説明

映画フィルムのデジタル画像変換システム

【課題】映画フィルムをはじめとする8、9.5、35、70ミリフィルムに記録された動画像から、高画質なデジタル映像を製作する。
【解決手段】面光源を背景にしたアンチニュートンガラス基板に対し、素通しの画面打ち抜き部を有して開閉自在とした圧着板との間に映画フィルムをコマ毎に移動可能とする構造のコマ送り装置と、コマ送りに連動して一コマずつ撮影してゆくデジタルカメラとで構成されたデジタル画像変換システムで、撮影時にはフィルム側端部に設けた通気口からエアー吸引でフィルムをガラスに吸着させる。一コマの撮影が終了すると圧着板の圧着解除とともにエアー排気してコマ送りを行う。この、吸引・撮影、排気・コマ送りという連続的動作を行って得たデジタル映像データを動画編集して高画質デジタル映像を製作する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、銀塩で製作された映画フィルムをはじめとする、8、9.5、16、35、70ミリフィルム等に連続的に記録された既製ネガやポジフィルムの動画画像を擦り傷や熱による損傷、及び、ピンぼけや歪み等の画質を低下することのない、映画フィルムからの高精細なデジタル画像を製作する方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
従来は、いわゆる映写機からスクリーンに映写された反射光または透過光によるフィルム画像の投映像を同時的にビデオカメラ、デジタルビデオカメラ等に記録してデジタル画像に変換する方法が多くおこなわれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、フィルム画面の縁だけを押さえる従来のフィルム保持法では、もともとあるフィルムのカーリングのくせ、また映写機からの熱によって生じる歪みのために、フィルム面は前後に移動して平面性不良となる。
そために全体的また部分的に像がぼけていわゆるピンぼけが生じ、いかに画質に優れた70ミリ映画でもそのために台なしのデジタル映像となってしまうことが避けられない。
そして、たとえコマごとに透明ガラス板二枚でサンドイッチしながら撮影記録したとしても、界面で生じる醜いニュートンリングは避けられず、いずれにしても画質の高いデジタルハイビジョン化は期待できないという欠点があった。
そして同時に、従来法は映写機の光源からの熱及び高速移動のためにフィルムの損傷が避けられないという、これもまた大きな問題点であった。これらはいずれも重要な問題であって、映画芸術という文化遺産を含むフィルム複製技術における二大問題となっている。
【課題を解決する為の手段】
【0004】
そこで、本発明では、従来法にあるフィルムの平面保持とフィルムの損傷という二大問題点を以下に述べる方法によって一挙に解決しようとしている。
すなわち、本発明では強烈な光源を有して高速でコマ送りをおこなう通常の映写機は使用せず、映画フィルムをコマごとに移動可能とするカメラと同様のコマ送り装置の画面部に、面光源部を背景にしてニュートンリングを生じさせないアンチニュートンガラス基盤(以下ガラス基盤)と画面部を素通しに打ち抜きし、かつフィルム画面部周辺に通気を遮断するエアーパッキング部を有して開閉自在とした圧着板との間に映画フィルムをコマごとに移動可能にする構造において、フィルム側端部位置に通気孔を有し、撮影時には圧着板を停止したフィルム面に圧着するとともにフィルム側端部からエアー吸引をおこないフィルム下面のエアーを抜いてガラス平面に吸着固定させて露光を与え、コマ送りは圧着板の圧着を解除するとともにエアー排気をおこなってフィルム吸着を解除させてコマを送るという、フィルム停止、圧着、エアー吸引・撮影、排気・コマ送りという連続的作動をおこなって得たデジタル映像データを動画編集することによって、高画質デジタル映像を製作可能にすることを目的としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明では、まず第一に、強烈な光源を有して高速でコマ送りをおこなう通常の映写機は使用せず、冷光源の使用もでき、フィルムに与えられる熱はきわめて微弱なので熱による損傷は全くない。そして撮影して得た個々のデジタル画像はパソコンソフトで自動的に動画として画像編集をおこなえば良く、フィルムは一秒24コマといった高速で移動させる必要もない。撮影は一秒一コマでも、5秒一コマでも何ら問題ない。
【0006】
