説明

時間と共に変化するパラメータの警告とアラーム限度値とを自動設定するための方法

患者の生理的なパラメータ(例えば、血圧、心拍数等)をモニタするときに、閾値限度値30が(例えば自動的に又は手動で)セットされ、モニタされたパラメータが、一定の又は時間と共に変化する閾値限度値と連続的に比較される。モニタされているパラメータが閾値限度値を超えた場合はいつでも、又はモニタされているパラメータが、投与された薬又は治療が効果を発揮する所定の時間の終わりまでに目標値に達しなかった場合は、アラーム36が起動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は患者のモニタリングシステム、特に生理学上のモニタリングシステムのアプリケーションに関する。しかしながら、本願明細書で説明される技術は他のモニタリングシステム、他のヘルスケア情報収集のシナリオ、状況をモニタする他の技術等々のアプリケーションにも関することが理解されることであろう。
【背景技術】
【0002】
現在行われている患者の生理学的なモニタリングは、設定された限度値をパラメータが超えた場合、各パラメータが警報を発する能力をもつことを必要とする。名目上、これらの限度値はユーザが設定し、患者の生理的な値が設定された限度値を過ぎて変化する毎に警告を発生させる。治療が冠状動脈血管形成術又は血管作動性薬のイニシエーションなどで開始された場合、パラメータの限度値が介護者によって変更されることは通常ない。場合によっては、所望する医療介入の効果が、目標の生理的状態に対してユーザの手による変更により対処される。しかしながら予想外の効果が他のパラメータにあり、開始された医療介入に対してこれらが新たな警告レベルを設けた場合、ユーザがこれを考慮することはない。更に、行われている医療介入又は治療に臨床パラメータが適切に反応しなかったと通知されることに臨床医は通常興味を持っているか、又は医療介入が成功した場合に通知されたいと思うことさえある。更に臨床医は、血液検査室の結果などの新たな臨床データの必要性、又は治療に対する主観的な反応を含む治療に対する患者の現在の反応に基づく現在のワークフローに対して示された変化を知ることに興味をもっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多くの治療が瞬時の改善を提供することはない。むしろ、治療が効き目を現すまで、生命徴候を含む生理的な信号はしばしば悪化し続ける。限度値が変更されずに保たれている場合、誤ったアラームの結果となる。医療介入による生理学的な期待値に対して限度値が最適化されない場合、患者が予想通りに改善し始めたかどうかに関する意味のあるフィードバックが失われる。
【0004】
これらの「悪化している」又は「改善していない」基準が、所与の時間スパンの後に問題のパラメータを人間が点検するために指示書として時折施行され、パラメータが目標範囲にない場合、担当医師と連絡をとる。他の事例では、改善の欠如又は悪化している状態が後で発見されるか又は全く発見されない場合、結果として正しい治療の遅延となる。この間、医療介入が依然として効果を発揮しないので、モニタリングシステムにより起動されたアラームがしばしば無視されたり、又は誤った若しくは意味がないものとして認知されたり、さもなければアラームはスイッチを切られたりする。
【0005】
閾値を超えている、測定された生理的パラメータのうちの一つに応答してアラーム又は警告を起動する生理学的なモニタリングシステムにおいて、閾値は通常臨床医によってセットされ、変更されることはない。医療介入又は治療の後、患者は遅延時間を伴って改善することが通常期待される。当該遅延時間は患者の始まりの状態、医療介入に対する生理的な反応、及び多くの他の変数に依存する。臨床医にとって患者が実際改善されているかどうかについて知ることも重要である。通常、医療介入又は治療に応答した改善に対するモニタリングは人間により成され、時宜を得た改善の欠如が容易に見逃されてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願は、時間の関数としてモニタされたパラメータ値を閾値又は限度値と比較することに基づいて、患者の難局を臨床医に警告するための新規で改善されたシステムと方法とを提供し、これらは上述した課題及び他の課題を克服する。
【0007】
一態様によれば、時間と共に変化する生理的なパラメータの警告を提供する方法は、生理的なパラメータ、患者のデータ、又は患者の臨床情報をモニタするステップを含み、当該モニタされたパラメータを最初の閾値基準と比較するステップを含む。薬剤投与、医療介入、又は治療施与の行為に続いて、割り当てられた時間の間は、最初の閾値基準が、モニタされたパラメータの悪化を許容する悪化した状態での閾値基準へと一時的に変更され、割り当てられた時間の後は施与後の閾値基準へと変更される。割り当てられた時間の間は、モニタされたパラメータが、悪化した状態の閾値基準と比較され、割り当てられた時間の後、モニタされたパラメータが施与後の閾値基準と比較される。本方法は更に、最初の閾値基準、悪化した状態の閾値基準、及び施与後の閾値基準のうちの一つ以上に違反しているモニタされたパラメータに応答して、アラームを起動させるステップを含む。
