説明

暖房便座装置及びトイレ装置

【課題】風路の切替に際して使用者に不快感を与えないような制御を実行可能とした暖房便座装置及びこれを備えたトイレ装置を提供する。
【解決手段】送風部と、前記送風部により送風される空気を加熱する加熱部と、内部に便座内風路を有する便座と、前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路とを含む循環風路と、前記循環風路から分岐し、温風を吹き出し可能な第1風路と、前記第1風路を開閉する第1開閉部と、前記送風部、前記加熱部及び前記第1開閉部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記循環風路に温風を循環させる第1のモードと、前記第1風路から温風を吹き出させる第2のモードと、を実行可能であり、前記第1のモードから前記第2のモードに切り替える際に、前記送風部及び前記加熱部の少なくともいずれかの設定を変更してから前記第1開閉部を開いて前記第1風路から温風を吹き出させることを特徴とする暖房便座装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房便座装置及びトイレ装置に関し、より具体的には、温風により便座を暖房する暖房便座装置及びこれを備えたトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水洗便器の便座を暖房できると、気温の低い冬場などでもトイレを快適に使用することができる。便座を暖房する手段として、温風を循環させる方法がある(特許文献1)。温風を循環させると、排熱を抑制し少ないヒータパワーで効率的に便座を暖房することが可能となる。
【0003】
ところで、便座に座った使用者の「おしり」などに温風を吹き付けて乾燥させたり使用者の身体を温めたりできると、より使い勝手がよく快適な暖房便座装置を実現できる。しかし、便座を暖房するための温風の温度や風量と、使用者に向けて吹き出す温風の温度や風量と、は必ずしも同じでない場合が多い。従って、温風の風路の切替に際して、使用者に不快感を与えないような制御が必要とされる。
【特許文献1】実開平5−237047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、風路の切替に際して使用者に不快感を与えないような制御を実行可能とした暖房便座装置及びこれを備えたトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、送風部と、前記送風部により送風される空気を加熱する加熱部と、内部に便座内風路を有する便座と、前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路とを含む循環風路と、前記循環風路から分岐し、温風を吹き出し可能な第1風路と、前記第1風路を開閉する第1開閉部と、前記送風部、前記加熱部及び前記第1開閉部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記循環風路に温風を循環させる第1のモードと、前記第1風路から温風を吹き出させる第2のモードと、を実行可能であり、前記第1のモードから前記第2のモードに切り替える際に、前記送風部及び前記加熱部の少なくともいずれかの設定を変更してから前記第1開閉部を開いて前記第1風路から温風を吹き出させることを特徴とする暖房便座装置が提供される。
【0006】
また、本発明の他の一態様によれば、送風部と、前記送風部により送風される空気を加熱する加熱部と、内部に便座内風路を有する便座と、前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路とを含む循環風路と、前記循環風路から分岐し、温風を吹き出し可能な第1風路と、前記第1風路を開閉する第1開閉部と、前記送風部、前記加熱部及び前記第1開閉部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記循環風路に温風を循環させる第1のモードと、前記第1風路から温風を吹き出させる第2のモードと、を実行可能であり、前記第2のモードから前記第1のモードに切り替える際に、前記第1開閉部を閉じて前記第1風路からの温風を吹き出しを停止させてから、前記送風部及び前記加熱部の設定を変更することを特徴とする暖房便座装置が提供される。
【0007】
