説明

暖房便座およびそれを用いたトイレ装置

【課題】省エネルギーでかつ快適に使用できる便座暖房を実現する。
【解決手段】上枠体24と下枠体27とで構成され、内部に空洞部28を有する便座22と、空洞部28に設けたランプヒーター30と、このランプヒーターに対向して下枠体27側に設けた輻射反射板29とを備え、少なくとも上枠体24の着座部25は輻射エネルギー透過性の材料からなる透過体からなり、上枠体24にあって着座部25の外面に輻射吸収層40を設けた構成とすることにより、短時間で着座部25を使用温度に均一に加熱するので、非常に省エネルギーで快適に使用しうる暖房便座を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は輻射エネルギーを利用することにより短時間で便座を加熱することができる暖房便座およびそれを用いたトイレ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の暖房便座では、図10に示すように、点線で示す便器の上に載せて使用する輪状の便座1の空洞部2に設けられた輻射反射板3は、その内外端部の全周に上方への折り曲げ部3aを有しており、その折り曲げ部3aにより輻射型発熱体4からの輻射エネルギーが点線矢印で示すように偏向されるので、輻射型発熱体4から離れている便座1の上部1aの外周縁部および内周縁部の輻射エネルギー密度を上げるように作用し、便座1の上部1aへの輻射エネルギー分布の均一化を図る構成をしている(例えば、特許文献1参照)。図中、5は輻射吸収層である。
【特許文献1】特開2000−210230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般にトイレの使用者が、トイレに入室してから着衣を下ろして便座1に着座するまでの極めて短時間に便座1を通常使用時の暖房温度に昇温させるような場合には、数秒程度で便座1を使用可能な温度に昇温する必要があり、効率的な加熱を行う必要があった。
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、使用者が着座時に接触する便座1の上部1aの範囲外である外側および内側の側面部までにも輻射吸収層5が設けられていたため、着座部以外の必要な範囲外も加熱することとなり、短時間で必要な箇所を暖房するには非効率的となり、効率的な加熱を行う必要があった。
【0005】
上記従来の課題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、便座の必要とされる範囲を効率的に加熱して、非常に省エネルギーで快適に使用しうる暖房便座およびそれを用いたトイレ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は内部に空洞部を形成し、使用者が着座する着座部を有する便座と、前記便座の空洞部に設けた輻射型発熱体と、前記輻射型発熱体に対向して設け、前記輻射型発熱体の輻射エネルギーを前記着座部側へ反射する輻射反射板とを備え、前記着座部は輻射エネルギー透過性の透過体で形成し、かつ前記便座に着座した人体が接する着座部の外面に輻射吸収層を設けた構成としたものである。
【0007】
これによって輻射型発熱体から発せられた輻射エネルギーを輻射吸収層で吸収して熱に変換し必要とされる範囲である着座部を集中的に加熱することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の暖房便座は、着座部を集中的に加熱することができ、便座の必要とされる範囲を効率的に加熱する省エネルギーで快適な暖房便座を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、内部に空洞部を形成し、使用者が着座する着座部を有する便座と、前記便座の空洞部に設けた輻射型発熱体と、前記輻射型発熱体に対向して設け、前記輻射型発熱体の輻射エネルギーを前記着座部側へ反射する輻射反射板とを備え、前記着座部は輻射
エネルギー透過性の透過体で形成し、かつ前記便座に着座した人体が接する着座部の外面に輻射吸収層を設けた構成とすることにより、輻射型発熱体から発せられた輻射エネルギーを輻射吸収層で吸収して熱に変換し、着座部を集中的に加熱することができるので、便座を極めて短時間で暖房し効率的な加熱とて省エネルギーとすることができる。
【0010】
