説明

有機エレクトロルミネセンス素子及び製造方法

【課題】TAC時間を短くし、製造コストを下げ、素子性能が改良された有機発光素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】次の各ステップを含む有機電子素子の製造方法;a)アノードを準備するステップ;b)導電性ポリマーを前記アノード上に堆積し、正孔注入層を形成するステップ;c)半導電層を前記正孔注入層上に堆積するステップ;及びd)これらの層を、前記正孔注入層及び半導電層の間に界面結合を形成するために十分な条件の下、これらの層を適用するステップ:e)カソードを供給するステップ。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2008年3月24日に出願された米国仮出願第61/038,861号の利益を主張する。上記仮出願の公表を本明細書に組み入れる。
【0002】
発光素子の設計では、最適な素子性能のために、複層膜素子構造内の種々の層の界面特性が重要となり得ることが知られている。これらの界面特性には、下記が含まれる:A)導電性ポリマー層及び半導電性ポリマー層の間の境界構造、B)良好なヌレ性及び被膜形成のために堆積されるべき固体被膜の表面エネルギー及び液体の表面エネルギー、並びにC)隣接する相の間の界面接着及び結合。
【0003】
OLED素子分野における一般の理解は、最良の素子性能のために、導電性ポリマー層及び半導電性ポリマー層の間に清浄な境界が必要であることである。「Organic Light−Emitting materials and Devices」(A CRC Press Book Taylor & Francis Group,2007,Zhigang Liらによる編集)の第8章に記載されるように、界面における2種のポリマーの混合は、OLED素子にとって有害であり、エレクトロルミネッセンスのクエンチ及び短絡の可能性が生ずる。従って、現在の素子製造工程における一般的なステップには、層間混合をもたらす残余の水及び溶媒を除去するために、各層における乾燥/アニーリングが含まれる。米国特許出願第2006/0251886号明細書には、ポリマー緩衝層内に架橋剤を用いること、続いて熱又はUV処理による架橋処理が開示されている。これにより、ポリマーが隣接層に可溶化することが防止され、ひいては層間混合が最小化される。
【0004】
国際公開第2007/031923号パンフレットには、アノード;カソード;上記アノード及びカソードの間に配置された発光層;並びに上記アノード及び発光層の間に配置された、導電性ポリマー及び高分子量酸を含む緩衝層を含む発光素子の製法が開示されている。フォトルミネセンスの酸クエンチを最小化する高温で熱処理することを介して、高分子量酸を非酸性基に転換し、上記緩衝層及び発光層の間に界面層が形成される。しかし、この開示は、一般的なウェットオンドライ工程を用いることを教示し、そしてより良好な層接着のために界面結合層を生成させることを取り扱っていない。
【0005】
「Enhanced Lifetime of Polymer Light−Emitting Diodes Using Poly(thieno[3,4−b]thiophene) base Conductive Polymers」と題するJiangら(SPIE 2006 Proceeding)による先行する研究は、高フッ素化スルホン酸ポリマー(FSAポリマー)を含むコロイド形成高分子量酸を有する導電性ポリマーは、水溶性コロイド形成高分子量酸、例えば、ポリ(スチレンスルホン酸)(PSSA)を有する導電性ポリマーと比較して良好な熱安定性及び低水分残差を有すると結論づけた。これは、特に高温及び高湿度条件下において、より長い素子寿命をもたらすキー要因の一つで有ることができる。しかし、高フッ素化スルホン酸ポリマー(例えば、NAFION(商標)フルオロポリマー)を含む導電性ポリマー分散物は、PSSA系導電性ポリマーと比較して、相対的に低い表面エネルギーを有する膜を形成する。従って、当技術分野には、長期間持続する発光素子を製造するために好適な改良されたヌレ特性を有する材料の組み合わせのための必要性がある。
【0006】
上記特定された特許及び特許出願を参照し、本明細書に組み入れる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複層電子素子(例えば、OLED)を製造するためのウェットオンウェット工程を提供することにより、一般的な材料及び方法に関連する課題を解決し、上記方法では、第1の層を堆積し、そして第2の層を上記第1の層の上に堆積した後、熱アニールする。この方法は、TAC時間を短くし、そして製造コストを下げる優位性を有する。さらに、ウェットオンウェットコーティングされた層の間の界面特性が改良され、改良された素子性能、例えば、漏れ電流の減少、及び上記被膜の良好なヌレ性がもたらされる。
【0008】
本発明の態様の一つは、アノード、カソード、上記アノード及びカソードの間の半導電層、並びに上記アノード及び半導電層の間の導電性ポリマー含有正孔注入層を含む発光素子に関し、そこでは、界面結合層が、上記正孔注入層及び半導電層の間にその場で形成される。上記界面結合領域は、上記正孔注入層及び半導電層の混合物を含むことができる。上記界面結合領域はまた、勾配を含むことができ、そこでは、上記正孔注入層に隣接する領域の一部は、正孔注入層材料の濃度が比較的高く、そして上記半導電層に隣接する領域の一部は、半導電層材料の濃度が比較的高い。
【0009】
本発明の別の態様は、次の各ステップを含む発光素子の製造方法に関する;a)アノードを準備するステップ、b)導電性ポリマーを上記アノード上に堆積し、正孔注入層を形成するステップ、そしてc)上記正孔注入層及び半導電層の間に界面結合層を形成するために、これらの層に高温を適用するステップ、d)カソードを供給するステップ。
【0010】
一般的なウェットオンドライ法と比較して、本発明のウェットオンウェット素子製造方法の直接の利益は、例えば、TAC時間を短くすること、処理コストを下げること、及び製造ライン生産性スループットを高め、それにより最終素子に関するコストの減少をもたらすことを含むことができる。
【0011】
本発明の追加の利益は、改良された素子性能、例えば、典型的なIVB曲線における漏れ電流の減少である。一般に、高い漏れ電流により、発光ポリマー層中の孔と結合し、光子(ひいては、光)を生成させるために必要である電子の効率的な使用が減る。比較的高い漏れ電流を有する素子により、低い電流効率、並びにより大きなピクセル及び乏しい解像度に至るピクセルエッジエミッションにより具体的に説明されるような乏しい素子性能に至る。
【0012】
本発明のさらなる利益は、図2、並びに上記2層の間の界面結合層のその場での生成による図3に具体的に説明されるような導電性ポリマー層(層B)及び半導電性ポリマー層(層C)の間の改良された界面接着である。
【0013】
本発明の別の利益は、本発明の方法が、液体を、固有の低表面エネルギー(<30ダイン/cm)を有し、ひいては乏しいヌレ特性を有する材料(例えば、これらの材料が、動的制御条件、例えば、乾燥速度条件の下で高い表面エネルギーの固体表面又は被膜を形成することができる)上に堆積することを可能にすることである。
【0014】
[関連特許及び特許出願の相互参照]
本発明の主題は、米国特許出願第11/240,573号明細書及び同第11/760,000号明細書に関連する。上記特定の特許出願の公表を、参照により本明細書に組み入れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の態様の一つのウェットオンウェット工程により形成された正孔注入層を含む電子素子の断面図を具体的に説明する。
【図2】図2は、素子層構造を有する発光素子を製造するための一般的なウェットオンドライ工程を具体的に説明する。
