曲げ部材の自動ハンドリング方法およびその装置
【課題】ワークのツカミ換えを最小回数に抑えることでワーク1枚当たりの加工タクトを大幅に短縮することにより、作業能率を高めて加工コストを低減できる曲げ部材の自動ハンドリング装置を提供する。
【解決手段】ワーク1の大きさと形状に応じて予めプログラムされたXY軸座標上の原点をハンドリング開始点として操作台テーブル11に設定する。自動ハンドリング装置30のワークグリップ機構31は搬入テーブル12上のワークの長辺1cを把持し、クランプ状態でハンドリング開始点まで移動させる。ハンドリング開始点から今度はクランプ状態でY軸方向をパネルベンダー本体10(の金型)に向けて前進させる。ワーク1の長辺1bを曲げ加工後にハンドリング開始点まで後退させる。自動ハンドリング装置30のグリップ保持板38を反時計廻り方向に90°旋回させ、短辺1eを曲げ加工する。そのようにして長短4つの辺を曲げ加工する。
【解決手段】ワーク1の大きさと形状に応じて予めプログラムされたXY軸座標上の原点をハンドリング開始点として操作台テーブル11に設定する。自動ハンドリング装置30のワークグリップ機構31は搬入テーブル12上のワークの長辺1cを把持し、クランプ状態でハンドリング開始点まで移動させる。ハンドリング開始点から今度はクランプ状態でY軸方向をパネルベンダー本体10(の金型)に向けて前進させる。ワーク1の長辺1bを曲げ加工後にハンドリング開始点まで後退させる。自動ハンドリング装置30のグリップ保持板38を反時計廻り方向に90°旋回させ、短辺1eを曲げ加工する。そのようにして長短4つの辺を曲げ加工する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板鋼板などの金属素材を曲げ加工するプレスブレーキやパネルベンダーなどの鍛圧機械に関し、さらに詳しくは、金型に対してパネル状のワークを曲げ方向に振り向ける旋回操作を自動化した曲げ部材のハンドリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、矩形状のワークをパネルベンダーに送り込んでワークの長短各辺を順に曲げ加工することで、たとえばスチールドア、壁材、スチール家具などの製品の筺体や組立用パネルが製造される。その場合、ワークは前工程において定尺材を所要の大きさ剪断したもの、あるいは所要の形状に打ち抜きプレス加工して折り曲げ前の展開シート(ブランク)にしたものが曲げの次工程であるパネルベンダーに送り込まれることが多々ある。たとえば、図7(a),(b)に示すように、矩形状のワーク1の長短4つの各辺を順に曲げ加工する場合、ワーク1の中央部をマニピュレータのセンタークランプ21,22で掴んで旋回させ、ワーク曲げ方向を金型に振り向けるワークハンドリングが行われる。図示例のワーク1はそれぞれ2つの長辺1b,1cと短辺1d,1eを順に曲げ加工し、図7(b)に示すフランジを有する額縁形状パネルとして製造されるものである。
【0003】
それに対して、図8(a),(b)に示すたとえば上記スチールドア用のパネルのように、前工程においてワーク1の中央部に窓用の開口部1aを空けたものがパネルベンダーに送られてくる工程の場合は事情が異なる。この場合、開口部1aが空いているためにワーク1の中央部を図7(a),(b)に示すセンタークランプ21,22で掴んでクランプすることができない。したがって、やむなくセンタークランプ21,22でワーク中央部からずれた偏心位置にてワーク1を掴んでクランプせざるを得ない。そのように掴み位置がワーク中央部からずれると、そのずれた距離分だけワーク1の振り向け旋回半径が大きくなる。旋回半径が大きくなると、それだけワークハンドリング時の作業スペースを広く確保しなければならず、工場内レイアウトを制約して不利である。
【0004】
近年、ワーク1の旋回半径が大きくなる不具合を解消するために、図8(a),(b)のように、ワーク1の一辺をグリップ機構31で掴んで金型に振り向けるハンドリング装置や方式が開発されている。たとえば、特許文献1に開示されている装置や方法の場合、座標軸でいうX軸とY軸の方向にワークを移動させるマニピュレータが第1マニピュレータと第2マニピュレータからなっているものである。
【0005】
【特許文献1】 特表2000−503908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された装置では、ワークの曲げ方向を金型に振り向けるごとにグリップ機構はワークの一辺から他辺へツカミ換えしなければならない。すなわち、ワークが矩形状で長短4つの各辺を曲げ加工するような場合、長短4つの各辺のすべてをツカミ換えする必要がある。結果、ワーク1枚当たりの加工タクトが非常に長くなり、それが加工コストに反映してコスト高になるといった問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ワークのツカミ換えを最小回数に抑えることでワーク1枚当たりの加工タクトを大幅に短縮することにより、作業能率を高めて加工コストを低減できる曲げ部材の自動ハンドリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係る代表的な請求項1に記載の曲げ部材の自動ハンドリング方法は、曲げ部材の大きさと形状に応じて予めプログラムされたXY軸座標上の原点をハンドリング開始点に設定し、前記ハンドリング開始点からX軸方向を搬入位置まで移動してそこに位置決めされている前記曲げ部材の第1の辺を把持したクランプ状態で前記ハンドリング開始点まで移動させ、かつ前記ハンドリング開始点に移動させた前記曲げ部材をクランプ状態でY軸方向を金型に向けて前進させて、前記金型によって前記曲げ部材の第1の辺に対向する第2の辺を曲げ加工後に前記ハンドリング開始点まで後退させ、そのハンドリング開始点を中心に前記曲げ部材を時計廻り方向または反時計廻り方向に旋回させて第3の辺およびそれ以上の各辺を順に曲げ加工し、各辺の曲げを終えた曲げ部材を搬出位置に向けてX軸方向に移動させて搬出することを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