説明

暖房便座

【課題】着座面の温度ムラが抑制され、使用者に不快感を与えることを防止できる暖房便座を提供する。
【解決手段】上面部7が着座面8となる金属製の着座部材6の内周縁部9および外周縁部10に、下端部に第1の嵌合部12が形成された高分子材料製の嵌合部材11a、11bが一体に設けられた着座部5と、着座部5の下部に配置され、内周縁部15および外周縁部16の上面側に第2の嵌合部17が形成された合成樹脂製の便座ベース14とが、それぞれの内周縁部9、15および外周縁部10、16で着座部5の第1の嵌合部12と便座ベース14の第2の嵌合部17とを嵌合して接合され、着座部5と便座ベース14とから形成される空洞部21に着座部5を加温するための加温手段が設けられた暖房便座2であって、着座部5の嵌合部材11a、11bは、便座ベース14よりも熱伝導率が低いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房便座に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、暖房便座として、加温手段のヒータに常時通電して着座面を加温するものや、さらに近年では、使用時のみヒータに通電して加温を行い瞬時に着座面を暖める瞬間暖房式のものが提案されている(特許文献1〜4参照)。
【0003】
このような従来の暖房便座は、金属製の着座部材と合成樹脂製の便座ベースとから形成される空洞部に着座部材を加温するためのヒータが設けられた構造を有している。金属製の着座部材と合成樹脂製の便座ベースとを接合させる構造として、特許文献4には、高分子材料製の嵌合部材をインサート成形により金属製の着座部材の内周縁部および外周縁部に一体化し、この嵌合部材を便座ベースに嵌合して接合する構造が提案されている。この構造によれば、金属製の着座部材と、合成樹脂製の便座ベースとの接合部における強度を確保し、熱等による変形やひずみに対する耐久性を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−095634号公報
【特許文献2】特開2005−192896号公報
【特許文献3】特開2008−093249号公報
【特許文献4】特開2008−105325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献4のように着座部材に嵌合部材を一体化した構造では、使用時に着座部材を加温したときに、着座面の内周縁部から外周縁部への幅方向における温度上昇に差異が生じてしまっていた。
【0006】
すなわち、嵌合部材を用いない場合であれば、着座部材は熱伝導性が優れているため着座面の全体をムラなく瞬時に暖めることができるが、着座部材と一体化した嵌合部材を用いた場合、その近傍では嵌合部材が着座部材の熱を奪うことで温度上昇に遅れが生じてしまう。その結果、着座面の温度は中央部の暖かい箇所と嵌合部材の近傍の冷たい箇所との分布が生じてしまい、この温度ムラが使用者に不快感を与える場合があった。
【0007】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、着座面の温度ムラが抑制され、使用者に不快感を与えることを防止できる暖房便座を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0009】
第1に、本発明の暖房便座は、上面部が着座面となる金属製の着座部材の内周縁部および外周縁部に、下端部に第1の嵌合部が形成された高分子材料製の嵌合部材が一体に設けられた着座部と、着座部の下部に配置され、内周縁部および外周縁部の上面側に第2の嵌合部が形成された合成樹脂製の便座ベースとが、それぞれの内周縁部および外周縁部で着座部の第1の嵌合部と便座ベースの第2の嵌合部とを嵌合して接合され、着座部と便座ベースとから形成される空洞部に着座部を加温するための加温手段が設けられた暖房便座であって、着座部の嵌合部材は、便座ベースよりも熱伝導率が低い。
【0010】
第2に、上記第1の暖房便座において、着座部の嵌合部材は、発泡エラストマーもしくは発泡樹脂、または非発泡のエラストマーで形成されている。
【発明の効果】
【0011】
上記第1の発明によれば、嵌合部材として便座ベースよりも熱伝導率が低いものを用いることで、加熱手段による着座部材の加温時において着座面の温度ムラが抑制され、使用者に不快感を与えることを防止できる。