【図3】図3は、素子層構造を有する発光素子を製造するための本発明のウェットオンウェット工程の態様の一つの概略図を具体的に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の開示は、導電性ポリマーの水性分散物、上記分散物の適用方法、及び導電性ポリマー含有被膜を組み込む素子に関する。本発明の導電性ポリマー分散物は、複素環式の縮合環モノマー単位、例えば、ポリチオフェン、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリチエノチオフェン、例えば、ポリ(チエノ[3,4−b]チオフェン)、特に、それらの混合物を含むことができるが、それらに限定されるものではない。上記分散物はまた、少なくとも部分的にフッ素化されたポリマーを含む。本明細書において、用語「分散物」は、コロイド粒子の懸濁液を含む液状媒体を指す。本発明によると、「液状媒体」は、概して、液体、例えば、脱イオン水である。本明細書において、用語「水性」は、かなりの部分の水を有する液体を指し、そして実施形態の一つでは、それは、少なくとも約40重量%の水である。本明細書において、用語「コロイド」は、液状媒体に懸濁した微粒子を指し、上記粒子は、最大約1μm(例えば、約20ナノメートル〜約800ナノメートル、そして通常は約30〜約500ナノメートル)の粒径を有する。
【0017】
本明細書において、用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含有する(includes)」、「含有している(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」又は任意の他のそれらの変形は、非排他的な含有物をカバーすることを目的とする。要素の列挙を含む、例えば、工程、方法、製品又は装置は、それらの要素のみに必ずしも制限されず、明確に列挙されない他の要素又は上記工程、方法、製品又は装置に固有の要素を含むことができる。さらに、明確に反対の記載がない限り、「又は」は、「及び/又は」を含み、「又は」を排除しない。例えば、条件A又はBは、次の任意の1つにより満たされる:Aが真(又は存在する)であり且つBが偽(又は存在しない)であり、Aが偽(又は存在しない)であり且つBが真(又は存在する)であり、そしてA及びBの両方が真(又は存在する)である。
【0018】
また、「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、本発明の要素及び成分を記載するために用いられている。これは、単に便宜上、そして本発明の一般的な感覚を提供するためになされる。この記述は、1つ又は少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、そして単数形はまた、別に意味されるものが明確でない限り複数形を含む。
【0019】
上記導電性ポリマーは、複素環式の縮合環モノマー単位の重合単位を含むことができる。上記導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール又はポリチオフェン及びそれらの誘導体であることができる。
【0020】
使用を考慮したポリピロールは、次の式Iを含む組成物を有することができる:
【化1】

(式Iにおいて、
nは、少なくとも約4であり;
1は、各存在において、同一又は異なるように独立して選択され、そして水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、及びウレタンから選択され;あるいは、
両R1基が一緒になって、3員,4員,5員,6員又は7員の芳香族又は脂環式環を完了するアルキレン又はアルケニレン鎖を形成することができ、当該環は、1つ又は2つ以上の二価の窒素、硫黄又は酸素原子を所望により含んで成ることができ;そして
2は、各存在において、同一又は異なるように独立して選択され、そして水素、アルキル、アルケニル、アリール、アルカノイル、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、スルホネート、及びウレタンから選択される)。
【0021】
態様の1つでは、R1は、各存在において同一又は異なり、そして水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、スルホネート、ウレタン、エポキシ、シラン、シロキサン、及び1又は2以上のスルホン酸、カルボン酸、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン又はシロキサン部分で置換されたアルキルから独立して選択される。
【0022】
態様の1つでは、R2は、水素、アルキル、及び1又は2以上のスルホン酸、カルボン酸、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン又はシロキサン部分で置換されたアルキルから選択される。
態様の1つでは、上記ポリピロールは未置換であり、そしてR1及びR2の両方が水素である。
【0023】
態様の1つでは、両R1が一緒になって6員又は7員の脂環式環を形成し、それは、アルキル、ヘテロアルキル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、スルホネート及びウレタン選択される基でさらに置換されている。これらの基は、モノマー及び得られるポリマーの溶解性を改良することができる。実施形態の1つでは、両R1が一緒になって6員又は7員の脂環式環を形成し、それは、アルキル基でさらに置換されている。実施形態の1つでは、両R1が一緒になって6員又は7員の脂環式環を形成し、それは、少なくとも1つの炭素原子を有するアルキル基でさらに置換されている。
【0024】
実施形態の1つでは、両R1が一緒になって、−O−(CHY)m−O−(式中、mは2又は3であり、そしてYは、各存在において同一又は異なり、そして水素、アルキル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、スルホネート及びウレタンから選択される)を形成する。態様の1つでは、少なくとも1つのY基は、水素ではない。実施形態の1つでは、少なくとも1つのY基は、少なくとも1つの水素の代わりにFを有する置換基である。実施形態の1つでは、少なくとも1つのY基は、パーフルオロ化されている。
【0025】
態様の1つでは、新規な組成物に用いられているポリピロールは、正に帯電された導電性ポリマーであり、上記正電荷は、コロイド状高分子量酸アニオンにより平衡が保たれている。
【0026】
本発明において用いるために企図されるポリピロールは、次の式IIを有する:
【化2】

(式中、
1は、各存在において、同一又は異なるように独立して選択され、そして水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート及びウレタンから選択されるか;あるいは、
両R1が一緒になって、3員,4員,5員,6員又は7員の芳香環又は脂環式環を完了するアルキレン又はアルケニレン鎖を形成することができ、当該環は、1又は2以上の二価の窒素、硫黄又は酸素原子を所望により含んで成ることができ、そして
nは、少なくとも約4である)。
【0027】
態様の1つでは、両R1が一緒になって、−O−(CHY)m−O−(式中、mは2又は3であり、そしてYは、各存在において同一又は異なり、そして水素、アルキル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート及びウレタンから選択される)を形成する。態様の1つでは、全てのYは水素である。実施形態の1つでは、上記ポリチオフェンは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)又はPEDOTである。態様の1つでは、少なくとも1つのY基は、水素ではない。実施形態の1つでは、少なくとも1つのY基は、少なくとも1つの水素の代わりにFを有する置換基である。実施形態の1つでは、少なくとも1つのY基は、パーフルオロ化されている。
【0028】
態様の1つでは、上記ポリチオフェンは、ポリ[(スルホン酸−プロピレン−エーテル−メチレン−3,4−ジオキシエチレン)チオフェン]である。態様の1つでは、上記ポリチオフェンは、ポリ[(プロピル−エーテル−エチレン−3,4−ジオキシエチレン)チオフェン]である。
【0029】
本発明の態様の一つでは、本発明は、次の式P1を有する、繰返し単位を有するモノマー、オリゴマー及びポリマー組成物を提供する:
【化3】

(式中、
XはS又はSeであり、YはS又はSeであり、Rは置換基であり、
nは、約2超及び20未満、そして通常は約4〜約16であり、
Rは、P1の環構造に結合することができる、任意の置換基であることができ、
