説明

暖房便座装置

【課題】便座を長年使用してもクッション性を維持することができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】底面を形成する基材と着座面との間に、弾性を有する形状記憶合金製のクッション部と、ヒータと、を内蔵した便座と、前記ヒータによる加熱を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ヒータによる加熱を実行するモードとして、前記着座面に人が座ったことによって変形した前記クッション部を復元する復元モードを実行可能であることを特徴とする暖房便座装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、暖房便座装置に関し、具体的には便器に設けられる便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、便座の座面は、PP(polypropylene:ポリプロピレン)等の非弾力性の樹脂で製造されている。そのため、使用者が便座に座ったときに、硬い座り心地を与えている。そこで、座り心地を向上させるために、クッション性を有する便座(柔軟性構造体)やクッション材がある(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載された柔軟性構造体は、柔軟性断熱材と熱伝導性材料とを便座の内部に設けて、クッション性と熱伝導性を高めた暖房便座である。しかしながら、クッションは繊維質であるため、長年使用していると、そのクッションの機能や性能が衰える。つまり、クッションを長年使用していると、徐々に弾力が低下して、クッション性が衰えてしまう。本願明細書において、この現象を「へたり」と称する。
【特許文献1】特開2000−210227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、便座を長年使用してもクッション性を維持することができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、底面を形成する基材と着座面との間に、弾性を有する形状記憶合金製のクッション部と、ヒータと、を内蔵した便座と、前記ヒータによる加熱を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ヒータによる加熱を実行するモードとして、前記着座面に人が座ったことによって変形した前記クッション部を復元する復元モードを実行可能であることを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、クッションを長年使用して「へたり」が生じたとしても、クッション部を加熱することにより、そのクッション部のクッション性が復元される。そのため、座面のクッション性を長期間に亘って維持することができる。
【0006】
また、第2の発明は、底面を形成する基材と着座面との間に、弾性を有するクッション部と、前記クッション部内に配設された形状記憶合金製の柔軟性部材と、ヒータと、を内蔵した便座と、前記ヒータによる加熱を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ヒータによる加熱を実行するモードとして、前記着座面に人が座ったことによって変形した前記クッション部を復元する復元モードを実行可能であることを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、クッションを長年使用して「へたり」が生じたとしても、クッション部を加熱することにより、そのクッション部のクッション性が復元される。そのため、座面のクッション性を長期間に亘って維持することができる。
【0007】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記復元モードにおいて、前記便座に着座した人の臀部を暖める際に実行する暖房モードよりも高い温度に前記ヒータを加熱することを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、暖房モードよりも高い温度で復元モードを実行するため、使用者の便座への着座中にクッション性が復元されることはなく、使用者はより安定した座面に着座できる。
【0008】