するために本発明に係る代表的な請求項2に記載の曲げ部材の自動ハンドリング装置は、曲げ部材の曲げ加工を行う金型と、前記金型の正面前部に隣接して設けられて前記曲げ部材を前記金型に振り向けるハンドリングを行う場所の操作台テーブルと、前記操作台テーブルの横に隣接して設けられた搬入搬出用のテーブルと、前記曲げ部材の大きさと形状に応じて設定されるXY軸座標上の原点をハンドリング開始点にして前記搬入搬出用のテーブルとの間をX軸方向に往復動し、かつ前記金型と前記ハンドリング開始点との間をY軸方向に進退動作するキャリアと、前記キャリアに回転自在に軸支されたグリップ保持板と、前記グリップ保持板に一列に保持され、前記曲げ部材の一辺を把持したクランプ状態で曲げ部材を時計廻り方向または反時計廻り方向に旋回させて前記金型に振り向ける複数からなるワークグリップ機構と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載の曲げ部材の自動ハンドリング方法によれば以下の効果が得られる。曲げ部材の各辺を金型に振り向けて曲げ加工する場合、曲げ部材を座標平面のX軸方向とY軸方向に移動させ、かつハンドリング開始点を中心に曲げ部材を旋回動作させるので、曲げ部材の振り回しに大きな作業範囲を必要としない。そのため、工場内レイアウトにおいて省スペースに有効である。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載の曲げ部材の自動ハンドリング装置によれば以下の効果が得られる。自動ハンドリング装置に備わる複数のワークグリップ機構で曲げ部材の一辺を掴んでクランプし、そのクランプ状態で曲げ部材を旋回させて各辺を金型に振り向けるので、最小限の旋回面積を確保するだけで済む。また、曲げ部材の各辺すべてに「ツカミ換え」する従来の不具合を解消できる。すなわち、ツカミ換えを一度だけに設定しているので、曲げ部材1枚当たりの加工タクトが格段に短縮され、作業能率の向上とコスト低減に非常に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明による曲げ部材の自動ハンドリング装置の好適な実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、従来例として説明した図7および図8の部材と同一または共通する部材には同一の符号を付し、本実施形態による新規部材には新規の符号を付して従来例との違いを明確にする。
【0013】
第1の実施形態
図1は、本実施形態による曲げ部材の自動ハンドリング装置30をACサーボドライブ方式パネルベンダーに応用した構造例の全体平面図である。パネルベンダー本体10には図示しない上下型からなる曲げ加工用の金型が備わっている。パネルベンダー本体10の前部正面側にはワークをハンドリングする操作台テーブル11が設けられている。この操作台テーブル11上に図4(a),(b)に示す曲げ部材である矩形状のワーク1が座標軸でいうX軸方向から横送りされてきて位置決めされ、パネルベンダー本体10の金型に向けてY軸方向を前方に縦送りされて曲げ加工に臨む。また、図示しないワーク集積ストックからワーク1を1枚ずつ送って位置決めするためのローラコンベア式搬入テーブル(搬入位置)12が操作台テーブル11に設けられている。搬入テーブル12へのワーク搬入動作にほぼ同期させて、次に詳述する自動ハンドリング装置30が図の右方から左方へX軸上を移動してきて搬入テーブル12上のワーク1を把持してクランプする
【0014】
また、上記操作台テーブル11上にはワーク1を掴んでハンドリングを行うマニピュレータ20が配置され、図7(a),(b)で示したセンタークランプ21,22を備えそれらでワーク1を表面側と裏面側から挟み込んでクランプするようになっている。
【0015】
また、操作台テーブル11上をXY軸直交座標の平面と仮定し、ワーク1の大きさと形状に応じてその座標原点の位置を予めプログラムしてシーケンス制御が可能となっている。そうした座標原点をハンドリング開始点としてそこを原位置に本実施形態の要部である自動ハンドリング装置30が配置されている。図2に示すように、自動ハンドリング装置30はそのキャリア(台車)37を介して操作台テーブル11における原位置のハンドリング開始点からガイドレール15に案内され、座標軸のX軸方向とY軸方向に直線動するようになっている。キャリア37にはグリップ保持板38が回転自在に軸支されていて、モータや減速機などからなる回転動力源39から回転動力を受けて回転する。そうしたグリップ保持板38に一列に配置して同一の本実施形態では4つのワークグリップ機構31が担持されている。それら4つのワークグリップ機構31はワーク1の大きさや形状に応じて予めプログラムされたシーケンス制御で4つすべて、あるいは4つの一部が同時作動するよう設定されている。
【0016】
そこで、上記グリップ保持板38は4つのワークグリップ機構31を伴って一体に時計廻り方向または反時計廻り方向にそれぞれ回転角度90°から最大180°の範囲で回転する。すなわち、4つのワークグリップ機構31は一体にXY軸方向に直線動するとともに、操作台テーブル11にて角度90°〜180°の範囲で回転する。図5(a)〜(c)は、それら4つのワークグリップ機構31の構造と動作順を示している。各ワークグリップ機構31はワーク1を掴んでクランプする上下一対の爪形状グリップ部材32,33を有し、上部のグリップ部材32はトグル機構の一部材を構成して倍力を発生するようになっている。その上部のグリップ部材32は基端部がヒンジピン32aを介して回動可能に可動ブラケット34に軸支され、ヒンジピン32bを介してシリンダ装置(アクチュエータ)35のロッド35aに連結されている。したがって、シリンダ装置35のピストン往復作動によってヒンジピン32aを支点にしてグリップ部材32を回動させ、下部のグリップ部材33と協働してワーク1を掴むようになっている。その下部のグリップ部材33は上記可動ブラケット34に一体的に結合され、それら一体結合体がシリンダ装置36のロッド36aの直線動で天地方向への上下動が可能に保持されている。
