説明

暗視装置用駆動装置

【課題】暗視装置に特に役立つ光学要素用の駆動装置であって、選択されたフィルタを駆動するために安価で軽量な駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置は、2つの光学要素のうち選択された一方の光学要素をその使用位置と非使用位置との間で回転させ、他方の光学要素をその非使用位置に保持するために単一のモーターを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦政府後援による研究に関する表示)
本発明は米合衆国政府契約第FA8650−03−C−5943号に基づきなされ、米合衆国政府が本発明に関する特定の権利を有する。
【0002】
本発明は駆動装置に関する。複数の光学要素の1つを暗視装置に対して相対的に回転させて使用位置にするための特に暗視装置に役立つ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0003】
暗視装置は、低レベルの周囲光を増幅して夜間にユーザーが物を見えるようにするために使用される双眼鏡または単眼鏡を含む。このような装置は、一般に周囲光を受ける対物レンズを有する映像増強管を含む。周囲光は映像増強管によって増強され、ユーザーへ送られる。暗視装置は技術上周知であり、各種車両または地上において兵士がこれを使い易くするために、携帯するか、ヘルメットまたは頭装着バンドに取り付けるか、ユーザーがこれを装着することができる。
【0004】
映像増強管はレーザー光線の干渉を受けやすく、場合によって、増強管はレーザー光線によって損傷を受ける可能性がある。
【0005】
レーザー光線から暗視装置を保護するために、レーザー光線の効果から映像増強管を保護するために対物レンズに作用するように配置される単一のレーザー干渉フィルタを使用することは既知である。例えば、2000年1月13日にTed J.Gross他に発行された米国特許第6,075,661号を参照。Grossの特許においては、レーザー光線をフィルタリングするために対物レンズの自由端に被さって嵌まる単一のレーザー干渉フィルタが配置される。レーザー干渉フィルタ1つだけでは充分ではないこと、及び2つのフィルタを含むフィルタ装置が状況によっては映像増強管を保護するために好ましいことが明らかになっている。この2つのフィルタは、それぞれがレーザー光線の特性例えばその波長またはその出力密度、連続的であるかパルス状であるかまたはその他の同様の特性に応じてどちらかが最適に使用されるようにそれぞれ異なるフィルタリング能力を持つ。フィルタは、周囲光の光路から外れる位置である非使用位置に格納される。フィルタが必要とされる場合、好ましいフィルタが選択され、増強管を保護するために対物レンズに隣接する使用位置へ駆動される。他方のフィルタは非使用位置に留められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2つのモーター(各フィルタに1つずつ)を使用することによって選択されたフィルタをその使用位置へ動かすための駆動装置またはアクチュエータを配置することができる。これによって、選択されたフィルタと関連付けられるモーターにエネルギーを供給することによって、選択されたフィルタが動かされる。このような配列体は、高価で、嵩が大きくかつ重い傾向がある。従って、選択されたフィルタを駆動するために安価で軽量な配列体が提供されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
駆動装置は、ハウジング及びその中に回転可能に取り付けられるスクリューを備える。スクリューに沿って軸方向に動かすためにスクリューにナットが作動可能に配置される。また、各々回転可能なスリーブを有する1対の光学要素がナットに隣接してハウジングの中で支えられる。ピンがナットの両端に隣接して配置され、各スリーブの軸方向長さに沿って軌道が配置される。各ピンはそれぞれ異なる軌道に作用するように配置される。各軌道は、ナットが軸方向に動くと1つのピンが1つのスリーブを回転しないように保持し、他方のピンが他方のスリーブを回転させ、それによって他方のスリーブと関連付けられる光学要素が第一位置と第二位置との間で回転するように形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1を参照すると、全体が14で示される適切な取付け配列体によってヘルメット12に取り付けられる双眼鏡の形式の暗視装置が示されている。ヘルメット12は、当然、暗視装置を利用する野戦兵またはパイロットまたは車両運転手など兵士によって装着される。本発明に係る駆動装置は、手持ち単眼鏡か兵器に取り付けられる単眼鏡を含めて他の装置に使用できることが分かるはずである。双眼鏡10は1対の単眼鏡16、16を含む。単眼鏡は例えば映像増強装置、感熱暗視装置または他の有用な暗視装置とすることができる。各単眼鏡16、16は対物レンズ18及び映像増強管(図示せず)を含む。各映像増強管は技術上周知であり、対物レンズ18の自由端で受け取る微光を増強して、ユーザーが見ている接眼レンズに可視画像を与えるように作用する。
