説明

暖房便座装置及びその温度制御方法

【課題】便座表面に電磁誘導により発熱する着座面発熱体を配置した暖房便座装置において、着座面発熱体Tの温度を正確に推測して、適正な温度制御を行う。
【解決手段】便座1の表面材3の外表面に着座面発熱体Tを配置し、内表面に参照発熱体Txと温度センサ20とを設け、誘導コイルUに通電したときの着座面発熱体Tの温度と参照発熱体Txの温度との関係を予め求めておく。着座面発熱体Txが設定温度となるように便座側制御部C2で誘電コイルUへの通電量を制御することにより、着座面発熱体Tの温度を所定値に調整できる。便座周囲の雰囲気温度を測定する室温センサ21を設けた場合は、雰囲気温度の高低に基づいて、誘電コイルへの通電量を加減する。季節による雰囲気温度の違いに基づき、着座面発熱体の温度設定を適切に制御可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座表面に電磁誘導により発熱する発熱体を配置した暖房便座装置に関し、発熱体の温度を直接検知せずに、発熱体の温度を比較的正確に推測して、適正な温度制御を可能にした技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、便座表面を誘導加熱方式で暖房する技術が開示されている。特許文献1の暖房便座は、便座の着座部を構成する表面材の表面に、アルミ箔より成る発熱体を配置し、表面材の裏面側に誘導コイルを配置する。そして、誘導コイルに通電して発熱体を誘導加熱することにより、便座表面を短時間で暖められることが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−8859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
便座表面に配設される発熱体は電磁誘導により加熱されるものであり、配線が不要なので便座の丸洗いが可能である等の利点を生かすため、通常、温度センサを直接取り付けることは避けられる。そこで特許文献1では、暖房便座の表面材の裏面側に凹部を設けてサーミスタを配置し、このサーミスタで、便座表面に配設した発熱体の温度を検知する構成を採用している。従って、発熱体とサーミスタとは直に接触していないから、誘導コイルへ通電を開始したときの発熱体の急速な昇温にサーミスタの検知動作が追従することができず、通電開始直後は発熱体の正確な温度を知ることができなかった。よって従来は、便座表面温度を目標温度まで上げるのに必要な誘導コイルに対する通電量を、適正に制御するのが難しいという問題があり、その結果、便座の表面が場合によって熱くなりすぎたり冷たかったりして、使用者に不快感を与えるおそれあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、誘導加熱式の暖房便座装置において、便座表面に配設した発熱体に温度センサを取り付けなくても、発熱体の温度を比較的正確に推測して、適正な温度制御を可能にする手段の提供を目的とする。かかる目的のため、本発明が採用した暖房便座装置の特徴とするところは、請求項1に記載する如く、便座の着座部を構成する表面材の外側に導電性材料より成る着座面発熱体が配置され、便座の内部に配置した誘導コイルへ通電することにより、着座面発熱体を誘導加熱するようになされた暖房便座装置において、便座内部に誘導コイルにより誘導加熱される参照発熱体と参照発熱体の温度を検知する温度センサとが設けられ、便座又は便座支持体の内部に誘導コイルへの通電量を制御する制御部が設けられ、制御部を、温度センサから出力される温度信号に基づき、参照発熱体の温度が設定値となるように誘導コイルへの通電量を制御するものとしたことである。
【0006】
