説明

暖房便座装置

【課題】座った瞬間と、時間が経過した後と、で感じる温度差を低減できる、あるいは熱さを感じることなく快適に着座し続けることができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ヒータと、前記ヒータの上に設けられ弾力性を有するクッション部と、前記クッション部の中または上に設けられた第2の温度検知手段と、前記ヒータからみて前記第2の温度検知手段よりも近傍に設けられた第1の温度検知手段と、を有する便座と、前記第1の温度検知手段により検知された温度と、第2の温度検知手段により検知された温度と、の温度差に基づいて前記ヒータの出力を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、暖房便座装置に関し、具体的には便器に設けられる便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、便座の座面は、PP(polypropylene:ポリプロピレン)等の樹脂で製造されている。そのため、使用者が便座に座ったときに、硬い座り心地を与えている。また一方、冬場などの気温の低いときに冷えた便座に座ると、冷感を感じる。そこで、座り心地を向上させるために、圧縮変形性あるいは弾力性(クッション性)を有する基材に発熱体を挟持させた着座採暖具(暖房便座装置)がある(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、クッション性を有する便座において、発熱体(ヒータ)がクッション部の内部あるいは下に配置されている場合には、使用者が便座に座ると、便座の座面とヒータとの距離が変化する。すなわち、便座の座面とヒータとが接近する。座面とヒータとが接近すると、使用者は便座に座った瞬間は「暖かい」と感じても、時間が経過すると「熱い」と感じることもあり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−210231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、座った瞬間と、時間が経過した後と、で感じる温度差を低減できる、あるいは熱さを感じることなく快適に着座し続けることができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、ヒータと、前記ヒータの上に設けられ弾力性を有するクッション部と、前記クッション部の中または上に設けられた第2の温度検知手段と、前記ヒータからみて前記第2の温度検知手段よりも近傍に設けられた第1の温度検知手段と、を有する便座と、前記第1の温度検知手段により検知された温度と、第2の温度検知手段により検知された温度と、の温度差に基づいて前記ヒータの出力を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、2つの温度検知手段がそれぞれ検知した温度の温度差により、人が便座に座った際のクッション部の圧縮変形を判断し、その温度差に応じてヒータの出力を制御するため、便座に着座した瞬間と、着座してから時間が経過した後と、で感じる温度差を低減することができる。そのため、使用者は、熱さを感じることなく快適に着座し続けることができる。
【0007】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記制御部は、前記温度差が小さくなると、前記ヒータの出力を低下または停止させることを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、便座に着座した瞬間と、着座してから時間が経過した後と、で感じる温度差を低減することができる。
【0008】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記便座は、前記クッション部の中に設けられ前記ヒータからの熱を前記便座の着座面に向けて伝達する熱伝達部材をさらに有し、前記第2の温度検知手段は、前記熱伝達部材に接触して配置されたことを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、第2の温度検知手段は、熱伝達部材に接触しているため、制御部は、第1の温度検知手段が検知した温度と、第2の温度検知手段が検知した温度と、の温度差の変化をより早く検知できる。そのため、制御部は、便座の使用状況をより早く判断でき、ヒータの出力をより早く適切な設定値に変更できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、座った瞬間と、時間が経過した後と、で感じる温度差を低減できる、あるいは熱さを感じることなく快適に着座し続けることができる暖房便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】本実施形態にかかる暖房便座装置の主な構成を例示するブロック図である。
【図3】暖房便座装置の便座の断面を表す断面模式図である。
