説明

曲線ターンを辿るように複数のローターを有する回転翼無人機を操縦する方法

【課題】無人機が通常のターン経路上を飛行することを可能にする無人機の制御モードを提供する。
【解決手段】無人機10の各モーターは、姿勢及び速度の両方で無人機を操縦するために、異なる速度で回転するように制御可能である。遠隔制御装置16は、曲線経路に沿ってターンするコマンドを生成し、このコマンドは、左又は右ターン方向パラメーターと、ターンの曲率半径を規定するパラメーターとを含む。無人機は、上記コマンドを受信し、並びに、無人機の線形速度成分、傾斜の角度、及び角速度の瞬間測定値を取得する。受信したコマンド及び取得された測定値に基づいて、無人機のモーターを制御する制御ループの設定点値が生成され、これら設定点値は、地面に関連する座標系に対して無人機の水平線形速度及び傾斜を制御して、無人機に所定の接線速度uで曲線経路を辿らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クアッドリコプター(quadricopter:4翼ヘリコプター)等のような回転翼無人機の操縦に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような無人機には、それぞれのモーターによって駆動される複数のローターが設けられており、それぞれのモーターは、無人機の姿勢及び速度の両方を制御するために、異なる速度で回転するように制御可能である。
【0003】
こうした無人機の代表的な一例は、フランス、パリのParrot SA製のAR.Droneであり、それは、一組のセンサー(3軸ジャイロ、加速度計、及び高度計)を装備したクアッドリコプターである。無人機には、その無人機の向かっている方向の景色の画像を捕捉する正面カメラ及びその上空を飛行している地形の画像を捕捉する垂直方向カメラも設けられる。
【0004】
無人機は、ユーザーが、以下では「装置」と呼ばれ、無線リンクを介して無人機に接続される、無人機とは別個の遠隔制御装置を利用することにより操縦される。
【0005】
特許文献1(Parrot SA)は特に、こうした無人機を記載するとともに、それを、タッチスクリーン及び組込み加速度計を有するマルチメディアプレーヤー又は電話機、例えば、iPhone型の携帯電話又はiPod Touch若しくはiPad型(米国のApple Inc.により登録された商標)のマルチメディアプレーヤー若しくはタブレットによっていかに操縦することができるかを記載している。これらの装置は、操縦コマンドを検出し、WiFi(IEEE802.11)又はBluetooth(登録商標)ローカルネットワーク型の無線リンクを介して無人機とデータを双方向で交換するために必要な様々な制御部材を含む。特に、装置には、正面カメラにより捕捉され、様々なシンボルが上に重ねられた画像を表示するタッチスクリーンが設けられ、シンボルは、ユーザーの指がタッチスクリーンに触れるだけでコマンドを起動できるようにする。このディスプレイはまた、「潜行(immersed)」操縦を可能にし、潜行操縦では、ユーザーは、無人機自体を見ることにより無人機を操縦するのではなく、まるで操縦者が無人機に搭乗しているかのようにカメラ画像を利用する。
【0006】
無人機を、スラロームのように単一又は二重のゲート又は支柱、及び決勝線により画定される経路を辿ることから成るレースゲームに用いることができる。特許文献2(Parrot)は、目標塔と、プレーヤーがクアッドリコプターを通過させなければならない2つの仮想リングとにより画定されるサーキットを回ることから成るこのようなクアッドリコプターレースゲームを記載している。
【0007】
レースに勝つためには、高速での飛行が必須である。そして、時間を節約するためには、最大量の運動エネルギーを保存しながら、すなわち、比較的高速で移動しながら、可能な限り支柱の近くでターンすることが必要である。
【0008】
ゲームが180度ターン操作、8字形飛行等を含む場合にも同じことが言える。
【0009】
本クアッドリコプターの場合、これらの操作では、操作モードは、これらの図形飛行を実行するために、ユーザーがいくつかの異なる制御を組み合わせて使用することを必要とするため、ユーザーは熟練し経験豊富であることが必要である。
【0010】
より正確には、無人機は、以下の組み合わせによりユーザーにより直接操縦される:
・第1に、装置の傾斜検出器により送られる信号:例えば、無人機を前方に移動させるために、ユーザーは装置を対応するピッチ軸を中心に傾斜させ、無人機を右又は左にシフトさせるために、ユーザーは同装置をそのロール軸に対して傾斜させる、並びに
・第2に、タッチスクリーン上で利用可能な制御、特に、「上/下」制御(スロットル制御に対応する)及び「右/左ターン」制御(無人機をヨー軸を中心に旋回させる)。
【0011】
したがって、モーターが、無人機を下に向けて傾斜させる、すなわち「ダイブさせる」(ピッチ角で傾斜させる)ように制御される場合、無人機は、傾斜角の増大に伴って増大する速度で前方に移動し、反対に、無人機が(反対方向に)「機首を上に向けた」位置になると、その速度は次第に低下し、その後反転して、逆方向に加速する。同様に、ロール軸を中心とした(無人機が右に又は左に傾いた)傾斜により、無人機は、右に又は左に直線状に水平に並進する。
【0012】
4つのモーターの回転速度への作用のみによって得られる前/後方向及び左/右方向でのこの種の水平速度制御は、クアッドリコプターの特徴である。
【0013】
これは特に、例えば、水平速度成分を生み出せるように、補助翼の位置若しくは方向舵制御面を機械的に制御するか、又はブレードの入射角を変更するために、ヘリコプターのローターの周期的なピッチを制御するサーボ機構を実施する特許文献3又は特許文献4に記載されているような他の種類の航空機(飛行機、シングルローターヘリコプター、又はデュアルローターヘリコプター)の速度制御システムと異なる。