また、本発明のさらに他の一態様によれば、送風部と、前記送風部により送風される空気を加熱する加熱部と、内部に便座内風路を有する便座と、前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路とを含む循環風路と、前記循環風路から分岐し、温風を吹き出し可能な第1風路と、前記循環風路から分岐し、温風を吹き出し可能な第2風路と、前記第1風路を開閉する第1開閉部と、前記送風部、前記加熱部及び前記第1開閉部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第2風路から温風を吹き出させる第3のモードと、前記第1風路から温風を吹き出させる第2のモードと、を実行可能であり、前記第3のモードから前記第2のモードに切り替える際に、前記送風部及び前記加熱部の少なくともいずれかの設定を変更してから前記第1開閉部を開いて前記第1風路から温風を吹き出させることを特徴とする暖房便座装置が提供される。
【0008】
また、本発明のさらに他の一態様によれば、送風部と、前記送風部により送風される空気を加熱する加熱部と、内部に便座内風路を有する便座と、前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路とを含む循環風路と、前記循環風路から分岐し、温風を吹き出し可能な第1風路と、前記循環風路から分岐し、温風を吹き出し可能な第2風路と、前記第1風路を開閉する第1開閉部と、前記送風部、前記加熱部及び前記第1開閉部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第2風路から温風を吹き出させる第3のモードと、前記第1風路から温風を吹き出させる第2のモードと、を実行可能であり、前記第2のモードから前記第3のモードに切り替える際に、前記第1開閉部を閉じて前記第1風路からの温風を吹き出しを停止させてから、前記送風部及び前記加熱部の設定を変更することを特徴とする暖房便座装置が提供される。
【0009】
また、本発明のさらに他の一態様によれば、便器と、前記便器の上に設けられた上記のいずれかの暖房便座装置と、を備えたことを特徴とするトイレ装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、風路の切替に際して使用者に不快感を与えないような制御を実行可能とした暖房便座装置及びこれを備えたトイレ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置の模式斜視図である。
【0012】
本具体例の暖房便座装置は、水洗便器300の上部に設けられたケーシング500を有する。なお、水洗便器300の洗浄機構としては、いわゆる「ロータンク式」でもよく、あるいはロータンクを用いない「水道直圧式」であってもよい。
【0013】
ケーシング500には、便座410及び便蓋400がそれぞれ開閉自在に軸支されている。これら便座410及び便蓋400は、手動により開閉できるとともに、電動開閉機構により自動的に開閉可能としてもよい。そして、本実施形態においては、ケーシング500に温風供給手段550が設けられ、便座410の中に温風を導入することにより便座410の暖房が可能とされている。
【0014】
またさらに、ケーシング500には、衛生洗浄装置としての機能部を併設してもよい。すなわち、この暖房便座装置は、便座410に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴出する吐水ノズル615を有する洗浄機能部などを適宜備える。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。そして、本具体例の暖房便座装置は、便座に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる温風乾燥機能を備える。またさらに、便器のボウル内の空気を吸い込み、フィルタや触媒などを介して臭気成分を低減させる脱臭機能や、トイレ室内に温風を吹き出してトイレ室を暖房する室内暖房機能などを有するものとすることができる。これらの動作は、例えば、ケーシング500とは別体として設けられたリモコン200により操作可能としてもよい。ただし、本発明においては、吐水ノズル615やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよく、便座410の温風暖房機構と、温風乾燥機能などの人体に向けて温風を噴出する機能部と、が設けられていればよい。
【0015】
図2は、本実施形態の便座暖房機構を表す概念図である。なお、図2以降の各図においては、既出の図面について説明したものと同様の要素、ステップには同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
