説明

暖房パネル

【課題】暖房パネルに押しピンや釘などを繰り返して突き刺した場合でも、最初に明けられたピン穴を弾性樹脂フイルム層の弾性により復元させて収縮するようにし、後日打ち込まれたピンであってもアースされた金属部材との接触状態が常に良好に保たれ、従ってピンを介して感電しにくいようにした暖房パネルを提供することにある。
【解決手段】金属シート11の背面に弾性樹脂フイルム層12を一体に貼着した金属接地シート1を構成し、該金属接地シート1の金属シート11側を表面材2の裏面側に配設するとともに、該金属シート11を接地し、該弾性樹脂フイルム層12の裏面側に電熱ヒータ3を面状に設けて、弾性樹脂フイルム12層の弾性により押しピンや釘などとアースされた金属部材との接触状態保つことを特徴としてなる暖房パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、面状の電熱ヒータを用いた暖房パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電熱ヒータ等を面状に形成し、これをパネル裏面に装着した暖房パネルが採用されている。例えば、実用新案登録第2521677号公報には発熱床下地板が開示されている。この発熱床下地板の構成は、面状発熱体を配設しこれを可撓性金属シートと硬質金属シートからなる均熱板とで挟持したものである。そして、その金属シートをアースしたものである。この発熱床下地板の特徴の一つは、面状発熱体がその上下面を金属製部材で覆われているため、施工時誤って釘を打ち込んでも金属製部材がアースとして機能し、釘を介して感電することがなく安全であることを特徴としている。
【特許文献1】実用新案登録第2521677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載の技術においては、発熱床下地板の施工時に釘を打ち込んでも金属製部材がアースとして機能し、釘を介して感電することがない、という特徴を有するが、釘打ちに失敗し、同じ箇所に2度3度と釘を打ち込んだ場合、該釘穴が大きくなり、最後に打ち込んだ釘が、アースされた金属部材に十分に接触しない場合が発生し、該釘を介して感電する恐れがあった。
【0004】
本願の目的は、電熱ヒータの位置にて誤って押しピンや釘などを突き刺した場合でも、押しピン、釘などを伝ってきた電気を確実にアースし、感電を防止することができる暖房パネルを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る暖房パネルは、金属シートの背面に弾性樹脂フイルム層を一体に貼着した金属接地シートを構成し、該金属接地シートの金属シート側を表面材の裏面側に配設するとともに、該金属シートを接地し、該弾性樹脂フイルム層の裏面側に電熱ヒータを面状に設けてなることを特徴としている。
【0006】
又、本願請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の暖房パネルにおいて、前記電熱ヒータを複数に分離された形態に配設し、該複数の電熱ヒータにわたるように前記金属シートを、前記弾性樹脂フイルム層を介して配設したことを特徴としている。
【0007】
又、本願請求項3記載の発明では、上記請求項2記載の暖房パネルにおいて、前記金属シートを第一の金属シートと第二の金属シートとが積層され、相互に着接されたものとなし、該第一の金属シートを表面材の裏面側に配し、接地して前記複数の電熱ヒータにわたるように配設し、該第二の金属シートの背面に前記弾性樹脂フイルム層を一体に貼着して、該第二の金属シート及び弾性樹脂フイルム層を前記複数の電熱ヒータに対応するように複数に分離された形態となし、該複数の弾性樹脂フイルム層各々の裏面側に各電熱ヒータを設けることを特徴としている。
【0008】
又、本願請求項4記載の発明では、上記請求項3記載の暖房パネルにおいて、前記複数に分離された形態となる第二の金属シート、弾性樹脂フイルム層及び電熱ヒータを木桟材で区切られた区画内に各々収容し、該木桟材を前記第一の金属シートの背面に接着したことを特徴としている。
【0009】
又、本願請求項5記載の発明では、上記請求項3又は4記載の暖房パネルにおいて、前記第一の金属シートと第二の金属シートとは、相互に連結具により連結されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本願請求項1記載の発明に係る暖房パネルは、上記構成であり、特に、暖房パネルの表面材から釘、押しピン等のピンが刺し込まれた場合に備えて、アース機能をもたせた金属シートの背面に弾性樹脂フイルム層を一体に貼着した金属接地シートを構成したから、暖房パネルにピンが刺された場合、該ピンの進入によって金属シートとともに弾性樹脂フイルム層も同時に変形する。このとき、該弾性樹脂フイルム層の靭性により、ピンと金属シートとが十分に接触するまで、該弾性樹脂フイルム層が粘りをもって耐えると同時に、ピンが該金属シートを突き破った後は、弾性樹脂フイルム層の弾性により、金属シートがピンの進行方向と逆の方向に押し戻され、その結果金属シートがピンに十分に接触した状態で該ピンを抱着する。