第2の発明は、特に第1の発明の便座を上枠体と下枠体を結合して形成し、前記上枠体を、輻射エネルギー透過率の異なる複数の部材で構成とすることにより、例えば、着座部を相対的に輻射エネルギー透過率の高い部材で構成し、他の部位を輻射エネルギー透過率の低い部材で構成することによって、着座部以外の加熱を抑制し着座部を集中して短時間で加熱することが可能になる。
【0011】
第3の発明は、特に第1または第2の発明の便座の輻射吸収層を、着座部の部位によって輻射吸収率が異なるように設ける構成とすることにより、例えば、輻射発熱体との位置関係において、速く暖めたい部位(輻射発熱体より遠い部位)、暖めない方がよい部位(輻射発熱体に近い部位)などに対して輻射吸収層の設け方を操作して輻射吸収を不均一にすることが可能になり、着座部の全体を効率よく均一に加温することが可能になる。
【0012】
第4の発明は、特に第2の発明または第3の発明の便座における上枠体の内面の一部に、反射層を設けた構成とすることにより、例えば、暖めなくてもよい部位では輻射エネルギーを反射させて、その部位を加熱しないようにして、反射された輻射エネルギーを必要とする着座部に収集することが可能になり、着座部を効果的に加熱することが可能になる。
【0013】
第5の発明は、特に第1から第4の発明のいずれか1つの発明の輻射反射板を、輻射エネルギーを着座部へ反射するように端面を上方に屈曲させた構成とすることにより、便座の下方へ放射される輻射エネルギーを反射させて着座部へ収集することにより、着座部を効率よく加温することができる。
【0014】
第6の発明は、特に第1から第4の発明のいずれか1つの発明の輻射反射板において、その断面を略放物線形状とし、輻射型発熱体の断面中心を放物線の焦点近傍に位置させる構成とすることにより、輻射型発熱体からの輻射エネルギーは全て着座部へ平均的に反射させることが可能となり、着座部を効率よく加温することができる。
【0015】
第7の発明は、特に第1から第6の発明のいずれか1つの発明の便座の着座部表面には塗装等による表面化粧層を形成した構成とすることにより、意匠性の向上はもちろん、輻射吸収層を保護することができる。
【0016】
第8の発明は、特に第1から第7の発明のいずれか1つの発明に記載の暖房便座を備えたトイレ装置であり、着座部をすばやく暖房できるので、消費電力を大幅に削減するとともに、長期間にわたり快適に使用できるトイレ装置を得ることができる。
【0017】
本発明の目的は、第1の発明から第8の発明を実施の形態の要部とすることにより達成できるので、各請求項に対応する実施の形態の詳細を、以下に図面を参照しながら説明し、本発明を実施するための最良の形態の説明とする。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、本実施の形態の説明において、同一構成並びに作用効果を奏するところには同一符号を付して重複した説明を行わないものとする。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における暖房便座の要部を断面した概略構成図で、図2は同暖房便座を便器に搭載したトイレ装置の斜視図で、図3は同暖房便座の上枠体を取り外して示した平面図で、図4は同暖房便座の分解斜視図で、図5は同暖房便座の着座部の要
部断面図である。
【0018】
図1から図5において、用便後の肛門およびビデを洗う温水洗浄機能付きの暖房便座は、トイレ装置の便器20の後端部に横長の本体21が取り付けられており、この本体21内には温水洗浄機能の一部が内装され、かつ便器20上に載せられた輪状の便座22および便蓋23が回動自在に設けられている。また、本体21の袖部にはトイレ室の人体の有無を検知する人体検知センサー26が内蔵されている。
【0019】
輪状の便座22は、図1に示すように断面が皿状の合成樹脂製の下枠体27の上縁に、使用者がお尻を載せる、少なくとも透明プロピレン樹脂で形成された着座部25を含む断面が逆皿状の上枠体24を、シール材(図示せず)を介して固定結合して形成し、その内部には水滴等の浸入を阻止できる防滴シールされた空洞部28を有する構造となっている。なお、着座部24は透明プロピレン樹脂に限ったものではなく、透明ポリエチレン樹脂などの透明性のある合成樹脂であれば、本発明の目的を達成できる。
【0020】
空洞部28の内部には、トイレ装置を使用する使用者が腰掛ける便座22の着座部25に対向して、アルミ板を鏡面仕上げした輻射反射板29(反射体ともいう)と、便座22の輪状により、左右に配置されることになる着座部25に対向して複数の輻射型発熱体であるU字状に折り曲げて配置することで2本になるランプヒーター30とが設けられている。
