説明

曲線削孔装置

【課題】 曲線孔と同一曲率に形成された外管内の軸部材に捻れを生じさせることなく、軸部材の回転力を削孔手段に伝達することにより、外管の前端部で削孔手段を確実に回転させることができる曲線削孔装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 曲線孔を削孔可能な曲線削孔装置1であって、曲線孔と同一曲率に形成された外管2と、外管2の前端部に配置された削孔手段3と、前端部が削孔手段3に取り付けられ、外管2内で軸周りに回転可能な直線状の削孔軸10と、前端部が削孔軸10の後端部に対して屈折した状態で連結され、外管2内で軸周りに回転可能な直線状の延長軸20とを備え、削孔軸10の後端部に設けられた後端歯車11と、延長軸20の前端部に設けられた前端歯車21とを係合させることにより、延長軸20の回転力によって削孔手段3が回転するように構成されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲線孔を削孔するための曲線削孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
曲線孔を削孔するための曲線削孔装置としては、曲線孔と同一曲率に形成された外管と、前端部にウォータージェットが取り付けられた内管とからなる二重管を備え、外管の前端部に配置されたウォータージェットから高圧水を噴射して地盤を掘削しながら、二重管を地盤内に挿入することにより、曲線孔を削孔する構成がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−84363号公報(段落0005、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、前記従来の曲線削孔装置において、地盤内で掘削方向を調整する際には、ウォータージェットを軸周りに回転させて、高圧水の噴射方向を変化させる必要がある。具体的には、内管全体を軸周りに回転させることにより、内管の前端部に取り付けられているウォータージェットを回転させて、その噴射方向を調整している。
しかしながら、従来の曲線削孔装置の内管は、外管の曲がりに沿って変形させる必要があることから、可撓性部材が用いられており、内管の後端部を軸周りに回転させた際に、内管に捻れが生じるため、地盤内でウォータージェットを回転させることが困難になっている。このように、従来の曲線削孔装置では、掘削方向を調整することが困難になってしまうという問題がある。
【0004】
さらに、高圧水による掘削が不可能な硬質地盤に曲線孔を削孔する場合には、切削ビットを有する削孔手段を内管の前端部に設け、この削孔手段を内管と共に回転させて地盤を掘削することになるが、前記したように、従来の曲線削孔装置では、内管に捻れが生じてしまうため、削孔手段を大きな回転トルクで回転させることが困難であり、硬質地盤を掘削することができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、曲線孔と同一曲率に形成された外管内の軸部材に捻れを生じさせることなく、軸部材の回転力を削孔手段に伝達することにより、外管の前端部で削孔手段を確実に回転させることができる曲線削孔装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、曲線孔を削孔可能な曲線削孔装置であって、曲線孔と同一曲率に形成された外管と、外管の前端部に配置された削孔手段と、前端部が削孔手段に取り付けられ、外管内で軸周りに回転可能な直線状の削孔軸と、前端部が削孔軸の後端部に対して屈折した状態で連結され、外管内で軸周りに回転可能な直線状の延長軸とを備え、削孔軸の後端部に設けられた後端歯車と、延長軸の前端部に設けられた前端歯車とを係合させることにより、延長軸の回転力が削孔軸に伝達され、削孔軸とともに削孔手段が回転するように構成されていることを特徴としている。
【0007】
ここで、削孔手段とは、切削ビットによって地盤を切削するカッタや、高圧水の噴射によって地盤を切削するウォータージェット、或いは、地盤を打撃して地盤を粉砕するエアーハンマーなど、各種土質に対応させて適宜に選択されるものであり、その構成は限定されるものではない。
また、削孔軸の後端部と延長軸の前端部との屈折角度は限定されるものではなく、削孔軸と延長軸とが連結部で屈曲した状態になっていればよい。