【図4】使用者が着座した状態の便座の断面を表す断面模式図である。
【図5】本実施形態にかかる暖房便座装置の動作の具体例を例示するフローチャートである。
【図6】熱流束に応じたヒータの出力を予め保存したデータベースを例示するテーブルである。
【図7】本実施形態にかかる暖房便座装置の動作の他の具体例を例示するフローチャートである。
【図8】本実施形態の変形例にかかる便座の断面を表す断面模式図である。
【図9】本変形例における熱流束に応じたヒータの出力を予め保存したデータベースを例示するテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
また、図2は、本実施形態にかかる暖房便座装置の主な構成を例示するブロック図である。
【0012】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。暖房便座装置100は、暖房便座機能部400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、暖房便座機能部400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0013】
便座200は、後に詳述するように、ヒータ210を内蔵する。このヒータ210は、通電されて発熱することにより、便座200を暖めることができる。なお、図1に表した便座200では、1本のヒータ210が往復するように設置されているが、ヒータ210の設置形態や設置数はこれだけに限定されず、例えば2本以上の複数のヒータ210が設置されていてもよい。また、便座200は、図2に表したように、第1の温度検知手段271と、第2の温度検知手段272と、を内蔵する。第1および第2の温度検知手段271、272は、便座200の内部の温度を検知できる。これについては、後に詳述する。
【0014】
暖房便座機能部400は、第1および第2の温度検知手段271、272からの検知信号に基づいてヒータ210の加熱量を制御する制御部410を有する。また、暖房便座機能部400は、便座200への使用者の着座を検知する着座検知センサ420と、トイレ室への使用者の入室を検知する入室検知センサ450と、トイレ室の室内温度を検知する室温センサ460と、を有する。
【0015】
着座検知センサ420および入室検知センサ450としては、例えば、焦電センサや、測距センサなどの赤外線投光式のセンサ、超音波センサ、またはドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどを用いることができる。なお、焦電センサは、使用者の接近を迅速に検知できる点で入室検知センサ450により適している。
【0016】
図1に表したトイレ装置では、暖房便座機能部400の上面に凹設部441が形成され、この凹設部441に一部が埋め込まれるように入室検知センサ450および室温センサ460が設けられている。入室検知センサ450は、便蓋300が閉じた状態では、その基部付近に設けられた透過窓310を介して使用者の入室を検知する。
【0017】
また、暖房便座機能部400は、衛生洗浄装置としての機能部を併設してもよい。すなわち、暖房便座機能部400は、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴出する図示しない吐水ノズルを有する衛生洗浄機能部などを適宜備えてもよい。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0018】
またさらに、暖房便座機能部400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。この際、暖房便座機能部400の側面には、脱臭ユニットからの排気口443及び室内暖房ユニットからの排出口445が適宜設けられる。ただし、本発明においては、衛生洗浄機能部やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
【0019】
図3は、暖房便座装置の便座の断面を表す断面模式図である。
また、図4は、使用者が着座した状態の便座の断面を表す断面模式図である。
便座200は、図3および図4に表したように、ヒータ210を内蔵する。ヒータ210としては、いわゆる「チュービングヒータ」や、「シースヒータ」、「ハロゲンヒータ」、「カーボンヒータ」などを用いることができる。また、ヒータ210の形状は、ワイヤ状やシート状やメッシュ状などのいずれであってもよい。
【0020】
また、便座200は、基材230と、弾力性(クッション性)を有するクッション部240と、クッション部240の上面や側面を覆う表面部250と、ヒータ210の上に隣接して設けられた熱伝導体260と、基材230の内部に設けられた断熱材220と、を有する。基材230は、上板231と底板233とを有する。但し、基材230は、一体的に形成されていてもよい。また、表面部250の表面は、着座面として機能する。
【0021】