Rは、水素又はその同位体、ヒドロキシル、アルキル、例えば、C1〜C20の第1級、第2級又は第3級アルキル基、アリールアルキル、アルケニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、アリール、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミド、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリール、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアリールアミノ、アリールチオ、ヘテロアリール、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、カルボキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、スルホン酸、あるいは1つ又は2つ以上のスルホン酸(又はその誘導体)、リン酸(又はその誘導体)、カルボン酸(又はその誘導体)、ハロ、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ又はエポキシ部分で置換されたアルキル又はフェニルを含むことができる)。
ある実施形態では、Rは、α反応点を含むことができ、そこでは、環構造を含むセレンの分岐されたオリゴマー、ポリマー又はコポリマー構造体が形成されうる。ある実施形態では、Rは、水素、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1〜C12の第1級、第2級又は第3級アルキル基(F、Cl、Br、I又はCNにより単置換されるか又は複数置換されていてもよく、そして1つ又は2つ以上の隣接していないCH2基は、O及び/又はS原子がお互いに直接連結されないような様式で、−O−、−S−、−NH−、−NR’−、−SiR’R”−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−又は−C≡C−で、独立して置換されることができる)、フェニル及び置換されたフェニル基、シクロヘキシル、ナフタレン、ヒドロキシル、アルキルエーテル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、カルボン酸、エステル及びスルホン酸基、パーフルオロ、SF5及びFを含むことができる。R’及びR”は、お互いに独立して、H、1〜12個のC原子を有するアルキル又はアリールである。上記ポリマーは、官能性又は非官能性末端基から独立して選択される末端基を含むことができる。本発明に従う繰返し構造体は、ホモポリマーを形成する実質的に同一のものであることができるか、又は共重合に好適なモノマーを選択することによる共重合体の性質を有する。上記繰返し単位は、当業界に周知の任意の好適な方法で停止させることができ、そして官能性又は非官能性末端基を含むことができる。さらに、P1及び高分子量酸を含む溶液及び分散物を、P1の組成物でドープ化する。実施形態の1つでは、上記組成物は、P1に従う高分子量酸のドープ化ポリマーの水性分散物を含む。
【0030】
本開示の態様の1つでは、チエノ[3,4−b]チオフェンモノマーを含むチエノチオフェンモノマーが、少なくとも1種の部分的にフッ素化された高分子量酸の存在下で、化学的に重合されると、導電性ポリチエノチオフェン、例えば、ポリ(チエノ[3,4−b]チオフェン)を含む水性分散物が調製される。本発明の開示に従うポリチエノチオフェンの分散物は、被膜形成添加剤を含む。上記被膜形成添加剤は、約85°未満の沸点を有し、そして100ミリ秒(ms)において、60ダイン/cm未満の動的表面張力を提供する。上記被膜形成添加剤の総濃度は、水中における添加剤の溶解限界未満である。
【0031】
本発明の態様の1つに従う組成物は、連続水性相を含み、ポリ(チエノチオフェン)及び分散物を形成する、部分的にフッ素化された高分子量酸が、分散される。本発明において用いられうるポリ(チエノチオフェン)は、次の構造(1)及び(2)を有することができる:
【化4】

(式中、
Rは、水素、1〜8個の炭素原子を有するアルキル、フェニル、置換されたフェニル、Cm2m+1、F、Cl及びSF5から選択され、そして
nは、約2超及び20未満、そして通常は約4〜約16である)。
【0032】
本発明の組成物中に用いられうるチエノチオフェンはまた、上述の構造(2)(式中、R1及びR2は、上記列挙から、独立して選択される)を有することができる。特定の態様の1つでは、上記ポリチエノチオフェンは、ポリ(チエノ[3,4−b]チオフェン)(式中、Rは、水素を含む)を含む。
【0033】
本発明の別の態様は、導電性ポリマー、ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)を含む。この開示とともに用いるために、上記ポリマーは、重合された電気活性モノマー単位をさらに含むコポリマーを含むことができる。電気活性モノマーは、チオフェン、チエノ[3,4−b]チオフェン、チエノ[3,2−b]チオフェン、置換されたチオフェン、置換されたチエノ[3,4−b]チオフェン、置換されたチエノ[3,2−b]チオフェン、ジチエノ[3,4−b:3’,4’−d]チオフェン、セレノフェン、置換されたセレノフェン、ピロール、ビチオフェン、置換されたピロール、フェニレン、置換されたフェニレン、ナフタレン、置換されたナフタレン、ビフェニル及びテルフェニル、置換されたテルフェニル、フェニレンビニレン、置換されたフェニレンビニレン、フルオレン、置換されたフルオレンから成る群から選択されることができる。電気活性モノマーに加えて、本発明に従うコポリマーは、重合された非電気活性モノマー単位を含むことができる。セレン含有モノマー及びポリマーの例は、2009年1月14日に出願された米国特許出願第12/353,609号明細書、及び2009年1月14日に出願された米国特許第12/353,461号明細書に開示されている(当該公表を、参照により本明細書に組み入れる)。
【0034】
本発明において用いられうるポリアニリン化合物は、次の式IIIを有するアニリンモノマーから得ることができる:
【化5】

(式中、
nは、0〜4の整数であり;
mは、1〜5の整数であるが、ただし、n+m=5であり;そして
1は、各存在において同一又は異なるように独立して選択され、そしてアルキル、アルケニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルフォニル、カルボン酸、ハロゲン、シアノ、あるいは1つ又は2つ以上のスルホン酸、カルボン酸、ハロ、ニトロ、シアノ又はエポキシ部分で置換されたアルキルから選択されるか:あるいは
任意の2つのR1基が一緒になって、3員,4員,5員,6員又は7員の芳香環又は脂環式環を完了するアルキレン又はアルケニレン鎖を形成することができ、当該環は、1つ又は2つ以上の二価の窒素、硫黄又は酸素原子を所望により含むことができる)。
【0035】
上記重合された材料は、アニリンモノマー単位を含み、各アニリンモノマー単位は、次の式IV:
【化6】

又は次の式V:
【化7】

(式中、
n、m及びR1は、上記に定義される通りである)
から選択される式を有する。
さらに、上記ポリアニリンは、2つ又は3つ以上のアニリンモノマー単位のホモポリマー又はコポリマーであることができる。
【0036】
本発明の組成物は、上記ホモポリマー構造に制限されず、そしてヘテロポリマー又はコポリマー構造を含むことができる。上記コポリマー構造は、交互コポリマー(例えば、A及びB単位の交互)、周期コポリマー(例えば、(A−B−A−B−B−A−A−A−A−B−B−B)n)、ランダムコポリマー(例えば、モノマーA及びBの無作為の配列)、統計コポリマー(例えば、統計的なルールに従ったポリマー配列)及び/又はブロックコポリマー(例えば、共有結合により結合された2つ又は3つ以上のホモポリマーサブユニット)の任意の組み合わせであることができる。上記コポリマーは、分岐され又は連結されることができ、提供された得られたコポリマーは、導電特性を維持する。
【0037】
本発明の実施において用いるために企図された分散高分子量酸は、水に不溶性であり、そして好適な水性媒体中に分散された際に、コロイドを形成することができる。上記高分子量酸は、約10,000〜約4,000,000の範囲の分子量を典型的には有する。態様の1つでは、上記高分子量酸は、約50,000〜約2,000,000の分子量を有する。他の許容できる高分子量酸は、部分的にフッ素化された高分子量酸を有する混合物を含む、ポリマーリン酸、ポリマーカルボン酸及びポリマーアクリル酸、及び、それらの混合物の少なくとも1つの要素を含む。別の態様では、上記高分子量スルホン酸は、フッ素化された酸を含む。さらに別の態様では、コロイド形成高分子量スルホン酸は、パーフルオロ化された化合物を含む。さらに別の態様では、コロイド形成高分子量スルホン酸は、パーフルオロアルキレンスルホン酸を含む。