【0008】
このように、本発明の曲線削孔装置では、曲線孔と同一曲率に形成された外管内において、直線状の削孔軸および延長軸を屈折した状態で連結し、削孔軸および延長軸の歯車を係合させることにより、延長軸の回転力を削孔軸に伝達しているため、削孔軸および延長軸を硬質な部材によって形成することができ、削孔軸および延長軸の強度を大きくすることができる。これにより、削孔軸および延長軸に捻れを生じさせることなく、外管の前端部に配置された削孔手段を確実に回転させることができる。
また、削孔軸および延長軸の強度を大きくすることにより、削孔手段に大きな回転トルクを伝達することができる。
さらに、削孔軸および延長軸の歯車を係合させて回転力を伝達することにより、延長軸の回転量に基づいて削孔軸の回転量を把握することができるため、削孔手段の回転量を正確に把握することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の曲線削孔装置であって、削孔軸には、複数の延長軸が順次に屈折した状態で連結されており、前方の延長軸の後端部に設けられた後端歯車と、後方の延長軸の前端部に設けられた前端歯車とを係合させることにより、各延長軸に回転力が伝達されるように構成されていることを特徴としている。
【0010】
このように、本発明の曲線削孔装置では、複数の延長軸が順次に屈折した状態で連結されており、隣接する各延長軸の屈折角度を変更することによって、各種曲率の曲線孔を削孔することができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の曲線削孔装置であって、後端歯車および前端歯車は、かさ歯車であることを特徴としている。
【0012】
ここで、かさ歯車を用いた歯車機構では、2体の歯車を係合させた際に互いの回転中心軸が異なる向きに配置され、さらに、その歯面の傾斜角度を変更することによって、2体の歯車の回転中心軸が成す角度を様々に設定することができる。
【0013】
このように、本発明の曲線削孔装置では、隣接する各軸の前端歯車および後端歯車をかさ歯車にすることにより、屈折した状態で連結された軸間で回転力を伝達するための歯車機構を簡易な構成にすることができるため、外管の外径を小さくすることができるとともに、製作コストを抑制することができる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の曲線削孔装置であって、削孔軸および延長軸には、軸方向に貫通孔が形成されており、貫通孔を通じて、削孔手段に液体を供給可能であることを特徴としている。
【0015】
このように、本発明の曲線削孔装置では、削孔軸および延長軸と、外管との間の空間に液体の給水管を設けることなく、削孔軸および延長軸の貫通孔を通じて、削孔手段に液体を供給することができるため、外管内を簡素な構成にすることができる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の曲線削孔装置であって、削孔手段によって掘削された土砂が、外管内を通じて排土されるように構成されていることを特徴としている。
【0017】
このように、本発明の曲線削孔装置では、外管内を通じて排土することにより、外管の周囲で土砂を流動させて排土する場合と比較して、土砂が円滑に移動するため、排土効率を高めることができる。これは、硬質地盤を掘削する場合に有効である。
【発明の効果】
【0018】
このような曲線削孔装置によれば、曲線孔と同一曲率に形成された外管内において、直線状の削孔軸および延長軸を屈折した状態で連結し、削孔軸および延長軸の歯車によって回転力を伝達しているため、削孔軸および延長軸を硬質な部材によって形成し、その強度を高めることができる。これにより、削孔軸および延長軸に捻れを生じさせることなく、外管の前端部に配置された削孔手段を確実に回転させることができるため、削孔手段を簡易に制御することができ、掘削効率および掘削精度を高めることができる。
また、削孔軸および延長軸の強度を大きくすることにより、削孔手段に大きな回転トルクを伝達することができるため、削孔手段に切削ビットを設け、この削孔手段を回転させて硬質地盤を掘削することができる。