【0021】
輻射反射板29は、図1に示すように、その内外端部の全周に上方への折り曲げ部29aを有しており、その折り曲げ部29aによりランプヒーター30からの輻射エネルギーが点線矢印で示すように偏向されるので、ランプヒーター30から離れている着座部25の外周縁部および内周縁部の輻射密度を上げるように作用し、着座部25への輻射熱分布の均一化を図っている。この折り曲げ部29aの角度は30°〜60°が好適であり、30°以下の場合は便座22の断面に対し周縁部の温度が高くなり、60°以上の場合は中央付近の温度が高くなる傾向を示す。
【0022】
ランプヒーター30の近傍には、ランプヒーター30と電気的に直列接続されたサーモスタット31が設けられ、万一の不安全事態に対して通電を遮断して便座22の着座部25の温度過昇を防止するよう作用する。なお、輻射反射板29は、軽量にするためにアルミ板にしたが、ステンレス板やメッキ鋼板などを用いてもよい。
【0023】
ランプヒーター30は、ガラス管33の内部にタングステンからなるフィラメント34およびアルゴンなどの不活性ガス35に微量のハロゲンガスを封入して構成されており、フィラメント34の発熱に伴ってハロゲン化タングステンを形成するハロゲンサイクル反応を繰り返すことにより、フィラメント34の消耗を防止するよう作用している。この作用により熱容量の非常に小さいフィラメント34を熱源とすることができ、輻射エネルギーの極めて急峻な立ち上がりを行わせることができる。
【0024】
つまり、ランプヒーター30は、使用者がトイレ室に入室し、衣服を下ろし、お尻を便座22の着座部25に着座するまでの数秒間で、便座22の着座部25を適温まで高速に昇温させることができる輻射型発熱体である。なお、ランプヒーター30は、要求される特性の度合いにより必ずしもハロゲンランプヒーターである必要はない。また、ガラス管33は3500nm以上の波長はほとんど吸収してしまうので、輻射エネルギーで効果的に着座部25を加熱するために、発光波長の分光分布のピークが少なくとも3500nm以下であるランプヒーターを用いている。
【0025】
これを実現するために、ランプヒーター30のフィラメント34の色温度が800K以
上となるように設定している。このランプヒーター30は、板バネ材で形成したランプヒーター固定具36により輻射反射板29に固定され、輻射反射板29は樹脂製の下枠体27のボス37にビスで固定されている。
【0026】
図5に、便座22における着座部25の一部を拡大断面で示し、図6には同じく着座部25を有する上枠体24を断面を示した。図5、図6において、便座22の上枠体24にあって、必要とされる範囲を集中的に加熱するため、便座22に着座した人体が接する着座部25とその近傍の外面にのみ、ランプヒーター30から照射され上枠体24を透過した輻射エネルギーが吸収されやすいように黒色塗装した輻射吸収層40が形成され、その表面には、外観効果のために塗装した表面層である表面化粧層43が形成されている。
【0027】
また、輻射吸収層40の色について、各種色について確認した結果、黒色が最も吸熱効率が良く、着座部25の昇温速度を速くすることができるという結果が得られた。なお、昇温速度にこだわらず、実用になればよいという観点であれば、灰色や赤色、青色などでも、昇温は可能であり、なんら問題はない。
【0028】
便座22を構成する上枠体24は透明ポリプロピレン樹脂材料を平均厚み2.5mmにて成形することにより、輻射熱透過率を70%以上に設定するとともに、その剛性から便座22の構造矩体として機能している。また、形成されている輻射吸収層40の厚みは0.1mm、表面化粧層44の厚みは0.2mmであり、輻射吸収層40は透明ポリプロピレン樹脂材料を透過した光の輻射エネルギーを完全に吸収し、また熱容量が非常に小さいので、瞬時に昇温して必要とされる範囲である着座部25とその近傍の部分を集中的に暖房することができる。
【0029】
また、図6に示すように上枠体24の着座部25とその近傍の外面に設けた輻射吸収層40を、人体が着座して接する、その載置位置によって輻射吸収率が異なる構成とすることにより、着座部25の全体の温度分布を均一に昇温させることができる。
【0030】