【0008】
別の態様によれば、時間と共に変化する生理的なパラメータの警告をユーザに提供するシステムは、患者の生理的なパラメータをモニタする一つ以上のセンサと、患者のデータ、臨床検査室のデータ、及び生理的なパラメータを記述しているモニタされたデータ又は測定値のうちの一つ以上を入力するようプログラムされたプロセッサと、を有する。当該プロセッサは更に、モニタされたパラメータを最初の閾値基準と比較するようプログラムされる。薬剤投与、医療介入、又は治療施与の行為に続いて、割り当てられた時間の間は、モニタされたパラメータの悪化を許容する悪化した状態での閾値基準へと当該プロセッサが最初の閾値基準を一時的に変更し、割り当てられた時間の後に施与後の閾値基準へと変更する。割り当てられた時間の間、当該プロセッサはモニタされたパラメータを悪化した状態の閾値基準と比較する。割り当てられた時間の後、当該プロセッサはモニタされたパラメータを施与後の閾値基準と比較する。最初の閾値基準、悪化した状態の閾値基準、及び施与後の閾値基準のうちの一つ以上に違反しているモニタされたパラメータに応答して、当該プロセッサはアラームを起動させる。
【0009】
別の態様によれば、規定の薬剤投与、治療、又は医療介入行為に対する反応に基づいて、追加の臨床情報の要求又はワークフローの起動を行うシステムがある。
【0010】
長所の一つは、患者のために開始された治療の反応を解釈することに費やされる時間が減じられることである。
【0011】
別の長所は、医療介入に対して患者が反応しないことの検出がより迅速に検出される点である。
【0012】
別の長所は、閾値の限度値が治療予測と共に変化することである。
【0013】
別の長所は、行動を伴わない警告又はアラームの数が最小化されることである。
【0014】
以下の詳細な説明を読み且つ理解すると、本発明の更に更なる長所が当業者により理解されることであろう。
【0015】
図は様々な態様を例示する目的に過ぎず、限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】警告メッセージと患者の難局の通知とを起動させる警告設定を訂正するために、自動的にシステムにより訂正されることができるか、又はユーザによって手動でプログラムされることができる、時間と共に変化する警告動作の提供を容易にするシステムを例示する。
【図2】現在の生理的なパラメータ値を設定されたアラーム限度値と比較するアラーム管理システムを備え、生理的なデータを集め且つ表示するためのプロセス・フローを例示する。
【図3】ECG波形のST部分の値が、例えば患者センサによってモニタされ、システムが自動的に、又はユーザが手動で(若しくは自動のデータ・インタフェースによって)医療介入が完了したことを当該システムに知らせ、回復状態が「改善されてはいない」アラームを起動させたグラフを例示する。
【図4】悪化しているST限度値が、よりひどく悪化している最初のST限度値からオリジナル又はデフォルトの高さ限度値(再灌流目標限度)へと単調に減少する関数であり、結果は「悪化している」及び「改善されてはいない」の両方の警告であるグラフを例示する。
【図5】新たな高い限度値が、時間経過を通じて一連のステップ・レベルで改善閾値へと減じられるグラフを例示する。
【図6】複数の生理的なパラメータを示し、臨床検査室の結果が、関係するパラメータの警告及びワークフローの警告を生成しているグラフを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、警告メッセージと患者の難局の通知とを起動させる警告設定を訂正するために、自動的にシステムにより訂正されることができるか、又はユーザによって手動でプログラムされることができる、時間と共に変化する警告動作の提供を容易にするシステム10を例示する。例えば、当該システムは患者をモニタし、患者の状態が所定の時間又は所定の時間帯の中で改善されない場合、アラームを起動させる。
【0018】