ケーシング500の中には、温風供給手段550として、例えば、ファン552とヒータ554とが設けられている。ファン552から送出された空気はヒータ554により加熱されて温風が生成され、この温風は送出部560を介して、便座410の中に導入される。便座410の中には、温風の風路のとしての便座内風路412が形成されており、送出部560から便座410の便座内風路412に導入された温風は、便座410の中を流れ、戻入部570を介してケーシング500の温風供給手段550に戻る。すなわち、本具体例の便座暖房機構は、温風供給手段550、送出部560、便座内風路412、戻入部570、温風供給手段550という循環路を形成し、温風がこの循環路を繰り返し流れるようにされている。このようにすれば、排熱を抑制して熱効率の優れた温風暖房が可能となる。そして、この温風暖房機構の動作は、例えばリモコン200により制御可能とされている。すなわち、リモコン200に便座410の温度を表示させたり、温度を設定可能とすることができる。
【0016】
送出部560においては、ケーシング500の側に温風の吹出口が設けられ、便座410の側にも、この吹出口に対応した導入口が設けられている。戻入部570についても、便座410の側に温風の吹出口が設けられ、ケーシング500の側も、これに対応した導入口が設けられたものとすることができる。なお、後に図4に関して説明するように、戻入部570は送出部560に隣接させてもよい。
【0017】
以上説明したように、本具体例においては、便座410の中に温風を導入し暖房可能とされている。本具体例によれば、便座410をケーシング500から取り外して清掃や水洗いなどする際にも、簡単に取り外し、再装着することができる。ただし、本発明はこの具体例には限定されず、温風を便座410の中に導入して暖房する形式であれば、その他各種の構造の暖房便座装置に同様に適用することができる。
【0018】
そして、本実施形態においては、温風の風路を切り替えることにより、便座暖房運転から人体に向けて温風を吹き出す運転に切り替えることが可能とされている。
図3は、温風の風路の切替を説明するための模式図である。
【0019】
ケーシング500には、外気を取り込む吸引口580と、空気を排出する排出口582と、が設けられている。そして、これら吸引口580と排出口582に連通する風路には、開閉自在のダンパ(第2開閉部)546、548がそれぞれ設けられている。そして、これらダンパ546、548により開閉される風路の途上には、温風供給手段550として、例えば、ファン(送風部)552とヒータ(加熱部)554とが設けられている。また、ヒータ554の下流側には、外部に連通したダクト592が設けられ、ダンパ590がこのダクト592を開閉自在に設けられている。
【0020】
図3(a)に表したように、循環送風モード(便座暖房運転)においては、ダンパ546、548がそれぞれ閉じられ、またダンパ590がダクト592を閉じた状態とされ、送風が環流される循環風路が形成される。この状態で、ファン552から送出された空気がヒータ554により加熱されて温風が生成され、この温風は送出部560を介して、便座410の中に導入される。便座410の中には、仕切り418により区画された温風の便座内風路412が形成されている。送出部560から便座410の風路412に導入された温風は、矢印で表したように便座410の中を流れ、戻入部570を介してケーシング500のファン552の上流側に戻る。
【0021】
一方、図3(b)に表したようにダンパ546、548、590を開くと、ヒータ554により暖められた温風は、ダクト592に流れる。この時、便座内風路412はダンパ590、594により両端が閉じられた状態となり、内部の温風は保持されて、便座410の温度が急激に低下することを防止できる。
【0022】
図4は、ダクト592により乾燥運転を可能とした具体例を表す模式図である。
図4(a)は、循環送風モードにより便座暖房運転(第1のモード)を実行している状態を表す。これに対して、例えば図4(b)に表したように、ダンパ(第1開閉部)590とダクト(第1風路)592は、ヒータ554から送出された温風の風路の下方側に設けることができる。すなわち、便座410を暖房する循環風路の下方側をダクト592が延在し、便座410に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き出す(乾燥運転:第2のモード)ようにすることができる。このようにすれば、使用者の「おしり」などを温風で乾燥させることができ、便利で使い勝手のよい暖房便座装置を実現できる。
【0023】
なお、ダクト592は、使用者の「おしり」を乾燥させる用途には限定されず、例えば使用者の身体に向けて温風を吹き出させることにより、暖房効果を与えるものであってもよい。ただし、本願の各実施例においては、ひとつの具体例として乾燥運転を例に挙げて説明する。
【0024】
図5は、本具体例の暖房便座装置の主要構成を表すブロック図である。なお、同図においては、各要素間の電気的な接続を実線で表し、風路を破線で表した。