したがって、たとえば秒速4コマでは二時間映画は全コマの記録に12時間を要するとはいえ、高速移動では避けられない擦り傷、熱による褪色や歪み、変質などの損傷、まして映写法では避けられないフィルム切れなどは全く考えられないという効果が得られる。したがって、本発明では従来法より比較にならない良好なフィルム保全が実現する。もちろん、映写機を回す必要もないのでコストもかからない。
【0007】
装置もきわめて安価に製造できるとともに、安全安価なデジタル化が実現するばかりでなく、フィルム画面は常に平面性よくガラス板上に吸着保持されるのでピント移動なく微塵もピンぼけは起こらない。良好なフィルム平面性によって得られるデジタル画像のシャープネスは従来法とは比較にならないほど高画質となるのは、フィルム画面はどの画面も常に一定焦点位置にしかもフィルム上にガラス板なく平面性よく保持されるからである。
したがって、理想的といえるデジタル変換映像により、鑑賞者は、古今東西のこれまでの名画を含め、これまでの映写複製によるものでは決して得られないオリジナル画質にもっとも忠実な、きわめて質の高い作品鑑賞がはじめて実現可能になる。
それは映画史上、革命的といっても差し支えなく、これにより、過去の映写複製法がいかにいい加減なものであるかが証明されるであろうとともに、たとえそれがオリジナルフィルムであったとしても、これまで製作者自身も鑑賞できなかった過去の映画の真実の姿をはじめてじかに見ることが本発明によってはじめて可能になるであろう。従来の映写法では上記欠点により撮影レンズが記録した画像を正しく映写し鑑賞することはきわめて困難であり、それは不能に近いといってよいからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、光源部3上で、図示せざるコマ送り装置によって映画フィルム1bをリール1から巻き取り用リール2に一コマごとに巻き取られながら断続的に停止し移動する該フィルム画面をコマ送りと連動させながら画像記録部4においてデジタルカメラ5が撮影をおこなうという本発明の基本構成を示す説明図である。
フィルムの走行は一般銀塩用35カメラ同様の自動コマ送り装置によって、フィルムは一コマごとに断続的に停止固定され撮影され移動される状態において、先に述べたように、カメラ5の撮影時にはフィルムの画面周辺部にエアー漏れを防止するエアーパッキングを有する圧着板でフィルム側端部からエアー吸引をおこないながらフィルムを圧着してフィルムをガラス板に平面性よく吸着固定させた状態で露光をおこない、撮影後は、エアー排気をおこないながらフレーム板の圧着を解除し、フィルムを摩擦させることなく浮かせた状態でコマ送りを順次繰り返しておこなうことによって目的を達成する。その1サイクルの順序は図5を参照されたい。
【実施例】
【0009】
図2は画像記録部の実施例であり、面光源部4を背景に、ニュートンリングを発生させないアンチニュートンガラス基盤15(以下ガラス基盤)上で画面部を素通しにした打ち抜き窓7をもち、蝶番により開閉自在とした圧着板6との間で挟み、一コマごとに映画フィルム画面14を移動可能にするとともに、フィルム画面部の側端部にフィルム下面とガラス面との間に通じる通気路10、11をもたした構造において、撮影時は図5に示すように、
1)フィルム圧着と吸引:停止しているフィルムを圧着板6で押さえ、素通し打ち抜き部エアーパッキング8、9を圧着。
2)エアー吸引:1)と前後して同時的に通気孔12、13からエアーを吸引。
3)撮影:デジタルカメラ5でフィルム画面を撮影。
4)排気:撮影後、吸引を排気に切り替え、フィルムの圧着を解除。
5)コマ送り:同時的にフィルムを浮かせコマを移動させ次のコマ画面で停止させる。
以上を1サイクルとしてコマごとに同じ作動を連続的に機械的また電子的にプログラムされることにより自動的に繰り返しおこない、全映画フィルム画面をカメラに記録し、それらの撮影された画像を動画編集ソフトによって映画フィルムの再生速度(35ミリ映画では秒速24コマ)と同じデジタル映像として合成することによって目的が達成される。
【0010】
補足すれば、1)の状態では、圧着板の画像部周囲にもたらされたエアーパッキング8、9が圧着されるとはいえ、押さえられるのは周辺部だけであり、通常有するカーリングのため、平面性保持性ははなはだよくない。
そこで本発明では、2)においてそのフィルム画面下とガラス面の残留エアーは、通気路10、11を通じて12、13の吸排気孔から矢印方向に排出される(図4)ので、図4の17に示すようにフィルム画面はガラス基盤平面上で吸着固定され、フィルム画面は理想的な平面性が確保された状態でデジタルカメラに記録される。
なお、フィルムを痛めないためにはフィルムの急激な移動や強力な吸引はなるべく避けながら、2)のエアー吸引から3)の撮影までの間はタイミングを遅らせてゆっくりおこなう。