【0014】
上述した特許文献1に記載されている無人機には、平衡点に到達する(自動安定化)コマンドも設けられており、ユーザーが遠隔制御装置の全ての制御を手放した場合、無人機は、完全に自動的に移動を停止し、平衡点に留まる。
【0015】
利用可能な制御を用いて、ユーザーは、i)ピッチ軸及びロール軸を中心とした無人機の傾斜を制御することによるXY並進(前/後及び左/右)移動と、ii)ヨー軸を中心とした無人機のターンを制御することによる旋回移動とを組み合わせることにより無人機が辿る経路を制御することができる。この考察では、高度制御(上/下)は無視され、無人機が一定の高度の経路を辿ると仮定される。
【0016】
これらの2つの種類の移動(XY並進及び旋回)は、同時に実行することができるが、そうするには、或る程度の熟練が必要とされる。初心者は、左手の親指を使用し、装置を傾けてXY操縦を無人機に適用し、次に、親指を離すことにより無人機を平衡点に到達させ、次に、方向を変更するために右の指を移動させることによるターン制御を用い(それにより、無人機に関連するXY座標系をターンさせる)、次に、この新しい方向でのXY操縦を続ける等により制御を分ける傾向がある。
【0017】
この第1の操作方法(分離した制御を用いる)では、無人機を素早く操縦することができない。
【0018】
別の技法は、設定経路に沿ってXYモードのみで無人機を操縦することから成る。しかし、このような場合には、無人機の正面カメラがもはや無人機の前方方向を向いておらず、装置のスクリーン上の視覚的フィードバックを操縦目的で用いることができない。
【0019】
いずれの場合でも、制御を同時に組み合わせて操縦する場合であっても、高速急ターンは無視できない量の遠心力を生じさせ、この遠心力は、経験豊富なユーザーでさえも、速度が或る特定のレベルを超えると、認識し補償することが実際には不可能であり、それにより、無人機の横滑り又はオーバーステアの大幅な増大が生じ、結果として、レーストラックの経路から離脱することになる。
【0020】
制御を組み合わせてターンするためには、ユーザーは、装置の3つの自由度を同時に制御する必要がある:2つの軸を中心に装置を傾けながら(無人機のロール及びピッチを制御するため)、右の指を横に移動させながら(無人機のヨー制御のため)、そして、いかなる上/下制御も無視しながら、左の親指でスクリーンを押す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第2010/061099号
【特許文献2】国際公開第2008/056049号
【特許文献3】特開第2006−312344号
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/245378号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的の1つは、無人機によるレーストラックの通常のターン経路:
・無人機の傾斜(ターン中のバイクのような横傾斜)を適宜制御することにより、横滑り又はオーバーステアのいかなる危険性も補償しながら、かつ
・随時、正面カメラが無人機の移動方向に向けられた状態を保ちながら、
・高速での急なカーブ
の飛行を可能にする無人機の新規の制御モードを提案することにより、この1組の問題に対する解決策を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、以下「結合ヨー操縦モード」と呼ばれるような操縦モードをユーザーに利用可能にすることであり、
・無人機の姿勢、高度等に対して細かく作用する可能性を維持しながら、
・単一の操作でのこの特定のモードへの切り替えと、
・制御を組み合わせる操縦と比較して、ユーザーが制御する必要がある自由度数の低減と、
を同時に行うことが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、特に上述の特許文献3及び特許文献4に開示されているタイプの操縦方法、すなわち、
a)遠隔制御装置が、曲線経路を辿るターンコマンドを生成するステップと、
b)前記無人機が、i)前記コマンドを受信し、並びに、ii)前記無人機の線形速度成分、傾斜の角度及び角速度の瞬間測定値を取得するステップと、
c)ステップb)において前記受信したコマンド及び前記取得した測定値に基づいて、無人機制御ループの設定点値を生成するステップであって、これらの設定点値は、地面に関連する座標系に対する前記無人機の前記水平線形速度及び前記傾斜を制御して、前記無人機に所定の接線速度で前記曲線経路を辿らせる、生成するステップと、を含む方法を提供する。
【0025】
しかしながら、特許文献3及び特許文献4は両方とも、自動飛行制御システムを開示しており、自動飛行制御システムでは、航空機(シングルローターヘリコプター)は、位置サーボ制御により所定の目標経路を辿るように操縦され、実際に辿った経路が設定点経路と比較される。
【0026】
本発明は、クアッドリコプター型の無人機に固有の別の種類の飛行パラメーター制御を提案する。このパラメーター制御では、ユーザーは、リアルタイムで操作して、「旋回率」と呼ばれる単一のパラメーターを制御し、このパラメーターは本質的に、円形経路の半径の大小に関連付けられる。
【0027】
その結果、無人機は、ターンをし、そのカーブを辿るために、ライダーが車両を大なり小なり傾けて、傾斜角をリアルタイムで変更するバイク乗車と同様に操縦される。
【0028】
より完全なバージョンでは、ユーザーには、無人機がこの円形経路に沿って移動する速度の制御も与えられる。すなわち、ユーザーには第2の自由度が与えられる。
【0029】
上の例えでは、これは、バイクのライダーが、ターンしながらスロットルを増減する能力に対応する。
【0030】
