説明

時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法及びシステム

【課題】時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【解決手段】まず、パルス列を生成する。次に、シンボルに従って時間でパルスを変調する。パルスを超広帯域信号として送信する前にパルスの極性をランダムに反転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、包括的には、無線通信に関し、詳細には、超広帯域(UWB)システムを用いた通信に関する。
【背景技術】
【0002】
超広帯域(UWB)システムは、近年、無線通信システム用にかなり注目されてきている。近年、米国連邦通信委員会(FCC)は、限られた屋内および屋外の用途にUWBシステムを許可した。
【0003】
IEEE802.15.3a標準規格群は、短距離屋内通信システムでUWBを使用するための性能要求を規定している。10メートルで少なくとも110Mbpsのスループットが必要とされる。これは、データ伝送レートが、それよりも大きくなければならないことを意味する。さらに、4メートルでは、少なくとも200Mbpsのビットレートが必要とされる。480Mbpsを超えるレートがこれより短い距離でしか達成できない場合であっても、480Mbpsを超えるレートに拡張できることが望ましい。これらの要求は、パルス繰り返し周波数(PRF)の値の範囲を提供する。
【0004】
2002年2月に、FCCは、UWB信号の電力制限値を提供する「First Order and Report」を公表した。使用可能な全周波数にわたる平均制限値は、屋内システムと屋外システムとで異なっている。これらの制限値は、図2を参照して、パワースペクトル密度(PSD)マスク200の形で与えられる。3.1GHz〜10.6GHzの周波数帯域では、PSDは、−41.25dBm/MHzに制限されている。このPSDに対する制限値は、可能な各1MHzの帯域に対して満たしていなければならないが、これより小さな帯域幅に対しては必ずしも満たしている必要はない。
【0005】
960MHzを超えて動作するシステムの場合、最も高い放射放出が発生する周波数fを中心とした50MHz帯域幅内に含まれるピーク放出レベルに対する制限がある。FCCは、測定に使用される実際の分解能帯域幅(RBW)に応じたスライド制に基づくピーク制限を採用している。ピークEIRP制限は、1MHz〜50MHzまで変動する分解能帯域幅で測定すると、20log(RBW/50)dBmである。fを中心とした1つのピーク測定値のみが必要とされる。その結果、UWB放出は、1MHzより大きなPRFに対しては平均の制限であり、1MHz未満のPRFに対してはピーク制限である。
【0006】
これらのデータレート要求および放出制限は、パルス形状の制約、全使用電力のレベルの制約、PRFの制約、ならびにスペクトル線の位置および振幅の制約となる。
【0007】
UWBシステムでは、データを運ぶのに、電磁パルス列が使用される。図1は、1つのフレーム101、すなわちシンボル長につき1つのパルスと、8つのパルス102またはサブフレームの時間ホッピング(TH)シーケンスと、THマージンを含むサブフレーム103とを有するUWB信号の一例のシンボル構造100を示している。この信号は、パルス位置変調(PPM)マージン112およびTHマージン113と共に、フレーム長に等しいシンボル110およびサブフレーム111を含む。N個のパルスをグループ化してN個のフレーム継続期間からなる1つのシンボルを作成するのではなく、フレーム継続期間は、図1に示すように、1つのサブフレームあたり1つのパルスを有するN個のサブフレームに分割される。
【0008】
多くのUWB信号は、パルス位置変調(PPM)を変調に使用し、時間ホッピング(TH)拡散を多元接続に使用する。この結果は、ディザリングされたパルス列となる。このディザリングされた信号をM−PPM信号としてみなすことによって、この信号のスペクトルを得ることができる。
【0009】
変調シーケンスが、独立した等確率シンボル(equiprobable symbol)から構成される場合、非線形メモリレス変調のPSDは、以下の式1によって与えられる。
【0010】
【数1】

【0011】
ここで、Mはシンボル数、Tはシンボル周期またはフレームを示し、Sはこのコンステレーションのi番目のシンボルのPSD、をそれぞれ示す。
【0012】
図2に示すように、PPMに固有のものとして、式(1)の第1項は、FCCマスク200の外側にあるスペクトル線を引き起こす。2−PPMによる信号のスペクトルは、通例、PRFの間隔で配置されたスペクトル線を含む。その結果、これらのスペクトル線の振幅は、スペクトルの連続部分のレベルを超える10*log10(T−1)dBとなる可能性がある。それは、IEEE802.15aによって規定された100Mbpsのデータレートの場合の80dBに対応する。