【0038】
さらに別の態様では、上記コロイド形成高分子量酸は、高度にフッ素化されたスルホン酸ポリマー(「FSAポリマー」)を含む。「高度にフッ素化された」は、上記ポリマー中のハロゲン及び水素原子の総数の少なくとも約50%がフッ素原子であり、そして実施形態の1つでは、少なくとも約75%、そして別の実施形態では、少なくとも約90%がフッ素原子であることを意味する。実施形態の1つでは、上記ポリマーは、少なくとも1種のパーフルオロ化された化合物を含む。
【0039】
上記高分子量酸は、スルホネート官能基を含むことができる。用語「スルホネート官能基」は、スルホン酸基又はスルホン酸基の塩を指し、そして実施形態の1つでは、少なくとも1種のアルカリ金属又はアンモニウム塩を含む。上記官能基は、式−SO3X(式中、Xは、カチオン、「対イオン」としても知られているものを含む)により表される。Xは、H、Li、Na、K又はN(R1)(R2)(R3)(R4)から成る群から選択される、少なくとも1つの要素を含むことができ、そしてR1、R2、R3及びR4は、同一又は異なり、そして実施形態の1つでは、H、CH3又はC25である。別の実施形態では、Xは、上記ポリマーが、「酸性形態」である場合には、Hを含む。Xはまた、Ca2+、Al3+、Fe2+及びFe3+のようなイオンにより表されるような多価であってもよい。多価の対イオンの場合には、一般的にMn+として表され、対イオンあたりのスルホネート官能基の数は、原子価「n」に等しいであろう。
【0040】
実施形態の1つでは、上記FSAポリマーは、主鎖に結合された繰り返される側鎖を有するポリマー主鎖を含み、当該側鎖は、カチオン交換基を保持する。ポリマーは、ホモポリマーか、あるいは2つ又は3つ以上のモノマーのコポリマーを含む。コポリマーは、非官能性モノマーと、カチオン交換基又はその前駆体(例えば、続いて加水分解され、スルホネート官能基になりうる、スルホニルフルオリド基(−SO2F))を保持する第二のモノマーとから形成されるのが典型的である。例えば、スルホニルフルオリド基(−SO2F)を有する第二のフッ素化ビニルモノマーと共に、第1のフッ素化ビニルモノマーを含むコポリマーを用いることができる。好適な第1のモノマーの例には、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン、ビニルフルオリド、ビニリジンフルオリド、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、及びそれらの組み合わせの基からの少なくとも1つの要素が含まれる。TFEが、望ましい第1のモノマーである。
【0041】
他の態様では、第二のモノマーの例には、ポリマー中に所望の側鎖を提供できるスルホネート官能基又は前駆体基を有する少なくとも1種のフッ素化ビニルエーテルが含まれる。追加のモノマーは、エチレンを含む。実施形態の1つでは、本発明に用いるためのFSAポリマーは、高度にフッ素化されたFSAを少なくとも1種含み、そして実施形態の1つでは、パーフルオロ化された炭素主鎖及び側鎖は、次の式により表される:
−(O−CF2CFRfa−O−CF2CFR’fSO3
(式中、
f及びR’fは、F、Cl又は1〜10個の炭素原子を有するパーフルオロ化されたアルキル基から独立して選択され、
a=0、1又は2であり、そして
Xは、少なくとも1つのH、Li、Na、K又はN(R1)(R2)(R3)(R4)を含み、そして
1、R2、3及びR4は、同一又は異なるものであり、そして実施形態の1つでは、H、CH3又はC25である)。
別の実施形態では、Xは、Hを含む。上述のように、Xはまた、多価であることができる。
【0042】
別の実施形態では、上記FSAポリマーは、例えば、米国特許第3,282,875号明細書、同4,358,545号明細書及び同4,940,525号明細書(全てを参照し、本明細書に組み入れる)に開示されるポリマーを含む。有用なFSAポリマーの例には、パーフルオロカーボン主鎖と、次の式により表される側鎖とが含まれる:
−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO3
(式中、Xは、上記定義の通りである。)
この種のFSAポリマーは、米国特許第3,282,875号明細書に開示され、そしてテトラフルオロエチレン(TFE)、パーフルオロ化されたビニルエーテルCF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2F及びパーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド)(PDMOF)の共重合、続いて、スルホニルフルオリド基の加水分解によるスルホネート基への転換、そして必要に応じて、それらを所望のイオン型に変換するためのイオン交換により製造することができる。米国特許第4,358,545号明細書及び同第4,940,525号明細書に開示される種のポリマーの例は、側鎖−O−CF2CF2SO3X(式中、Xは、上記定義の通りである)を有する。このポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)及びパーフルオロ化されたビニルエーテルCF2=CF−O−CF2CF2SO2F、パーフルオロ(3−オキサ−4−ペンテンスルホニルフルオリド)(POPF)との共重合、続いて加水分解、そしてさらに必要に応じてイオン交換により製造することができる。
【0043】
別の実施形態では、上記FSAポリマーは、例えば、米国特許出願公開第2004/0121210号明細書に開示されるポリマーを含む(全てを参照して、本明細書に組み入れる)。有用なFSAポリマーの例は、テトラフルオロエチレン(TFE)及びパーフルオロ化されたビニルエーテルCF2=CF−O−CF2CF2CF2CF2SO2Fの共重合、続いて、スルホニルフルオリド基の加水分解によるスルホネート基への転換、そして必要な場合には上記フルオリド基を所望のイオン型に転換させるためのイオン交換により製造することができる。別の実施形態では、上記FSAポリマーは、例えば、米国特許出願公開第2005/0037265号明細書に開示されるポリマーを含む(全てを参照して、本明細書に組み入れる)。有用なFSAポリマーの例は、CF2=CFCF2OCF2CF2SO2F及びテトラフルオロエチレンの共重合、続いて、スルホニルフルオリド基のKOH加水分解により、スルホネート基に転換し、続いて、カリウムイオン塩を酸性形態に転換するための酸を用いたイオン交換により製造することができる。
【0044】
FSAポリマーを含む、コロイド形成高分子量酸を含む水生分散物は、安定なコロイドが形成される限り、できるだけ小さい粒子サイズを有するのが典型的である。FSAポリマーの水性分散物は、E.I.du Pont de Nemours and Company(ウィルミントン,デラウェア州)からNAFION(商標)分散物として市販されている。好適なFSAポリマーの例には、次の構造:
【化8】

を有するコポリマーが含まれる。
【0045】
上記コポリマーは、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロ(4−メチル−3,6−ジオキサ−7−オクテン−1−スルホン酸)(式中、m=1)を含む。
【0046】
米国特許出願公開第2004/0121210号明細書又は同第2005/0037265号明細書に由来するFSAポリマーの水性分散物は、米国特許第6,150,426号明細書に開示される方法を用いることにより、作られることができる。上述の米国特許及び特許出願の開示の全てを参照して、本明細書に組み入れる。
【0047】
他の好適なFSAポリマーが、米国特許第5,422,411号明細書に開示されている(全てを参照して、本明細書に組み入れる)。ポリチエノチオフェンに対して対イオン/分散剤として用いることができる好適な高分子量酸の1つは、次の構造を有することができる。
【化9】

(式中、
m、n、p及びqの少なくとも2つが、0超の整数であり;
1、A2及びA3は、アルキル、ハロゲン、Cy2y+1(yは、0超の整数である)、O−R(Rは、アルキル、パーフルオロアルキル及びアリール部分から成る群から選択される)、CF=CF2、CN、NO2及びOHから成る群から選択され:そして