より正確に、かつ特徴的には、本発明は、無人機が、それぞれのモーターにより駆動される複数のローターを有するクアッドヘリコプター型の無人機であり、制御ループが、上記モーターの回転速度に対して異なる動作をとることにより、無人機の水平線形速度及び傾斜を制御し、上記コマンドが、右又は左ターン方向パラメーター及びターンの瞬間曲率半径の設定点を規定するパラメーターを含む旋回率コマンドである、方法を提供する。
【0031】
曲線経路を、一定の曲率半径を辿る円形経路とすることができ、所定の接線速度を一定速度とすることができる。
【0032】
好ましくは、ステップc)において生成される設定点値は、無人機の高度が地面に対して一定に保たれることを保証するように、無人機のモーターを制御する。
【0033】
非常に有利には、ステップc)において生成される設定点値は、円形経路に対してゼロ半径方向速度に無人機を維持して、無人機が上記経路を辿る際に無人機のいかなる横滑り又はオーバーステアも補償するように、無人機の水平線形速度及び傾斜を制御する。
【0034】
ターンコマンドは、特に、タッチスクリーンと、i)ユーザーの少なくとも1本の指による前記スクリーンの表面への接触を検出し、ii)接触点(複数の場合もあり)の位置を求め、iii)曲線経路に沿ってターンするコマンドを含む対応する操縦コマンドを生成するのに適した手段と、コマンドを前記無人機に送信するのに適した無線データ送信手段と、を備える遠隔制御装置によって生成することができる。
【0035】
このような状況下で、曲線経路に沿ってターンするコマンドは、有利には、タッチスクリーンへのユーザーの2本の指の同時接触を検出すると起動し、コマンドは、2本の指の同時接触の持続時間を通して、この同時接触がなくなったことが検出されるまで生成される。
【0036】
さらに、遠隔制御装置が、そのピッチ軸及び/又はロール軸のうちの一方及び/又は両方を中心とした傾斜の検出器を更に含む場合、曲線経路に沿ってターンするコマンドは、有利には、i)左又は右ターン方向パラメーターを求めるために、そのロール軸に対する装置の傾斜の左方向又は右方向に応じて、かつii)ターンの曲率半径を規定するパラメーターを求めるために、ロール軸に対する装置の傾斜の大きさに応じて生成される。
【0037】
ターンコマンドは、接線速度パラメーターを求めるために、装置のピッチ軸に対する該装置の傾斜の大きさに応じて生成することもできる。
【0038】
有利には、曲線経路に沿ってターンするコマンド中に辿られる経路が、半径方向速度成分を含む場合、ターンコマンドはまた、この半径方向速度成分を相殺するために、ピッチ軸に対する無人機の傾斜の大きさに応じて生成される。
【0039】
いずれの場合でも、必要に応じて、経路の曲率半径を所定の最小値に制限する条件を設けることができる。
【0040】
本方法は、ステップa)において無人機の180度ターンコマンドを生成する条件を設けることができ、さらに、ステップc)において、ステップb)において取得された測定値が、無人機がそのヨー軸を中心に180度回転したことを示す場合、曲線経路に沿った無人機の移動が終了する条件を設けることができる。
【0041】
本発明は、回転翼無人機のデジタルメモリに部分的にダウンロード可能であり、且つ、遠隔制御装置のデジタルメモリに部分的にダウンロード可能なソフトウェアも提供し、ソフトウェアは、実行されると、曲線経路に沿ってターンするように無人機を操縦する上記定義された方法を実施する命令を含む。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】無人機と、無人機を遠くから操縦可能な関連する遠隔制御装置とを示す全体図である。
【図2a】ヨー軸を中心としたそれぞれの旋回移動により制御することができる無人機の移動を示す図である。
【図2b】ピッチ軸及びロール軸を中心としたそれぞれの旋回移動により制御することができる無人機の移動を示す図である。
【図3】本発明の結合ヨー操縦モードに対応する円形ターン移動を実行する場合に無人機が辿る経路を示す図である。
【図4】結合ヨー操縦モードが起動した場合に切り抜けが容易なレーストラックの例の図である。
【図5】遠隔制御装置のスクリーンに表示することができる様々な画像及びシンボルを示す例である。
【図6】結合ヨーモードでの操縦に対応する円移動中の無人機の様々な座標軸を示す平面図である。
【図7】無人機の様々な制御、サーボ制御、及び支援付き操縦部材を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
[発明が機能する構成]
以下、添付図面を参照して与えられる本発明の方法の実施態様を説明し、添付図面では、同一であるか又は機能的に類似している要素を示すために図面間で同じ数字参照符号を用いる。
【0044】
本発明の実施態様の説明が続く。
【0045】
図1では、参照符号10は無人機の全体的な参照符号であり、無人機は、例えば、上述した特許文献1及び国際公開第2009/109711号(高度計及び前方監視カメラによって供給される情報に基づいて動作する自動安定化システムの一例を記載している)並びに仏国特許出願公開第2915565号(特に、無人機によって使用されるジャイロ及び加速度計の制御システムを記載している)に記載されているような、フランス、パリのParrot SA製のAR.Droneモデル等のクアッドリコプターとすることができる。
【0046】
無人機10は、組み込まれた航法姿勢制御システムによって独立して制御されるモーターによって駆動される、4つの同一平面状のローター12を有する。無人機10には、その無人機の向かっている方向の景色の画像を取得する正面を監視する第1のカメラ14、例えば、15フレーム毎秒(fps)のビデオストリームリフレッシュ周波数を有するVGA解像度(640×480ピクセル)の広角CMOSセンサーカメラが設けられる。無人機は、その上空を飛行している地形の連続画像を捕捉するのに適し、特に地面に対する無人機の速度を評価するために使用される、下方を監視する第2のカメラ(図示せず)も有する。
