説明

有価物回収を行い廃水を系外に排出しない廃棄物処理装置

【課題】油を含む果実ならびに種子から植物原油を製造する工程より発生する高温含油高有機質廃水の水質改善を行い、同時に廃棄物と見なされている有価物質の回収を行なう廃水浄化装置を提供する。
【解決手段】パーム油製造工場の製造排水自身の持つ高温エネルギーを乾燥熱源とする箱型2段熱交換器形乾燥器により固液分離を行い、蒸発した水相は凝縮と懸濁物質の除去を行い農園内の用水として回収再利用する。分離したオイルスカムとオイルスラッジはさらに乾燥固形化し、肥料・燃料として回収再利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粗植物油脂製造工程より発生する含油高有機質廃水の水質改善を行い同時に廃棄物と見なされている有価物質の回収を行う廃水浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に搾油によって製造される植物油脂は高温で廃油を含み果実の繊維および細胞物質を含んだ高いBOD値・有機酸を有し土壌や水域を汚濁する。それにより周辺の生態系の混乱や生物の喪失が発生し重大な問題と指摘されている。このような状態にある工場の廃水浄化処理の実態は通常自然浄化を期待した処理効率の低い自然沈殿池であるラグーンが設けられているのが一般的である。一部の製油工場では機械式曝気装置などを増設し処理の改善の努力は行われている。
【0003】
またメタン発酵を行う大容量の嫌気性消化槽を主体としたパイロット装置も実施例として存在するが農園工場の経営に影響を及ぼすほどの設備投資が必要とされる場合があってすべての製油工場に適用するためには膨大な資金が必要であると試算される。
【0004】
報告されている排水処理に関しては学術研究的なものもあり搾油廃水中の固形廃棄物をオイル、糖類、有用化学物質、高付加価値固体製品(分子ふるい炭素)に変換する方法と凍結法により濃縮した後酵素糖化微生物分解によってアルコール類性分解プラスチックに変換する技術を開発したとされる 研究代表者 三浦孝一・共同研究者白井義人の研究もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら設備コスト・操業コストが低いと考えられる自然浄化を期待する現行のラグーン型自然沈殿池では廃液の浄化は効果的に行われてはいない。広大な敷地を占有しラグーンの廃水の移動は溢流方式であるため廃油分および堆積するスラッジは驟雨(スコール)のたびにその降水量分が溢流して敷地内から流出するなどの問題を有している。
【0006】
またメタン発酵の方法も嫌気性消化槽を1製油工場で建設するには操業に関わる知識、能力や資力のないことがある。運転管理の技術者は不足している。取り出されたメタンガスの本格的な有効利用する方法が確立されていない。処理効果の評価も完全ではない。嫌気性消化の場合の放流水は黒褐色で透視度が上がらず外観がはなはだしく悪いのが一般的である。
【0007】
前記のような条件下においては建設費が安価で設備は取り扱いが容易であることであり、加えて運転コストが低く故障の少ない常に安定した良好な処理水を得ることの可能な排水浄化が行えねばならない。
【0008】
粗植物油製造工場排水は回収可能な有価物としての価値を有する物質が現在は汚濁物質として取り扱われている、無為に資源とも称される物質の遺棄が行なわれているため回収し有効利用することが望まれる。この場合廃棄物バイオマス回収有効利用ともいわれるが、加えて環境の保全の観点からもはなはだ好結果を得る物である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
工場排水を箱型乾燥機に送水し廃水自身の熱量で水分の蒸発を起こさせ排水中の大気中蒸発後、冷却凝縮して回収水として集める。回収水は再利可能であるため系外に出ることは無く排水が無いことになる。また処理水の再利用のため 後段に活性炭濾過装置などの浄化設備を敷設する。
【0010】
箱型乾燥機の上部には固形物掻き取り器で構成したケーキ回収装置を設け固化した廃油分、繊維質分を分離除去する。油分、有機質の完全な除去削減する。このスクレーパーは自動手動のいずれでも製作できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により大容量の自然沈殿池は不要となり本発明による新しい簡素化された排水浄化装置の設置場所を準備すれば余剰の跡地は工場用地・貯水池として使用できる、または生物の養殖池などの多目的に使用できる。その余剰面積は一般に20000m〜30000mと考えられる。
【0012】
本発明の排水浄化装置は廃液自身の持つ熱量と自然乾燥を利用したもので簡素な仕切り版を持った箱型乾燥機から構成されており運転管理に高級技術者は不要である。また設備コストが小さく装置の構成が極めて簡易であり作業性が優れ、作業員一名の運転コストののみがランニングコストであるであることが大きな特徴である。
【0013】