【0011】
従って、該ピンが、万一、面状の電熱ヒータの充電部に接触した場合でも該ピンに流れた電流はアースされた金属シートを介して確実に大地に流れ、安全性が十分に確保される。 また、何らかの事情で該ピンを抜いた後は、該ピンを抜いた後の穴は、弾性樹脂フイルム層の弾性復元力により、弾性樹脂フイルム層及び金属シートの該ピンによって起こされた変形部がかなりの程度復元するのである。又、以前にピンを刺し込んだために生じたピン穴に偶然に或いは故意に新たなピンを刺し込んでも、該ピン穴は弾性樹脂フイルム層の復元力のお陰でかなり復元し小さくなっているので、該ピンと金属シートとの接触状態は依然として十分良好に維持され、万一、面状電熱ヒータの充電部にピンが接触した場合でも該ピンに流れた電流は金属シートを介して大地に流れ、室内側に突出したピンに触れても感電しにくいのである。
【0012】
又、本願請求項2記載の発明に係る暖房パネルは、電熱ヒータが複数に分離された形態で配設された場合において、該複数の電熱ヒータにわたるように金属シートを配設するため、該金属シートの一箇所をアース線で接続するだけでもアース機能をもたせることができる。
【0013】
又、本願請求項3記載の発明に係る暖房パネルは、第二の金属シート及び弾性樹脂フイルム層を複数の電熱ヒータに対応するように複数に分離された形態となし、該複数の弾性樹脂フイルム層の各々の裏面側に各電熱ヒータを設けているため、第一の金属シートの背面であって、第二の金属シート、弾性樹脂フイルム層及び電熱ヒータが配設された箇所以外の所定箇所に他の構成部材を設けることができる。
【0014】
又、本願請求項4記載の発明に係る暖房パネルは、複数に分離された形態となる第二の金属シート、弾性樹脂フイルム層及び電熱ヒータを木桟材で区切られた区画内に各々収容し、該木桟材を前記第一の金属シートの背面に接着するため、木材と金属材料との接着技術を用いることができ強固に木桟材と金属シートとを接着することができる。
【0015】
又、本願請求項5記載の発明に係る暖房パネルは、第一の金属シートと第二の金属シートとは、相互に連結具により連結されているため、第一の金属シートと第二の金属シートを確実に着接させることができ、確実にアース機能をもたせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本願発明の暖房パネルに係る実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る暖房パネルの部分断面図であって、例えばピンを暖房パネルに突き刺した後に、該ピン抜いたときの該ピン穴の状態を示す部分断面図、図2は、暖房パネルにピンを打ち込んだときの状態を示す部分断面図である。
【0017】
図において、1は金属接地シートであり、該金属接地シート1は金属シート11と弾性樹脂フイルム層12とで構成され、該金属シート11の背面に弾性樹脂フイルム層12を一体に形成したものである。金属シート11は25μmの厚さのアルミシートで構成されアース線5でアースされている。該金属シート11は均熱板の働きもする。弾性樹脂フイルム層12は実施例においてはポリエチレンで形成されその厚さは25μmである。
【0018】
該金属接地シート1はその金属シート11側が、本発明暖房パネルを構成する表面材2の裏面に貼着されている。表面材2は厚さ3mmの合板で構成されているが、MDF等の他の化粧板で構成してもよい。上記表面材2に貼着された金属接地シート1を構成する弾性樹脂フイルム12に、面状の電熱ヒータ3が貼着される。電熱ヒータ3の発熱体はジグザグ状の電気回路となるよう配設された線体又は金属箔等からなるが、合成樹脂に電導性の粒子を混在させたプラスチック面状発熱体で構成される場合もある。電熱ヒータ3はその表裏面を合成樹脂シート等の絶縁シート4、4で挟持被覆されており、150μm程度の厚さとなっており上記弾性樹脂フイルム12に貼着されている。
【0019】