【0013】
FCC測定手順は、分解能帯域幅にわたるこれらのスペクトル線の電力を平均する。その場合でも、電力レベルが、依然として閾値より高い状態のままであり、したがって、FCC制限値に違反したり、全電力の削減を必要としたりする。時間ホッピングは、一般に、所与の周波数帯域でスペクトル線の個数を削減することによってスペクトル線の問題を削減するのに使用される。しかしながら、THは、必ずしも、残りのスペクトル線の振幅を減衰させない場合がある。
【0014】
時間ホッピングされた非周期的なパルス列では、個々の各パルスは、そのフレーム内で、M個の等確率の位置(equally probable positions)の1つになる可能性がある。この信号は、同じPRFを有するM−PPM信号と同じスペクトルfPRおよび無相関の変調データを有する。Mを増加すると、PPMのコンステレーションは拡大され、したがって、フレーム内のパルス位置の個数が増大する。これらの位置が、フレーム内で一様な間隔で配置されている場合、M・fPRの倍数でないすべてのスペクトル線は消滅する。
【0015】
N個のパルスをグループ化してN個のフレーム継続期間からなる1つのシンボルを作成する代わりに、図1に示すように、元のフレーム継続期間が、1つのサブフレーム102につき1つのパルスを有するN個のサブフレームに分割される。結果として、PRFは、N・fPRとなる。したがって、この非周期的なTHパルス列は、1つのフレームにつきN個のパルスから構成され、各パルスは、サブフレームの継続期間内でM個の位置を取ることができる。このパルス列のスペクトルは、PRF=N*fPRを有するM−PPM信号のものと同じである。その結果、M個のパルス位置が一様な間隔で配置されている場合に、スペクトル線は、M・N・fPRの間隔で配置される。Mが無限大になり、パルスの一様な分布と等価になると、すべてのスペクトル線は、無限間隔で発生し、したがって有効に消滅する。
【0016】
しかしながら、UWB信号の生成に使用できる実際的なパルス列を検討するには、いくつかの変更を行うことが必要となる。パルスが、各フレーム内で真に一様に分布している場合に、Mが増加すると、サブフレーム間の接合部で重なりが発生することがある。マージンまたはガード間隔は、これらの重なりを除去する。
【0017】
シンボルをPPMによって変調するために、追加マージンがフレーム間に導入される。しかしながら、マージンを導入することによって、各サブフレーム内のパルス位置の一様な分布が破壊され、これは、スペクトル線に影響を与える。さらに、THシーケンスは、時間の制限を受け、図2に示すような信号および望ましくないスペクトル線の周期性の原因となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、これらの望ましくないスペクトル線を除去できるシステムおよび方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
一般に、超広帯域(UWB)システムは、低デューティサイクルを有する短い継続期間のパルス列を用いて通信する。したがって、この無線信号のエネルギーは、広い周波数レンジにわたって非常にまばらに拡散される。既知のシステムのほとんどすべては、多元接続用に時間ホッピング(TH)拡散と、変調形式としてパルス位置変調(PPM)とを組み合わせて使用する。この組み合わせの結果、FCC要求に違反することになったり、電力の大幅な削減を必要とすることになるスペクトル線が発生し、これは、性能および信号のレンジを減少させる。
【0020】
本発明は、PPMおよびTHシーケンスを使用してデータを送信することによって引き起こされるスペクトル線を除去する方法を提供する。スペクトル線は、信号のパルスの極性をランダムに変更することによって除去される。以下では、用語「ランダム」は、当該技術分野で一般に使用される擬似ランダムを意味する。
【0021】
パルスの極性を変更することは、トランシーバの性能に悪影響を与えるものではない。その理由は、信号の極性が情報を運ぶのに使用されないからである。信号のパルスの極性をランダムに変更することによって、スペクトルの離散的な周波数成分が消滅する。さらに、この極性のランダム化は、信号のスペクトルを成形するのにも使用することができる。
【0022】
一方法は、時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する。まず、パルス列が生成される。次いで、これらのパルスが、シンボルに従って時間で変調される。それらのパルスを超広帯域信号として送信する前に、パルスの極性がランダムに反転される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