システム10は、一つ以上の患者センサ14に接続したアラーム・マネージャ12と、経時的な生理学上の情報、認識規則等々を含む臨床データ15とを有する。センサ14が患者パラメータを検知又は測定するために患者へと接続される。患者パラメータとは例えば、温度、心拍数、呼吸数、血圧、血液中の酸素レベル(SpO2)、血糖値、所望の代謝に対する血液中の代謝物レベル、ECG波形、又は何らかの他の測定可能なパラメータ若しくは主観的なパラメータである。モニタ部は実行プロセッサ16と、本願明細書において説明されている様々な技術、方法、行為等を実行するためのコンピュータで実行可能な命令を記憶するメモリ18とを含む。当該プロセッサ及びメモリは、ユーザに対して情報(例えば患者パラメータ情報、警告等々)を提示するためのディスプレイ22と、ユーザが情報をモニタ部に入力するための入力デバイス24とを含むユーザ・インタフェース20に接続されている。当該入力デバイスは、モニタのユーザ・インタフェースに情報を入力するためのマウス、尖筆、キーボード、タッチスクリーン、音声操作の入力デバイス、又は他の何らかの適切なデバイスでもよい。
【0019】
プロセッサ16は測定パラメータのデータ26を患者センサ14及び/又は臨床データ15から受領し、当該データをメモリ18に記憶し、及び、同データをディスプレイ22に表示する。加えて、当該プロセッサは医療介入、薬、及び/又は治療の施与等の指標となるデータを外部システムから及び/又はユーザから入力できる。システムは一つ以上のパラメータを選択し、選択されたパラメータ28がメモリ18に記憶される。この後ユーザは一つ以上のパラメータ警告限度値30(例えば時間範囲、パラメータの大きさの範囲、「改善」の時間関数、パラメータ限界値等などの範囲又は閾値)をセットし、これらがメモリ16に記憶される。ユーザによる起動動作があると、又は実行するのに必要なデータが入手可能であると、プロセッサは示された範囲又は示された閾値限度を超えたかどうか決定するために、選択されたパラメータ28をモニタする警告アルゴリズム(例えば、コンピュータ実行可能な一組の命令)を連続的に実行する。パラメータ警告限度値が時間範囲を含む場合、モニタ中のクロック34(例えばタイマ、実時間のクロック、カウンタ又は同類のもの)は、所定の時間若しくは選択された時間又は時間範囲が経過したかどうか判定するために、時間情報をプロセッサ及び/又は警告アルゴリズムへと提供する。選択されたパラメータが限度値を超えた、又は示された範囲から外れたことを検出すると、プロセッサは、患者又はワークフローが注意を必要とするという警告を臨床医に出すために、ユーザ・インタフェースのアラーム36を起動させる。
【0020】
例によれば、医療介入(例えば投薬)又は治療を行うと、選択された患者パラメータが多少の期間は悪化することがある。そして、医療介入又は治療が効果を発揮すると(例えば患者により代謝され、目標の器官又は部位等に到達すると)、選択されたパラメータの改善が予想される。自動インタフェース(図示せず)を通じてか、又はユーザが使用している入力デバイス24を介してかの何れかによって、どの医療介入又は治療が開始されたかについて記述している情報が示される。システムは、入手可能なパラメータ28の何れかがアラーム又は警告の改変を必要とするどうかを決定する。改変する場合、パラメータ限度値がシステムにより訂正され、これにより、医療介入に続く限られた潜伏期間の間、選択されたパラメータの限定的な悪化を許容する(誤ったアラーム又は尚早のアラームを減じる)。次に、医療介入又は治療の効果が出るまでのユーザが設定した時間の後、選択されたパラメータの改善を反映するレベルへと限度値が自動的に訂正される(例えば、パラメータ及び/又は薬若しくは治療の予想される効果に応じて上下される)。一実施例では限度値の変更は最初は上げられ、この後、医療介入が効果を発揮すると思われる時間の後に減じられる。別の実施例では、医療介入又は治療が効果を発揮するまでの潜伏期間の後、限度値は時間と共に変化する滑らかな曲線をたどるように訂正される。別の実施例では、限度値は時間と共に一連の小さなステップになるよう訂正される。これらの全ての実施例において患者の状態が医療介入又は治療の後に予想通りに改善されない場合、医療介入又は治療法が所望の効果を発生していないか、又は医療介入にもかかわらず状態が悪化していると臨床医に通知するために、プロセッサ16はアラーム信号36を送る。
【0021】
時間を伴うパラメータの限度値の訂正が、様々な態様で成されることができる。一実施例では、モニタされた生理的なパラメータから、当該パラメータの経時的な値からの推論によって、及び/又は他のシステム若しくはデータベース(図示せず)とインタフェイスすることによって、モニタが自動的に時間と共に変化する閾値の限度を決定する。例えば、投与された薬物と共にIVポンプもデバイスがモニタしている場合、モニタは薬物及びポンピング率に関連した情報を入力することができ、予想される改善を推定できる。これゆえメモリは、患者について、経時的な生理的なデータについて、及び開始された医療介入について何を知っているかに基づいた様々な条件及び医療介入若しくは治療に対する曲線を有する情報データベース又は参照テーブル38等を含む。オプションで、前記参照テーブルはモニタからネットワーク・データベース(図示せず)等を通じて遠隔操作にて記憶されることができる。