ケーシング500には、風路の上流側から順に、第1温度検知部540、ダンパ594、ダンパ548、ダンパ546、送風部552、加熱部554、第2温度検知部540、ダンパ590が設けられている。制御部510は、第1温度検知部540と第2温度検知部542の検出結果に基づき送風部552、加熱部554などの動作を制御する。なお、これら各要素の配置関係やダンパの数などについては、種々の変更を加えたものも本発明の範囲に包含される。
循環送風モードにおいては、これら各要素を含む循環風路が形成され、温風が便座内風路412を循環する。そして、乾燥運転の指示が与えられると、制御部510は、これら各要素を適宜動作させ、乾燥運転に切り替える。
【0025】
図6は、便座暖房運転から乾燥運転に切り替える際の制御を表すフローチャートである。
【0026】
まず、図4(a)に関して前述したように、循環送風モードにおいて温風による便座410の暖房が実施されている(ステップS102)。そして、使用者が例えば、リモコンの「おしり乾燥」スイッチを操作して、乾燥運転の指示をする(ステップS104)。
図7は、リモコン200に設けられたスイッチを例示する模式図である。
リモコン200の上面には、その両端にケーシング500との通信のための赤外線透過窓231が設けられている。また、大洗浄スイッチ232、小洗浄スイッチ234、便蓋閉スイッチ236、便蓋開スイッチ238、便座開スイッチ240などがそれぞれ設けられている。
【0027】
また、リモコン200の正面にも、各種のスイッチが設けられている。そして、本具体例のリモコンにおいては、「おしり」などの乾燥をするための「乾燥」スイッチ242が設けられている。使用者がこのスイッチ242を押すたびに、乾燥運転の開始と停止とが交互に指示される。
【0028】
ふたたび図6に戻って説明を続けると、リモコンの「乾燥」スイッチ242が押されると、制御部510は、乾燥運転の開始の指示を受け付ける(ステップS104)。すると、制御部510は、まず送風部552と加熱部554を制御して温風の風量と温度を変更する(ステップS106)。すなわち、温風の風量と温度を、便座410の暖房のために設定された風量・温度から、「おしり」などの乾燥のために設定された風量・温度に変更する。そして、温風の風量と温度を安定化させる。この安定化のプロセスは、例えば、送風部552と加熱部554への出力を変更してから所定の時間待機することにより実行してもよく、または、第1温度検知部540や第2温度検知部542などにより温風の温度を調べて、その検出値が所定の目標値に達するまで待機するようにしてもよい。なお、乾燥運転が開始するまでの間、使用者を長時間待たせることは望ましくないので、ステップS106の安定化は、温風の風量や温度が使用者に対して不快感を与えない範囲でできるだけ短くすることが望ましい。
【0029】
しかる後に、制御部510は、風路を切り替える(ステップS108)。すなわち、ダンパ546、548、590、594を動作させ、図3(a)あるいは図4(a)に表した状態から、図3(b)あるいは図4(b)に表した状態に切り替える。そして、乾燥運転が開始される(ステップS110)。
【0030】
このようにすれば、便座410に座った使用者の「おしり」などに向けて温風が吹き出す時には、温風の風量や温度は、乾燥運転の設定値あるいはこれに近づいた状態にある。従って、風路を切り替えて使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き出す時に、冷たい温風や熱い温風などが吹き出すことによる不快感を与えることを防止できる。
【0031】
図8は、便座暖房運転から乾燥運転に切り替える際の制御の第2の具体例を表すフローチャートである。
また、図9は、本具体例の制御のタイミングチャートである。
【0032】
本具体例においては、制御部510は、送風部552を制御して風量を変更(ステップS106A)した後に、加熱部554を制御して温度を変更(ステップS106B)し、しかる後に、風路の切替を実行する(ステップS108)。
例えば、便座暖房運転の際の風量と、乾燥運転の際の風量と、の相違が比較的大きいような場合には、風量を先に変更することにより、より短い時間で便座暖房運転から乾燥運転に切り替えることが可能となる。
【0033】
図10は、便座暖房運転から乾燥運転に切り替える際の制御の第3の具体例を表すフローチャートである。
本具体例においては、制御部510は、まず加熱部554を制御して温風の温度を変更(ステップS106B)した後に、送風部552を制御して風量を変更(ステップS106A)し、しかる後に、風路の切替を実行する(ステップS108)。
例えば、便座暖房運転の際の温風の温度と、乾燥運転の際の温風の温度と、の相違が比較的大きいような場合には、温度を先に変更することにより、より短い時間で便座暖房運転から乾燥運転に切り替えることが可能となる。
【0034】
