説明

最大被還元温度の低い、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムベースの組成物、その製造方法並びに触媒としてのその使用

本発明は、少なくとも50重量%の酸化ジルコニウム割合の、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムを含有する組成物であり、6時間500℃で焼成後の最大被還元能力温度は500℃以下、比表面積は40m2/g以上であり、正方晶系相の形である組成物に関する。上記組成物は;ジルコニウム化合物及びセリウム化合物の混合物を沈殿させ;得られた沈殿物を含む溶媒を加熱し;陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸及びその塩、並びにカルボキシメチル化脂肪族アルコールエトキシレートタイプの界面活性剤から選ばれる添加剤を、前記ステップから得られた媒体中へ、又は分離した沈殿物へ加え;沈殿物を次に粉砕してその沈殿物を焼成して得られる。本発明の組成物は触媒として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低い最大被還元能力温度を有する、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムをベースとする組成物に関し、又その製造方法並びに触媒としてのその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、「多機能性」触媒と呼ばれる触媒が、内燃機関からの排出ガスの(自動車後燃焼触媒作用による)処理に使用されている。多機能性触媒とは、特に排出ガス中に存在する一酸化炭素及び炭化水素の酸化だけでなく、特にこれらガス中に同様に存在する窒素酸化物の還元も実施可能であるもの(3元触媒)を意味する。今日、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムが、この種の触媒用の、特に重要で長所を有する2種の構成要素であることが判明している。これら触媒は、これらの効果を得るために高温でも高い比表面積を有する必要がある。
【0003】
これらの触媒に求められる別の特性は、被還元能力である。用語「被還元能力」は、本明細書中では、還元性雰囲気下で還元され、酸化雰囲気下で再酸化される触媒の能力を意味する。この被還元能力は、水素捕捉能力により測定できる。それは、本発明の種類の組成物の場合にはセリウム、被還元又は被酸化能力を有するセリウムに起因する。この被還元能力及び、その結果としての触媒効果は、公知の触媒の場合通常かなり高い温度で最大となる。この温度は一般的に600℃近辺である。現在、より低い被還元能力温度を有する触媒、即ちより低い温度範囲で高性能な触媒が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の目的は、低い被還元能力温度を有する触媒の開発である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のため、本発明の組成物は、少なくとも50重量%の酸化ジルコニウム割合の、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムベースであり、6時間500℃で焼成後の最大被還元能力温度は500℃以下、比表面積は40m2/g以上であり、正方晶系相の形である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の他の態様、詳細及び利点は、下記記載及び特定のものであるが本発明を限定するものではなく本発明の例示のための実施例で更に充分に明らかに示される。
本発明の記載において、用語「比表面積」は、雑誌The Journal of the American Chemical Society、60、309(1938)に記載されているBrunauer-Emmett-Teller法を基礎に確立されたASTM D3663-78標準に従った窒素吸着により決定されるBET比表面積を意味する。
用語「ランタニド系」は、周期律表で57〜71の範囲の原子番号を有する元素により形成されるグループの元素を意味する。
本発明の記載において特記しない限り、数値範囲内にはその限定値が含まれる。
【0007】