【0009】
各単眼鏡16、16は、レーザー干渉フィルタ組立品20(図1にはそのうち一方だけが示されている)を含む。各フィルタ組立品20は同一であり、各々、単眼鏡16の対物レンズ18の周りに嵌まるサイズ及び形状を持つ第一のほぼ円筒形の部分22を有するハウジングを含む。フィルタ組立品20のハウジングは、円筒形部分22と対物レンズ18の自由端に隣接する単眼鏡ハウジングとの間の任意の適切な締結配列体によって、その関連する単眼鏡16と一緒に保持される。
【0010】
フィルタ組立品ハウジングは、また、対物レンズ18と同じサイズ及び概略形状の開口26を有する第二部分24を含み、その開口は、光が開口26を通過してレンズに入射するように対物レンズに隣接しかつその前にある。第二ハウジング部分24は、開口26の下に伸びる楕円形またはその他の形状の部分を含み、この第二ハウジング部分は図3及び4から分かるように内部凹部28を持つように形成される。2つのレーザー干渉フィルタ32及び34(図1においてはそのうち一方だけが部分的に示されている)は凹部28の中に配置される。各フィルタ32及び34は異なるフィルタリング能力を有し、レーザー光線の特性に応じていずれか1つだけしか使用する必要がない。
【0011】
フィルタ組立品ハウジングは、また第一の円筒形部分22に対して従って当然単眼鏡16に対してほぼ平行に伸びる軸を有する第二の円筒形部分30を含む。
【0012】
非使用位置にあるとき、フィルタ32及び34は、第二ハウジング部分24に形成される凹部28の中において対物レンズ18の下に配置される。ゴーグルを保護するためにフィルタのうち一方が必要とされる場合、必要とされるフィルタはその非使用位置から使用位置へ好ましくは対物レンズ18の前へ動かされ、他方のフィルタは非使用位置に留まる。光は選択されたフィルタ32または34に衝突し、選択されたフィルタはレーザー光線から増強管を保護するように作用する。このようなフィルタは技術上既知であり、本明細書においてこれを説明する必要はない。フィルタは、レーザー光線を除去しながら、周囲光が対物レンズ18及びその映像増強管まで通過できるようにする、とだけ述べる。
【0013】
次に図2から5までを参照すると、本発明に係る駆動装置が図解されている。この駆動装置は選択されたフィルタをその非使用位置から使用位置へ駆動するが、他方のフィルタを非使用位置に留める。この駆動装置は第二の円筒形ハウジング部分30に配置され、単一の逆回転可能電気モーター36を含む。フィルタ組立品ハウジング内部またはその外部にこの電気モーターを配置することができる。モーター36は親ネジ38を作動するように結合される。親ネジはハウジング部分30の中に回転可能に取り付けられる。モーター36の回転方向に応じてどちらかの方向に親ネジを回転させることを条件として、モーターと親ネジ38との間に任意の適切なカップリングを使用することができる。ナット40は親ネジ38に形成されるネジ山に支えられ、下に説明されるように、親ネジが回転するとき、ナットは回転方向に応じていずれかの方向にスクリューに沿って軸方向に並進する。ナット40は1対のピン42、44または同様の隆起を有する雌ネジ付きの細長い部材であることが図から分かる。各ピン42、44は、ナットの自由端に隣接するナットの外面から半径方向外向きに伸びる。ナットの自由端は、ハウジング部分30の外側端に隣接する。
【0014】
各フィルタ32及び34は、それぞれほぼ円筒形のスリーブ46及び48と一緒に形成されるかまたは作動可能にこれに結合される。各スリーブはこれに結合されるフィルタ32または34の円周面からハウジング部分30の中へ伸びる。これらのスリーブ46及び48はほぼ円筒形の部材であり、スリーブがネジ38に隣接しかつ好ましくはナットが回転しないようにするためにネジ38及びナット40を取り囲むように配置される。
【0015】
各スリーブ46及び48は軌道を持つように形成される。各軌道はそれぞれピン42及び44と協働して、選択されたフィルタ32または34をその非使用位置から使用位置へ回転させるが、他方のフィルタをその非使用位置に保持する。この実施形態において、軌道は細長い溝50及び52の形を取り、それぞれその関連するスリーブ46及び48の長さに沿って軸方向に伸びる。各溝50及び52は、それぞれ軸方向に伸びるほぼ直線の区分54及び56を含み、各軸方向の区分は、軸方向に伸びる区分が両方のスリーブ46及び48を貫通して伸びる連続軌道を形成するように、他方の溝に隣接する開口を有する。軸方向の区分54及び56は、ナット40の軸方向長さとほぼ同じ長さを持つ。その他方の端すなわちハウジング部分30の外側端に隣接する端で、溝50及び52はそれぞれほぼ弓形の区分58及び60を持つように形成される。弓形の区分は軸方向の区分54及び56に対してある角度で、それぞれフィルタ32及び34に向かう方向に伸びる。