【0012】
上記第2の発明によれば、嵌合部材を発泡エラストマーもしくは発泡樹脂、または非発泡のエラストマーで形成することにより、上記第1の発明の効果に加え、金型による成形により嵌合部材を作製することが可能になり、嵌合部材のデザインの自由度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の暖房便座の実施形態を示す断面図および着座面の温度分布を示すグラフである。
【図2】図1の暖房便座の平面図である。
【図3】図1の暖房便座を備えた便器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の暖房便座の実施形態を示す断面図および着座面の温度分布を示すグラフ、図2は、図1の暖房便座の平面図、図3は、図1の暖房便座を備えた便器の斜視図である。なお、図1の断面図は図2のA−A線の断面を示す。
【0016】
図1および図2に示す本実施形態の暖房便座2は、着座部5と、着座部5の下部に配置された便座ベース14とを備え、着座部5と便座ベース14とから形成される空洞部21には、着座部5を加温するための加温手段として輻射型発熱体22と反射板23とを備えている。
【0017】
着座部5は、金属製の成形品である着座部材6を備えている。着座部材6は、図2に示すように、上面部7が着座面8を構成し、平面視において中央部が開口した形状である。この中央部の開口を取り囲む部分である内周縁部9と、暖房便座2の外周の部分である外周縁部10はそれぞれ、図1に示すように、内部に空洞部21が形成されるように下方に屈曲して側面部を構成している。
【0018】
着座部材6を構成する金属材料としては、アルミニウム等の熱伝導性の高いものを用いることができる。また、このような金属材料の表面に、表面硬度、耐薬品性能、光沢等を考慮した表面化粧層を設けるようにしてもよい。
【0019】
着座部5はさらに、着座部材6の内周縁部9および外周縁部10に、高分子材料製の嵌合部材11a、11bを備えている。
【0020】
嵌合部材11a、11bは、着座部材6の内周縁部9および外周縁部10のそれぞれの内面部に、射出によるインサート成形によって着座部材6と一体に設けられ、下端部には第1の嵌合部12が形成されている。
【0021】
嵌合部材11a、11bは、便座ベース14よりも熱伝導率が低いものとされている。例えば、汎用の合成樹脂で成形した便座ベース14に対して、嵌合部材11a、11bを発泡エラストマーもしくは発泡樹脂、または非発泡のエラストマーで形成することで、嵌合部材11a、11bの熱伝導率を便座ベース14よりも低いものとすることができる。
【0022】
嵌合部材11a、11bを構成する発泡エラストマーもしくは発泡樹脂としては、例えば、発泡ウレタンゴム等を用いることができる。
【0023】
嵌合部材11a、11bを構成する非発泡のエラストマーとしては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム等を用いることができる。
【0024】
このような発泡エラストマー等の嵌合部材11a、11bの熱伝導率は、好ましくは0.1W/m・K以下、より好ましくは0.05W/m・K以下であり、また、便座ベース14の熱伝導率の半分以下とすることが好ましい。
【0025】
便座ベース14は、平面視が着座部5と略同一の板形状であり、合成樹脂製の成形品である。そして内周縁部15および外周縁部16の上面側に第2の嵌合部17が形成されている。
【0026】
便座ベース14を構成する合成樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等を用いることができる。
【0027】
着座部5と便座ベース14とは、それぞれの内周縁部9、15および外周縁部10、16で着座部5の第1の嵌合部12と便座ベース14の第2の嵌合部17とを嵌合して接合される。
【0028】
本実施形態では、着座部5の第1の嵌合部12には凹部13が形成され、便座ベース14の第2の嵌合部17には端部突起18が形成されている。そして凹部13に端部突起18を挿入し、次いで凹部13に2次成形用の樹脂20を充填溶着することにより、嵌合構造を備えた着座部5と便座ベース14との接合が形成される。
【0029】
このようにして着座部5と便座ベース14とが一体化され、これらの内部には空洞部21が形成される。このとき、輻射型発熱体22および反射板23は、着座部5と便座ベース14とを接合する前に、予め便座ベース14に設置しておくことにより、空洞部21内に収容される。