さらに、削孔軸および延長軸の歯車を係合させることにより、延長軸の回転量に基づいて削孔軸の回転量を把握することができるため、削孔手段の回転量を把握することができ、掘削方向を正確に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の曲線削孔装置を示した側面図である。図2は、本実施形態の曲線削孔装置の連結部を示した側断面図である。図3は、本実施形態の曲線削孔装置の連結部を示した図2のA−A断面図である。図4は、本実施形態の曲線削孔装置によって削孔した曲線孔を示した断面図である。
なお、以下の説明において、前方とは図1の左側に対応し、後方とは図1の右側に対応している。
本実施形態では、直径が80〜200mm程度で半径が4m程度の円弧状に形成された曲線孔を削孔可能な曲線削孔装置を例として説明する。
【0020】
[曲線削孔装置]
まず、曲線削孔装置1は、図1に示すように、円弧状に形成された外管2と、外管2の前端部に配置された削孔手段3と、前端部が削孔手段3に取り付けられ、外管2内で軸周りに回転可能な直線状の削孔軸10と、前端部が削孔軸10の後端部に対して屈折した状態で連結され、外管2内で軸周りに回転可能な直線状の延長軸20とを備え、延長軸20には、複数の他の延長軸20’が順次に屈折した状態で連結されており、最後方に配置された他の延長軸20’が駆動装置4によって軸周りに回転し、その回転力が各延長軸20,20’を介して削孔軸10に伝達されることにより、削孔軸10とともに削孔手段3が回転するように構成されている。
【0021】
[外管]
外管2は、図1および図4に示すように、構築する曲線孔Kと同一曲率に形成された中空管であり、削孔作業の終了後には地盤内に残される部材である。この外管2は、所定長さの中空管が順次に継ぎ足されることにより、曲線孔Kの全長に対応するように構成されている。
なお、外管2を構成する中空管の継手構造は限定されるものではなく、ボルトジョイントや溶接によって継ぎ足すことができる。
また、外管2は、地盤内で所定の曲率を維持することができる程度の強度を備えていればよく、その材質は限定されるものではない。
【0022】
[削孔手段]
削孔手段3は、図1に示すように、外管2の前端部の前方に配置されており、中心軸が掘進方向に配置された円形断面の部材であり、その断面は外管2の内径よりも小さくなっている。
さらに、削孔手段3の前端面には、複数の切削ビット3aが取り付けられており、削孔手段3を中心軸周りに回転させることにより、切削ビット3aによって地盤を掘削することができる。
また、削孔手段3には、軸方向に貫通した排土用開口部(図示せず)が形成されており、削孔手段3の前端面で掘削された掘削土砂が、排土用開口部を通じて削孔手段3の後方に排土されるように構成されている。
さらに、削孔手段3の中心には、切羽面に注水する水を吐出するための排水孔3bが前後方向に貫通している。
【0023】
[削孔軸]
削孔軸10は、図1および図2に示すように、外管2内で軸周りに回転可能な直線状の中空管であって、前端部に削孔手段3が取り付けられており、削孔軸10とともに削孔手段3が回転するように構成されている。
また、削孔軸10の後端開口部の周縁には、かさ歯車である後端歯車11が形成されている。
なお、削孔軸10は、削孔手段3を回転させるための回転力が作用した際に、捻れを生じない程度の強度を有していればよく、その材質は限定されるものではない。
また、削孔手段3に削孔軸10の前端部を取り付ける構成は、掘削時に取り付け状態を維持することができるのであれば、特に限定されるものではない。
【0024】
[延長軸]
延長軸20は、図1および図2に示すように、外管2内で軸周りに回転可能な直線状の中空管であり、前端部が削孔軸10の後端部に対して屈折した状態で連結されている。
また、延長軸20の後端部には、複数の他の延長軸20’が順次に屈折した状態で連結されており、外管2内には複数(図1では3本)の延長軸20,20’が配置されている。
なお、延長軸20と他の延長軸20’は同一の構成であり、さらに、削孔軸10と延長軸20との連結部、延長軸20と他の延長軸20’との連結部、或いは隣接する各他の延長軸20’,20’の連結部は全て同一の構成であるため、以下の説明では、削孔軸10に連結される延長軸20を中心に説明し、延長軸20と他の延長軸20’との連結部、および隣接する各他の延長軸20’,20’の連結部の説明は省略する。