Xは、SO3H、PO22、PO32、CH2PO32、COOH、OPO32、OSO3H、OArSO3H(Arは、芳香族部分である)、NR3+(Rは、アルキル、パーフルオロアルキル及びアリール部分から成る群から選択される)、及びCH2NR3+(Rは、アルキル、パーフルオロアルキル及びアリール部分から成る群から選択される)から成る群から選択される)。
1、A2、A3及びX置換基は、オルト、メタ及び/又はパラ位において配置されうる。上記コポリマーはまた、2成分、3成分又は4成分であることができる。
【0048】
本発明の組成物は、上記ホモポリマー構造体に限定されず、そしてヘテロポリマー構造又はコポリマー構造を含むことができる。上記コポリマー構造は、交互コポリマー(例えば、A及びB単位の交互)、周期コポリマー(例えば、(A−B−A−B−B−A−A−A−A−B−B−B)n)、ランダムコポリマー(例えば、モノマーA及びBの無作為の配列)、統計コポリマー(例えば、統計的なルールに従ったポリマー配列)及び/又はブロックコポリマー(例えば、共有結合により結合された2つ又は3つ以上のホモポリマーサブユニット)の任意の組み合わせであることができる。上記コポリマーは、分岐され又は連結されることができ、提供された得られたコポリマーは、導電特性を維持する。上記コポリマー構造体は、モノマー、オリゴマー又はポリマー化合物から形成されうる。例えば、上記コポリマー系に用いるために好適なモノマーは、モノマー、例えば、チオフェン、置換されたチオフェン、置換されたチエノ[3,4−b]チオフェン、ジチエノ[3,4−b:3’,4’−d]チオフェン、ピロール、ビチオフェン、置換されたピロール、フェニレン、置換されたフェニレン、ナフタレン、置換されたナフタレン、ビフェニル及びテルフェニル、置換されたテルフェニル、フェニレンビニレン及び置換されたフェニレンビニレンを含むことができる。
【0049】
ある場合には、上記分散物は、少なくとも1種の金属(例えば、少なくとも1種のイオン)を含むことができる。添加することができ又は上記分散物中に存在することができる金属の例には、Fe2+、Fe3+、K+及びNa+、並びにそれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの要素が含まれる。酸化剤:モノマーのモル比は、通常、約0.05〜約10であり、概して、約0.5〜約5の範囲にわたる(例えば、発明の重合ステップの際)。必要に応じて、金属の量を少なくすることができ、又は分散物をカチオン性及びイオン性の交換樹脂に暴露して取り除くことができる。
【0050】
導電性ポリマーのためのモノマー重合は、通常は水と混和性を有する、共分散物体の存在下で行うことができる。好適な共分散液体の例には、エーテル、アルコール、エーテル、環式エーテル、ケトン、ニトリル、スルホキシド、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの要素が含まれる。実施形態の1つでは、共分散液体の量は、約30体積%未満である。実施形態の1つでは、共分散液体の量は、約60体積%未満である。実施形態の1つでは、上記共分散液体の量は、約5〜約50体積%である。
【0051】
実施形態の1つでは、上記共分散液体は、少なくとも1種のアルコールを含む。実施形態の1つでは、上記共分散液体は、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、メタノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンの群から選択される少なくとも1つの要素を含む。上記共分散液体は、有機酸、例えば、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、カンファースルホン酸、酢酸、それらの混合物等から成る群から選択される少なくとも1つの要素を含むことができる。あるいは、上記酸は、水溶性高分子量酸、例えば、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)等、又は上述の第2のコロイド形成酸を含むことができる。酸の組み合わせをまた、用いることができる。
【0052】
上記モノマー重合はまた、少なくとも1種のエーテル含有ポリマーの存在下で実施することができる。
用語「エーテル含有ポリマー」は、次の一般式(1)の繰返し単位を含むポリマーを意味する:
−Q−R−
(式中、Qは、酸素原子又は硫黄原子であり、そしてRは、芳香族若しくはヘテロ芳香族又は脂肪族化合物の2価基であり、そしてRは、酸性型又は中和された形態のどちらかにおいて、少なくとも1種のスルホン酸、ホスホン酸、ボロン酸又はカルボン酸を含む。好適なエーテル含有ポリマーの追加の例は、2009年2月19日に出願された米国特許出願第12/388,862号明細書に記載されている(当該公表を、参照により本明細書に組み入れる)。
【0053】
別の態様では、本発明は、2つの電気接点層の間に位置する、少なくとも1種の電気活性層(通常、半導体共役化小分子又はポリマー)を含む電子素子に関し、そこでは、上記素子の少なくとも1つの層が、本発明の正孔注入層を含む。本発明の実施形態の1つを、図1に示すように、OLED素子により具体的に説明する。図1を参照すると、図1は、アノード層110、正孔注入層(HIL)120、エレクトロルミネセンス層(EML)130及びカソード層150を含む素子を具体的に説明する。カソード層150に隣接するのは、所望による電子注入/輸送層140である。正孔注入層120及びカソード層150(又は所望による電子注入/輸送層140)の間は、エレクトロルミネセンス層130である。
【0054】
あるいは、正孔輸送層及び/又は電子ブロック層(一般的に中間層と称される)は、正孔注入層120及びエレクトロルミネセンス層130の間に挿入されうる。HIL及びEMLの間のポリマー中間層を用いる利益の例は、改良された素子寿命並びに素子効率である。任意の理論又は説明に拘束されることを望まないが、上記ポリマー中間層が、効率的な励起子ブロッキング層としてはたらくことによりHIL界面のところの励起子クエンチを防ぐことができ、そして再結合領域が中間層/発光層界面の近くに閉じ込められると考えられる。上記ポリマー中間層は、EMLの溶媒に溶解されることができ、それにより上記中間層をEMLと混合させることができるので、ガラス転移温度(Tg)超で熱アニールすることにより上記層を硬化/架橋させることが望ましい場合がある。
【0055】
上記素子は、アノード層110又はカソード層150に隣接することができる支持体又は基板(図示せず)を含むことができる。上記支持体は、アノード層110に隣接しているのが典型的である。上記支持体は、軟質又は硬質の有機又は無機物であることができる。一般的に、ガラス又は軟質有機被膜が、支持体(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレン−2,6−ジカルボキシレート)及びポリスルホンを含む、軟質有機被膜)として用いられる。アノード層110は、カソード層150と比較して、正孔を注入するためにより効率的である電極を含む。上記アノードは、金属、混合金属、合金、金属酸化物又は混合酸化物を含む材料であることができる。好適な材料は、2族元素(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、11族元素、4、5及び6族の元素及び8〜10族の遷移元素の混合酸化物から成る群から選択される少なくとも1つの要素を含む(全体を通して、IUPAC数系が用いられ、ここで、周期表の族は、左から右に1〜18として番号付けられる[CRC Handbook of Chemistry and Physics,81st Edition,2000])。
【0056】
アノード層110が、光透過である場合に、次いで、12族;13及び14元素の混合酸化物、例えば、インジウム−スズ−酸化物を用いることができる。本明細書において、句「混合酸化物」は、2族元素又は12、13若しくは14族元素から選択される、2つ又は3つ以上の異なるカチオンを有する酸化物を指す。アノード層110のための材料のいくつかの非限定的な具体例は、インジウム−スズ−酸化物(「ITO」)、アルミニウム−スズ−酸化物、ドープ化酸化亜鉛、金、銀、銅及びニッケルから成る群から選択される少なくとも1つの要素を含む。上記アノードはまた、導電性有機材料、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン又はポリピロールを含むことができる。
【0057】
