有害薬剤を汚染なく移送するための方法及び装置
【課題】容器間で液体を汚染なく移送することができるようにする方法、及びその方法を実施するために用いられる移送装置及びアダプタを提供する。
【解決手段】液体を汚染なく移送するとは、移送プロセスの間、液体、又は液体若しくは液体の気化物によって汚染された空気が、周囲へまったく漏れず、同時に周囲からの汚染物質が液体と接触することがまったくないことを意味する。この方法の主な利点は、その簡単さに加えて、移送手順の段階において、液体、又は液体若しくは液体の気化物によって汚染された空気が、周囲へ漏れることがまったくなく、同時に周囲からの汚染物質が液体と接触することがまったくないことである。本発明は特に、標準的なコネクタ・ポートを備えた任意の容器へ、または容器から、有害薬剤を汚染なく移送する。
【解決手段】液体を汚染なく移送するとは、移送プロセスの間、液体、又は液体若しくは液体の気化物によって汚染された空気が、周囲へまったく漏れず、同時に周囲からの汚染物質が液体と接触することがまったくないことを意味する。この方法の主な利点は、その簡単さに加えて、移送手順の段階において、液体、又は液体若しくは液体の気化物によって汚染された空気が、周囲へ漏れることがまったくなく、同時に周囲からの汚染物質が液体と接触することがまったくないことである。本発明は特に、標準的なコネクタ・ポートを備えた任意の容器へ、または容器から、有害薬剤を汚染なく移送する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体移送デバイスの分野に関するものである。より詳細には、本発明は、容器間で有害薬剤を汚染なく移送するための装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有害薬剤の調合及び投与に携わる医療及び薬理学関係者は、周囲に漏れる可能性のある薬剤及びその気化物に曝される危険性に悩まされる。本明細書では、「有害薬剤」とは、それと接触し、又はその気化物と接触すると健康の害を生じる可能性がある注入可能(injectable)な材料を指す。例示的且つ限定的でないそのような薬剤の例には、中でも、細胞毒素、抗ウイルス薬、薬物療法薬、抗生物質、及び、ハーセプチン、シスプラチン、フルオロウラシル、ロイコボリン、タキソール、メタトロクサット(metatroxat)、ジェムザール、シクロホスファミド、サイトキサン、及びネオサールなどの放射性医薬品、又は、液体、固体、若しくは気体状態でのそれらの組合せが含まれる。
【0003】
液状又は粉末状の有害薬剤は、バイアル内に収容され、一般に保護衣、口マスク、及び層流安全キャビネット(laminar flow safety cabinet)を備えた薬剤師によって、隔離された部屋に一般に準備される。カニューレが設けられた注射器、即ち中空の針が、薬剤をバイアルから移送するために使用される。準備された後に、有害薬剤が静脈内投与のための食塩水などの、非経口投与のためのバッグに収容された溶液に加えられる。
【0004】
有害薬剤は毒性があるので、それに直接的に体が接触し、又は薬剤の気化物に微量に曝されることでも、皮膚がん、白血病、肝障害、奇形、流産、早産などの健康上の災いを発生させる危険性が大幅に増加する。そのように曝されることは、バイアル、瓶、注射器、及び静脈内バッグなどの薬剤を収容する容器に、過剰な圧力が与えられる場合に起こる可能性があり、その結果、有害薬剤によって汚染された流体又は空気が周囲に漏洩する。有害薬剤に曝されることは、針の先端に残り、又はバイアル若しくは静脈内バッグシールに残る薬剤溶液から生じ、又は針の先端が皮膚に誤って刺通することによっても生じる。
【0005】
いくつかの従来技術の液体移送デバイスは、有害薬剤の汚染のない移送を提供するためのものである。
【0006】
例えば、WO2005/041846は、流体容器のポートに挿入されるように構成された容器ポート・アダプタ、薬剤を収容するバイアルに連結されるように構成されたバイアル・アダプタ、及び注射器に取り付けられた注射器アダプタを備える薬剤混合システムを開示する。注射器アダプタは、少なくとも1つの容器ポート・アダプタ及びバイアル・アダプタに軸線方向の動作で流体連通され、機械的にロックされるようになされる。使用者が注射器のプランジャーを引き戻すと、流体が注射器に直接的に流入し、流体を無菌のまま保ち、使用者が流体に曝されないことを確実にする。注射器アダプタは、容器ポート・アダプタ又はバイアル・アダプタの対応する隔壁に押されて、接触係合し、それによって注射器の針が周囲環境に露出するのが防止されるので、容器ポート・アダプタ又はバイアル・アダプタに連結され、又はそれから切り離されるときも、使用者が流体に曝されることがない。注射器アダプタは、隔壁ハウジング、隔壁ハウジング内に配置された圧縮バネ、ハウジング内に密封式に装着され、バネの中に軸線方向に延出する針を備える。隔壁ハウジングは、針の先端を露出するために針に対して可動である。この薬剤移送システムは、容器ポート・アダプタ、バイアル・アダプタ、及び注射器アダプタのうちの少なくとも1つを大気に通気する膜の通気口及びフィルタを備える開放式のシステムである。それでもなお、フィルタを通した後に、微量の薬剤の気化物によって汚染された空気が周囲環境に露出される。この薬剤混合システムの別の問題は、2つの隔壁がバネの付勢力によって相互に接触係合して配置されることである。バネによって加えられた付勢力は、2つの隔壁が接触して最初に配置された時に低く、隔壁が針によって突き通されると増加する。したがって、2つの隔壁が最初に接触して配置されたときのシステムのどのような不意な動きも、2つの隔壁を互いに分離し、危険な薬剤を周囲に露出する危険性を生じやすい。このシステムのさらなる問題は、バネが完全に圧縮されたときに固定デバイスが係合され、固定デバイスを手動で係脱させる解除機構が必要であることである。さらに、この発明のシステムは、薬剤の気化物によって汚染される可能性のある空気を周囲環境に通気する通気フィルタを備える。
【0007】
2つの別個の隔壁を液体移送作業の前にロック係合させ、固定デバイス又は解除機構を設定する必要なく前記作業に続いて分離させるコネクタを提供することが望ましい。
【0008】
WO02/11794、WO03/086529、及びUS6,715,520は、汚染のない、即ち有害薬剤を収容する容器の内部から周囲の環境に気体が通過することのない、薬剤移送のための密閉システムの流体移送アセンブリを開示している。薬剤の瓶へのコネクタは、流体移送アセンブリでの流体移送ラインを確立するとき、所定の角度で薬剤の瓶のクロージャを貫通する中空の針を有する。コネクタ・ロック部材及び膜が、流体伝達デバイスと結合している二重膜バヨネットに含まれる。中空の針の中の気体チャネルが、気体を瓶から可撓性の容器に移送し、圧力補償装置が構成され、その逆も行われる。流体移送デバイスは、注射器及び連結ユニットを備える。連結ユニットは、注射器に連結するために構成された第1の部分、及び薬剤瓶コネクタに連結するように構成された第2の部分を有する。第1の部分の中に摺動できる第2の部分が、第1の部分の開口部に滑動して入る移動止めによって上昇するのが防止され、そのロックされた位置は移動止めに連結された外側に移動可能なハンドルによって解除される。薬剤が流体移送デバイスに受けられた後に、連結ユニットの注入針が、輸液バッグの入口ポートに連結された混合デバイスの注入ポートの膜を貫通する。輸液ラインのスパイク部材が、漏洩を起こさずに混合デバイスの出口ポートの膜を突き通す。
【0009】
この流体移送アセンブリは、有害薬剤がそれによって移送される連結を確立するために多数のステップを必要とし、それには、コネクタを薬剤の瓶に連結し、注射器に連結ユニットを回転及びロックし、連結ユニットをコネクタ上に下げ、連結ユニットをコネクタに回転及びロックし、連結ユニットのハンドルを外側に移動させ、連結ユニットの第1の部分に第2の部分を引き戻すために流体移送アセンブリを押し付け、注射器を操作するステップが含まれる。この流体移送アセンブリのさらなる問題は、バイアルから対応する体積の薬剤を移動させるために所定の体積の空気を液体移送作業の前に可撓性の容器に注入する必要があるが、注入された空気の体積に依存する移送される薬剤の体積は液体移送作業中には、医療従事者によって調整することができないことである。この流体移送アセンブリのさらなる問題は、作業前に注入される必要のある空気が周囲環境から取り込まれ、したがって汚染物質を周囲環境から薬剤に導入し、無菌性を侵す危険性を伴うことである。また、シート材料から作製され、注射器の外に配置された可撓性の容器が刺通される可能性があり、それによって汚染された空気を周囲環境に露出し、流体移送アセンブリを動作不能にする危険性がある。さらに、薬剤の瓶のコネクタの鋭い中空の針は、それが薬剤の瓶のクロージャを貫通するまで、露出したままになり薬剤師を危険な状態にする。したがって、この流体移送アセンブリは、一般に「ニードルレス」と呼ばれる安全性のある製品、即ち使用者に露出されない鋭い針を有する移送デバイスの群の中にあると見なすことができない。この流体移送アセンブリのさらなる問題は、作業者が連結の手順の間に1つ又は複数のステップを行うことを忘れやすく、二重膜シールが確立されない危険な結果を招く。したがって、危険な薬剤が、周囲の空気に露出され、又は注射器から放出されやすく、それによって作業者及びその場に居合わせた人を危険にさらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2005/041846号
【特許文献2】国際公開第02/11794号
【特許文献3】国際公開第03/086529号
【特許文献4】米国特許第6715520号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、有害薬剤、又は有害薬剤若しくは薬剤の気化物によって汚染された空気の漏洩を防止し、周囲環境からの汚染物質が移送プロセス中に薬剤と接触するのを防止するように構成された、密閉システムの流体移送アセンブリを提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、同じ体積の有害薬剤及び空気が、圧力を平準化する構成によって流体移送アセンブリ内部で交換され、それによって使用者が有害薬剤に曝されることを防止する、密閉システムの流体移送アセンブリを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、流体移送作業の任意の段階においても、使用者に対して針の先端などの鋭い物体を露出しない、流体移送アセンブリを提供することである。
【0014】
本発明のその他の目的及び利点は、説明が進むと明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書では、用語「交換」は、第1の流体が第1の容器から第2の容器に移送された場合、等しい体積の第2の流体が第2の容器から第1の容器に移送されるように、2つの容器の間において、異なる流体通路内で反対の方向に第1及び第2の流体を移送することを意味する。
【0016】
本明細書では、用語「液体を汚染なく移送する」とは、移送プロセスの間、液体、又は液体若しくは液体の気化物によって汚染された空気が、周囲へまったく漏れず、同時に周囲からの汚染物質が液体と接触することがまったくないことを意味する。
【0017】
「流体通路」は、前記注射器手段と前記容器との間の流路を意味し、前記注射器手段が前記容器に連結された場合に相互に流体連通する、前記注射器手段及び前記容器のそれぞれからの少なくとも1つのセグメントを含む。
【0018】
「セグメント」は、流体が流れることができる1つ又は複数の壁によって密閉されたボリューム(volume)を意味する。
【0019】
本明細書では、「近位の」は、装置を操作する使用者により近い方向を意味する。
本明細書では、「遠位の」は、装置を操作する使用者により遠い方向を意味する。
【0020】
本明細書では、「固定された二重係合手順」は、2つの流体移送構成要素の突き通し可能な2つの膜がそれぞれ相互に係合され、遠位に向けられた力を加えている間は、前記2つの膜の分離が防止される手順を意味する。
【0021】
本明細書では、流体移送構成要素は、例えば注射器、バイアル、輸液バッグ、様々なタイプのアダプタなどの任意の構成要素を意味し、液体の薬剤をある流体移送構成要素から別の流体移送構成要素へ、又は患者へ、収容し、輸送し、移送するために用いられる。
【0022】
第1の態様では、本発明は、液体を汚染なく移送する方法であって、移送は、液体の体積及び少なくとも等しい体積の気体を収容する第1の容器から、少なくとも容器内に移送される液体の量に等しい体積の気体を収容する第2の容器へ行われる。本発明方法は、
a)流体移送装置を提供するステップであって、流体移送装置は、密閉容器と、気体チャネルの第1セグメントと、液体チャネルの第1セグメントとを含み、密閉容器は、密閉容器の内部を2つの別個の液密チャンバに分割する可動の内部仕切りを有し、液密チャンバの容積が可変となっており、チャンバのうちの一方が気体チャンバであり、チャンバのうちのもう一方が液体チャンバであり、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの近位端が、気体チャンバ及び液体チャンバの内部とそれぞれ流体連通し、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端が、密封手段によって密閉されている、ステップと、
b)気体チャネルの第2セグメント、及び液体チャンバの第2セグメントを提供するステップであって、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの遠位端が、第1の容器の内部と流体連通し、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端が、密封手段によって密閉されている、ステップと、
c)気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端が、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端において密封手段を貫通し、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端において密封手段を貫通し、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端に入るまで、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端を気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端の方向に押すステップであって、それによって第1の容器の内部と気体チャンバの内部との間の連続的な気体チャネル、及び第1の容器の内部と液体チャンバの内部との間の別個の連続的な液体チャネルを提供する、ステップと、
d)第1の容器内の気体の圧力と気体チャンバ内の気体の圧力との間、及び第1の容器内の液体に働く圧力と液体チャンバ内の液体に働く圧力との間に平衡を確立するステップと、
e)液体チャンバの容積を増加させ、液体チャンバ内の圧力を瞬時に減少させ、同時に気体チャンバの容積を減少させ、気体チャンバ内の気体の圧力を瞬時に増加させるために、内部仕切りを第1の方向に移動するステップであって、内部仕切りを移動させることによって生じた圧力差により、液体を第1の容器から連続的な液体チャネルを通って液体チャンバに流入させ、同時に等しい体積の気体を気体チャンバから連続的な空気チャネルを通って第1の容器に流入させ、一方の方向への液体の流入、及び同時に起こる別の方向への気体の流入が、内部仕切りの移動を止め、平衡が再確立されるまで続く、ステップと、
f)気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端を、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端から引き抜くことによって、流体移送デバイスから第1の容器を切り離すステップであって、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端にある密封手段を通して引き抜くことによって、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの端部を密閉し、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端にある密封手段を通して引き抜くことによって、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの端部を密閉する、ステップと、
g)気体チャネルの第3セグメント、及び液体チャネルの第3セグメントを提供するステップであって、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの遠位端が第2の容器の内部と流体連通し、気体チャネル及び液体チャネルの第3のセグメントの近位端が密封手段によって密閉されている、ステップと、
h)気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端が、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端において密封手段を貫通し、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端において密封手段を貫通し、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端に入るまで、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端を気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端の方向に押すステップであって、それによって、第2の容器の内部と気体チャンバの内部との間の連続的な気体チャネル、及び第2の容器の内部と液体チャンバの内部との間の別個の連続的な液体チャネルを提供する、ステップと、
i)第2の容器内の気体の圧力と気体チャンバ内の気体の圧力との間、及び第2の容器内の液体に働く圧力と液体チャンバ内の液体に働く圧力との間に平衡を確立するステップと、
j)液体チャンバの容積を減少させ、液体チャンバ内の圧力を瞬時に増加させ、同時に気体チャンバの容積を増加させ、気体チャンバ内の気体の圧力を瞬時に減少させるために、内部仕切りを第2の方向に移動するステップであって、内部仕切りを移動することによって生じた圧力差により、液体を液体チャンバから連続的な液体チャネルを通って第2の容器に流入させ、同時に等しい体積の気体を第2の容器から連続的な空気チャネルを通って気体チャンバに流入させ、一方の方向への液体の流入、及び同時に起こる別の方向への気体の流入が、内部仕切りの移動を止め、平衡が再確立されるまで続く、ステップと、
k)気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端を、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端から引き抜くことによって、流体移送デバイスから第2の容器を切り離すステップであって、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端にある密封手段を通して引き抜くことによって、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの端部を密閉し、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端にある密封手段を通して引き抜くことによって、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの端部を密閉する、ステップとを含む。
【0023】
この方法は、流体移送デバイスと第1の容器との間を流れるすべての液体と気体が、流体移送デバイスと第1の容器との間の連続的な液体チャネル及び気体チャネルが設けられる前に、流体移送デバイス又は第1の容器の中に存在し、流体移送デバイスと第2の容器との間を流れるすべての液体と気体が、流体移送デバイスと第2の容器との間の連続的な液体チャネル及び気体チャネルが設けられる前に、流体移送デバイス又は第2の容器の中に存在することを特徴とする。
【0024】
第2の容器が移送される液体の体積に少なくとも等しい体積の気体を収容しない場合、この方法は変更され、気体チャンバを、第2の容器の内部と流体連通させない。その代わりに、気体チャネルの第3セグメントの遠位端を一方向バルブに連結し、液体が液体チャンバから第2の容器に流入するとき、フィルタを通された周囲からの空気が気体チャンバに流入できるようにする。
【0025】
本発明の方法が使用できる特定の用途は、有害薬剤を容器間で移送するためのものである。
【0026】
別の態様では、本発明は第1の態様の方法を実施するための流体移送装置である。装置は、注射器手段と、液体を中に貯蔵可能な容器に注射器手段を解除可能に連結する手段と、注射器手段内の気体圧力を容器内の気体圧力と等しくすることができ、容器と注射器手段との間において所望の体積の液体の交換ができるようになっている流体交換手段とを含む。
【0027】
本発明の流体移送装置の1つの実施例は、
a)注射器のような近位部であって、
i)円筒形の本体と、
ii)環状のスロートと、
iii)コネクタ部とスロートとの間で流体が通過するのを防止する分離要素と、
iv)円筒形の本体内で移動可能なピストンであって、ピストンは遠位の液体チャンバと近位の気体チャンバとを画成し、液体チャンバ及び気体チャンバの容積が可変である、ピストンとを含む、近位部と、
b)近位部のスロートの遠位端に固定して取り付けられたコネクタ部であって、コネクタ部の遠位端が流体移送構成要素に連結可能であるように構成されているコネクタ部と、
c)分離要素を通過し、分離要素に固く取り付けられた液体導管であって、液体導管の遠位端がコネクタ部に始まり、液体導管の近位端が液体チャンバに終端する液体導管と、
d)分離要素を通過し、分離要素に固く取り付けられた気体導管であって、気体導管の遠位端がコネクタ部に始まり、気体導管の近位端が気体チャンバに終端する気体導管と、
e)コネクタ部の遠位端に配置された膜であって、膜が液体導管及び空気導管の遠位端を密閉し、周囲から分離する膜とを含む。
流体移送構成要素のヘッド部が、コネクタ部の内部に入ることができ、コネクタ部の膜が、流体移送構成要素のヘッド部に配置される膜によって接触された場合、近位に押されるように、コネクタ部が構成されており、さらに膜を共に押すことによって、液体導管及び空気導管の遠位端がコネクタ部の膜及びヘッド部の中央のシールを貫通するようになっており、それによって液体チャンバの内部と流体移送構成要素の内部との間の液体導管を介して開放された液体チャネル、及び空気チャンバの内部と流体移送構成要素の内部との間の空気導管を介して別個の開放された空気チャネルが確立されることを特徴とする。
【0028】
流体移送構成要素のヘッド部が、コネクタ部の内部に入ることができ、コネクタ部の膜が、流体移送構成要素のヘッド部に配置される膜によって接触された場合、近位に押されるように、コネクタ部が構成される。さらに膜を共に押すことによって、液体導管及び空気導管の遠位端がコネクタ部の膜及びヘッド部の中央のシールを貫通するようになっており、それによって液体チャンバの内部と流体移送構成要素の内部との間の液体導管を介して開放された液体チャネル、及び空気チャンバの内部と流体移送構成要素の内部との間の空気導管を介して別個の開放された空気チャネルが確立される。
【0029】
本発明の装置の実施例では、コネクタ部が、スロートと一体に形成され、又はスロートに連結され、流体移送構成要素のヘッド部を囲むように適切に寸法を決められた遠位カラーと、遠位カラーに連結され、流体移送構成要素のヘッド部の遠位の縁部に解除可能に係合するように構成されているロック要素とを含む。
【0030】
これらの実施例では、コネクタ部の遠位端に配置された膜が、円錐台形の形状を有する変形可能な膜であり、膜が、膜の基部において分離要素に堅固に取り付けられ、遠位カラーの遠位端に遠位に延出する。膜の変形を防止するために、安全手段を設けることができる。
【0031】
本発明の装置のこれらの実施例は、以下の、
a)流体移送構成要素のヘッド部を遠位カラーの付近に配置するステップと、
b)ヘッド部に配置された膜がコネクタ部の変形可能な膜に接触するまで、ヘッド部及び遠位カラーを軸線方向に共に移動して密接させるステップと、