また、第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記便座に近づいた人を検知する検知センサをさらに備え、前記制御部は、前記検知センサが、人を検知していないときに前記復元モードを実行するように制御することを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、便座の近くに人がいないときに復元モードを実行するため、人が便座に着座するときにはクッション性をより確実に復元させることができる。また、暖房モードよりも高い温度で復元モードを実行した場合には、使用者の便座への着座中にクッション性が復元されることはないため、使用者はより安定した座面に着座でき、さらに着座時に熱さを感じることがない。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、便座を長年使用してもクッション性を維持することができる暖房便座装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる便座を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【0011】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。暖房便座装置100は、暖房便座機能部400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、暖房便座機能部400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0012】
便座200は、後に詳述するように、その内部にヒータ240を有する。このヒータ240により、便座200を暖めることができる。図1に表した便座200は1本のヒータ240を有しているが、これだけに限定されず、2本以上の複数のヒータ240を有していてもよい。
【0013】
暖房便座機能部400は、例えば温度センサなどからの検知信号に基づいてヒータ240の加熱量を制御する制御部410を有する。また、暖房便座機能部400は、便座200に近づいた人を検知する検知センサ420を有する。検知センサ420としては、例えば、焦電センサや、測距センサなどの赤外線投光式のセンサ、超音波センサ、またはドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどを用いることができる。
【0014】
また、暖房便座機能部400は、衛生洗浄装置としての機能部を併設してもよい。すなわち、暖房便座機能部400は、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴出する図示しない吐水ノズルを有する衛生洗浄機能部などを適宜備えてもよい。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0015】
またさらに、暖房便座機能部400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。この際、暖房便座機能部400の側面には、脱臭ユニットからの排気口462及び室内暖房ユニットからの排出口464が適宜設けられる。ただし、本発明においては、衛生洗浄機能部やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
【0016】
図2は、本実施形態にかかる便座の断面を表す断面模式図である。
本実施形態にかかる便座200は、便座200の底面を形成する基材210と、着座面を形成する表皮部220と、弾性(クッション性)を有するクッション部230と、基材210と表皮部220との間に設けられたヒータ240と、表皮部220の下に設けられた熱伝導部250と、ヒータ240の上に設けられた熱拡散部260と、ヒータ240の下に設けられた断熱材270と、を備えている。
【0017】
熱伝導部250は、ヒータ240からの熱をより効率的に表皮部220やクッション部230に伝える。また、熱拡散部260は、ヒータ240からの熱のばらつきを抑え、その熱を略均一に表皮部220やクッション部230に伝える。熱伝導部250および熱拡散部260としては、例えばアルミシートやカーボンシートなどが挙げられる。断熱材270は、ヒータ240からの熱が下へ放熱することを抑制する。これにより、ヒータ240からの熱は、より効率的に表皮部220やクッション部230の方へ伝達される。
【0018】
クッション部230は、前述したように弾性(クッション性)を有する。そのため、使用者が便座200に座ると、クッション部230は圧縮変形させられる。ここで、クッションは一般的に繊維質であるため、使用者が長年使用していると、そのクッションには「へたり」が生ずる。つまり、使用者がクッションを長年使用していると、そのクッションは徐々に弾力が低下して、クッション性が衰えてしてしまう。
【0019】
そこで、本実施形態のクッション部230は、形状記憶合金により形成されている。形状記憶合金は、外から力を受けて変形したとしても、変形後にある一定の温度(変態温度)以上に加熱されると元の形状に復元する性質を有する。このような形状記憶合金としては、Ti−Ni(チタン−ニッケル)合金、Au−Cd(金−カドミウム)合金、あるいはCu−Al−Ni(銅−アルミニウム−ニッケル)合金などが挙げられる。現在では、この中でもTi−Ni(チタン−ニッケル)合金が、主に利用されている。
【0020】