本実施形態の暖房パネルは、上記構成で、例えば室内の壁パネルとして使用される。このとき表面材2には必要に応じて化粧シート(図示せず)が貼着される。上記本実施形態の暖房パネルに、釘、押しピン等のピン6が刺された場合、該暖房パネルは図2に示たような状態に変形する。即ち、表面材2から刺されたピン6は25μmの厚さのアルミシートで構成された金属シート11を突き破る際に、該金属シート11が変形するがその背面に貼着されたポリエチレンからなる弾性樹脂フイルム層12も同時に変形する。このとき該ポリエチレン層の靭性により、ピン6と25μmの厚さのアルミシートからなる金属シート11とが十分に接触するまで、該ポリエチレン層が粘りをもって耐えると同時に、ピン6が該金属接地シート1を突き破った後は、ポリエチレンからなる弾性樹脂フイルム層12の弾性により、金属シート11がピン6の進行方向と逆の方向に押し戻され、その結果金属シート11がピン6に十分に接触した状態で該ピン6を抱着するのである。
【0020】
従って、該ピン6が、万一、面状電熱ヒータ3の充電部に接触した場合でも該ピン6に流れた電流は金属シート11に容易に流れ、アース線5を介して大地に吸収される。従って、室内側に突出したピン6に触れても感電しにくいのである。勿論このような場合には、図外漏電遮断器で該電熱ヒータ3の電流を遮断するようにすることが好ましい。
【0021】
何らかの事情で該ピン6を抜いた場合、該ピン6を抜いた後の穴は、弾性樹脂フイルム層12を構成するポリエチレン層の弾性復元力により、弾性樹脂フイルム層12及び金属シート11の該ピン6によって起こされた変形部がかなりの程度復元するのである。従って、一度ピン6を抜いた後のピン穴61は相当程度縮小しており、再度ピン6を刺し込んでも、該ピン6は金属シート11との接触状態を十分に維持しながら、刺し進むため、万一、面状の電熱ヒータ3の充電部にピン6が接触した場合でも、該ピン6に流れた電流金属シート11、アース線5を介して大地に流れ、室内側に突出したピン6に触れても感電しにくいのである。
【0022】
以下、本願発明の暖房パネルに係る別の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、ここでは、上記の実施形態と相違する事項についてのみ説明し、その他の事項(構成、作用効果等)については、上記の実施形態と同様であるのでその説明を省略する。図3は本実施形態に係る暖房パネルの部分断面図である。
【0023】
図3に示されるように、本実施形態において、金属シート11は第一の金属シート11aと第二の金属シート11bからなり、第一の金属シート11aの表側は表面材2の裏面全面にわたって貼着されている。
【0024】
第一の金属シート11aの背面には、木桟材7が接着されており、木桟材7を接着配置することにより、第一の金属シート11aの背面に区画を構成している。木桟材7は大型の暖房パネルを構成する場合に暖房パネルの強度を確保するために設けられるものであり、また、表面材2の前方に設置される手すりやカウンターといった設置部材を固定、保持するために設けられるものである。
【0025】
木桟材7は第一の金属シート11aの背面に接着されるが、金属シート11の材質は金属材料であり、木桟材7の材質は木材であるので、金属材料と木材を接着させることとなる。金属材料と木材の接着技術は確立されており、金属材料と木材とを作業性よく接着することができる安価な接着剤を使用することができる。
【0026】
また、本実施形態において、電熱ヒータ3は複数個存在し、これらの電熱ヒータ3の形状は任意であり木桟材7で区切られた区画に合わせた形状とすることができる。それぞれの電熱ヒータ3の表裏面は電熱ヒータ3の形状に合わせて形成された合成樹脂シート等の絶縁シート4で挟持被覆されている。
【0027】
第二の金属シート11b及び弾性樹脂フイルム層12も複数存在する電熱ヒータ3の各々の形状に対応するように形成されている。第二の金属シート11bの背面に形状が対応する弾性樹脂フイルム層12が配設され、この弾性樹脂フイルム層12の背面に形状が対応する断熱ヒータ3が配設されている。
【0028】
この積層された第二の金属シート11b、弾性樹脂フイルム層12及び電熱ヒータ3は、第一の金属シート11aの背面側に、木桟材により区切られた区画内に、第二の金属シート11bが第一の金属シート11aに接するように着接される。この際、第一の金属シート11aと第二の金属シート11bとの間に、ハトメや導電性両面テープ等の連結具を設け、第一の金属シート11aと第二の金属シート11bとを確実に着接させる構成としてもよい。
【0029】
積層された第二の金属シート11b、弾性樹脂フイルム層12及び電熱ヒータ3は第一の金属シート11aの背面に設けられた区画内に収容させるように着接されるため、電熱ヒータ3の前方側には第一の金属シート11aが配設される構成となっている。また、第一の金属シート11aの任意の一箇所にはアース線5が接続されている。
【0030】
従って、本実施形態の暖房パネルは、第一の金属シート11aの背面に木桟材7を設けたため、大型の暖房パネルを構成する場合にも暖房パネルの強度を確保することができ、表面材2の前方に設置される手すりやカウンターといった設置部材を固定、保持することができる。