c)ヘッド部及び遠位カラーを軸線方向に共に密接して移動させ続け、液体及び気体の導管の遠位端が両方の膜を貫通するまで、コネクタ部内の変形可能な膜を圧縮するステップと、
d)カラーに連結されたロック要素がヘッド部の遠位端に解除可能に係合するまで、ヘッド部及び遠位カラーを軸線方向により近づけて移動させ続けるステップとを実行することによって、固定された二重膜係合を行うために流体移送構成要素に連結できる。
【0032】
液体の移送構成要素に液体移送デバイスのコネクタ部を連結するための上述のステップは、好ましくは、1つの軸線方向の動作を使用して実行できる。
【0033】
本発明の装置のその他の実施例では、コネクタ部が、中空の円筒形の外側本体を含む。外側本体は、
a.外側本体から径方向に突出し、開口で終端する遠位のショルダ部分であって、流体移送構成要素の近位端が連結のために開口を通って挿入できる、遠位のショルダ部分と、
b.中央部分を有する密閉された近位のキャップであって、中央部分は、装置の注射器のような近位部の遠位端に連結するために、そこから近位に突出する連結手段を含む、近位のキャップと、
c.2つの導管をその中に保持するために、密閉された近位のキャップの中央部分から外側本体の内部に突出する針ホルダであって、導管は、鋭い尖った端部を含み、さらに孔を設けられ、流体移送作業中に液体及び気体のそれぞれが孔を通って移送される、針ホルダと、
d.外側本体の中空の内部で、往復移動可能な二重膜シール・アクチュエータとを有する。
【0034】
二重膜シール・アクチュエータは、
a.円筒形のアクチュエータ・ケーシングと、
b.ケーシングの近位端を密封する近位の膜と、
c.ケーシングの遠位端を密封する遠位の膜であって、遠位の膜の一部分がケーシングから遠位に突出する、遠位の膜と、
d.少なくとも2つの弾性のアームであって、アームの近位端においてケーシングの外側の中間部分に連結され、アームの遠位端において拡張要素を含む、弾性のアームとを含む。
【0035】
二重膜シール・アクチュエータが、コネクタ部の円筒形の本体の遠位端にあるとき、弾性のアームの拡張要素がコネクタ部の円筒形の本体の遠位のショルダ部分に押し込まれ、それによって流体移送構成要素の近位端にある膜囲壁がコネクタ部の遠位端にある開口に挿入でき、膜囲壁内の膜が二重膜シール・アクチュエータのケーシングから遠位に突出する遠位の膜の一部分に接触するまで進めることができるようになっている。
【0036】
遠位のショルダ部分の直径、及びアームの遠位端にある拡張要素の大きさが、二重膜シール・アクチュエータ及び流体移送構成要素を互いに向かって押すための軸線方向の力が加えられた場合、膜囲壁の側面が、アームの遠位端にある拡張要素が径方向内側に移動するのを防止するような、直径及び大きさとなっている。これにより、膜囲壁の側面が拡張要素に対して近位に移動するまで、遠位のアクチュエータの膜が膜囲壁内の膜に対して圧縮され、この時点で、拡張要素は、径方向内側に移動するための空間を有し、二重膜シール・アクチュエータの遠位のショルダ部分から解除され、膜囲壁の遠位の下側面に当接する。このようにして、遠位のアクチュエータの膜が、固定され、且つ圧縮された係合で、膜囲壁内の膜に対してロックされ、流体移送構成要素からのアクチュエータの係脱を防止し、アクチュエータ及び連結された流体移送構成要素が、コネクタ部の外側本体の中空の内部で往復可能に移動できる。
【0037】
アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素がコネクタ部の外側本体の中空の内部で近位に移動できる距離、及び2つの導管の長さが、アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素が近位に移動した場合、2つの導管の鋭い尖った端部がアクチュエータの遠位の膜、及び膜囲壁内の膜を貫通し、それによって、コネクタ部と流体移送構成要素との間の液体経路及び気体経路がそれぞれ確立されるような、距離及び長さとなっている。アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素がコネクタ部の外側本体の中空の内部で遠位に移動した場合、2つの導管の鋭い尖った端部がアクチュエータの遠位の膜、及び膜囲壁内の膜を通って引き抜かれ、それによって、コネクタ部と流体移送構成要素との間の液体経路及び気体経路がそれぞれ遮断される。
【0038】
二重膜シール・アクチュエータが、コンダクタ部の円筒形の本体の遠位端にある場合、2つの導管の鋭い尖った端部が二重膜シール・アクチュエータの近位の膜と遠位の膜との間に配置される。
【0039】
直前に説明した、本発明の装置の実施例は、以下の、
固定された二重膜係合を行うために、請求項11の装置を流体移送構成要素に連結する方法であって、
a.コネクタ部の外側本体の遠位のショルダ部分の開口を流体移送構成要素の近位端の付近に配置するステップと、
b.コネクタ部の外側本体を遠位に移動させることによって二重膜係合動作を開始し、流体移送構成要素の近位端にある膜囲壁がコネクタ部の内部に受けられるまで行うステップと、
c.アクチュエータの遠位の膜が流体移送構成要素の近位端で膜囲壁内の膜に接触し、押し付けられるまで、外側本体を流体移送構成要素に対してさらに遠位に移動させるステップであって、このステップの間、二重膜シール・アクチュエータに取り付けられたアームの遠位端にある拡張要素が、膜囲壁の側面によってコネクタ部の外側本体の遠位のショルダ部分に保持され、それによって、アクチュエータがコネクタ部の外側本体内を近位に移動するのを防止する、ステップと、
d.膜囲壁の側面が拡張要素を通過することができるようにするために、アクチュエータの遠位の膜、及び第2の流体移送構成要素の近位端にある膜囲壁内の膜が共に十分に圧縮されるまで、外側本体を流体移送構成要素に対してさらに遠位に移動させるステップであって、それによって、アームが径方向内側に移動できるようになり、それによって、遠位のアクチュエータの膜が、固定され、且つ圧縮された係合で、膜囲壁内の膜に対してロックされ、流体移送構成要素からアクチュエータの係脱を防止し、アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素が、コネクタ部の外側本体の中空の内部で往復可能に移動できるようにし、アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素をコネクタ部の外側本体の中空の内部で近位に移動させた場合、2つの導管の鋭い尖った端部がアクチュエータの遠位の膜、及び膜囲壁内の膜を貫通し、それによって、コネクタ部と流体移送構成要素との間の別個の液体経路及び気体経路を確立し、アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素をコネクタ部の外側本体の中空の内部で遠位に移動させた場合、2つの導管の鋭い尖った端部をアクチュエータの遠位の膜、及び膜囲壁内の膜を通って引き抜き、それによって、コネクタ部と流体移送構成要素の間の液体経路及び気体経路を遮断する、ステップとを実行することによって、固定された二重膜係合を行うために流体移送構成要素に連結できる。
【0040】
コネクタ部の構造が、ロック固定デバイス又は解除機構を設定する必要なしに、コネクタ部及び流体移送構成要素が1回の軸線方向の動作によって連結され、1回の軸線方向の動作によって係脱できるようにする。
【0041】
別の態様では、本発明は流体移送作業で使用するためのコネクタ部である。コネクタ部が、中空の円筒形の外側本体を含み、外側本体は、
a.外側本体から径方向に突出し、開口で終端する遠位のショルダ部分であって、流体移送構成要素の近位端が連結のために開口を通って挿入できる、遠位のショルダ部分と、
b.中央部分を有する密閉された近位のキャップであって、中央部分は、液体移送装置の遠位端に連結するために、そこから近位に突出する連結手段を含む、近位のキャップと、
c.少なくとも1つの導管をその中に保持するために、密閉された近位のキャップの中央部分から外側本体の内部に突出する針ホルダであって、導管は、鋭い尖った端部を含み、さらに孔を設けられ、流体移送作業中に液体が孔を通って移送される、針ホルダと、
d.外側本体の中空の内部で、往復移動可能な二重膜シール・アクチュエータとを有する。
【0042】
二重膜シール・アクチュエータは、
a.円筒形のアクチュエータ・ケーシングと、
b.ケーシングの近位端を密封する近位の膜と、
c.ケーシングの遠位端を密封する遠位の膜であって、遠位の膜の一部分がケーシングから遠位に突出する、遠位の膜と、
d.少なくとも2つの弾性のアームであって、アームの近位端においてケーシングの外側の中間部分に連結され、アームの遠位端において拡張要素を含む、弾性のアームとを含む。
【0043】
二重膜シール・アクチュエータが、コネクタ部の円筒形の本体の遠位端にあるとき、弾性のアームの拡張要素がコネクタ部の円筒形の本体の遠位のショルダ部分に押し込まれ、それによって流体移送構成要素の近位端にある膜囲壁がコネクタ部の遠位端にある開口に挿入でき、膜囲壁内の膜が二重膜シール・アクチュエータのケーシングから遠位に突出する遠位の膜の一部分に接触するまで進めることができるようになっている。
【0044】
遠位のショルダ部分の直径、及びアームの遠位端にある拡張要素の大きさが、二重膜シール・アクチュエータ及び流体移送構成要素を互いに向かって押すための軸線方向の力が加えられた場合、膜囲壁の側面が、アームの遠位端にある拡張要素が径方向内側に移動するのを防止するような、直径及び大きさとなっている。これにより、膜囲壁の側面が拡張要素に対して近位に移動するまで、遠位のアクチュエータの膜が膜囲壁内の膜に対して圧縮される。この時点で、拡張要素は、径方向内側に移動するための空間を有し、二重膜シール・アクチュエータの遠位のショルダ部分から解除され、膜囲壁の遠位の下側面に当接する。このようにして、遠位のアクチュエータの膜が、固定され、且つ圧縮された係合で、膜囲壁内の膜に対してロックされ、流体移送構成要素からのアクチュエータの係脱を防止し、アクチュエータ及び連結された流体移送構成要素が、コネクタ部の外側本体の中空の内部で往復可能に移動できる。
【0045】
アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素がコネクタ部の外側本体の中空の内部で近位に移動できる距離、及び2つの導管の長さが、アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素が近位に移動した場合、2つの導管の鋭い尖った端部がアクチュエータの遠位の膜、及び膜囲壁内の膜を貫通し、それによって、コネクタ部と流体移送構成要素との間の液体経路及び気体経路がそれぞれ確立されるような、距離及び長さとなっている。アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素がコネクタ部の外側本体の中空の内部で遠位に移動した場合、2つの導管の鋭い尖った端部がアクチュエータの遠位の膜、及び膜囲壁内の膜を通って引き抜かれ、それによって、コネクタ部と流体移送構成要素との間の液体経路及び気体経路がそれぞれ遮断される。
【0046】
二重膜シール・アクチュエータが、コンダクタ部の円筒形の本体の遠位端にある場合、2つの導管の鋭い尖った端部が二重膜シール・アクチュエータの近位の膜と遠位の膜との間に配置される。
【0047】
本発明のコネクタ部は、以下の、
固定された二重膜係合を行うために、請求項18のコネクタ部を流体移送構成要素に連結する方法であって、
a.コネクタ部の外側本体の遠位のショルダ部分の開口を流体移送構成要素の近位端の付近に配置するステップと、
b.コネクタ部の外側本体を遠位に移動させることによって二重膜係合動作を開始し、流体移送構成要素の近位端にある膜囲壁がコネクタ部の内部に受けられるまで行うステップと、
c.アクチュエータの遠位の膜が流体移送構成要素の近位端で膜囲壁内の膜に接触し、押し付けられるまで、外側本体を流体移送構成要素に対してさらに遠位に移動させるステップであって、このステップの間、二重膜シール・アクチュエータに取り付けられたアームの遠位端にある拡張要素が、膜囲壁の側面によってコネクタ部の外側本体の遠位のショルダ部分に保持され、それによって、アクチュエータがコネクタ部の外側本体内を近位に移動するのを防止する、ステップと、
d.膜囲壁の側面が拡張要素を通過することができるようにするために、アクチュエータの遠位の膜、及び第2の流体移送構成要素の近位端にある膜囲壁内の膜が共に十分に圧縮されるまで、外側本体を流体移送構成要素に対してさらに遠位に移動させるステップであって、それによって、アームが径方向内側に移動できるようになり、それによって、遠位のアクチュエータの膜が、固定され、且つ圧縮された係合で、膜囲壁内の膜に対してロックされ、流体移送構成要素からアクチュエータの係脱を防止し、アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素が、コネクタ部の外側本体の中空の内部で往復可能に移動できるようにし、アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素をコネクタ部の外側本体の中空の内部で近位に移動させた場合、少なくとも1つの導管の鋭い尖った端部がアクチュエータの遠位の膜、及び膜囲壁内の膜を貫通し、それによって、コネクタ部と流体移送構成要素との間の液体経路を確立し、アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素をコネクタ部の外側本体の中空の内部で遠位に移動させた場合、少なくとも1つの導管の鋭い尖った端部をアクチュエータの遠位の膜、及び膜囲壁内の膜を通って引き抜き、それによって、コネクタ部と流体移送構成要素の間の液体経路を遮断する、ステップとを実行することによって、固定された二重膜係合を行うために流体移送構成要素に連結できる。
【0048】
コネクタ部の構造が、ロック固定デバイス又は解除機構を設定する必要なしに、コネクタ部及び流体移送構成要素が1回の軸線方向の動作によって連結され、1回の軸線方向の動作によって係脱できるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例による有害薬剤を移送する装置の側面からの斜視図である。
【図2】図1の装置の概略垂直断面図である。
【図3】中空のピストン・ロッドのピストンへの取り付けを強化するためのリブの斜視図である。
【図4】薬剤のバイアルを有する図1の装置の解除可能な連結の垂直断面図での概略図である。
【図5】汚染のない流体の交換の前の、液体移送デバイスと連結された逆さにされたバイアルの垂直断面図での概略図である。
【図6】図4の装置の液体チャンバへの有害薬剤の移送の概略図である。
【図7】図2の移送装置からIVバッグへの有害薬剤の移送の概略図である。
【図8】本発明の汚染のない薬剤移送装置の別の実施例の垂直断面である。
【図9】図8に示される装置の汚染のない薬剤移送装置の実施例のコネクタ部の断面図である。
【図10】Aは図7に示される流体移送装置及びコネクタ部の断面図である。Bは流体移送装置及びコネクタ部を通る空気及び流体の通路を示す、図10Aの断面の拡大図である。Cは流体移送装置及びコネクタ部を通る空気及び流体の通路を示す、図10Aの断面の拡大図である。Dは流体移送装置及びコネクタ部を通る空気及び流体の通路を示す、図10Aの断面の拡大図である。
【図11】コネクタ部が連結できるバイアル・アダプタの斜視図である。
【図12】バイアル・アダプタの垂直断面図である。
【図13】図8の装置を使用する固定された二重膜係合作業を示す垂直断面図である。
【図14】図8の装置を使用する固定された二重膜係合作業を示す垂直断面図である。
【図15】図8の装置を使用する固定された二重膜係合作業を示す垂直断面図である。
【図16】図8の装置を使用する固定された二重膜係合作業を示す垂直断面図である。
【図17A】薬剤調合での最も一般的な用途を概略的に示す。
【図17B】薬剤調合での最も一般的な用途を概略的に示す。
【図18】薬剤を静脈内(IV)バッグに移送し、そこから移送するための流体移送装置と関連して使用されるスパイク・アダプタ、及びコネクタ部を示す断面図である。
【図19】図18に示されるスパイク・アダプタを使用して輸液バッグに取り付けられた流体移送装置を示す断面図である。
【図20】一方向吸気バルブを備えるスパイク・アダプタを示す断面図である。
【図21】図20に示されたスパイク・アダプタを使用して輸液バッグに取り付けられた流体移送装置を示す断面図である。
【図22】直接的に本発明の流体移送アセンブリから、直接的に患者の血流内に薬剤を移送するためのアダプタを示す断面図である。
【図23】図22のアダプタに取り付けられた流体移送装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、容器間で液体の汚染のない移送ができるようにする方法、及びその方法を実施するために用いられる移送装置及びアダプタの実施例を含むデバイスである。この方法の主な利点は、その簡単さに加えて、移送手順の段階において、液体、又は液体若しくは液体の気化物によって汚染された空気の周囲への漏れがまったくなく、同時に周囲からの汚染物質が液体と接触するようになることがまったくないことである。
【0051】
この方法は、本明細書では、1つの容器から第2の容器に液体を移送するように述べられるが、移送は、いくつかの容器の間で行うことができることを理解されたい。例えば、液体は第1の容器から引き出すことができ、次いでその一部分が5つの異なる容器に注入され、それに続いて液体の一部分を容器のうちの1つから引き出すことができ、次いで実質的に任意の順及び組合せ及び量で元の容器などに注入できる。
【0052】
本発明は特に、標準的なコネクタ・ポートを備えた任意の容器へ、及びその容器から、有害薬剤の汚染のない移送を行うようになされた装置を提供することを対象としている。
【0053】
液体を汚染なく移送する方法であって、移送は、液体の体積及び少なくとも等しい体積の気体を収容する第1の容器から、少なくとも容器内に移送される液体の量に等しい体積の気体を収容する第2の容器へ行われる、本発明の方法は、以下の、
a)流体移送装置を提供するステップであって、流体移送装置は、密閉容器と、気体チャネルの第1セグメントと、液体チャネルの第1セグメントとを含み、密閉容器は、密閉容器の内部を2つの別個の液密チャンバに分割する可動の内部仕切りを有し、液密チャンバの容積が可変となっており、チャンバのうちの一方が気体チャンバであり、チャンバのうちのもう一方が液体チャンバであり、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの近位端が、気体チャンバ及び液体チャンバの内部とそれぞれ流体連通し、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端が、密封手段によって密閉されている、ステップと、
b)気体チャネルの第2セグメント、及び液体チャンバの第2セグメントを提供するステップであって、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの遠位端が、第1の容器の内部と流体連通し、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端が、密封手段によって密閉されている、ステップと、
c)気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端が、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端において密封手段を貫通し、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端において密封手段を貫通し、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端に入るまで、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端を気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端の方向に押すステップであって、それによって第1の容器の内部と気体チャンバの内部との間の連続的な気体チャネル、及び第1の容器の内部と液体チャンバの内部との間の別個の連続的な液体チャネルを提供する、ステップと、
d)第1の容器内の気体の圧力と気体チャンバ内の気体の圧力との間、及び第1の容器内の液体に働く圧力と液体チャンバ内の液体に働く圧力との間に平衡を確立するステップと、
e)液体チャンバの容積を増加させ、液体チャンバ内の圧力を瞬時に減少させ、同時に気体チャンバの容積を減少させ、気体チャンバ内の気体の圧力を瞬時に増加させるために、内部仕切りを第1の方向に移動するステップであって、内部仕切りを移動させることによって生じた圧力差により、液体を第1の容器から連続的な液体チャネルを通って液体チャンバに流入させ、同時に等しい体積の気体を気体チャンバから連続的な空気チャネルを通って第1の容器に流入させ、一方の方向への液体の流入、及び同時に起こる別の方向への気体の流入が、内部仕切りの移動を止め、平衡が再確立されるまで続く、ステップと、
f)気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端を、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端から引き抜くことによって、流体移送デバイスから第1の容器を切り離すステップであって、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端にある密封手段を通して引き抜くことによって、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの端部を密閉し、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端にある密封手段を通して引き抜くことによって、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの端部を密閉する、ステップと、
g)気体チャネルの第3セグメント、及び液体チャネルの第3セグメントを提供するステップであって、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの遠位端が第2の容器の内部と流体連通し、気体チャネル及び液体チャネルの第3のセグメントの近位端が密封手段によって密閉されている、ステップと、
h)気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端が、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端において密封手段を貫通し、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端において密封手段を貫通し、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端に入るまで、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端を気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端の方向に押すステップであって、それによって、第2の容器の内部と気体チャンバの内部との間の連続的な気体チャネル、及び第2の容器の内部と液体チャンバの内部との間の別個の連続的な液体チャネルを提供する、ステップと、
i)第2の容器内の気体の圧力と気体チャンバ内の気体の圧力との間、及び第2の容器内の液体に働く圧力と液体チャンバ内の液体に働く圧力との間に平衡を確立するステップと、
j)液体チャンバの容積を減少させ、液体チャンバ内の圧力を瞬時に増加させ、同時に気体チャンバの容積を増加させ、気体チャンバ内の気体の圧力を瞬時に減少させるために、内部仕切りを第2の方向に移動するステップであって、内部仕切りを移動することによって生じた圧力差により、液体を液体チャンバから連続的な液体チャネルを通って第2の容器に流入させ、同時に等しい体積の気体を第2の容器から連続的な空気チャネルを通って気体チャンバに流入させ、一方の方向への液体の流入、及び同時に起こる別の方向への気体の流入が、内部仕切りの移動を止め、平衡が再確立されるまで続く、ステップと、
k)気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端を、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端から引き抜くことによって、流体移送デバイスから第2の容器を切り離すステップであって、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端にある密封手段を通して引き抜くことによって、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの端部を密閉し、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端にある密封手段を通して引き抜くことによって、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの端部を密閉する、ステップとを含む。
【0054】
本発明方法を実施するために使用されるデバイスの例示的な実施例が、本明細書に下記に述べられている。
【0055】
図1は、本発明の一実施例による、周囲を汚染せずに有害薬剤を移送するための装置10の斜視図を示す。装置10の近位部27は、本質的に従来の注射器である。それは、所望の体積の有害薬剤を、例えばバイアル14又は静脈内(IV)バッグなどの、薬剤が収容されている流体移送構成要素から引き出し、次いで別の流体移送構成要素に薬剤を移送するように構成されている。
【0056】
移送装置10のコネクタ部25’は、適切にバイアル14のヘッド部20を囲むように寸法を決められた一体の遠位カラー18、カラー18内にバイアル14のヘッド部20を解除可能に係合するためのロック要素22a及び22bを含む。装置10の近位部27は、シリンダ24、シリンダ24よりもかなり小さな直径を有し、シリンダ24からカラー18に延出する環状のスロート26、シリンダ24の近位端に嵌合された環状のゴム・ストッパ28、ストッパ28を密封して通過する中空のピストン・ロッド30、及び使用者がそれによってピストン・ロッド30をストッパ28を通して上下に押したり引いたりすることができる近位のピストン・ロッド・キャップ32を含む。カラー18及びシリンダ24は、例えばプラスチックなどの剛体の材料から作製される。
【0057】
図2は、移送装置10の概略断面図を示す。図示されるように、ピストン・ロッド30は、キャップ32からピストン34へ延出し、シリンダ24の内壁に密封式に係合し、シリンダ24に対して移動可能である。分離要素36が、スロート26の内側にあり、スロート26と一体に形成される。ピストン34は、可変の体積の2つのチャンバを画成する。それは、ピストン34の遠位の面と分離要素36の間の遠位の液体チャンバ38、及びピストン34の近位の面とストッパ28の間の近位の空気チャンバ40である。円錐台形の形状を有する変形可能な膜42が、その基部で分離要素36に堅固に取り付けられ、カラー18の遠位端44に遠位に延出する。膜42は、完全に2つの導管46及び48を囲み、変形されていない構成のときは、移送装置10の内部を周囲から効果的に分離するように機能する。導管46及び48は、分離要素36を通過し、分離要素36に堅固に接着される。カラー18の遠位端44から実質的に等しく間隔を置いて配置された導管46及び48の遠位端46a及び48aは、それぞれ、鋭く尖った端部を有する。細長い導管46は空気導管であり、中空のピストン・ロッド30を貫通して延出する。ピストン・ロッド30は、遠位の孔50と共に形成され、それによって導管46を通って流れる空気が、ピストン・ロッド30の内部から孔50を通って空気チャンバ40に出ることが可能である。導管48は液体導管であり、それを通って有害薬剤の溶液がバイアル14から移送装置10に流れることができ、その逆も可能である。導管48は、導管46よりもかなり短く、液体チャンバ38内で終端する。
【0058】
図3に示されるように、ピストン・ロッド30は、ピストン34と係合された、例えばプラスチックから作製される環状のディスク52によって、ピストン34に取り付けることができる。複数の補強リブ54が、ディスク52の近位面に取り付けられ、中央のスリーブ56が各リブ54に連結され、それによってピストン34がシリンダ24と密封結合しながら、ピストン・ロッド30がスリーブ56を通過できる。図示されない空気導管は、ピストン34を通過し、ピストン・ロッド30の内部に延出する。
【0059】
図4は、移送装置10をバイアル14のヘッド部20に連結することを示す。ヘッド部20は、バイアル14内に収容された有害薬剤60が外側に漏洩するのを防止するための、中央のシール58(図1参照)を設けられている。
【0060】
連結する前に、移送装置10及びバイアル14を、近づくように移動させる。カラー18の外壁に連結されたロック要素22a及び22bを曲げ、バイアル14のヘッド部20がカラー18に入ることができるようにする。バイアル14のヘッド部20がカラー18によって画成されたキャビティ内に導入され、膜42の遠位端がバイアル14のヘッド部20のシール58に押し付けられる。ヘッド部20を続けてカラー18に押し込むと、円錐形の膜42がその基部に向かってつぶれ、導管46及び48が膜42及びシール58の両方を貫通し、バイアル14の内部、移送装置10内の空気チャンバ40、液体チャンバ38の間の流体連通が確立する。ヘッド部20がカラー18に強固に押し込まれると、ロック要素22a及び22bのそれぞれ尖った端部62a及び62bが、ヘッド部20の遠位端64に係合する。これにより、移送装置10がヘッド部20に堅固にロックされ、膜42がシール58に強固に押し付けられて保持され、それによって移送装置及びバイアルの内部の汚染を防止し、同時に、それらの中の流体が周囲に漏れるのを防止する。
【0061】
導管46及び48が、膜42及びバイアル14のシール58を貫通すると、2つの交互の流体通路が形成される。第1の通路は、バイアル14、空気導管46、及び空気チャンバ40の内部によって画成される空気の通路である。第2の通路は、バイアル14、液体導管48、及び液体チャンバ38の内部によって画成される液体の通路である。薬剤60によって占有されないバイアル14の内部は、下記に説明するように、内部の近位部分をどちらの流体が占有するかに応じて、空気用又は液体用の通路として交互に機能することができる。2つの流体通路が移送装置10及びバイアル14の内部にあるので、それらの間の液体移送作業には汚染がない。
【0062】
安全対策として、ロック要素22a及び22bの使用によって、固体のリング(図示されない)を円錐形の膜42の周りに嵌合して、移送装置10の遠位端に取り付けることができる。ロック要素がリングと係合する場合、円錐形の膜42の圧縮が防止される。したがって、導管46及び48は膜42を貫通することも防止され、それによって導管の端部を周囲に露出し、使用者に害を与えることを回避する。固体のリングが取り外されると、上記に説明したように、円錐形の膜42を圧縮することが可能になり、移送装置10をバイアル14のヘッド部20に連結することが可能になる。
【0063】
空気チャンバ40内の空気、及びバイアル14の内部空間60に保持された空気又は任意のその他の気体の最初の圧力は、大気圧よりもわずかに高く、又はわずかに低いことがある。空気チャンバ40内の空気とバイアル14の内部66の気体との間に最初の圧力差がある可能性があるが、膜42及びシール58が貫通されるとき、空気通路内の圧力が即時に平衡を達成する。この段階の間、液体導管48も、バイアル14の内部66の近位部分を占有する空気と連通し、したがって移送装置の液体チャンバ38も実質的に同じ均一の圧力にある。
【0064】
図5に示されるように、連結された移送装置10及びバイアル16は、次いで逆さにされ、液体の薬剤をバイアル14から移送装置10へ双方向に交換し、同時に空気を移送装置10からバイアル14へ双方向に交換することを可能にする。バイアル14が逆さにされるので、薬剤60は、重力によって下降し、バイアル14の近位部分を占有する。チャンバ40の空気圧は、実質的に薬剤60に加わる圧力と等しいので、薬剤60は空気導管46及び液体導管48を通って流れるのが防止される。
【0065】
液体通路が図6に示される。ピストン・ロッド・キャップ32が近位に移動されるとき、液体チャンバ38の体積が増加し、吸引によって液体の薬剤が引かれて、バイアル14から導管48を通って移送装置10内の液体チャンバ38に入る。バイアル内の薬剤の全部の量、又はその任意の所望の部分が、液体チャンバ38に移送できる。ピストンが近位に引かれて、液体をバイアル14から移送するので、空気チャンバ40の体積は同時に減少し、チャンバ40内の空気を導管46を通してバイアル14の内部66に流す。バイアル14に流入する空気は、送出された液体の体積をもつ。空気はピストンが移動を止めるまで、導管46を通ってバイアルに流入し続け、空気チャンバ40内及びバイアル14の内部の圧力が再び平衡に達する。
【0066】
所望の量の薬剤が液体チャンバ38に移送された後に、図4を再び参照して、ロック要素22a及び22bがバイアル14のヘッド部20から解除される。次いで、移送装置10は別の軸線方向の動作、即ち軸線方向に離して引かれることによってバイアル14から分離される。バイアルを移送デバイスから分離するとき、導管46及び48はバイアル40のシール58及び移送装置10の遠位端の膜42を通って引き抜かれる。これが起こるとき、導管46及び48の遠位端46a及び48a(図2)はそれぞれ、シール58によって拭われ清浄される。有害薬剤60の残留するどのような小滴も、導管から除去され、バイアル14の内部のシール58の内面に残り、したがって周囲の空気に露出されない。膜42は、同時に、図2に示される元の位置に戻り、それによって空気チャンバ40内の薬剤及び液体チャンバ38内の薬剤と接触し汚染された空気を密封する。
【0067】
図7は、移送装置10からIVバッグ74への有害薬剤の移送を概略的に示す。アダプタ70が、最初にIVバッグのポート72に取り付けられる。IVバッグには、IVバッグからの液体の漏洩を防止するゴム・シール76を設けることができる。アダプタ70は中央のボア78を有し、その中にポート72が挿入され、複数のフィン80がボア軸を通過する平面に配置される。アダプタ70は、入口ポート78の周りに装着され、フィン80がプレス嵌めによって入口ポート72の外壁82に接触する。アダプタ70は、バイアル14のヘッド部20(図2)と実質的に同じ形状及び寸法を有するヘッド部84にも設けられる。
【0068】
IVバッグがアダプタ70の下になるように逆さにされる。この向きでは、IVバッグ内に保持された気体の媒体、例えば空気が液体の上にある。次いで、移送装置10は、移送装置10の遠位端でカラー18にアダプタ70のヘッド部84を押し込むことによってアダプタ70に連結される。アダプタ70のヘッド部84が、カラー18によって画成されたキャビティ内に導入され、膜42の遠位端がIVバッグ74のポート72のネック内のゴム・シール76に押し付けられる。ヘッド部84を続けてカラー18に押し込むと、円錐形の膜42がその基部に向かってつぶれ、導管46及び48が膜42及びシール58の両方を貫通し、IVバッグ74の内部、及び移送装置10内の空気チャンバ40、及び液体チャンバ38の間の流体連通が確立する。ヘッド部84がカラー18に強固に押し込まれると、ロック要素22a及び22bの尖った端部が、ヘッド部84の遠位端86に係合する。これにより、移送装置10がアダプタ84に堅固にロックされ、膜42がシール76に強固に押し付けられて保持され、それによって移送装置及びIVバッグの内部の汚染を防止し、同時に、それらの中の流体が周囲に漏れるのを防止する。移送装置10がアダプタ70に連結された後に、使用者は遠位の力をロッド・キャップ32に加える。したがって、ピストン34は、分離要素3に向かって遠位に移動する。ピストンが移動すると、移送装置10の液体チャンバ38に収容された有害薬剤がポート72を通ってIVバッグに押し込まれる。同時に、液体の薬剤がIVバッグに移送されると、空気チャンバ40の体積は増加し、IVバッグ内に保持された気体の媒体、例えば空気が、吸引によって空気チャンバ40に移送される。ピストンが移動を止め、空気チャンバ40内及びIVバッグ内の圧力が平衡に達したとき、空気が導管46を通って流れるのを止める。必要量の薬剤がIVバッグ内に放出された後に、ロック要素22a及び22bの近位端がカラー18をアダプタ70のヘッド部84から解除するために内側に押される。移送装置10が、ゆっくりと引かれてアダプタ70から離れる。この分離が行われるとき、導管46及び48がシール51を通って引き戻され、シール51はIVバッグ74からの漏れ、及び膜42を通る漏れを防止するための流体バリアとして機能し続け、膜42は円錐形状に戻り、液体移送装置10の内部を周囲から分離する。
【0069】
移送装置10は、IVバッグから液体を引き出すためにも使用できる。これを行うために、カラー18がアダプタ70に連結された後に、IVバッグは、移送装置10の上になるように逆さにされる。次いで、ピストン・ロッド・キャップ32を近位に移動させ、それによって同時に所望の液体をIVバッグから液体チャンバ38に移送し、空気チャンバ40からの空気をIVバッグの内部に移送する。
【0070】
別の実施例では、アダプタは、輸液セットの配管がそれに連結できるIVバッグのポートと同様の第2のポートを備え、移送装置10がそれに対して連結できる、バイアル14のヘッド部20(図2)と実質的に同じ形状及び寸法を有するポートを備える、IVバッグのポート内のシールを突き通すための中空の二重のカニューレ・スパイク要素を備えることができる。
【0071】
図8は、本発明の汚染なく薬剤を移送する装置10の別の実施例の垂直断面図である。本発明のこの実施例では、装置10の近位部27は、上記に述べた第1の実施例の近位部と同一である。
【0072】
図9に示されるように、コネクタ部25は、近位のキャップ113から近位に突出し、スロート26を囲むカラー124によって近位部27のスロート26に連結される。スロート26及びカラー124は、製造時に単一の要素として共に形成され、又は例えば糊付け又は溶接によって共に永久的に取り付けられ、又はネジ係合若しくはルアー・コネクタなどの連結手段と共に形成される。コネクタ部は、圧縮可能であり、且つ往復可能な二重膜シール・アクチュエータを含む。二重膜シール・アクチュエータは、第1の遠位の位置に配置された場合、針が隠される通常の弛緩構成(relaxed configuration)をとり、近位に移動された場合、圧縮されて針を露出する。コネクタ部25は、別の流体移送構成要素に解除可能に連結されるように構成され、その構成要素は、薬剤バイアル、静脈内バッグ、又は流体がそこを通り、流体移送構成要素間で移送される「流体移送アセンブリ」を形成するための静脈内ラインなどの標準的なコネクタを備える任意の流体容器であってもよい。
【0073】
図9に示されるように、コネクタ部25は、円筒形の中空の外側本体128と、本体128から径方向に突出し、流体移送構成要素の近位端が連結のためにそこを通して挿入される開口126で終端する遠位のショルダ部分129と、本体128の内部で往復移動可能な二重膜シール・アクチュエータ130と、円筒形のアクチュエータ・ケーシング137の中間の部分に、その近位端で連結された弾性のアーム133及び134と、コネクタ部25の内部119内に、その密閉された近位のキャップ113の中央部分から突出する針ホルダ115に保持された固定式の空気導管46及び液体導管48とを備える。針ホルダ115は、外側本体128及び近位のキャップ113の一部分であり、そこに針が接着される。
【0074】
導管46及び48は、針ホルダ115から遠位に延出し、アクチュエータ130の膜142を突き通す。導管46及び48の遠位端はそれぞれ、鋭い尖った端部46a及び48aを有し、さらにそれぞれ孔111及び112を設けられ、流体移送作業中に流体がそこを通って移送される。空気導管46の近位端は流体移送ユニット10の内部の中を延出するが、液体導管48の近位端は、液体導管が流体移送ユニット10のスロート26の内部と流体連通するように、コネクタ部25のキャップ113において、又はそこからわずかに近位に終端する。
【0075】
本明細書で上記に説明されたように、流体は、同じ体積の有害薬剤及び空気が流体移送アセンブリの内部で交換される圧力平衡構成によって移送される。流体移送ユニット10は、キャップ52からピストン34に延出する中空のピストン・ロッド30を備え、バレル24の内壁に密封式に係合し、バレル24に対して移動可能である。ピストン34は、可変の体積の2つのチャンバを画成する。それは、ピストン34とコネクタ部25との間の遠位の液体チャンバ38、及びピストン34とストッパ28との間の近位の空気チャンバ40である。空気導管46は、ピストン34を通過し、中空のピストン・ロッド30の内部に延出する。導管46を通って流れる空気は、ピストン・ロッド30の内部に入り、ピストン・ロッド30の遠位端に形成された孔50(図10Cに示される)を通って空気チャンバ40を出る。空気導管46よりもかなり短い導管48は、薬剤の溶液が液体チャンバ38に流入できるように構成されている。
【0076】
二重膜シール・アクチュエータ130は、矩形断面を有する近位のディスク形状の膜142、及びT字形断面を有する遠位の二重ディスク形状の膜143を含み、その膜143は、矩形の近位部分144及び近位部分144に対して径方向内側に配置される遠位部分147を有する。膜142及び143は、ケーシング137内に設置され、遠位部分147はケーシング137から遠位に突出する。等しい長さのアーム133及び134が、伸長され、実質的に長手方向に配置され、それぞれ連結点161’及び162’でケーシング37に取り付けられている。アーム33及び34は、それぞれ遠位の拡張要素161及び162で終端する。弾性のアーム133及び134は、そうすることが妨げられない限り、拡張要素161及び162の間の距離が、コネクタ部25の直径よりも拡張されるように設計される。拡張要素161及び162は、アクチュエータ130が第1の遠位の位置に配置された場合、ショルダ部分129内に受け入れられ、係合されるように構成される。アクチュエータ130が、この第1の位置にある場合、尖った端部46a及び48aが膜142及び143の間に保持され、使用者が尖った端部にさらされ、負傷するのを防止し、同時に導管46及び48の端部を周囲から密封し、それによって流体移送ユニット10の内部の汚染、及びユニット10の内部の中に含まれる有害な薬剤の周囲への漏洩を防止する。
【0077】
図10Aは、本発明の流体移送装置10の断面図である。図10B、図10C、及び図10Dは、流体移送装置を通る空気及び流体の通路を示す、図10Aの断面B、C、及びDの拡大図である。10Bを参照すると、液体導管48がどのように近位のキャップ113、移送装置10の円筒形の壁24のスロート部26を通過し、遠位液体チャンバ38の内部に終端するかがわかる。図109Cでは、液体チャンバ38の近位端がどのようにピストン34の遠位表面によって画成されているかがわかる。空気導管46は、液体チャンバ38を通過し、図10Cでは、ピストン34、ディスク52、及び補強リブ54を通過し、中空のピストン・ロッド30の内部に入ることがわかる。導管46は、デバイス10の円筒形部分24の最上部付近で終端する。導管46の遠位端で入る空気は、遠位端でのみ出ることでき、そこでは、空気が中空のピストン・ロッド30の内部に侵入する。図10Cでは、空気が近位の空気チャンバ40に入ることができるようにする、ピストン・ロッド30の底部で、1つ又は複数の孔50があることがわかる。図10B及び10Cでそれぞれわかるように、空気チャンバ40の遠位端がピストン34の近位の表面によって画成され、その近位端はゴム・ストッパ28の遠位の表面によって画成される。図10Aから図10Dで、例えば近位の方向にピストンが移動すると、液体チャンバ38の体積が増加し、空気チャンバ40の体積が同じ量だけ減少することが理解できる。移送装置10のゴム・ストッパ28及びピストン34、並びにコネクタ部25の膜142及び143は、ピストン・ロッド30、空気導管46、及び液体導管48が、それぞれストッパ、ピストン、又は膜によって密閉されたボリュームの内部を外側と分離する流体シールを維持しながら、それらを通って摺動できるようにする従来の自己密封タイプであることに留意されたい。
【0078】
図11及び図12は、それぞれ、バイアル・アダプタ160の斜視図及び断面図を示す。バイアル・アダプタ160は、コネクタ部25を薬剤バイアル14、又は適切な形状及び寸法にされたポートを有する任意のその他の構成要素に連結するために使用される中間の連結である。バイアル・アダプタ160は、流体移送デバイスの第1の実施例と共に使用することもできる。バイアル・アダプタを導入する主な理由のうちの1つには、市販の薬剤バイアルの最上部を密封する膜58の最上部の外表面が一般に円滑でないことがある。したがって、バイアル・コネクタを使用して、薬剤を汚染なく移送するのに必要な、コネクタ部25の遠位端での膜143の遠位部分147と円滑なシール同士の接触を行う。さらに、膜58が一般的に作製される材料は特性が十分でなく、即ちそれが針によって突き通される場合、数回刺通された後にくずれて(disintegrate)、漏れを起こす。
【0079】
バイアル・アダプタ160は、環状の近位のキャップ168を設けられたカラー部165、及びキャップ168から近位に突出する長手方向の延長部169を含む。長手方向の延長部169は、バイアル・アダプタを使用する第2の理由である。それは、従来の薬剤バイアルのネックよりもはるかに長く、したがって以下に説明するように、薬剤の移送ができるようにするためにコネクタ部25の遠位端で開口126に嵌入する。カラー部分165は、バイアル14のヘッド部20への固定を促進するための、その内側の面の凸リップ163と共に形成された複数の円周部のセグメント167から成る。長手方向の延長部169は、延長部169の直径よりも大きな直径を有する膜囲壁171によって近位に終端する。膜囲壁171は、近位の中央の開口172を有し、それによって、そこに保持される膜176がアクセス可能となる。
【0080】
膜176から遠位に延出する2つの長手方向のチャネル178及び179は、長手方向の延長部169の内部に形成され、それぞれ導管46及び48を受け入れるように構成される。膜囲壁171には、スロットがあり、コネクタ部25の、円筒形の中空の外側本体128の内側には、稜部又はピンがある(スロットも稜部も図には示されない)。連結する間、稜部/ピンは、スロット内に入り、摺動しなければならず、任意のその他の方向に対しては、稜部/ピンは、膜囲壁171に接触し、さらなる連結の動きを阻止する。稜部/ピン及びスロットは、導管46及び48が常に、長手方向の延長部169内のそれらの指定されたチャネルに入るように、それぞれの部分に配置される。長手方向の延長部169はキャップ68から遠位に突出するスパイク要素177によって遠位に終端する。スパイク要素77は、それぞれチャネル178及び179と連通する開口188及び189によって形成される。
【0081】
バイアル14は、中央の近位のシール58を有し、シール58は、収容された薬剤の外側への漏洩を防止するように構成される。遠位の力がバイアル・アダプタ160に加えられるとき、スパイク要素がバイアル14のシール58を突き通して、チャネル178及び179が薬剤バイアル14の内部と連通できるようにする。これが起こるとき、カラー部分165の円周部のセグメント167が、バイアル14のヘッド部20と確実に係合する。バイアル14の膜58が突き通された後に、それはスパイク177の周りを密封し、バイアルの外へ薬剤が漏洩するのを防止する。同時に、チャネル178及び179の頂部が膜176によって密封され、空気がバイアル14の内部に入り、又は薬剤がそこから出るのを防止する。
【0082】
図13から図16は、それぞれ、アクチュエータ30によって可能となる、固定された二重膜係合手順を示す。図示されるように、アクチュエータ130の遠位の膜143は、バイアル・アダプタ160の膜176と固定係合されるが、固定係合作業は、任意のその他の適切な流体移送構成要素と共に実行できることを理解されたい。手順は、以下のように実行される。ステップ1−バイアル・アダプタ160の膜囲壁171がコネクタ部25の遠位開口126の近くに配置される。ステップ2−二重膜係合手順が、コネクタ部25の遠位に移動する本体128によって開始され、バイアル・アダプタ160の膜囲壁171及び延長部169がコネクタ部25の内部119の遠位端に入るまで行われる。ステップ3−アクチュエータ30の膜143がバイアル・アダプタ160の固定膜176に接触し、本体128のさらなる遠位の移動によって押し付けられる。膜が互いに強固に押し付けられた後に、拡張要素161及び162がショルダ部分129から解除される。この段階では、膜143及び176は、拡張要素161及び162によって互いに押し付けられて保持され、アクチュエータ130が、相対的な近位の移動によりバイアル・コネクタ160から係脱することが防止される。ステップ4−導管46及び48の先端が膜143及び176を突き通し、バイアル14の内部と流体連通するまで、本体128のさらなる遠位の移動により、アクチュエータ130が本体128に対して近位に移動する。これらの4つのステップは、コネクタ部25がバイアル・アダプタ160に対して遠位に移動されるとき、1つの連続的な軸線方向の動作によって行われ、それらのステップは、コネクタ部25を固定して保持しバイアル・アダプタ160を遠位に移動することによってバイアル・アダプタ160からコネクタ部25を分離するために、逆に行うことができる。手順は4つの別個のステップを含むものとして本明細書に説明されるが、これは手順を説明するのを容易にするために過ぎないことを重要な点として強調しておきたい。実際には、本発明を使用した固定された二重膜係合(及び係脱)手順は、単一の円滑な軸線方向の移動を使用して実行されることが理解されよう。
【0083】
流体移送装置10が取り付けられるコネクタ部25を、バイアル14が取り付けられるバイアル・アダプタ160に連結する手順の第1のステップは、図13に示される。図13に示される段階では、二重膜シール・アクチュエータ130は、その第1の、コネクタ部25の遠位端で遠位の位置にあり、バイアル・アダプタ160の膜囲壁171の近くに移動させられる。図13に示される、流体移送装置10、コネクタ部25、バイアル・アダプタ160、及びバイアル14のすべての要素は、図9及び図12を参照して上記に説明されている。
【0084】
図14は、固定された二重膜係合手順の第2のステップを示す。自然な傾向により可撓性アーム133及び134が拡張された部分を側方に外側に向かって押し、拡張要素161及び162がショルダ部分129に保持されるとき、膜囲壁171の直径は、拡張要素161及び162との間の間隔よりも小さい。これによって、膜囲壁171が119の内部に難なく進入することができる。コネクタ部25がバイアル・アダプタ160の方向に押されると、拡張要素161及び162がショルダ部分129に保持され、膜囲壁171の側面によって内側に移動するのが防止される。ショルダ129の上方の表面131及び132は、それぞれアーム133及び134の遠位部分と接触し、それらがコネクタ部25の本体128に対して近位に移動するのを防止する。
【0085】
図15は、固定された二重膜係合手順の第3のステップを示す。コネクタ部25がさらに遠位に移動すると、T字型膜143の遠位の膜部分147が、膜囲壁171の中央の開口172(図11)に入る。遠位の膜部分147は、バイアル・アダプタの膜176に接触し、濃い領域194によって概略的に表されるように、2つの膜は、互いに対して圧縮される。膜が共に押し付けられている間、アクチュエータ130がコネクタ25の本体128へ上昇して入れるようになることが、拡張要素161及び162によって防止される。拡張要素161及び162は、バイアル・アダプタ60の膜囲壁171の外側表面によって、コネクタ25の本体28の壁の遠位のショルダ部分129から出ることが防止される。コネクタ部25及びバイアル・アダプタ160を共に押すためにより大きな力が加えられると、膜の圧縮量が増加して、膜囲壁171の側面が拡張要素61及び62を過ぎて移動するまで、長手方向の延長部169及び膜囲壁171が移動して119のさらに内部に入る。拡張要素161及び162は、もはや膜囲壁によって阻止されなくなった後に、径方向内側に移動でき、ショルダ部分129から解除され、膜囲壁171の遠位の下側面181に当接する。この段階で、2つの膜143及び147が固定結合及び圧縮結合の状態で互いにロックされる。
【0086】
図16は、固定された二重膜係合手順の第4のステップを示す。拡張要素161及び162は、コネクタ部25のショルダ部分129から解除され、コネクタ部の本体128の内壁によって側方に外側に移動するのが防止される。これによって、バイアル・アダプタの膜囲壁171が、二重シール・アクチュエータ130に固定して取り付けてられて維持される。コネクタ部25がバイアル・アダプタ160に対してさらに遠位に移動すると、二重膜シール・アクチュエータ130及び取り付けられたバイアル・コネクタ160がコネクタ部25の内部119において近位に移動する。導管46及び48はコネクタ部25の近位端で針ホルダ115に固く固定されるので、二重膜シール・アクチュエータ130が近位に移動すると、導管46及び48の尖った遠位端46a及び48aが、バイアル・コネクタ160内の長手方向のチャネル178及び179に入るまで、ダイアフラム143及び176を貫通して漸進的に押し出される。バイアル・コネクタ160がバイアル14に予め連結されているので、スパイク177はバイアル14の最上部で膜165を貫通し、したがってこの時点で2つの独立の流体通路がそれぞれ、バイアル14の内部、遠位の液体チャンバ38、流体移送装置10内の近位の空気チャンバ40の間で確立される。
【0087】
図16に示されるように、拡張要素161及び162の近位の内部表面が膜囲壁171の平らな下側面に係合し、外側に移動することが防止される。したがって、膜囲壁171が通常の取り扱いの下でコネクタ部から不意に係脱することが防止される。しかし、バイアル・アダプタが固定位置に保持されている間、流体移送装置に比較的大きな規模の垂直の力が加えられると、本明細書で下記に説明されるように、バイアル・アダプタが二重膜シール・アクチュエータから係脱する可能性がある。
【0088】
図17A及び17Bは、薬剤調合での2つの最も一般的な適用を概略的に示す。図17Aは、バイアルに液体を注入することを示し、図17Bは、液体をバイアルから引き出すことを示す。図17Bでは、空気チャンバ40から空気導管を通ってバイアルに入る空気によって生成された気泡が示される。一般的な用途では、薬剤を患者に投与するプロセスの第1の段階は、病院の薬局で行われる。第1のステップでは、薬剤師は、例えば蒸留水などの希釈液(溶媒)を含むバイアル14に予め連結されたバイアル・アダプタ160に装置10のコネクタ部25を連結するために、本明細書で上述された、固定された二重膜係合手順を使用する。この段階では、ピストン34はその最も遠位の位置にあり、液体チャンバ38は空である。次に、移送装置10は、図17Bに示されるように保持され、薬剤師は、流体移送装置10の流体チャンバ38を測定された量の希釈液で満たす。次いで、第1のバイアルが、液体移送装置10から切り離され、粉末又は濃縮液の形の薬剤を含む第2のバイアルが取り付けられる。この段階では、装置10の液体チャンバ38は、希釈液で満たされ、バイアル14の内部は、粉末又は液体の薬剤で部分的に満たされる。次いで、装置は、図17Aに示されるように底部でバイアルによって垂直に保持される。次いで、薬剤師はピストン・ロッド・キャップ32を押し下げて、ピストン34を遠位に押しやり、液体を液体チャンバ38から押し出し、導管48及びチャネル179(図16を参照されたい)を通してバイアル14内に入れる。同時に、液体チャンバ38の体積が、ピストンを遠位に移動することにより減少すると、空気チャンバ40の体積が増加する。これにより、空気チャンバ内に一時的な負圧状態が形成され、したがってバイアル14内の空気(又は不活性ガス)がチャネル178及び導管46を通って空気チャンバ40に吸い込まれる。さらに、同時に、液体がバイアルに加えられると、バイアル内の空気に使用可能な体積が減少し、一時的な正圧状態を形成し、したがって空気がバイアル14からチャネル178及び導管46を通って、前述したように一時的な負圧状態にある空気チャンバ40内に押しやられる。すべての液体がバイアルに加えられた後に、薬剤を完全に溶解するために、装置が徹底的に振り混ぜられる。この後、薬剤師は図17Bに示されるように、装置を逆さにし、ピストン・ロッド・キャップを近位方向に引き、必要量の薬剤をバイアルから引き出し、移送ユニット10の液体チャンバ38に入れる。同時に液体チャンバを満たし、空気チャンバを空にするための液体及び空気の流れは、図17Aに説明されるものと反対の方向になっている。
【0089】
移送装置10が必要量の薬剤で満たされた後に、薬剤師は装置10のコネクタ部からバイアル・アダプタを係脱し、専用のアダプタを通して輸液バッグ内に薬剤を注入し、又は専用のアダプタを通して患者に薬剤を投与する区域に移送ユニットを送る。流体移送装置10のコネクタ部25からバイアル・アダプタ160を係脱するために、4段階の固定された二重膜係合手順が逆順で連続的に行われる。即ち、バイアル・アダプタ160及びコネクタ部25が堅固に把持され、軸線方向の力がそれらを反対方向に引くために加えられる。これにより、アクチュエータ130がコネクタ部25の内部119内で遠位に移動される。拡張要素161及び162の外側表面はコネクタ部の本体128の内壁表面と接触しているので、二重膜シール・アクチュエータ130及びバイアル・アダプタ160は、コネクタ部25の遠位端に向かって共に移動する。導管46及び48は、コネクタ部の本体128の近位端で針ホルダ115に堅固に取り付けられている。したがって、シール・アクチュエータ130が本体128内で遠位に移動すると、導管46及び48の遠位端46a及び48aは、それらが膜143と130の間の元の位置に戻るまで、ダイアフラム143及び176を通って漸進的に引き戻される。アクチュエータ130がコネクタ部25の内部119の遠位端に達すると、弾性のアーム133及び134が自然な傾向によってショルダ部分129内で拡張部分を側方に外側に向かって押し、拡張要素161及び162は外側に移動する。このようにして、バイアル・アダプタ160の膜囲壁171が二重膜シール・アクチュエータ130から分離される。
【0090】
図18は、静脈内(IV)バッグへ、及び静脈内(IV)バッグから薬剤を移送するための流体移送装置10と共に使用されるスパイク・アダプタ200を示す断面図である。スパイク・アダプタ200は、近位端のスパイク要素177、及び遠位端で輸液セットを連結するためのスパイク・ポートへの標準的な「ツイスト・オフ」端部204で終端する本体200を備える。実質的に長手方向の延長部169が本体202に直角になっている。長手方向の延長部169の端部には膜囲壁171及び膜176がある。これらの要素は、スパイク要素177の先端から膜176への2つの別個のチャネル178及び179の存在を含む図11のバイアル・アダプタ60に対して上記に説明されたものとまったく同様である。
【0091】
図19は、図18に示されたスパイク・アダプタを使用する輸液バッグ206に取り付けられた流体移送装置10を示す断面図である。上述のシナリオで続けると、スパイク要素177が輸液バッグ206のスパイク・ポート208に挿入される。薬剤コネクタ部で満たされた流体移送装置10は、本明細書で上述した、固定された二重膜係合手順を使用してスパイク・アダプタ200に連結されている。バッグは、その中の液体が下にあり、液体の上にあるバッグの一部分、即ち空気(又は不活性ガス)によって占有されたバッグのボリュームが上方にあり、スパイク要素177の先端がこの空気の中に配置され、それによって囲まれているように吊り下げられる。次いで、移送装置10内のピストンは遠位の方向に押され、移送装置10内の液体チャンバ38から薬剤を押し出し、コネクタ部25内の液体導管48及びスパイク・アダプタ200内の液体チャネル179を通って、輸液バッグ206に入れる。同時に、輸液バッグの内部からの空気が、スパイク・アダプタ200内及び空気導管46の液体チャネル178を通って、移送装置10内の空気チャンバ40内に引かれる。薬剤が輸液バッグに移送された後に、本明細書で上述したように、コネクタ部25がスパイク・アダプタ200から係脱され、ツイスト・オフ端部204が捩じ切られ、輸液バッグ206が輸液配管セットに連結され、薬剤が通常の様式で患者に投与される。
【0092】
スパイク・アダプタ200は、バイアルから薬剤を引くための上述したものと同じ様式で、IVバッグから液体を引くためにも使用される。この場合には、IVバッグはスパイク要素177が液体の底部に配置され、その液体によって囲まれるように吊り下げられる。そのような液体は一般に、粉末の薬剤をバイアル内で溶解する(戻す)ための希釈液として使用される。アダプタ200を通して液体を輸液バッグに注入するには、空気/液体の交換を可能にするために、バッグ内に注入された液体と少なくとも同じ体積の空気の存在を必要とすることに留意されたい。そのような量の空気の存在は、すべての市販のバッグに関して既定のものではなく、したがって薬剤師によって必要な空気を予め満たすことができる。液体が(バイアル内で希釈する粉末の薬剤に関して)バッグから最初に引き出される場合、空気チャンバ40からの空気がバッグに注入され、このようにしてIVバッグへの液体の次の注入に必要な空気を提供する。バッグ・アダプタ200は、液体の引き出し、及び十分な体積の気体を収容するIVバッグに液体を注入するのに適しているが、IVバッグが十分な体積の気体を収容していない場合には、本明細書で下記に述べる薬剤注入アダプタ210がより良い選択である。
【0093】
図20は、一方向吸気バルブ212を備えるスパイク・アダプタ210を示す断面図である。図21は、図20に示されたスパイク・アダプタを使用する輸液バッグに取り付けられた流体移送装置を示す断面図である。スパイク・アダプタ210の構成要素のほとんどは、図18及び図19に示されるスパイク・アダプタ200の構成要素と同じである。一方向バルブ212に加えて、2つのスパイク・アダプタの間のその他の大きな違いは、スパイク・アダプタ210では空気チャネル178がスパイク要素177の先端からダイアフラム176に連続していないことである。チャネルは、空気がIVバッグの内部と移送装置10内の空気チャンバ40との間を通過できないように遮断されている。スパイク・アダプタ210では、チャネル178’が、長手方向の延長部169に設けられている。空気導管46の先端は、ダイアフラム176を貫通するとき、チャネル178’の近位端に入る。空気は、一方向バルブから開口218を通ってチャネル178’に入る。一方向バルブ212の動作は、図20から容易に理解される。バルブの内側には、半球形状のゴム・キャップ214がある。キャップの中央が、アダプタのフレームに取り付けられ、円周部が平らなシート220に着座する。液体が液体チャンバ38からIVバッグ206に注入されるとき、移送装置10内の空気チャンバ40の体積が増加し、空気の一時的な負圧状態を形成する。流体移送装置側の負圧により、キャップ214がシート220を「持ち上げ」、周囲の空気を一方向バルブ212を通して吸入し、空気を穴218を通してチャネル178’に入ることができるようにする。負圧がない場合、又は流体移送装置の側に正圧がある場合、キャップ214が、シート220の上に押し下げられ、バルブ212を通る空気の流れを遮断する。アダプタ210は、バッグ/液体/空気の位置に無関係にバッグへの液体の注入を可能にし、IVバッグ内の空気存在をまったく必要としない。しかし、液体をIVバッグから引くために装置10内の空気チャンバの体積が低下し、それによって正圧を形成し、バルブ212を閉鎖するので、液体をアダプタ210を使用してIVバッグから引き出すことができない。アダプタ210を使用する間、空気を移送装置10に吸入することができるが、空気又は薬剤又は気化物が移送装置10から漏れる可能性がまったくなく、それは、これが起こるためには、移送装置の空気チャンバの内部の圧力は、バルブ212の反対側の圧力よりも高くなっている必要があるからであり、したがって一方向バルブが通常の密閉された構成になることに留意されたい。無菌状態を確かにし、細菌が流体移送装置に進入するのを防止するために、標準的な0.22ミクロンのフィルタ216が設けられ、チャネル178’内に入る開口218を覆う。薬剤が輸液バッグに移送された後に、本明細書で上述したように、コネクタ部25がスパイク・アダプタ210から係脱され、ツイスト・オフ端部204が捩じ切られ、輸液バッグ206が輸液配管セットに連結され、薬剤が通常の様式で患者に投与される。
【0094】
図22は、患者の血流に直接的に導く輸液配管、配管システム、容器、止めコックなどの、ポートとして標準的なルアー・コネクタを備える任意の流体受け器に、本発明の流体移送アセンブリ10から直接的に薬剤を移送するためのアダプタ222を示す断面図である。アダプタ222は、液体の注入の間に液体チャンバから排出される液体の体積を置き換えるのに要する必要体積の空気を移送装置10の空気チャンバ40に提供するための一方向吸気バルブ212を備える。図23は、コネクタ部25を介してアダプタ222に取り付けられた流体移送装置10を示す断面図である。アダプタ222は、スパイク要素177、本体202、及びねじ切り端部204が、任意のルアー・コネクタ・ポートに直接的に連結されるようになされた標準的なルアー・コネクタ222に置き換えられたことを除いて、本質的に図20に示されたスパイク・アダプタ210と同じである。
【0095】
流体移送装置10の動作及び使用、特に様々なアダプタを伴ったその使用の詳細な説明が図8に示された実施例に関連するが、これらの様々なアダプタは、図1に示された装置10の実施例の連結部に取り付けることもでき、流体を同様の様式で移送するために使用されることに留意されたい。
【0096】
本発明のいくつかの実施例を例として説明したが、本発明は多くの変更、変形、及び改造によって実施することができ、本発明の趣旨から逸脱せずに、又は特許請求の範囲の範囲を超えることなく、当業者の範囲内にある多くの等価物又は別の解決策を使用することによって実施することができることが明らかである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体移送デバイスの分野に関するものである。より詳細には、本発明は、容器間で有害薬剤を汚染なく移送するための装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有害薬剤の調合及び投与に携わる医療及び薬理学関係者は、周囲に漏れる可能性のある薬剤及びその気化物に曝される危険性に悩まされる。本明細書では、「有害薬剤」とは、それと接触し、又はその気化物と接触すると健康の害を生じる可能性がある注入可能(injectable)な材料を指す。例示的且つ限定的でないそのような薬剤の例には、中でも、細胞毒素、抗ウイルス薬、薬物療法薬、抗生物質、及び、ハーセプチン、シスプラチン、フルオロウラシル、ロイコボリン、タキソール、メタトロクサット(metatroxat)、ジェムザール、シクロホスファミド、サイトキサン、及びネオサールなどの放射性医薬品、又は、液体、固体、若しくは気体状態でのそれらの組合せが含まれる。
【0003】
液状又は粉末状の有害薬剤は、バイアル内に収容され、一般に保護衣、口マスク、及び層流安全キャビネット(laminar flow safety cabinet)を備えた薬剤師によって、隔離された部屋に一般に準備される。カニューレが設けられた注射器、即ち中空の針が、薬剤をバイアルから移送するために使用される。準備された後に、有害薬剤が静脈内投与のための食塩水などの、非経口投与のためのバッグに収容された溶液に加えられる。
【0004】
有害薬剤は毒性があるので、それに直接的に体が接触し、又は薬剤の気化物に微量に曝されることでも、皮膚がん、白血病、肝障害、奇形、流産、早産などの健康上の災いを発生させる危険性が大幅に増加する。そのように曝されることは、バイアル、瓶、注射器、及び静脈内バッグなどの薬剤を収容する容器に、過剰な圧力が与えられる場合に起こる可能性があり、その結果、有害薬剤によって汚染された流体又は空気が周囲に漏洩する。有害薬剤に曝されることは、針の先端に残り、又はバイアル若しくは静脈内バッグシールに残る薬剤溶液から生じ、又は針の先端が皮膚に誤って刺通することによっても生じる。
【0005】
いくつかの従来技術の液体移送デバイスは、有害薬剤の汚染のない移送を提供するためのものである。
【0006】
例えば、WO2005/041846は、流体容器のポートに挿入されるように構成された容器ポート・アダプタ、薬剤を収容するバイアルに連結されるように構成されたバイアル・アダプタ、及び注射器に取り付けられた注射器アダプタを備える薬剤混合システムを開示する。注射器アダプタは、少なくとも1つの容器ポート・アダプタ及びバイアル・アダプタに軸線方向の動作で流体連通され、機械的にロックされるようになされる。使用者が注射器のプランジャーを引き戻すと、流体が注射器に直接的に流入し、流体を無菌のまま保ち、使用者が流体に曝されないことを確実にする。注射器アダプタは、容器ポート・アダプタ又はバイアル・アダプタの対応する隔壁に押されて、接触係合し、それによって注射器の針が周囲環境に露出するのが防止されるので、容器ポート・アダプタ又はバイアル・アダプタに連結され、又はそれから切り離されるときも、使用者が流体に曝されることがない。注射器アダプタは、隔壁ハウジング、隔壁ハウジング内に配置された圧縮バネ、ハウジング内に密封式に装着され、バネの中に軸線方向に延出する針を備える。隔壁ハウジングは、針の先端を露出するために針に対して可動である。この薬剤移送システムは、容器ポート・アダプタ、バイアル・アダプタ、及び注射器アダプタのうちの少なくとも1つを大気に通気する膜の通気口及びフィルタを備える開放式のシステムである。それでもなお、フィルタを通した後に、微量の薬剤の気化物によって汚染された空気が周囲環境に露出される。この薬剤混合システムの別の問題は、2つの隔壁がバネの付勢力によって相互に接触係合して配置されることである。バネによって加えられた付勢力は、2つの隔壁が接触して最初に配置された時に低く、隔壁が針によって突き通されると増加する。したがって、2つの隔壁が最初に接触して配置されたときのシステムのどのような不意な動きも、2つの隔壁を互いに分離し、危険な薬剤を周囲に露出する危険性を生じやすい。このシステムのさらなる問題は、バネが完全に圧縮されたときに固定デバイスが係合され、固定デバイスを手動で係脱させる解除機構が必要であることである。さらに、この発明のシステムは、薬剤の気化物によって汚染される可能性のある空気を周囲環境に通気する通気フィルタを備える。
【0007】
2つの別個の隔壁を液体移送作業の前にロック係合させ、固定デバイス又は解除機構を設定する必要なく前記作業に続いて分離させるコネクタを提供することが望ましい。
【0008】
WO02/11794、WO03/086529、及びUS6,715,520は、汚染のない、即ち有害薬剤を収容する容器の内部から周囲の環境に気体が通過することのない、薬剤移送のための密閉システムの流体移送アセンブリを開示している。薬剤の瓶へのコネクタは、流体移送アセンブリでの流体移送ラインを確立するとき、所定の角度で薬剤の瓶のクロージャを貫通する中空の針を有する。コネクタ・ロック部材及び膜が、流体伝達デバイスと結合している二重膜バヨネットに含まれる。中空の針の中の気体チャネルが、気体を瓶から可撓性の容器に移送し、圧力補償装置が構成され、その逆も行われる。流体移送デバイスは、注射器及び連結ユニットを備える。連結ユニットは、注射器に連結するために構成された第1の部分、及び薬剤瓶コネクタに連結するように構成された第2の部分を有する。第1の部分の中に摺動できる第2の部分が、第1の部分の開口部に滑動して入る移動止めによって上昇するのが防止され、そのロックされた位置は移動止めに連結された外側に移動可能なハンドルによって解除される。薬剤が流体移送デバイスに受けられた後に、連結ユニットの注入針が、輸液バッグの入口ポートに連結された混合デバイスの注入ポートの膜を貫通する。輸液ラインのスパイク部材が、漏洩を起こさずに混合デバイスの出口ポートの膜を突き通す。
【0009】
この流体移送アセンブリは、有害薬剤がそれによって移送される連結を確立するために多数のステップを必要とし、それには、コネクタを薬剤の瓶に連結し、注射器に連結ユニットを回転及びロックし、連結ユニットをコネクタ上に下げ、連結ユニットをコネクタに回転及びロックし、連結ユニットのハンドルを外側に移動させ、連結ユニットの第1の部分に第2の部分を引き戻すために流体移送アセンブリを押し付け、注射器を操作するステップが含まれる。この流体移送アセンブリのさらなる問題は、バイアルから対応する体積の薬剤を移動させるために所定の体積の空気を液体移送作業の前に可撓性の容器に注入する必要があるが、注入された空気の体積に依存する移送される薬剤の体積は液体移送作業中には、医療従事者によって調整することができないことである。この流体移送アセンブリのさらなる問題は、作業前に注入される必要のある空気が周囲環境から取り込まれ、したがって汚染物質を周囲環境から薬剤に導入し、無菌性を侵す危険性を伴うことである。また、シート材料から作製され、注射器の外に配置された可撓性の容器が刺通される可能性があり、それによって汚染された空気を周囲環境に露出し、流体移送アセンブリを動作不能にする危険性がある。さらに、薬剤の瓶のコネクタの鋭い中空の針は、それが薬剤の瓶のクロージャを貫通するまで、露出したままになり薬剤師を危険な状態にする。したがって、この流体移送アセンブリは、一般に「ニードルレス」と呼ばれる安全性のある製品、即ち使用者に露出されない鋭い針を有する移送デバイスの群の中にあると見なすことができない。この流体移送アセンブリのさらなる問題は、作業者が連結の手順の間に1つ又は複数のステップを行うことを忘れやすく、二重膜シールが確立されない危険な結果を招く。したがって、危険な薬剤が、周囲の空気に露出され、又は注射器から放出されやすく、それによって作業者及びその場に居合わせた人を危険にさらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2005/041846号
【特許文献2】国際公開第02/11794号
【特許文献3】国際公開第03/086529号
【特許文献4】米国特許第6715520号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、有害薬剤、又は有害薬剤若しくは薬剤の気化物によって汚染された空気の漏洩を防止し、周囲環境からの汚染物質が移送プロセス中に薬剤と接触するのを防止するように構成された、密閉システムの流体移送アセンブリを提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、同じ体積の有害薬剤及び空気が、圧力を平準化する構成によって流体移送アセンブリ内部で交換され、それによって使用者が有害薬剤に曝されることを防止する、密閉システムの流体移送アセンブリを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、流体移送作業の任意の段階においても、使用者に対して針の先端などの鋭い物体を露出しない、流体移送アセンブリを提供することである。
【0014】
本発明のその他の目的及び利点は、説明が進むと明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書では、用語「交換」は、第1の流体が第1の容器から第2の容器に移送された場合、等しい体積の第2の流体が第2の容器から第1の容器に移送されるように、2つの容器の間において、異なる流体通路内で反対の方向に第1及び第2の流体を移送することを意味する。
【0016】
本明細書では、用語「液体を汚染なく移送する」とは、移送プロセスの間、液体、又は液体若しくは液体の気化物によって汚染された空気が、周囲へまったく漏れず、同時に周囲からの汚染物質が液体と接触することがまったくないことを意味する。
【0017】
「流体通路」は、前記注射器手段と前記容器との間の流路を意味し、前記注射器手段が前記容器に連結された場合に相互に流体連通する、前記注射器手段及び前記容器のそれぞれからの少なくとも1つのセグメントを含む。
【0018】
「セグメント」は、流体が流れることができる1つ又は複数の壁によって密閉されたボリューム(volume)を意味する。
【0019】
本明細書では、「近位の」は、装置を操作する使用者により近い方向を意味する。
本明細書では、「遠位の」は、装置を操作する使用者により遠い方向を意味する。
【0020】
本明細書では、「固定された二重係合手順」は、2つの流体移送構成要素の突き通し可能な2つの膜がそれぞれ相互に係合され、遠位に向けられた力を加えている間は、前記2つの膜の分離が防止される手順を意味する。
【0021】
本明細書では、流体移送構成要素は、例えば注射器、バイアル、輸液バッグ、様々なタイプのアダプタなどの任意の構成要素を意味し、液体の薬剤をある流体移送構成要素から別の流体移送構成要素へ、又は患者へ、収容し、輸送し、移送するために用いられる。
【0022】
第1の態様では、本発明は、液体を汚染なく移送する方法であって、移送は、液体の体積及び少なくとも等しい体積の気体を収容する第1の容器から、少なくとも容器内に移送される液体の量に等しい体積の気体を収容する第2の容器へ行われる。本発明方法は、
a)流体移送装置を提供するステップであって、流体移送装置は、密閉容器と、気体チャネルの第1セグメントと、液体チャネルの第1セグメントとを含み、密閉容器は、密閉容器の内部を2つの別個の液密チャンバに分割する可動の内部仕切りを有し、液密チャンバの容積が可変となっており、チャンバのうちの一方が気体チャンバであり、チャンバのうちのもう一方が液体チャンバであり、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの近位端が、気体チャンバ及び液体チャンバの内部とそれぞれ流体連通し、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端が、密封手段によって密閉されている、ステップと、
b)気体チャネルの第2セグメント、及び液体チャンバの第2セグメントを提供するステップであって、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの遠位端が、第1の容器の内部と流体連通し、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端が、密封手段によって密閉されている、ステップと、
c)気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端が、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端において密封手段を貫通し、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端において密封手段を貫通し、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端に入るまで、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端を気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端の方向に押すステップであって、それによって第1の容器の内部と気体チャンバの内部との間の連続的な気体チャネル、及び第1の容器の内部と液体チャンバの内部との間の別個の連続的な液体チャネルを提供する、ステップと、
d)第1の容器内の気体の圧力と気体チャンバ内の気体の圧力との間、及び第1の容器内の液体に働く圧力と液体チャンバ内の液体に働く圧力との間に平衡を確立するステップと、
e)液体チャンバの容積を増加させ、液体チャンバ内の圧力を瞬時に減少させ、同時に気体チャンバの容積を減少させ、気体チャンバ内の気体の圧力を瞬時に増加させるために、内部仕切りを第1の方向に移動するステップであって、内部仕切りを移動させることによって生じた圧力差により、液体を第1の容器から連続的な液体チャネルを通って液体チャンバに流入させ、同時に等しい体積の気体を気体チャンバから連続的な空気チャネルを通って第1の容器に流入させ、一方の方向への液体の流入、及び同時に起こる別の方向への気体の流入が、内部仕切りの移動を止め、平衡が再確立されるまで続く、ステップと、
f)気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端を、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端から引き抜くことによって、流体移送デバイスから第1の容器を切り離すステップであって、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端にある密封手段を通して引き抜くことによって、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの端部を密閉し、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端にある密封手段を通して引き抜くことによって、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの端部を密閉する、ステップと、
g)気体チャネルの第3セグメント、及び液体チャネルの第3セグメントを提供するステップであって、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの遠位端が第2の容器の内部と流体連通し、気体チャネル及び液体チャネルの第3のセグメントの近位端が密封手段によって密閉されている、ステップと、
h)気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端が、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端において密封手段を貫通し、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端において密封手段を貫通し、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端に入るまで、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端を気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端の方向に押すステップであって、それによって、第2の容器の内部と気体チャンバの内部との間の連続的な気体チャネル、及び第2の容器の内部と液体チャンバの内部との間の別個の連続的な液体チャネルを提供する、ステップと、
i)第2の容器内の気体の圧力と気体チャンバ内の気体の圧力との間、及び第2の容器内の液体に働く圧力と液体チャンバ内の液体に働く圧力との間に平衡を確立するステップと、
j)液体チャンバの容積を減少させ、液体チャンバ内の圧力を瞬時に増加させ、同時に気体チャンバの容積を増加させ、気体チャンバ内の気体の圧力を瞬時に減少させるために、内部仕切りを第2の方向に移動するステップであって、内部仕切りを移動することによって生じた圧力差により、液体を液体チャンバから連続的な液体チャネルを通って第2の容器に流入させ、同時に等しい体積の気体を第2の容器から連続的な空気チャネルを通って気体チャンバに流入させ、一方の方向への液体の流入、及び同時に起こる別の方向への気体の流入が、内部仕切りの移動を止め、平衡が再確立されるまで続く、ステップと、
k)気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端を、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端から引き抜くことによって、流体移送デバイスから第2の容器を切り離すステップであって、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端にある密封手段を通して引き抜くことによって、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの端部を密閉し、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端にある密封手段を通して引き抜くことによって、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの端部を密閉する、ステップとを含む。
【0023】
この方法は、流体移送デバイスと第1の容器との間を流れるすべての液体と気体が、流体移送デバイスと第1の容器との間の連続的な液体チャネル及び気体チャネルが設けられる前に、流体移送デバイス又は第1の容器の中に存在し、流体移送デバイスと第2の容器との間を流れるすべての液体と気体が、流体移送デバイスと第2の容器との間の連続的な液体チャネル及び気体チャネルが設けられる前に、流体移送デバイス又は第2の容器の中に存在することを特徴とする。
【0024】
第2の容器が移送される液体の体積に少なくとも等しい体積の気体を収容しない場合、この方法は変更され、気体チャンバを、第2の容器の内部と流体連通させない。その代わりに、気体チャネルの第3セグメントの遠位端を一方向バルブに連結し、液体が液体チャンバから第2の容器に流入するとき、フィルタを通された周囲からの空気が気体チャンバに流入できるようにする。
【0025】
本発明の方法が使用できる特定の用途は、有害薬剤を容器間で移送するためのものである。
【0026】
別の態様では、本発明は第1の態様の方法を実施するための流体移送装置である。装置は、注射器手段と、液体を中に貯蔵可能な容器に注射器手段を解除可能に連結する手段と、注射器手段内の気体圧力を容器内の気体圧力と等しくすることができ、容器と注射器手段との間において所望の体積の液体の交換ができるようになっている流体交換手段とを含む。
【0027】
本発明の流体移送装置の1つの実施例は、
a)注射器のような近位部であって、
i)円筒形の本体と、
ii)環状のスロートと、
iii)コネクタ部とスロートとの間で流体が通過するのを防止する分離要素と、
iv)円筒形の本体内で移動可能なピストンであって、ピストンは遠位の液体チャンバと近位の気体チャンバとを画成し、液体チャンバ及び気体チャンバの容積が可変である、ピストンとを含む、近位部と、
b)近位部のスロートの遠位端に固定して取り付けられたコネクタ部であって、コネクタ部の遠位端が流体移送構成要素に連結可能であるように構成されているコネクタ部と、
c)分離要素を通過し、分離要素に固く取り付けられた液体導管であって、液体導管の遠位端がコネクタ部に始まり、液体導管の近位端が液体チャンバに終端する液体導管と、
d)分離要素を通過し、分離要素に固く取り付けられた気体導管であって、気体導管の遠位端がコネクタ部に始まり、気体導管の近位端が気体チャンバに終端する気体導管と、
e)コネクタ部の遠位端に配置された膜であって、膜が液体導管及び空気導管の遠位端を密閉し、周囲から分離する膜とを含む。
流体移送構成要素のヘッド部が、コネクタ部の内部に入ることができ、コネクタ部の膜が、流体移送構成要素のヘッド部に配置される膜によって接触された場合、近位に押されるように、コネクタ部が構成されており、さらに膜を共に押すことによって、液体導管及び空気導管の遠位端がコネクタ部の膜及びヘッド部の中央のシールを貫通するようになっており、それによって液体チャンバの内部と流体移送構成要素の内部との間の液体導管を介して開放された液体チャネル、及び空気チャンバの内部と流体移送構成要素の内部との間の空気導管を介して別個の開放された空気チャネルが確立されることを特徴とする。
【0028】
流体移送構成要素のヘッド部が、コネクタ部の内部に入ることができ、コネクタ部の膜が、流体移送構成要素のヘッド部に配置される膜によって接触された場合、近位に押されるように、コネクタ部が構成される。さらに膜を共に押すことによって、液体導管及び空気導管の遠位端がコネクタ部の膜及びヘッド部の中央のシールを貫通するようになっており、それによって液体チャンバの内部と流体移送構成要素の内部との間の液体導管を介して開放された液体チャネル、及び空気チャンバの内部と流体移送構成要素の内部との間の空気導管を介して別個の開放された空気チャネルが確立される。
【0029】
本発明の装置の実施例では、コネクタ部が、スロートと一体に形成され、又はスロートに連結され、流体移送構成要素のヘッド部を囲むように適切に寸法を決められた遠位カラーと、遠位カラーに連結され、流体移送構成要素のヘッド部の遠位の縁部に解除可能に係合するように構成されているロック要素とを含む。
【0030】
これらの実施例では、コネクタ部の遠位端に配置された膜が、円錐台形の形状を有する変形可能な膜であり、膜が、膜の基部において分離要素に堅固に取り付けられ、遠位カラーの遠位端に遠位に延出する。膜の変形を防止するために、安全手段を設けることができる。
【0031】
本発明の装置のこれらの実施例は、以下の、
a)流体移送構成要素のヘッド部を遠位カラーの付近に配置するステップと、
b)ヘッド部に配置された膜がコネクタ部の変形可能な膜に接触するまで、ヘッド部及び遠位カラーを軸線方向に共に移動して密接させるステップと、
c)ヘッド部及び遠位カラーを軸線方向に共に密接して移動させ続け、液体及び気体の導管の遠位端が両方の膜を貫通するまで、コネクタ部内の変形可能な膜を圧縮するステップと、
d)カラーに連結されたロック要素がヘッド部の遠位端に解除可能に係合するまで、ヘッド部及び遠位カラーを軸線方向により近づけて移動させ続けるステップとを実行することによって、固定された二重膜係合を行うために流体移送構成要素に連結できる。
【0032】
液体の移送構成要素に液体移送デバイスのコネクタ部を連結するための上述のステップは、好ましくは、1つの軸線方向の動作を使用して実行できる。
【0033】
本発明の装置のその他の実施例では、コネクタ部が、中空の円筒形の外側本体を含む。外側本体は、
a.外側本体から径方向に突出し、開口で終端する遠位のショルダ部分であって、流体移送構成要素の近位端が連結のために開口を通って挿入できる、遠位のショルダ部分と、
b.中央部分を有する密閉された近位のキャップであって、中央部分は、装置の注射器のような近位部の遠位端に連結するために、そこから近位に突出する連結手段を含む、近位のキャップと、
c.2つの導管をその中に保持するために、密閉された近位のキャップの中央部分から外側本体の内部に突出する針ホルダであって、導管は、鋭い尖った端部を含み、さらに孔を設けられ、流体移送作業中に液体及び気体のそれぞれが孔を通って移送される、針ホルダと、
d.外側本体の中空の内部で、往復移動可能な二重膜シール・アクチュエータとを有する。
【0034】
二重膜シール・アクチュエータは、
a.円筒形のアクチュエータ・ケーシングと、
b.ケーシングの近位端を密封する近位の膜と、
c.ケーシングの遠位端を密封する遠位の膜であって、遠位の膜の一部分がケーシングから遠位に突出する、遠位の膜と、
d.少なくとも2つの弾性のアームであって、アームの近位端においてケーシングの外側の中間部分に連結され、アームの遠位端において拡張要素を含む、弾性のアームとを含む。
【0035】
二重膜シール・アクチュエータが、コネクタ部の円筒形の本体の遠位端にあるとき、弾性のアームの拡張要素がコネクタ部の円筒形の本体の遠位のショルダ部分に押し込まれ、それによって流体移送構成要素の近位端にある膜囲壁がコネクタ部の遠位端にある開口に挿入でき、膜囲壁内の膜が二重膜シール・アクチュエータのケーシングから遠位に突出する遠位の膜の一部分に接触するまで進めることができるようになっている。
【0036】
遠位のショルダ部分の直径、及びアームの遠位端にある拡張要素の大きさが、二重膜シール・アクチュエータ及び流体移送構成要素を互いに向かって押すための軸線方向の力が加えられた場合、膜囲壁の側面が、アームの遠位端にある拡張要素が径方向内側に移動するのを防止するような、直径及び大きさとなっている。これにより、膜囲壁の側面が拡張要素に対して近位に移動するまで、遠位のアクチュエータの膜が膜囲壁内の膜に対して圧縮され、この時点で、拡張要素は、径方向内側に移動するための空間を有し、二重膜シール・アクチュエータの遠位のショルダ部分から解除され、膜囲壁の遠位の下側面に当接する。このようにして、遠位のアクチュエータの膜が、固定され、且つ圧縮された係合で、膜囲壁内の膜に対してロックされ、流体移送構成要素からのアクチュエータの係脱を防止し、アクチュエータ及び連結された流体移送構成要素が、コネクタ部の外側本体の中空の内部で往復可能に移動できる。
【0037】
アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素がコネクタ部の外側本体の中空の内部で近位に移動できる距離、及び2つの導管の長さが、アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素が近位に移動した場合、2つの導管の鋭い尖った端部がアクチュエータの遠位の膜、及び膜囲壁内の膜を貫通し、それによって、コネクタ部と流体移送構成要素との間の液体経路及び気体経路がそれぞれ確立されるような、距離及び長さとなっている。アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素がコネクタ部の外側本体の中空の内部で遠位に移動した場合、2つの導管の鋭い尖った端部がアクチュエータの遠位の膜、及び膜囲壁内の膜を通って引き抜かれ、それによって、コネクタ部と流体移送構成要素との間の液体経路及び気体経路がそれぞれ遮断される。
【0038】
二重膜シール・アクチュエータが、コンダクタ部の円筒形の本体の遠位端にある場合、2つの導管の鋭い尖った端部が二重膜シール・アクチュエータの近位の膜と遠位の膜との間に配置される。
【0039】
直前に説明した、本発明の装置の実施例は、以下の、
固定された二重膜係合を行うために、請求項11の装置を流体移送構成要素に連結する方法であって、
a.コネクタ部の外側本体の遠位のショルダ部分の開口を流体移送構成要素の近位端の付近に配置するステップと、
b.コネクタ部の外側本体を遠位に移動させることによって二重膜係合動作を開始し、流体移送構成要素の近位端にある膜囲壁がコネクタ部の内部に受けられるまで行うステップと、
c.アクチュエータの遠位の膜が流体移送構成要素の近位端で膜囲壁内の膜に接触し、押し付けられるまで、外側本体を流体移送構成要素に対してさらに遠位に移動させるステップであって、このステップの間、二重膜シール・アクチュエータに取り付けられたアームの遠位端にある拡張要素が、膜囲壁の側面によってコネクタ部の外側本体の遠位のショルダ部分に保持され、それによって、アクチュエータがコネクタ部の外側本体内を近位に移動するのを防止する、ステップと、
d.膜囲壁の側面が拡張要素を通過することができるようにするために、アクチュエータの遠位の膜、及び第2の流体移送構成要素の近位端にある膜囲壁内の膜が共に十分に圧縮されるまで、外側本体を流体移送構成要素に対してさらに遠位に移動させるステップであって、それによって、アームが径方向内側に移動できるようになり、それによって、遠位のアクチュエータの膜が、固定され、且つ圧縮された係合で、膜囲壁内の膜に対してロックされ、流体移送構成要素からアクチュエータの係脱を防止し、アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素が、コネクタ部の外側本体の中空の内部で往復可能に移動できるようにし、アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素をコネクタ部の外側本体の中空の内部で近位に移動させた場合、2つの導管の鋭い尖った端部がアクチュエータの遠位の膜、及び膜囲壁内の膜を貫通し、それによって、コネクタ部と流体移送構成要素との間の別個の液体経路及び気体経路を確立し、アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素をコネクタ部の外側本体の中空の内部で遠位に移動させた場合、2つの導管の鋭い尖った端部をアクチュエータの遠位の膜、及び膜囲壁内の膜を通って引き抜き、それによって、コネクタ部と流体移送構成要素の間の液体経路及び気体経路を遮断する、ステップとを実行することによって、固定された二重膜係合を行うために流体移送構成要素に連結できる。
【0040】
コネクタ部の構造が、ロック固定デバイス又は解除機構を設定する必要なしに、コネクタ部及び流体移送構成要素が1回の軸線方向の動作によって連結され、1回の軸線方向の動作によって係脱できるようにする。
【0041】
別の態様では、本発明は流体移送作業で使用するためのコネクタ部である。コネクタ部が、中空の円筒形の外側本体を含み、外側本体は、
a.外側本体から径方向に突出し、開口で終端する遠位のショルダ部分であって、流体移送構成要素の近位端が連結のために開口を通って挿入できる、遠位のショルダ部分と、
b.中央部分を有する密閉された近位のキャップであって、中央部分は、液体移送装置の遠位端に連結するために、そこから近位に突出する連結手段を含む、近位のキャップと、
c.少なくとも1つの導管をその中に保持するために、密閉された近位のキャップの中央部分から外側本体の内部に突出する針ホルダであって、導管は、鋭い尖った端部を含み、さらに孔を設けられ、流体移送作業中に液体が孔を通って移送される、針ホルダと、
d.外側本体の中空の内部で、往復移動可能な二重膜シール・アクチュエータとを有する。
【0042】
二重膜シール・アクチュエータは、
a.円筒形のアクチュエータ・ケーシングと、
b.ケーシングの近位端を密封する近位の膜と、
c.ケーシングの遠位端を密封する遠位の膜であって、遠位の膜の一部分がケーシングから遠位に突出する、遠位の膜と、
d.少なくとも2つの弾性のアームであって、アームの近位端においてケーシングの外側の中間部分に連結され、アームの遠位端において拡張要素を含む、弾性のアームとを含む。
【0043】
二重膜シール・アクチュエータが、コネクタ部の円筒形の本体の遠位端にあるとき、弾性のアームの拡張要素がコネクタ部の円筒形の本体の遠位のショルダ部分に押し込まれ、それによって流体移送構成要素の近位端にある膜囲壁がコネクタ部の遠位端にある開口に挿入でき、膜囲壁内の膜が二重膜シール・アクチュエータのケーシングから遠位に突出する遠位の膜の一部分に接触するまで進めることができるようになっている。
【0044】
遠位のショルダ部分の直径、及びアームの遠位端にある拡張要素の大きさが、二重膜シール・アクチュエータ及び流体移送構成要素を互いに向かって押すための軸線方向の力が加えられた場合、膜囲壁の側面が、アームの遠位端にある拡張要素が径方向内側に移動するのを防止するような、直径及び大きさとなっている。これにより、膜囲壁の側面が拡張要素に対して近位に移動するまで、遠位のアクチュエータの膜が膜囲壁内の膜に対して圧縮される。この時点で、拡張要素は、径方向内側に移動するための空間を有し、二重膜シール・アクチュエータの遠位のショルダ部分から解除され、膜囲壁の遠位の下側面に当接する。このようにして、遠位のアクチュエータの膜が、固定され、且つ圧縮された係合で、膜囲壁内の膜に対してロックされ、流体移送構成要素からのアクチュエータの係脱を防止し、アクチュエータ及び連結された流体移送構成要素が、コネクタ部の外側本体の中空の内部で往復可能に移動できる。
【0045】
アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素がコネクタ部の外側本体の中空の内部で近位に移動できる距離、及び2つの導管の長さが、アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素が近位に移動した場合、2つの導管の鋭い尖った端部がアクチュエータの遠位の膜、及び膜囲壁内の膜を貫通し、それによって、コネクタ部と流体移送構成要素との間の液体経路及び気体経路がそれぞれ確立されるような、距離及び長さとなっている。アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素がコネクタ部の外側本体の中空の内部で遠位に移動した場合、2つの導管の鋭い尖った端部がアクチュエータの遠位の膜、及び膜囲壁内の膜を通って引き抜かれ、それによって、コネクタ部と流体移送構成要素との間の液体経路及び気体経路がそれぞれ遮断される。
【0046】
二重膜シール・アクチュエータが、コンダクタ部の円筒形の本体の遠位端にある場合、2つの導管の鋭い尖った端部が二重膜シール・アクチュエータの近位の膜と遠位の膜との間に配置される。
【0047】
本発明のコネクタ部は、以下の、
固定された二重膜係合を行うために、請求項18のコネクタ部を流体移送構成要素に連結する方法であって、
a.コネクタ部の外側本体の遠位のショルダ部分の開口を流体移送構成要素の近位端の付近に配置するステップと、
b.コネクタ部の外側本体を遠位に移動させることによって二重膜係合動作を開始し、流体移送構成要素の近位端にある膜囲壁がコネクタ部の内部に受けられるまで行うステップと、
c.アクチュエータの遠位の膜が流体移送構成要素の近位端で膜囲壁内の膜に接触し、押し付けられるまで、外側本体を流体移送構成要素に対してさらに遠位に移動させるステップであって、このステップの間、二重膜シール・アクチュエータに取り付けられたアームの遠位端にある拡張要素が、膜囲壁の側面によってコネクタ部の外側本体の遠位のショルダ部分に保持され、それによって、アクチュエータがコネクタ部の外側本体内を近位に移動するのを防止する、ステップと、
d.膜囲壁の側面が拡張要素を通過することができるようにするために、アクチュエータの遠位の膜、及び第2の流体移送構成要素の近位端にある膜囲壁内の膜が共に十分に圧縮されるまで、外側本体を流体移送構成要素に対してさらに遠位に移動させるステップであって、それによって、アームが径方向内側に移動できるようになり、それによって、遠位のアクチュエータの膜が、固定され、且つ圧縮された係合で、膜囲壁内の膜に対してロックされ、流体移送構成要素からアクチュエータの係脱を防止し、アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素が、コネクタ部の外側本体の中空の内部で往復可能に移動できるようにし、アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素をコネクタ部の外側本体の中空の内部で近位に移動させた場合、少なくとも1つの導管の鋭い尖った端部がアクチュエータの遠位の膜、及び膜囲壁内の膜を貫通し、それによって、コネクタ部と流体移送構成要素との間の液体経路を確立し、アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素をコネクタ部の外側本体の中空の内部で遠位に移動させた場合、少なくとも1つの導管の鋭い尖った端部をアクチュエータの遠位の膜、及び膜囲壁内の膜を通って引き抜き、それによって、コネクタ部と流体移送構成要素の間の液体経路を遮断する、ステップとを実行することによって、固定された二重膜係合を行うために流体移送構成要素に連結できる。
【0048】
コネクタ部の構造が、ロック固定デバイス又は解除機構を設定する必要なしに、コネクタ部及び流体移送構成要素が1回の軸線方向の動作によって連結され、1回の軸線方向の動作によって係脱できるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例による有害薬剤を移送する装置の側面からの斜視図である。
【図2】図1の装置の概略垂直断面図である。
【図3】中空のピストン・ロッドのピストンへの取り付けを強化するためのリブの斜視図である。
【図4】薬剤のバイアルを有する図1の装置の解除可能な連結の垂直断面図での概略図である。
【図5】汚染のない流体の交換の前の、液体移送デバイスと連結された逆さにされたバイアルの垂直断面図での概略図である。
【図6】図4の装置の液体チャンバへの有害薬剤の移送の概略図である。
【図7】図2の移送装置からIVバッグへの有害薬剤の移送の概略図である。
【図8】本発明の汚染のない薬剤移送装置の別の実施例の垂直断面である。
【図9】図8に示される装置の汚染のない薬剤移送装置の実施例のコネクタ部の断面図である。
【図10】Aは図7に示される流体移送装置及びコネクタ部の断面図である。Bは流体移送装置及びコネクタ部を通る空気及び流体の通路を示す、図10Aの断面の拡大図である。Cは流体移送装置及びコネクタ部を通る空気及び流体の通路を示す、図10Aの断面の拡大図である。Dは流体移送装置及びコネクタ部を通る空気及び流体の通路を示す、図10Aの断面の拡大図である。
【図11】コネクタ部が連結できるバイアル・アダプタの斜視図である。
【図12】バイアル・アダプタの垂直断面図である。
【図13】図8の装置を使用する固定された二重膜係合作業を示す垂直断面図である。
【図14】図8の装置を使用する固定された二重膜係合作業を示す垂直断面図である。
【図15】図8の装置を使用する固定された二重膜係合作業を示す垂直断面図である。
【図16】図8の装置を使用する固定された二重膜係合作業を示す垂直断面図である。
【図17A】薬剤調合での最も一般的な用途を概略的に示す。
【図17B】薬剤調合での最も一般的な用途を概略的に示す。
【図18】薬剤を静脈内(IV)バッグに移送し、そこから移送するための流体移送装置と関連して使用されるスパイク・アダプタ、及びコネクタ部を示す断面図である。
【図19】図18に示されるスパイク・アダプタを使用して輸液バッグに取り付けられた流体移送装置を示す断面図である。
【図20】一方向吸気バルブを備えるスパイク・アダプタを示す断面図である。
【図21】図20に示されたスパイク・アダプタを使用して輸液バッグに取り付けられた流体移送装置を示す断面図である。
【図22】直接的に本発明の流体移送アセンブリから、直接的に患者の血流内に薬剤を移送するためのアダプタを示す断面図である。
【図23】図22のアダプタに取り付けられた流体移送装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、容器間で液体の汚染のない移送ができるようにする方法、及びその方法を実施するために用いられる移送装置及びアダプタの実施例を含むデバイスである。この方法の主な利点は、その簡単さに加えて、移送手順の段階において、液体、又は液体若しくは液体の気化物によって汚染された空気の周囲への漏れがまったくなく、同時に周囲からの汚染物質が液体と接触するようになることがまったくないことである。
【0051】
この方法は、本明細書では、1つの容器から第2の容器に液体を移送するように述べられるが、移送は、いくつかの容器の間で行うことができることを理解されたい。例えば、液体は第1の容器から引き出すことができ、次いでその一部分が5つの異なる容器に注入され、それに続いて液体の一部分を容器のうちの1つから引き出すことができ、次いで実質的に任意の順及び組合せ及び量で元の容器などに注入できる。
【0052】
本発明は特に、標準的なコネクタ・ポートを備えた任意の容器へ、及びその容器から、有害薬剤の汚染のない移送を行うようになされた装置を提供することを対象としている。
【0053】
液体を汚染なく移送する方法であって、移送は、液体の体積及び少なくとも等しい体積の気体を収容する第1の容器から、少なくとも容器内に移送される液体の量に等しい体積の気体を収容する第2の容器へ行われる、本発明の方法は、以下の、
a)流体移送装置を提供するステップであって、流体移送装置は、密閉容器と、気体チャネルの第1セグメントと、液体チャネルの第1セグメントとを含み、密閉容器は、密閉容器の内部を2つの別個の液密チャンバに分割する可動の内部仕切りを有し、液密チャンバの容積が可変となっており、チャンバのうちの一方が気体チャンバであり、チャンバのうちのもう一方が液体チャンバであり、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの近位端が、気体チャンバ及び液体チャンバの内部とそれぞれ流体連通し、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端が、密封手段によって密閉されている、ステップと、
b)気体チャネルの第2セグメント、及び液体チャンバの第2セグメントを提供するステップであって、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの遠位端が、第1の容器の内部と流体連通し、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端が、密封手段によって密閉されている、ステップと、
c)気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端が、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端において密封手段を貫通し、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端において密封手段を貫通し、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端に入るまで、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端を気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端の方向に押すステップであって、それによって第1の容器の内部と気体チャンバの内部との間の連続的な気体チャネル、及び第1の容器の内部と液体チャンバの内部との間の別個の連続的な液体チャネルを提供する、ステップと、
d)第1の容器内の気体の圧力と気体チャンバ内の気体の圧力との間、及び第1の容器内の液体に働く圧力と液体チャンバ内の液体に働く圧力との間に平衡を確立するステップと、
e)液体チャンバの容積を増加させ、液体チャンバ内の圧力を瞬時に減少させ、同時に気体チャンバの容積を減少させ、気体チャンバ内の気体の圧力を瞬時に増加させるために、内部仕切りを第1の方向に移動するステップであって、内部仕切りを移動させることによって生じた圧力差により、液体を第1の容器から連続的な液体チャネルを通って液体チャンバに流入させ、同時に等しい体積の気体を気体チャンバから連続的な空気チャネルを通って第1の容器に流入させ、一方の方向への液体の流入、及び同時に起こる別の方向への気体の流入が、内部仕切りの移動を止め、平衡が再確立されるまで続く、ステップと、
f)気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端を、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端から引き抜くことによって、流体移送デバイスから第1の容器を切り離すステップであって、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの近位端にある密封手段を通して引き抜くことによって、気体チャネル及び液体チャネルの第2セグメントの端部を密閉し、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端にある密封手段を通して引き抜くことによって、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの端部を密閉する、ステップと、
g)気体チャネルの第3セグメント、及び液体チャネルの第3セグメントを提供するステップであって、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの遠位端が第2の容器の内部と流体連通し、気体チャネル及び液体チャネルの第3のセグメントの近位端が密封手段によって密閉されている、ステップと、
h)気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端が、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端において密封手段を貫通し、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端において密封手段を貫通し、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端に入るまで、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端を気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端の方向に押すステップであって、それによって、第2の容器の内部と気体チャンバの内部との間の連続的な気体チャネル、及び第2の容器の内部と液体チャンバの内部との間の別個の連続的な液体チャネルを提供する、ステップと、
i)第2の容器内の気体の圧力と気体チャンバ内の気体の圧力との間、及び第2の容器内の液体に働く圧力と液体チャンバ内の液体に働く圧力との間に平衡を確立するステップと、
j)液体チャンバの容積を減少させ、液体チャンバ内の圧力を瞬時に増加させ、同時に気体チャンバの容積を増加させ、気体チャンバ内の気体の圧力を瞬時に減少させるために、内部仕切りを第2の方向に移動するステップであって、内部仕切りを移動することによって生じた圧力差により、液体を液体チャンバから連続的な液体チャネルを通って第2の容器に流入させ、同時に等しい体積の気体を第2の容器から連続的な空気チャネルを通って気体チャンバに流入させ、一方の方向への液体の流入、及び同時に起こる別の方向への気体の流入が、内部仕切りの移動を止め、平衡が再確立されるまで続く、ステップと、
k)気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端を、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端から引き抜くことによって、流体移送デバイスから第2の容器を切り離すステップであって、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの近位端にある密封手段を通して引き抜くことによって、気体チャネル及び液体チャネルの第3セグメントの端部を密閉し、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの遠位端にある密封手段を通して引き抜くことによって、気体チャネル及び液体チャネルの第1セグメントの端部を密閉する、ステップとを含む。
【0054】
本発明方法を実施するために使用されるデバイスの例示的な実施例が、本明細書に下記に述べられている。
【0055】
図1は、本発明の一実施例による、周囲を汚染せずに有害薬剤を移送するための装置10の斜視図を示す。装置10の近位部27は、本質的に従来の注射器である。それは、所望の体積の有害薬剤を、例えばバイアル14又は静脈内(IV)バッグなどの、薬剤が収容されている流体移送構成要素から引き出し、次いで別の流体移送構成要素に薬剤を移送するように構成されている。
【0056】
移送装置10のコネクタ部25’は、適切にバイアル14のヘッド部20を囲むように寸法を決められた一体の遠位カラー18、カラー18内にバイアル14のヘッド部20を解除可能に係合するためのロック要素22a及び22bを含む。装置10の近位部27は、シリンダ24、シリンダ24よりもかなり小さな直径を有し、シリンダ24からカラー18に延出する環状のスロート26、シリンダ24の近位端に嵌合された環状のゴム・ストッパ28、ストッパ28を密封して通過する中空のピストン・ロッド30、及び使用者がそれによってピストン・ロッド30をストッパ28を通して上下に押したり引いたりすることができる近位のピストン・ロッド・キャップ32を含む。カラー18及びシリンダ24は、例えばプラスチックなどの剛体の材料から作製される。
【0057】
図2は、移送装置10の概略断面図を示す。図示されるように、ピストン・ロッド30は、キャップ32からピストン34へ延出し、シリンダ24の内壁に密封式に係合し、シリンダ24に対して移動可能である。分離要素36が、スロート26の内側にあり、スロート26と一体に形成される。ピストン34は、可変の体積の2つのチャンバを画成する。それは、ピストン34の遠位の面と分離要素36の間の遠位の液体チャンバ38、及びピストン34の近位の面とストッパ28の間の近位の空気チャンバ40である。円錐台形の形状を有する変形可能な膜42が、その基部で分離要素36に堅固に取り付けられ、カラー18の遠位端44に遠位に延出する。膜42は、完全に2つの導管46及び48を囲み、変形されていない構成のときは、移送装置10の内部を周囲から効果的に分離するように機能する。導管46及び48は、分離要素36を通過し、分離要素36に堅固に接着される。カラー18の遠位端44から実質的に等しく間隔を置いて配置された導管46及び48の遠位端46a及び48aは、それぞれ、鋭く尖った端部を有する。細長い導管46は空気導管であり、中空のピストン・ロッド30を貫通して延出する。ピストン・ロッド30は、遠位の孔50と共に形成され、それによって導管46を通って流れる空気が、ピストン・ロッド30の内部から孔50を通って空気チャンバ40に出ることが可能である。導管48は液体導管であり、それを通って有害薬剤の溶液がバイアル14から移送装置10に流れることができ、その逆も可能である。導管48は、導管46よりもかなり短く、液体チャンバ38内で終端する。
【0058】
図3に示されるように、ピストン・ロッド30は、ピストン34と係合された、例えばプラスチックから作製される環状のディスク52によって、ピストン34に取り付けることができる。複数の補強リブ54が、ディスク52の近位面に取り付けられ、中央のスリーブ56が各リブ54に連結され、それによってピストン34がシリンダ24と密封結合しながら、ピストン・ロッド30がスリーブ56を通過できる。図示されない空気導管は、ピストン34を通過し、ピストン・ロッド30の内部に延出する。
【0059】
図4は、移送装置10をバイアル14のヘッド部20に連結することを示す。ヘッド部20は、バイアル14内に収容された有害薬剤60が外側に漏洩するのを防止するための、中央のシール58(図1参照)を設けられている。
【0060】
連結する前に、移送装置10及びバイアル14を、近づくように移動させる。カラー18の外壁に連結されたロック要素22a及び22bを曲げ、バイアル14のヘッド部20がカラー18に入ることができるようにする。バイアル14のヘッド部20がカラー18によって画成されたキャビティ内に導入され、膜42の遠位端がバイアル14のヘッド部20のシール58に押し付けられる。ヘッド部20を続けてカラー18に押し込むと、円錐形の膜42がその基部に向かってつぶれ、導管46及び48が膜42及びシール58の両方を貫通し、バイアル14の内部、移送装置10内の空気チャンバ40、液体チャンバ38の間の流体連通が確立する。ヘッド部20がカラー18に強固に押し込まれると、ロック要素22a及び22bのそれぞれ尖った端部62a及び62bが、ヘッド部20の遠位端64に係合する。これにより、移送装置10がヘッド部20に堅固にロックされ、膜42がシール58に強固に押し付けられて保持され、それによって移送装置及びバイアルの内部の汚染を防止し、同時に、それらの中の流体が周囲に漏れるのを防止する。
【0061】
導管46及び48が、膜42及びバイアル14のシール58を貫通すると、2つの交互の流体通路が形成される。第1の通路は、バイアル14、空気導管46、及び空気チャンバ40の内部によって画成される空気の通路である。第2の通路は、バイアル14、液体導管48、及び液体チャンバ38の内部によって画成される液体の通路である。薬剤60によって占有されないバイアル14の内部は、下記に説明するように、内部の近位部分をどちらの流体が占有するかに応じて、空気用又は液体用の通路として交互に機能することができる。2つの流体通路が移送装置10及びバイアル14の内部にあるので、それらの間の液体移送作業には汚染がない。
【0062】
安全対策として、ロック要素22a及び22bの使用によって、固体のリング(図示されない)を円錐形の膜42の周りに嵌合して、移送装置10の遠位端に取り付けることができる。ロック要素がリングと係合する場合、円錐形の膜42の圧縮が防止される。したがって、導管46及び48は膜42を貫通することも防止され、それによって導管の端部を周囲に露出し、使用者に害を与えることを回避する。固体のリングが取り外されると、上記に説明したように、円錐形の膜42を圧縮することが可能になり、移送装置10をバイアル14のヘッド部20に連結することが可能になる。
【0063】
空気チャンバ40内の空気、及びバイアル14の内部空間60に保持された空気又は任意のその他の気体の最初の圧力は、大気圧よりもわずかに高く、又はわずかに低いことがある。空気チャンバ40内の空気とバイアル14の内部66の気体との間に最初の圧力差がある可能性があるが、膜42及びシール58が貫通されるとき、空気通路内の圧力が即時に平衡を達成する。この段階の間、液体導管48も、バイアル14の内部66の近位部分を占有する空気と連通し、したがって移送装置の液体チャンバ38も実質的に同じ均一の圧力にある。
【0064】
図5に示されるように、連結された移送装置10及びバイアル16は、次いで逆さにされ、液体の薬剤をバイアル14から移送装置10へ双方向に交換し、同時に空気を移送装置10からバイアル14へ双方向に交換することを可能にする。バイアル14が逆さにされるので、薬剤60は、重力によって下降し、バイアル14の近位部分を占有する。チャンバ40の空気圧は、実質的に薬剤60に加わる圧力と等しいので、薬剤60は空気導管46及び液体導管48を通って流れるのが防止される。
【0065】
液体通路が図6に示される。ピストン・ロッド・キャップ32が近位に移動されるとき、液体チャンバ38の体積が増加し、吸引によって液体の薬剤が引かれて、バイアル14から導管48を通って移送装置10内の液体チャンバ38に入る。バイアル内の薬剤の全部の量、又はその任意の所望の部分が、液体チャンバ38に移送できる。ピストンが近位に引かれて、液体をバイアル14から移送するので、空気チャンバ40の体積は同時に減少し、チャンバ40内の空気を導管46を通してバイアル14の内部66に流す。バイアル14に流入する空気は、送出された液体の体積をもつ。空気はピストンが移動を止めるまで、導管46を通ってバイアルに流入し続け、空気チャンバ40内及びバイアル14の内部の圧力が再び平衡に達する。
【0066】
所望の量の薬剤が液体チャンバ38に移送された後に、図4を再び参照して、ロック要素22a及び22bがバイアル14のヘッド部20から解除される。次いで、移送装置10は別の軸線方向の動作、即ち軸線方向に離して引かれることによってバイアル14から分離される。バイアルを移送デバイスから分離するとき、導管46及び48はバイアル40のシール58及び移送装置10の遠位端の膜42を通って引き抜かれる。これが起こるとき、導管46及び48の遠位端46a及び48a(図2)はそれぞれ、シール58によって拭われ清浄される。有害薬剤60の残留するどのような小滴も、導管から除去され、バイアル14の内部のシール58の内面に残り、したがって周囲の空気に露出されない。膜42は、同時に、図2に示される元の位置に戻り、それによって空気チャンバ40内の薬剤及び液体チャンバ38内の薬剤と接触し汚染された空気を密封する。
【0067】
図7は、移送装置10からIVバッグ74への有害薬剤の移送を概略的に示す。アダプタ70が、最初にIVバッグのポート72に取り付けられる。IVバッグには、IVバッグからの液体の漏洩を防止するゴム・シール76を設けることができる。アダプタ70は中央のボア78を有し、その中にポート72が挿入され、複数のフィン80がボア軸を通過する平面に配置される。アダプタ70は、入口ポート78の周りに装着され、フィン80がプレス嵌めによって入口ポート72の外壁82に接触する。アダプタ70は、バイアル14のヘッド部20(図2)と実質的に同じ形状及び寸法を有するヘッド部84にも設けられる。
【0068】
IVバッグがアダプタ70の下になるように逆さにされる。この向きでは、IVバッグ内に保持された気体の媒体、例えば空気が液体の上にある。次いで、移送装置10は、移送装置10の遠位端でカラー18にアダプタ70のヘッド部84を押し込むことによってアダプタ70に連結される。アダプタ70のヘッド部84が、カラー18によって画成されたキャビティ内に導入され、膜42の遠位端がIVバッグ74のポート72のネック内のゴム・シール76に押し付けられる。ヘッド部84を続けてカラー18に押し込むと、円錐形の膜42がその基部に向かってつぶれ、導管46及び48が膜42及びシール58の両方を貫通し、IVバッグ74の内部、及び移送装置10内の空気チャンバ40、及び液体チャンバ38の間の流体連通が確立する。ヘッド部84がカラー18に強固に押し込まれると、ロック要素22a及び22bの尖った端部が、ヘッド部84の遠位端86に係合する。これにより、移送装置10がアダプタ84に堅固にロックされ、膜42がシール76に強固に押し付けられて保持され、それによって移送装置及びIVバッグの内部の汚染を防止し、同時に、それらの中の流体が周囲に漏れるのを防止する。移送装置10がアダプタ70に連結された後に、使用者は遠位の力をロッド・キャップ32に加える。したがって、ピストン34は、分離要素3に向かって遠位に移動する。ピストンが移動すると、移送装置10の液体チャンバ38に収容された有害薬剤がポート72を通ってIVバッグに押し込まれる。同時に、液体の薬剤がIVバッグに移送されると、空気チャンバ40の体積は増加し、IVバッグ内に保持された気体の媒体、例えば空気が、吸引によって空気チャンバ40に移送される。ピストンが移動を止め、空気チャンバ40内及びIVバッグ内の圧力が平衡に達したとき、空気が導管46を通って流れるのを止める。必要量の薬剤がIVバッグ内に放出された後に、ロック要素22a及び22bの近位端がカラー18をアダプタ70のヘッド部84から解除するために内側に押される。移送装置10が、ゆっくりと引かれてアダプタ70から離れる。この分離が行われるとき、導管46及び48がシール51を通って引き戻され、シール51はIVバッグ74からの漏れ、及び膜42を通る漏れを防止するための流体バリアとして機能し続け、膜42は円錐形状に戻り、液体移送装置10の内部を周囲から分離する。
【0069】
移送装置10は、IVバッグから液体を引き出すためにも使用できる。これを行うために、カラー18がアダプタ70に連結された後に、IVバッグは、移送装置10の上になるように逆さにされる。次いで、ピストン・ロッド・キャップ32を近位に移動させ、それによって同時に所望の液体をIVバッグから液体チャンバ38に移送し、空気チャンバ40からの空気をIVバッグの内部に移送する。
【0070】
別の実施例では、アダプタは、輸液セットの配管がそれに連結できるIVバッグのポートと同様の第2のポートを備え、移送装置10がそれに対して連結できる、バイアル14のヘッド部20(図2)と実質的に同じ形状及び寸法を有するポートを備える、IVバッグのポート内のシールを突き通すための中空の二重のカニューレ・スパイク要素を備えることができる。
【0071】
図8は、本発明の汚染なく薬剤を移送する装置10の別の実施例の垂直断面図である。本発明のこの実施例では、装置10の近位部27は、上記に述べた第1の実施例の近位部と同一である。
【0072】
図9に示されるように、コネクタ部25は、近位のキャップ113から近位に突出し、スロート26を囲むカラー124によって近位部27のスロート26に連結される。スロート26及びカラー124は、製造時に単一の要素として共に形成され、又は例えば糊付け又は溶接によって共に永久的に取り付けられ、又はネジ係合若しくはルアー・コネクタなどの連結手段と共に形成される。コネクタ部は、圧縮可能であり、且つ往復可能な二重膜シール・アクチュエータを含む。二重膜シール・アクチュエータは、第1の遠位の位置に配置された場合、針が隠される通常の弛緩構成(relaxed configuration)をとり、近位に移動された場合、圧縮されて針を露出する。コネクタ部25は、別の流体移送構成要素に解除可能に連結されるように構成され、その構成要素は、薬剤バイアル、静脈内バッグ、又は流体がそこを通り、流体移送構成要素間で移送される「流体移送アセンブリ」を形成するための静脈内ラインなどの標準的なコネクタを備える任意の流体容器であってもよい。
【0073】
図9に示されるように、コネクタ部25は、円筒形の中空の外側本体128と、本体128から径方向に突出し、流体移送構成要素の近位端が連結のためにそこを通して挿入される開口126で終端する遠位のショルダ部分129と、本体128の内部で往復移動可能な二重膜シール・アクチュエータ130と、円筒形のアクチュエータ・ケーシング137の中間の部分に、その近位端で連結された弾性のアーム133及び134と、コネクタ部25の内部119内に、その密閉された近位のキャップ113の中央部分から突出する針ホルダ115に保持された固定式の空気導管46及び液体導管48とを備える。針ホルダ115は、外側本体128及び近位のキャップ113の一部分であり、そこに針が接着される。
【0074】
導管46及び48は、針ホルダ115から遠位に延出し、アクチュエータ130の膜142を突き通す。導管46及び48の遠位端はそれぞれ、鋭い尖った端部46a及び48aを有し、さらにそれぞれ孔111及び112を設けられ、流体移送作業中に流体がそこを通って移送される。空気導管46の近位端は流体移送ユニット10の内部の中を延出するが、液体導管48の近位端は、液体導管が流体移送ユニット10のスロート26の内部と流体連通するように、コネクタ部25のキャップ113において、又はそこからわずかに近位に終端する。
【0075】
本明細書で上記に説明されたように、流体は、同じ体積の有害薬剤及び空気が流体移送アセンブリの内部で交換される圧力平衡構成によって移送される。流体移送ユニット10は、キャップ52からピストン34に延出する中空のピストン・ロッド30を備え、バレル24の内壁に密封式に係合し、バレル24に対して移動可能である。ピストン34は、可変の体積の2つのチャンバを画成する。それは、ピストン34とコネクタ部25との間の遠位の液体チャンバ38、及びピストン34とストッパ28との間の近位の空気チャンバ40である。空気導管46は、ピストン34を通過し、中空のピストン・ロッド30の内部に延出する。導管46を通って流れる空気は、ピストン・ロッド30の内部に入り、ピストン・ロッド30の遠位端に形成された孔50(図10Cに示される)を通って空気チャンバ40を出る。空気導管46よりもかなり短い導管48は、薬剤の溶液が液体チャンバ38に流入できるように構成されている。
【0076】
二重膜シール・アクチュエータ130は、矩形断面を有する近位のディスク形状の膜142、及びT字形断面を有する遠位の二重ディスク形状の膜143を含み、その膜143は、矩形の近位部分144及び近位部分144に対して径方向内側に配置される遠位部分147を有する。膜142及び143は、ケーシング137内に設置され、遠位部分147はケーシング137から遠位に突出する。等しい長さのアーム133及び134が、伸長され、実質的に長手方向に配置され、それぞれ連結点161’及び162’でケーシング37に取り付けられている。アーム33及び34は、それぞれ遠位の拡張要素161及び162で終端する。弾性のアーム133及び134は、そうすることが妨げられない限り、拡張要素161及び162の間の距離が、コネクタ部25の直径よりも拡張されるように設計される。拡張要素161及び162は、アクチュエータ130が第1の遠位の位置に配置された場合、ショルダ部分129内に受け入れられ、係合されるように構成される。アクチュエータ130が、この第1の位置にある場合、尖った端部46a及び48aが膜142及び143の間に保持され、使用者が尖った端部にさらされ、負傷するのを防止し、同時に導管46及び48の端部を周囲から密封し、それによって流体移送ユニット10の内部の汚染、及びユニット10の内部の中に含まれる有害な薬剤の周囲への漏洩を防止する。
【0077】
図10Aは、本発明の流体移送装置10の断面図である。図10B、図10C、及び図10Dは、流体移送装置を通る空気及び流体の通路を示す、図10Aの断面B、C、及びDの拡大図である。10Bを参照すると、液体導管48がどのように近位のキャップ113、移送装置10の円筒形の壁24のスロート部26を通過し、遠位液体チャンバ38の内部に終端するかがわかる。図109Cでは、液体チャンバ38の近位端がどのようにピストン34の遠位表面によって画成されているかがわかる。空気導管46は、液体チャンバ38を通過し、図10Cでは、ピストン34、ディスク52、及び補強リブ54を通過し、中空のピストン・ロッド30の内部に入ることがわかる。導管46は、デバイス10の円筒形部分24の最上部付近で終端する。導管46の遠位端で入る空気は、遠位端でのみ出ることでき、そこでは、空気が中空のピストン・ロッド30の内部に侵入する。図10Cでは、空気が近位の空気チャンバ40に入ることができるようにする、ピストン・ロッド30の底部で、1つ又は複数の孔50があることがわかる。図10B及び10Cでそれぞれわかるように、空気チャンバ40の遠位端がピストン34の近位の表面によって画成され、その近位端はゴム・ストッパ28の遠位の表面によって画成される。図10Aから図10Dで、例えば近位の方向にピストンが移動すると、液体チャンバ38の体積が増加し、空気チャンバ40の体積が同じ量だけ減少することが理解できる。移送装置10のゴム・ストッパ28及びピストン34、並びにコネクタ部25の膜142及び143は、ピストン・ロッド30、空気導管46、及び液体導管48が、それぞれストッパ、ピストン、又は膜によって密閉されたボリュームの内部を外側と分離する流体シールを維持しながら、それらを通って摺動できるようにする従来の自己密封タイプであることに留意されたい。
【0078】
図11及び図12は、それぞれ、バイアル・アダプタ160の斜視図及び断面図を示す。バイアル・アダプタ160は、コネクタ部25を薬剤バイアル14、又は適切な形状及び寸法にされたポートを有する任意のその他の構成要素に連結するために使用される中間の連結である。バイアル・アダプタ160は、流体移送デバイスの第1の実施例と共に使用することもできる。バイアル・アダプタを導入する主な理由のうちの1つには、市販の薬剤バイアルの最上部を密封する膜58の最上部の外表面が一般に円滑でないことがある。したがって、バイアル・コネクタを使用して、薬剤を汚染なく移送するのに必要な、コネクタ部25の遠位端での膜143の遠位部分147と円滑なシール同士の接触を行う。さらに、膜58が一般的に作製される材料は特性が十分でなく、即ちそれが針によって突き通される場合、数回刺通された後にくずれて(disintegrate)、漏れを起こす。
【0079】
バイアル・アダプタ160は、環状の近位のキャップ168を設けられたカラー部165、及びキャップ168から近位に突出する長手方向の延長部169を含む。長手方向の延長部169は、バイアル・アダプタを使用する第2の理由である。それは、従来の薬剤バイアルのネックよりもはるかに長く、したがって以下に説明するように、薬剤の移送ができるようにするためにコネクタ部25の遠位端で開口126に嵌入する。カラー部分165は、バイアル14のヘッド部20への固定を促進するための、その内側の面の凸リップ163と共に形成された複数の円周部のセグメント167から成る。長手方向の延長部169は、延長部169の直径よりも大きな直径を有する膜囲壁171によって近位に終端する。膜囲壁171は、近位の中央の開口172を有し、それによって、そこに保持される膜176がアクセス可能となる。
【0080】
膜176から遠位に延出する2つの長手方向のチャネル178及び179は、長手方向の延長部169の内部に形成され、それぞれ導管46及び48を受け入れるように構成される。膜囲壁171には、スロットがあり、コネクタ部25の、円筒形の中空の外側本体128の内側には、稜部又はピンがある(スロットも稜部も図には示されない)。連結する間、稜部/ピンは、スロット内に入り、摺動しなければならず、任意のその他の方向に対しては、稜部/ピンは、膜囲壁171に接触し、さらなる連結の動きを阻止する。稜部/ピン及びスロットは、導管46及び48が常に、長手方向の延長部169内のそれらの指定されたチャネルに入るように、それぞれの部分に配置される。長手方向の延長部169はキャップ68から遠位に突出するスパイク要素177によって遠位に終端する。スパイク要素77は、それぞれチャネル178及び179と連通する開口188及び189によって形成される。
【0081】
バイアル14は、中央の近位のシール58を有し、シール58は、収容された薬剤の外側への漏洩を防止するように構成される。遠位の力がバイアル・アダプタ160に加えられるとき、スパイク要素がバイアル14のシール58を突き通して、チャネル178及び179が薬剤バイアル14の内部と連通できるようにする。これが起こるとき、カラー部分165の円周部のセグメント167が、バイアル14のヘッド部20と確実に係合する。バイアル14の膜58が突き通された後に、それはスパイク177の周りを密封し、バイアルの外へ薬剤が漏洩するのを防止する。同時に、チャネル178及び179の頂部が膜176によって密封され、空気がバイアル14の内部に入り、又は薬剤がそこから出るのを防止する。
【0082】
図13から図16は、それぞれ、アクチュエータ30によって可能となる、固定された二重膜係合手順を示す。図示されるように、アクチュエータ130の遠位の膜143は、バイアル・アダプタ160の膜176と固定係合されるが、固定係合作業は、任意のその他の適切な流体移送構成要素と共に実行できることを理解されたい。手順は、以下のように実行される。ステップ1−バイアル・アダプタ160の膜囲壁171がコネクタ部25の遠位開口126の近くに配置される。ステップ2−二重膜係合手順が、コネクタ部25の遠位に移動する本体128によって開始され、バイアル・アダプタ160の膜囲壁171及び延長部169がコネクタ部25の内部119の遠位端に入るまで行われる。ステップ3−アクチュエータ30の膜143がバイアル・アダプタ160の固定膜176に接触し、本体128のさらなる遠位の移動によって押し付けられる。膜が互いに強固に押し付けられた後に、拡張要素161及び162がショルダ部分129から解除される。この段階では、膜143及び176は、拡張要素161及び162によって互いに押し付けられて保持され、アクチュエータ130が、相対的な近位の移動によりバイアル・コネクタ160から係脱することが防止される。ステップ4−導管46及び48の先端が膜143及び176を突き通し、バイアル14の内部と流体連通するまで、本体128のさらなる遠位の移動により、アクチュエータ130が本体128に対して近位に移動する。これらの4つのステップは、コネクタ部25がバイアル・アダプタ160に対して遠位に移動されるとき、1つの連続的な軸線方向の動作によって行われ、それらのステップは、コネクタ部25を固定して保持しバイアル・アダプタ160を遠位に移動することによってバイアル・アダプタ160からコネクタ部25を分離するために、逆に行うことができる。手順は4つの別個のステップを含むものとして本明細書に説明されるが、これは手順を説明するのを容易にするために過ぎないことを重要な点として強調しておきたい。実際には、本発明を使用した固定された二重膜係合(及び係脱)手順は、単一の円滑な軸線方向の移動を使用して実行されることが理解されよう。
【0083】
流体移送装置10が取り付けられるコネクタ部25を、バイアル14が取り付けられるバイアル・アダプタ160に連結する手順の第1のステップは、図13に示される。図13に示される段階では、二重膜シール・アクチュエータ130は、その第1の、コネクタ部25の遠位端で遠位の位置にあり、バイアル・アダプタ160の膜囲壁171の近くに移動させられる。図13に示される、流体移送装置10、コネクタ部25、バイアル・アダプタ160、及びバイアル14のすべての要素は、図9及び図12を参照して上記に説明されている。
【0084】
図14は、固定された二重膜係合手順の第2のステップを示す。自然な傾向により可撓性アーム133及び134が拡張された部分を側方に外側に向かって押し、拡張要素161及び162がショルダ部分129に保持されるとき、膜囲壁171の直径は、拡張要素161及び162との間の間隔よりも小さい。これによって、膜囲壁171が119の内部に難なく進入することができる。コネクタ部25がバイアル・アダプタ160の方向に押されると、拡張要素161及び162がショルダ部分129に保持され、膜囲壁171の側面によって内側に移動するのが防止される。ショルダ129の上方の表面131及び132は、それぞれアーム133及び134の遠位部分と接触し、それらがコネクタ部25の本体128に対して近位に移動するのを防止する。
【0085】
図15は、固定された二重膜係合手順の第3のステップを示す。コネクタ部25がさらに遠位に移動すると、T字型膜143の遠位の膜部分147が、膜囲壁171の中央の開口172(図11)に入る。遠位の膜部分147は、バイアル・アダプタの膜176に接触し、濃い領域194によって概略的に表されるように、2つの膜は、互いに対して圧縮される。膜が共に押し付けられている間、アクチュエータ130がコネクタ25の本体128へ上昇して入れるようになることが、拡張要素161及び162によって防止される。拡張要素161及び162は、バイアル・アダプタ60の膜囲壁171の外側表面によって、コネクタ25の本体28の壁の遠位のショルダ部分129から出ることが防止される。コネクタ部25及びバイアル・アダプタ160を共に押すためにより大きな力が加えられると、膜の圧縮量が増加して、膜囲壁171の側面が拡張要素61及び62を過ぎて移動するまで、長手方向の延長部169及び膜囲壁171が移動して119のさらに内部に入る。拡張要素161及び162は、もはや膜囲壁によって阻止されなくなった後に、径方向内側に移動でき、ショルダ部分129から解除され、膜囲壁171の遠位の下側面181に当接する。この段階で、2つの膜143及び147が固定結合及び圧縮結合の状態で互いにロックされる。
【0086】
図16は、固定された二重膜係合手順の第4のステップを示す。拡張要素161及び162は、コネクタ部25のショルダ部分129から解除され、コネクタ部の本体128の内壁によって側方に外側に移動するのが防止される。これによって、バイアル・アダプタの膜囲壁171が、二重シール・アクチュエータ130に固定して取り付けてられて維持される。コネクタ部25がバイアル・アダプタ160に対してさらに遠位に移動すると、二重膜シール・アクチュエータ130及び取り付けられたバイアル・コネクタ160がコネクタ部25の内部119において近位に移動する。導管46及び48はコネクタ部25の近位端で針ホルダ115に固く固定されるので、二重膜シール・アクチュエータ130が近位に移動すると、導管46及び48の尖った遠位端46a及び48aが、バイアル・コネクタ160内の長手方向のチャネル178及び179に入るまで、ダイアフラム143及び176を貫通して漸進的に押し出される。バイアル・コネクタ160がバイアル14に予め連結されているので、スパイク177はバイアル14の最上部で膜165を貫通し、したがってこの時点で2つの独立の流体通路がそれぞれ、バイアル14の内部、遠位の液体チャンバ38、流体移送装置10内の近位の空気チャンバ40の間で確立される。
【0087】
図16に示されるように、拡張要素161及び162の近位の内部表面が膜囲壁171の平らな下側面に係合し、外側に移動することが防止される。したがって、膜囲壁171が通常の取り扱いの下でコネクタ部から不意に係脱することが防止される。しかし、バイアル・アダプタが固定位置に保持されている間、流体移送装置に比較的大きな規模の垂直の力が加えられると、本明細書で下記に説明されるように、バイアル・アダプタが二重膜シール・アクチュエータから係脱する可能性がある。
【0088】
図17A及び17Bは、薬剤調合での2つの最も一般的な適用を概略的に示す。図17Aは、バイアルに液体を注入することを示し、図17Bは、液体をバイアルから引き出すことを示す。図17Bでは、空気チャンバ40から空気導管を通ってバイアルに入る空気によって生成された気泡が示される。一般的な用途では、薬剤を患者に投与するプロセスの第1の段階は、病院の薬局で行われる。第1のステップでは、薬剤師は、例えば蒸留水などの希釈液(溶媒)を含むバイアル14に予め連結されたバイアル・アダプタ160に装置10のコネクタ部25を連結するために、本明細書で上述された、固定された二重膜係合手順を使用する。この段階では、ピストン34はその最も遠位の位置にあり、液体チャンバ38は空である。次に、移送装置10は、図17Bに示されるように保持され、薬剤師は、流体移送装置10の流体チャンバ38を測定された量の希釈液で満たす。次いで、第1のバイアルが、液体移送装置10から切り離され、粉末又は濃縮液の形の薬剤を含む第2のバイアルが取り付けられる。この段階では、装置10の液体チャンバ38は、希釈液で満たされ、バイアル14の内部は、粉末又は液体の薬剤で部分的に満たされる。次いで、装置は、図17Aに示されるように底部でバイアルによって垂直に保持される。次いで、薬剤師はピストン・ロッド・キャップ32を押し下げて、ピストン34を遠位に押しやり、液体を液体チャンバ38から押し出し、導管48及びチャネル179(図16を参照されたい)を通してバイアル14内に入れる。同時に、液体チャンバ38の体積が、ピストンを遠位に移動することにより減少すると、空気チャンバ40の体積が増加する。これにより、空気チャンバ内に一時的な負圧状態が形成され、したがってバイアル14内の空気(又は不活性ガス)がチャネル178及び導管46を通って空気チャンバ40に吸い込まれる。さらに、同時に、液体がバイアルに加えられると、バイアル内の空気に使用可能な体積が減少し、一時的な正圧状態を形成し、したがって空気がバイアル14からチャネル178及び導管46を通って、前述したように一時的な負圧状態にある空気チャンバ40内に押しやられる。すべての液体がバイアルに加えられた後に、薬剤を完全に溶解するために、装置が徹底的に振り混ぜられる。この後、薬剤師は図17Bに示されるように、装置を逆さにし、ピストン・ロッド・キャップを近位方向に引き、必要量の薬剤をバイアルから引き出し、移送ユニット10の液体チャンバ38に入れる。同時に液体チャンバを満たし、空気チャンバを空にするための液体及び空気の流れは、図17Aに説明されるものと反対の方向になっている。
【0089】