そして、本実施形態の便座200は、その内部にヒータ240を備えているため、形状記憶合金により形成されたクッション部230を変態温度以上に加熱することができる。すなわち、制御部410(図1参照)は、ヒータ240を加熱して、形状記憶合金により形成されたクッション部230の形状を復元する復元モードを有する。これによれば、クッション部230に「へたり」が生じたとしても、ヒータ240からクッション部230へ熱を伝えて、そのクッション部230を変態温度以上に加熱することにより、クッション部230を元の形状に復元することができる。つまり、クッション部230のクッション性が復元される。そのため、本実施形態によれば、便座200を長年使用しても、クッション部230のクッション性を維持することができる。
【0021】
またさらに、本実施形態によれば、クッション部230を形状記憶合金により形成することで、高い熱伝導性が得られる。すなわち、クッションの材料として一般的に用いられる発泡性ウレタンなどの場合には、多数の気泡を有するので、熱伝導性に劣る。これに対して、形状記憶合金は基本的に金属であるので高い熱伝導性を有する。その結果として、ヒータ240による熱を便座の着座面に効率よく伝えることができる。すなわち、便座の着座面を少ない消費電力で暖めることが可能となる。
【0022】
次に、クッション部230の具体例について説明する。
図3は、本実施形態のクッション部の基本構造体を例示する斜視模式図である。
また、図4は、本実施形態のクッション部の基本構造体の一部を例示する模式図である。
なお、図4(a)は、図3に表した基本構造体を上方から眺めた平面模式図であり、図4(b)は、図3に表した基本構造体を側方から眺めた場合の一部を表す平面模式図であり、図4(c)は、クッション部の基本繊維を例示する模式図である。図4(c)は、図4(b)に表した矢視Aの方向から眺めた基本繊維に相当する。
【0023】
本実施形態のクッション部230の基本構造体231は、図3に表したように、上部231aおよび下部231bが略六角形のハニカム構造を有している。この基本構造体231を形成する基本繊維231dは、図4(c)に表したように、1本の形状記憶合金線233の周りをさらに形状記憶合金線233が巻きつくように形成されている。
【0024】
クッション部230の基本構造体231の上部231aは、図4(a)に表したように、それぞれの頂点から略六角形の中央部に向かって基本繊維231dが配置され、その中央部において基本繊維231d同士が連結されている。そのため、上部231aは補強されており、ある程度の強度を有している。この構造および効果については、基本構造体231の下部231bについても同様である。
【0025】
また、クッション部230の基本構造体231の側部231cは、図4(b)に表したように、二層構造を有している。そして、それぞれの層の内側には基本繊維231dによって略三角形が形成されている。そのため、側部231cは、上部231aおよび下部231bと同様に、補強されており、ある程度の強度を有している。
【0026】
さらに、本実施形態のクッション部230の基本構造体231では、図3および図4(c)に表したように、上部231aと下部231bとを連結する形状記憶合金線233が設けられている。これによれば、上部231aあるいは下部231bに外から力が加わったとしても、上部231aおよび下部231bが互いに捻れることを抑制することができる。そのため、クッション部230の基本構造体231は全体として補強されており、ある程度の強度を有している。
【0027】
図5は、本実施形態のクッション部の基本繊維の機能を例示する平面模式図である。
なお、図5(a)は、基本繊維が縮んだ状態を表した模式図であり、図5(b)は、基本繊維が伸びた状態を表した模式図であり、図5(c)は、基本繊維が曲がった状態を表した模式図である。
また、図6は、本実施形態のクッション部の基本構造体を寄せ集めた状態を例示する斜視模式図である。
【0028】
クッション部230の基本繊維231dは、図4(c)に関して前述したように、1本の形状記憶合金線233の周りをさらに形状記憶合金線233が巻きつくように形成されている。つまり、巻きつくように形成された形状記憶合金線233は、例えばコイル状のような立体構造形状を有している。そのため、基本繊維231dは、図5(a)および図5(b)に表したように、例えば「コイルばね」などと同様に軸方向(長手方向)に縮んだり伸びたりすることができる。また、基本繊維231dは、図5(c)に表したように、軸が屈曲する方向に曲がることもできる。
【0029】
そして、このような機能を有する基本繊維231dは互いに連結され、図3に表したような略六角形のハニカム構造の基本構造体231に形成される。さらに、図6に表したように、基本構造体231の上部231aと、他の基本構造体231の下部231bと、は連結され、基本構造体231は上下方向に積層される。またさらに、図6に表したように、基本構造体231の側部231cと、他の基本構造体231の側部231cと、は連結され、基本構造体231は平面方向に並列される。なお、図6に表した基本構造体231では、外形の基本繊維231dのみを表しており、上部231a、下部231b、側部231cの内側の基本繊維231dを適宜省略して表している。