超広帯域(UWB)無線信号のスペクトルの離散的な周波数成分の問題を解決するために、本発明は、パルスの極性をランダムに反転する。その結果生じた、ランダムに反転された極性のパルスを有する信号は、FCC規則に準拠している。
【0024】
パルスの曲線をランダム化するのに、2相位相シフトキーイング(BPSK)を使用することができる。また、BPSKは、システムの複雑度も削減する。しかしながら、BPSKでは、チャネルの状況が、信号の極性を変更して、データを破壊する可能性がある。
【0025】
したがって、本発明は、情報を運ぶことなく、パルスの極性を反転して、信号のスペクトルを成形する。このように、変調信号のスペクトル特性を制御するためにゼロ平均情報シンボル(zero mean information symbol)を有することは不要である。極性の反転は、個々のパルスに加えて、シンボル、すなわち一まとまりにして考えられるシンボルを構成するパルスの組にも適用することができる。本発明によるこの変更の効果は、例えば、パルス位置変調(PPM)、および、UWBシステムで使用される時間ホッピング(TH)拡散等の他のディザリング技法によって引き起こされるスペクトル線を除去することである。
【0026】
このように、本発明による方法は、非等確率シンボル(non-equiprobable symbol)および非対蹠的変調(non-antipodal modulation)方式によって同時に引き起こされるスペクトル線の問題を解決する。さらに、信号の極性は、特に、UWB信号のスペクトルを成形するのに使用することができる。
【0027】
ランダムな極性反転
図3は、本発明に従って処理されるパルス列を含んだ信号301を示している。超広帯域無線通信の目的でパルス位置変調(PPM)および時間ホッピング(TH)拡散を行った後の送信信号301のスペクトルは、図2に示すような望ましくないスペクトル線を含む。
【0028】
図4は、パルスの極性が、スペクトル線を除去するために本発明に従ってランダムに反転された送信波形401を示している。
【0029】
パルス列のスペクトル密度の離散的な部分は、以下の式(2)によって与えられる。
【0030】
【数2】

【0031】
ここで、Mはシンボル数であり、Tはシンボル周期であり、SはI∈[0,M−1]のi番目のシンボルのパワースペクトル密度(PSD)であり、Pはi番目のシンボルの確率である。
【0032】
M個のシンボルSの極性をランダムに変更することによって、式(1)は、2*M個の対蹠的シンボル(antipodal symbol)から構成されるパルス列のスペクトル密度の離散的な部分として書き換えることができる。
【0033】
対蹠的な各対のシンボルは、確率P/2およびフーリエ変換Sおよび−Sを有する。その結果、スペクトル線は、以下の式(3)によって与えられるように消滅する。
【0034】
【数3】

【0035】
本発明の背後にある主要なアイデアを考慮することができるいくつかの極性反転の実施の形態が存在する。この実施の形態には、以下のものが含まれる。
【0036】
1つのシンボルにつき1つのパルス
パルス位置変調
パルス振幅変調
1つのシンボルにつき複数のパルス
パルス位置変調
シンボル継続期間内でのパルスのランダムな極性
シンボル間でのランダムな極性
シンボル継続期間におけるパルスの異なる極性からなる同一の組
パルス振幅変調
シンボル継続期間内でのパルスのランダムな極性
シンボル間でのランダムな極性
シンボル間でのシンボル継続期間におけるパルスの異なる極性からなる複数の同一の組
異なる変調方式
シンボル継続期間内でのパルスのランダムな極性
シンボル間でのランダムな極性
シンボル継続期間におけるパルスの異なる極性からなる同一の組
スペクトル成形用のランダムな極性
シンボルの部分構造のランダムな極性−デュアルパルス波形
【0037】
1つのシンボルにつき1つのパルス
上述したように、シンボル全体の極性のランダム化によって、パワースペクトル密度のスペクトル線が除去される。これらのシンボルは、特定の波形を有する。ここでは、単一のパルスがこの波形を構成する。変調信号のパワースペクトル密度は、そのパルスのパワースペクトル密度に依存する。
【0038】
パルス位置変調
図5は、2PPMによる一例のパルス列500を示している。この列は、以下のように時間でディザリングされたパルスによって構成される。このパルスは、その元の位置に論理0を符号化する。このパルスは、遅延されて、論理1を符号化する。
【0039】
2−PPMを使用してディザリングされたパルス列のパワースペクトル密度の離散的な部分は、以下の式(4)によって与えられる。
【0040】
【数4】