アノード層110は、任意の好適な方法、例えば、化学又は物理蒸着法又はスピンキャスト法により形成されうる。化学蒸着法を、プラズマ化学蒸着法(「PECVD」)又は有機金属化学蒸着法(「MOCVD」)として実施することができる。物理蒸着は、イオンビームスパッタリング、並びにe−ビームエバポレーション及びレジスタンスエバポレーションを含むスパッタリングの全ての形態を含む。物理蒸着の特定の形態には、RFマグネトロンスパッタリング及び誘導結合プラズマ物理蒸着法(「IMP−PVD」)が含まれる。これらの堆積技法は、半導体製作技法と共に周知である。
【0058】
アノード層110は、リソグラフ操作の際に、パターンが形成される。上記パターンを、要望どおりに変化させることができる。上記層は、例えば、第1の電気接点層材料を適用する前に、第1の軟質複合材料バリア構造上に、パターン化されたマスク又はレジストを置くことによりパターンに形成させることができる。あるいは、上記層を、オーバーオールレイヤー(ブランケット堆積とも称される)として適用し、その後、例えば、パターン化されたレジスト層及び湿式化学エッチング技法又はドライエッチング技法を用いてパターン化することができる。当業界に周知であるパターン化のための他の方法をまた、用いることができる。電子素子をアレイ内に配置させる場合、アノード層110は、実質的に同一方向に伸びる長さを有する、実質的に平行のストリップ内に形成されるのが典型的である。
【0059】
正孔注入層120は、当業者に周知の種々の技法を用いて、基板上にキャストされるのが通常である。典型的なキャスティング技法は、例えば、溶液キャスティング、ドロップキャスティング、カーテンキャスティング、スピンコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷等を含む。上記正孔注入層が、スピンコーティングにより適用される場合に、分散物の粘性及び固形分、及び回転速度を、得られた膜厚を調整するために用いることができる。スピンコーティングにより適用された被膜は、一般的に連続的であり、そしてパターンを有しない。あるいは、正孔注入層は、種々の堆積方法、例えば、インクジェット印刷(例えば、米国特許第6,087,196号明細書に記載されている;参照により本明細書に組み入れる)を用いてパターン化されうる。
【0060】
エレクトロルミネセンス(EL)層130は、典型的には、共役ポリマー、例えば、ポリ(パラフェニレンビニレン)(PPVと略される)、ポリフルオレン、スピロポリフルオレン又は他のELポリマー材料であることができる。上記EL層はまた、比較的小分子の蛍光又はリン光性色素、例えば、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq.3)及びトリス(2−(4−トリル)フェニルピリジン)イリジウム(III)、デンドリマー、上記の材料を含むブレンド、及び組み合わせを含む。上記EL層はまた、無機量子ドット又は無機量子ドットと半導体有機材料とのブレンドを含むことができる。
【0061】
選択される特定の材料は、特定用途、操作の際に用いられる可能性又は他の要因によって決まりうる。エレクトロルミネセンス有機材料を含むEL層130は、スピンコーティング、キャスティング及び印刷を含む任意の一般的な技法による溶液から適用されうる。上記EL有機材料は、材料の性質によって決まる蒸着方法により直接適用されうる。別の実施形態では、ELポリマー前駆体を適用し、次いで、典型的には、熱又は他の外部エネルギー源(例えば、可視光又はUV照射)によりポリマーに転換させることができる。
【0062】
所望による層140は、電子注入/輸送両方ともを促進するように作用し、そして層界面のところで、クエンチ反応を防ぐための閉じ込め層(confinement layer)として働くことができる。すなわち、層140は、電子の移動を促進し、そして層130及び層150が直接接触する際に起こりうるクエンチ反応の可能性を減らすことができる。所望による層140のための材料の例には、金属キレート化オキシノイド化合物(例えば、Alq.3等);フェナントロリン系化合物(例えば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(「DDPA」)、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(「DPA」)等);アゾール化合物(例えば、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(「PBD」等)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(「TAZ」等);他の同様の化合物:あるいは任意の1つ又は2つ以上のそれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの要素が含まれる。あるいは、所望による層140は無機物であることができ、そして特に、BaO、CaO、LiF、CsF、NaCl、Li2O、それらの混合物を含むことができる。
【0063】
カソード層150は、電子又は負電荷担体を注入するために特に効果的である電極を含む。カソード層150は、第1の電気接点層(この場合、アノード層110)より、より低い仕事関数を有する任意の好適な金属又は非金属を含むことができる。本明細書において、用語「より低い仕事関数」は、約4.4eV以下の仕事関数を有する材料を意味することを目的とする。本明細書において、「より高い仕事関数」は、少なくとも約4.4eVの仕事関数を有する材料を意味することを目的とする。
【0064】
上記カソード層のための材料は、1族のアルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Rb、Cs)、2族金属(例えば、Mg、Ca、Ba等)、12族金属、ランタニド(例えば、Ce、Sm、Eu等)及びアクチニド(例えば、Th、U等)から選択されうる。アルミニウム、インジウム、イットリウム、及びそれらの組み合わせ等の材料をまた用いることができる。カソード層150のための材料の特定の非限定的な例には、カルシウム、バリウム、リチウム、セリウム、セシウム、ユウロピウム、ルビジウム、イットリウム、マグネシウム、サマリウム及び合金、並びにそれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの要素が含まれる。Ca、Ba又はLi等の反応性低仕事関数金属が用いられる場合に、より不活性な金属、例えば、銀又はアルミニウムのオーバーコートが、反応性金属及びより低いカソード抵抗性を保護するために用いられうる。
【0065】
カソード層150は、化学又は物理蒸着方法により形成されるのが一般的である。一般的に、上記カソード層は、アノード層110に関して、上述のようにパターン化されるであろう。上記素子が、アレイ内に位置する場合に、カソード層150は、実質的に平行のストリップ内でパターン化されることができ、ここで、カソード層ストリップの長さは、実質的に同一方向及びアノード層ストリッブの長さに実質的に垂直に伸びる。ピクセルと呼ばれる電子要素が、クロスポイント(アレイを、平面図又は上面図から見る場合に、アノード層ストリップが、カソード層ストリップと交差する)のところに形成される。トップエミッティング素子(top emitting device)の頂部において、透明な導体(ITO等)のより厚い層と併用された低仕事関数金属(Ca及びBa等)の非常に薄い層を、透明なカソードして用いることができる。トップエミッティング素子は、より大きな口径比を実現させることができるので、アクティブマトリックスディスプレイに有益である。上記素子の例は、C.C.Wu等による「Integration of Organic LED’s and Amorphous Si TFT’s onto Flexible and Lightweight Metal Foil Substrates」;IEEE Electron Device Letters,Vol.18,No.12,December 1997に記載されている(参照により本明細書に組み入れる)。
【0066】