【0017】
つぎに、以上の構成から第1の本実施形態による自動ハンドリング装置30について、その動作と作用を図6(a)〜(n)を参照して説明する。以下、自動ハンドリング装置20のシーケンス動作はCPU(中央制御装置)などで構成されるマイコンによる電子制御に基づいたNC制御で行うことができる。
【0018】
まず、図6(a)のように、図4(a),(b)に示す曲げ部材のワーク1が搬入テーブル12上に送られてきて位置決めされる。そのワーク搬入動作にほぼ同期して、操作台テーブル11上のハンドリング開始点に待機中の自動ハンドリング装置30が搬入テーブル12に向かってX軸方向を図の左方向に移動開始する。すなわち、スタートON信号によってキャリア37がX軸上を図の左方向の搬入テーブル12に向かって移動開始し、グリップ保持板38上の4つのワークグリップ機構31がワーク1の長辺1cを掴める位置まで移動する。続いて4つのワークグリップ機構31のシリンダ装置35が同時作動し、ワーク1の長辺1cを掴んでグリップする(図8参照)。
【0019】
図6(b)に示すように、自動ハンドリング装置30のワークグリップ機構31でグリップされたワーク1はX軸上を図の右方向の操作台テーブル11に向かって運ばれ、操作台テーブル11上の所定位置(原位置)まで移動していったんここで位置決めされる。この操作台テーブル11の原位置がワーク1をこれから曲げ開始する初動位置となる。
【0020】
図6(c)に示すように、ワークグリップ機構31でグリップされた状態でワーク1をパネルベンダー本体10に向けてY軸上を前方に縦移動させる。金型に振り向けられたワーク1はその長辺1bが所定の角度に曲げ加工される。
【0021】
長辺1bの曲げ加工を終えると、図6(d)に示すように、自動ハンドリング装置30はワークグリップ機構31でグリップした状態のワーク1を操作台テーブル11上の初動位置である原位置まで後退させる。
【0022】
原位置に後退した段階で、図6(e)に示すように、自動ハンドリング装置30のワークグリップ機構31はグリップしているワーク1ごと一体に反時計廻り方向に位相角度90°だけ旋回し、短辺1eをパネルベンダー本体10に振り向ける。それから自動ハンドリング装置30はパネルベンダー本体10に向けてY軸上を前進し、掴んでいるワーク1の短辺1eを金型に臨ませる。それによって図6(f)に示すように、ワーク1の短辺1eの曲げ加工が行われる。
【0023】
短辺1eの曲げ加工を終えると、図6(g),(h)に示すように、自動ハンドリング装置30はワーク1をグリップしたまま原位置まで後退し、そのグリップ状態でワーク1ごと位相角度180°だけ時計廻り方向に旋回する。それによって今度はワーク1の短辺1dがパネルベンダー本体10に振り向けられ、自動ハンドリング装置30を前進させてワーク1を金型に臨ませ、図6(i)に示すように短辺1dの曲げ加工を行う。
【0024】
短辺1dの曲げ終了後、図6(j)に示すように、自動ハンドリング装置30はワークグリップ機構31によるワーク1の掴みを解放し、自動ハンドリング装置30は単独でそのグリップ保持板38が反時計廻り方向に角度180°旋回する。このとき、ワーク1はグリップ解放で自由になっていて不安定であるので、図7で示したセンタークランプ21,22で挟持して安定させておくことができる。すなわち、自動ハンドリング装置30とマニピュレータ20が併用される例である。かかる旋回位置でワークグリップ機構31を作動させてワーク1の既に曲げ済みの長辺1bをツカミ換えしてグリップする。ワーク1に対するツカミ換えは全曲げ工程中でそのとき一度のみである。
【0025】
ツカミ換え後、自動ハンドリング装置30はツカミ換え位置から今度は時計廻り方向に角度90°だけ旋回して原位置であるハンドリング開始点に戻る。それによって、図6(k)に示すように、ワーク1の長辺1cがパネルベンダー本体10に振り向けられる。
【0026】
図6(1)に示すように、ワーク1をグリップした自動ハンドリング装置30のキャリア37はY軸上を前進し、ワーク1の長辺1cの曲げ加工が行われる。長辺1cの曲げ終了後、図6(m)に示すように、自動ハンドリング装置30のキャリア37はY軸上を後退して原位置のハンドリング開始点に戻る。
【0027】
ハンドリング開始点に戻った自動ハンドリング装置30は4つの長短辺すべての曲げを終えたワーク1をグリップ保持した状態で、図6(n)に示すように、X軸上を図の左方向に移動してワーク1を搬入テーブル12上に運び、ワーク搬出の段取りとなる。
【0028】
但し、操作台テーブル11の図6(n)でいう右隣りに搬出テーブル40を設けてある場合、すべての曲げを終えたワーク1はX軸上をその搬出テーブル40に搬出コンベア14を作動させて搬出することもできる。
【0029】
また、ワーク1が小形の場合は特に、すべての辺の曲げ加工を終えた後はハンドリング開始点までわざわざ戻す必要がなく、終えた位置から搬入テーブル12または上記搬出テーブル40に斜め方向に後退させて搬出することができる。ワークを斜め方向に移動させるパスラインも自動ハンドリング装置30のXY軸座標の設定で可能である。小形のワークをそのような斜めパスラインで搬出すれば、大形のワーク1のように原点であるハンドリング開始点まで戻す場合と比べて戻し時間を稼いでタクト短縮に有効である。
【0030】
なお、ワーク1は、長短4つの辺を図4(a),(b)および図5(a)〜(c)に示す形状にフランジ曲げして額縁状のドアパネルなどに製作されるものが例として示されている。上記図6(a)〜(n)までの動作の各工程においてワーク1の長辺1b,1cと短辺1d,1eをそれぞれ一回のみ曲げ加工するかのような説明をしている。すなわち、図4および図5のように二度曲げ、三度曲げ・・・してフランジ曲げする加工の方法や形態は本実施形態の主旨とするところではないので説明を省略している。
【0031】
以上から明らかなように、第1の実施形態ではつぎの多くの効果が得られる。
▲1▼図示例のワーク1のように、ドアパネルのごとき窓用の開口部1aが前工程で空けられているために、従来の図7(a),(b)で示すマニピュレータ20のセンタークランプ21,22ではワーク中央部を掴んでクランプできない場合により有効である。