【0041】
図6は、この信号のスペクトルを示している。図7は、個々のパルスの極性をランダムに反転した後のこの信号を示している。シンボルの極性をランダムに変換した後のパワースペクトル密度の離散的な部分は、以下の式(5)によって与えられる。
【0042】
【数5】

【0043】
図8に示すように、このような方法で極性を反転することによって、すべての離散的なコンポーネント、すなわちスペクトル線は消滅し、スペクトルは連続的になる。
【0044】
図9は、本発明による、ディザリングされたUWB信号のスペクトル線を除去するシステムおよび方法900を示している。このシステムは、パルスジェネレータ910、変調器920、およびアンテナ931に直列に接続された反転器930を含む。生成パルスは、データシンボル940に従って、時間で、すなわちマルチユーザアクセスのための時間ホッピングシーケンスによって、かつ、変調のためのPPMによってディザリングされ(920)、その結果生成されたパルスの極性は、擬似乱数(PRN)950に従って反転される。
【0045】
パルス振幅変調
パルス振幅変調は、オン/オフキーイング(OOK)変調によって行われる。このOOK変調は、PAMの特別な場合である。図10に示すように、時間周期Tごとに、0はパルスによって表現され、1はパルスによって表現されない。
【0046】
OOK変調された信号のパワースペクトル密度の離散的な部分は、以下の式(6)によって与えられる。
【0047】
【数6】

【0048】
図11は、この信号のスペクトルを示している。
【0049】
図12は、シンボルの極性をランダムに変更した後に、パワースペクトル密度の離散的な部分が、以下の式(7)によって与えられるように除去されることを示している。
【0050】
【数7】

【0051】
図13は、この信号のスペクトルを示しており、図14は、この結果を達成する本発明によるシステムおよび方法を示している。
【0052】
1つのシンボルにつき複数のパルス
各シンボルの波形も、個々のパルスの組み合わせによって構成することができる。
【0053】
パルス位置変調
シンボル継続期間内でのパルスのランダムな極性
ここでは、シンボルは、N個のパルスの組み合わせである。シンボル内でも、シンボル間でも、パルスの極性をランダムかつ独立に変更することによって、スペクトル線が除去される。図15は、ランダムなパルスの極性を反転する前の信号1501および反転した後の信号1502を示している。
【0054】
シンボル間でのパルスのランダムな極性
ここでは、シンボルは、N個のパルスの組み合わせである。シンボル間で極性をランダムかつ独立に変更することによって、スペクトル線が除去される。図16は、極性反転前の信号1601および反転後の信号1602を示している。
【0055】
シンボル継続期間におけるパルスの異なる極性からなる同一の組
この場合、シンボルは、N個のパルスの組み合わせである。シンボル内のパルスの極性は、コンステレーションのM個のシンボルのそれぞれについてランダムに変更される。したがって、極性パターンは、コンステレーションのシンボルごとに影響を受ける。図17は、ランダムな極性反転前の信号1701および反転後の信号1702を示している。
【0056】
パルス振幅変調
ここでは、シンボルは、その振幅が変化するTHシーケンスによって構成される。
【0057】
シンボル継続期間内でのパルスのランダムな極性
シンボルは、N個のパルスの組み合わせである。図18に示すように、シンボル内でも、シンボル間でも、パルスの極性をランダムかつ独立に変更することによって、スペクトル線が除去される。
【0058】
シンボル間でのパルスのランダムな極性
シンボルは、N個のパルスの組み合わせである。図19に示すように、シンボル間で極性をランダムに変更することによって、スペクトル線が除去される。
【0059】
シンボル継続期間におけるパルスの異なる極性からなる同一の組
シンボルは、N個のパルスの組み合わせである。シンボル内のパルスの極性は、図20に示すように、コンステレーションのM個のシンボルのそれぞれについてランダムに変更される。したがって、極性パターンは、コンステレーションのシンボルごとに影響を受ける。
【0060】
異なる変調方式
ランダムな極性は、他の変調方式にも適用することができる。シンボルは、例えば、異なるTHシーケンスによって符号化することができる。m番目のシンボルは、n個のパルスの組み合わせである。
【0061】
シンボル継続期間内でのパルスのランダムな極性
図21に示すように、シンボル内で、かつ、シンボル間でパルスの極性をランダムかつ独立に変更することによって、スペクトル線が消滅する。
【0062】
シンボル間でのパルスのランダムな極性
図22に示すように、シンボル間で極性をランダムかつ独立に変更することによっても、スペクトル線が消滅する。