基材230は、例えばPP(polypropylene:ポリプロピレン)等の樹脂から形成されている。熱伝導体260としては、例えばアルミシートやカーボンシートなどが挙げられる。クッション部240は、ヒータ210の上に設けられクッション性を有するため、使用者600が便座200に座ったときの座り心地を向上させることができる。また、断熱材220は、便座200の下への放熱を抑制できる。
【0022】
また、便座200は、図3および図4に表したように、第1の温度検知手段271と、第2の温度検知手段272と、を内蔵する。第2の温度検知手段272は、クッション部240の中または上に設けられている。一方、第1の温度検知手段271は、ヒータ210からみて第2の温度検知手段272よりも近傍に設けられている。
すなわち、第1の温度検知手段271は、ヒータ210の近傍に設置されている。一方、第2の温度検知手段272は、ヒータ210から上方に離間した位置、すなわちヒータ210からみてクッション部240側および表面部250側に離間した位置に設置されている。つまり、第2の温度検知手段272は、ヒータ210からの熱エネルギーがクッション部240側および表面部250側へ移動するときに、第1の温度検知手段271よりも下流側に設置されている。
【0023】
ここで、使用者600が便座200に着座すると、図4に表したように、クッション部240および表面部250の上面と、ヒータ210と、の距離は変化する。すなわち、使用者600が便座200に座る前と座った後とを比較した場合、クッション部240および表面部250の上面と、ヒータ210と、の距離は、座った後の方がより小さい。これは、クッション部240はクッション性を有し、使用者600が便座200に座ったことにより、そのクッション部240が圧縮変形させられるためである。
【0024】
クッション部240および表面部250の上面と、ヒータ210と、の距離が小さくなると、使用者600は便座200に座った瞬間では「暖かい」と感じても、時間が経過すると「熱い」と感じることもあり得る。これは、クッション部240および表面部250の上面と、ヒータ210と、の距離が小さくなると、ヒータ210と使用者(人体)600との間における熱伝達係数が大きくなり、熱抵抗が小さくなるためである。これにより、ヒータ210からの熱エネルギーは、クッション部240および表面部250へ移動しやすくなり、その熱流束は大きくなる。
【0025】
そこで、本実施形態にかかる暖房便座装置100では、制御部410は、第1の温度検知手段271と、第2の温度検知手段272と、によりそれぞれ検知された温度から温度差を算出し、その温度差に基づいてヒータ210の出力を制御(変更)する。これについてより詳細に説明すると、まず、第1の温度検知手段271が検知した温度と、第2の温度検知手段272が検知した温度と、には差(温度差)がある。これは、前述したように、第1の温度検知手段271は、ヒータ210の近傍に設置されている一方で、第2の温度検知手段272は、ヒータ210からみてクッション部240側および表面部250側に離間した位置に設置されているためである。
【0026】
そして、使用者600が便座200に着座すると、図4に表したように、クッション部240が圧縮変形させられるため、第2の温度検知手段272は、第1の温度検知手段271側へ移動する。そうすると、第1の温度検知手段271が検知した温度と、第2の温度検知手段272が検知した温度と、の差(温度差)は小さくなる。つまり、第2の温度検知手段272が検知した温度は、第1の温度検知手段271が検知した温度に近づく。これは、クッション部240が圧縮変形することにより、ヒータ210からの熱エネルギーの熱流束が大きくなるためである。
【0027】
言い換えれば、第1の温度検知手段271が検知した温度と、第2の温度検知手段272が検知した温度と、の温度差を算出することにより、ヒータ210からの熱エネルギーの熱流束を算出(推測)することができる。そして、制御部410は、算出された熱流束に基づいてヒータ210の出力を設定(変更)する。なお、制御部410は、算出された熱流束に基づいてヒータ210の出力を設定するときには、その熱流束に応じたヒータ210の出力を予め保存したデータベースを参照してもよいし、所定の数式により算出してもよい。
【0028】
そして、第1の温度検知手段271が検知した温度と、第2の温度検知手段272が検知した温度と、の温度差が小さくなった場合には、制御部410は、使用者が便座200に着座したと判断し、ヒータ210の出力を低下あるいは停止させる。一方、第1の温度検知手段271が検知した温度と、第2の温度検知手段272が検知した温度と、の温度差が大きくなった場合には、使用者が便座200から離座したと判断し、ヒータ210の出力を上昇させる。これによれば、制御部410は、第1の温度検知手段271が検知した温度と、第2の温度検知手段272が検知した温度と、の温度差に応じてヒータ210の出力を制御するため、便座200に着座した瞬間と、着座してから時間が経過した後と、で感じる温度差を低減することができる。そのため、使用者は、熱さを感じることなく快適に着座し続けることができる。