前記において、着座面発熱体は、金属メッキやアルミ箔など金属製の薄膜で形成するほか、金属粒子や金属片を混合した合成樹脂で形成した薄い層が考えられる。参照発熱体の材質は、着座面発熱体と同じ材質とするのが好ましいが、誘導加熱可能であれば他の材質を用いてもよい。参照発熱体の厚みや大きさも、着座面発熱体と同等とするのが好ましいが、必ずしも限定されない。温度センサの種類は特に限定されないが、サーミスタのほか熱電対が使用可能である。なお誘導コイルへ電力を供給する手段は、電源部から電力の供給を受ける一次コイルを便座支持体に設けると共に、誘導コイルへ通電可能な二次コイルを便座に設け、一次コイルへ通電することにより、相互誘導作用によって、二次コイルを通じて誘導コイルへ電力を供給する構成が考えられる。
【0007】
本発明に係る前記暖房便座装置は、発熱体の温度制御をより精度よく行なうため、請求項2に記載する如く、便座周囲の雰囲気温度を検知する室温センサを設け、制御部が、温度センサから出力される温度信号と、室温センサから出力される雰囲気温度信号とに基づき、参照発熱体の温度が設定値となるように誘導コイルへの通電量を制御するものとすることができる。
【0008】
なお室温センサの取付位置は、便座の適所であって発熱体の影響を受けない個所とするほか、便座を揺動可能に支持する便座支持体側に設けることも可能である。この場合、便座内の制御部への信号伝達は、給電装置を構成するコイルを利用したり、光通信手段を用いることが考えられる。
【0009】
なお、参照発熱体については、請求項3に記載の如く、着座面発熱体と同じ材質で構成し、表面材の内表面に配設する態様が考えられる。この場合、参照発熱体を、表面材の内表面における着座面発熱体と対応する領域全部に配設してもよく、あるいは、内表面の一部だけに配設する構成としてもよい。
【0010】
あるいは請求項4に記載の如く、参照発熱体を、着座面発熱体と同じ材質で構成し、便座の底板材に配設すると共に、誘導コイルから着座面発熱体までの距離と、誘導コイルから参照発熱体までの距離とを実質的に等しく設定してもよい。
【0011】
他方、着座面発熱体については、請求項5に記載の如く、金属薄膜で形成することができる。さらに請求項6に記載の如く、着座面発熱体と表面材との間に断熱層を形成してもよい。断熱層としては、ウレタンフォーム等、合成樹脂の発泡体が考えられる。
【0012】
本発明は、前記暖房便座装置における有用な温度制御方法を提供する。その特徴とするところは、請求項7に記載する如く、便座の着座部を構成する表面材の外側に導電性材料より成る着座面発熱体が配置され、便座の内部に配置した誘導コイルへ通電することにより、着座面発熱体を誘導加熱するようになされた暖房便座装置において、便座内部に誘導コイルにより誘導加熱される参照発熱体と参照発熱体の温度を検知する温度センサとを設け、便座又は便座支持体の内部に誘導コイルへの通電量を制御する制御部を設け、誘導コイルに通電して着座面発熱体が所定温度となるときの参照発熱体の温度を予め求めてこれを設定温度とし、温度センサで検知する参照発熱体の温度が設定温度となるように、制御部で誘導コイルへの通電量を制御することである。
【0013】
上記方法において、着座面発熱体が所定温度となるときの参照発熱体の設定温度を求める方法は、実験的に求めてもよく、部材の構成等から理論的に求めてもよく、さらには両者を併用することも可能である。
【0014】
また前記温度制御方法において、より能率の良い温度制御を行なうため、請求項8に記載する如く、便座周囲の雰囲気温度を検知する室温センサを設け、室温センサで検知した雰囲気温度に基づき、制御部による誘導コイルへの通電量を制御することが考えられる。
【0015】
