遅延時間を得るステップと、この最長遅延時間が経過した後、前記再生バッファ部の各々に映像を送出する指示を契機に前記映像信号の送出を指示するステップと、 を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、制御が簡単でしかも映像送出までの時間を短縮した映像送出装置及び映像送出方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は本発明一実施形態の全体構成を示す図である。
【0013】
この映像送出装置10は、例えば40チャネルの情報データを蓄積しているデータ蓄積部11と、このデータ蓄積部11の出力端子に接続され蓄積されている映像データを各チャネル毎に送出するチャネル切替スイッチ12と、このチャネル切替スイッチ12の40個の出力端子に各々の入力端子を接続された再生ユニット1301〜1340と、再生開始コマンドを入力されデータ蓄積部11及び各再生ユニットにおける映像処理を制御する映像処理制御部18aと、デコードされた映像信号の出力を制御する出力処理制御部18bとを有する。
【0014】
データ蓄積部11は例えばハードディスクにより構成され、データ蓄積部11に蓄積されている情報データは、例えばMPEG2により符号化されたデータである。
【0015】
再生ユニット1301〜1340は、各々、データ蓄積部11から送出されてきた該当チャネルの映像データを一旦蓄積する受信バッファ部14と、この受信バッファ部14に蓄積された映像データの誤り訂正処理を行う誤り訂正部15と、誤り訂正部15において誤り訂正された映像データをデコードするデコード部16と、このデコード部16においてデコードされた映像データすなわち再生された映像信号を一旦蓄積し、出力する再生バッファ部17とを有する。
【0016】
映像処理制御部18aは、図2に示すように、再生開始コマンドを検知する再生開始コマンド検知部21と、この再生開始コマンドが来たことを検知したことを入力され、データ蓄積部11に、各チャネルデータ(映像データ)の検索を指示するチャネルデータ検索指示部22と、データ蓄積部11に各チャネルデータの送出を指示するチャネルデータ送出指示部23と、チャネル切替スイッチ12にスイッチ切替制御信号を送出するスイッチ切替制御部24とを有する。
【0017】
出力処理制御部18bは、図3に示すように、再生開始コマンドを入力された時点から再生ユニットにおいて映像信号を出力するまでの最長遅延時間TLDを算出する最長遅延時間算出部31と、再生バッファ部17に、この最長遅延時間算出部31において算出された最長遅延時間TLDの経過後のフレーム開始時点で映像信号の送出を指示する映像信号送出指示部32とを有する。
【0018】
なお、データ蓄積部11に記憶されている映像データの符号化の圧縮率及び映像データの各再生ユニットへの転送速度は、映像処理制御部18aのチャネルデータ検索指示部22を介して出力処理制御部18bの最長遅延時間算出部31に送られる。最長遅延時間算出部31は、データ蓄積部11における上記映像データ圧縮率、各再生ユニットにおける転送時間及びチャネル数に基づいて最長遅延時間TLDを算出する。
【0019】
例えば、40チャネルの場合、各再生ユニットの転送時間をTTとすれば全チャネルの転送時間は40×TTとなる。これに各処理における最長時間を加算して、最長遅延時間TLDを算出することができる。この最長遅延時間TLDの算出は、出力処理制御部18bの最長遅延時間算出部31においてなされる。
【0020】
なお、この最長遅延時間TLDは事前に実測などにより決定し、予め記憶しておくようにしてもよい。このようにすれば、最長遅延時間TLDの算出時間をほぼなくすことが可能となる。
【0021】
次にこの実施形態の映像送出装置の動作、すなわち映像送出方法を、図4及び図5を用いて説明する。図4は、従来の映像送出装置の処理タイミング図である図7に対応する、図である。図5はこの実施形態における各処理のフローチャートを示す図である。
【0022】
図5に示すステップS501では、図2に示す再生開始コマンド検知部21において、再生開始コマンドを待つ。再生開始コマンドが検知されると再生開始コマンド検知部21はチャネルデータ検索指示部22に制御信号を送りチャネルデータの検索を指示する。図4において、フレーム1内のタイミングで再生開始コマンドが受信されたとする。