他の実施形態では、一又は複数の追加の層が、有機電子素子内に存在することができる。例えば、正孔注入層120とEL層130との間の層(図示せず)は、正電荷輸送、上記層のエネルギー準位マッチング、保護層としての機能、他の機能を促進することができる。同様に、EL層130とカソード層150との間の追加の層(図示せず)は、負正電荷輸送、上記層間のエネルギー準位マッチング、保護層としての機能、他の機能を促進することができる。当業界に公知の層をまた含ませることができる。さらに、上述の任意の層が、2つ又は3つ以上の層から作られうる。あるいは、無機アノード層110、正孔注入層120、EL層130及びカソード層150のいくつか又は全てを表面処理し、電荷担体輸送効率を高めることができる。各成分の層に関する材料の選択は、高い素子効率及びより長い素子寿命を有する素子を提供する目標を、製造コスト、製造の複雑性又は他の潜在的な要因と比較考量することにより決定されうる。
【0067】
種々の層は、任意の好適な厚さを有することができる。無機アノード層110は、通常約500nm以下、例えば、約10〜200nmであり;正孔注入層120は、通常約300nm以下、例えば、約30〜200nmであり;EL層130は、通常約1000nm以下、例えば、30〜500nmであり;所望による層140は、約100nm以下、例えば、20〜80nmであり:そしてカソード層150は、通常約300nm以下、例えば、1〜150nmである。アノード層110又はカソード層150が、少なくともいくつかの光を透過させる必要がある場合に、上記層の厚さは、約150nmを超える必要はない。
【0068】
電子素子の用途によっては、EL層130は、シグナル(例えば、発光ダイオード)により活性化される発光層又は放射エネルギーに応答する材料の層であることができ、そして適用される電位差(例えば、検出器又は光電池)の有無にかかわらずシグナルを発生させる。発光材料を、添加剤の有無にかかわらず、別の材料のマトリックス内に分散させることができ、そして層単体を形成することができる。EL層130は、約30〜500nmの範囲の厚さを有するのが一般的である。
【0069】
高分子量酸コロイドを用いて製造されるポリチエノチオフェンを含む水性分散物を含む、1種又は2種以上の層を有する利益を受ける他の有機電子素子の例には;
(1)電気エネルギーを放射線に変換する素子(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ又はダイオードレーザー);
(2)エレクトロニクスプロセスを通してシグナルを検出する素子(例えば、光検出器(例えば、光導電素子、フォトレジスター、フォトスイッチ、フォトトランジスタ、光電管)、IR検出器);
(3)放射線を電気エネルギーに転換する素子(例えば、光起電装置又は太陽電池);そして
(4)1つ又は2つ以上の有機半導体層を含む、1つ又は2つ以上の電子部品を含む素子(例えば、トランジスタ又はダイオード):
が含まれる。
【0070】
有機発光ダイオード(OLED)は、カソード層150及びアノード層110から、EL層130内に、それぞれ、電子及び正孔を注入し、ポリマー中にマイナス及びプラスに帯電したポラロンを形成する。これらのポラロンは、適用された電場の影響の下で移動し、逆に帯電したポラロンを有するエキシトシンを形成し、続いて、放射再結合を受ける。通常、約12ボルト未満、そして多くの例では、約5ボルト以下の、アノードとカソードとの間の十分な電位差を、素子に適用することができる。実際の電位差は、より大きい電子部品中の素子の使用によって決まりうる。多くの実施形態では、電子素子の操作の際に、アノード層110は、プラスの電圧に偏り、そしてカソード層150は、実質的に地電位又はゼロボルトである。バッテリ又は他の電源(図示せず)は、回路の一部分として電子素子に電気的接続されうる。
【0071】
本発明の分散物において有用な添加剤は、溶媒/湿潤剤として、一般的に特徴付けられる有機液体であることができる。これらは、以下を含むが、これらに限定されるものではない;
(1)アルコール、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、フルフリルアルコール及びテトラヒドロフルフリルアルコール;
(2)多価アルコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール及びチオグリコール;
(3)多価アルコールから誘導された低級モノ−及びジ−アルキルエーテル;
(4)窒素含有化合物、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;及び
(5)硫黄含有化合物、例えば、2,2’−チオジエタノール、ジメチルスルホキシド及びテトラメチレンスルホン:
(6)ケトン、エーテル及びエステル。
【0072】
被膜形成添加剤を用いるために好適な多価アルコールの例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、2−メチル−2,4ペンタンジオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(EHMP)、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール及びチオグリコールが含まれるが、これらに限定されるものではない。多価アルコールから誘導された低級アルキルモノ又はジエーテルの例には、エチレングリコールモノメチルエーテル又はモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル又はモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、モノエチルエーテル及びモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、モノエチルエーテル又はモノブチルエーテル(TEGMBE)、ジエチレングリコールジメチルエーテル又はジエチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)モノブチルエーテル(PEGMBE)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートが含まれるが、これらに限定されるものではない。上記化合物の市販の例には、Dow Chemical Company、ミッドランド、ミシガン州から入手できる、Carbitol(商標)及びDowanol(商標)製品群中のDow Pシリーズ及びEシリーズグリコールエーテルが含まれる。
【0073】
被膜形成添加剤を用いるために好適なケトン又はケトアルコールの例には、アセトン、メチルエチルケトン及びジアセトンアルコールが含まれるが、これらに限定されるものではない。エーテルの例には、テトラヒドロフラン及びジオキサンが含まれるが、それらに限定されるものではなく、そしてエステルの例には、エチルラクテート、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートが含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0074】
本発明のために有用な被膜形成添加剤はまた、界面活性剤を含むことができる。上記界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性又は非イオン性であることができ、そしてインク組成物の0.005〜2%の濃度において用いられることができる。有用な界面活性剤の例には、米国特許第5,324,349号明細書;同第4,156,616号明細書及び同第5,279,654号明細書に開示されるもの、並びに、印刷及びコーティング業界に公知の、他の多くの界面活性剤が含まれるが、それらに限定されるものではない。市販の界面活性剤には、Air ProductsからのSurfynol(商標)、Dynol(商標);DuPontからのZonyl(商標)及び3MからのFluorad(商標)(現在のNovec(商標))が含まれる。シリコン界面活性剤の例は、BYK界面活性剤として、BYK−Chemieから入手でき、そしてSilwet(商標)界面活性剤として、Crompton Corpから入手できる。市販のフッ素化界面活性剤は、DuPontからのZonyl(商標)及び3MからのFluorad(商標)(現在のNovec(商標))であることができ、それらは、単独で又は他の界面活性剤と組み合わせて用いられうる。
【0075】
被膜形成添加剤の組み合わせをまた、利用することができる。所望の膜形成特性を提供するために、被膜形成添加剤(粘度調整剤、表面張力調整剤)が選択されうる。これにより、発光ディスプレイ、固体照明、光電池及び薄膜トランジスタを含む広範囲の適用において、電子素子メーカーにより用いられるべき本発明の分散物が可能となる。