▲2▼従来、センタークランプ21,22でワーク中央部から偏心位置を掴むために、ワークの長短各辺を順に曲げ加工する際に振り向ける旋回半径が大きくなり、大きな旋回半径分の面積を確保する不具合があった。本実施形態ではそうした不具合を、自動ハンドリング装置30でグリップしてワーク1を中心部で旋回させるので、最小限の旋回面積を確保するだけで済み、工場レイアウトで省スペース化が実現する。
▲3▼従来、ワークの長短4つの辺ごとに「ツカミ換え」しているために、ワーク1枚当たりの加工タクトが長くそれが反映してコスト高の大きな要因となっていた。本実施形態ではそうした不具合を、図6(j)でツカミ換えを一度だけに設定しているので、ワーク1枚当たりの加工タクトが格段に短縮され、作業能率の向上とコスト低減に非常に有効である。
【0032】
第2の実施形態
上記第1の実施形態ではワーク1の中央部に開口部1aが空いている場合の長短4つの各辺1b,1c,1d,1eを順に曲げ加工する形態が説明された。それに対して、図7(a),(b)に示すワーク中央部に開口部を有しないワーク1の曲げ加工に対応する場合、本装置に備わるセンタークランプ式のマニピュレータ20によってワーク1の中央部を掴んでクランプし、長短4つの各辺を曲げ加工する。このように、ワーク1の中央部における開口部1aの有無に応じてセンタークランプ式のマニピュレータ20および第1の実施形態の自動ハンドリング装置30のいずれか使い分けでき、また加工都合によってはマニピュレータ20と自動ハンドリング装置30の双方を併用できる。併用は、上記段落(0024)で説明したツカミ換え時に有効である。
【0033】
以上、好適な第1,第2の実施形態について説明した。本発明の主旨や思想を逸脱しない範囲内において、本発明はかかる第1,第2の実施形態に限定されるものではなく他の実施形態やそれらの変形例や応用例も可能である。さらに、それら各実施形態の組み合わせも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る好適な第1の実施形態の自動ハンドリング装置をパネルベンダーに適用した形態を示す平面図。
【図2】同第1の実施形態の自動ハンドリング装置を示す正面図。
【図3】同第1の実施形態の自動ハンドリング装置を示す側面図。
【図4】同図(a),(b)は第1の実施形態の自動ハンドリング装置におけるワーク例をそれぞれ示す曲げ加工前と加工後を示す斜視図。
【図5】同図(a)〜(c)は第1の実施形態における要部であるグリップ機構の構造と動作順を示す側面図。
【図6】同図(a)〜(n)は第1の実施形態においてワークの曲げ加工動作を順に示す平面図。
【図7】同図(a),(b)はセンタークランプ方式によってワークをグリップした状態で曲げ加工する前後を示す斜視図。
【図8】ワーク中央部に窓用開口部を設けた場合のグリップ方式を示すワーク曲げ加工前後を示す斜視図。
【符号の説明】
【0035】
1・・・ワーク
1a・・窓用の開口部
1b,1c,1c,1d・・・曲げ加工されるワーク長短辺
11・・・操作台テーブル
12・・・搬入テーブル
13・・・搬入コンベア
14・・・搬出コンベア
20・・・マニピュレータ
21,22・・・センタークランプ
30・・・自動ハンドリング装置
31・・・ワークグリップ機構
32・・・トグル機構に連結された上部のグリップ部材
33・・・下部のグリップ部材
34・・・可動ブラケット
35・・・シリンダ装置
37・・・キャリア
38・・・グリップ保持板
39・・・グリップ保持板の回転動力源
40・・・搬出テーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板鋼板などの金属素材を曲げ加工するプレスブレーキやパネルベンダーなどの鍛圧機械に関し、さらに詳しくは、金型に対してパネル状のワークを曲げ方向に振り向ける旋回操作を自動化した曲げ部材のハンドリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、矩形状のワークをパネルベンダーに送り込んでワークの長短各辺を順に曲げ加工することで、たとえばスチールドア、壁材、スチール家具などの製品の筺体や組立用パネルが製造される。その場合、ワークは前工程において定尺材を所要の大きさ剪断したもの、あるいは所要の形状に打ち抜きプレス加工して折り曲げ前の展開シート(ブランク)にしたものが曲げの次工程であるパネルベンダーに送り込まれることが多々ある。たとえば、図7(a),(b)に示すように、矩形状のワーク1の長短4つの各辺を順に曲げ加工する場合、ワーク1の中央部をマニピュレータのセンタークランプ21,22で掴んで旋回させ、ワーク曲げ方向を金型に振り向けるワークハンドリングが行われる。図示例のワーク1はそれぞれ2つの長辺1b,1cと短辺1d,1eを順に曲げ加工し、図7(b)に示すフランジを有する額縁形状パネルとして製造されるものである。
【0003】
それに対して、図8(a),(b)に示すたとえば上記スチールドア用のパネルのように、前工程においてワーク1の中央部に窓用の開口部1aを空けたものがパネルベンダーに送られてくる工程の場合は事情が異なる。この場合、開口部1aが空いているためにワーク1の中央部を図7(a),(b)に示すセンタークランプ21,22で掴んでクランプすることができない。したがって、やむなくセンタークランプ21,22でワーク中央部からずれた偏心位置にてワーク1を掴んでクランプせざるを得ない。そのように掴み位置がワーク中央部からずれると、そのずれた距離分だけワーク1の振り向け旋回半径が大きくなる。旋回半径が大きくなると、それだけワークハンドリング時の作業スペースを広く確保しなければならず、工場内レイアウトを制約して不利である。
【0004】
近年、ワーク1の旋回半径が大きくなる不具合を解消するために、図8(a),(b)のように、ワーク1の一辺をグリップ機構31で掴んで金型に振り向けるハンドリング装置や方式が開発されている。たとえば、特許文献1に開示されている装置や方法の場合、座標軸でいうX軸とY軸の方向にワークを移動させるマニピュレータが第1マニピュレータと第2マニピュレータからなっているものである。