かかる温度制御方法は、雰囲気温度の高低により、着座面発熱体を一定時間で所定温度にするために必要な通電量が異なるとの知見に基づくものである。すなわち、寒冷期など室温が低いときには、着座面発熱体が所定温度に達するまでに大きい熱量を必要とするから、誘導コイルへの通電量を大きくする。非寒冷期には、室温と着座面発熱体の初期温度との差が小さいので、誘導コイルへの通電量は控えめにする。さらに夏季など、室温が着座面発熱体の所定温度以上であるときには、誘導コイルへの通電が不要となる。雰囲気温度を検知する室温センサを設けることにより、通電量の上記制御を自動的に行うことが可能となる。なお雰囲気温度と通電量との関係は、あらかじめ求めておく。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る暖房便座装置(請求項1)及びその温度制御方法(請求項7)によれば、便座内部に、誘導コイルにより誘導加熱される参照発熱体を設け、誘導コイルに通電したときの着座面発熱体の温度と参照発熱体の温度との関係を予め求めておくことにより、参照発熱体の検知温度から、着座面発熱体の温度を比較的正確に推測することができる。何故なら、誘導コイルへ通電したときに、着座面発熱体と参照発熱体とは同時に誘導加熱され、両者の間に発熱の時間差は生じないと考えられるからである。従って、着座面発熱体が所定温度になるときの参照発熱体の温度を設定温度とし、参照発熱体がこの設定温度となるように誘導コイルへの通電量を制御することで、着座面発熱体の温度を所定値に調整することが容易にできる。
【0017】
請求項2又は請求項8に記載するように、便座周囲の雰囲気温度を測定する室温センサを設けると共に、雰囲気温度と通電量との関係を予め求めておくことにより、雰囲気温度の高低に基づいて、誘導コイルへの通電量を加減する制御が可能となる。すなわち、便座周囲の雰囲気温度と着座面発熱体の目標温度との差に基づき、誘導コイルへの適正な通電量を自動的に割り出すことができる。よって、冬季などの寒冷期は通電量を大きくして着座面発熱体の昇温速度を高め、便座表面が所定温度に達するまでに時間がかからないようにできる。また夏季等の温暖期は通電量を少なくして、着座面発熱体が所定温度以上に過熱するのを防止できる。さらには、着座面発熱体の表面温度を、冬季などの寒冷期と比較して、夏季などの温暖期で低く設定するなど、季節による雰囲気温度の違いに基づき、着座面発熱体の温度設定を自動的に変更する制御も可能である。
【0018】
請求項3に記載するように、参照発熱体を、着座面発熱体と同じ材質で構成し、且つ、表面材の内表面に配設した場合は、誘導コイルから参照発熱体までの距離と、着座面発熱体までの距離とはわずかしか異ならない。それ故、誘導コイルで誘導加熱したときに、参照発熱体は、着座面発熱体と実質的に同一の挙動を示すので、参照発熱体の温度を、着座面発熱体の温度と考えることができる。従って、温度制御の精度が高まると共に、制御部の構成を簡単にすることができる。
【0019】
請求項4に記載するように、参照発熱体を、着座面発熱体と同じ材質で構成し、便座の底板材に配設すると共に、誘導コイルから着座面発熱体までの距離と参照発熱体までの距離とを実質的に等しく設定することにより、誘導コイルで誘導加熱したときの参照発熱体の挙動と、着座面発熱体の挙動とが実質的に同一になる。よって、参照発熱体の温度を、着座面発熱体の温度と考えることができるから、温度制御の精度が高まると共に、制御部の構成を簡単にすることができる。
【0020】
請求項5に記載するように、着座面発熱体を金属薄膜により形成した場合は、湾曲面から成る便座表面に、着座面発熱体を密着させて形成するのが容易である。従って、見栄えの良い製品を提供することができる。
【0021】
請求項6に記載するように、着座面発熱体と表面材との間に断熱層を形成した場合は、誘導コイルによる誘導加熱で昇温した着座面発熱体の熱が表面材へ伝導するのが抑制される。よって着座面発熱体の温度低下が防止され、冷めにくい暖房便座装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[第1の実施形態]