すなわち、図6において上枠体24のランプヒーター30から遠い着座部25の一部である外側と内側である外周部分の領域Aの外面に輻射吸収率の高い黒色の塗装を施して輻射吸収層40を形成し、また領域Aに囲まれた領域Bで示す上枠体24のランプヒーター30に近接している真上に相当する箇所を、灰色や白色などの輻射吸収率の低い塗装を施し、輻射吸収率の低い輻射吸収層40bを形成することによって、ランプヒーター30が照射する輻射エネルギーは距離が近いほど強度は強くなるので、輻射エネルギー強度が強くなる近接している領域Bの昇温速度を抑制することにより、着座部25の全体の昇温を均一に行うことができる。
【0031】
さらに、図6に示すように、着座時に人体と触れる可能性のない上枠体24の領域C(輪状の上枠体24の外側面と内側面)の部分の内面にアルミニウムなどの金属を含んだ塗料により反射層42を形成することにより、さらに着座部25の昇温速度を速くすることができる。
【0032】
すなわち、反射層42を設けることにより、図中の矢印で示すように、着座部25の以外の加熱する必要の無い箇所が加熱されないようにして、上枠体24内面に到達した輻射エネルギーを反射層42により反射し、さらに輻射反射板29で反射して着座部25外面の輻射吸収層40に輻射エネルギーを到達させることにより、加熱が必要な着座部25とその近傍に輻射エネルギーを効率的に供給することができ、着座部25をより速く集中的に効率的に昇温することができる。
【0033】
また便座22を構成する下枠体27には、その内面に輻射反射板29が取り付けられ、
その輻射反射板29にランプヒーター30およびランプヒーター30と直列接続したサーモスタット31が取り付けられている。また、下枠体27の上部には上枠体24が取り付けられ、上枠体25の着座部25の温度を検知するために着座部25の内側表面に便座温度検知手段であるサーミスタ43が取り付けられている。また便座22は、その回動軸44に電極45が形成され、本体21の軸受け部(図示せず)とともに便座位置検知手段46を構成し、便座22が起立状態にあるか、着座して使用できる便器20上に略水平の使用位置にあるかを検出するようになっている。
【0034】
本体21には、室温検知手段としての室温サーミスタ47の検知信号を取り込んでランプヒーター30の温度制御を行い、かつ便座22のランプヒーター30に通電することにより昇温を開始した時点からの経過時間をカウントするタイマー部48を有するマイクロコンピュータを主体とする制御部49が設けられている。そして、制御部49は人の入室を検知する人体検知センサー26や着座検知手段38と便座位置検知手段46の信号を取り込んでランプヒーター30への通電の開始と停止の制御と、サーミスタ43、室温サーミスタ47からの信号を取り込んで採暖面である着座部25の温度が適温である所定の温度になるようランプヒーター30の温度制御が行えるようになっている。
【0035】
図7において、サーモスタット31はバイメタル50がランプヒーター30の輻射エネルギーを受光するように空洞部28内に露出させた構成である。また、バイメタル50の受光表面には輻射吸収材51として耐熱性の黒色塗料を塗布している。そして、サーモスタット31は輻射吸収材51により輻射型発熱体からバイメタル50に向けて輻射された熱を効率よく吸収し、より速やかにバイメタルの温度を上げるように構成している。
【0036】
上記実施の形態において、使用者がトイレに入室した場合、人体検知センサー26が入室を検知し、その信号が制御部49に送られる。このとき、便座位置検知手段46の信号により便座22が略水平の使用位置にあるのを確認すると、制御部49はランプヒーター30に通電を開始する。この初期通電により投入エネルギーは瞬時に輻射エネルギーに変換され、フィラメント34からガラス管33および輻射反射板29を経て便座22の着座部25の方向に放射される。
【0037】
さらに、ランプヒーター30の輻射エネルギーは輻射吸収層40および着座部25を昇温する。このように本実施の形態においては、使用者がトイレに入室すると、ランプヒーター30に通電し、便座22の着座部25の採暖面をほぼ瞬時に加温することができ、かつ制御部49の故障などによる万一の不安全事態に対しても、ランプヒーター30の輻射エネルギーをバイメタル50が受光する高速応答のサーモスタット31によりランプヒーター30の通電を遮断できるので、従来一般的に使用されている暖房便座のように常時通電保温して放熱ロスが大きいものと違って、放熱ロスがほとんどなく極めて省エネ型でかつ安全な暖房便座を実現することが可能である。
【0038】