【0005】
【特許文献1】 特表2000−503908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された装置では、ワークの曲げ方向を金型に振り向けるごとにグリップ機構はワークの一辺から他辺へツカミ換えしなければならない。すなわち、ワークが矩形状で長短4つの各辺を曲げ加工するような場合、長短4つの各辺のすべてをツカミ換えする必要がある。結果、ワーク1枚当たりの加工タクトが非常に長くなり、それが加工コストに反映してコスト高になるといった問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ワークのツカミ換えを最小回数に抑えることでワーク1枚当たりの加工タクトを大幅に短縮することにより、作業能率を高めて加工コストを低減できる曲げ部材の自動ハンドリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係る代表的な請求項1に記載の曲げ部材の自動ハンドリング方法は、曲げ部材の大きさと形状に応じて予めプログラムされたXY軸座標上の原点をハンドリング開始点に設定し、前記ハンドリング開始点からX軸方向を搬入位置まで移動してそこに位置決めされている前記曲げ部材の第1の辺を把持したクランプ状態で前記ハンドリング開始点まで移動させ、かつ前記ハンドリング開始点に移動させた前記曲げ部材をクランプ状態でY軸方向を金型に向けて前進させて、前記金型によって前記曲げ部材の第1の辺に対向する第2の辺を曲げ加工後に前記ハンドリング開始点まで後退させ、そのハンドリング開始点を中心に前記曲げ部材を時計廻り方向または反時計廻り方向に旋回させて第3の辺およびそれ以上の各辺を順に曲げ加工し、各辺の曲げを終えた曲げ部材を搬出位置に向けてX軸方向に移動させて搬出することを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するために本発明に係る代表的な請求項2に記載の曲げ部材の自動ハンドリング装置は、曲げ部材の曲げ加工を行う金型と、前記金型の正面前部に隣接して設けられて前記曲げ部材を前記金型に振り向けるハンドリングを行う場所の操作台テーブルと、前記操作台テーブルの横に隣接して設けられた搬入搬出用のテーブルと、前記曲げ部材の大きさと形状に応じて設定されるXY軸座標上の原点をハンドリング開始点にして前記搬入搬出用のテーブルとの間をX軸方向に往復動し、かつ前記金型と前記ハンドリング開始点との間をY軸方向に進退動作するキャリアと、前記キャリアに回転自在に軸支されたグリップ保持板と、前記グリップ保持板に一列に保持され、前記曲げ部材の一辺を把持したクランプ状態で曲げ部材を時計廻り方向または反時計廻り方向に旋回させて前記金型に振り向ける複数からなるワークグリップ機構と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載の曲げ部材の自動ハンドリング方法によれば以下の効果が得られる。曲げ部材の各辺を金型に振り向けて曲げ加工する場合、曲げ部材を座標平面のX軸方向とY軸方向に移動させ、かつハンドリング開始点を中心に曲げ部材を旋回動作させるので、曲げ部材の振り回しに大きな作業範囲を必要としない。そのため、工場内レイアウトにおいて省スペースに有効である。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載の曲げ部材の自動ハンドリング装置によれば以下の効果が得られる。自動ハンドリング装置に備わる複数のワークグリップ機構で曲げ部材の一辺を掴んでクランプし、そのクランプ状態で曲げ部材を旋回させて各辺を金型に振り向けるので、最小限の旋回面積を確保するだけで済む。また、曲げ部材の各辺すべてに「ツカミ換え」する従来の不具合を解消できる。すなわち、ツカミ換えを一度だけに設定しているので、曲げ部材1枚当たりの加工タクトが格段に短縮され、作業能率の向上とコスト低減に非常に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明による曲げ部材の自動ハンドリング装置の好適な実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、従来例として説明した図7および図8の部材と同一または共通する部材には同一の符号を付し、本実施形態による新規部材には新規の符号を付して従来例との違いを明確にする。
【0013】
第1の実施形態
図1は、本実施形態による曲げ部材の自動ハンドリング装置30をACサーボドライブ方式パネルベンダーに応用した構造例の全体平面図である。パネルベンダー本体10には図示しない上下型からなる曲げ加工用の金型が備わっている。パネルベンダー本体10の前部正面側にはワークをハンドリングする操作台テーブル11が設けられている。この操作台テーブル11上に図4(a),(b)に示す曲げ部材である矩形状のワーク1が座標軸でいうX軸方向から横送りされてきて位置決めされ、パネルベンダー本体10の金型に向けてY軸方向を前方に縦送りされて曲げ加工に臨む。また、図示しないワーク集積ストックからワーク1を1枚ずつ送って位置決めするためのローラコンベア式搬入テーブル(搬入位置)12が操作台テーブル11に設けられている。搬入テーブル12へのワーク搬入動作にほぼ同期させて、次に詳述する自動ハンドリング装置30が図の右方から左方へX軸上を移動してきて搬入テーブル12上のワーク1を把持してクランプする
【0014】
また、上記操作台テーブル11上にはワーク1を掴んでハンドリングを行うマニピュレータ20が配置され、図7(a),(b)で示したセンタークランプ21,22を備えそれらでワーク1を表面側と裏面側から挟み込んでクランプするようになっている。
【0015】