図1に、本発明に係る暖房便座装置Sの一例を示す。但し図面には、暖房便座装置Sの内部構造のうち、本発明に関連する部分だけを概略的に示す。暖房便座装置Sは、便座1と、便器(図示省略)の上面に設置される便座支持体10とから構成される。本例の便座1は、後端部の左右に所定間隔を置いて後方へ突出する取付腕部2,2を設け、該取付腕部2の間に、便座支持体10の前面部を挟持するように構成してある。そして便座支持体10の左右側面から突出させた支持軸11に、左右の取付腕部2を取着することにより、便座1を揺動可能としている。なお、取付腕部2は支持軸11に対し着脱可能であり、便座1は便座支持体10から取り外し可能に構成されている。
【0023】
便座支持体10は、例えば箱状の形態を有し、その内部に、電源Wに接続されて電力の供給を受ける支持体側制御部C1が設けられる。なお図示は省略するが、便座支持体10が、人体検出手段・便蓋の自動開閉装置・音楽再生装置・温水洗浄装置・便器自動洗浄装置・脱臭装置などを備える場合は、前記制御部C1に、人体検出手段の人体検知信号や適所に設けたスイッチボタンの操作に基づいて、上記各装置の動作を制御する機能を持たせることができる。
【0024】
図1(B)に拡大して示す如く、本例では、便座1の基材となり着座面を構成する表面材3の外側に、断熱層4を介して着座面発熱体Tが配設され、さらに着座面発熱体Tの外表面を覆うように外面被覆層5が形成されている。他方、表面材3の内表面には参照発熱体Txが配設され、参照発熱体Txと接するように温度センサ20が配置されている。参照発熱体Txの配設領域は、表面材3を挟んで、着座面発熱体Tの下方領域全体となされている。着座面発熱体T及び参照発熱体Txは、電磁誘導により発熱する導電性材料で形成され、例えばアルミ蒸着、金属スパッタリング、銅メッキ等で形成した金属薄膜から成る。あるいは、鉄・銅・アルミニウム等の金属や、これらを主体とする合金又は金属化合物などの導電性材料を、板状・シート状・箔状の形態としたものとする。さらには、金属紛や金属片を多量に混合した合成樹脂層で形成することも考えられる。なお着座面発熱体Tと参照発熱体Txとは、同じ材質で、且つ、同じ厚みとするのが好ましい。
【0025】
着座面発熱体Tと表面材3との間に介装される断熱層4は、例えばウレタンフォーム等の発泡樹脂で形成される。外面被覆層5は、便座1の表面性状を向上させたり保温性を高めるためのものである。例えば、マイクロパウダーを混合した合成樹脂により形成することにより、べとつき感を低減させることができる。なお断熱層4や外面被覆層5は、状況に応じ省略することも可能である。
【0026】
便座1の内部には、基材となる底板材6の上面又は上方に誘導コイルUが設けられると共に、便座側制御部C2が設けられる。また、着座面発熱体Tの発熱の影響を受けにくい個所、例えば取付腕部2などに、便座1周囲の雰囲気温度を検知する室温センサ21が設けられる。便座側制御部C2は、整流回路・高周波発生回路・制御回路を有しており、後述する給電装置30から相互誘導方式により電力の供給を受け、この電力から誘導コイルUへ与える高周波電流を生成するための整流器機能及びインバータ機能を備える。また前記温度センサ20が接続され、当該温度センサ20から検知温度信号を便座側制御部C2へ出力するように構成されている。なお図示は者略するが、便座1内部における誘導コイルUと参照発熱体Txとの間の空間を、所望により適宜の断熱材で充填してもよい。誘導コイルUにおける導線の捲き構造は、通電時に着座面発熱体Tの発熱量が、全域にわたりなるべく均等化されるよう設定される。
【0027】
支持体側制御部C1から便座側制御部C2へ電力を供給するための給電装置30は、便座支持体10の前面側に設けた送電部31と、便座1の後端側に設けた受電部32とから構成される。送電部31及び受電部32はいずれも、コアの外周にコイルを巻き付けて形成したものである。送電部31は、支持体側制御部C1に接続され電力の供給を受ける。受電部32は、便座側制御部C2と接続される。便座1が伏倒位置(使用者が着座可能である位置)に在るとき、送電部31と受電部32それぞれのコアが近接して対向するように設定されている。
【0028】
図示は省略したが、便座1を揺動可能に支持する支持軸11を、一次コイル及び二次コイルを巻き付けるコアに利用して給電装置30を構成することも可能である。