本発明の組成物は、酸化ジルコニウムベースで酸化セリウムも含有する混合酸化物タイプである。それらは又、セリウム以外のランタニド系列から得られた、少なくとも1の他の元素を含有してもよい。従ってこの場合、組成物は特に3元又は4元組成物である。上記元素は、好ましくはランタン、ネオジム又はプラセオジムから選ばれる。最も好ましくは、ジルコニウム、セリウム、プラセオジム及びランタンをベースとする組成物、ジルコニウム、セリウム、ネオジム及びランタンをベースとする組成物、並びにジルコニウム、セリウム、プラセオジム及びネオジムをベースとする組成物が挙げられる。
【0008】
本発明の組成物は特別な構造を有する。それらは正方晶系相の形である。厳密には、正方晶系相が支配的である。用語「支配的」とは、組成物の混合酸化物の正方晶系相の結晶面(111)に対応する回折ピークの強度が、存在するいずれかの他の相の主要ライン強度の、少なくとも1倍、好ましくは少なくとも4倍であることを意味する。特に、この種の他の相の好ましい例示として、正方晶系若しくは単斜晶系である純粋酸化ジルコニウム、又は純粋酸化セリウムが挙げられる。
この構造は、少なくとも900℃の温度で6時間焼成を受けた生成物のXRD(X線回折)分析により決定される。
【0009】
例えば、本発明の組成物は、酸化セリウム及び、任意の他の元素の純粋固溶体の形状でもよい。これにより、セリウム、場合によってはセリウム及び他の元素は、ジルコニウム中の完全な固溶体として存在する。これら組成物のXRD(X線回折スペクトル)は、特に後者中で、正方晶系で結晶化した酸化ジルコニウムのそれに対応する明確に識別できる単相の存在を明らかにし、それは酸化ジルコニウムの結晶格子へのセリウム及び他の元素の組み込みの結果であり、それによる完全固溶体の形成を明らかにする。
【0010】
本発明の組成物中の種々の構成要素の内容物は様々である。これら内容物は、本発明の記載において、全組成物に対する酸化物(ZrO2、CeO2及びTR23;TRはセリウム以外のランタニドを示す。)量として表される。ジルコニウム含有量は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも65%、更に好ましくは少なくとも70%である。セリウム含有量は一般的に50%未満であり、好ましくは最大40%、更に好ましくは最大25%である。任意の他の元素の含有量は、通常最大15%であり、好ましくは最大10%、最も好ましくは3%〜10%である。固溶体形の組成物の場合、セリウム以外の希土類の上限含有量は、実際には酸化ジルコニウム中へのこれら1種以上の元素の溶解限度のみにより限定される。
【0011】
本発明の組成物は本質的に、その最大被還元能力温度が500℃以下である特徴を有する。この最大被還元能力温度は、好ましくは480℃以下、更に好ましくは400℃以下である。又、この最大温度は、300℃〜500℃でもよく、特に350℃〜450℃でもよい。
組成物の被還元能力は、温度の関数としてそれらの水素捕捉能力を測定して決定される。この測定は又、水素捕捉が最大である温度、換言すればセリウム(IV)のセリウム(III)への還元も又最大である温度に対応する、最大被還元能力温度を決定するために使用される。
【0012】
本発明の組成物は又、比表面積によっても特徴付けられる。実際、本発明の組成物は、低い最大被還元能力温度を保持しながら高温でも同様に高い比表面積を提供する。
従って、本発明の組成物は、空気中で6時間500℃で焼成後に、40m2/g以上の高い比表面積を有する。この表面積は、上記と同一温度で同一時間焼成後、好ましくは60m2/g以上、更に好ましくは70m2/g以上、最も好ましくは80m2/g以上である。本発明は、上記と同一温度で同一時間でもなお、89m2/g以上までが可能である表面積を有する組成物を得ることができる。
より高温であっても、本発明の組成物の比表面積は、6時間900℃で焼成後30m2/g以上であり、この表面積は、45m2/g以上も可能である。本発明は、上記と同一温度で同一時間でもなお、53m2/g以上までが可能である表面積を有する組成物を得ることができる。
最後に、25m2/g以上、更に30m2/g以上の比表面積も、6時間1000℃で焼成後に達成できる。本発明は、上記と同一温度で同一時間でもなお、40m2/g以上までが可能である表面積を有する組成物を得ることができる。
【0013】