また、操作台テーブル11上をXY軸直交座標の平面と仮定し、ワーク1の大きさと形状に応じてその座標原点の位置を予めプログラムしてシーケンス制御が可能となっている。そうした座標原点をハンドリング開始点としてそこを原位置に本実施形態の要部である自動ハンドリング装置30が配置されている。図2に示すように、自動ハンドリング装置30はそのキャリア(台車)37を介して操作台テーブル11における原位置のハンドリング開始点からガイドレール15に案内され、座標軸のX軸方向とY軸方向に直線動するようになっている。キャリア37にはグリップ保持板38が回転自在に軸支されていて、モータや減速機などからなる回転動力源39から回転動力を受けて回転する。そうしたグリップ保持板38に一列に配置して同一の本実施形態では4つのワークグリップ機構31が担持されている。それら4つのワークグリップ機構31はワーク1の大きさや形状に応じて予めプログラムされたシーケンス制御で4つすべて、あるいは4つの一部が同時作動するよう設定されている。
【0016】
そこで、上記グリップ保持板38は4つのワークグリップ機構31を伴って一体に時計廻り方向または反時計廻り方向にそれぞれ回転角度90°から最大180°の範囲で回転する。すなわち、4つのワークグリップ機構31は一体にXY軸方向に直線動するとともに、操作台テーブル11にて角度90°〜180°の範囲で回転する。図5(a)〜(c)は、それら4つのワークグリップ機構31の構造と動作順を示している。各ワークグリップ機構31はワーク1を掴んでクランプする上下一対の爪形状グリップ部材32,33を有し、上部のグリップ部材32はトグル機構の一部材を構成して倍力を発生するようになっている。その上部のグリップ部材32は基端部がヒンジピン32aを介して回動可能に可動ブラケット34に軸支され、ヒンジピン32bを介してシリンダ装置(アクチュエータ)35のロッド35aに連結されている。したがって、シリンダ装置35のピストン往復作動によってヒンジピン32aを支点にしてグリップ部材32を回動させ、下部のグリップ部材33と協働してワーク1を掴むようになっている。その下部のグリップ部材33は上記可動ブラケット34に一体的に結合され、それら一体結合体がシリンダ装置36のロッド36aの直線動で天地方向への上下動が可能に保持されている。
【0017】
つぎに、以上の構成から第1の本実施形態による自動ハンドリング装置30について、その動作と作用を図6(a)〜(n)を参照して説明する。以下、自動ハンドリング装置20のシーケンス動作はCPU(中央制御装置)などで構成されるマイコンによる電子制御に基づいたNC制御で行うことができる。
【0018】
まず、図6(a)のように、図4(a),(b)に示す曲げ部材のワーク1が搬入テーブル12上に送られてきて位置決めされる。そのワーク搬入動作にほぼ同期して、操作台テーブル11上のハンドリング開始点に待機中の自動ハンドリング装置30が搬入テーブル12に向かってX軸方向を図の左方向に移動開始する。すなわち、スタートON信号によってキャリア37がX軸上を図の左方向の搬入テーブル12に向かって移動開始し、グリップ保持板38上の4つのワークグリップ機構31がワーク1の長辺1cを掴める位置まで移動する。続いて4つのワークグリップ機構31のシリンダ装置35が同時作動し、ワーク1の長辺1cを掴んでグリップする(図8参照)。
【0019】
図6(b)に示すように、自動ハンドリング装置30のワークグリップ機構31でグリップされたワーク1はX軸上を図の右方向の操作台テーブル11に向かって運ばれ、操作台テーブル11上の所定位置(原位置)まで移動していったんここで位置決めされる。この操作台テーブル11の原位置がワーク1をこれから曲げ開始する初動位置となる。
【0020】
図6(c)に示すように、ワークグリップ機構31でグリップされた状態でワーク1をパネルベンダー本体10に向けてY軸上を前方に縦移動させる。金型に振り向けられたワーク1はその長辺1bが所定の角度に曲げ加工される。
【0021】
長辺1bの曲げ加工を終えると、図6(d)に示すように、自動ハンドリング装置30はワークグリップ機構31でグリップした状態のワーク1を操作台テーブル11上の初動位置である原位置まで後退させる。
【0022】
原位置に後退した段階で、図6(e)に示すように、自動ハンドリング装置30のワークグリップ機構31はグリップしているワーク1ごと一体に反時計廻り方向に位相角度90°だけ旋回し、短辺1eをパネルベンダー本体10に振り向ける。それから自動ハンドリング装置30はパネルベンダー本体10に向けてY軸上を前進し、掴んでいるワーク1の短辺1eを金型に臨ませる。それによって図6(f)に示すように、ワーク1の短辺1eの曲げ加工が行われる。
【0023】
短辺1eの曲げ加工を終えると、図6(g),(h)に示すように、自動ハンドリング装置30はワーク1をグリップしたまま原位置まで後退し、そのグリップ状態でワーク1ごと位相角度180°だけ時計廻り方向に旋回する。それによって今度はワーク1の短辺1dがパネルベンダー本体10に振り向けられ、自動ハンドリング装置30を前進させてワーク1を金型に臨ませ、図6(i)に示すように短辺1dの曲げ加工を行う。
【0024】
短辺1dの曲げ終了後、図6(j)に示すように、自動ハンドリング装置30はワークグリップ機構31によるワーク1の掴みを解放し、自動ハンドリング装置30は単独でそのグリップ保持板38が反時計廻り方向に角度180°旋回する。このとき、ワーク1はグリップ解放で自由になっていて不安定であるので、図7で示したセンタークランプ21,22で挟持して安定させておくことができる。すなわち、自動ハンドリング装置30とマニピュレータ20が併用される例である。かかる旋回位置でワークグリップ機構31を作動させてワーク1の既に曲げ済みの長辺1bをツカミ換えしてグリップする。ワーク1に対するツカミ換えは全曲げ工程中でそのとき一度のみである。
【0025】
ツカミ換え後、自動ハンドリング装置30はツカミ換え位置から今度は時計廻り方向に角度90°だけ旋回して原位置であるハンドリング開始点に戻る。それによって、図6(k)に示すように、ワーク1の長辺1cがパネルベンダー本体10に振り向けられる。
【0026】
図6(1)に示すように、ワーク1をグリップした自動ハンドリング装置30のキャリア37はY軸上を前進し、ワーク1の長辺1cの曲げ加工が行われる。長辺1cの曲げ終了後、図6(m)に示すように、自動ハンドリング装置30のキャリア37はY軸上を後退して原位置のハンドリング開始点に戻る。