【0029】
前記の如く構成された本発明に係る暖房便座装置Sは、次のように動作する。便座1が図1(A)に示す伏倒位置に在る状態において、図2に示す如く、支持体側制御部C1から送電部31へ適当な周波数の交流電力を与えると、相互誘導作用により、受電部32に起電力が発生し、この電力が便座側制御部C2で高周波電流に変換されて誘導コイルUへ配電される。そして誘導コイルUの電磁誘導作用により、着座面発熱体T及び参照発熱体Txが同時に加熱される。着座面発熱体Tは、便座1の外表面側に位置し、しかも電磁誘導による着座面発熱体Tの発熱は瞬時になされるから、便座1の表面が短時間で暖められる。着座面発熱体Tと表面材3との間に断熱層4を設けたから、昇温した着座面発熱体Tの熱が表面材へ伝導するのが防止される。また、合成樹脂で形成した外面被覆層5も、着座面発熱体Tから空気中への放熱を抑制して、保温性を高める機能を発揮する。従って本例の暖房便座装置Sは、便座1が冷めにくいという利点を持つ。
【0030】
表面材3の外表面側の着座面発熱体Tと、内表面側の参照発熱体Txとは、同じ材質で形成され且つ同じ厚みであるとすると、両者は誘導コイルUからの距離がほとんど等しいと見なせるから、誘導加熱されたときの着座面発熱体T及び参照発熱体Txの発熱挙動は実質的に等しいと考えられる。すなわち、誘導コイルUへの通電後、着座面発熱体Tと参照発熱体Txと同じように昇温する。従って、温度センサ20で検知する参照発熱体Txの温度txが、着座面発熱体Tの目標温度となるように、便座側制御部C2で誘導コイルUへの通電量を制御すれば、着座面発熱体Tを所定温度とすることができる。
【0031】
ところで状況により、誘導コイルUへの通電後、着座面発熱体Tと参照発熱体Txとの昇温速度が異なる場合も考えられる。例えば、着座面発熱体Tと参照発熱体Txとで、材質が異なったり、厚みが相違したり、参照発熱体Txを表面材3の内表面以外の場所に配設した場合などである。このようなときには、着座面発熱体Tの温度tと参照発熱体Txの温度txとの関係を実験により又は理論的にあらかじめ求めておき、着座面発熱体Tが所定温度となるときの参照発熱体Txの温度を決定しておく。そして当該温度を設定温度とし、温度センサ20で検知する参照発熱体Txの温度が、上記設定温度となるように誘導コイルUへの通電量を便座側制御部C2で制御することにより、着座面発熱体Tを目標の所定温度とすることができる。
【0032】
また本例では、便座1に設けた室温センサ21から便座側制御部C2へ、雰囲気温度情報を出力するように構成した。従って、雰囲気温度Rに基づき、誘導コイルUへの通電量を適正に制御することが可能である。すなわち、寒冷期など雰囲気温度Rが低いときは、誘導コイルUへの通電量を大きくして、着座面発熱体Tが所定温度に達するまで時間がかからないようにする。反対に、温暖期など雰囲気温度Rが比較的高いときは、通電量を低く抑えて、着座面発熱体Tの表面温度が所定温度を超えるのを防止する。誘導コイルUに対する通電量の制御は、電圧値・電流値・周波数・デューティ比等の調節により行える。
【0033】
雰囲気温度Rの高低に基づき、着座面発熱体Tを加熱するときの目標温度を変更する態様も可能である。すなわち、冬季における便座1の表面温度と比較して、温暖期には、便座1の表面温度を低く設定してもよい場合がある。また、夏季等の高温の時期には、着座面発熱体Tへの通電が不要な時もあると考えられる。このように、室温センサ21で検知した雰囲気温度情報に従って、着座面発熱体Tの目標温度を自動的に調整する制御を行なって、使用者に対する快適性を一層高めることができる。
【0034】
本発明に係る暖房便座装置Sは、誘導加熱により着座面発熱体Tを短時間で昇温させるに際し、参照発熱体Txの温度に基づいて、着座面発熱体Tの温度を正確に推測することが可能なので、便座1の表面温度を最適に調整するのが容易である。従って、便座支持体10に人体検知センサーを設け、不使用時は通電を停止しておき、使用者を検知したときに通電開始するように構成して節電を図るにあたり、本発明はきわめて有用な温度制御手段を提供できる。