【0047】
慣性センサー(加速度計及びジャイロ)は、無人機の角速度及び姿勢角、すなわち、絶対地球座標系に対する無人機の傾斜を表すオイラー角を或る程度の精度で測定する役割を果たす。一般に、「傾斜」という用語は、無人機の、固定の地球座標系の水平面に対する傾斜を意味するために用いられ、無人機の水平速度の縦方向成分及び横方向成分が、無人機のピッチ軸及びロール軸を中心としたそれぞれの傾斜角に密接に関連付けられることが理解される。
【0048】
無人機の下に配置された超音波テレメーターも、地面に対する高度の測定値を提供する。
【0049】
水平面における線形速度(地球座標系の水平面における上述した直交する2つの縦方向成分及び横方向成分によって表される、無人機の並進の速度)について、この速度は、加速度計データと組み合わせて、無人機の垂直方向カメラによって送られる画像を解析することによって評価され、その解析は、カメラによって捕捉された景色において1つの画像から次の画像への動きを推定するソフトウェアによりなされ、この推定される動きには、測定された高度の関数であるスケール係数が適用される。様々なアルゴリズムが、およそ10メートル毎秒(m/s)である無人機の最大速度に近い値に対しても、非常に小さい値に対しても、非常に良好な精度でこの水平速度をリアルタイムに求めることを可能にする。
【0050】
無人機10は、タッチスクリーン18を有する遠隔制御装置16によって操縦され、タッチスクリーンは、正面カメラ14によって捕捉される画像を、それら画像の上に重ねられ、ユーザーが指20でタッチスクリーン18に触れるだけで操縦制御を起動することができるようにする様々なシンボルとともに表示する。このために、装置16には、無人機に接続し、双方向にデータを交換できるようにする無線手段、詳細には無人機10から装置16に、カメラ14により捕捉された画像を送信し、装置16から無人機10に操縦コマンドを送信するための無線手段が設けられる。例として、この無線接続は、WiFi(IEEE802.11)又はBluetooth(登録商標)ローカルネットワーク型とすることができる。遠隔制御装置16には傾斜センサーも設けられ、傾斜センサーは、対応する傾斜角を装置に与えることにより、ロール軸及びピッチ軸を中心とした無人機の姿勢を制御できるようにする(システムのこれらの態様の更なる詳細について、上述した特許文献1を参照することができる)。
【0051】
序文において述べたように、遠隔制御装置16は、有利には、加速度計を組み込んだタッチスクリーンマルチメディアプレーヤー又は電話機、例えば、iPhone型の携帯電話機、iPod Touch型のプレーヤー、又はiPad型のマルチメディアタブレットで構成され、これらは全て、操縦コマンドの表示及び検出、正面カメラにより捕捉された画像の閲覧、並びにWiFi接続又はBluetooth接続を介する無人機との双方向データ交換に必要な様々な制御部材を組み込んだ装置である。
【0052】
この場合、無人機10を操縦することは、
a)前方若しくは後方に移動するためにピッチ軸22を中心に旋回させること(図2bにおいてXで参照される移動)、及び/又は
b)左へ若しくは右へシフトするためにロール軸24を中心に旋回させること(図2bにおいてYで参照される移動)、及び/又は
c)無人機の主軸、すなわち、正面カメラが指す方向Δを右若しくは左に操舵するために、ヨー軸26を中心に回転させること(図2aに示される移動)、及び/又は
d)無人機の高度をそれぞれ下げるように若しくは上げるように、スロットル設定を変更することにより、並進28若しくは30において下向きに若しくは上向きに移動させること、
により、無人機を操ることから成る。
【0053】
操縦コマンドが、ユーザーによって遠隔制御装置16を介して直接与えられる場合、その縦軸32及びその横軸34を中心とした装置16の傾斜をそれぞれ変更することにより、ピッチ軸22及びロール軸24を中心に旋回するコマンドa)及びb)が直覚的に(intuitively)得られ、例えば、無人機を前方に移動させるためには、軸32を中心に装置を傾けることにより装置を前方に傾斜させることで十分であり、装置を右へシフトさせるためには、軸34を中心に装置を右に傾けることにより装置を傾斜させることで十分である等である。
【0054】
コマンドc)及びd)は、ユーザーがタッチスクリーン18の特定の対応するゾーンに指20(一般に右指)を接触させることによって与えられる動作の結果である。
【0055】
無人機は、ホバリング飛行を安定化させる自動かつ自己完結式のシステムも保有し、当該システムは、特に、ユーザーが指を装置のタッチスクリーンから離すときは常に、又は離陸段階の終了時に自動的に、又は実際には、装置と無人機との無線接続が中断した場合に、起動する自動操縦モードに対応する。そのような場合、無人機はホバリング状態になり、ホバリング状態では、無人機は静止し、ユーザーによるいかなる介入もなしに、自動操縦安定化システムによりこの静止位置に保持される。
【0056】
本発明の方法は、
・上述した様々なコマンドから選択される、組み合わされた又は個別のコマンドを使用する従来の操縦−したがって、図2a及び図2bに示されるターンでの移動並びにX及びY並進での移動に対応する3つの自由度を課す(高度が一定のままであると仮定して)−から、
・図3に示されるように無人機を操り、求められた(一定又は他の)曲線速度及び一定の高度で中心Oを中心とした半径Rの円形経路Cを辿ってターンすることから成る、本明細書では「結合ヨーモード」と呼ばれるモードでの操縦に、
遷移可能にする操縦の制御モードを得ることから成る。
【0057】