【0022】
別の実施例では、提案された限度値曲線をプロセッサ16がディスプレイ22に表示し、オペレータが当該曲線を訂正することが可能である。別の実施例では、時間に対する限度値の変更が入力デバイス24を使用して手動でセットされる。
【0023】
別の実施例によれば、複数の生理的なパラメータがモニタされることができる。これらのパラメータは、患者の生理的状態に直接関係するか、又は医療介入若しくは治療が行われたことに対する効果に関係する。代替的には、パラメータ閾値又はパラメータの限度値の変更が、医療介入又は治療の周知の副作用の指標となる生理的なパラメータに基づくこともある。例えば、血圧を上げるために投与される薬物は心拍数も通常増加させる。このように、斯様な薬物の投与の後の選択された時間範囲の間に、患者の心拍数が限度設定値を超えて保たれてはいるが、しかし血圧が最低限の血圧限度設定値以下に落ちているか、又は当該心拍数が医療介入時に予め訂正された新たな暫定許容レベルを上回って増大した時点で、臨床医に当該事象に対して警告するために、プロセッサ16はアラーム36を起動させることができる。
【0024】
パラメータ警告限度値30は単純な閾値の形のこともあり(例えばHR値が高HRの限度値よりも高い場合、「HRが高い」との警告をする)、又は厳しい値に基づくこともあり、中程度の優先度の警告限度値、高優先度の警告限度値、及び生理学上アラーム対象となる事象を検出する高度なアルゴリズム等に基づいて、種々異なる警告が同じパラメータに対して出される。これに加えてモニタ12は、治療若しくは医療介入が開始された、又はパラメータが自身の現在のパラメータ限度値を超えたという、自動で又は手動で入力された徴候を表示できる。例えば、インタフェイスしているデバイス又はユーザによる起動行為を介して、薬物投与若しくは医療介入についてのシステム的な情報、又は現在のパラメータ値が現在のパラメータ限度値を上回るという情報がディスプレイ22に表示されることができる。
【0025】
システム10は、現在のアラーム限度値に対して一時的に限度値を緩くしたり又はパラメータのより広範な変化を許容する「悪化している状態」のアラーム設定の、自動又は手動の設定も可能にする。治療による医療介入が未だ効果を発揮しない限り、この一時的な状態が許容されるが、しかし、パラメータがこの新たな一時的な限度値を超える場合、ユーザは悪化している状態を通知されることがある。例えば患者が心拍数及び/又は血圧を減じるためにβ受容体遮断薬を与えられ、当該薬物が患者に効き始めるまでに通常ほぼ30分を費やす場合、ユーザは、現在の30分間のアラーム条件(例えば高血圧及び/又は心拍数)をブロックするために、悪化している状態のアラーム設定をセットする。システムは、患者の心拍数を「悪化している限度値」まで増し続けることができるが、しかし30分間経過した後に、患者の心拍数及び/又は血圧が依然として予想される改善限度値よりも上にある場合、「改善されていない」状態をユーザに警告するためにアラームが鳴ることであろう。このように、臨床医は患者を絶えずチェックする必要がないが、一方で、これらの状態に対して依然として警告されるか又はより迅速に通知されることができる。
【0026】
システム10は、予想される応答曲線に対する所望のパラメータの警告限度値30、及び選択されたパラメータが追随すると思われる時間関数の、自動又は手動の設定を許容する。これに加え、システムは医療介入又は施与に付随する危険な条件、及び選択されたパラメータが追随すると思われる時間関数の自動又は手動の設定を許容する。これらの特徴はシステムが利用できるパラメータの関数として、パラメータの挙動や臨床ガイドライン等についての経時的な情報に基づく患者の生理的なモデルとして提供される。
【0027】
このように生理的なデータの収集は、現在のパラメータの測定値26を設定されたパラメータ警告限度値30と比較できるアラーム管理の機能を促進する。加えて、システム10は、薬物投与、服用量、及び治療的なカテゴリを含む患者に関する医療介入情報及び治療情報へのアクセスをもっている。最終的にシステムは、治療目標を時間関数として算出することと、悪化している基準の条件付けとを容易にする。
【0028】