【0035】
なお本例の暖房便座装置Sは、便座1から便座支持体10への給電を電磁誘導で行なう構造としたので、便座1と便座支持体10との間に配線が存在しない。また、便座1の表面を暖房する着座面発熱体Tにも配線が接続されないから、便座1内部を密封して防水構造にするのが容易である。従って、便座1を便座支持体10から取り外して、簡単に丸洗いできるという利点を有している。
【0036】
[第2の実施形態]
図3に示す如く、便座1の表面材3の内表面側に配設する参照発熱体Txは、部分的に形成するだけでも差し支えない。この場合、通電直後は、参照発熱体Txと着座面発熱体Tとは同じ発熱挙動を示すが、所定温度に達した以降は、熱容量の相違を考慮した温度制御を行なう必要がある。
【0037】
[第3の実施形態]
図4に示す如く、参照発熱体Txを、便座1の底板材6の上面に配設することも可能である。この場合、参照発熱体Txは着座面発熱体Tと同じ材質で、同じ厚みに形成すると共に、誘導コイルUから着座面発熱体Tまでの距離d1と参照発熱体Txまでの距離d2とを等しく設定する。かかる構成により、誘導コイルUに通電したときに、着座面発熱体Tと参照発熱体Txとは実質的に同じ発熱挙動を示すので、参照発熱体Txの温度を温度センサ20で検知することにより、着座面発熱体Tの温度を正確に推測することが可能である。
【0038】
[第4の実施形態]
図5に示す如く、便座に設けた温度センサ及び室温センサで得た温度情報tx,Rを、便座支持体10側に設けた支持体側制御部C1へ信号伝達し、支持体側制御部C1で給電装置における通電量を制御することにより、誘導コイルUに対する通電量を調節することも考えられる。この場合、温度センサ及び室温センサが出力する温度信号tx,Rを高周波に変換する温度信号発生部と、一次信号コイルと二次信号コイルとから成る信号伝達部とを設け、相互誘導作用を用いて、温度信号を便座から便座支持体の制御部C1へ伝達するように構成する。また本例では、給電装置部分で通電量の制御を行えるから、便座側制御部C3は、給電装置から相互誘導方式により供給される電力から、誘導コイルUへ与える高周波電流を生成する機能だけを持てばよい。つまり、誘導コイルUに対する通電量を制御するための制御回路が不要になるので、便座側制御部C3の回路構成を簡単に出来る利点が得られる。
【0039】
[第5の実施形態]
図6に示す如く、室温センサについては便座支持体側に設け、雰囲気温度情報Rを支持体側制御部C1へ直接出力するように構成することも可能である。
【0040】
[その他の実施形態]
図示は省略するが、室温センサ21を便座支持体10側に設け、雰囲気温度情報を便座側制御部C2へ信号伝達することも可能である。この場合、信号伝達を、給電装置30を構成する一次コイルと二次コイル間の電磁誘導を利用して行なうことも出来る。
前述の実施形態では、電磁誘導を利用することにより、便座支持体10から便座1への給電を無配線で行なう構造を採用しているが、必ずしもこれに限定されるわけではなく、便座1と便座支持体10との間に給電用の電気配線を設けることを妨げない。
温度センサ20を複数個用い、便座1の表面材3の内表面又は底板材6における複数領域に配置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るものであって、図(A)は、暖房便座装置の内部構成を概略的に示す側面断面図、図(B)は、図(A)おける二点鎖線で囲んだ部分の拡大断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るものであって、暖房便座装置における温度制御方法を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るものであって、図(A)は