また、外管2内に配置される延長軸20,20’の本数は限定されるものではなく、構築する曲線孔の長さや曲率に対応して設定され、削孔の進行状況に対応して順次に連結されるものである。
【0025】
そして、削孔軸10に対する延長軸20の屈折角度は、所定長さの延長軸20が外管2内に収まるように、外管2の曲率に対応して設定されている。
また、削孔軸10の後端歯車11に係合するようにして、延長軸20の前端開口部の周縁には、かさ歯車である前端歯車21が形成されている。
このように、傾斜した歯面を有する後端歯車11と前端歯車21とを係合させることにより、削孔軸10と延長軸20とが所定の屈折角度を維持した状態で連結され、さらに、削孔軸10と延長軸20との間で回転力が伝達することができる。
なお、延長軸20は、削孔手段3を回転させるための回転力が作用した際に、捻れを生じない程度の強度を有していればよく、その材質は限定されるものではない。
【0026】
[継手管]
また、図1および図2に示すように、削孔軸10と延長軸20との連結部において、削孔軸10の後端部および延長軸20の前端部は、継手管30に内挿された状態となっている。
この継手管30と削孔軸10との隙間、または継手管30と延長軸20との隙間には、ベアリング31,31が介設されており、各ベアリング31,31によって削孔軸10および延長軸20が継手管30内で軸周りに回転自在となっている。
また、各ベアリング31,31の内周面が削孔軸10または延長軸20の外周面に係合しているとともに、各ベアリング31,31の外周面が継手管30の内周面に係合しており、削孔軸10と延長軸20とが継手管30に係止されているため、削孔軸10と延長軸20との離間が防止されている。
【0027】
また、継手管30の両端部には、削孔軸10または延長軸20と継手管30との隙間に土砂や水が浸入してしまうことを防止するための環状のパッキン32が設けられている。
さらに、図2および図3に示すように、削孔軸10と延長軸20との連結部には、連結部の前後において外管2内を連通させるための環状のスペーサ33が着脱自在に設けられている。
このスペーサ33は、継手管30に外嵌させた円筒状の取付部33aと、取付部33aから、その先端部が外管2の内周面に当接するように延長された脚部33bとから構成されており、円周方向に等間隔で4本の脚部33bが設けられている。これにより、各脚部33bの間によって、スペーサ33の前後で外管2内が連通している。
【0028】
[給水管]
また、図2および図3に示すように、外管2の中心部には、削孔軸10および延長軸20の内部を通過している給水管5が配置されている。
この給水管5の前端部は、削孔手段3(図1参照)の排水孔3bに連通しており、後端部は外管2から突出して貯水タンク(図示せず)に接続されている。このようにして、貯水タンクから給水管5を通じて削孔手段3に給水可能となっている。なお、削孔手段3と給水管5の排水孔3bとの接続部には、スイベル(図示せず)が介設されており、このスイベルを設けることにより、削孔手段3を回転させた際に、給水管5を回転させることなく、給水可能となっている。
これにより、本実施形態の曲線削孔装置1では、削孔軸10および延長軸20と、外管2との間の空間に給水管5を配置することなく、削孔手段3に水を供給することができるため、外管2内を簡素な構成にすることができる。
【0029】
さらに、延長軸20の前端部には、給水管5の損傷を防止するための案内部材6が内挿されている。
この案内部材6は、管状の部材であり、その前端部は削孔軸10内に突出している。そして、給水管5は案内部材6内を通過することにより、削孔軸10と延長軸20とに渡って配置されているため、給水管5と後端歯車11または前端歯車21との接触による損傷が防止されている。
【0030】
[駆動装置]
駆動装置4は、最後方に配置された他の延長軸20’を軸周りに回転可能な出力部を備えており、各種既存の装置を用いることができる。そして、最後方に配置された他の延長軸20’の後端部を駆動装置4の出力部に取り付け、他の延長軸20’を駆動装置4の出力によって回転させることにより、その回転力が各延長軸20,20’を介して削孔軸10に伝達され、削孔軸10とともに削孔手段3が回転するように構成されている。
【0031】