また、制御部49は、通電開始時のサーミスタ43および室温サーミスタ47の信号をもとに、両者の温度差やそれぞれの温度から演算を行い、あらかじめ設定・記憶されている初期通電の通電制限時間の最適値を選択し、タイマー部48でカウントしている経過時間が通電制限時間に到達すると通電量を低減または零にし、その後サーミスタ43の信号をもとに便座22の着座部25が適温になるよう通電量を制御するので、便座22の使用が快適であり、さらにサーミスタ43および室温サーミスタ47の信号をもとに負荷量に合わせて輻射エネルギーの投入量を制御するので、より精度良く安全に適温まで加熱することができる。
【0039】
また、初期通電時間制御を優先的に行うことで通電制限時間後は通電量を低減し昇温速度を減ずるので、たとえ便座温度検知手段の応答速度が遅くても安全に便座を加温するこ
とができ、また安価な便座温度検知手段を使用することもできる。通常、一般的なヒーターでは、印加電圧を低減させて温度を制御するものが多いが、ランプヒーター30はフィラメント34の発熱に伴ってハロゲン化タングステンを形成するハロゲンサイクル反応を繰り返すことにより、フィラメント34の消耗を防止しているため、ガラス管の温度が200℃以下になるとハロゲンサイクルが不調となる。従って、ランプヒーター30で着座部25を適温にするためには、ハロゲンサイクルが有効な出力範囲で通電サイクルを変化させて行う。
【0040】
一方、便座22が起立状態にあったり、男子使用者がトイレ室に入室後小用のために便座22を起立状態に立てた時は、便座位置検知手段46の信号をもとに制御部49がランプヒーター30への通電を停止するか、通電量を絞る。これにより、無駄に便座22を加温することを低減でき、さらに省エネを図ることができるとともに、通電状態で、かつフィラメント34の張力方向である長さ方向に重力がかかって断線に至る寿命を短くすることを防止できる。
【0041】
また、使用者が目的に合わせて便座22を起立状態と略水平状態の倒立に開閉しても、弾性材である板バネ材のランプヒーター固定具36の衝撃を緩和することにより、ガラス管やフィラメントの破損を防ぐことができる。次に、使用者が排便のために着座すると、着座検知手段38の信号によりランプヒーター30への通電量を零または便座温度が過昇しないところまで、通電量を変化させて制御する。これにより、使用中に便座温度が過昇することなく、火傷等が生じる心配なく安全に使用できる。
【0042】
特に、暖房便座はランプヒーターを内蔵した便座に直接皮膚を接触させて着座するため、安全に対しては十分な配慮が必要である。通常の使用状態では、上述のように安全に快適に使用できるが、万一何らかの原因でマイコン(図示せず)等、制御部49に不具合が生じ、ランプヒーター30への通電が継続して行われた場合などにも安全に動作することが必要である。
【0043】
サーモスタット31は通常、バイメタルが金属製のキャップに内包されている構成のものが使用される。この構成ではまずキャップが加熱され、バイメタルの加熱はキャップからの輻射によって行われるため、バイメタルが所定の温度に達するまで時間を要するので、短時間で便座22の温度が変化するような場合には回路の遮断に遅れが生じる場合があった。
【0044】
然るに本実施の形態では、それを解決するために、サーモスタット31はバイメタル50を露出し、バイメタル50の表面に輻射吸収材51として耐熱性の黒色塗料を塗布している。
【0045】
従って、バイメタル50がランプヒーター30の輻射エネルギーを直接受光するので、ランプヒーター30からの輻射エネルギーで直接、バイメタル50が加熱されるのに加えて、バイメタル50表面に輻射吸収材51として耐熱性の黒色塗料を施しているので、ランプヒーター30からバイメタル50へ到達する輻射熱の殆どがバイメタル50に吸収され便座22の温度の急激な変動にも迅速に追従し、サーモスタット31はランプヒーター30と直列に電気接続されているので、温度過昇の際にはランプヒーター30の通電を遮断することができる。
【0046】
また、サーモスタット31はバイメタル50がランプヒーター30の輻射エネルギーを受光するようにキャップ52は透明ガラスにしてある。なお、透明ガラスのキャップ52を設けたことにより、サーモスタット31の内部に水滴やほこりが侵入しない防滴あるいは防水タイプにすることができ、万が一、空洞部28が浸水した場合でもサーモスタット
31の通電部への浸水を防止でき、電気絶縁を維持できるため感電を防止することができる。
【0047】
なお、キャップ52の透明ガラスは、石英ガラスを用いることでランプヒーター30から放射される輻射エネルギーの透過特性が優れ、より高速応答にすることができ、遮断安全性を高めることができる。もちろん、必要の度合いによりその他のガラスでも実用になることはいうまでもない。また、透明ガラス53の板圧は厚くしすぎると透過性能が低下することから板厚1.5mm以下がよく好ましくは1.2mm以下が望ましい。