【0030】
輻射型発熱体22は、例えば、ランプヒータを用いることができ、具体的には、ガラス管の内部にタングステンのフィラメントを貫通させ、ハロゲンガスを封入したもの等を用いることができる。
【0031】
反射板23は、アルミニウム板等を用いることができ、例えば、輻射型発熱体22の下方に、着座部5の平面形状に沿って空洞部21内の前方にU字形状に配置される。
【0032】
以上のように構成される本実施形態の暖房便座2は、図3に示すように、便器本体3の後端部に回動自在に軸支され、便蓋4も便器本体3の後端部に回動自在に軸支される。そして暖房便座2、便器本体3、および便蓋4は便器1を構成する。
【0033】
そして便器1の使用時には、暖房便座2の着座部材6は輻射型発熱体22から放射された輻射エネルギーを吸収し、瞬時に昇温するようになっている。
【0034】
具体的には、図3の便器本体3は、マイクロコンピュータ等を有する不図示の制御部を備えている。この制御部は、輻射型発熱体22への通電の開始と停止の制御を行い、人体を検知するセンサや着座を検知するセンサ等により、使用者の存在や使用者の暖房便座2への着座等を検知すると、輻射型発熱体22への通電を開始する。
【0035】
制御部により輻射型発熱体22への通電が開始されると、輻射型発熱体22は輻射を開始し、輻射型発熱体22から直接にまたは反射板23を経て着座部材6に輻射エネルギーが放射される。
【0036】
これにより着座部材6は瞬時に昇温する。このとき、前述したように嵌合部材11a、11bとして熱伝導率が低いものを用いているので、着座部材6の昇温開始後、着座部材6から嵌合部材11a、11bへの熱の放散が抑制される。すなわち、図1下側の着座面の温度分布のグラフに示すように、着座面8の内周縁部9から外周縁部10への幅方向の温度分布は、嵌合部材11a、11b近傍での温度低下が実線のように抑制され、嵌合部材11a、11bとして便座ベース14と同様の合成樹脂を用いた同グラフの破線の場合と比べて温度低下が改善される。そのため、着座面8の温度ムラにより使用者に不快感を与えることを防止することができる。
【0037】
以上に、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は何らこの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
【0038】
例えば、着座部5の第1の嵌合部12と便座ベース14の第2の嵌合部17との嵌合構造は、本実施形態のような凹部13と端部突起18とによる構造以外のものであってもよい。
【0039】
また、加温手段は、輻射型発熱体22のようなランプヒータ等を用いたもの以外に、例えば面状ヒータを用いたもの等、各種のものであってよい。
【符号の説明】
【0040】
1 便器
2 暖房便座
3 便器本体
5 着座部
6 着座部材
7 上面部
8 着座面
9 内周縁部
10 外周縁部
11a、11b 嵌合部材
12 第1の嵌合部
14 便座ベース
15 内周縁部
16 外周縁部
17 第2の嵌合部
21 空洞部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面部が着座面となる金属製の着座部材の内周縁部および外周縁部に、下端部に第1の嵌合部が形成された高分子材料製の嵌合部材が一体に設けられた着座部と、着座部の下部に配置され、内周縁部および外周縁部の上面側に第2の嵌合部が形成された合成樹脂製の便座ベースとが、それぞれの内周縁部および外周縁部で着座部の第1の嵌合部と便座ベースの第2の嵌合部とを嵌合して接合され、着座部と便座ベースとから形成される空洞部に着座部を加温するための加温手段が設けられた暖房便座であって、着座部の嵌合部材は、便座ベースよりも熱伝導率が低いことを特徴とする暖房便座。
【請求項2】
着座部の嵌合部材は、発泡エラストマーもしくは発泡樹脂、または非発泡のエラストマーで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の暖房便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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