【0030】
このようにして、複数の基本構造体231が連結されたクッション部230は、図5に表したような機能を有する基本繊維231dによって形成されているため、全体として弾性(クッション性)を有する。また、クッション部230は、形状記憶合金線233により形成されているため、変態温度以上に加熱されると元の形状に復元する性質を有する。なお、形状記憶合金ではない他の合金によって図3に表した基本構造体231を形成すれば、クッション部230は全体として弾性を有することもできるが、使用者が長年使用していると「へたり」が生ずる。これに対して、本実施形態によれば、弾性を有するクッション部230に「へたり」が生じたとしても、そのクッション部230はヒータ240からの熱を受けて元の形状に復元できる。つまり、クッション部230のクッション性が復元される。そのため、便座200を長年使用しても、クッション部230のクッション性を維持することができる。
【0031】
図7は、本実施形態の変形例にかかる便座の断面を表す断面模式図である。
本変形例にかかる便座200aのクッション部235は、図2に表した便座200のようには、形状記憶合金によっては形成されていない。つまり、クッション部235は、弾性(クッション性)を有する例えば一般的な繊維質などである。そして、このクッション部235の内部には、図7に表したように、形状記憶合金により形成された柔軟性部材236が分散して配置されている。
【0032】
柔軟性部材236は、例えば、図3に表した基本構造体231を上下方向に積層した構造を有している。そして、この柔軟性部材236は、クッション部235内において互いに離間した状態で分散して配置されている。なお、その他の構造については、図2に表した便座200と同様である。
【0033】
本具体例にかかる便座200aによれば、一般的な繊維質などによってクッション部235を形成して、その内部に分散して柔軟性部材236を配置するため、便座200aの内部構造を簡略化することができる。また、一般的な繊維質を使用して、図2に表した便座200のようには、多くの形状記憶合金を使用する必要がないため、便座のコストを低減することもできる。
【0034】
さらに、本具体例にかかる便座200aは、図2に表した便座200と同様に、内部にヒータ240を備えているため、形状記憶合金により形成された柔軟性部材236を変態温度以上に加熱することができる。これによれば、クッション部235に「へたり」が生じたとしても、ヒータ240から柔軟性部材236へ熱を伝えて、その柔軟性部材236を変態温度以上に加熱することにより、柔軟性部材236を元の形状に復元することができる。これに伴い、クッション部235の「へたり」は抑えられ、クッション部235のクッション性が復元される。そのため、本実施形態によれば、便座200を長年使用しても、クッション部235のクッション性を維持することができる。
【0035】
またさらに、本具体例においても、クッション部230に形状記憶合金からなる柔軟性部材236を設けることにより、熱伝導性を向上させることができる。すなわち、繊維質あるいは発泡性などの材料からなるクッション部235は、熱伝導性が必ずしも高いとはいえない場合が多い。これに対して、形状記憶合金からなる柔軟性部材236を設けることで、熱伝導が促進される。その結果として、ヒータ240による熱を便座の着座面に効率よく伝えることができる。すなわち、便座の着座面を少ない消費電力で暖めることが可能となる。
【0036】
次に、本実施形態にかかる便座を備えたトイレ装置の構成および動作について、図面を参照しつつ説明する。
図8は、本実施形態にかかる便座を備えたトイレ装置の構成を例示する構成図である。 本実施形態にかかる便座を備えたトイレ装置は、図1に関して前述したように、ヒータ240の加熱量を制御する制御部410を有する。つまり、制御部410はヒータ240の加熱量を制御することにより、そのヒータ240を加熱させることができる(加熱モード430)。制御部410は、ヒータ240への加熱を実行するモードとして、第1の加熱モード(暖房・保温モード)431と、第2の加熱モード(復元モード)433と、を実行できる。
【0037】
第1の加熱モード(暖房・保温モード)431は、ヒータ240からの熱を着座面としての表皮部220に伝えて、その表皮部220を暖房したり保温するモードである。これによれば、便座200に着座した使用者の臀部を暖めることが可能であり、使用者は気温の低い冬場などでもトイレを快適に使用することができる。
一方、第2の加熱モード(復元モード)433は、ヒータ240からの熱を形状記憶合金により形成されたクッション部230あるいは柔軟性部材236に伝えて、そのクッション部230あるいは柔軟性部材236を元の形状に復元するモードである。これによれば、クッション部230、235のクッション性が復元される。
【0038】