【0011】
コマ送り装置は、カメラの自動巻き上げ装置と同様、スプロケットの回転運動によってパーフォレーションを移動させるほか、撮影画面近辺にてコマ画像の輪郭を光学的に読み取って自動的に各画像を連続的に同一位置に停止させ圧着吸引させることができる。
デジタルカメラは、圧着板が圧着されエアー吸引がおこなわれてカメラのシャッターが切れ、撮影後、圧着板が上がりエアー排出され自動コマ送りがおこなわれる。
なおこのとき、大型フィルムなど、フィルム画面のサイズが大きくまたフィルムのカーリングのために吸着不良が生じる場合は、吸引と同時に圧着板の打ち抜き窓の上から図示せざるスポンジ押さえ板を吸着補助具としてもたらしてより迅速確実な平面吸着をもたらすことが可能になる。
【0012】
エアーの吸排気は、フィルムのコマ送り(フィルム走行装置)と連動する吸排気用電動エアーポンプからの吸排気を分岐弁を用いコマ送りと同調させながら交互に開閉させることができる。
また、電動ポンプではなく、画面サイズ等に応じた適当な吸排気量をもつ小型シリンダー式エアーポンプの機械的なピストン運動によって(たとえば35ミリフィルムではその密閉状態にもよるが、たとえば数ccのエアー吸引で吸着目的を達成することも可能であり)、電動ポンプ不要にして、そのピストン運動の遊び構造によりシャッターとフィルム走行に必要な時間調整のためのスイッチング調整をおこなうことができる。そのタイミングは図5のように、フィルム圧着(1)とともにピストンを引いて吸引(2))し、間をおいて撮影(3)し、すぐにピストンを押し排気しながら圧着解除(4)をおこなってコマ送りし停止させるという工程で圧着と撮影操作のスイッチングをおこなう。
【0013】
いずれの場合も、機器の電動制御はコマ送り装置、圧着板、吸排気作動とタイムラグとを図5のように設定し、撮影は秒速一コマ、5コマといったスローモーションにてフィルムに無理を与えずに良好なコマ送り、圧着、吸引、撮影、排気、フィルム移動をフィルム画面の確実な平面保持を確保しながらリールごとに自動的に記録することによって、文化財である貴重な映画フィルムを映写機の熱やかき落としによる損傷なしに、ニュートンリングもない高画質デジタル映像に変換するという目的を達成することが可能になる。
【0014】
図6、図7は第二の実施例の画像記録部4の側面図、図8は通気孔の位置関係を示す正面説明図である。この実施例の場合は、同上の面光源部を背景にしてニュートンリングを生じさせないアンチニュートンガラス基盤15(以下ガラス基盤)と画面部を素通しに打ち抜きした圧着板とのトンネル状隙間18に映画フィルムをコマごとに移動可能にし、フィルム側端及びフィルム裏面の画面外にある通気孔24、及び、圧着板上に透明ガラス20及び通気孔21を有する空気室19をもつ構造において、画面撮影時には空気室に21からエアーを送り込んで気圧を上げるとともに、下部通気孔22からエアー吸引をおこなう。
【0015】
すると、フィルムはフィルム室の気圧の上昇によりガラス基盤に押されるとともに下部通気孔22から吸引されると画面外にある通気路24からもガラス基盤に吸着されることによりフィルムはガラス基盤上でより効率よく平面保持される。撮影あるいはスキャナによるスキャンニング後は、空気室19の気圧を下げるとともに通気路21からエアー排出させフィルムの吸着状態を解除して後にフィルム移動をおこなうことによって、目的を達成している。
フィルム移動時は、上下通気孔をともに開放することによって上下いずれの吸引、排気による摩擦がない状態でコマ送りがおこなわれる。
【0016】
すなわち、これを図9にて説明すると、21、22の通気孔に連結される空調装置は、エアーポンプ、コンプレッサーのボンベの吸排気作動とフィルム送りと連動する回転カム29によって吸排気が調整され、図が示すフィルムに負荷がかからないこの状態におコマ送りがおこなわれ、コマ送りの終了とともにカムは右回転しシリンダーAからエアーガ送り込まれるとともにシリンダーBからエアーガ吸引され、フィルムが平面吸着された状態で接点31がスイッチ30を押し画像が記録され、そのあと現状に戻って摩擦なくコマ送りがおこなわれるという上記工程が電子的操作で繰り替えされることによって目的が達成される。
【0017】
したがって本発明では、高速でフィルムを走らせる必要なくしかも摩擦のない状態でコマ送りをするので、従来法のように貴重なフィルムに傷をつけることが極めて少なく、フィルム画面は常に一定平面位置に吸着されるのでカーリングの強い古い頑固なフィルムにおいても平面性確保が容易確実となり、画像の歪みも部分的ピンぼけが微塵もない、高精細なデジタル画像変換がデジタルカメラ及びスキャン装置において記録可能になる。