本発明の組成物の好ましい態様は、イオウを含有しない。これは、イオウ含有量が通常200ppm未満、好ましくは100ppm未満であることを意味する。この含有量は、全組成物に対する硫酸塩(SO4)量として表される。
【0014】
最後に、上記のような本発明の組成物は、低い温度、即ち300℃以下で水素を活性化しやすい種類の金属、例えば、貴金属(白金、パラジウム、ルテニウム、ルビジウム、イリジウム、金、銀、マンガン及びビスマス)、又はニッケル及び鉄等の第VIII族金属等のいずれも含まないでいられる限り、低い最大被還元能力温度を有する。
【0015】
本発明の組成物の製造方法を、下記に記載する。
この方法は、下記ステップを含む:
(a)ジルコニウム化合物、セリウム化合物、及び任意で上記他の元素化合物を含有する混合物を形成するステップ;
(b)上記混合物を塩基性化合物と接触させて、沈殿物を得るステップ;
(c)上記沈殿物を水性媒体中で加熱するステップ;次に
(d)最初に、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸及びその塩、並びにカルボキシメチル化脂肪族アルコールエトキシレートタイプの界面活性剤から選ばれる添加剤を、前記ステップから得られた媒体中で加え、次に上記沈殿物を可能な限り分離するステップ;又は
(d’)上記沈殿物を最初に分離し、次に上記添加剤を沈殿物へ加えるステップのいずれかを行い;
(e)前記ステップ(d)又は(d’)で得られた沈殿物を粉砕操作にかけるステップ;並びに
(f)上記のように得られた沈殿物を焼成するステップ。
【0016】
従って、本発明の方法の第一ステップは、液体媒体中で、ジルコニウム化合物、セリウム化合物及び任意で追加的上記元素の少なくとも1の化合物の混合物を製造するステップから構成される。
混合は、好ましくは水である液体媒体中で一般的に行われる。
【0017】
化合物は、好ましくは可溶性化合物である。それらは、好ましくはジルコニウム塩、セリウム塩及びランタニド塩である。これらの化合物は、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物及び硝酸セリウムアンモニウムから選ばれてもよい。
例えば、ジルコニウム硫酸塩、硝酸ジルコニル又は塩化ジルコニルが挙げられる。最も一般的に、硝酸ジルコニルが使用される。又特に例えば、硝酸塩又は硝酸セリウムアンモニウム等のセリウム(IV)塩が挙げられ、それらは本発明で特に適切である。硝酸セリウムも好ましく使用できる。少なくとも99.5%、更に好ましくは少なくとも99.9%の純度の塩を使用することが有利である。硝酸セリウム水溶液は、例えば硝酸と水酸化セリウム(IV)との反応により得られ、その水酸化セリウムは、セリウム(III)塩、例えばセリウム(III)の硝酸塩溶液を過酸化水素の存在下でアンモニア溶液と反応させて、従来法により調製できる。又特に、フランス国特許FR−A−2570087号公報記載のセリウム(III)硝酸塩溶液の電解酸化法により得られた硝酸セリウム溶液を使用することも出来、これは本発明では便利な原料を構成する溶液である。
【0018】
セリウム塩及びジルコニル塩の水溶液は、初期にある程度遊離酸性の場合があるが、それは塩基又は酸の添加により調節できる。しかし、上記のように実際にある程度の遊離酸性を有するセリウム塩及びジルコニウム塩初期溶液を使用することも、予めより大きい又は小さい範囲まで中和された溶液を使用することも同様に可能である。この中和は、この酸性を抑えるために上記混合物へ塩基性化合物を添加することにより行われてもよい。この塩基性化合物は、例えばアンモニア溶液又はアルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)水酸化物の溶液でもよいが、好ましくはアンモニア溶液である。
【0019】
最後に、出発混合物にセリウム化合物が含有され、セリウムがCe(III)型である場合、本発明の方法において、過酸化水素等の酸化剤を使用することが好ましい。この酸化剤は、ステップ(a)中又はステップ(b)中、特に後者のステップの最後に、反応混合物へ添加して使用されることができる。
【0020】