形状記憶合金の変態温度については、一般的に、合金の組成や熱処理(形状記憶処理)の温度などによって変化することが知られている。例えば、形状記憶合金がTi−Ni(チタン−ニッケル)合金である場合であって、ニッケル(Ni)濃度が56wt%(weight%:質量%)のときに420℃で熱処理(形状記憶処理)を行うと、変態温度(Af点)は約50〜60℃程度になることが知られている。そのため、制御部410は、第2の加熱モード433を実行する場合には、第1の加熱モード431を実行する場合よりも高い温度にヒータ240を加熱させる必要がある。
【0039】
そのため、制御部410が第2の加熱モード433を実行しているときに、使用者が便座200に着座すると、「熱い」と感じることもあり得る。また、使用者が便座200に着座しているときに、第2の加熱モード433が実行されてクッション性が復元されると、使用者は着座面の不安定さを感ずることもあり得る。そこで、本実施形態の制御部410は、検知センサ420が人を検知していないときに第2の加熱モード433を実行する。好ましくは、検知センサ420が人を検知しなくなった直後に第2の加熱モード433を実行する。一方、検知センサ420が人を検知した場合には、本実施形態の制御部410は、第2の加熱モード433を実行しない、あるいは第2の加熱モード433を停止させる。これによれば、使用者が便座200に着座したときに、第2の加熱モード433が実行されていることで「熱い」と感じるおそれは少ない。また、使用者は、より安定した着座面に着座できる。これらの動作については、後に詳述する。
【0040】
一方で、例えば、形状記憶合金がTi−Ni(チタン−ニッケル)合金である場合であって、ニッケル(Ni)濃度が56wt%(weight%:質量%)のときに480℃で熱処理(形状記憶処理)を行うと、変態温度(Af点)は約30〜40℃程度になることが知られている。そのため、この場合には、第1の加熱モード431と第2の加熱モード433とにおいて、制御部410がヒータ240を加熱させる温度域の少なくとも一部は重複する。本実施形態のクッション部230あるいは柔軟性部材236は、このような形状記憶合金によって形成されてもよい。
【0041】
これによれば、使用者が便座200に着座しているときであっても、制御部410は第2の加熱モード433を実行することができる。つまり、使用者が便座200に着座しているときに、制御部410が第2の加熱モード433を実行しても、便座200は暖房中・保温中の温度に対してあまり高温にならないため、使用者はあまり「熱い」と感じない。また、制御部410がヒータ240を加熱させる温度域の少なくとも一部は重複していれば、第1の加熱モードを実行しているときにも、クッション性を復元させることが可能である。
【0042】
次に、本実施形態にかかる便座を備えたトイレ装置の動作の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図9は、本実施形態にかかる便座を備えたトイレ装置の動作の具体例を表すフローチャートである。
【0043】
まず、制御部410は第1の加熱モード431を実行して、着座面としての表皮部220を暖房したり保温している場合を想定する(ステップS101)。続いて、制御部410は、第2の加熱モード(復元モード)433を実行する時刻になったか否かを判断する(ステップS103)。なお、便座200を備えたトイレ装置は、時刻を計時する計時機能などを適宜備えている。
【0044】
制御部410は、第2の加熱モード433を実行する時刻になったと判断した場合には(ステップS103:Yes)、検知センサ420によって便座200の近くに人がいるか否かを判断する(ステップS105)。一方、制御部410は、第2の加熱モード433を実行する時刻になっていないと判断した場合には(ステップS103:No)、第1の加熱モード431を引き続き実行する(ステップS101)。
【0045】
続いて、制御部410は、便座200の近くに人がいないと判断した場合には(ステップS105:No)、第2の加熱モード433を実行する(ステップS107)。一方、制御部410は、便座200の近くに人がいると判断した場合には(ステップS105:Yes)、第1の加熱モード431を引き続き実行する(ステップS101)。
【0046】
制御部410は、第2の加熱モード433を実行しているときにも、検知センサ420によって便座200の近くに人がいるか否かを判断する(ステップS109)。制御部410は、第2の加熱モード433の実行中において、便座200の近くに人がいると判断した場合には(ステップS109:Yes)、第2の加熱モード433を停止させる(ステップS113)。
【0047】
続いて、制御部410は、第2の加熱モード433を停止させた後に、再び、検知センサ420によって便座200の近くに人がいるか否かを判断する(ステップS115)。制御部410は、便座200の近くに人がいないと判断した場合には(ステップS115:No)、第2の加熱モード433を再開する(ステップS117)。一方、制御部410は、便座200の近くに人がいると判断した場合には(ステップS115:Yes)、第1の加熱モード431を実行する(ステップS101)。