プロセッサ16及びメモリ18に関しては、本願明細書において説明されている様々な機能及び/又は方法を実行するためのコンピュータ実行可能な命令をプロセッサ16が実行し、メモリ18が記憶することが理解されるであろう。当該メモリ18は、制御プログラムが記憶されるディスク、ハードディスクドライブ等などのコンピュータ可読媒体でもよい。コンピュータ可読媒体の普通にある品種は、例えばフロッピーディスク、フレキシブル・ディスク、ハードディスク、磁気テープ若しくは他の何らかの磁気記憶媒体、CD-ROM、DVD若しくは他の何らかの光学媒体、RAM、ROM、PROM、EPROM、FLASH-EPROM、及びこれらの異型、他のメモリチップ若しくはカートリッジ、又はプロセッサ16が読み込むことができ且つ実行できる何らかの他の有形の媒体を含む。本願明細書ではシステム10は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、プログラムされたマイクロプロセッサ若しくはマイクロコントローラ、及び周辺回路集積素子、ASIC若しくは他の集積回路、デジタル信号プロセッサ、ディスクリート部品による回路などの物理的に組み込まれた電子回路若しくは論理回路、又はPLD、PLA、FPGA、グラフィックカードCPU(GPU)若しくはPAL等のプログラム可能な論理デバイスのうちの一つ以上のものとして、又は一つ以上のものにおいて実行されることができる。
【0029】
引き続き図2を参照すると、プロセス・フロー70は、現在の生理的なパラメータを設定されたアラーム限度値と比較するアラーム管理システムと共に、生理的なデータを集め且つ表示する。ステップ72で、医療介入又は医療施与(例えば、治療、薬等)が検出されるか又は入力される。ステップ74で、検出された行為が一つ以上のモニタされているパラメータに影響を与えることが知られているかどうかに関して判定が成される。例えば、施与行為が血圧を増大させる血管作動性薬の投与であり、患者の血圧がモニタされている場合、判定はYESである。
【0030】
複数のデータソースが、ステップ74で決定をする際に使用される。例えば、利用可能な生理的な情報76(例えば、モニタされたパラメータ等)及び生理に与える医学的な影響及び医療介入の影響の情報78(例えば予想される効果、測定された効果等)が考察される。これらに加えて、患者の生理的な経緯及びアラームの経緯を記述している経時的な情報80が、ステップ74で決定をする際に使用されてもよい。判定がYESである場合、この後ステップ82で、複数のファクタがシステム10により算出される(図1)。
【0031】
例えばステップ82で、悪化している基準、改善されない基準、又は意図された及び/若しくは意図されないパラメータに対して必要とされるワークフローの基準が算出される。モニタされたパラメータ又は影響を及ぼすパラメータの各々に対して、悪化している条件が発生するまでに割り当てられる時間(例えば閾値限度値に達する時間)も同様に算出される。加えてシステム10は、各々のモニタされたパラメータ又は影響を及ぼすパラメータに対して、悪化している条件が発生する時の時間関数と、各パラメータの目標値とを算出する。さらに、各々のモニタされたパラメータ又は影響を及ぼすパラメータに対して、目標パラメータ値を実現するまでに割り当てられる時間がシステムにより算出される。何故ならばこれは、各々のモニタされたパラメータ又は影響を及ぼすパラメータ値に対して、当該目標パラメータ値を実現するまでの時間関数だからである。チェックすべき他のモニタされてはいない条件もステップ82で識別される。ステップ84で、変更可能な限度値が生成され、ユーザ(例えば臨床医、看護婦、医師等)が状態の変化に対して警告される。
【0032】
ステップ74での判定がNOである場合、悪化している基準パラメータ(例えば割り当てられた時間、時間関数等)又は目標パラメータ(例えば値、割り当てられた時間、時間関数等)のユーザ入力に対する限度値の自動的な変更がステップ86で成されることはない(しかしユーザによる訂正は許される)。プロセス・フローは、この後ステップ84へと進み、変更可能な限度値が生成され、ユーザ(例えば、臨床医、看護婦、医師等)は必要に応じて警告される。
【0033】
図1及び図2を引き続き参照し、更に図3乃至図6を引用すると、患者が(例えば血管形成術等の)経皮的冠動脈介入(PCI)を受けたときの幾つかのグラフによる例が例示されており、急激にST区間(例えば、心電図のQRS群の終端とT波の始まりとの間の部分)が上昇した心筋梗塞により、インタフェイスしているデバイスを介して、インタフェイスしているシステムを介して、又はユーザによる行為を介して、システム10(図1)は、薬剤及び服用量の治療カテゴリが「血栓溶解剤」と分類される薬物の投与についての情報を得る。
【0034】
図3は(例えばECG電極などの患者センサ14(図1)によって)ST値102がモニタされているグラフ100を例示しており、システムが自動的に、又はユーザが手動で(若しくは自動データ・インタフェースによって)医療介入が完了したことをシステムに知らせた(線104)。一旦起動されると、システムはそれぞれに悪化している基準及び改善している基準並びに時定数を、例えば1 mmは「悪化している」とか、60分以内の50%の改善は「改善」又は「再灌流目標」であるなどの臨床ガイドラインに基づいて算出する。上側のST値の「悪化している」限度値が、時間108に渡ってステップ状に変化している。