このように、本実施形態の曲線削孔装置1では、曲線孔と同一曲率に形成された外管2内に配置された直線状の削孔軸10および各延長軸20,20’を屈折した状態で連結し、隣接する各軸10,20,20’の歯車を係合させることにより、延長軸20,20’の回転力を削孔軸10に伝達しているため、削孔軸10および延長軸20,20’を硬質な材質によって形成することができ、外管2内の各軸10,20,20’の強度を高めることができる。これにより、外管2内の各軸10,20,20’に捻れを生じさせることなく、外管2の前端部に設けられた削孔手段3を確実に回転させることができる。
また、削孔軸10および延長軸20,20’の強度を大きくすることにより、削孔手段3に大きな回転トルクを伝達することができるため、切削ビット3aが設けられた削孔手段3によって硬質地盤を掘削することができる。
さらに、隣接する各軸10,20,20’の後端歯車11および前端歯車21をかさ歯車にすることにより、屈折した状態で連結された各軸10,20,20’の間で回転力を伝達するための歯車機構を簡易な構成にすることができ、外管2の外径を小さくすることができるとともに、曲線削孔装置1の製作コストを抑制することができる。
【0032】
次に、本実施形態の曲線削孔装置1を用いた曲線孔の削孔作業について説明する。
ここでは、トンネルの側壁を円弧状に切り欠いて拡幅するために、切り欠き部の外形に沿って曲線孔を削孔する場合を例として説明する。
【0033】
まず、図1に示すように、構築する曲線孔K(図4参照)と同一曲率に形成された円弧状の外管2の前端部に削孔手段3を配置し、外管2の後端部から挿入した削孔軸10の前端部を削孔手段3に取り付ける。
また、削孔軸10の後端部を駆動装置4の出力部に取り付け、削孔軸10が駆動装置4の出力によって軸周りに回転可能な状態にする。
さらに、削孔軸10の内部に給水管5を挿入し、スイベル(図示せず)を介して、給水管5の前端部を削孔手段3の排水孔3b(図1参照)に連通させるとともに、後端部を外管2から突出させて貯水タンク(図示せず)に接続する。
【0034】
続いて、図1に示すように、削孔手段3を曲線孔Kの始点となる位置に当接させ、駆動装置4を始動させて削孔軸10を軸周りに回転させることにより、削孔手段3によって地盤を掘削する。
また、給水管5から削孔手段3に水を供給し、削孔手段3の排水孔3bから切羽面に注水することにより、地盤の硬度を低下させることができるため、掘削効率を高めることができる。
さらに、掘削土砂は、削孔手段3の排土用開口部(図示せず)から外管2内に取り込まれ、削孔軸10と外管2との間の空間を通じて、外管2の後端部から排土される。これにより、外管2の周囲で土砂を流動させて排土する場合と比較して、掘削土砂を円滑に排土することができる。
このようにして、削孔手段3によって地盤を掘削することにより、削孔軸10および外管2を曲線孔Kの曲率に沿って地盤内に掘進させる。
【0035】
そして、削孔軸10の後部まで掘進させて、削孔軸10の回転を一端停止した後に、延長軸20を外管2の後端部から挿入し、その前端部の前端歯車21を削孔軸10の後端歯車11に係合させることにより、延長軸20の前端部を削孔軸10の後端部に対して屈折した状態で連結する。
また、図2に示すように、継手管30にスペーサ33を取り付け、この状態で継手管30およびスペーサ33を削孔軸10と延長軸20との連結部の周囲に配置する。さらに、延長軸20の内部に給水管5を配置する。
一方、延長軸20の後端部を駆動装置4の出力部に取り付け、延長軸20が駆動装置4の出力によって軸周りに回転可能な状態にする。
【0036】
続いて、駆動装置4を始動させて延長軸20を軸周りに回転させることにより、削孔手段3によって地盤を掘削する。
ここで、本実施形態の曲線削孔装置1では、屈折した状態で連結させた直線状の削孔軸10および延長軸20の歯車を係合させることにより、各軸10,20の間で回転力を伝達しており、外管2内の各軸10,20の強度を大きくすることができるため、外管2の前端部に設けられた削孔手段3に大きな回転トルクを伝達することができ、切削ビット3aが設けられた削孔手段3によって硬質地盤を確実に掘削することができる。
【0037】
さらに、削孔軸10と延長軸20との連結部に設けたスペーサ33には、連通開口部33aが形成されており、スペーサ33の前後が連通しているため、外管2内で掘削土砂を詰まらせることなく、円滑に排土することができる。