又ジルコニウム又はセリウムの出発化合物として、ゾルも使用できる。用語「ゾル」は、ジルコニウム化合物又はセリウム化合物ベースのコロイド状サイズ、即ち約1nm〜約500nmのサイズの固体微粒子から構成される系を示し、この化合物は一般的にジルコニウムの酸化物及び/若しくは水酸化物、又はセリウムの酸化物及び/若しくは水酸化物であり、水性液体相中の懸濁液である。上記粒子は更に任意で、硝酸塩、酢酸塩、塩化物又はアンモニウムイオン等の、結合又は吸着した残留量のイオンを含有することができる。このゾル中で、ジルコニウム又はセリウムは、完全にコロイド形でもよく、又は同時にイオン形若しくはコロイド形でもよい。
【0021】
混合物は最初に化合物から固体状態で得て、次にそれを例えば水性ストック中へ導入して得てもよく、これら化合物の溶液から直接に出発して次にその溶液をいずれの順番で混合してもよい。
【0022】
本発明の方法の第二ステップで、上記混合物は塩基性化合物と接触させる。塩基又は塩基性化合物として、水酸化物タイプの製品を使用することができる。アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。2級、3級又は4級アミンを使用することもできる。しかし、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンによる汚染の危険性を減少させるために、アミン及びアンモニア水溶液が好ましい。又尿素も、挙げられる。塩基性化合物は一般的に水溶液の形で使用される。
【0023】
混合物及び溶液を互いに接触する方法、即ちそれらの導入順序は重要ではない。しかし、この接触は塩基性化合物の溶液への混合物の導入により行われてもよい。この変形方法は、固溶体形の組成物を得るため好ましい。
混合物及び溶液間の接触又は反応、特に塩基性化合物溶液への混合物の添加は、単一ステップで、徐々に又は連続的に行われてもよく、好ましくは攪拌して行われる。又、好ましくは室温で行われる。
【0024】
本発明の次のステップは、水性媒体中の沈殿物の加熱ステップである。
この加熱は、塩基性化合物との反応後得られた反応混合物に対して直接、又は反応混合物から沈殿物を分離後に任意で洗浄して再度水へ戻して得られた懸濁液に対して、行うことが出来る。媒体が加熱される温度は、好ましくは少なくとも100℃、更に好ましくは少なくとも130℃である。加熱操作は、液体媒体を密封容器(オートクレーブタイプの密封反応器)中へ導入することにより行われてもよい。上記温度条件下で水性媒体中では、例示として挙げられる密封反応器中の圧力は、例えば1bar(105Pa)を超え165bar(1.65×107Pa)までの値の間、好ましくは5bar(5×105Pa)〜165bar(1.65×107Pa)で変化してもよい。加熱は又、100℃近くの温度用開放系反応器中で行われてもよい。
加熱は、空気中又は不活性ガス雰囲気中のいずれかで行われてもよく、好ましくは窒素中である。
【0025】
加熱時間は非常に広く変化でき、例えば1〜48時間、好ましくは2〜24時間である。同様に、温度上昇速度は重要ではなく、従って媒体の加熱により設定した反応温度へ達するまでに、例えば30分間〜4時間(これらの値は例示のためだけに示される)である。
加熱される媒体のpHは一般的に少なくとも5である。好ましくは、このpHは塩基性、即ち7を超え、更に好ましくは8以上である。
本発明では、数種の加熱操作を行うことができる。従って、加熱ステップ及び任意の洗浄操作ステップ後に得られた沈殿物は、水中に再懸濁され、次に別の加熱操作がこのように得られた媒体に対して行われてもよい。この別の加熱操作は、第一の方法で記載されたのと同一条件で行われる。
【0026】
本発明の次のステップは、2種の変形に従い行われてもよい。
第一の変形では、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸及びその塩、及びカルボキシメチル化脂肪族アルコールエトキシレートタイプの界面活性剤から選ばれる添加剤が、上記ステップ後に得られた反応混合物へ添加される。この添加剤に関しては、国際公開WO98/45212号の記載を資料として使用し、その書類に記載された界面活性剤が使用できる。
【0027】