簡易バージョンでは、曲線速度は一定である。すなわち、ユーザーは、制御するための「旋回率」と呼ばれる1つの自由度のみを有し、このパラメーターは本質的に、円形経路の大小の半径に関連付けられる。より完全なバージョンでは、ユーザーは、無人機が円形経路に沿って移動する速度も制御可能である。すなわち、ユーザーに第2の自由度が与えられる。
【0058】
結合ヨーモード操縦は、図4に示される課されたサーキットの経路等の曲がりくねった経路に特に適し、このサーキットでは、無人機は、連続した高速右ターン及び左ターンを実行して、単一のゲート36又は二重のゲート38により画定されるトラックに沿って決勝線40までスラロームする必要があり、かつそれを可能な限り最高の速度で行う必要がある。
【0059】
図5は、遠隔制御装置のスクリーン18に表示される様々な画像及びシンボルを示す。
【0060】
スクリーン18は、無人機の正面カメラ14により捕捉される景色42を再生し、或る特定数のシンボル44〜60が画像に重ねて表示され、シンボルは、無人機の動作についての情報を提供し、ユーザーが、接触による起動によって操縦制御信号を開始し送信できるようにする。
【0061】
例として、装置は、無人機の電池状態に関する情報を44に表示し、装置と無人機とを接続する信号の強度に関する情報を46に表示し、設定メニューへのアクセスに関する情報を48に表示する。スクリーンは、さらに緊急着陸制御50及び自動離陸制御52を表示する。
【0062】
ユーザーに関する限り、操縦制御のうちのいくつかは、右手によって利用可能であり、他は左手によって利用可能である。示される例では、右手の指はヨー制御及び上/下制御に使用され、左手の親指はピッチ及びロールでの旋回の制御に使用される。このために、スクリーンはそれぞれの各制御を実施する2つのゾーン54及び56にそれぞれ細分され、対応するアイコン58、60がこれらのゾーンのそれぞれに現れる。アイコン58は、ユーザーが左の親指をゾーン54に配置したときに現れ、ユーザーはアイコン58を用いて、左手の親指が所定位置にある間、遠隔制御装置のケースを対応する傾斜角にすることにより、そのピッチ軸及びロール軸を中心とした無人機の傾斜角を制御し、それにより、無人機は図2bに示される並進でのX移動又はY移動を行うことができるようになる。
【0063】
アイコン60は、ユーザーが右の指をゾーン56に配置したときに表示され、右の指をスクリーン上で右又は左に動かすことによりヨー軸を中心とした旋回(図2aに示される移動)を制御する役割を果たすとともに、同様に、同じ指をスクリーン上で上又は下に動かすことにより上/下移動を制御する役割を果たす。
【0064】
したがって、ユーザーは、右の指をスクリーンの右側半分に適用し(ヨー軸を中心とした旋回及びスロットル制御)、又は左の親指をスクリーンの左側半分に適用して(X又はY並進での移動)、個別の制御により上述したように無人機を操縦することができる。
【0065】
両方の指(親指及び指)がスクリーンから離れると、無人機の自動操縦システムが即座に起動して、無人機に静止位置をとらせ、その位置に静止した状態を維持させる。
【0066】
本発明の特徴的な方法では、ユーザーが2本の指を2つのゾーン54及び56のそれぞれに同時に配置すると、「結合ヨーモード」と呼ばれる新しい操縦モードがユーザーに利用可能になる。
【0067】
この新しい操縦モードでは、ユーザーが装置を左に傾けると、無人機は、円形経路を辿りながら(図3に示されるように)、仮想点を中心にターンし、無人機は、バイクのようにターンしながら横傾斜する。
【0068】
ユーザーが装置を傾ければ傾けるほど、ターンはきつくなり、すなわち、その曲率半径が小さくなり、したがって、左に傾ければ傾けるほど、ターンはきつくなり、無人機は、遠心力を補償するために、ターンの内側へますます横傾斜し、それにより、無人機は横滑り又はオーバーステアなしでより高速でターンし、逆に、ユーザーが装置を右に傾ける場合、無人機は仮想点を中心に右にターンし、装置が右に更に傾けられる場合、ターンはきつくなり、その速度は大きくなる。
【0069】
右指が離れると、無人機は、全ての制御が分離されたXY操縦に戻る。同様に、左指を離すと、高度及びヨー移動に対する特定の制御に戻ることができる。
【0070】
両方の指が離れた場合、いずれの場合でも、無人機は平衡点をとる。
【0071】
この結合ヨー操縦モードを用いる場合、ユーザーが、単一の自由度(右へ及び左への大なり小なりの程度の傾き)を制御するだけでよく、それにより、経路を辿ることが非常に容易になり、直観的になることが分かる。
【0072】
一変形態様において、この結合ヨー操縦モードでも依然として、装置を前方(加速させる)又は後方(減速させる)に傾けることにより無人機の速度に対する制御をユーザーに与えることが可能である。
【0073】
それは実際に、追加の自由度を与えるが、全ての状況下で、個別の制御を使用する従来の操縦モードと比較して、次々と素早くターンし、それらのターンを一続きのものとすること等をはるかに容易にし続ける。
【0074】
無人機の操縦ソフトウェアは、ユーザーにより与えられる単一の旋回率設定点(すなわち、きつい又は緩いターン)に基づいて、場合によっては加速動作又は減速動作に関連付けて、種々のモーターを自動的に制御して、ロール移動、ヨー移動、及びピッチ移動に対する同時制御を提供する。
【0075】
ターンを開始するとき、地面からの無人機の高度も記憶され、補正動作が必要ならば、補正動作が行われてこの高度が維持される。すなわち、システムは、いかなる擾乱にもかかわらず、ターンが一定の高度で実行されることを保証する。
【0076】
したがって、結合ヨー操縦モードに入ると、システムは、可能な限り多くのパラメーター(速度、高度)を凍結し、それにより、ユーザーが、重要性が高い唯一のパラメーター、すなわち、旋回率の制御に集中できるようにする。
【0077】
以下に、この結合ヨー操縦モードが本発明のシステムによって、いかに実施されるかの説明が続く。