【0016】
図2及び3に示されるように、フィルタ32及び34が非使用位置にあるとき、各ピン42及び44は、これに関連する溝軸方向区分54または56とそのそれぞれの弓形区分58及び60との交差点近くに位置する。ピン42及び44は溝50及び52の軸方向区分54及び56に着座するので、どちらかの方向にネジ38が回転してもナット40が回転するのを防いで、ネジ38の回転方向に応じた方向にスクリューに沿って軸方向にナットを動かす。ナット40が動くと、ピンは溝の軸方向区分54及び56に沿ってスライドし、図3に示されるように先導ピン42はスライドして弓形区分58の中へ入り、スリーブ46及びこれに結合されるフィルタ32をその使用位置へ回転させる。同時に、他方のピン44は直線区分54に隣接するまで直線区分56に沿って進む。他方のピン44のこのような軸方向の動きはこれに関連するスリーブ48を回転させず、これに結合されるフィルタ34はその非使用位置に留まる。
【0017】
フィルタ32がその使用位置にあるとき、ネジ38が反対方向に回転するとピン40及び42は図2に示される位置に戻る。ピン40が弓形区分58に沿ってスライドすると、スリーブ46及びこれに結合されるフィルタ32は非使用位置へ回転する。
【0018】
フィルタがその非使用位置にあるとき上述の方向とは反対の方向にネジ38が回転すると、フィルタ32について説明されるのと同様に他方のフィルタ34がその非使用位置と使用位置との間で動くことが分かるはずである。
【0019】
使用時に、適切なスイッチ配列体によって手動でモーターを作動するか、または自動的にフィルタを選択して選択されたフィルタをその使用位置と非使用位置との間で動かすためにモーターを適切なレーザー光線センサ及びソフトウェアと結合することができる。
【0020】
以上の説明は本発明の代表的実施形態に関するものであり、本発明の範囲は付属の特許請求の範囲において定められる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るレーザー干渉フィルタ及び駆動装置を含むヘルメット取付け暗視双眼鏡装置を示す斜視図である。
【図2】フィルタが非使用位置にあるときの本発明に係る駆動装置を示す、図1の線2−2に沿って見た部分断面図である。
【図3】フィルタが非使用位置にあるときの本発明に係る駆動装置を示す部分的に断面で示される上面図である。
【図4】図2と同様の部分断面図であるが、フィルタのうち一方が使用位置にあるときの駆動装置を示している。
【図5】図3と同様の図であるが、フィルタのうち一方が使用位置のときの駆動装置を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、該ハウジングに回転可能に取り付けられるスクリューと、該スクリューに沿って軸方向に動くように前記スクリュー上に作動可能に配置されるナットと、該ナットに各々隣接して前記ハウジングの中に支えられる回転可能なスリーブを有する1対の光学要素と、を備え、
前記ナットがその両端に隣接するピンを有し、各スリーブがその軸長さに沿って形成される軌道を有し、各ピンが各々異なる軌道に作用するように配置され、前記ナットが軸方向に動くと一方の前記ピンが一方のスリーブを回転しないようにしかつ他方の前記ピンが他方のスリーブを回転させるように各軌道が形成され、それによって前記他方のスリーブに関連付けられる前記光学要素が第一位置と第二位置との間で回転する、駆動装置。
【請求項2】
各軌道が前記スクリューの軸方向に対してほぼ平行に伸びる第一区分及びこれに対してある角度で伸びる第二区分を有することを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
各軌道がこれに関連するスリーブに形成される溝であり、かつ前記ピンの各々が前記溝のうち一方の中でスライド可能であり、各溝が前記スクリューの軸方向にほぼ平行に伸びる第一区分及び前記第一区分に対してある角度で前記光学要素に向かって伸びる第二区分を有することを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
各溝の前記第一区分が他方の溝の前記第一区分に隣接し、かつ各溝の前記第二区分が前記第一区分によって他方の第二区分から離されることを特徴とする、請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