陰イオンタイプの界面活性剤として例えば、エトキシカルボキシレート、エトキシル化又はプロポキシル化脂肪酸、特に商品名ALKAMULS(商標)、式R−C(O)N(CH3)CH2COO-のサルコシネート、式RR’NH−CH3−COO-のベタイン(但し、R及びR’はアルキル又はアリールアルキル基)、リン酸エステル、特に商品名RHODAFAC(商標)のもの、アルコール硫酸エステル、アルコールエーテル硫酸エステル及びアルカノールアミドエトキシレート硫酸エステル等の硫酸エステル、スルホサクシネート、アルキルベンゼンスルホン酸塩又はアルキルナフタレンスルホン酸塩等のスルホン酸塩が挙げられる。しかし、イオウを含有する界面活性剤は、上記イオウフリー組成物を調製するために使用されるべきではない。
【0028】
非イオン界面活性剤として、アセチレン性界面活性剤、エトキシル化又はプロポキシル化脂肪族アルコール、例えば商品名RHODASURF(商標)又はANTAROX(商標)のもの、アルカノールアミド、アミンオキシド、エトキシル化アルカノールアミド、長鎖エトキシル化又はプロポキシル化アミン、例えば、商品名RHODAMEEN(商標)、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、ソルビタン誘導体、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリグリセリルエステル及びそれらのエトキシル化誘導体、アルキルアミン、アルキルイミダゾリン、エトキシル化油及びエトキシル化又はプロポキシル化アルキルフェノール、特に商品名IGEPAL(商標)が挙げられる。又特に国際公開WO−98/45212号に記載されている商品名IGEPAL(商標)、DOWANOL(商標)、RHODAMOX(商標)及びALKAMIDE(商標)の製品が挙げられる。
【0029】
カルボン酸として、特に脂肪族モノカルボン酸又はジカルボン酸が使用でき、中でも、飽和酸が更に好ましく使用できる。又脂肪酸、好ましくは飽和脂肪酸が使用できる。従って、特に好ましくはギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酢酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、2−エチルヘキサン酸及びベヘン酸が挙げられる。ジカルボン酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸が挙げられる。
カルボン酸塩、特にそのアンモニウム塩も使用できる。
例として、更に好ましくはラウリン酸及びラウリン酸アンモニウムが挙げられる。
【0030】
最後に、カルボキシメチル化脂肪族アルコールエトキシレートタイプのものから選ばれる界面活性剤を使用することができる。
用語「カルボキシメチル化脂肪族アルコールエトキシレートタイプの製品」は、鎖末端にCH2−COOH基を有するエトキシル化又はプロポキシル化脂肪族アルコールからなる製品を意味する。
これらの製品は、下式で表される:
1−O−(CR23−CR45−O)n−CH2−COOH、
但し、R1は飽和又は不飽和炭素鎖を示し、その長さは一般的に最大22炭素原子、好ましくは少なくとも12炭素原子であり;R2、R3、R4及びR5は同一でもよく水素を表してもよく、R2がCH3基を表す場合にR3、R4及びR5は水素を表し;nは50までの0ではない整数であり、好ましくは5〜15で、上限下限の数字を含む。界面活性剤は、R1はそれぞれ飽和でも不飽和でもよい上式の製品、又はCH2−CH2−O−及びC(CH3)−CH2−O−基の両方を含有する製品の混合物からなるものでもよい。
【0031】
界面活性剤が添加された後、沈殿物は任意で公知の手段で液体媒体から分離されてもよい。
別の変形例では、最初にステップ(c)から得られた沈殿物を分離し、次に界面活性剤添加剤をこの沈殿物へ添加する。
界面活性剤の使用量は、酸化物として計算される組成物重量に対する添加剤の重量%として表すと、一般的に5%〜100%、好ましくは15%〜60%である。
【0032】
本発明の次のステップでは、前記ステップで得られた沈殿物を粉砕操作にかける。
この粉砕は、種々の方法で行われる。
第一の方法は、湿式粉砕タイプの高エネルギー粉砕操作を行う。これら粉砕は、沈殿物がその元の液体媒体から良く分離されるケースでは、ステップ(d’)後又はステップ(d)後のいずれかで得られた湿生沈殿物に対して行われる湿式粉砕は、例えばボールミル中で行われてもよい。
【0033】