そして、削孔手段3によって地盤を掘削することにより、削孔軸10、延長軸20および外管2を曲線孔Kの曲率に沿って地盤内に掘進させる。
【0038】
また、削孔軸10、延長軸20および外管2の掘進に伴って、延長軸20の後端部に他の延長軸20’を順次に連結するとともに、外管2を順次に継ぎ足して延長する。このようにして、削孔軸10、延長軸20,20’および外管2を延長しながら掘進し、図4に示すように、曲線孔Kを構築する。
その後、外管2内から削孔手段3、削孔軸10および各延長軸20,20’を引き抜いて回収し(図1参照)、地盤内に外管2を残した状態にする。
【0039】
さらに、同様にして、複数の曲線孔Kをトンネルの延長方向に並設して構築し、曲線孔Kとトンネルの側壁面とに挟まれた切り欠き部Tを取り除くことにより、トンネルの側壁を拡幅する。このとき、取り除かれる切り欠き部Tは、その外形が複数の曲線孔Kによって縁切りされているため、トンネルの側面を簡易に切り欠いて拡幅することができる。
このようにして、トンネルの側壁を拡幅することができるため、曲線削孔装置1を用いて、トンネル内に退避所や避難通路、或いは道路の分岐合流部を構築することができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されるものではない。
図5は、本実施形態の他の構成を示した図で、削孔手段の断面が外管の前端面と略同一に形成された構成の側面図である。図6は、本実施形態の曲線削孔装置の他の構成を示した図で、ウォータージェットを用いた構成の側面図である。
【0041】
例えば、本実施形態では、図1に示すように、外管2の内径よりも小さく形成された削孔手段3を用いているが、図5に示すように、断面が外管2の前端面と略同一の直径に形成された削孔手段3’を用いてもよい。
この構成においても、削孔手段3’に削孔軸10の前端部を取り付ける構成は、特に限定されるものではないが、一端が閉塞された曲線孔を構築し、削孔軸10および延長軸20を外管2から引き抜く際に、削孔手段3’が外管2内を通過することができないため、削孔手段3’を地盤内に残した状態で、削孔軸10および延長軸20を外管2から引き抜く必要がある。
そこで、このような場合に対応するため、前記した構成では、削孔軸10の前端部に形成した雄ネジを、削孔手段3’に形成した雌ネジに螺着させ、掘削時にはネジが締め付けられる方向に削孔軸10を回転させることにより、削孔手段3と削孔軸10との螺着状態を維持している。そして、削孔手段3’から削孔軸10を取り外す際には、掘削時の回転方向と逆方向、すなわちネジを緩める方向に削孔軸10を回転させることにより、削孔手段3’と削孔軸10との螺着を解除することができる。
【0042】
また、本実施形態では、図1に示すように、複数の切削ビット3aを有する削孔手段3によって地盤を掘削しているが、軟弱地盤に曲線孔Kを削孔する場合には、図6の側面図に示すように、ウォータージェットによる削孔手段4を用いてもよい。このウォータージェットによる削孔手段4では、高圧水を切羽面に噴射することによって地盤を切削しており、その掘削方向を調整する際には、削孔手段4を中心軸周りに回転させて噴射方向を変化させる必要がある。
【0043】
このとき、本実施形態の曲線削孔装置1では、外管2内に配置された直線状の各軸10,20,20’の歯車11,21を係合させることにより、各軸10,20,20’の間で回転を伝達しており、最後方に配置された他の延長軸20’の回転量に基づいて、削孔軸10の回転量を把握することができるため、地盤内における削孔手段4の回転量を把握することができ、削孔手段4の掘削方向を正確に調整することができる。
なお、軟弱地盤を掘削する際には、外管2の周囲で掘削土砂を流動させて排土することができ、外管2内を通じて排土する必要がなくなるため、隣接する各軸10,20,20’の連結部において、外管2内をスペーサ33(図2参照)によって連通させる必要がなくなり、外管2の外径を小さくすることができる。
【0044】
また、削孔手段3は、切削ビット3aによって地盤を切削する構成や(図1参照)、高圧水の噴射によって地盤を切削する構成(図5参照)に限定されるものではなく、地盤を打撃して地盤を粉砕するエアーハンマーなど、各種土質に対応させて適宜に選択することができる。なお、削孔手段3をエアーハンマーによって構成した場合には、削孔軸10および延長軸20,20’の内部に圧縮空気の供給管を配置することができる。