【0023】
次のステップS502において、チャネルデータ検索指示部22はデータ蓄積部11にアクセスし、データ蓄積部11は各チャネルのデータを検索する。ステップS503では、データ蓄積部11は各チャネルにおける映像データの圧縮率、転送速度、チャネル数の情報を映像処理制御部18aのチャネルデータ検索指示部22を介して、出力処理制御部18bに送る。
【0024】
再生開始コマンド受信時点から時間Tmでデータ検索がなされ、その次の時間Ttでデータ蓄積部11から各再生ユニットへのデータ転送がなされる。このデータ転送は各チャネル毎に順次なされるから、各再生ユニットへの映像データ転送時間が一定と仮定しTtとすると、40チャネルでは、40×Tt時間かかることになる。映像データの順次転送が再生ユニット1301からなされるとすると、再生ユニット1340への転送が最も遅いことになる。これ以降の処理はこの映像データの転送が終わってからなされる。
【0025】
ステップS504では、出力処理制御部18bの最長遅延時間算出部31はデータ蓄積部11から送られてきた上記映像データの圧縮率、転送速度から、上述のようにして最長遅延時間TLDを算出する。次のステップS505では、映像処理制御部18aのスイッチ切替制御部24は、チャネル切替スイッチ12に順次切換制御を行う。ステップS506では、映像処理制御部18aのチャネルデータ送出指示部23からデータ蓄積部11にチャネルデータの送出を指示する。
【0026】
ステップS507において、データ蓄積部11から各チャネルの映像データがチャネル切替スイッチ12の切り替えと同期して各チャネルの再生ユニットに順次、転送される。ステップS508において各チャネルへの転送が終了したか確認され、全チャネルへの映像データの転送が繰り返される。
【0027】
各再生ユニット1301〜1340では、それらの映像データを受信バッファ部14において受信し、誤り訂正部15において、映像データの誤り訂正を行い(時間Tc)、デコード部16で映像データのデコード(圧縮に対する伸長)を行い(時間Td)、各チャネルの映像信号として再生バッファ部17に一旦記憶する。映像データの入力から最長遅延時間TLDが経過していれば、すべての再生ユニット1301〜1340の再生バッファ部17に、デコードされた映像信号が記憶されていることになる。
【0028】
そこで、フレーム同期信号が入力されている映像信号送出指示部32は、最長遅延時間TLD以降のフレームで、各再生ユニット1301〜1340の各再生バッファ部17に映像信号の送出を指示し、この指示信号に基づいて再生バッファ部17は映像信号を送出する(時間To)。このようにして送出された映像信号は、図示しない表示装置に入力され、各チャネルの映像として、例えば1画面に整列されて表示される。
【0029】
このように、本発明の上記実施形態では、映像データの転送、誤り訂正、デコードの各処理は、各再生ユニットにおいて前の処理が終わったら次の処理がなされる。最長遅延時間TLDを考慮するが、本発明では、従来のフレーム信号に同期して各処理を行うよりも、はるかに早く、全体の処理を行うことが可能になる。
【0030】
例えば、本発明の一実施形態の場合の図4に示す処理のタイミングを、従来の処理タイミングを示す図7と比較すれば、再生開始コマンドを検知してから映像信号を出力するまでの時間が、6フレームから4フレームに短縮されていることがわかる。
【0031】
上記実施形態では、MPEG2により圧縮処理された映像データの処理について述べたが本発明はこの方式で圧縮されたデータに限られない。また圧縮処理された映像データが各再生ユニットにおいて誤り訂正処理されていたが、誤り訂正の処理は本発明において必ずしも必要ではない。本発明は圧縮処理されないデータにも適用可能である。
【0032】
上記実施形態では、40個の再生ユニットを有する映像送出装置について説明した。しかしこれより多い、または少ない個数の再生ユニットを有する場合にも本発明は適用可能である。またこれら有する再生ユニットを全部用いる場合だけでなく一部の再生ユニットを用いる場合、例えば40個の再生ユニットのうちの30個の再生ユニットを用いるような場合にも本発明は適用可能である。
【0033】