【0029】
次に、本実施形態にかかる暖房便座装置100の動作の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図5は、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作の具体例を例示するフローチャートである。
また、図6は、熱流束に応じたヒータの出力を予め保存したデータベースを例示するテーブルである。
【0030】
まず、入室検知センサ450がトイレ室への使用者の入室を検知すると、制御部410は、便蓋300を開放させる(ステップS101)。続いて、着座検知センサ420が便座200への使用者の着座を検知すると(ステップS103)、制御部410は、第1の温度検知手段271が検知した温度と、第2の温度検知手段272が検知した温度と、の温度差が変化したか否かを判断する(ステップS105)。
【0031】
第1の温度検知手段271が検知した温度と、第2の温度検知手段272が検知した温度と、の温度差が変化した場合には(ステップS105:YES)、室温センサ460は、トイレ室の室内温度を検知する(ステップS107)。続いて、制御部410は、使用者が便座200に着座したときのヒータ210の出力を検出する(ステップS109)。続いて、制御部410は、ステップS105において算出した温度差の変化と、ステップS107において測定したトイレ室の室温と、ステップS109において検出したヒータ210の出力と、に基づいてヒータ210からクッション部240側へ移動する熱エネルギーの熱流束を算出(推測)する(ステップS111)。
【0032】
ここで、本具体例では、図6に表したデータベースを参照することにより、熱流束を算出することができる。より具体的に説明すると、まず、使用者が着座しているときに快適さを感じる熱流束は、室温により異なると考えられるため、本具体例の暖房便座装置100は、トイレ室の室温に応じたテーブルを予め保存している。そして、制御部410は、使用者が着座したときの室温に応じたテーブルを参照し、ステップS105において算出した温度差の変化と、ステップS109において検出したヒータ210の出力と、を照合することにより熱流束を算出(推測)する(ステップS111)。
【0033】
例えば、図6に表したように、ステップS105において算出した温度差の変化が「大」であり、ステップS109において検出したヒータ210の出力が「低」である場合には、制御部410は、そのときの熱流束を「Q」と算出する。これと同様に、ステップS105において算出した温度差の変化が「小」であり、ステップS109において検出したヒータ210の出力が「低」である場合には、制御部410は、そのときの熱流束を「Q」と算出する。
【0034】
なお、ステップS105において算出した温度差の変化が「大」であるとは、第1の温度検知手段271が検知した温度と、第2の温度検知手段272が検知した温度と、の温度差が大きくなったことを意味する。一方、ステップS105において算出した温度差の変化が「小」であるとは、第1の温度検知手段271が検知した温度と、第2の温度検知手段272が検知した温度と、の温度差が小さくなったことを意味する。
【0035】
ここで、図3および図4に関して前述したように、使用者600が便座200に着座すると、第1の温度検知手段271が検知した温度と、第2の温度検知手段272が検知した温度と、の温度差は小さくなる。そのため、温度差の変化が「小」であるときの熱流束「Q」は、温度差の変化が「大」であるときの熱流束「Q」よりも大きい値として保存されている。したがって、制御部410は、温度差の変化が「大」であるときの熱流束「Q」よりも、温度差の変化が「小」であるときの熱流束「Q」の方を大きい値として算出する。
【0036】
続いて、制御部410は、算出した熱流束に応じてヒータ210の出力を設定(変更)する(ステップS113)。本具体例では、制御部410が設定するヒータ210の出力は、熱流束と同様に、データベースとして予め保存されている。例えば、図6に表したように、算出した熱流束が「Q」である場合には、制御部410は、ヒータ210の出力を「W」に設定する。これと同様に、算出した熱流束が「Q」である場合には、制御部410は、ヒータ210の出力を「W」に設定する。
【0037】
ここで、算出した熱流束が「Q」である場合、すなわち温度差の変化が「小」である場合には、制御部410は、図3および図4に関して前述したように、使用者600が便座200に着座したと判断し、ヒータ210の出力を低下あるいは停止させる。一方、算出した熱流束が「Q」である場合、すなわち温度差の変化が「大」である場合には、制御部410は、使用者600が便座200から離座したと判断し、ヒータ210の出力を上昇させる。
【0038】