【0045】
また、図1、図5および図6に示す曲線削孔装置1において、削孔軸10および各延長軸20,20’に設けた歯車11,21の歯面の傾斜角度を変更して、各軸10,20,20’が成す角度を変更することにより、各種曲率の曲線孔を削孔することができる。また、曲線孔の曲率は一定である必要はなく、楕円形状の曲線孔を構築することもできる。
【0046】
さらに、本実施形態では、トンネルの側壁を拡幅する作業に曲線削孔装置1を用いた場合を例として説明したが、本発明の曲線削孔装置1は、曲線孔を構築する各種施工に用いることができる。例えば、曲線削孔装置1を用いて曲線孔4(図4参照)を構築し、地盤内に残された外管2内に固化剤を注入することにより、予め外管2に形成した複数の貫通孔を通じて地盤内に固化剤を注入して、地盤を改良することもできる。また、固化剤の変わりに凍結防止剤を地盤に注入した場合には、地盤の凍結を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態の曲線削孔装置を示した側面図である。
【図2】本実施形態の曲線削孔装置の連結部を示した側断面図である。
【図3】本実施形態の曲線削孔装置の連結部を示した図2のA−A断面図である。
【図4】本実施形態の曲線削孔装置によって削孔した曲線孔を示した断面図である。
【図5】本実施形態の他の構成を示した図で、削孔手段の断面が外管の前端面と略同一に形成された構成の側面図である。
【図6】本実施形態の曲線削孔装置の他の構成を示した図で、ウォータージェットを用いた構成の側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 曲線削孔装置
2 外管
3 削孔手段
10 削孔軸
11 後端歯車
20 延長軸
20’ 他の延長軸
21 前端歯車
K 曲線孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲線孔を削孔可能な曲線削孔装置であって、
前記曲線孔と同一曲率に形成された外管と、
前記外管の前端部に配置された削孔手段と、
前端部が前記削孔手段に取り付けられ、前記外管内で軸周りに回転可能な直線状の削孔軸と、
前端部が前記削孔軸の後端部に対して屈折した状態で連結され、前記外管内で軸周りに回転可能な直線状の延長軸と、を備え、
前記削孔軸の後端部に設けられた後端歯車と、前記延長軸の前端部に設けられた前端歯車とを係合させることにより、前記延長軸の回転力が前記削孔軸に伝達され、前記削孔軸とともに前記削孔手段が回転するように構成されていることを特徴とする曲線削孔装置。
【請求項2】
前記削孔軸には、複数の前記延長軸が順次に屈折した状態で連結されており、
前方の前記延長軸の後端部に設けられた後端歯車と、後方の前記延長軸の前端部に設けられた前端歯車とを係合させることにより、前記各延長軸に回転力が伝達されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の曲線削孔装置。
【請求項3】
前記後端歯車および前記前端歯車は、かさ歯車であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の曲線削孔装置。
【請求項4】
前記削孔軸および前記延長軸には、軸方向に貫通孔が形成されており、
前記貫通孔を通じて、前記削孔手段に液体を供給可能であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の曲線削孔装置。
【請求項5】
前記削孔手段によって掘削された土砂が、前記外管内を通じて排土されるように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の曲線削孔装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−28751(P2006−28751A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204847(P2004−204847)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【Fターム(参考)】