各光学要素がレーザー干渉フィルタであり、各フィルタが使用位置及び非使用位置を有することを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記スクリューを両方向に回転させるために前記スクリューに結合されるモーターを含む、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項7】
微光を増幅する暗視ゴーグルと、該ゴーグルをレーザー光線から保護するために前記ゴーグルに作用するように配置される1対のレーザー光線フィルタと、該フィルタのうちいずれかを非使用位置と使用位置との間で動かす駆動装置と、
を備える暗視装置であって、
前記駆動装置が、前記ゴーグル上に支えられるハウジングと、該ハウジングの中に回転可能に取り付けられるスクリューと、該スクリューに沿って軸方向に動くように前記スクリュー上に作動可能に配置されるナットと、前記フィルタの各々から伸びる回転可能なスリーブと、を含み、
各スリーブが前記ナットに隣接して前記ハウジングの中で支えられ、各スリーブがその軸方向長さに沿って伸びる軌道を持つように形成され、
前記ナットがその軸方向の両端にピンを有し、前記ナットが前記スクリューに沿って軸方向に動くとき複数の前記スリーブの一方を回転させるが他方のスリーブを回転しないで保持するように各ピンが複数の前記軌道の一方の中でスライド可能であり、それによって前記回転するスリーブと関連付けられる前記フィルタがその使用位置と非使用位置との間で動く、暗視装置。
【請求項8】
各軌道が前記スクリューの軸方向に対してほぼ平行に伸びる第一区分及びこれに対してある角度で伸びる第二区分を有することを特徴とする、請求項7に記載の駆動装置。
【請求項9】
各軌道がこれに関連するスリーブ上に形成される溝であり、かつ各ピンが前記溝のうち一方の中でスライド可能であり、各溝が前記スクリューの軸方向にほぼ平行に伸びる第一区分及び前記第一区分に対してある角度で前記レーザー光線フィルタに向かう方向へ伸びる第二区分を有することを特徴とする、請求項7に記載の駆動装置。
【請求項10】
各溝の前記第一区分が他方の溝の前記第一区分に隣接し、かつ各溝の前記第二区分が前記第一区分によって他方の第二区分から離されることを特徴とする、請求項9に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記スクリューを両方向に回転させるために前記スクリューに結合されるモーターを含む、請求項7に記載の駆動装置。
【請求項12】
微光を増幅する暗視ゴーグルと、1対のレーザー光線フィルタと、他方のフィルタをその非使用位置に保持しながら一方のフィルタをその使用位置と非使用位置との間で回転させるための駆動装置と、を備え、各フィルタは前記ゴーグルをレーザー光線による損傷から保護するための使用位置と非使用位置との間で回転可能である、暗視装置であって、
前記駆動装置が、前記ゴーグルによって支えられるハウジングと、前記ハウジングの中に回転可能に取り付けられるスクリューと、該スクリューを両方向に回転させるために作動可能に配置されるモーターと、前記スクリューに沿って軸方向に動くように前記スクリュー上に支えられるナットと、を備え、
該ナットが該ナットから半径方向に伸びる1対のピンを有し、一方の該ピンが前記ナットの一方の軸方向の端に配置され、他方の前記ピンが前記ナットの他方の軸方向の端に配置され、
各フィルタが前記ナットに隣接して前記ハウジング内に配置されるスリーブを持つように形成され、各スリーブがその長さに沿って軸方向に伸びる軌道を持つように形成され、各軌道がこれに関連するスリーブの他方のスリーブに隣接する端から伸びる第一の細長い区分を有し、該第一の細長い区分が相互に接続し、各軌道が、さらにこれに関連するスリーブの他方の端に隣接し前記第一区分に対してある角度でこれに関連するスリーブと関連付けられるフィルタに向かって伸びる第二区分を含み、
各フィルタがその非使用位置にあるとき各ピンがその隣接するスリーブの前記軌道の前記第一区分の中へ伸び、一方の前記ピンがこれに関連する軌道の前記第一区分に沿ってスライドしかつ他方の前記ピンがこれに関連する軌道の前記第二区分の中へスライドして前記軌道のスリーブ及びフィルタをその使用位置へ回転させるように、前記スクリューの一方向への回転が前記ナットを第一の方向に動かす、暗視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−104130(P2009−104130A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261643(P2008−261643)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(505194077)アイティーティー マニュファクチャリング エンタープライジーズ, インコーポレイテッド (114)
【Fターム(参考)】