【0063】
シンボル継続期間におけるパルスの異なる極性からなる同一組
シンボル内のパルスの極性は、図23に示すように、コンステレーションのM個のシンボルのそれぞれについてランダムに変更することができる。したがって、極性パターンは、コンステレーションのシンボルごとに影響を受ける。
【0064】
スペクトル成形用のランダムな極性
上述したように、スペクトル線は、極性がシンボル間で変化すると消滅する。スペクトルの連続的な部分は、式(1)から導出することができる。極性が変化する前の信号のパワースペクトルは、次のようになる。
【0065】
【数8】

【0066】
極性が変化した後の信号のパワースペクトルは、次のようになる。
【0067】
【数9】

【0068】
シンボルsi+Mは、逆の極性を有するシンボルsとなる。したがって、0〜M−1のiについて、Si+M=−Sとなる。
【0069】
【数10】

【0070】
式(8)から、信号のスペクトルは、シンボルのスペクトルの総和によって定義されることは明らかである。例えば、シンボルが、同じ波形を有する場合、信号のスペクトル特性は、この波形のスペクトル特性と同一である。
【0071】
それは、例えば、PAM方式およびPPM方式の場合である。PPMの場合、同じ波形は時間が遅延され、PAMの場合、波形は、異なるシンボルを生成するために異なる振幅と関連付けられる。
【0072】
式(8)を考慮すると、シンボル間で極性をランダムに変更することによって、スペクトルを成形する効率的な方法が提供される。信号のスペクトル成形の作業は、波形の設計によって決定される。
【0073】
したがって、シンボルの波形は、信号全体のスペクトルを全面的に特徴付ける。この波形のスペクトルが零位(null)を含む場合、変調信号のパワースペクトル密度関数も、同じ零位を得る。
【0074】
例えば、4つのパルスのTHシーケンスがシンボルの波形を構成する。変調は2PPMである。したがって、このTHシーケンスのフーリエ変換は、信号全体のパワースペクトル密度を規定する。これら4つのパルスの位置または振幅に加えて、これら4つのパルスの極性も、そのスペクトルにおいて零位を生成するようスペクトルを成形するのに使用することができる。
【0075】
図24の例では、変調方式はPAMである。THシーケンスはシンボルを構成する。このTHシーケンスを構成するパルスの極性シーケンスは、その信号のスペクトル特性を変更する。さらに、極性は、シンボル間でランダムであり、図25に示すように、スペクトル線を除去する。
【0076】
シンボルの部分構造のランダムな極性
ここでは、シンボルの波形は、時間でディザリングされたいくつかの同一の部分波形の組み合わせである(PPM方式)。さらに、異なるパルス振幅変調(PAM)方式を適用することもできる。これらの部分構造の極性をランダムに変更することによって、部分構造の電力スペクトル密度は、シンボルのパワースペクトル密度と同一となり、したがって、信号全体のパワースペクトル密度と同一となる。
【0077】
このモードは、狭帯域システムとの干渉を低減するために、特定の周波数において零位でマルチユーザを検出するTHシーケンスの設計に使用することができる。
【0078】
図26に示す例では、部分波形は、逆の極性を有する2つのパルスをグループ化したものである。図27は、グループ化された2つのパルスをそれぞれ有する4つの部分波形から構成されたTHシーケンスを示している。図28に示すように、このTHシーケンスのパワースペクトル密度は、スペクトル線を有せず、零位を周期的に含む。1つは、802.11a標準規格との抵触を回避するための5GHz、すなわちノッチ2800にあるものである。
【0079】
したがって、ランダムな極性逆転は、スペクトル線を除去し、スペクトルの連続的な部分を成形し、マルチユーザ受信機の柔軟な設計を可能にする。この部分波形は、シンボルのスペクトル特性とは独立にTHシーケンスを生成するのに使用することができる。
【0080】
本発明を、好ましい実施の形態の例によって説明してきたが、本発明の精神および範囲内において、さまざまな他の適応および変更を行い得ることが理解されるべきである。したがって、本発明の真の精神および範囲内に入るこのようなすべての変形および変更をカバーすることが、添付した特許請求の範囲の目的である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に従って変更されるパルス列信号のタイミング図である。
【図2】従来技術のUWB信号のパワースペクトル密度(PSD)のグラフである。
【図3】変更前のパルス列のタイミング図である。
【図4】本発明による変更後のパルス列のタイミング図である。
【図5】1つのシンボルにつき1つのパルスを有するパルス列の図である。