第二の方法は中程度のエネルギー粉砕操作であり、例えばコロイドミル又はタービン攪拌機を使用して沈殿物の懸濁液へせん断作用をかけることにより行われる。この懸濁液は、水中で、ステップ(d)又は(d’)後に得られた沈殿物を再懸濁することにより得られた水性懸濁液でもよい。これは又、液体媒体から分離された沈殿物ではなく、界面活性剤が添加された後のステップ(d)後に直接に得られた懸濁液でもよい。
上記粉砕後、得られた生成物は任意で、例えばそれをオーブン中に通過させて乾燥しても良い。
【0034】
本発明の方法の最後のステップは焼成ステップである。
この焼成は、得られた生成物の結晶性を増加させるが、それは又、本発明の組成物用に保持される次に続く使用温度に応じて、採用される焼成温度が高いと生成物の比表面積は低くなる事実を考慮して調節され及び/又は選択される。
【0035】
本発明の第一の実施方法では、焼成は酸化雰囲気、例えば空気中で行われる。この場合、焼成は一般的に300〜1000℃の温度で、一般的に少なくとも30分間行われる。
本発明の第二の実施方法は、上記ステップ(e)中で行われる粉砕が中程度のエネルギー粉砕である場合に最も好ましく、その焼成は最初に不活性ガス流れ中、その次に酸化雰囲気内で行われてもよい。
この場合、不活性ガスは好ましくは窒素である。この第一の焼成は、一般的に800℃〜1000℃の温度で少なくとも1時間行われる。酸化雰囲気中の焼成は、300℃〜700℃の温度で少なくとも30分間行われる。
【0036】
上記又は上記方法により得られた本発明の組成物は、粉状であるが、それらは任意で様々な寸法の粒状、ビーズ、円柱状又はハチの巣状へ形成できる。これらの組成物は、触媒分野で通常使用される任意のサポート、特に、熱的に不活性のサポートと共に使用できる。このサポートは、アルミナ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、シリカ、スピネル、ゼオライト、シリケート、結晶性シリコンリン酸アルミニウム及び結晶性リン酸アルミニウムから選ばれてもよい。
【0037】
組成物は又、触媒系中で使用できる。これら触媒系として、例えば金属又はセラミックモノリスタイプの基材上の、触媒的性質を有しこれら組成物をベースとするウォッシュコートが挙げられる。ウォッシュコートは、それ自体上記種類のサポートを含んでよい。このウォッシュコートは、組成物とサポートを混合して懸濁液を形成し、次に基材上に配置して得られる。
【0038】
これら触媒系、好ましくは本発明の組成物は、種々の数多くの適用に採用できる。それらは好ましくは種々の反応の触媒作用に良く適合して使用できる。それらの反応として例えば、脱水反応、hydrosulfurization、水素化脱窒素、脱硫化反応、水素化脱硫、脱水素ハロゲン化、改質、水蒸気変成、クラッキング、水素化分解、水素化、脱水素化、異性体化、不均化、炭化水素又は他の有機的化合物のオキシ塩素化及び脱水素環化、酸化及び/又は還元反応、クラウス反応、内燃排出ガスの処理、脱金属化反応、メタン生成反応、転化反応、低燃費モードで運転されるジーゼル又はガソリン機関等の内燃機関により排出されるすすの触媒的酸化が挙げられる。最後に、本発明の触媒系及び組成物はNOxトラップとして使用できる。
【0039】
触媒作用へこれらを使用する場合、本発明の組成物は、貴金属と組み合わせて使用できる。これら金属の性質及びそれらをこれら組成物へ組み込む技術は、当業者に公知である。例えば、金属は、白金、ロジウム、パラジウム又はイリジウムでもよく、それらは好ましくは組成物へ含浸法により導入できる。
【0040】
上記使用法中、内燃機関排出ガスの(自動車後燃焼触媒作用による)処理は、特に本発明の好ましい適用の一つである。
従って、本発明は又、上記組成物又は触媒系を自動車後燃焼用触媒の製造に使用することにも関する。
【実施例】
【0041】
特定的であるが本発明を限定するものではない実施例を下記に示す。
これらの実施例中、示された被還元能力の程度は還元されたセリウムの割合を示し、下記説明の方法により消費され測定された0.5molのH2は、1molの還元されたCe(IV)に対応することが理解できる。
被還元能力測定は、下記条件で温度プログラムされた還元により行われる。商品名「Altamira MI−100」装置が、シリカ反応器と、予め10時間、1000℃雰囲気中で焼成された200mg試料と共に使用される。ガスは流速30ml/分のアルゴン中に10体積%水素を含む。温度上昇は、室温から900℃まで昇温速度10℃/分で行われる。シグナルは70mA熱伝導度検出器で検出される。捕捉された水素は、室温でのベースラインから900℃のベースラインへ消失した水素シグナルの面積から計算できる。上記定義された最大被還元能力温度は、試料中心部中に配置された熱電対を使用して測定される。