【0078】
図6に示されるように、無人機は、半径Rの円Cを表すターン経路に置かれてそこに維持され、中心Oを中心に均一にターンする。したがって、接線速度uは一定でなければならず、半径方向速度vはゼロでなければならず、上昇速度wもゼロでなければならない。
【0079】
図7は、無人機の様々な制御部材、及びサーボ制御部材、及び自動操縦のブロック図である。それにもかかわらず、この図は相互接続された回路の形態で示されるが、様々な機能が本質的にはソフトウェアによって実施され、この表現が単に例示の目的のものであることに気付くべきである。
【0080】
操縦システムは、高度の変更を自動で又はユーザーからのコマンドに応じて制御することに加えて、無人機の角速度及び姿勢の制御、及びホバリング飛行の安定化のための、いくつかのネストしたループを必要とする。
【0081】
最も内側のループは、角速度を制御するループ62であり、第1にジャイロ64によって提供される信号と、第2に角速度設定点66によって構成される基準とを利用し、このデータは、角速度補正段68に入力として与えられる。この段68は段70を制御し、段70は、モーターによって駆動されるローターの結合された動作により無人機の角速度を補正するために、これらの各モーターの速度を別々に制御するようにモーター72を制御する。
【0082】
角速度制御ループ62は、ジャイロ64及び加速度計76により提供される情報に基づいて動作する姿勢制御ループ74内にネストされ、このデータは姿勢推定器段78に入力として与えられ、姿勢推定器段78の出力は、比例積分(PI)型の姿勢補正段80に与えられる。段80は、段66に対して角速度設定点を送り、その設定点はまた、無人機の自動操縦によって内部で生成されたデータ又はユーザー84によって直接与えられたコマンドのいずれかに基づいて回路82によって生成された角度設定点の関数であり、これらの可能な選択肢の一方又は他方の選択は、スイッチ86により図で表されている。
【0083】
要約すると、設定点(ユーザーによって与えられるか又は自動操縦を使用する場合に内部で生成される)と、姿勢推定器回路78によって与えられる角度測定値との間の誤差から開始して、姿勢制御ループ74(回路64〜80)は、回路80のPI補正器を用いて角速度設定点を計算する。そして、角速度制御ループ62(回路64〜72)は、上記角速度設定点と、ジャイロ64によって実際に測定された角速度との差を計算する。ループは、この情報を用いて、最初にユーザーにより要求されか又は自動操縦装置によって計画された操縦を実施するために、無人機のモーター72に与えられる様々な回転速度設定点を計算する(それにより、押し上げ力を求める)。
【0084】
自動操縦動作では、ユーザーにより与えられる設定点は、内部で生成される信号で置き換えられる。垂直ビデオカメラ88と高度計として機能するテレメトリーセンサー90とは、プロセッサ回路92に与えられる情報を生成し、プロセッサ回路92は、ジャイロ64からもデータを受信して、回路94により与えられる推定水平速度に必要な補正を適用する。この水平速度推定値は、テレメトリーセンサー90から情報を受信する回路96により与えられる高度推定に基づいて、回路98により与えられる垂直速度の推定値により補正することができる。
【0085】
ホバリング飛行に関して、回路94により推定される水平速度は、回路100が速度設定点を計算できるようにし、速度設定点は次に、回路82により角度設定点に変換された後、姿勢制御ループに入力として与えられて、無人機をゼロ速度にするか、又はその速度及び傾斜角が両方ともゼロである構成に無人機を保つ。
【0086】
無人機の垂直移動に関して、ユーザー84は、回路104に直接与えられる上昇速度設定点Vか、又は回路102に与えられる高度設定点を与え、回路102は、回路106を用いて、回路96により生成される推定高度を用い、上昇速度設定点を計算する。
【0087】
いずれの場合も、(要求されるか又は計算される)上昇速度は回路108に与えられ、回路108は、上昇速度設定点Vを、回路98によって与えられる、対応する推定上昇速度と比較し、それに従って、設定点上昇速度と測定された上昇速度との差を最小にするために、全てのモーターの回転速度を同時に上昇又は低下させるように、モーター(回路70)に与えられる制御データを変更する。
【0088】
本発明に特徴的な方法では、自動結合ヨー操縦モードを可能にするために、ユーザーコマンド112により、例えば、装置のスクリーンを2本の指で同時に押した結果として、追加の機能ブロック110を起動することができる。この回路110は回路82を制御し、回路82は、角速度パラメーターp、q、及びr(114)(ジャイロ64により与えられる)並びに水平速度パラメーターu及びv(116)(回路94により推定される)に基づいて、角度設定点を計算する。
【0089】
無人機制御設定点が結合ヨー操縦モードのこの段階中にいかに生成されるかを以下に説明する。
【0090】
無人機の速度データは、図6に示されるu、v、w座標系、すなわち、無人機の本体に関連する座標系で与えられる。
【0091】
以下の表記が使用される。
・u及びvは、水平並進の速度成分であり(uは、無人機の主進行方向Δ、vは横方向)、wは、垂直並進の速度であり、これらの速度は全て、無人機に関連する座標系内にあり(したがって、地球座標系に対する無人機の傾斜角にも無関係であり)、
・p、q、及びrはそれぞれ、ピッチ軸22、ロール軸24、及びヨー軸26(図1)である3つの軸を中心とした角速度であり、
・φ、θ、及びψは、(慣性)地球座標系に対する無人機の向きを規定する無人機のオイラー角であり、φ及びθは、水平線に対する傾斜を規定する2つの角度である。
【0092】
無人機の4枚のプロペラi(i=1,...,4)のそれぞれは、モーターの回転速度ωの二乗に比例するトルクГ及び上昇推力Fを発揮する。
【数1】