廃水浄化装置から分離除去された前記の廃油分、繊維質分は回収され有価物として特に燃料などに処分され有効利用に供せられる。燃焼後の残渣灰分は農園の肥料として使用できるカリウムを大量に含んでいるため農園に還元される。
【0014】
水浄化装置によって微量の廃油分、繊維質分を除かれた蒸発水は工場用水として再利用することが可能である。水質は凝縮水であり溶存塩類も少なく清澄である。
【0015】
廃水浄化装置は既存の設備および試験的なパイロットプラントに比べ設備コストが低く設備もきわめて小規模である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
高温の廃水を大気中に曝し静置するか排水自身の持つ高温度の熱水を加熱源として熱交換させることにより蒸発を促し蒸発水と残留乾燥物を回収しともに資源として利用する。
【産業上の利用可能性】
【0017】
これらの植物搾油廃水においては石油に相当する熱量を持つスカム状の廃油が燃料として得られる。油脂として回収すればパルミチン酸 オレイン酸が得られる。また果実の細胞物質や繊維滓に油脂が付着したスラッジは乾燥ケーキ化すると亜炭程度の熱量が期待できる。水は活性炭濾過処理を行うとボイラー用水プロセス水として十分使用に耐える水質となる。したがってこの方式の処理法では水、固形廃棄物を出さないシステムで産業上の資源としてそれぞれが再利用できる。
【0018】
オイルスカムのごとき廃油はメチルエステル化などの化学処理によりエンジンの燃料として自動車燃料に使用できることが分かっておりバイオディーゼルフュエル(BDF)称されている。国内外の多くでパイロット的に実験されていて精製植物油及び日本では特に食用油廃油(使用済みてんぷら油)で盛んに試作が行われておるといわれる。これらの試作製品はまた一部で実用にも供されていると発表されている。パーム農園のオイルスラッジからBDFが製造された報告はないが発明者は試作の結果農園のオイルスラッジからBDFが製造できることを試作品製作して確認した。本件はパーム油製造排水から製作できる報告も製品もなく新たな発明と考察される。
【0019】
この方式により従来まで排水処理に要求された設備面積はもっとも多いラグーン方式の約1/10の面積であり余剰となった土地は整備し新たな植林地となるか広大なポンドであるので清掃後淡水の貯水池とも水生生物(魚類 甲殻類など)の養殖場とする可能性もあり養殖生物の国内消費、輸出という新産業が誕生する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】粗パーム油製造工程より排水される含油分高有機質排水の有価廃棄物の回収を行い排水を系外に排出せず自家消費する排水処理装置の系統図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水自身の持つ高温の熱量を用いて廃水自身を乾燥させケーキ化させる箱型熱交換器においては箱型熱交換器の下部層はパーム廃液をもちうる加熱室として使用され上部とは耐食性金属板によって下部層と分離され此の金属板間の熱伝導によって上部乾燥室においては廃液中の水分の蒸発が起こる。水分の減少に従って残渣が乾燥ケーキとして上部乾燥室に残留する。蒸発凝縮する水分は液化させ集水し濾過し低塩類溶解淡水として工場用水ほかに使用する。この方法により廃水からの液体分の排出が無くなり廃水でなくなる。乾燥室に残留した乾燥物は操作者の期待する任意の含水率(50%〜20%)の乾燥ケーキを製造することが出来使用先や、運搬の便に都合のよい含水率で掻きとり保管する。この乾燥物は有価物であり熱量を持つので燃料・肥料など多目的に再利用できる。また上部乾燥室の回転を速めるため多少含水率を高めて掻き取りをおこなっても多目的固形燃料及び吸水マット(ポリアクリル酸塩系高吸水性製樹脂等)を敷き詰めた乾燥促進倉庫に再保管しておき乾燥速度の速度を保管中に早めることが出来る。箱型熱交換器における排水処理において乾燥される工場排水とそれを加温するため高温の廃水ピットを循環する第1工程と液分を空気中に凝縮させた結果生じた水滴を捕集する第2工程と小型熱交換器の上部乾燥室に残留した乾燥固形物を製造する第3工程と廃棄物の乾燥、保管を行う第4工程と、第4工程にて製造した廃棄物回収燃料をボイラー設備その他の燃焼設備に使用は使用後発生した灰分の有効処理などを行う第5工程箱型熱交換器上部層より蒸発凝縮した水分を高度濾過装置によって浄化する第6工程を有する廃水浄化方法。
【請求項2】
請求項1の工程で分別された分離物を固形化する工程7を有する有価物回収の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−23514(P2008−23514A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228408(P2006−228408)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(505460776)
【出願人】(505460787)
【Fターム(参考)】