【0042】
実施例1
この実施例は、重量%で表すと、酸化ジルコニウム72%、酸化セリウム21%、酸化ランタン2%及び酸化ネオジム5%の含有物を有する組成物の調製に関する。
攪拌中のビーカー内へ、900mlの硝酸ジルコニウム(80g/l)、42.3mlの硝酸セリウム(セリウムの酸化状態はIII価)(496g/l)、4.4mlの硝酸ランタン(454g/l)及び9.5mlの硝酸ネオジム(524g/l)を添加した。次に蒸留水を添加し、1リットルのこれら硝酸塩溶液とした。
攪拌中の反応器内へ、250mlのアンモニア水溶液(12mol/l)、74mlの過酸化水素(110体積)を添加し、次に蒸留水を添加し、合計体積1リットルとした。
【0043】
硝酸塩の溶液を1時間かけて一定の攪拌をしながら反応器中へ導入し、懸濁液を得た。
得られた懸濁液を、攪拌器を備えたステンレススチールオートクレーブ中に充填した。媒体の温度を2時間かけて攪拌しながら150℃へ上昇させた。
得られた懸濁液を次にブフナー漏斗上でろ過した。20重量%酸化物を含有する黄白色沈殿物が回収された。
76gのこの沈殿物を取り出し、ボールミル(Netzch社製、商品名「MolinexPE075」)中に入れた。
平行して、ラウリン酸アンモニウムゲルを下記条件下で調製した:250gのラウリン酸を135mlのアンモニア水溶液(12mol/l)及び500mlの蒸留水中へ導入し、次に混合物をスパチュラを使用して均一化した。
24gのこのゲルをボールミル中の沈殿物へ添加した。100mlの蒸留水及び250mlのジルコニアビーズ(直径0.4〜0.7mm)を添加して混合物を完成させた。混合物全体を1500rpmで60分間粉砕した。
沈殿物を次にふるい上で洗浄して粉砕ボールを回収した。得られた懸濁液を次に60℃のオーブン中で24時間乾燥した。次に乾燥した生成物を900℃まで、空気中で、安定して4時間加熱した。
生成物の性質を下記表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例2
実施例1と同様の、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン及び酸化ネオジムの組成を有する組成物を調製した。
オートクレーブ中の懸濁液の処理に関する手順を、実施例1と同様に行った。この処理に続いて室温へ冷却後、500mlの懸濁液を除去した。8gのラウリン酸をこの懸濁液へ添加した。均一化後、得られた混合物をUltraturax(商標)装置を使用して速度1000rpmで15分間せん断作用にかけた。
次に得られた懸濁液をブフナー漏斗上でろ過した。得られた固体を50℃のオーブン中で12時間乾燥した。乾燥した生成物を石英反応管中に配置した。次に流動床焼成を流速100cm3/分の窒素下で行なった。焼成温度は900℃であり、焼成時間は4時間だった。この焼成後、生成物を窒素下で室温まで戻した。次に、第二焼成を窒素中の10%酸素を含有する雰囲気中で500℃で安定して二時間行なった。
生成物の性質を下記表2中に示す。
【0046】
【表2】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも50重量%の酸化ジルコニウム割合の、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムを含有する組成物であり、6時間500℃で焼成後の最大被還元能力温度は500℃以下、比表面積は40m2/g以上であり、正方晶系相の形である組成物。
【請求項2】
更に、セリウム以外のランタニド系列から得られた、少なくとも1の他の元素を含有する請求項1の組成物。
【請求項3】
ランタン、ネオジム及びプラセオジムから選ばれた少なくとも1のランタニドを含有する請求項2の組成物。
【請求項4】
少なくとも65重量%の酸化ジルコニウム含有量を有する請求項1〜3いずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