そのため、出力「W」は、出力「W」よりも小さい値として保存されている。したがって、制御部410は、使用者600が便座200に着座することによりステップS105において算出した温度差が小さくなった場合には、ヒータ210の出力を例えば「W」に設定し低下あるいは停止させる(ステップS113)。一方、制御部410は、使用者600が便座200から離座することにより、ステップS105において算出した温度差が大きくなった場合には、ヒータ210の出力を例えば「W」に設定し上昇させる(ステップS113)。
【0039】
続いて、制御部410は、着座検知センサ420により使用者が便座200から離座したか否かを判断する(ステップS115)。使用者が便座200から離座した場合には(ステップS115:YES)、制御部410は、使用者が便座200に着座する前の設定値にヒータ210の出力を戻し(ステップS117)、便蓋300を閉止させる(ステップS119)。
【0040】
本具体例の動作によれば、図3および図4に関して前述したように、制御部410は、第1の温度検知手段271が検知した温度と、第2の温度検知手段272が検知した温度と、の温度差に応じてヒータ210の出力を制御するため、便座200に着座した瞬間と、着座してから時間が経過した後と、で感じる温度差を低減することができる。そのため、使用者は、熱さを感じることなく快適に着座し続けることができる。
【0041】
図7は、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作の他の具体例を例示するフローチャートである。
入室検知センサ450がトイレ室への使用者の入室を検知し、制御部410が便蓋300を開放させてしばらくすると、便座200の温度は低下する場合がある。例えば、使用者がトイレ室に入室してから便座200に着座するまでの時間が長い場合などである。これは、便蓋300が開放されると、便座200の表面からの放熱量が大きくなるためである。便座200の温度が低下すると、使用者は便座200に着座したときに冷感を感じ、不快感を感じる場合がある。
【0042】
そこで、本具体例の動作では、便蓋300が開放されることにより便座200の温度が低下した場合には、制御部410は、便座200の温度が設定温度になるようにヒータ210の出力を上昇させる。これを図7に表したフローチャートを参照しつつ説明すると、まず、入室検知センサ450がトイレ室への使用者の入室を検知すると、制御部410は、便蓋300を開放させる(ステップS101)。続いて、制御部410は、第2の温度検知手段272が検知した温度が低下したか否かを判断する(ステップS121)。第2の温度検知手段272の検知温度が低下した場合には(ステップS121:YES)、制御部410は、便座200の温度が設定温度になるようにヒータ210の出力を上昇させる(ステップS123)。
【0043】
一方、第2の温度検知手段272の検知温度が低下していない場合には(ステップS121:NO)、着座検知センサ420が便座200への使用者の着座を検知すると(ステップS103)、制御部410は、第1の温度検知手段271が検知した温度と、第2の温度検知手段272が検知した温度と、の温度差が変化したか否かを判断する(ステップS105)。以下の動作(ステップS107〜S119)については、図5および図6に関して前述した動作と同様である。
【0044】
本具体例の動作によれば、便蓋300が開放され、便座200の温度が低下した場合であっても、制御部410は、便座200の温度低下を検知し、便座200の温度が設定温度になるようにヒータ210の出力を上昇させる。そのため、使用者が便座200に着座したときに冷感を感じたり、不快感を感じることを抑制することができる。また、その他の効果についても、図5および図6に関して前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0045】
次に、便座200の変形例について、図面を参照しつつ説明する。
図8は、本実施形態の変形例にかかる便座の断面を表す断面模式図である。
また、図9は、本変形例における熱流束に応じたヒータの出力を予め保存したデータベースを例示するテーブルである。
【0046】
本変形例の便座200aは、図3に表した便座200と比較すると、クッション部240の中に熱伝達部材280をさらに有する。熱伝達部材280の一端は、ヒータ210あるいは熱伝導体260に接続されており、熱伝達部材280の他端は表面部250に接続されている。そして、熱伝達部材280は、例えば金属などのようにクッション部240よりも熱を伝えやすい材料から形成されている。そのため、熱伝達部材280は、ヒータ210からの熱エネルギーを表面部250すなわち便座200aの表面(着座面)に向けて効率よく伝達できる。なお、図8に表した便座200aでは、4つの熱伝達部材280が設けられているが、熱伝達部材280の設置数や設置形態は、これだけに限定されるわけではない。また、第2の温度検知手段272は、熱伝達部材280に接触して配置されている。その他の構造については、図3に表した便座200の構造と同様である。
【0047】