【図6】変更されていない図5の信号の従来技術のPSDの図である。
【図7】ランダムに反転されたパルスの極性を有する図5のパルス列の図である。
【図8】本発明による図7の信号のPSDの図である。
【図9】本発明による、ランダムに反転されたパルス用システムのブロック図である。
【図10】変更前のパルス振幅変調によって生成されたパルス列の図である。
【図11】図10の信号のPSDの図である。
【図12】変更後のパルス振幅変調によって生成されたパルス列の図である。
【図13】図12の信号のPSDの図である。
【図14】図12の信号を生成するシステムのブロック図である。
【図15】本発明によるシンボル継続期間内のパルスの変更前および変更後のパルス列の図である。
【図16】本発明によるシンボル間の変更前および変更後のパルス列の図である。
【図17】本発明によるシンボル継続期間内の変更前および変更後のパルス列の図である。
【図18】シンボル継続期間内の変更前および変更後のパルス列の図である。
【図19】シンボル間の変更前および変更後のパルス列の図である。
【図20】シンボル継続期間内の変更前および変更後のパルス列の図である。
【図21】シンボル継続期間内の変更前および変更後のパルス列の図である。
【図22】シンボル間の変更前および変更後のパルス列の図である。
【図23】シンボル継続期間内の変更前および変更後のパルス列の図である。
【図24】シンボル継続期間内およびシンボル間の変更前および変更後のパルス列の図である。
【図25】変更後の図24の信号のPSDの図である。
【図26】逆の極性の2つのパルスを有する部分波形の図である。
【図27】4つの部分波形を有する時間ホッピングシーケンスの図である。
【図28】図27の信号のPSDの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス列を生成するステップと、
シンボルに従って時間で前記パルスを変調するステップと、
前記パルスを超広帯域信号として送信する前に前記パルスの極性をランダムに反転するステップと
を含む時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項2】
各シンボルは1つのパルスを含む
請求項1記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項3】
1つのシンボルにつき1つのパルスの変調は、パルス位置変調である
請求項2記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項4】
1つのシンボルにつき1つのパルスの変調は、振幅変調である
請求項2記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項5】
1つのシンボルにつき1つのパルスの変調は、振幅変調およびパルス位置変調の組み合わせである
請求項2記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項6】
前記パルス振幅変調は、オン/オフキーイングで行われ、時間周期ごとに、0はパルスによって表現され、1はパルスによって表現されない
請求項3記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項7】
各シンボルは、個々のパルスの組み合わせを含む
請求項1記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項8】
各シンボルのN個のパルスの組み合わせの極性は、シンボル間でランダムかつ独立に反転される
請求項7記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項9】
各シンボルの個々のパルスの極性は、各シンボル内でも、シンボル間でも、ランダムかつ独立に反転される
請求項7記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項10】
各シンボルの個々のパルスの極性は、各シンボル内ではランダムに反転され、シンボル間では同一に反転される
請求項7記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項11】
前記シンボルは、パルス位置変調によって変調される
請求項7記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項12】
前記シンボルは、振幅変調によって変調される
請求項7記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項13】
前記シンボルは、パルス位置変調および振幅変調の組み合わせによって変調される
請求項7記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項14】