【0093】
無人機の移動座標系に投影される動力学の基本的な関係により、以下の3つの式が与えられることを想起されたい。
【数2】

式中、
gは重力による加速度であり、
及びCは、2つの水平軸に沿った移動に対する抵抗の係数(無人機が受ける摩擦力を表す)であり、
aは、推力及び上昇速度を回転速度ωに関連付ける係数であり、
mは無人機の質量である。
【0094】
動的モーメントの定理が、系に対して同様に、依然として移動座標系への投影に適用され、以下の3つの式が与えられる。
【数3】

式中、
、I及びIは、3つの軸を中心とした無人機の慣性モーメントを表すパラメーターであり、lは、モーターと重心Mとの間の距離である。
【0095】
これらの式において、左側の第1項は、系の動的モーメントに対応し、第2項は、動的モーメントに対するコリオリの力の寄与を表し、右側の要素は、上昇力Fによって作用されるモーメントと、ローターそれぞれのプロペラによって生成されるトルクΓとに対応する。
【0096】
最後に、3つのオイラー角φ、θ及びψを利用することにより、以下の関係を導出することができる。
【数4】

【0097】
したがって、系の挙動は、9つの未知数で9つの式によって完全に記述される(上記式1〜9)。
【0098】
回路が、結合ヨーターン移動を実施するために、操縦設定点をいかに生成するかを以下により明確に説明する。
【0099】
上述したように、ユーザーは以下のコマンドを与えることができる。
・「旋回率」コマンドとして解釈される、装置を片側、右側又は左側に傾斜することによるコマンドであって、無人機により実行されるターンが、傾斜角が急になるほどきつくなる、コマンド、及び
・(任意選択的に)無人機の速度(ターンで無人機により描かれる円に対する接線速度)を増大又は低減させるコマンドとして解釈される、装置を前方又は後方に傾けることにより得られるコマンド。
【0100】
旋回率コマンド及び/又は速度コマンドが一定(変化しない設定点値)であると見なされるために十分に短い持続時間の基本時間間隔が考慮される。
【0101】
結合ヨーターンでは、この基本時間間隔中に無人機によって描かれる経路の円弧は、(図6)の仮想中心Oを中心とした半径Rの円Cの一部であるとみなすことができ、円は、地平面に対して平行な平面にあり、経路は一定速度で描かれる。したがって、無人機の移動は均一な円形ターン移動である。
【0102】
以下の2つの従来の式が用いられ、これらの式は、この種の移動に関して容易に導出することができる。
【数5】

式中、
planは接線速度であり、
yplanは半径方向加速度であり、
【数6】

は角速度又は旋回率(すなわち、遠隔制御装置を左又は右に傾けることによりユーザーによって与えられる操縦設定点)であり、
Rは、均一な円移動を実行中の無人機により描かれる円の半径であり、
planは半径方向速度である。
【0103】
ターン中の無人機の移動を規定するために、Oを中心とした慣性座標系R、M(無人機の重心)を中心とした非慣性座標系R’、及び以下のベクトルにより与えられるRを中心とした回転の実行を考慮する。
【数7】

【0104】
無人機は、合力
【数8】

を受ける質量mの移動点Mとしてみなすことができる。
【0105】
(R)内のMの加速度を
【数9】

と書き、(R’)内のMの加速度を
【数10】

と書き、駆動加速度を
【数11】

と書き、最後にコリオリの加速度を
【数12】

と書くと、ベクトル加算により、
【数13】

となる。
【0106】
慣性駆動力、すなわち、本状況での遠心力が、
【数14】

と書かれる場合、一般論として、以下が適用される。
【数15】

【0107】
均一な円回転移動の場合、
【数16】

(均一回転)であり、
【数17】

の場合、以下が適用される。
【数18】

【0108】
慣性駆動力
【数19】

は計算により得られる(円形経路上で、慣性駆動力は無人機をその経路から離れて移動させる傾向を有する)。
【数20】

【0109】
上記(式2)から分かるように、以下が適用される。
【数21】

【0110】
2つの仮定がこの段階で行われる。
1)無人機は平面内で移動するので、w=0である。
2)θ<30度:さらに対(θ,φ)はターンの最大角値で飽和するため、実際にはθ<20度である。したがって、小角近似、すなわち、cosθ=1及びsinφ=φを用いることが可能である。
【0111】
したがって、無人機の座標系での簡易化された式は、
【数22】

になる。
【0112】
これは、本体座標系(無人機本体の座標R’)からワールド座標系への以下の行列を用いてターンの平面に投影される(R’に平行するが、異なる向きを有する座標系R’’への投影)。
【数23】

【0113】
式は、ターンの条件で簡易化され、次に、ターンの平面に投影され、
【数24】

が与えられる。
【0114】
半径方向速度vplanがターンにおいてゼロであることが望ましく、制御目的で使用される以下の最終的な式が得られる。
【数25】

【0115】
この関係は、無人機がターン平面で受ける加速度−相殺することが望まれる加速度−を与え、第1項は慣性駆動力に対応し、第2項は、適切な座標系への重力の投影に関する。
【0116】
所望の移動に関して、
【数26】

であることが既知である。
【0117】
とられる動作の大きさ(操縦設定点値)は、無人機のロール角φである。
【0118】
上記式12では、この角度に作用することにより、ターンの平面での無人機の加速度の値をこの基準値に設定可能なことが分かる。したがって、φは以下:
【数27】

として直接計算される。
【0119】
所望のターンを得るために、ロール角は、無人機のセンサーにより送られるデータに基づいて式13を適用して計算される。
【0120】
遠隔制御装置へユーザーにより与えられる傾斜が解釈され、対応する操縦設定点に変換される。
【0121】
静止した中心を中心とした均一な円移動経路上では、以下が適用される。
【数28】

式中、
V:接線速度(装置の前方/後方傾斜に応じる)、
【数29】

:角速度又は旋回率(装置の左/右傾斜に応じる)、
R:円の半径である。
【0122】
ユーザーにより与えられる旋回率コマンド(左/右傾斜)は、式13の適用において軸を中心としたターンの角速度コマンドに変換される。半径rを求めるために、式9は、
【数30】