【0048】
続いて、制御部410は、所定時間が経過したとき、あるいは所定時刻になったときに、第2の加熱モード433を終了して(ステップS111)、第1の加熱モード431を実行する(ステップS101)。なお、便座200を備えたトイレ装置は、時間を計測するタイマ機能などを適宜備えてもよい。
【0049】
本具体例の動作によれば、所定時刻に第2の加熱モード433を実行して、クッション部230を元の形状に復元することができる。そのため、クッション部230のクッション性を所定時刻ごとにより確実に復元することができる。また、第2の加熱モード433の実行中において、便座200の近くに人がいると判断した場合には、第2の加熱モード433を停止させるため、使用者は便座を「熱い」と感じるおそれは少ない。また、便座200への着座中にクッション性が復元されることもないため、使用者はより安定した着座面に着座できる。なお、第2の加熱モード433を実行する頻度は毎日でなくともよく、所定日数ごとに実行してもよい。あるいは、所定月数ごとに実行してもよい。なお、第2の加熱モード433を所定時刻に実行するのに代えて、検知センサ420が人を検知しなくなった直後に第2の加熱モード433を実行してもよい。
【0050】
図10は、本実施形態にかかる便座を備えたトイレ装置の動作の他の具体例を表すフローチャートである。
本具体例のトイレ装置は、使用者が便座200に着座した回数に応じて、第2の加熱モード433を実行する。そのため、本具体例のトイレ装置の暖房便座機能部400は、便座200への使用者の着座を検知する着座センサ440を有する(図1参照)。
【0051】
まず、制御部410は第1の加熱モード431を実行して、着座面としての表皮部220を暖房したり保温している場合を想定する(ステップS201)。続いて、制御部410は、着座センサ440によって使用者が便座200に着座したか否かを判断する(ステップS203)。制御部410は、使用者が便座200に着座したと判断した場合には(ステップS203:Yes)、クッション部230が使用されたことを記憶するために使用フラグに「1」を加える。一方、制御部410は、使用者が便座200に着座していないと判断した場合には(ステップS203:No)、第1の加熱モード431を引き続き実行する(ステップS201)。
【0052】
続いて、制御部410は、使用フラグが「5」であるか否かを判断する(ステップS207)。すなわち、制御部410は、使用者によって便座200が5回使用されたか否かを判断する。そして、制御部410は、使用フラグが「5」である場合には(ステップS207:Yes)、第2の加熱モード433を実行する(ステップS209)。一方、制御部410は、使用フラグが「5」ではない場合には(ステップS207:No)、第1の加熱モード431を引き続き実行する(ステップS201)。
【0053】
続いて、ステップS211、ステップS213、ステップS215、ステップS217、ステップS219の動作については、図9に表したステップS109、ステップS111、ステップS113、ステップS115、ステップS117の動作とそれぞれ同様である。続いて、制御部410は、使用フラグを「0」に設定(使用フラグリセット)して(ステップS221)、再び、第1の加熱モード431を実行する(ステップS201)。
【0054】
本具体例の動作によれば、使用者が便座200に着座した回数に応じて、第2の加熱モード433を実行できる。そのため、便座200の使用状況に応じて、クッション部230を元の形状に復元することができる。また、第2の加熱モード433の実行中において、便座200の近くに人がいると判断した場合には、第2の加熱モード433を停止させるため、使用者は便座を「熱い」と感じるおそれは少ない。また、便座200への着座中にクッション性が復元されることもないため、使用者はより安定した着座面に着座できる。なお、第2の加熱モード433を実行することを判断する使用フラグは、「5」だけに限定されず、例えば「10」などに適宜変更することができる。
【0055】
また、第2の加熱モード433を実行するトリガは、図9および図10に関して説明した具体例に限定されない。例えば、便座200を備えたトイレ装置は、便座200の使用頻度を学習する使用頻度学習機能を備えもよい。つまり、便座200を備えたトイレ装置は、適宜設定された期間を周期として計時を行う計時機能と、その周期を分割した複数の時間帯に便座200が使用された回数(着座センサ440の検知回数)を記憶する記憶機能と、を備えてもよい。そして、1日のうちで使用者による便座200の使用頻度が少ないと判断した時間帯に、第2の加熱モード433を実行してもよい。これによれば、便座200の使用頻度が少ない時間帯を狙って第2の加熱モード433を実行することができ、より効率的に第2の加熱モード433を実行することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、クッション部230は、形状記憶合金により形成されている。