次に、乾燥運転から便座暖房運転に切り替える際の制御について説明する。
図11は、乾燥運転から便座暖房運転に切り替える際の制御の表すフローチャートである。
乾燥運転を実行している時(ステップS110)に、例えば使用者がリモコンの「乾燥」スイッチ242(図7参照)を押すと、制御部510は、乾燥運転の停止の指示を受け取る(ステップS112)。すると、制御部510は、まず風路を切り替える(ステップS114)。すなわち、ダンパ546、548、590、594を動作させ、図3(b)あるいは図4(b)に表した状態から、図3(a)あるいは図4(a)に表した状態に切り替える。そして、設定された風量・温度に変更し(ステップS116)、便座暖房運転が開始される(ステップS102)。
【0035】
このようにすれば、便座410に座った使用者の「おしり」などに向けて温風が吹き出している間は、温風の風量や温度は、乾燥運転の設定値あるいはこれに近づいた状態を維持する。換言すると、便座暖房運転の設定の温風が使用者に向けて吹き出すことはない。その結果として、乾燥運転から便座暖房運転に切り替える際にも、使用者の「おしり」などに向けて冷たい温風や熱い温風などが吹き出すことによる不快感を与えることを防止できる。
【0036】
なお、本具体例においても、ステップS116における風量と温度の変更は、略同時に行ってもよく、または図8に関して前述したように、風量の変更を先に行ってもよく、または図9に関して前述したように温度の変更を先に行ってもよい。
【0037】
なお、図6〜図11に表した具体例の場合、風路の切替に際しては、4つのダンパ546、548、590、594をほぼ同時に動作させているが、本発明はこれには限定されない。すなわち、これら4つのダンパ546、548、590、594の開閉のタイミングは同時である必要はなく、開閉のタイミングを適宜ずらすことにより、風量や温度をより迅速に安定化させることも可能となる。
【0038】
図12は、ダンパの開閉のタイミングをずらした具体例を表すフローチャートである。 また、図13は、この具体例に対応する風路の変化を表す概念図である。
本具体例においても、図13(a)に表したように循環送風モードで便座暖房運転をしている時(ステップS102)に乾燥運転の開始の指示を受け取ると(ステップS104)、制御部510は、まず風量と温度を変更する(ステップS106)。すなわち、温風の風量・温度を乾燥運転に適した設定に変更する。なお、このステップは、図8〜図10に関して前述したように、複数のステップに分けてもよい。
【0039】
しかる後に、制御部510は、外気導入モードに変更する(ステップS118)。すなわち、図13(b)に表したように、ダンパ546、548を開く。このモードにおいては、吸引口580から外気が導入され、ファン552、ヒータ554、便座内風路412を介して、排出口582から排出される。しかる後に、制御部510は、ダンパ590、594を閉じる(ステップS119)。すると、図13(c)に表したように、温風はダクト592から排出され、乾燥運転が開始する(ステップS110)。
【0040】
このように、ダンパ546、548、590、594の開閉のタイミングをずらして、まず外気導入モードを実行させることにより、温風の風量や温度をより迅速に乾燥運転モードに近づけることが可能となる。すなわち、循環送風モード(図13(a))においては、温風は便座内風路412を循環しているので、例えば、温風を所定の温度に維持するために必要とされるヒータ554への投入電力は小さくてよい。これに対して、乾燥運転モード(図13(c))においては、外気を導入し、これをヒータ554で暖めて温風にするので、ヒータ554に投入すべき電力は相対的に大きくなる。
【0041】
つまり、循環送風モードから直ちに乾燥運転モードに遷移させると、その切替直後にはヒータへの投入電力が不足して温風の温度が低下するおそれがある。これに対して、本具体例においては、図13(b)に表したように、まず外気導入モードに変更し、外気を乾燥運転の温度まで暖めるために必要とされる電力がヒータ554に投入される状態を形成する。しかる後に、ダンパ590を開きダンパ594を閉じることにより、直ちに乾燥運転に適した温度の温風をダクト592から吹き出させることができる。
【0042】
また、風量についても、循環送風モード(図13(a))と乾燥運転(図13(c))とでは、風路のコンダクタンスが異なるため、ファン552に対する負荷が異なる場合もある。これに対して、まず外気導入モード(図13(b))を実行することにより、風路のコンダクタンスを乾燥運転モードの状態に近づけることができ、ファン552の運転状態を乾燥運転の条件により迅速に近づけることが可能である。
【0043】
図14は、ダンパの開閉のタイミングをずらした第2の具体例を表すフローチャートである。