【0048】
また本実施の形態では、バイメタル50の温度を早く上昇させることができれば、サーモスタット31の誤動作も防止することができる。すなわち、バイメタル50の温度を早く上昇させることができれば、サーモスタット31のオフ(ランプヒーター30の通電回路を開く)動作温度を、便座22の通常使用温度よりも高く設定することができるので、通常使用時にサーモスタット31が作動して便座の暖房機能が使用できなくなる危険性を回避できる。
【0049】
また本実施の形態では、図3に示すように前側のランプヒーター30および後ろ側のランプヒーター30bは便座22の前後に配置して複数本数設置し、各々のランプヒーター30、30bに対向してサーモスタット31、31bを設け、各々のサーモスタット31、31bは電気的に直列に接続している。なお、復帰型のサーモスタット31、31bは、やや低い温度で遮断作動し、非復帰型のサーモスタット32、32bは復帰型のサーモスタット31、31bより高い温度で遮断作動する作動温度にすることによって、より高い多重安全性および長期間、安全かつ快適に使用することができる。
【0050】
すなわち、各々のランプヒーター30、30bにサーモスタット31、31bを直列に接続し、更にこれらを直列接続してランプヒーター30、30bの通電回路を構成することで、どちらかのランプヒーター30、30bに異常が生じた場合にサーモスタット31、31bでランプヒーター30、30bの通電回路を遮断するため、両方のランプヒーター30、30bへの通電を安全に停止する。
【0051】
そして、サーモスタット31、31bはオフ動作温度が異なるものを用いているので、万一、一方のサーモスタット31に不具合が生じ、ランプヒーター30、30bの通電回路を遮断できない状態になった場合でも、もう一方のサーモスタット31bでランプヒーター30、30bの通電回路を遮断するので、安全である。
【0052】
また、ランプヒーター30、30bは複数本に分割しているので、図9に示す従来の輪状の便座2において、輪状の1本のランプヒーター4を便座2の空洞部28の略全体に配置したことにより、便座2の撓みとランプヒーター4の設置誤差等により直接、ランプヒーター4に応力がかかる問題が解消され、便座22の撓み等によるランプヒーター30の破損の危険を解消することができる。
【0053】
なお、本実施の形態で、輻射吸収層40を設けた部分は便座22の上枠体24の着座部25とその近傍の外面として説明したが、少なくとも人体と接する部分である着座部25だけでも良いものであり、要は所期の目的を達成できる範囲であれば輻射吸収層40を設ける範囲が、この実施の形態に限定されるものではない。
【0054】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2における暖房便座の要部断面図である、本実施の形態は、実施の形態1の発明と基本的な構成は同じで、異なるのは上枠体24を熱伝導率の異なる複数の部材から構成したものである。
【0055】
図8において、着座部25は透明プロピレン樹脂で、着座部25の以外の上枠体25aである上枠体25の外側と内側の側面部分は金属(アルミ材)で形成してある。これにより、着座部25とその近傍の透明プロピレン樹脂は輻射エネルギーにより加熱されるように作用するが、着座部25とその近傍以外の上枠体25a(上枠体24の外側と内側の側面部分)は金属で形成されているため、輻射エネルギーを透過させない。
【0056】
つまり、ランプヒーター30で直接加熱する範囲を必要最小限にして、加熱すべき部分の全体の熱容量を小さくすることにより、より少ない電力でさらに速く瞬間的に着座部25とその近傍を昇温することができるようになり、さらに省電力にできる。このように便座22の上枠体24の部材を輻射エネルギー透過率の異なる複数の部材で構成することで、暖める必要がない部分に輻射エネルギーを奪われることを抑制でき、熱のロスを少なくすることができる。
【0057】
また、着座部25以外の枠体25aに熱伝導率の高いアルミ材を用いているため、加熱された着座部25の熱がアルミ材に奪われるので、着座部以外も加温される。そのため、仮に使用者が着座時に着座部以外に触れたとしても、着座部と着座部以外との温度差は小さいため、使用者に不快感を与えることがない。
【0058】