なお、この実施例では空気室の厚さを薄くしてスキャナ取り込みを容易にする効果があるが、図6における透明ガラス20を除去し点線範囲の透明ガラスを除去した空気室の空間20b範囲を画面部7の打ち抜き部以外を密閉してもよい。薄型が必要なスキャナタイプの場合は画面部7残して同様に装置全体を空気室としてその内部空気圧をアップダウンさせる構造に成すことも可能である。それにより、透明ガラス20を除去し、厳密には生じるであろうガラスぼけをなくすことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の基本説明図。
【図2】画像記録部の実施例の断面図。
【図3】ピンぼけの原因となるフィルム画面下とガラス面に残留する平面保持不良の状態を示す説明図の断面図。
【図4】エアー吸排気孔からフィルム画面下とガラス面に残留するエアーを排出することによってフィルムは良好な平面性を保持する状態を示す説明断面図。
【図5】本発明の基本となる五つの作動の順序とそのタイミングを示す説明断面図。
【図6】第二の実施例を示す説明のための側面図である。
【図7】第二の実施例を示す説明のための側面図である。
【図8】各通気路の位置関係を示す説明図である。
【図9】コマ送りと吸排気との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1 長巻き映画フィルムが装填されたフィルムリール
1b フィルム
2 巻き取り用フィルムリール
3 面光源部
4 画像記録部
5 デジタルカメラ
6 圧着板
7 圧着板を打ち抜きした画面部
8、9 圧着板の画像部周囲にもたらされたエアーパッキング
10、11 フィルム側端に通じる通気路
12、13 吸排気させる通気孔
14 フィルム面とガラス面の間に残留エアーを有する平面性のよくないフィルムの状態
15 アンチニュートン・ガラス基盤
16 フィルム面とガラス面の間に残留エアー
17 残留エアー排出(吸着)により平面性よく吸着固定されたフィルム
18 フィルムの移動が可能なトンネル状隙間
19 空気室
20 透明ガラス
20b 透明ガラスを除去した空気室の空間
21 空気室のための上部通気孔
22 下部通気孔
23 撮影画面外のフィルム側端に通じる通気路
24 撮影画面外のフィルム下に通じる通気孔
25 レバー
26 支点
27 シリンダーAのエアー吸排孔
28 シリンダーBのエアー吸排孔
29 回転カム
30 スイッチ
31 接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映画(動画)フィルムのコマ送り装置の画面部に、面光源を背景にしたアンチニュートンガラス基盤(以下ガラス基盤)に対し、素通しの画面打ち抜き部を有して開閉自在とした圧着板との間に映画フィルムをコマごとに移動可能にする構造において、
撮影時にはフィルム側端部にもうけた通気孔からエアー吸引でフィルムをガラスに吸着させて撮影(デジタル記録)をおこない、圧着板の圧着解除とともにエアー排気してコマ送りをおこなう、そのエアー吸引・撮影、排気・コマ送りという連続的作動をおこなって得たデジタル映像データを動画編集することによって、高画質デジタル映像を製作を可能にすることを特徴とする映画フィルムのデジタル画像変換システム。
【請求項2】
映画フィルムのコマ送り装置の画面部に、面光源を背景にアンチニュートンガラス基盤(以下ガラス基盤)と、画面部を素通しに打ち抜きした圧着板との間にトンネル状の隙間及びフィルム側端部及び画面外フィルム面下に通気路をもたらし、かつその圧着板上に透明ガラスを有する空気室をもたらしてコマごとにフィルムを移動させる構造において、
画面記録時には空気室にエアーを送るとともにフィルム側端部及び画面外下の通気路からエアー吸引をおこなってフィルムをガラス基盤面に吸着させて撮影し、コマ送り時には空気室の気圧を下げるとともに通気路からエアー排出してフィルム移動を繰り返しおこなうことを特徴とした映画フィルムのデジタル画像変換システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−193419(P2010−193419A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66966(P2009−66966)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000252540)
【Fターム(参考)】