本具体例においては、制御部510は、乾燥運転の開始の指示を受け取る(ステップS104)と、まず外気導入モード(図13(b))を実行する(ステップS118)。しかる後に、風量・温度を変更する(ステップS106)。すなわち、温風の風量・温度を乾燥運転に適した設定に変更する。なお、ここでも、図8〜図10に関して前述したように、複数のステップに分けてもよい。
しかる後に、制御部510は、ダンパ590、594を閉じる(ステップS119)。すると、図13(c)に表したように、温風はダクト592から排出され、乾燥運転が開始する(ステップS110)。
【0044】
すなわち、本具体例においては、外気導入モードにした後にファン552、ヒータ554の設定を変更して風量・温度を変更する。このようにしても、ファン552やヒータ554に対する負荷を乾燥運転の条件により早く近づけることにより、所定の風量・温度をより迅速に得られる。
【0045】
次に、室内暖房運転と乾燥運転とを切り替える場合の制御について説明する。
図15は、室内暖房運転と乾燥運転を可能とした暖房便座装置を表す概念図である。
本具体例においては、ダクト592の下流がダクト(第2風路)597とダクト(第1風路)598とに分岐している。そして、この分岐部にダンパ(第1開閉部)596が設けられている。ダンパ596は、ダクト597とダクト598とを交番的に開閉可能とされている。例えば、ダクト597をケーシング500の側面または後面に開放することにより、温風によるトイレ室の室内暖房が可能となる。一方、ダクト598を図4に例示した如く便座に座る使用者の「おしり」などに向けて開放すれば、乾燥運転が可能となる。この場合には、図15(a)は室内暖房運転(第3のモード)、図15(b)は乾燥運転(第2のモード)の状態をそれぞれ表す。
このような暖房便座装置において、室内暖房運転と乾燥運転とを切り替える場合にも、制御に工夫を加えることが望ましい。
【0046】
図16は、室内暖房運転から乾燥運転に切り替える制御を表すフローチャートである。
【0047】
すなわち、図15(a)に表したような状態で室内暖房運転をしている時に、乾燥運転の開始の指示を受け取る(ステップS104)と、制御部510は、まず、風量・温度を変更する(ステップS122)。すなわち、温風の風量・温度を乾燥運転に適した設定に変更する。なお、ここでも、図8〜図10に関して前述したように、複数のステップに分けてもよい。
しかる後に、制御部510は、ダンパ596を動作させ、風路を切り替える(ステップS124)。すると、図15(b)に表したように、温風はダクト598から排出され、乾燥運転が開始する(ステップS110)。
【0048】
つまり、本具体例においても、まず風量・温度を変更し、その後、ダクト598からの温風の吹きだしを開始させる。このようにすれば、室温暖房運転の条件の風量・温度の温風が使用者の「おしり」などに吹き付けられることを防止でき、使用感にすぐれ快適な暖房便座装置を実現できる。
【0049】
ここで、便座暖房中に室内暖房を行う場合の制御について、一例として図3を参照しつつ説明する。
室内暖房運転においては、ダンパ590を開き、ダクト592から吹出す温風により、トイレ室の室内暖房を行う。しかし、1機の温風供給手段550により室内暖房だけを行うと、その間、便座暖房運転が実行できなくなる。そこで、便座暖房と室内暖房とを同時に行う場合には、例えば、ダンパ590を完全に開閉するのではなく半開きの状態に維持して、ダンパ590と便座内風路412の両方に温風が供給されるように制御すればよい。なお、半開きの状態は前述した第3のモードに含まれるものとする。この場合、温風の温度は便座を適温に暖めるように制御することが望ましい。あるいは、所定の時間間隔でダンパ590を開閉し、前述した第1のモードと第3のモードとを切替えてもよい。この場合には、室内暖房を行っているときは室内暖房用の出力で温風供給手段550を動作させ、便座暖房を行っているときは便座暖房用の出力で温風供給手段550を動作させることが望ましい。
【0050】
図17は、乾燥運転から室内暖房運転に切り替える制御を表すフローチャートである。
【0051】
すなわち、図15(b)に表したような状態で乾燥運転をしている時に、乾燥運転の停止の指示を受け取る(ステップS112)と、制御部510は、まず、ダンパ596を動作させ、風路を切り替える(ステップS126)。すると、図15(a)に表したように、温風はダクト597から排出される。しかる後に、制御部510は、温風の風量・温度を変更し(ステップS128)、室温暖房が開始される(ステップS120)。
【0052】
つまり、本具体例においても、まず風路を切り替え、その後、風量・温度の設定を変更する。このようにすれば、室温暖房運転の条件の風量・温度の温風が使用者の「おしり」などに吹き付けられることを防止でき、使用感にすぐれ快適な暖房便座装置を実現できる。