あるいは、クッション部235の内部には、形状記憶合金により形成された柔軟性部材236が分散して配置されている。そして、便座200、200aの内部にはヒータ240が設けられているため、そのヒータ240によってクッション部230あるいは柔軟性部材236を変態温度以上に加熱することで、元の形状に復元できる。つまり、クッション部230、235のクッション性が復元される。そのため、本実施形態によれば、便座200を長年使用しても、クッション部230、235のクッション性を維持することができる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便座200などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや基本構造体231やヒータ240の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態にかかる便座を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】本実施形態にかかる便座の断面を表す断面模式図である。
【図3】本実施形態のクッション部の基本構造体を例示する斜視模式図である。
【図4】本実施形態のクッション部の基本構造体の一部を例示する模式図である。
【図5】本実施形態のクッション部の基本繊維の機能を例示する平面模式図である。
【図6】本実施形態のクッション部の基本構造体を寄せ集めた状態を例示する斜視模式図である。
【図7】本実施形態の変形例にかかる便座の断面を表す断面模式図である。
【図8】本実施形態にかかる便座を備えたトイレ装置の構成を例示する構成図である。
【図9】本実施形態にかかる便座を備えたトイレ装置の動作の具体例を表すフローチャートである。
【図10】本実施形態にかかる便座を備えたトイレ装置の動作の他の具体例を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
100 暖房便座装置、 200 便座、 200a 便座、 210 基材、 220 表皮部、 230 クッション部、 231 基本構造体、 231a 上部、 231b 下部、 231c 側部、 231d 基本繊維、 233 形状記憶合金線、 235 クッション部、 236 柔軟性部材、 240 ヒータ、 250 熱伝導部、 260 熱拡散部、 270 断熱材、 300 便蓋、 400 暖房便座機能部、 410 制御部、 420 検知センサ、 430 加熱モード、 431 第1の加熱モード(暖房・保温モード)、 433 第2の加熱モード(復元モード)、 440 着座センサ、 462 排気口、 464 排出口、 800 洋式腰掛便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面を形成する基材と着座面との間に、弾性を有する形状記憶合金製のクッション部と、ヒータと、を内蔵した便座と、
前記ヒータによる加熱を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記ヒータによる加熱を実行するモードとして、前記着座面に人が座ったことによって変形した前記クッション部を復元する復元モードを実行可能であることを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
底面を形成する基材と着座面との間に、弾性を有するクッション部と、前記クッション部内に配設された形状記憶合金製の柔軟性部材と、ヒータと、を内蔵した便座と、
前記ヒータによる加熱を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記ヒータによる加熱を実行するモードとして、前記着座面に人が座ったことによって変形した前記クッション部を復元する復元モードを実行可能であることを特徴とする暖房便座装置。
【請求項3】
前記復元モードにおいて、前記便座に着座した人の臀部を暖める際に実行する暖房モードよりも高い温度に前記ヒータを加熱することを特徴とする請求項1または2に記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記便座に近づいた人を検知する検知センサをさらに備え、
前記制御部は、前記検知センサが、人を検知していないときに前記復元モードを実行するように制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の暖房便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−81980(P2010−81980A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251391(P2008−251391)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】