【0027】
ハンドリング開始点に戻った自動ハンドリング装置30は4つの長短辺すべての曲げを終えたワーク1をグリップ保持した状態で、図6(n)に示すように、X軸上を図の左方向に移動してワーク1を搬入テーブル12上に運び、ワーク搬出の段取りとなる。
【0028】
但し、操作台テーブル11の図6(n)でいう右隣りに搬出テーブル40を設けてある場合、すべての曲げを終えたワーク1はX軸上をその搬出テーブル40に搬出コンベア14を作動させて搬出することもできる。
【0029】
また、ワーク1が小形の場合は特に、すべての辺の曲げ加工を終えた後はハンドリング開始点までわざわざ戻す必要がなく、終えた位置から搬入テーブル12または上記搬出テーブル40に斜め方向に後退させて搬出することができる。ワークを斜め方向に移動させるパスラインも自動ハンドリング装置30のXY軸座標の設定で可能である。小形のワークをそのような斜めパスラインで搬出すれば、大形のワーク1のように原点であるハンドリング開始点まで戻す場合と比べて戻し時間を稼いでタクト短縮に有効である。
【0030】
なお、ワーク1は、長短4つの辺を図4(a),(b)および図5(a)〜(c)に示す形状にフランジ曲げして額縁状のドアパネルなどに製作されるものが例として示されている。上記図6(a)〜(n)までの動作の各工程においてワーク1の長辺1b,1cと短辺1d,1eをそれぞれ一回のみ曲げ加工するかのような説明をしている。すなわち、図4および図5のように二度曲げ、三度曲げ・・・してフランジ曲げする加工の方法や形態は本実施形態の主旨とするところではないので説明を省略している。
【0031】
以上から明らかなように、第1の実施形態ではつぎの多くの効果が得られる。
▲1▼図示例のワーク1のように、ドアパネルのごとき窓用の開口部1aが前工程で空けられているために、従来の図7(a),(b)で示すマニピュレータ20のセンタークランプ21,22ではワーク中央部を掴んでクランプできない場合により有効である。
▲2▼従来、センタークランプ21,22でワーク中央部から偏心位置を掴むために、ワークの長短各辺を順に曲げ加工する際に振り向ける旋回半径が大きくなり、大きな旋回半径分の面積を確保する不具合があった。本実施形態ではそうした不具合を、自動ハンドリング装置30でグリップしてワーク1を中心部で旋回させるので、最小限の旋回面積を確保するだけで済み、工場レイアウトで省スペース化が実現する。
▲3▼従来、ワークの長短4つの辺ごとに「ツカミ換え」しているために、ワーク1枚当たりの加工タクトが長くそれが反映してコスト高の大きな要因となっていた。本実施形態ではそうした不具合を、図6(j)でツカミ換えを一度だけに設定しているので、ワーク1枚当たりの加工タクトが格段に短縮され、作業能率の向上とコスト低減に非常に有効である。
【0032】
第2の実施形態
上記第1の実施形態ではワーク1の中央部に開口部1aが空いている場合の長短4つの各辺1b,1c,1d,1eを順に曲げ加工する形態が説明された。それに対して、図7(a),(b)に示すワーク中央部に開口部を有しないワーク1の曲げ加工に対応する場合、本装置に備わるセンタークランプ式のマニピュレータ20によってワーク1の中央部を掴んでクランプし、長短4つの各辺を曲げ加工する。このように、ワーク1の中央部における開口部1aの有無に応じてセンタークランプ式のマニピュレータ20および第1の実施形態の自動ハンドリング装置30のいずれか使い分けでき、また加工都合によってはマニピュレータ20と自動ハンドリング装置30の双方を併用できる。併用は、上記段落(0024)で説明したツカミ換え時に有効である。
【0033】
以上、好適な第1,第2の実施形態について説明した。本発明の主旨や思想を逸脱しない範囲内において、本発明はかかる第1,第2の実施形態に限定されるものではなく他の実施形態やそれらの変形例や応用例も可能である。さらに、それら各実施形態の組み合わせも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る好適な第1の実施形態の自動ハンドリング装置をパネルベンダーに適用した形態を示す平面図。
【図2】同第1の実施形態の自動ハンドリング装置を示す正面図。
【図3】同第1の実施形態の自動ハンドリング装置を示す側面図。
【図4】同図(a),(b)は第1の実施形態の自動ハンドリング装置におけるワーク例をそれぞれ示す曲げ加工前と加工後を示す斜視図。
【図5】同図(a)〜(c)は第1の実施形態における要部であるグリップ機構の構造と動作順を示す側面図。
【図6】同図(a)〜(n)は第1の実施形態においてワークの曲げ加工動作を順に示す平面図。
【図7】同図(a),(b)はセンタークランプ方式によってワークをグリップした状態で曲げ加工する前後を示す斜視図。
【図8】ワーク中央部に窓用開口部を設けた場合のグリップ方式を示すワーク曲げ加工前後を示す斜視図。
【符号の説明】
【0035】
1・・・ワーク
1a・・窓用の開口部
1b,1c,1c,1d・・・曲げ加工されるワーク長短辺
11・・・操作台テーブル
12・・・搬入テーブル
13・・・搬入コンベア
14・・・搬出コンベア
20・・・マニピュレータ
21,22・・・センタークランプ
30・・・自動ハンドリング装置
31・・・ワークグリップ機構
32・・・トグル機構に連結された上部のグリップ部材
33・・・下部のグリップ部材
34・・・可動ブラケット
35・・・シリンダ装置
37・・・キャリア
38・・・グリップ保持板
39・・・グリップ保持板の回転動力源
40・・・搬出テーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ部材の大きさと形状に応じて予めプログラムされたXY軸座標上の原点をハンドリング開始点に設定し、前記ハンドリング開始点からX軸方向を搬入位置まで移動してそこに位置決めされている前記曲げ部材の第1の辺を把持したクランプ状態で前記ハンドリング開始点まで移動させ、かつ前記ハンドリング開始点に移動させた前記曲げ部材をクランプ状態でY軸方向を金型に向けて前進させて、前記金型によって前記曲げ部材の第1の辺に対向する第2の辺を曲げ加工後に前記ハンドリング開始点まで後退させ、そのハンドリング開始点を中心に前記曲げ部材を時計廻り方向または反時計廻り方向に旋回させて第3の辺およびそれ以上の各辺を順に曲げ加工し、各辺の曲げを終えた曲げ部材を搬出位置に向けてX軸方向に移動させて搬出することを特徴とする曲げ部材の自動ハンドリング方法。