480℃以下、好ましくは400℃以下の最大被還元能力温度を有する請求項1〜4いずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
6時間500℃で焼成後の比表面積が70m2/g以上、好ましくは80m2/g以上である請求項1〜5いずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
6時間900℃で焼成後の比表面積が30m2/g以上である請求項1〜5いずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
6時間900℃で焼成後の比表面積が45m2/g以上である請求項7の組成物。
【請求項9】
6時間1000℃で焼成後の比表面積が25m2/g以上である請求項1〜5いずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
酸化ジルコニウム中でセリウムが、任意で上記他の元素と共に、固溶体として存在する請求項1〜9いずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか1項記載の組成物の製造方法であり、下記ステップを含む製造方法:
(a)ジルコニウム化合物、セリウム化合物、及び任意で上記他の元素化合物を含有する混合物を形成するステップ;
(b)上記混合物を塩基性化合物と接触させて、沈殿物を得るステップ;
(c)上記沈殿物を水性媒体中で加熱するステップ;次に
(d)最初に、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸及びその塩、並びにカルボキシメチル化脂肪族アルコールエトキシレートタイプの界面活性剤から選ばれる添加剤を、前記ステップから得られた媒体中で加え、次に上記沈殿物を可能な限り分離するステップ;又は
(d’)上記沈殿物を最初に分離し、次に上記添加剤を沈殿物へ加えるステップのいずれかを行い;
(e)前記ステップで得られた沈殿物を粉砕操作にかけるステップ;並びに
(f)上記のように得られた沈殿物を焼成するステップ。
【請求項12】
上記沈殿物を酸化雰囲気内、又は最初に不活性ガス中、その次に酸化雰囲気内、のいずれかで焼成する請求項11の方法。
【請求項13】
ジルコニウム化合物、セリウム化合物及び上記元素の化合物として、硝酸塩、酢酸塩、塩化物及び硝酸セリウムアンモニウムから選ばれる化合物が使用される請求項11又は12の方法。
【請求項14】
ジルコニウム化合物又はセリウム化合物としてゾルが使用される請求項11〜13いずれか1項記載の方法。
【請求項15】
ステップ(a)の混合では、セリウム化合物はセリウムがCe(III)型であるものを使用し、酸化剤をステップ(a)中又はステップ(b)中、特に後者のステップの最後に添加する請求項11〜14いずれか1項記載の方法。
【請求項16】
ステップ(b)中で、上記混合物をこの塩基性化合物の溶液中へ導入することにより、混合物を塩基性化合物と接触させる請求項11〜15いずれか1項記載の方法。
【請求項17】
上記沈殿物は、ステップ(c)中で少なくとも100℃の温度まで加熱する請求項11〜16いずれか1項記載の方法。
【請求項18】
湿式粉砕操作を実施する請求項11〜17いずれか1項記載の方法。
【請求項19】
上記粉砕は沈殿物の懸濁液へせん断作用をかけることにより行う請求項11〜17いずれか1項記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜10いずれか1項記載の組成物を含有する触媒系。
【請求項21】
請求項20の触媒系又は請求項1〜10いずれか1項記載の組成物が触媒として使用される内燃機関の排出ガス処理方法。

【公表番号】特表2006−513973(P2006−513973A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518715(P2005−518715)
【出願日】平成16年3月17日(2004.3.17)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000647
【国際公開番号】WO2004/085806
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(503124252)ロディア エレクトロニクス アンド カタリシス (13)
【Fターム(参考)】