さらに、図9の実施例では輻射反射板29は、その内外端部の全周に上方への折り曲げ部29bを有しているが、この折り曲げ部29bは、上枠体24の透明プロピレン樹脂の着座部25と金属製の上枠体25aの境界付近まで伸びている。この構成により、ランプヒーター30から発せられる輻射エネルギーが金属製の上枠体24に到達するのを防止し、反射光を効率よく着座部25に到達させられるので、加熱のロスが無く、速やかに着座部25の温度を上昇させることができる。
【0059】
(実施の形態3)
図9は本発明の実施の形態3における暖房便座の要部断面図である。本実施の形態は、実施の形態2の発明と基本的な構成は同じで、異なるのは輻射反射板29の改良にかかわる。図9において、輻射反射板29はその断面形状を略放物線形状とし、ランプヒーター30の断面中心(すなわち、フィラメント34)を放物線の焦点に相当する位置に配置している。
【0060】
この構成により、ランプヒーター30から発せられた輻射エネルギーは反射板29で反射されると、反射光の軌跡はすべて並行となり、着座部25を均一に加熱することができる(輻射エネルギーの反射の軌跡の概念を矢印で示す)。したがって、人がトイレに入室してから便座22に着座するまでの数秒という極めて短時間で着座部25を均一に加熱することができ、安全で快適に使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明の暖房便座は、輻射型発熱体からの輻射エネルギーで効率的に着座部を加熱しで速やかに着座部を加熱することができるので、使用者が着座する機器の暖房技術として適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態1における暖房便座の要部を断面した概略構成図
【図2】同実施の形態1における暖房便座を便器に搭載したトイレ装置の斜視図
【図3】同実施の形態1における暖房便座の上枠体を取り外した平面図
【図4】同実施の形態1における暖房便座の分解斜視図
【図5】同実施の形態1における暖房便座の着座部の要部拡大断面図
【図6】同実施の形態1における暖房便座の断面図
【図7】同実施の形態1における暖房便座のサーモスタット部分の拡大図
【図8】同実施の形態2における暖房便座の要部断面図
【図9】同実施の形態3における暖房便座の要部断面図
【図10】従来の暖房便座の要部断面図
【符号の説明】
【0063】
22 便座
24 上枠体
25 着座部
25a 上枠体24の外側と内側の側面部分
27 下枠体
28 空洞部
29 輻射反射板
30 ランプヒーター(輻射型発熱体)
40 輻射吸収層
42 反射層
43 表面化粧層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空洞部を形成し、使用者が着座する着座部を有する便座と、前記便座の空洞部に設けた輻射型発熱体と、前記輻射型発熱体に対向して設け、前記輻射型発熱体の輻射エネルギーを前記着座部側へ反射する輻射反射板とを備え、前記着座部は輻射エネルギー透過性の透過体で形成し、かつ前記便座に着座した人体が接する着座部の外面に輻射吸収層を設けた暖房便座。
【請求項2】
便座は上枠体と下枠体を結合して形成し、前記上枠体は、輻射エネルギー透過率の異なる複数の部材からなる請求項1記載の暖房便座。
【請求項3】
輻射吸収層は着座部の部位により輻射吸収率が異なるように設けた請求項1または2記載の暖房便座。
【請求項4】
上枠体の内面の一部に、反射層を設けた請求項2または請求項3記載の暖房便座。
【請求項5】
輻射反射板は、輻射エネルギーを着座部へ反射するように端面を上方に屈曲させて設けた請求項1から4のいずれか1項記載の暖房便座。
【請求項6】
輻射反射板は断面を略放物線形状とし、輻射型発熱体の断面中心を放物線の焦点に位置させて配置した請求項1から4のいずれか1項記載の暖房便座。
【請求項7】
着座部の表面には塗装等による表面化粧層を設けた請求項1から6のいずれか1項記載の暖房便座。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載の暖房便座を備えたトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−117550(P2007−117550A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316098(P2005−316098)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】