を与える。
【0123】
速度コマンド(前方/後方傾斜)は、無人機の前方速度設定点に直接変換される。
【0124】
これら2つのコマンドを用いて、ユーザーは無人機の旋回率及びその前進速度を与える。ターンの半径は、式14により求められ、無人機のコンピューターは、これら2つのコマンドを満たす無人機のピッチ角、ロール角、及びヨー角を求める。
【0125】
特に、ターンの半径は、無人機の接線速度及びその旋回率の関数であり、無人機が或る最小値(実際には70センチメートル(cm))よりも小さな半径を有する円を描くことができないように、軸を中心とした飽和する旋回率コマンドの値を用いてサンプリング期間毎に求められる。
【0126】
有利には、無人機がユーザーにより与えられる特定のコマンドに応えて完全な180度ターン(complete about-turn)を実行できるようにする追加の結合ヨー機能を提供することが可能である。コマンドが与えられた瞬間の速度及び高度は保たれ、旋回率は、例えば、無人機の速度を考えて許容可能な最小半径に設定され、無人機が最初の向き(すなわち、操作が始動された瞬間の無人機の向き)に対して180度ターンすると、操作は終了になる。
【0127】
説明された例では、無人機に与えるための旋回率コマンドは、無人機のコンピューターにより直接計算され、遠隔制御装置は大小の傾斜角以外のものを送信しないことに気付かれたい。それにも関わらず、計算を無人機又は遠隔制御装置により実行することが同様に可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼無人機(10)を操縦する方法であって、
a)遠隔制御装置(16)が、曲線経路を辿るターンコマンドを生成するステップと、
b)前記無人機が、i)前記コマンドを受信し、並びに、ii)前記無人機の線形速度成分、傾斜の角度及び角速度の瞬間測定値を取得するステップと、
c)ステップb)において前記受信したコマンド及び前記取得した測定値に基づいて、無人機制御ループ(64〜80)の設定点値を生成するステップであって、これらの設定点値は、地面に関連する座標系に対する前記無人機の前記水平線形速度及び前記傾斜を制御して、前記無人機に所定の接線速度(u)で前記曲線経路(C)を辿らせる、生成するステップと、
を含む、方法において、
前記無人機は、それぞれのモーター(72)により駆動される複数のローターを有するクアッドリコプター型の無人機であり、
前記制御ループ(64〜80)は、前記モーター(72)の回転速度に対して異なる動作をとることにより前記無人機の前記水平線形速度及び前記傾斜を制御し、
前記コマンドは、右又は左ターン方向パラメーター及び前記ターンの瞬間曲率半径の設定点を規定するパラメーターを含む旋回率コマンドである、
ことを特徴とする、回転翼無人機を操縦する方法。
【請求項2】
前記曲線経路(C)は、一定の曲率半径(R)で辿られる円形経路である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の接線速度(u)は一定速度である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップc)において生成される前記設定点値は、さらに、前記無人機の高度が地面に対して一定に保たれることを保証するように、前記無人機の前記モーターを制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップc)において生成される前記設定点値は、前記円形経路に対してゼロ半径方向速度(v)に前記無人機を維持して、前記無人機が前記経路を辿る際に前記無人機のいかなる横滑り又はオーバーステアも補償するように、前記無人機の前記水平線形速度及び前記傾斜を制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)において、前記曲線経路に沿ってターンするコマンドは、前記遠隔制御装置(16)により生成され、前記装置は、
タッチスクリーン(18)と、
i)ユーザーの少なくとも1本の指(20)による前記スクリーンの表面への接触を検出し、ii)接触点(複数の場合もあり)の位置を求め、iii)前記曲線経路に沿ってターンするコマンドを含む対応する操縦コマンドを生成するのに適した手段と、
コマンドを前記無人機に送信するのに適した無線データ送信手段と、
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記曲線経路に沿ってターンするコマンドは、前記タッチスクリーンへの前記ユーザーの2本の指の同時接触を検出すると起動する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記曲線経路に沿ってターンするコマンドは、前記2本の指の同時接触の持続時間を通して、この同時接触がなくなったことが検出されるまで生成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記遠隔制御装置は、そのピッチ軸(32)及び/又はロール軸(34)の一方及び/又は両方を中心とした傾斜の検出器を更に含み、前記曲線経路に沿ってターンするコマンドは、i)前記左又は右ターン方向パラメーターを求めるために、そのロール軸(34)に対する前記装置の前記傾斜の前記左又は右の方向に応じて、かつii)前記ターンの曲率半径(R)を規定する前記パラメーターを求めるために、前記ロール軸(34)に対する前記装置の前記傾斜の大きさに応じて生成される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ターンコマンドは、接線速度パラメーター(u)を求めるために、前記装置のピッチ軸(32)に対する該装置の前記傾斜の大きさにも応じて生成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
曲線経路に沿ってターンするコマンド中に辿られる前記経路が、半径方向速度成分(v)を含む場合、前記ターンコマンドは、前記半径方向速度成分を相殺するように、前記装置のピッチ軸に対する前記無人機の前記傾斜の大きさにも応じて生成される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
必要に応じて、前記経路の前記曲率半径(R)を所定の最小値に制限することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ステップa)において、前記無人機の180度ターンコマンドを生成することを更に含み、ステップc)において、ステップb)において取得された前記測定値が、前記無人機がそのヨー軸を中心に180度ターンしたことを示す場合、前記曲線経路に沿った前記無人機の移動が終了する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
回転翼無人機のデジタルメモリに部分的にダウンロード可能であり、且つ、遠隔制御装置のデジタルメモリに部分的にダウンロード可能なソフトウェアであって、実行されると、前記無人機を操縦して曲線経路に沿ってターンさせる請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法を実施する命令を含む、ソフトウェア。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−198883(P2012−198883A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−51103(P2012−51103)
【出願日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【出願人】(509127457)パロット (23)
【Fターム(参考)】