前記パルスの組み合わせは、時間ホッピングシーケンスのパターンに従う
請求項7記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項15】
異なる時間ホッピングシーケンスが使用されて、コンステレーションの同じシンボルが符号化される
請求項14記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項16】
前記パルスの極性のランダムな反転によって、前記UWB(超広帯域)信号のスペクトルを所定の形状に成形するステップをさらに含む
請求項1記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項17】
前記変調は、パルス振幅変調である
請求項16記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項18】
前記変調は、パルス位置変調である
請求項16記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項19】
前記変調は、パルス振幅変調およびパルス位置変調の組み合わせである
請求項14記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項20】
前記パルスの極性のランダムな反転によって、前記UWB(超広帯域)信号のスペクトルを所定の形状に成形するステップをさらに含む
請求項7記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項21】
前記変調は、パルス振幅変調である
請求項20記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項22】
前記変調は、パルス位置変調である
請求項20記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項23】
前記変調は、パルス振幅変調およびパルス位置変調の組み合わせである
請求項20記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項24】
前記パルスの極性のランダムな反転によって、前記UWB(超広帯域)信号のスペクトルを所定の形状に成形するステップをさらに含む
請求項9記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項25】
前記パルスの極性のランダムな反転によって、前記UWB(超広帯域)信号のスペクトルを所定の形状に成形するステップをさらに含む
請求項14記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項26】
数組のパルスを部分波形にグループ化するステップと、
前記部分波形の極性をランダムに反転する手段とをさらに含む
請求項1記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項27】
前記部分波形の極性のランダムな反転によって、前記UWB(超広帯域)信号のスペクトルを所定の形状に成形するステップをさらに含む
請求項26記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項28】
数組のシンボルをグループ化するステップと、
前記数組のシンボルのうちの第1の組のシンボルの極性をランダムに反転する手段と、
前記第1の組のシンボルの極性に従って、前記数組のシンボルのうちの次の組の極性を反転する手段とをさらに含む
請求項2記載の時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去する方法。
【請求項29】
パルス列を生成する手段と、
シンボルに従って時間で前記パルスを変調する手段と、
前記パルスを超広帯域信号として送信する前に前記パルスの極性をランダムに反転する手段と
を備える時間ホッピング超広帯域信号のスペクトル線を除去するシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2006−517373(P2006−517373A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502663(P2006−502663)
【出願日】平成16年2月6日(2004.2.6)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001298
【国際公開番号】WO2004/071039
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】