【0053】
以上、図1〜図17を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。
以下、これら各具体例に付加することができる構成について説明する。
図18は、ケーシング500と便座410の間に設けられた送出部560の断面構造を例示する概念図である。
本具体例の場合、ケーシング500には、突出したダクト562が設けられている。ダクト562の先端にはダンパ564が開閉自在に設けられている。ダクト562は、便座410を開いた状態においては後退し、ケーシング500の前端面が略平坦な面となるようにしてもよい。便座410を閉じた状態においてはダクト562は突出し、便座410に設けられた導入口414に挿入された状態となる。この状態で便座410の風路412に温風を導入することができる。また、ダクト562の周囲に、弾性材料からなるパッキン568を適宜設けることにより、送出部560おける温風の「漏れ」を抑制できる。また、戻入部570においても同様の構造を採用することができる。
このような構造にすれば、便座410をケーシング500から取り外して清掃や水洗いなどする際にも、簡単に取り外し、再装着することができる。
【0054】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、図1乃至図18に関して前述した各具体例は、技術的に可能な範囲において適宜組み合わせることができ、これらも本発明の範囲に包含される。
また、暖房便座装置の構造や動作の内容についても、図1乃至図18に関して前述したものには限定されず、当業者が適宜設計変更することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができるものも本発明の要旨を含む限り、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置の模式斜視図である。
【図2】本実施形態の便座暖房機構を表す概念図である。
【図3】温風の風路の切替を説明するための模式図である。
【図4】ダクト592により乾燥運転を可能とした具体例を表す模式図である。
【図5】本具体例の暖房便座装置の主要構成を表すブロック図である。
【図6】便座暖房運転から乾燥運転に切り替える際の制御を表すフローチャートである。
【図7】リモコン200に設けられたスイッチを例示する模式図である。
【図8】便座暖房運転から乾燥運転に切り替える際の制御の第2の具体例を表すフローチャートである。
【図9】本具体例の制御のタイミングチャートである。
【図10】便座暖房運転から乾燥運転に切り替える際の制御の第3の具体例を表すフローチャートである。
【図11】乾燥運転から便座暖房運転に切り替える際の制御の表すフローチャートである。
【図12】ダンパの開閉のタイミングをずらした具体例を表すフローチャートである。
【図13】具体例に対応する風路の変化を表す概念図である。
【図14】ダンパの開閉のタイミングをずらした第2の具体例を表すフローチャートである。
【図15】室内暖房運転と乾燥運転を可能とした暖房便座装置を表す概念図である。
【図16】室内暖房運転から乾燥運転に切り替える制御を表すフローチャートである。
【図17】乾燥運転から室内暖房運転に切り替える制御を表すフローチャートである。
【図18】ケーシング500と便座410の間に設けられた送出部560の断面構造を例示する概念図である。
【符号の説明】
【0056】
200 リモコン、231 赤外線透過窓、232 大洗浄スイッチ、234 小洗浄スイッチ、236 便蓋閉スイッチ、238 便蓋開スイッチ、240 便座開スイッチ、242 乾燥スイッチ、300 水洗便器、400 便蓋、410 便座、412 便座内風路、414 導入口、418 仕切り、500 ケーシング、510 制御部、540 第1温度検知部、542 第2温度検知部、546、548 ダンパ、550 温風供給手段、552 ファン(送風部)、554 ヒータ(加熱部)、560 送出部、562 ダクト、564 ダンパ、568 パッキン、570 戻入部、580 吸引口、582 排出口、590 ダンパ、592 ダクト、594 ダンパ、596 ダンパ、597 ダクト、598 ダクト、615 吐水ノズル、920 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風部と、
前記送風部により送風される空気を加熱する加熱部と、
内部に便座内風路を有する便座と、
前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路とを含む循環風路と、
前記循環風路から分岐し、温風を吹き出し可能な第1風路と、
前記第1風路を開閉する第1開閉部と、