【0035】
図3では、モニタされたST値が実線102として示されている。再灌流目標への行動が、予想される改善期間106の開始部分104を始動する。ユーザが決定するか、又はシステムによって自動的にセットされる医療介入前警告限度値112と改善目標値110とから算出される(閾値限度値などの)一時的に悪化するSTの限度値108も例示されている。医療介入前の上側のST限度値と同じ値であるユーザによる上側のST限度値112は、予想される改善の後にセットされる。ユーザによる下側のST限度値114が、ST値が低いとのアラームが起動するであろうST値を明確に示している。この場合、悪化している/改善していない限度値の改変の必要性は、医療介入に関与する責任血管に関係する手掛かりと、上昇しているST値の手掛かりのみとにあるに過ぎない(抑制されているST値の手掛かりにはない)。加えて、「ST-X値が改善していない」警告又はアラームが、上側の目標改善限度値110よりも下に改善されない患者のST値の予想される改善時間の満了に伴って起動される。限度値よりも上及び限度値よりも下という用語は、本願明細書において説明されている臨床シナリオに関連することと、これらの用語が臨床状態及び予想される生理的なパラメータの軌跡を表すために使用されることとに留意されたい。
【0036】
図4は、治療行為を実施する時刻132において、上側の悪化しているST限度値が(図3に対して)より高い悪化しているST限度値134へと最初は増加しているグラフ130を例示している。予想される改善時間135の間、上側のST限度値は滑らかで単調に減少する曲線136に沿って、この例では、最初の上側のST限度値140よりも低い新たな上側のST限度値138へと減少する。この例では、上側の悪化しているST限度値136と患者のモニタされたST値144とが場所146で交差したときに、「ST-X値が悪化している」警告が警告サブシステム36により起動される。「ST-X値が改善していない」警告は、予想される改善時間135の満了に伴っても起動される。
【0037】
図5は、上側のST限度値152が、治療行為の時刻156に(図3に対して)新たな高い限度値154へとステップアップしているグラフ150を例示している。当該高いST限度値154は新たな改善閾値である上側のST限度値162へと、一連の一律に減少するステップ・レベル158で、予想される改善時間160に渡って減少する。上側のST限度値158と患者をモニタしているST値166とが時刻164に交差したとき、「ST-X値が悪化している」警告が起動される。モニタしているST値164が依然として改善閾値の上側の限界値162を上回る場合、「ST-X値が改善されない」警告が、予想される改善時間160の満了に伴い起動される。
【0038】
以上の例の各々において、固有の状態の閾値、固有の抑制期間、及び固有の遅延時間が設けられる。各々の状態は、悪化している基準が試される様々な悪化している時間関数を使用して、悪化している状態、目標の時間エンベロープに対して改善されていない状態、又は所望の時間エンベロープにおいて改善が実現された状態をユーザへと通知することができる。
【0039】
薬剤及び投与量の治療カテゴリが「昇圧」と分類される持続性点滴の実施例では、血圧(BP)がモニタされる。システムは、患者の目標BP値と現在のBP値との間のΔ(例えば変化)を算出し、BP値が例えば直ちに10%低下した及び/又は20分以内に30%よりも高く上昇しない場合、ユーザに警告するよう「高い」BP警告限度値及び「低い」BP警告限度値を訂正する。
【0040】
別の実施例では、変時性の薬物が投与された場合、薬物の予想される時間的な治療反応に基づいて心拍数(HR)パラメータの警告限度値が改変される。
【0041】
別の実施例では、周知の呼吸抑鬱作用を有する鎮静薬又はオピオイド鎮痛薬の投与に伴い、呼吸数の警告値が改変される。
【0042】
別の実施例では、糸球体濾過速度(GFR)を増減させることが知られている公知の薬が投与されると、体液平衡(I/O)の警告値が予想されるレベルにセットされる。I/Oのバランスがある時刻までに達成されない場合、臨床医は警告される。
【0043】
別の実施例では、薬剤及び投与量の周知の副作用が「腎臓毒物」と分類される薬物の投与に関するシステム情報が、インタフェイスしているデバイスを介して、インタフェイスしているシステム及び/又はユーザによる行為を介して利用される。例えば、尿排出量が低下した場合、糸球体濾過値が増した場合、又は(検査室の結果により示されるように)特定の期間に特定の限度値へと血液尿素窒素(BU)が増した場合、ユーザは、警告を受けることであろう。
【0044】