本発明は上記実施形態などの説明されたものに限られず、種々変形して実施可能である。それらの変形実施も本発明の技術思想に含まれる範囲内で本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明一実施形態の映像送出装置の構成を示す図。
【図2】図1の映像送出装置における映像処理制御部18aの構成例を示す図。
【図3】図1の映像送出装置における出力処理制御部18bの構成例を示す図。
【図4】図1に示す映像送出装置の処理タイミングを説明するための図。
【図5】図1に示す映像送出装置の動作を説明するための図。
【図6】従来の映像送出装置の構成例を示す図。
【図7】図6に示す映像送出装置の処理タイミングを説明するための図。
【符号の説明】
【0035】
11、61・・・データ蓄積部、
12、62・・・チャネル切替スイッチ、
1301〜1340、6301〜6340・・・再生ユニット、
14、64・・・受信バッファ部、
15、65・・・誤り訂正部、
16、66・・・デコード部、
17、67・・・再生バッファ部、
18a・・・映像処理制御部、
18b・・・出力処理制御部、
68・・・処理制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数チャネルに対応する複数の映像データを蓄積する、順次読み出し可能なデータ蓄積部と、
前記複数チャネルの各々に対応する各映像データを受信し各々独立に映像信号に変換し、各々でこの映像信号が得られるまでの最長遅延時間後に、同時に前記映像信号を送出する複数の再生ユニットと、
前記データ蓄積部に蓄積されている映像データを前記複数の再生ユニットにチャネル毎に順次、転送するチャネル切替スイッチと、
を有することを特徴とする、映像送出装置。
【請求項2】
前記再生ユニットの各々は、前記データ蓄積部に蓄積されていた映像データを、前記チャネル切替スイッチを介して受信し一旦蓄積する受信バッファ部と、
この受信バッファ部に映像データが蓄積された後この映像データをデコードし映像信号を得るデコード部と、
このデコード部に映像信号が得られたらこの映像信号を一旦蓄積する再生バッファ部と、
を有することを特徴とする、請求項1記載の映像送出装置。
【請求項3】
複数チャネルに対応する複数の映像データを蓄積する、順次読み出し可能なデータ蓄積部と、
前記複数チャネルの各々に対応する各映像データを受信する受信バッファ部、各々独立に映像信号に変換するデコード部、及び前記映像信号を一旦蓄積する再生バッファ部を有する複数の再生ユニットと、
前記データ蓄積部に蓄積されている映像データをこれらの複数の再生ユニットにチャネル毎に順次、転送するチャネル切替スイッチと、
映像再生の開始を要求する再生開始コマンドを検知した後、前記データ蓄積部に各チャネルの前記映像データの検索を指示し、前記チャネル切替スイッチの切替えを制御する映像処理制御部と、
前記再生開始コマンドを受けてから前記再生ユニットにおいて映像信号が得られるまでに最も長くかかる最長遅延時間を得て、この時間が経過した後、前記映像信号の送出を、前記映像データが転送された前記複数の再生ユニットの前記再生バッファ部に指示する出力処理制御部と、
を有することを特徴とする映像送出装置。
【請求項4】
映像再生の開始を要求する再生開始コマンドを検知した後、複数チャネルに対応する複数の映像データを蓄積する、順次読み出し可能なデータ蓄積部に、各チャネルの前記映像データの検索を指示するステップと、
前記データ蓄積部に蓄積されている映像データを、チャネル切替スイッチを介して複数の再生ユニットにチャネル毎に順次、転送するステップと、
前記再生ユニットにおいて前記複数チャネルの各々に対応する各映像データを受信し各々独立に映像信号に変換してこの映像信号を一旦再生バッファ部に記憶するステップと、
前記再生開始コマンドを受けてから前記複数の再生ユニットにおいて映像信号が得られるまでに最も長くかかる最長遅延時間を得るステップと、
この最長遅延時間が経過した後、前記再生バッファ部の各々に同時に前記映像信号の送出を指示するステップと、
を有することを特徴とする映像送出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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