本変形例の便座200aによれば、ヒータ210からの熱エネルギーは、熱伝達部材280を介してより早くクッション部240および表面部250に移動する。そのため、本変形例の便座200aでは、制御部410は、第1の温度検知手段271が検知した温度と、第2の温度検知手段272が検知した温度と、の温度差の変化を図3に表した便座200よりも早く検知できる。また、第2の温度検知手段272は、クッション部240および表面部250の温度変化を図3に表した便座200よりも早く検知できる。そのため、制御部410は、便座200への使用者の着座や、便座200からの使用者の離座や、便蓋300の開放などの使用状況をより早く判断でき、ヒータ210の出力をより早く適切な設定値に変更できる。
【0048】
一方、図3に表した便座200は、熱伝達部材280を有しておらず、第2の温度検知手段272は、熱伝達部材280に接触していない。そのため、第1の温度検知手段271が検知した温度と、第2の温度検知手段272が検知した温度と、の温度差はより大きい値として算出される。そのため、第1の温度検知手段271が検知した温度と、第2の温度検知手段272が検知した温度と、の温度差の変化は、図8に表した便座200aよりも顕著に現れる。したがって、制御部410は、その温度差の変化をより精度よく算出することができ、便座200の使用状況をより正確に判断してヒータ210の出力をより精度よく設定できる。
【0049】
また、本変形例の便座200aを有する暖房便座装置100の動作は、図5〜図7に関して前述した動作と同様である。但し、図3に表した便座200と、図8に表した便座200aと、におけるヒータ210からの熱エネルギーの熱流束は異なる。そのため、熱流束に応じたヒータ210の出力を予め保存したデータベースは、図9に表したように、図6に表したテーブルとは異なることがより好ましい。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、制御部410は、第1の温度検知手段271と、第2の温度検知手段272と、によりそれぞれ検知された温度から温度差を算出し、その温度差に基づいてヒータ210の出力を制御する。そして、制御部410は、その温度差が小さくなった場合には、使用者が便座200、200aに着座したと判断し、ヒータ210の出力を低下あるいは停止させる。これにより、便座200、200aに着座した瞬間と、着座してから時間が経過した後と、で感じる温度差を低減することができる。そのため、使用者は、熱さを感じることなく快適に着座し続けることができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便座200、200aなどが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などやヒータ210や熱伝達部材280の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0052】
100 暖房便座装置、 200、200a 便座、 210 ヒータ、 220 断熱材、 230 基材、 231 上板、 233 底板、 240 クッション部、 250 表面部、 260 熱伝導体、 271 第1の温度検知手段、 272 第2の温度検知手段、 280 熱伝達部材、 300 便蓋、 310 透過窓、 400 暖房便座機能部、 410 制御部、 420 着座検知センサ、 441 凹設部、 443 排気口、 445 排出口、 450 入室検知センサ、 460 室温センサ、 600 使用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータと、前記ヒータの上に設けられ弾力性を有するクッション部と、前記クッション部の中または上に設けられた第2の温度検知手段と、前記ヒータからみて前記第2の温度検知手段よりも近傍に設けられた第1の温度検知手段と、を有する便座と、
前記第1の温度検知手段により検知された温度と、第2の温度検知手段により検知された温度と、の温度差に基づいて前記ヒータの出力を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記温度差が小さくなると、前記ヒータの出力を低下または停止させることを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記便座は、前記クッション部の中に設けられ前記ヒータからの熱を前記便座の着座面に向けて伝達する熱伝達部材をさらに有し、
前記第2の温度検知手段は、前記熱伝達部材に接触して配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の暖房便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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【図9】
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