図6は、複数の警告の設定をもつ複数のモニタされたパラメータを示しているグラフ表示170を例示している。この例によれば、医療介入は原発性の意図した効果、例えば増加した血圧BPと、2つの続発性の意図しない効果(例えば心拍数(HR)の上昇、乳酸の増加)とを有する。目標となるBPΔ(変化)は、医療介入時の値からの絶対値レベルでの改善又はパーセントレベルでの改善の何れかに基づく。悪化しているBPΔ(変化)は、医療介入時のBP値以下の一定のパーセントに基づく。BPの目標値は、目標BPΔ(変化)プラス医療介入時の患者のBP値に等しい。予想される改善時間は医療介入のタイプに基づく。悪化しているHRΔは現在のHR限度値とは異なる一定のパーセントに基づくか、又は医療介入時の値に基づく。この例では、上側のHR限度値は一定のパーセントで増加している。許容される可動域時間は、医療介入のタイプ及び現在の値(又は直近の経緯)に基づく。この例では、許容される可動域時間が満了した後、以前のHR限度値が復帰する。また、この例で表されているように、医療介入は、乳酸の生成の増大を付随することが知られており、したがって、最新の乳酸値に基づいて新たな検査室データが入手できるまでに許容される時間172が設けられる。この時間は、医療介入のタイプ、最後の検査室データが得られた時間が医療介入からどれくらい経過しているか、及び最新の検査室データの値(通常値、通常値からの偏差、臨界値)に基づく。生理的な事象を示すこの例に基づいて、結果として生じる警告(例えばHRが高い、乳酸に起因する、BPが低い/BPが改善されていない等々)が、最後の時間軸の下に示されている。例えば、HR限度値が許容可動域時間の間に、悪化しているΔを超えた場合、及び許容された可動域時間の満了後にHR値が依然としてHR限度値よりも上にある場合、HRのアラームが鳴らされる。この例では、各パラメータは独立した閾値の算出、改善時間、及び回復時間関数を有することができる。
【0045】
本発明が複数の実施例を引用して説明された。これまでの詳細な説明を読み且つ理解すると、修正及び変更が他に発生する場合がある。本発明が添付の請求項の範囲又は等価物の範囲内にある限り、本発明は全ての斯様な修正及び変更を含むものとして解釈されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間と共に変化する生理的パラメータの警告を提供する方法であって、当該方法は、
患者の生理的なパラメータ、患者データ、又は臨床情報をモニタするステップと、
当該モニタされたパラメータを最初の閾値基準と比較するステップと、
薬剤投与、医療介入、又は治療行為に続いて、前記最初の閾値基準を、一定の間前記モニタされたパラメータの悪化を許容する悪化状態閾値基準へと一定的に変更し、当該一定の間の後には行為後閾値基準へと、変更するステップと、
前記一定の間に、前記モニタされたパラメータを前記悪化状態閾値基準と比較するステップと、
前記一定の間の後に、前記モニタされたパラメータを前記行為後閾値基準と比較するステップと、
前記モニタされた前記最初の閾値基準、前記悪化状態閾値基準、及び前記行為後閾値基準の一つ以上に反しているパラメータに応じてアラームを起動させるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記悪化状態閾値基準が一定であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数のステップにおいて、前記悪化状態閾値基準が行為後目標レベルを下げることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記悪化状態閾値基準が時間と共に変化することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記悪化状態閾値基準が、単調に増減する曲線をたどるか、又は指数的に増減する時間関数であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
- 前記モニタされたパラメータが、前記一定の間の満了時に改善されていない場合にアラームを起動するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記投薬行為又は治療行為が前記モニタされたパラメータに影響を与えるかどうかを、
入手可能な生理的な患者情報と、
患者の生理に影響を及ぼす行為又は医療介入行為についての知識と、
患者の生理、検査データの学習、及びアラームの経緯に関する経時的な情報と、
のうちの少なくとも一つを評価することによって判定するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記モニタされたパラメータが、
ST部分の上昇又は低下と、
血圧と
心拍数と、
血液中の酸素レベルと、
呼吸数と、
血液中の代謝物レベルと、