【0031】
また、第一の金属シート11aの背面に設けられた、木桟材7により構成された区画に合わせた形状で、第二の金属シート11b、弾性樹脂フイルム層12及び電熱ヒータ3を構成し、この区画内に収容することができる。
【0032】
また、電熱ヒータ3の前方側には第一の金属シート11aが配設される構成となっているため、第一の金属シート11aの任意の一箇所にはアース線5が接続することにより暖房パネル全体にアース機能をもたせることができる。
【0033】
また、第一の金属シート11aと第二の金属シート11bとの間に連結具を設けることにより、確実に第一の金属シート11aと第二の金属シート11bとを着接されることができる。
【0034】
次に、本願発明の暖房パネルに係る更に別の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、ここでは、上記の実施形態と相違する事項についてのみ説明し、その他の事項(構成、作用効果等)については、上記の実施形態と同様であるのでその説明を省略する。図4は本実施形態に係る暖房パネルの部分断面図である。
【0035】
図4に示されるように、本実施形態において、電熱ヒータ3は複数個存在し、それぞれの表裏面を合成樹脂シート等の絶縁シート4で挟持被覆されている。金属シート11と弾性樹脂フイルム層12は一体に貼着して構成されており、金属シート11側は表面材2の裏面全体にわたって貼着され、この金属シート11はアース線5によりアースされている。複数の電熱ヒータ3は弾性樹脂フイルム層12の背面内に収まるように配設される。この際、弾性樹脂フイルム層12の背面には木桟材を接着することにより区画が設けられており、この区画内に収まるように電熱ヒータ3は配設されることになる。
【0036】
弾性樹脂フイルム層12への木桟材の接着は、弾性樹脂フイルム層12の表面に対してコロナ放電やサンドブラスト等により処理を施すことによりなされる。また、他の接着方法としては接着剤を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る暖房パネルの部分断面図であって、例えばピンを暖房パネルに突き刺した後に、該ピンを抜いたときの該釘穴の状態を示す部分断面図。
【図2】本発明に係る暖房パネルの部分断面図であって、ピンを暖房パネルに突き刺した状態を示す部分断面図。
【図3】本発明に係る暖房パネルの部分断面図。
【図4】本発明に係る暖房パネルの部分断面図。
【符号の説明】
【0038】
1 金属接地シート
11 金属シート
12 弾性樹脂フイルム層
2 暖房パネルの表面材
3 面状の電熱ヒータ
4 絶縁シート
5 アース線
6 ピン
61 ピン穴
7 木桟材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属シートの背面に弾性樹脂フイルム層を一体に貼着した金属接地シートを構成し、該金属接地シートの金属シート側を表面材の裏面側に配設するとともに、該金属シートを接地し、該弾性樹脂フイルム層の裏面側に電熱ヒータを面状に設けてなる暖房パネル。
【請求項2】
前記電熱ヒータを複数に分離された形態に配設し、該複数の電熱ヒータにわたるように前記金属シートを、前記弾性樹脂フイルム層を介して配設したことを特徴とする請求項1記載の暖房パネル。
【請求項3】
前記金属シートを第一の金属シートと第二の金属シートとが積層され、相互に着接されたものとなし、該第一の金属シートを表面材の裏面側に配し、接地して前記複数の電熱ヒータにわたるように配設し、該第二の金属シートの背面に前記弾性樹脂フイルム層を一体に貼着して、該第二の金属シート及び弾性樹脂フイルム層を前記複数の電熱ヒータに対応するように複数に分離された形態となし、該複数の弾性樹脂フイルム層各々の裏面側に各電熱ヒータを設けたことを特徴とする請求項2記載の暖房パネル。
【請求項4】
前記複数に分離された形態となる第二の金属シート、弾性樹脂フイルム層及び電熱ヒータを木桟材で区切られた区画内に各々収容し、該木桟材を前記第一の金属シートの背面に接着したことを特徴とする請求項3記載の暖房パネル。
【請求項5】
前記第一の金属シートと第二の金属シートとは、相互に連結具により連結されていることを特徴とする請求項3又は4記載の暖房パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−101610(P2010−101610A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298088(P2008−298088)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】