【請求項2】
前記曲げ部材のすべての辺を把持してクランプ状態で曲げ加工を行う場合、辺のツカミ換えを一度のみ行うことを特徴とする請求項1に記載の曲げ部材の自動ハンドリング方法。
【請求項3】
曲げ部材の曲げ加工を行う金型と、
前記金型の正面前部に隣接して設けられて前記曲げ部材を前記金型に振り向けるハンドリングを行う場所の操作台テーブルと、
前記操作台テーブルの横に隣接して設けられた搬入搬出用のテーブルと、
前記曲げ部材の大きさと形状に応じて設定されるXY軸座標上の原点をハンドリング開始点にして前記搬入搬出用のテーブルとの間をX軸方向に往復動し、かつ前記金型と前記ハンドリング開始点との間をY軸方向に進退動作するキャリアと、
前記キャリアに回転自在に軸支されたグリップ保持板と、
前記グリップ保持板に一列に保持され、前記曲げ部材の一辺を把持したクランプ状態で曲げ部材を時計廻り方向または反時計廻り方向に旋回させて前記金型に振り向ける複数からなるワークグリップ機構と、
を備えたことを特徴とする曲げ部材の自動ハンドリング装置。
【請求項4】
前記曲げ部材の大きさおよび形状に応じて前記複数からなるワークグリップ機構のすべてまたは一部を作動させるように構成したことを特徴とする請求項3に記載の曲げ部材の自動ハンドリング装置。
【請求項5】
前記曲げ部材の辺のツカミ換えのために、前記曲げ部材へのクランプ状態を解放して前記ワークグリップ機構が前記グリップ保持板を介して旋回するとき、クランプ解放された前記曲げ部材をセンタークランプで挟持するマニピュレータを備えたことを特徴とする請求項3または4に記載の曲げ部材の自動ハンドリング装置。
【請求項6】
前記曲げ部材の大きさおよび形状に対応して前記ワークグリップ機構および前記マニピュレータのいずれか一方または両方併用を選択可能に構成したことを特徴とする請求項5に記載の曲げ部材の自動ハンドリング装置。
【請求項1】
曲げ部材の大きさと形状に応じて予めプログラムされたXY軸座標上の原点をハンドリング開始点に設定し、前記ハンドリング開始点からX軸方向を搬入位置まで移動してそこに位置決めされている前記曲げ部材の第1の辺を把持したクランプ状態で前記ハンドリング開始点まで移動させ、かつ前記ハンドリング開始点に移動させた前記曲げ部材をクランプ状態でY軸方向を金型に向けて前進させて、前記金型によって前記曲げ部材の第1の辺に対向する第2の辺を曲げ加工後に前記ハンドリング開始点まで後退させ、そのハンドリング開始点を中心に前記曲げ部材を時計廻り方向または反時計廻り方向に旋回させて第3の辺およびそれ以上の各辺を順に曲げ加工し、各辺の曲げを終えた曲げ部材を搬出位置に向けてX軸方向に移動させて搬出することを特徴とする曲げ部材の自動ハンドリング方法。
【請求項2】
前記曲げ部材のすべての辺を把持してクランプ状態で曲げ加工を行う場合、辺のツカミ換えを一度のみ行うことを特徴とする請求項1に記載の曲げ部材の自動ハンドリング方法。
【請求項3】
曲げ部材の曲げ加工を行う金型と、
前記金型の正面前部に隣接して設けられて前記曲げ部材を前記金型に振り向けるハンドリングを行う場所の操作台テーブルと、
前記操作台テーブルの横に隣接して設けられた搬入搬出用のテーブルと、
前記曲げ部材の大きさと形状に応じて設定されるXY軸座標上の原点をハンドリング開始点にして前記搬入搬出用のテーブルとの間をX軸方向に往復動し、かつ前記金型と前記ハンドリング開始点との間をY軸方向に進退動作するキャリアと、
前記キャリアに回転自在に軸支されたグリップ保持板と、
前記グリップ保持板に一列に保持され、前記曲げ部材の一辺を把持したクランプ状態で曲げ部材を時計廻り方向または反時計廻り方向に旋回させて前記金型に振り向ける複数からなるワークグリップ機構と、
を備えたことを特徴とする曲げ部材の自動ハンドリング装置。
【請求項4】
前記曲げ部材の大きさおよび形状に応じて前記複数からなるワークグリップ機構のすべてまたは一部を作動させるように構成したことを特徴とする請求項3に記載の曲げ部材の自動ハンドリング装置。
【請求項5】
前記曲げ部材の辺のツカミ換えのために、前記曲げ部材へのクランプ状態を解放して前記ワークグリップ機構が前記グリップ保持板を介して旋回するとき、クランプ解放された前記曲げ部材をセンタークランプで挟持するマニピュレータを備えたことを特徴とする請求項3または4に記載の曲げ部材の自動ハンドリング装置。
【請求項6】
前記曲げ部材の大きさおよび形状に対応して前記ワークグリップ機構および前記マニピュレータのいずれか一方または両方併用を選択可能に構成したことを特徴とする請求項5に記載の曲げ部材の自動ハンドリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図6】
【図6】
【図6】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図6】
【図6】
【図6】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−235352(P2011−235352A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117796(P2010−117796)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(500419218)株式会社吉野機械製作所 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(500419218)株式会社吉野機械製作所 (2)
【Fターム(参考)】
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