のうちの少なくとも一つを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法を実行するためにプロセッサを制御するためのソフトウェアを担持している、コンピュータ可読媒体。
【請求項10】
前記薬剤投与、前記医療介入行為、又は前記治療行為の通知が、ユーザによって手動で入力されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記薬剤投与、前記医療介入行為、又は前記治療行為の通知が自動化されていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
時間と共に変化する生理的パラメータの警告をユーザに提供するシステムであって、
当該システムは、
患者の生理的なパラメータをモニタする一つ以上のセンサと、
プロセッサであって、
患者データ、臨床検査室データ、及び生理的なパラメータを記述しているモニタされたデータ又は測定値のうちの一つ以上のものを入力するステップと、
前記モニタされたパラメータを最初の閾値基準と比較するステップと、
薬剤投与、医療介入行為、又は治療行為に続いて、前記最初の閾値基準を一定の間、前記モニタされたパラメータの悪化を許容する悪化状態閾値基準へと一時的に変更し、一定の間の後には行為後閾値基準へと変更するステップと、
前記一定の間に、前記モニタされたパラメータを前記悪化状態閾値基準と比較するステップと、
前記一定の間の後に、前記モニタされたパラメータを前記行為後閾値基準と比較するステップと、
前記モニタされた前記最初の閾値基準、前記悪化状態閾値基準、及び前記行為後閾値基準の一つ以上に違反しているパラメータに応じてアラームを起動させるステップと、
がプログラムされたプロセッサと、
を有する、システム。
【請求項13】
前記悪化状態閾値基準が一定であることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
複数のステップにおいて、前記悪化状態閾値基準が行為後目標レベルを下げることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記悪化状態閾値基準が時間と共に変化することを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記悪化状態閾値基準が、単調に増減する曲線をたどるか、又は指数的に増減する時間関数であることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記モニタされたパラメータが、前記一定の間の満了時に改善されていない場合にアラームを起動することを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
前記投薬行為又は治療行為が前記モニタされたパラメータに影響を与えるかどうかを、
入手可能な生理的な患者情報と、
患者の生理に影響を及ぼす医薬行為又は医療介入行為についての知識と、
患者の生理、検査データの学習、及びアラームの経緯に関する経時的な情報と、
のうちの少なくとも一つを評価することによって決定することを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
前記モニタされたパラメータが、
ST部分の上昇又は低下と、
血圧と、
心拍数と、
血液中の酸素レベルと、
呼吸数と、
血液中の代謝物レベルと、
のうちの少なくとも一つを有する、請求項12に記載のシステム。
【請求項20】
前記システムが更に、
前記モニタされたパラメータ情報が閾値限度値情報と共にユーザに提示されるディスプレイと、
少なくとも一つの前記閾値限度値をユーザがセットする入力デバイスと、
を有するユーザ・インタフェースを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項21】
前記薬剤投与、前記医療介入行為、又は前記治療行為の通知が、ユーザによって手動入力されることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項22】
前記薬剤投与、前記医療介入行為、又は前記治療行為の通知が自動化されていることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−532728(P2012−532728A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520124(P2012−520124)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052681
【国際公開番号】WO2011/007271
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】