、暖房便座装置の内部構成を概略的に示す側面断面図、図(B)は、図(A)おける二点鎖線で囲んだ部分の拡大断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るものであって、図(A)は、暖房便座装置の内部構成を概略的に示す側面断面図、図(B)は、図(A)おける二点鎖線で囲んだ部分の拡大断面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係るものであって、暖房便座装置における温度制御方法を説明するフローチャートである。
【図6】本発明の第5の実施形態に係るものであって、暖房便座装置における温度制御方法を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1…便座 2…取付腕部 3…表面材 4…断熱層 5…外面被覆層 6…底板材 10…便座支持体 11…支持軸 20…温度センサ 21…室温センサ 30…給電装置 31…送電部 32…受電部 C1…支持体側制御部 C2…便座側制御部 S…暖房便座装置 T…着座面発熱体 Tx…参照発熱体 U…誘導コイル W…電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座の着座部を構成する表面材の外側に導電性材料より成る着座面発熱体が配置され、便座の内部に配置した誘導コイルへ通電することにより、着座面発熱体を誘導加熱するようになされた暖房便座装置において、便座内部に誘導コイルにより誘導加熱される参照発熱体と参照発熱体の温度を検知する温度センサとが設けられ、便座又は便座支持体の内部に誘導コイルへの通電量を制御する制御部が設けられ、制御部は、温度センサから出力される温度信号に基づき、参照発熱体の温度が設定値となるように誘導コイルへの通電量を制御するものであることを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
便座周囲の雰囲気温度を検知する室温センサが設けられ、制御部は、温度センサから出力される温度信号と、室温センサから出力される雰囲気温度信号とに基づき、参照発熱体の温度が設定値となるように誘導コイルへの通電量を制御するものである請求項1に記載の暖房便座装置。
【請求項3】
参照発熱体は、着座面発熱体と同じ材質で構成され、表面材の内表面に配設されている請求項1又は2に記載の暖房便座装置。
【請求項4】
参照発熱体は、着座面発熱体と同じ材質で構成され、便座の底板材に配設され、誘導コイルから着座面発熱体までの距離と、誘導コイルから参照発熱体までの距離とが実質的に等しく設定されている請求項1又は2に記載の暖房便座装置。
【請求項5】
着座面発熱体は金属薄膜により形成されている請求項1乃至4のいずれかに記載の暖房便座装置。
【請求項6】
着座面発熱体と表面材との間に断熱層を形成した請求項1乃至5のいずれかに記載の暖房便座装置。
【請求項7】
便座の着座部を構成する表面材の外側に導電性材料より成る着座面発熱体が配置され、便座の内部に配置した誘導コイルへ通電することにより、着座面発熱体を誘導加熱するようになされた暖房便座装置において、便座内部に誘導コイルにより誘導加熱される参照発熱体と参照発熱体の温度を検知する温度センサとを設け、便座又は便座支持体の内部に誘導コイルへの通電量を制御する制御部を設け、誘導コイルに通電して着座面発熱体が所定温度となるときの参照発熱体の温度を予め求めてこれを設定温度とし、温度センサで検知する参照発熱体の温度が設定温度となるように、制御部で誘導コイルへの通電量を制御することを特徴とする暖房便座装置の温度制御方法。
【請求項8】
便座周囲の雰囲気温度を検知する室温センサを設け、室温センサで検知した雰囲気温度に基づき、制御部による誘導コイルへの通電量を制御する請求項7に記載の暖房便座装置の温度制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate