説明

有料道路の料金収受システム

【課題】従来は、車載器や車両側装置やICナンバープレートが必要であり、費用がかかる。また、携帯電話のGPS機能を利用して車両の位置情報を取得するシステムは、一般道路上の自動車が、料金所の下を通過しただけで通行料金を請求されるおそれがある。
【解決手段】 携帯電話2の赤外線通信機能を使い、高速道路などの有料道路の通行料金の支払いを、その場で行うのではなく、後日、携帯電話2の通信料金の支払いと同時に行うため、料金所をノンストップで自動車が通過できるシステム利用の費用を安価にできる。また、料金所内の赤外線通信装置4と料金所を通過する自動車1内の携帯電話2との間で赤外線通信を行うのは、赤外線はあまり通信距離も広範囲では無く、同じ機器への同時接続も限られるので、この条件を利用して料金支払い者の特定を行うためである。サーバー6は後日、携帯電話2の通話料金に有料道路の通行料金を加算してユーザに請求する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有料道路の料金収受システムに係り、特に有料道路を走行する自動車のユーザから有料道路の走行料金を、料金所の係員に代わって自動的に収受する有料道路の料金収受システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、有料道路の料金所では渋滞が起こるのが当たり前になりつつある。この有料道路の料金所での渋滞の緩和のために、ETC(Electronic Toll Collection)システムが普及しつつある。このETCシステムは、自動車に搭載された車載器と、有料道路の料金所等に設置された路側器との間で、車載器固有番号や車載情報等を無線通信により送受信し、その自動車の有料道路の通行料金等を上位のデータセンタに通知し、当該自動車の所有者の金融機関の口座引き落とし処理へ引き渡すことにより、有料道路料金所で自動車を一旦停止させることなく通過させ、通行料金の徴収は別途行う自動料金収受システムである。このETCシステムに類似した料金収受システムが従来提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1記載の従来の料金収受システムでは、車両に設置され、ID情報が記録されたメモリを有し、外部からの非接触な記録内容の読取及び書き込みが可能な車両側装置と、有料道路の入口料金所に設置され、車両側装置に対してID情報を非接触で読み取り、入口情報を非接触に書き込む入口側路上機と、有料道路のチェックバリアに設置され、車両側装置に対してID情報を非接触で読み取り、チェックバリア情報を非接触に書き込むチェックバリア側路上機と、有料道路の出口料金所に設置され、車両側装置に対してID情報を非接触で読み取り、出口情報を非接触に書き込む出口側路上機と、出口側路上機が読み取った情報から料金を算出して課金処理を行う課金処理装置とを備える構成である。
【0004】
従って、上記のETCシステムや特許文献1記載の料金収受システムでは、車載器や車両側装置などの専用機器が別途必要であり、それを自動車所有者個人が購入しなければならない。しかしながら、高速自動車道路、自動車専用道路などの有料道路をあまり利用しない自動車所有者にとっては、上記の専用機器の金額は多少高価であり、また、支払いも引き落としなので金融機関の口座の開設やクレジットカードの登録などが必要である。その影響か、このETCシステムを利用する自動車所有者の数は予期した程度に増加しておらず、ETCシステム導入の現状は、芳しくない。
【0005】
そこで、ETCシステムを利用する自動車所有者の金銭的負担を低減することを目的として、ICチップを埋設したICナンバープレートを自動車に装着するのみで、自動車が有料道路に設置された有料道路料金所を一旦停止することなくスムーズに通過し得る有料道路の料金収受システムが従来より提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
すなわち、この特許文献2記載の従来の有料道路の料金収受システムでは、自動車(車両)を所有するユーザに関する個人情報及び車両に関する車両情報などの各種の情報を登録したICチップを埋め込んで設けた無線通信機能を有する非接触型のICナンバープレートを車両に装着し、有料道路に設置された路側アンテナが、有料道路を走行する車両のICナンバープレートから発信される各種の情報を受信し、その受信情報を有料道路及び有料道路料金所に設置された路側アンテナの基地局を介して有料道路通行料金請求/徴収代行会社サーバへ送信して、車両の通行実績に基づき有料道路の通行料金を計算させ、計算した通行料金を有料道路通行料金請求/徴収代行会社が有料道路管理会社に代行して車両を所有するユーザから収受する構成である。
【0007】
また、有料道路の料金所ではETCシステムを使用した車両の通過レーンと、現金又はプリペイドカードで通行料金を支払う通常の車両の通過レーンとを別々に設ける必要があり、その設備費が高額になることから設備費を低減するようにした有料道路の料金所通過方法も従来より知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
すなわち、この特許文献3記載の従来の有料道路の料金所通過方法は、車両に搭載された携帯電話によりインターチェンジの入場口の位置情報を全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)を利用して取り込み、基地局に位置情報と携帯電話の電話番号とを送信し、基地局は受信の位置情報と電話番号とで位置認証及び個人認証を行い、高速道路の料金所の通過を許可する許可情報を携帯電話に返信する構成である。この特許文献3記載の発明によれば、有料道路の通行料金は利用者が契約している携帯電話会社に請求するようにしておくことができるので、車載器などの専用機器を設けずとも位置認証及び個人認証で認められた車両は料金所にて停止することなく通過することができる。
【0009】
【特許文献1】特開平5−233907号公報
【特許文献2】特開2004−133563号公報
【特許文献3】特開2003−217078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2記載の従来の有料道路の料金収受システムでは、車載器や車両側装置は不要であるが、ICナンバープレートが必要であり、ICナンバープレートを自動車所有者個人が購入する点は、ETCシステムを利用するために車載器を購入する場合と何ら変わらず、ICナンバープレートを購入する費用がかかる。
【0011】
一方、特許文献3記載の有料道路の料金所通過方法では、ETCシステムを利用するための専用機器を別途購入するのではなく、現在、多数の人が持っている携帯電話を使ってETCシステムと同じように有料道路の料金所をノンストップで通過できるため、多くの人が利用し、渋滞の緩和に繋がると思われるが、このものは、携帯電話のGPS機能を利用して車両の位置情報を取得するようにしているため、正しい位置情報を認識できず、誤請求がなされる場合がある。例えば、料金所の下に一般道路がある場合、一般道路上の自動車が、料金所の下を通過しただけで通行料金を請求されるおそれがある。
【0012】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、専用機器を購入することなく、有料道路の料金所をノンストップで通過できると共に、有料道路の通行料金を収受し得る有料道路の料金収受システムを提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明の他の目的は、有料道路の通行料金の支払い者を確実に特定して、正確に通行料金を請求し得る有料道路の料金収受システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、第1の発明の有料道路の料金収受システムは、有料道路の料金所内に設置されており、設置されている料金所に固有のIDを少なくとも含む第1の料金データを送信する近距離通信用の通信装置と、料金所を通過する自動車内に搭載されており、通信装置との間で近距離通信を行う近距離通信機能を備えた携帯通信端末と、携帯通信端末と通信装置との間で近距離通信を行うことにより、携帯通信端末から送信された受け取り確認データが通信装置を介して供給され、受け取り確認データに基づき、料金所の入口に設置された入口ゲート及び料金所の出口に設置された通過ゲートを開閉制御するゲート制御装置と、携帯通信端末の通信使用料金を請求する通信事業者が管理するサーバーとを有し、携帯通信端末は、携帯通信端末が搭載されている自動車が入口ゲートから進入して料金所を通過する際に、通信装置から送信された第1の料金データを受信することにより、その第1の料金データ中の料金所に固有のIDに携帯通信端末に固有の識別情報を付加した受け取り確認データを通信装置へ応答送信する応答送信手段と、受信した第1の料金データに携帯通信端末に固有の識別情報を付加した第2の料金データを生成してサーバーへ送信する第2の料金データ送信手段とを備え、ゲート制御装置は、受け取り確認データ中の料金所に固有のIDがその料金所のものであると判定した時に通過ゲート及び入口ゲートを開けるように開閉制御し、サーバーは、第2の料金データを受信する受信手段と、受信した第2の料金データから有料道路の通行料金を計算する計算手段と、計算して得られた通行料金を携帯通信端末の通信料金に加算する加算手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
この発明では、携帯通信端末が本来、別の目的で備えている近距離通信機能を利用するようにしたため、従来のETCシステムや特許文献2に記載されたICナンバープレートのような専用機器を必要とせず、専用機器の購入による出費がなく、安価に料金収受システムを利用することができる。
【0016】
また、この発明では、自動車は、完全に専用の近距離通信専用レーンを通って料金所に進入することができ、通常の支払いを行う車とは完全に別レーンとすることができる。また、本発明では、赤外線通信などの近距離通信を利用するため、携帯電話のGPS機能を利用して車両の位置情報を取得する特許文献3記載のシステムに比べて、支払い者を誤認識することなく、正確に特定することができる。更に、本発明では、携帯通信端末の購入時に既に携帯通信端末の通信事業者への登録が済んでおり、本発明の料金収受システム利用のために、ETCシステムのような支払い登録を行う必要が無い。
【0017】
また、上記の目的を達成するため、第2の発明の有料道路の料金収受システムは、通信装置が、設置されている料金所に固有のIDに、料金所が有料道路の出口料金所であるときには出口情報、料金所が有料道路の入口料金所であるときには入口情報と、料金所における通行料金データとを付加してなるデータを、第1の料金データとして生成して送信する第1の料金データ送信手段を備えることを特徴とする。
【0018】
また、上記の目的を達成するため、第3の発明の有料道路の料金収受システムは、通信装置が、料金所内の自動車走行路に沿って、一定間隔で複数個配置されてなることを特徴とする。この発明では、料金所内で自動車に搭載された携帯通信端末が複数個の通信装置のいずれかと通信することができるので、自動車は速度を落とさないで料金所を通過することができる。
【0019】
また、上記の目的を達成するため、第4の発明の有料道路の料金収受システムは、通信装置が、近距離通信のための送受信部を、放射状の送受信範囲を持つように設定されていることを特徴とする。この発明では、料金所内で自動車に搭載された携帯通信端末が通信装置により確実に赤外線通信などの近距離通信をすることができる。
【0020】
また、上記の目的を達成するため、第5の発明の有料道路の料金収受システムは、サーバーが、計算手段により計算して得られた通行料金を、携帯通信端末の利用者に代わって、本来支払うべき有料道路事業者へ立替支払いする立替送金手段を有することを特徴とする。この発明では、携帯通信端末の通信事業者が有料道路事業者へ立替支払いした有料道路の通行料金を、携帯通信端末の本来の通信利用料金に加算して請求することができるため、支払いの一本化を実現できる。
【0021】
また、上記の目的を達成するため、第5の発明の有料道路の料金収受システムは、通信装置が、赤外線通信を行う赤外線通信装置であり、携帯通信端末が、赤外線送受信部を内蔵する赤外線通信機能を有する携帯通信端末であり、通信装置と携帯通信端末との間で赤外線通信を行って、第1の料金データと受け取り確認データの送受信を行うことを特徴とする。この発明では、携帯通信端末が通信のために備えている赤外線通信機能を利用して、有料道路の料金収受のための通信に使用することができるため、有料道路の料金所をノンストップで通過するサービスを、専用機器を購入することなく利用することができる。
【0022】
また、赤外線通信を使うのは、支払い者の特定をするもので、赤外線はあまり通信距離も広範囲では無く、同じ機器への同時接続も限られるので、この条件を利用して料金支払い者の特定を行う。赤外線の通信範囲があまり広く無いので、もし、隣接した一般道があったとしても、そちらの走行車が間違って料金支払いの対象とならないための対策となる。また、同時接続人数の制限で、確実に支払いを行わないと通過できない事となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、携帯通信端末の赤外線通信機能等の近距離通信機能を使い、高速道路などの有料道路の通行料金の支払いを、その場で行うのではなく、後日、携帯通信端末の通信料金の支払いと同時に行うようにするようにしたため、ETCシステムのように別途、専用機器を購入することを必要とせずに、安価な構成により料金所のノンストップ化の料金収受システムを利用でき、料金収受システムの普及に寄与するところ大である。
【0024】
また、本発明によれば、赤外線通信などの近距離通信を利用することにより、携帯電話のGPS機能を利用して自動車の位置情報を取得する特許文献3記載のシステムに比べて、支払い者を誤認識することなく、正確に特定することができるため、間違った料金請求をなくし、料金収受システムの信頼性を向上することができる。
【0025】
更に、現在のETCシステムの料金所に進入するETCレーンには、ETCシステムを利用する自動車以外の通常の支払いを行う自動車とが混在しているため、料金所を通過するノンストップの速度はあまり速くはないが、本発明によれば、自動車は、完全に専用の近距離通信専用レーンを通って料金所に進入することができ、通常の支払いを行う自動車とは完全に別レーンとなるため、ETCシステムよりも速い速度のノンストップ化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明の実施の形態について、図面と共に説明する。図1は本発明になる有料道路の料金収受システムの一実施の形態のシステム構成図を示す。同図に示すように、本実施の形態は、有料道路を走行する自動車であって、このシステムが適用されるユーザーが運転する自動車1と、自動車1に搭載されている赤外線通信機能を備えた携帯電話2と、有料道路の料金所に設置された一又は二以上の赤外線通信装置4と、上記料金所に設置されたゲート制御装置5と、通信事業者である携帯電話会社が運営・管理するサーバー6とから構成されている。
【0027】
自動車1は、一般的に使われている乗用車から業務用トラックまでを含めた一般のユーザーが使用する自動車(車両)である。携帯電話2は、赤外線通信機能を元々具備している携帯電話で、携帯電話会社やメーカーなどの制限は無いものとする。なお、従来の携帯電話に赤外線通信機能を有する構成の一例として、携帯電話の外部コネクタに赤外線通信ユニットを接続する構成が知られているが(例えば、特開2002−247186号公報)、本実施の形態の携帯電話2は、外部コネクタに赤外線通信ユニットを接続したものではなく、赤外線送受信部を携帯電話自身が内蔵したものである。
【0028】
携帯電話2を使うのは、料金の支払いが行われているもので、一般的に多く普及していて、常時持ち歩いているものであるためである。また、有料道路の通行料金は、後日、携帯電話の料金と一緒に支払う事で、料金の支払い方法の一本化を図る。この携帯電話2の設置箇所は、自動車1のフロントウィンドウの近くに赤外線通信装置が外向きになるように設置しておく。また、携帯電話2は、料金所に設置された赤外線通信装置4との間で赤外線通信を行い、料金データaとして、料金所固有のIDと通行料金データ、又は、高速道路などの有料道路での入口情報、出口情報を受信する。
【0029】
携帯電話2は料金データaを受信すると、受信した料金データaからの料金所固有のIDと携帯電話2固有のIDを受け取り確認データbとして赤外線通信装置4へ送信する。また、携帯電話2は受信した料金データaに携帯電話2固有の識別情報(ID)を付加してなる料金データcを携帯電話会社のサーバー6へ送信する。
【0030】
図2は料金所の一実施の形態の概略構成図を示す。同図中、図1と同一構成部分には同一符号を付してある。図2において、料金所の入口には開閉自在な入口ゲート3が設けられ、料金所の出口には開閉自在な通過ゲート7が設けられている。また、入口ゲート3と通過ゲート7との間には例えば5台の赤外線通信装置4a〜4e(図1の赤外線通信装置4に相当)が料金所内の自動車走行路に沿って所定の等間隔距離で設置されており、赤外線通信装置4eと通過ゲート7との間にはゲート制御装置5が設置されている。
【0031】
入口ゲート3は、赤外線通信を行う自動車を特定するためのもので、赤外線通信ゾーンに1台の自動車のみを存在させるためのゲートである。これにより、赤外線通信を行うユーザーの携帯電話2を特定する。入口ゲート3にはセンサが付いており、初期状態では、入口ゲート3は開いた状態となっている。入口ゲート3を自動車が通過すると、上記のセンサが感知して入口ゲート3を閉める。携帯電話機2と赤外線通信装置4(4a〜4e)との間の赤外線通信が正常に行われると、通過ゲート7が開き、これと同時に入口ゲート3も開き、次の自動車が通過するまでは、通過ゲート3、7は開いたままとなる。
【0032】
赤外線通信装置4(4a〜4e)は、料金所固有のIDと通行料金データ、又は有料道路での入口情報、出口情報を料金データaとしてユーザー携帯電話2へ渡す機能を担う。また、携帯電話2から受け取り確認データbを受信した時に、その受け取り確認データbをゲート制御装置5へ転送する機能も有する。
【0033】
赤外線通信装置4(4a〜4e)はすべてゲート制御装置5に接続されており、ゲート制御装置5でその動作が管理される。また、赤外線通信装置4は、図2に4a〜4eで示すように、例えば5台を料金所内の自動車走行路に沿って並べる事で通信範囲を広げる。この事で、通信時間を増やし、通過する自動車の速度低下を抑えたまま、通信する事ができる。
【0034】
更に、赤外線通信装置4(4a〜4e)は、図3に示すように、その赤外線送受信部8が、蛍光灯のように放射状の広い赤外線送受信範囲となるように、ある程度広い指向性を有すると共に、その赤外線送受信範囲が斜め下前方に(つまり、前方を通過する自動車の運転席方向に)設定されている。
【0035】
ゲート制御装置5は、入口ゲート3及び通過ゲート7の開閉制御を行う。また、ゲート制御装置5は、携帯電話2からの受け取り確認データbが赤外線通信装置4を介して送られると、受信した受け取り確認データbの料金所固有のIDが、それぞれの料金所のIDと一致しているかを確認し、確認できた場合は、通過ゲート7を開けて自動車1を通過させることができるようにする。この時、入口ゲート3も開ける。
【0036】
携帯電話会社のサーバー6は、携帯電話2から送られてきた料金データcを読み取り、それが入口情報と出口情報であった場合は、有料道路の入口から出口までの料金計算を行い、それが通行料金の金額であった場合は計算せずに、有料道路の料金金額をユーザーへの携帯電話料金での請求に追加する。求められた有料道路料金は、携帯電話会社が立替の形で図1に10で示すように管理会社に支払われ、携帯電話2の所有者は図1に11で示すように、その立替分を携帯電話の料金と一緒に支払う事となる。
【0037】
次に、本実施の形態の動作について図4のフローチャートを併せ参照して説明する。本実施の形態では、首都高速道路などの有料道路の料金所を、赤外線通信機能付きの携帯電話2を搭載した自動車1がノンストップで通過し、有料道路の通行料金を携帯電話2の支払いと一緒に支払う事ができるサービスを受けるために、ユーザーはまず、携帯電話会社のサービス登録時に、車検証の携帯写真などを送信して、自車の種別を登録しておく。自動車が大型か小型であるか、乗用車かトラックであるかなどの自動車の種別に対応して異なる有料道路通行料金に対応するためである。
【0038】
また、高速道路などの有料道路を使う前に、車内の運転席前のフロントガラスの近くに、携帯電話2を外向きに、具体的には携帯電話2の赤外線通信部が、料金所の赤外線通信装置4側になるように設置する。また、携帯電話2が赤外線通信装置4から料金データaを受信したときには、料金データaに携帯電話2固有のIDを付加してなる料金データcを携帯電話2のユーザが契約している携帯電話会社のサーバー6へ自動送信するように予め設定しておく。
【0039】
その状態で、自動車1を走行させ、有料道路の料金所が近付いてきたら(ステップS1)、赤外線通信専用レーンへ入り、走行速度を例えば30km/h〜40km/hまで落とし、入口ゲート3が開いているなら、そのまま入口ゲート3を通過して赤外線通信装置4と赤外線通信を行うが、もし、入口ゲート3が閉じていたなら、開くまで減速などを行い、入口ゲート3が開いてから入口ゲート3内へと進む。
【0040】
入口ゲート3を通過すると、入口ゲート3は閉じられて次の自動車が料金所内に進入できないようになる。赤外線通信専用レーンに続く料金所内では、赤外線通信装置4(4a〜4e)が設置されており、自動車1はこの赤外線通信装置4(4a〜4e)の前を通過する。この時、自動車1は、通過速度を30km/h〜40km/hまで落として通過する。赤外線通信装置4a〜4eは、図2に示すように例えば約20mの範囲で設置しておき、赤外線通信が携帯電話2との間で確実に行えるようにしておく。
【0041】
赤外線通信の有効範囲はあまり広くなく、同じ所への接続は同時に携帯電話3台までであるので、間違った相手への接続を防ぐことができる。また、従来は、直接携帯電話を赤外線装置に接触させることでデータ通信を行っていたが、赤外線通信装置4a〜4eを図3に示す構成とすることにより、多少離れたところでも赤外線通信を非接触で行うことができる。
【0042】
ここで、通過した入口ゲート3のある料金所が有料道路の入口の料金所であるときには、その料金所の赤外線通信装置4a〜4eから携帯電話2へ、料金所固有のIDと料金所のみの通行料金データと有料道路入口情報とからなる料金データaが赤外線により送信されるので、携帯電話2の赤外線通信部がこの料金データaを受信し、受け取り確認データbを赤外線通信装置4a〜4eへ応答送信する(ステップS2、S3、S4)。
【0043】
受け取り確認データbを赤外線通信装置4a〜4eのいずれかが受信すると、その受信受け取り確認データbがゲート制御装置5に転送される。ゲート制御装置5はその受信した受け取り確認データbの料金所固有のIDが、その料金所のIDと一致しているかを確認し、確認できた場合は、通過ゲート7を開けて、料金所内を低速で走行中の自動車1をそのまま通過ゲート7を通過できるようにする(ステップS5)。また、このときゲート制御装置5は入口ゲート3も開けて、後続する自動車も料金所内に進入できるようにする。
【0044】
ここで、携帯電話2と赤外線通信装置4a〜4eとの間で赤外線通信により送受信する料金データa及び受け取り確認データbは、いずれもそのデータ量はごく少ないため、転送時に時間もかからず、また、赤外線通信装置4a〜4eの隣接する設置距離を長くすることにより、その分、自動車の速度を落とさないで通過することが可能である。従って、ゲート制御装置5において通信確認がとれると、通過ゲート7が開くので、自動車1はそのままノンストップで料金所を通過することができる。
【0045】
現在の携帯電話での料金支払い方法では、料金所内で一旦停止して、料金支払い時に携帯電話を読み取り機に近付けデータ送受信を行う必要があるため、所謂タッチアンドゴーで料金所を通過することになるが、本実施の形態では赤外線通信装置4a〜4eを図3に示すように設置することにより、それよりも速い速度でのノンストップ化が実現される。
【0046】
その後、携帯電話2は携帯電話会社のサーバー6へ料金データcを自動送信する(ステップS6)。ここでは、上記の料金データcは料金所固有のIDと有料道路入口情報とからなる料金データaに携帯電話2固有のIDを付加してなるデータである。これにより、携帯電話2の携帯電話会社の当該ユーザーの使用料金明細データベースの中に有料道路入口情報が格納される。
【0047】
一方、自動車1が進入した料金所が有料道路の入口の料金所ではなく、かつ、有料道路の出口の料金所でもない場合は(ステップS2のNo、ステップS7のNo)、その料金所の赤外線通信装置4a〜4eから携帯電話2へ、料金所固有のIDとその料金所のみの通行料金データとからなる料金データaが赤外線により送信されるので、携帯電話2の赤外線通信部がこの料金データaを受信し、受け取り確認データbを赤外線通信装置4a〜4eへ応答送信する(ステップS8、S9)。
【0048】
受け取り確認データbを赤外線通信装置4a〜4eのいずれかが受信すると、その受信受け取り確認データbがゲート制御装置5に転送される。ゲート制御装置5はその受信した受け取り確認データbの料金所固有のIDが、その料金所のIDと一致しているかを確認し、確認できた場合は、通過ゲート7を開けて、料金所内を低速で走行中の自動車1をそのまま通過ゲート7を通過できるようにする(ステップS10)。また、このときゲート制御装置5は入口ゲート3も開けて、後続する自動車が料金所内に進入できるようにする。
【0049】
その後、携帯電話2は携帯電話会社のサーバー6へ料金データcを自動送信する(ステップS11)。ここでは、上記の料金データcは料金所固有のIDと通行料金データとからなる料金データaに携帯電話2固有のIDを付加してなるデータである。これにより、携帯電話2の携帯電話会社の当該ユーザーの使用料金明細データベースの中に、料金データcが格納される。
【0050】
上記の料金所をノンストップで通過した自動車が料金所を通過後に有料道路から降りないときには(ステップS12のNo)、有料道路内の料金所を通過する毎に、上記のステップS1、S2、S7〜S12の処理が繰り返され、携帯電話2の携帯電話会社の当該ユーザーの使用料金明細データベースの中に、料金データcが格納される。
【0051】
また、自動車1が進入した料金所が有料道路の入口の料金所ではなく、有料道路の出口の料金所である場合は(ステップS2のNo、ステップS7のYes)、その料金所の赤外線通信装置4a〜4eから携帯電話2へ、料金所固有のIDと通行料金データと有料道路出口情報とからなる料金データaが赤外線により送信されるので、携帯電話2の赤外線通信部がこの料金データaを受信し、受け取り確認データbを赤外線通信装置4a〜4eへ応答送信する(ステップS13、S14)。
【0052】
受け取り確認データbを赤外線通信装置4a〜4eのいずれかが受信すると、その受信受け取り確認データbがゲート制御装置5に転送される。ゲート制御装置5はその受信した受け取り確認データbの料金所固有のIDが、その料金所のIDと一致しているかを確認し、確認できた場合は、通過ゲート7を開けて、料金所内を低速で走行中の自動車1をそのまま通過ゲート7を通過できるようにする(ステップS15)。また、このときゲート制御装置5は入口ゲート3も開けて、後続する自動車が料金所内に進入できるようにする。
【0053】
その後、携帯電話2は携帯電話会社のサーバー6へ料金データcを自動送信する(ステップS11)。ここでは、上記の料金データcは料金所固有のIDと通行料金データと有料道路出口情報とからなる料金データaに携帯電話2固有のIDを付加してなるデータである。これにより、サーバー6は、携帯電話2の携帯電話会社の当該ユーザーの使用料金明細データベースの中に格納されている料金データcに基づいて、有料道路の入口データと出口データとから、又は各料金データcのそれぞれの料金データの合計により、使用した有料道路料金を算出する(ステップS17)。
【0054】
そして、サーバー6を運営する携帯電話会社が、算出した有料道路料金を本来支払うべき会社(有料道路が首都高速道路なら、首都高速道路公団)へ立替支払いする(ステップS18)。また、料金所を通過後に有料道路から降りた場合も、サーバー6は、それまで携帯電話2の携帯電話会社の当該ユーザーの使用料金明細データベースの中に格納されている料金データcのそれぞれの料金データの合計により、使用した有料道路料金を算出して、サーバー6を運営する携帯電話会社が、算出した有料道路料金を本来支払うべき会社へ立替支払いする(ステップS18)。
【0055】
後日、サーバー6を運営する携帯電話会社は、ステップS18で立て替えた有料道路料金を、携帯電話2のユーザーの携帯電話料金請求書に追加する(ステップS19)。ユーザーは携帯電話料金の支払い内容のなかに、有料道路の通行料金も追加されているので、携帯電話料金と一緒に有料道路料金を支払う(ステップS20)。
【0056】
このように、本実施の形態では、赤外線通信機能を備えた携帯電話2と赤外線通信装置4(4a〜4e)との間で赤外線を用いた近距離通信を行って、有料道路の通行料金データを得て、携帯電話2がその料金データを携帯電話会社が運営するサーバー6に送信して、ここで通行料金データの計算を行わせるようにしており、携帯電話2が本来、別の目的で備えている赤外線通信機能を利用するようにしたため、従来のETCシステムや特許文献2に記載されたICナンバープレートのような専用機器を必要とせず、専用機器の購入による出費がなく、料金収受システムを利用することができる。
【0057】
また、現在のETCシステムの料金所に進入するETCレーンには、ETCシステムを利用する自動車以外の通常の支払いを行う自動車とが混在しているため、料金所を通過するノンストップの速度はあまり速くはないが、本実施の形態の適用を受ける自動車1は、完全に専用の赤外線通信専用レーンを通って料金所に進入することができ、通常の支払いを行う自動車とは完全に別レーンとなるため、ETCシステムよりも速い速度のノンストップ化を実現することができ、有料道路を使用する際の料金所のノンストップによる渋滞緩和に寄与するところ大である。
【0058】
また、本実施の形態では、赤外線通信を利用するため、携帯電話のGPS機能を利用して車両の位置情報を取得する特許文献3記載のシステムに比べて、支払い者を誤認識することなく、正確に特定することができ、間違った相手への支払請求を無くすことができる。
【0059】
更に、本実施の形態では、携帯電話2の購入時に既に携帯電話事業者への登録が済んでおり、本実施の形態の料金収受システム利用のために、ETCシステムのような支払い登録を行う必要が無く、その利用が簡単にでき、また、携帯電話会社から携帯電話の通話料金に加算して有料道路の通行料金が請求されるので、支払い箇所の一本化ができる。
【0060】
なお、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、例えば、赤外線通信の替わりに、ブルーツース(Bluetooth)などの近距離無線通信機能を備えた携帯電話を用いて、近距離無線通信を利用することも可能である。また、携帯電話に限らず、簡易型携帯電話(PHS)や携帯型情報機器であるPDA(Personal Data Assistance)などの他の携帯通信端末を利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明システムの一実施の形態のシステム構成図である。
【図2】料金所の一実施の形態の概略構成図である。
【図3】図1及び図2中の赤外線通信装置の一例の概略外観図である。
【図4】図1のシステムの概要を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1 自動車
2 赤外線通信機能付き携帯電話
3 入口ゲート
4 赤外線通信装置
5 ゲート制御装置
6 携帯電話会社のサーバー
7 通過ゲート
8 赤外線送受信部





【特許請求の範囲】
【請求項1】
有料道路の料金所内に設置されており、設置されている該料金所に固有のIDを少なくとも含む第1の料金データを送信する近距離通信用の通信装置と、
前記料金所を通過する自動車内に搭載されており、前記通信装置との間で近距離通信を行う近距離通信機能を備えた携帯通信端末と、
前記携帯通信端末と前記通信装置との間で前記近距離通信を行うことにより、前記携帯通信端末から送信された受け取り確認データが前記通信装置を介して供給され、該受け取り確認データに基づき、前記料金所の入口に設置された入口ゲート及び前記料金所の出口に設置された通過ゲートを開閉制御するゲート制御装置と、
前記携帯通信端末の通信使用料金を請求する通信事業者が管理するサーバーと
を有し、前記携帯通信端末は、該携帯通信端末が搭載されている自動車が前記入口ゲートから進入して前記料金所を通過する際に、前記通信装置から送信された前記第1の料金データを受信することにより、その第1の料金データ中の前記料金所に固有のIDに該携帯通信端末に固有の識別情報を付加した前記受け取り確認データを前記通信装置へ応答送信する応答送信手段と、受信した前記第1の料金データに該携帯通信端末に固有の識別情報を付加した第2の料金データを生成して前記サーバーへ送信する第2の料金データ送信手段とを備え、
前記ゲート制御装置は、前記受け取り確認データ中の前記料金所に固有のIDがその料金所のものであると判定した時に前記通過ゲート及び前記入口ゲートを開けるように開閉制御し、前記サーバーは、前記第2の料金データを受信する受信手段と、受信した前記第2の料金データから前記有料道路の通行料金を計算する計算手段と、計算して得られた前記通行料金を前記携帯通信端末の通信料金に加算する加算手段とを備えたことを特徴とする有料道路の料金収受システム。
【請求項2】
前記通信装置は、設置されている前記料金所に固有のIDに、前記料金所が有料道路の出口料金所であるときには出口情報、前記料金所が有料道路の入口料金所であるときには入口情報と、前記料金所における通行料金データとを付加してなるデータを、前記第1の料金データとして生成して送信する第1の料金データ送信手段を備えることを特徴とする請求項1記載の有料道路の料金収受システム。
【請求項3】
前記通信装置は、前記料金所内の自動車走行路に沿って、一定間隔で複数個配置されてなることを特徴とする請求項1記載の有料道路の料金送受システム。
【請求項4】
前記通信装置は、近距離通信のための送受信部が、放射状の送受信範囲を持つように設定されていることを特徴とする請求項3記載の有料道路の料金送受システム。
【請求項5】
前記サーバーは、前記計算手段により計算して得られた前記通行料金を、前記携帯通信端末の利用者に代わって、本来支払うべき有料道路事業者へ立替支払いする立替送金手段を有することを特徴とする請求項1記載の有料道路の料金収受システム。
【請求項6】
前記通信装置は、赤外線通信を行う赤外線通信装置であり、前記携帯通信端末は、赤外線送受信部を内蔵する赤外線通信機能を有する携帯通信端末であり、前記通信装置と前記携帯通信端末との間で赤外線通信を行って、前記第1の料金データと前記受け取り確認データの送受信を行うことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の有料道路の料金送受システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−163457(P2006−163457A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349284(P2004−349284)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000232140)NECフィールディング株式会社 (373)
【Fターム(参考)】