前記送風部、前記加熱部及び前記第1開閉部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記循環風路に温風を循環させる第1のモードと、前記第1風路から温風を吹き出させる第2のモードと、を実行可能であり、
前記第1のモードから前記第2のモードに切り替える際に、前記送風部及び前記加熱部の少なくともいずれかの設定を変更してから前記第1開閉部を開いて前記第1風路から温風を吹き出させることを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
送風部と、
前記送風部により送風される空気を加熱する加熱部と、
内部に便座内風路を有する便座と、
前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路とを含む循環風路と、
前記循環風路から分岐し、温風を吹き出し可能な第1風路と、
前記第1風路を開閉する第1開閉部と、
前記送風部、前記加熱部及び前記第1開閉部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記循環風路に温風を循環させる第1のモードと、前記第1風路から温風を吹き出させる第2のモードと、を実行可能であり、
前記第2のモードから前記第1のモードに切り替える際に、前記第1開閉部を閉じて前記第1風路からの温風の吹き出しを停止させてから、前記送風部及び前記加熱部の設定を変更することを特徴とする暖房便座装置。
【請求項3】
送風部と、
前記送風部により送風される空気を加熱する加熱部と、
内部に便座内風路を有する便座と、
前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路とを含む循環風路と、
前記循環風路から分岐し、温風を吹き出し可能な第1風路と、
前記循環風路から分岐し、温風を吹き出し可能な第2風路と、
前記第1風路を開閉する第1開閉部と、
前記送風部、前記加熱部及び前記第1開閉部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第2風路から温風を吹き出させる第3のモードと、前記第1風路から温風を吹き出させる第2のモードと、を実行可能であり、
前記第3のモードから前記第2のモードに切り替える際に、前記送風部及び前記加熱部の少なくともいずれかの設定を変更してから前記第1開閉部を開いて前記第1風路から温風を吹き出させることを特徴とする暖房便座装置。
【請求項4】
送風部と、
前記送風部により送風される空気を加熱する加熱部と、
内部に便座内風路を有する便座と、
前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路とを含む循環風路と、
前記循環風路から分岐し、温風を吹き出し可能な第1風路と、
前記循環風路から分岐し、温風を吹き出し可能な第2風路と、
前記第1風路を開閉する第1開閉部と、
前記送風部、前記加熱部及び前記第1開閉部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第2風路から温風を吹き出させる第3のモードと、前記第1風路から温風を吹き出させる第2のモードと、を実行可能であり、
前記第2のモードから前記第3のモードに切り替える際に、前記第1開閉部を閉じて前記第1風路からの温風の吹き出しを停止させてから、前記送風部及び前記加熱部の設定を変更することを特徴とする暖房便座装置。
【請求項5】
前記第2風路は、人体以外に向けて前記温風を吹き出すことを特徴とする請求項3または4に記載の暖房便座装置。
【請求項6】
前記第1風路は、人体に向けて前記温風を吹き出すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項7】
前記循環風路に外気を導入する吸引口と、
前記吸引口を開閉する第2開閉部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記第2のモードにおいて前記第2開閉部を開き前記吸引口から導入した外気を前記送風部及び前記加熱部を介して前記第1風路に導くことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項8】
便器と、
前記便器の上に設けられた請求項1〜7のいずれか1つに記載の暖房便座装置と、
を備えたことを特徴とするトイレ装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2008−148865(P2008−148865A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338865(P2006−338865)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】