移送装置10が必要量の薬剤で満たされた後に、薬剤師は装置10のコネクタ部からバイアル・アダプタを係脱し、専用のアダプタを通して輸液バッグ内に薬剤を注入し、又は専用のアダプタを通して患者に薬剤を投与する区域に移送ユニットを送る。流体移送装置10のコネクタ部25からバイアル・アダプタ160を係脱するために、4段階の固定された二重膜係合手順が逆順で連続的に行われる。即ち、バイアル・アダプタ160及びコネクタ部25が堅固に把持され、軸線方向の力がそれらを反対方向に引くために加えられる。これにより、アクチュエータ130がコネクタ部25の内部119内で遠位に移動される。拡張要素161及び162の外側表面はコネクタ部の本体128の内壁表面と接触しているので、二重膜シール・アクチュエータ130及びバイアル・アダプタ160は、コネクタ部25の遠位端に向かって共に移動する。導管46及び48は、コネクタ部の本体128の近位端で針ホルダ115に堅固に取り付けられている。したがって、シール・アクチュエータ130が本体128内で遠位に移動すると、導管46及び48の遠位端46a及び48aは、それらが膜143と130の間の元の位置に戻るまで、ダイアフラム143及び176を通って漸進的に引き戻される。アクチュエータ130がコネクタ部25の内部119の遠位端に達すると、弾性のアーム133及び134が自然な傾向によってショルダ部分129内で拡張部分を側方に外側に向かって押し、拡張要素161及び162は外側に移動する。このようにして、バイアル・アダプタ160の膜囲壁171が二重膜シール・アクチュエータ130から分離される。
【0090】
図18は、静脈内(IV)バッグへ、及び静脈内(IV)バッグから薬剤を移送するための流体移送装置10と共に使用されるスパイク・アダプタ200を示す断面図である。スパイク・アダプタ200は、近位端のスパイク要素177、及び遠位端で輸液セットを連結するためのスパイク・ポートへの標準的な「ツイスト・オフ」端部204で終端する本体200を備える。実質的に長手方向の延長部169が本体202に直角になっている。長手方向の延長部169の端部には膜囲壁171及び膜176がある。これらの要素は、スパイク要素177の先端から膜176への2つの別個のチャネル178及び179の存在を含む図11のバイアル・アダプタ60に対して上記に説明されたものとまったく同様である。
【0091】
図19は、図18に示されたスパイク・アダプタを使用する輸液バッグ206に取り付けられた流体移送装置10を示す断面図である。上述のシナリオで続けると、スパイク要素177が輸液バッグ206のスパイク・ポート208に挿入される。薬剤コネクタ部で満たされた流体移送装置10は、本明細書で上述した、固定された二重膜係合手順を使用してスパイク・アダプタ200に連結されている。バッグは、その中の液体が下にあり、液体の上にあるバッグの一部分、即ち空気(又は不活性ガス)によって占有されたバッグのボリュームが上方にあり、スパイク要素177の先端がこの空気の中に配置され、それによって囲まれているように吊り下げられる。次いで、移送装置10内のピストンは遠位の方向に押され、移送装置10内の液体チャンバ38から薬剤を押し出し、コネクタ部25内の液体導管48及びスパイク・アダプタ200内の液体チャネル179を通って、輸液バッグ206に入れる。同時に、輸液バッグの内部からの空気が、スパイク・アダプタ200内及び空気導管46の液体チャネル178を通って、移送装置10内の空気チャンバ40内に引かれる。薬剤が輸液バッグに移送された後に、本明細書で上述したように、コネクタ部25がスパイク・アダプタ200から係脱され、ツイスト・オフ端部204が捩じ切られ、輸液バッグ206が輸液配管セットに連結され、薬剤が通常の様式で患者に投与される。
【0092】
スパイク・アダプタ200は、バイアルから薬剤を引くための上述したものと同じ様式で、IVバッグから液体を引くためにも使用される。この場合には、IVバッグはスパイク要素177が液体の底部に配置され、その液体によって囲まれるように吊り下げられる。そのような液体は一般に、粉末の薬剤をバイアル内で溶解する(戻す)ための希釈液として使用される。アダプタ200を通して液体を輸液バッグに注入するには、空気/液体の交換を可能にするために、バッグ内に注入された液体と少なくとも同じ体積の空気の存在を必要とすることに留意されたい。そのような量の空気の存在は、すべての市販のバッグに関して既定のものではなく、したがって薬剤師によって必要な空気を予め満たすことができる。液体が(バイアル内で希釈する粉末の薬剤に関して)バッグから最初に引き出される場合、空気チャンバ40からの空気がバッグに注入され、このようにしてIVバッグへの液体の次の注入に必要な空気を提供する。バッグ・アダプタ200は、液体の引き出し、及び十分な体積の気体を収容するIVバッグに液体を注入するのに適しているが、IVバッグが十分な体積の気体を収容していない場合には、本明細書で下記に述べる薬剤注入アダプタ210がより良い選択である。
【0093】
図20は、一方向吸気バルブ212を備えるスパイク・アダプタ210を示す断面図である。図21は、図20に示されたスパイク・アダプタを使用する輸液バッグに取り付けられた流体移送装置を示す断面図である。スパイク・アダプタ210の構成要素のほとんどは、図18及び図19に示されるスパイク・アダプタ200の構成要素と同じである。一方向バルブ212に加えて、2つのスパイク・アダプタの間のその他の大きな違いは、スパイク・アダプタ210では空気チャネル178がスパイク要素177の先端からダイアフラム176に連続していないことである。チャネルは、空気がIVバッグの内部と移送装置10内の空気チャンバ40との間を通過できないように遮断されている。スパイク・アダプタ210では、チャネル178’が、長手方向の延長部169に設けられている。空気導管46の先端は、ダイアフラム176を貫通するとき、チャネル178’の近位端に入る。空気は、一方向バルブから開口218を通ってチャネル178’に入る。一方向バルブ212の動作は、図20から容易に理解される。バルブの内側には、半球形状のゴム・キャップ214がある。キャップの中央が、アダプタのフレームに取り付けられ、円周部が平らなシート220に着座する。液体が液体チャンバ38からIVバッグ206に注入されるとき、移送装置10内の空気チャンバ40の体積が増加し、空気の一時的な負圧状態を形成する。流体移送装置側の負圧により、キャップ214がシート220を「持ち上げ」、周囲の空気を一方向バルブ212を通して吸入し、空気を穴218を通してチャネル178’に入ることができるようにする。負圧がない場合、又は流体移送装置の側に正圧がある場合、キャップ214が、シート220の上に押し下げられ、バルブ212を通る空気の流れを遮断する。アダプタ210は、バッグ/液体/空気の位置に無関係にバッグへの液体の注入を可能にし、IVバッグ内の空気存在をまったく必要としない。しかし、液体をIVバッグから引くために装置10内の空気チャンバの体積が低下し、それによって正圧を形成し、バルブ212を閉鎖するので、液体をアダプタ210を使用してIVバッグから引き出すことができない。アダプタ210を使用する間、空気を移送装置10に吸入することができるが、空気又は薬剤又は気化物が移送装置10から漏れる可能性がまったくなく、それは、これが起こるためには、移送装置の空気チャンバの内部の圧力は、バルブ212の反対側の圧力よりも高くなっている必要があるからであり、したがって一方向バルブが通常の密閉された構成になることに留意されたい。無菌状態を確かにし、細菌が流体移送装置に進入するのを防止するために、標準的な0.22ミクロンのフィルタ216が設けられ、チャネル178’内に入る開口218を覆う。薬剤が輸液バッグに移送された後に、本明細書で上述したように、コネクタ部25がスパイク・アダプタ210から係脱され、ツイスト・オフ端部204が捩じ切られ、輸液バッグ206が輸液配管セットに連結され、薬剤が通常の様式で患者に投与される。
【0094】
図22は、患者の血流に直接的に導く輸液配管、配管システム、容器、止めコックなどの、ポートとして標準的なルアー・コネクタを備える任意の流体受け器に、本発明の流体移送アセンブリ10から直接的に薬剤を移送するためのアダプタ222を示す断面図である。アダプタ222は、液体の注入の間に液体チャンバから排出される液体の体積を置き換えるのに要する必要体積の空気を移送装置10の空気チャンバ40に提供するための一方向吸気バルブ212を備える。図23は、コネクタ部25を介してアダプタ222に取り付けられた流体移送装置10を示す断面図である。アダプタ222は、スパイク要素177、本体202、及びねじ切り端部204が、任意のルアー・コネクタ・ポートに直接的に連結されるようになされた標準的なルアー・コネクタ222に置き換えられたことを除いて、本質的に図20に示されたスパイク・アダプタ210と同じである。
【0095】
流体移送装置10の動作及び使用、特に様々なアダプタを伴ったその使用の詳細な説明が図8に示された実施例に関連するが、これらの様々なアダプタは、図1に示された装置10の実施例の連結部に取り付けることもでき、流体を同様の様式で移送するために使用されることに留意されたい。
【0096】
本発明のいくつかの実施例を例として説明したが、本発明は多くの変更、変形、及び改造によって実施することができ、本発明の趣旨から逸脱せずに、又は特許請求の範囲の範囲を超えることなく、当業者の範囲内にある多くの等価物又は別の解決策を使用することによって実施することができることが明らかである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体移送作業で使用するコネクタ部であって、前記コネクタ部が、中空の円筒形の外側本体を含み、前記外側本体は、
a.前記外側本体から径方向に突出し、開口で終端する遠位のショルダ部分であって、流体移送構成要素の近位端が連結のために前記開口を通って挿入できる、遠位のショルダ部分と、
b.中央部分を有する密閉された近位のキャップであって、前記中央部分は、液体移送装置の遠位端に連結するために、そこから近位に突出する連結手段を含む、近位のキャップと、
c.少なくとも1つの導管をその中に保持するために、前記密閉された近位のキャップの中央部分から前記外側本体の内部に突出する針ホルダであって、前記導管は、鋭い尖った端部を含み、さらに孔を設けられ、前記流体移送作業中に液体が前記孔を通って移送される、針ホルダと、
d.前記外側本体の中空の内部で、往復移動可能な二重膜シール・アクチュエータであって、
i)円筒形のアクチュエータ・ケーシングと、
ii)前記ケーシングの近位端を密封する近位の膜と、
iii)前記ケーシングの遠位端を密封する遠位の膜であって、前記遠位の膜の一部分が前記ケーシングから遠位に突出する、遠位の膜と、
iv)少なくとも2つの弾性のアームであって、前記アームの近位端において前記ケーシングの外側の中間部分に連結され、前記アームの遠位端において拡張要素を含む、弾性のアームとを含む、二重膜シール・アクチュエータとを有する、コネクタ部。
【請求項2】
前記二重膜シール・アクチュエータが、前記コネクタ部の円筒形の本体の遠位端にあるとき、前記弾性のアームの拡張要素が前記コネクタ部の円筒形の本体の前記遠位のショルダ部分に押し込まれ、それによって流体移送構成要素の近位端にある膜囲壁が前記コネクタ部の遠位端にある開口に挿入でき、前記膜囲壁内の膜が前記二重膜シール・アクチュエータのケーシングから遠位に突出する遠位の膜の一部分に接触するまで進めることができるようになっている、請求項1に記載されたコネクタ部。
【請求項3】
前記遠位のショルダ部分の直径、及びアームの遠位端にある前記拡張要素の大きさが、前記二重膜シール・アクチュエータ及び流体移送構成要素を互いに向かって押すための軸線方向の力が加えられた場合、膜囲壁の側面が、アームの遠位端にある前記拡張要素が径方向内側に移動するのを防止するようになっており、これにより、前記膜囲壁の側面が前記拡張要素に対して近位に移動するまで、遠位のアクチュエータの膜が前記膜囲壁内の膜に対して圧縮され、この時点で、前記拡張要素は、径方向内側に移動するための空間を有し、前記二重膜シール・アクチュエータの遠位のショルダ部分から解除され、前記膜囲壁の遠位の下側面に当接し、それによって、前記遠位のアクチュエータの膜が、固定され、且つ圧縮された係合で、前記膜囲壁内の前記膜に対してロックされ、前記流体移送構成要素からの前記アクチュエータの係脱を防止し、前記アクチュエータ及び前記連結された流体移送構成要素が、前記コネクタ部の外側本体の中空の内部で往復可能に移動できるような、直径及び大きさとなっている、請求項2に記載されたコネクタ部。
【請求項4】
二重膜シール・アクチュエータが、前記コンダクタ部の円筒形の本体の遠位端にある場合、前記少なくとも1つの導管の鋭い尖った端部が前記二重膜シール・アクチュエータの近位の膜と遠位の膜との間に配置される、請求項1に記載されたコネクタ部。
【請求項5】
前記アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素が前記コネクタ部の外側本体の中空の内部で近位に移動できる距離、及び2つの導管の長さが、前記アクチュエータ及び前記取り付けられた流体移送構成要素が近位に移動した場合、前記少なくとも1つの導管の鋭い尖った端部が前記アクチュエータの前記遠位の膜、及び前記膜囲壁内の膜を貫通し、それによって、前記コネクタ部と前記流体移送構成要素との間の液体経路が確立されるようになっており、前記アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素が前記コネクタ部の前記外側本体の前記中空の内部で遠位に移動した場合、前記少なくとも1つの導管の前記鋭い尖った端部が前記アクチュエータの前記遠位の膜、及び前記膜囲壁内の前記膜を通って引き抜かれ、それによって、前記コネクタ部と前記流体移送構成要素との間の前記液体経路が遮断されるような、距離及び長さとなっている、請求項3に記載されたコネクタ部。
【請求項6】
固定された二重膜係合を行うために、請求項1のコネクタ部を流体移送構成要素に連結する方法であって、
a.前記コネクタ部の外側本体の前記遠位のショルダ部分の前記開口を前記流体移送構成要素の近位端の付近に配置するステップと、
b.前記コネクタ部の外側本体を遠位に移動させることによって二重膜係合動作を開始し、前記流体移送構成要素の近位端にある膜囲壁が前記コネクタ部の内部に受けられるまで行うステップと、
c.前記アクチュエータの前記遠位の膜が前記流体移送構成要素の近位端で前記膜囲壁内の膜に接触し、押し付けられるまで、前記外側本体を前記流体移送構成要素に対してさらに遠位に移動させるステップであって、このステップの間、前記二重膜シール・アクチュエータに取り付けられたアームの遠位端にある前記拡張要素が、前記膜囲壁の側面によって前記コネクタ部の前記外側本体の前記遠位のショルダ部分に保持され、それによって、前記アクチュエータが前記コネクタ部の前記外側本体内を近位に移動するのを防止する、ステップと、
d.前記膜囲壁の前記側面が前記拡張要素を通過することができるようにするために、前記アクチュエータの前記遠位の膜、及び前記第2の流体移送構成要素の近位端にある前記膜囲壁内の前記膜が共に十分に圧縮されるまで、前記外側本体を前記流体移送構成要素に対してさらに遠位に移動させるステップであって、それによって、前記アームが径方向内側に移動できるようになり、それによって、前記遠位のアクチュエータの膜が、固定され、且つ圧縮された係合で、前記膜囲壁内の前記膜に対してロックされ、前記流体移送構成要素から前記アクチュエータの係脱を防止し、前記アクチュエータ及び前記取り付けられた流体移送構成要素が、前記コネクタ部の外側本体の中空の内部で往復可能に移動できるようにし、前記アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素を前記コネクタ部の前記外側本体の中空の内部で近位に移動させた場合、少なくとも1つの導管の鋭い尖った端部が前記アクチュエータの遠位の膜、及び前記膜囲壁内の膜を貫通し、それによって、前記コネクタ部と前記流体移送構成要素との間の液体経路を確立し、前記アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素を前記コネクタ部の前記外側本体の前記中空の内部で遠位に移動させた場合、前記少なくとも1つの導管の前記鋭い尖った端部を前記アクチュエータの前記遠位の膜、及び前記膜囲壁内の前記膜を通って引き抜き、それによって、前記コネクタ部と前記流体移送構成要素の間の前記液体経路を遮断する、ステップとを含む、コネクタ部を流体移送構成要素に連結する方法。
【請求項7】
前記コネクタ部の構造が、ロック固定デバイス又は解除機構を設定する必要なしに、コネクタ部及び流体移送構成要素が1回の軸線方向の動作によって連結され、1回の軸線方向の動作によって係脱できるようにする、請求項6に記載された、コネクタ部を流体移送構成要素に連結する方法。
【請求項1】
流体移送作業で使用するコネクタ部であって、前記コネクタ部が、中空の円筒形の外側本体を含み、前記外側本体は、
a.前記外側本体から径方向に突出し、開口で終端する遠位のショルダ部分であって、流体移送構成要素の近位端が連結のために前記開口を通って挿入できる、遠位のショルダ部分と、
b.中央部分を有する密閉された近位のキャップであって、前記中央部分は、液体移送装置の遠位端に連結するために、そこから近位に突出する連結手段を含む、近位のキャップと、
c.少なくとも1つの導管をその中に保持するために、前記密閉された近位のキャップの中央部分から前記外側本体の内部に突出する針ホルダであって、前記導管は、鋭い尖った端部を含み、さらに孔を設けられ、前記流体移送作業中に液体が前記孔を通って移送される、針ホルダと、
d.前記外側本体の中空の内部で、往復移動可能な二重膜シール・アクチュエータであって、
i)円筒形のアクチュエータ・ケーシングと、
ii)前記ケーシングの近位端を密封する近位の膜と、
iii)前記ケーシングの遠位端を密封する遠位の膜であって、前記遠位の膜の一部分が前記ケーシングから遠位に突出する、遠位の膜と、
iv)少なくとも2つの弾性のアームであって、前記アームの近位端において前記ケーシングの外側の中間部分に連結され、前記アームの遠位端において拡張要素を含む、弾性のアームとを含む、二重膜シール・アクチュエータとを有する、コネクタ部。
【請求項2】
前記二重膜シール・アクチュエータが、前記コネクタ部の円筒形の本体の遠位端にあるとき、前記弾性のアームの拡張要素が前記コネクタ部の円筒形の本体の前記遠位のショルダ部分に押し込まれ、それによって流体移送構成要素の近位端にある膜囲壁が前記コネクタ部の遠位端にある開口に挿入でき、前記膜囲壁内の膜が前記二重膜シール・アクチュエータのケーシングから遠位に突出する遠位の膜の一部分に接触するまで進めることができるようになっている、請求項1に記載されたコネクタ部。
【請求項3】
前記遠位のショルダ部分の直径、及びアームの遠位端にある前記拡張要素の大きさが、前記二重膜シール・アクチュエータ及び流体移送構成要素を互いに向かって押すための軸線方向の力が加えられた場合、膜囲壁の側面が、アームの遠位端にある前記拡張要素が径方向内側に移動するのを防止するようになっており、これにより、前記膜囲壁の側面が前記拡張要素に対して近位に移動するまで、遠位のアクチュエータの膜が前記膜囲壁内の膜に対して圧縮され、この時点で、前記拡張要素は、径方向内側に移動するための空間を有し、前記二重膜シール・アクチュエータの遠位のショルダ部分から解除され、前記膜囲壁の遠位の下側面に当接し、それによって、前記遠位のアクチュエータの膜が、固定され、且つ圧縮された係合で、前記膜囲壁内の前記膜に対してロックされ、前記流体移送構成要素からの前記アクチュエータの係脱を防止し、前記アクチュエータ及び前記連結された流体移送構成要素が、前記コネクタ部の外側本体の中空の内部で往復可能に移動できるような、直径及び大きさとなっている、請求項2に記載されたコネクタ部。
【請求項4】
二重膜シール・アクチュエータが、前記コンダクタ部の円筒形の本体の遠位端にある場合、前記少なくとも1つの導管の鋭い尖った端部が前記二重膜シール・アクチュエータの近位の膜と遠位の膜との間に配置される、請求項1に記載されたコネクタ部。
【請求項5】
前記アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素が前記コネクタ部の外側本体の中空の内部で近位に移動できる距離、及び2つの導管の長さが、前記アクチュエータ及び前記取り付けられた流体移送構成要素が近位に移動した場合、前記少なくとも1つの導管の鋭い尖った端部が前記アクチュエータの前記遠位の膜、及び前記膜囲壁内の膜を貫通し、それによって、前記コネクタ部と前記流体移送構成要素との間の液体経路が確立されるようになっており、前記アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素が前記コネクタ部の前記外側本体の前記中空の内部で遠位に移動した場合、前記少なくとも1つの導管の前記鋭い尖った端部が前記アクチュエータの前記遠位の膜、及び前記膜囲壁内の前記膜を通って引き抜かれ、それによって、前記コネクタ部と前記流体移送構成要素との間の前記液体経路が遮断されるような、距離及び長さとなっている、請求項3に記載されたコネクタ部。
【請求項6】
固定された二重膜係合を行うために、請求項1のコネクタ部を流体移送構成要素に連結する方法であって、
a.前記コネクタ部の外側本体の前記遠位のショルダ部分の前記開口を前記流体移送構成要素の近位端の付近に配置するステップと、
b.前記コネクタ部の外側本体を遠位に移動させることによって二重膜係合動作を開始し、前記流体移送構成要素の近位端にある膜囲壁が前記コネクタ部の内部に受けられるまで行うステップと、
c.前記アクチュエータの前記遠位の膜が前記流体移送構成要素の近位端で前記膜囲壁内の膜に接触し、押し付けられるまで、前記外側本体を前記流体移送構成要素に対してさらに遠位に移動させるステップであって、このステップの間、前記二重膜シール・アクチュエータに取り付けられたアームの遠位端にある前記拡張要素が、前記膜囲壁の側面によって前記コネクタ部の前記外側本体の前記遠位のショルダ部分に保持され、それによって、前記アクチュエータが前記コネクタ部の前記外側本体内を近位に移動するのを防止する、ステップと、
d.前記膜囲壁の前記側面が前記拡張要素を通過することができるようにするために、前記アクチュエータの前記遠位の膜、及び前記第2の流体移送構成要素の近位端にある前記膜囲壁内の前記膜が共に十分に圧縮されるまで、前記外側本体を前記流体移送構成要素に対してさらに遠位に移動させるステップであって、それによって、前記アームが径方向内側に移動できるようになり、それによって、前記遠位のアクチュエータの膜が、固定され、且つ圧縮された係合で、前記膜囲壁内の前記膜に対してロックされ、前記流体移送構成要素から前記アクチュエータの係脱を防止し、前記アクチュエータ及び前記取り付けられた流体移送構成要素が、前記コネクタ部の外側本体の中空の内部で往復可能に移動できるようにし、前記アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素を前記コネクタ部の前記外側本体の中空の内部で近位に移動させた場合、少なくとも1つの導管の鋭い尖った端部が前記アクチュエータの遠位の膜、及び前記膜囲壁内の膜を貫通し、それによって、前記コネクタ部と前記流体移送構成要素との間の液体経路を確立し、前記アクチュエータ及び取り付けられた流体移送構成要素を前記コネクタ部の前記外側本体の前記中空の内部で遠位に移動させた場合、前記少なくとも1つの導管の前記鋭い尖った端部を前記アクチュエータの前記遠位の膜、及び前記膜囲壁内の前記膜を通って引き抜き、それによって、前記コネクタ部と前記流体移送構成要素の間の前記液体経路を遮断する、ステップとを含む、コネクタ部を流体移送構成要素に連結する方法。
【請求項7】
前記コネクタ部の構造が、ロック固定デバイス又は解除機構を設定する必要なしに、コネクタ部及び流体移送構成要素が1回の軸線方向の動作によって連結され、1回の軸線方向の動作によって係脱できるようにする、請求項6に記載された、コネクタ部を流体移送構成要素に連結する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2013−66748(P2013−66748A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−269537(P2012−269537)
【出願日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【分割の表示】特願2010−505003(P2010−505003)の分割
【原出願日】平成20年4月27日(2008.4.27)
【出願人】(509294391)プラストメッド リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【分割の表示】特願2010−505003(P2010−505003)の分割
【原出願日】平成20年4月27日(2008.4.27)
【出願人】(509294391)プラストメッド リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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