【0076】
本発明のいくつかの態様では、上記分散物に添加される添加剤の重量%は、最大溶解度の95%である。必要に応じて、上記分散物に添加される添加剤の重量%は、最大溶解度の90%であるか、又はインク内に添加される添加剤の重量%は、最大溶解度の80%である。
【0077】
本開示の分散物を用いて形成された素子は、導電性ポリマーの被膜及び基板上に配置された導電性ポリマーの被膜を含む。本発明の被膜は、概して、製品に適用される。上記被膜は、ポリマー被膜を適用するために当業界に公知の好適な技法を用いて堆積させることができる。被膜の適用又は製作方法には、スピンコーティング、ドクターブレードコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、熱転写印刷、ミクロ接触印刷又はデジタル印刷が含まれるが、これらに限定されるものではない。上記被膜の厚さは、2nm〜1000nm若しくは20nm〜500nm、又は50nm〜200nmの範囲にわたることができる。上記被膜を上記分散物から堆積させた後、上記被膜を空気中で乾燥させるか、あるいは50℃〜250℃、又は必要に応じて、100℃〜200℃に加熱し、残余の溶媒又は他の揮発物を取り除くことができ、そして一部の用途では、不活性雰囲気である。
【0078】
本発明の一定の態様では、上記被膜を基板表面で回転させ、そして乾燥させる。上記素子内の導電性被膜は、約10-6S/cm〜約300S/cmの導電率を含むことができる。「乾燥」及びそのバリエーションには、風乾、強制換気乾燥、高温における乾燥及び上記ポリマー被膜のアニーリングが含まれる。「アニーリング」、「アニールする」及びそのバリエーションは、十分な時間、十分な温度において固形物を加熱することを含む、そこでは、その中の一部又は大部分の溶媒及び/又は水が揮発する。
【0079】
他の態様によると、本発明の開示は、発明の組成物の正孔注入層を含むエレクトロルミネセンス素子を含む有機電子素子に関する。さらに、本発明は、満足な寿命性能を有する、2層膜素子を製造することを可能にする。「寿命」は、連続的に操作するデバイス(例えば、PLED)の初期輝度が、目的とされる用途に関して許容可能な、初期輝度の割合(例えば、初期輝度の50%)まで減少するのにかかる時間の長さを意味する。
【0080】
ヌレは、流体及び表面の間の接触であることが知られている。液体が高い表面張力(強い内部結合)を有する場合、当該液体は、表面に液滴を形成する傾向がある。一方、低い表面張力を有する液体は、より広い領域に広がる傾向がある(表面と結合する)。一方、固体表面が高い表面エネルギー(又は表面張力)を有する場合、液滴は、表面に広がるか、又はヌレる。固体表面が低い表面エネルギーを有する場合、液滴が形成する。この現象は、界面エネルギーの最小化の結果である。ヌレ性を決定するための第1の測定は、接触角測定である。これは、固体表面上の液滴の表面の角度を測定する。
【0081】
OLED素子内の正孔注入層として、水系導電性ポリマー分散物を用いる分野において、分散剤の性質が、効率及び寿命を含む素子性能に大きな影響を与える場合があることが知られている。例えば、ポリ(スチレンスルホネート)PSSAと比較して、高フッ素化ポリマー分散剤、例えば、NAFION(商標)フルオロポリマーを用いた場合、素子寿命は、有意に長くなる(通常、>5×)。しかし、この群の分散剤の1つのキーとなる欠陥は、上記分散物により形成された乾燥被膜の低い表面エネルギー(高い接触角)をもたらす、材料の疎水性の性質である。
【0082】
被膜の表面エネルギーは、当該表面の化学構造により制御されうる。OLED素子では、被膜は、ポリマー粒子及びキャリア媒体(水又は溶媒)を含む分散物を堆積させるか、又は固着(lay down)させ、次いでキャリア媒体を、上記被膜表面から蒸発又は揮発させ、ポリマー被膜を残すことを含む溶液処理ステップにより形成される。結果として、上記分散物内に競合する化学物質種がある場合、最終表面エネルギーは、上記被膜を乾燥するステップの最後のところで生成した表面化学物質種の分布により決定される(例えば、動的な「固定された」被膜状態)。
【0083】
本発明の態様の一つによると、広範囲の親水性ポリマー種を、導電性ポリマーを含む高フッ素化ポリマー分散剤に添加し、上記被膜表面エネルギーを上げる(すなわち、ヌレ角度を小さくする)ことができ、ひいては、次の層の体積に用いられるべき材料をより広範囲とすることが可能となることを見出した。これらの材料は、本発明のウェットオンウェット工程と共に用いられた場合、改良された寿命及び効率、さらに次の層材料に関するヌレ性を有する素子を製造するために用いられうる。
【0084】
いかなる理論又は説明に結びつけられることを望まないが、ウェットオンウェット工程が、上記導電性ポリマー層及び次の半導電性ポリマー層を形成するために用いられた場合、HIL及びLEPの間の界面特性が大きく異なると考えられる。図3に具体的に説明するように、ウェットオンウェット工程により、上記正孔注入層(層B)及び半導電材料層(層C)の間に界面結合層(層BC)を形成することが可能になる。この層により、隣接する相の間の付着が促進され、それにより改良された素子性能がもたらされる。これは、上記層、例えば、半導体層に用いられる材料が、付着性の乏しい成分を含む場合に特に有用な特徴である。
【0085】
本発明の一定の態様を、次の例により具体的に説明する。これらの例は、添付の特許請求の範囲を制限すべきものではない。
【実施例】
【0086】
[導電性ポリマー分散物D1(ポリ(チエノ[3,4−b]チオフェン(PTT)/NAFION(商標)1:18)]
1700gの脱イオン水を、3Lのジャケット付反応器に添加した。水中の12%NAFION(商標)分散物(Dupont Co.)600gを、上記反応器に添加し、そしてオーバーヘッドスターラーを用いて5分間混合した。ジャケット付フラスコを調整し、22℃の反応温度を維持した。4g(28.6ミリモル)のチエノ[3,4−b]チオフェンを、別個に、350gの脱イオン水に溶解された17.7g(34.2ミリモル)のFe2(SO4)3*H2Oと共に、上記反応器に共供給した。上記反応塊が、20分以内に、ライトグリーンから、エメラルドグリーンに、ダークブルーに変化した。モノマー及び酸化剤を導入した後、4時間の間、重合を進行させた。
【0087】
次いで、得られた分散物を、94.0gのAmberlite(商標)IR−120カチオン交換樹脂(Sigma−Aldrich Chemical Co)及び94.0gのLewatit(商標)MP−62アニオン交換樹脂(Fluka,Sigma−Aldrich Chemical Co)を含む4LのNalgene(商標)瓶に、上記反応器の内容物を添加することにより精製し、不透明なダークブルーの水性ポリ(チエノ[3,4−b]チオフェン)/NAFION(商標)分散物を得た。上記分散物を、5、0.65及び0.45μm孔サイズフィルターを通して連続ろ過した。上記分散物を、ICP−MSにより、残余の金属イオンに関して解析し、次のイオンを検出した:Al(<1ppm);Ba(<1ppm);Ca(<20ppm);Cr(<1ppm)、Fe(37ppm);Mg(<1ppm);Mn(<1ppm);Ni(<1ppm);Zn(<1ppm);Na(<=6ppm);K(<1ppm)。最終分散物は、3%の固体含有率、18:1のNAFION:TT重量比、2.1mPa.sの粘度及び2.4のpHを有していた。
【0088】
上記分散物の粘度を、ARESひずみ制御型レオメータ(TA Instruments,New Castle,DE、以前は、Rheometric Scientific)を用いて評価した。循環浴を用いて、温度を、25℃に制御した。大気を水蒸気で飽和させ、試験の際の水の蒸発を最小化した。クエットジオメトリを用いたボブ及びカップの両方は、チタンで構成されていた。上記ボブは、直径3mm及び長さ33.3mmであり、上記カップの直径は、34mmであった。1実験あたり、約10mLの試料を用いた。試料を充填した後、荷重履歴を取り除くために、上記試料に、100s-1において5分間の事前せん断をかけた。15分の遅延の後、1〜200s-1のずり速度において、粘度を測定した。
【0089】
[導電性ポリマー分散物D2(PTT/NAFION1:12)]
1700gの脱イオン水を、3Lのジャケット付反応器に添加した。水中の12%NAFION(商標)分散物(Dupont Co.)600gを、上記反応器に添加し、そしてオーバーヘッドスターラーを用いて5分間混合した。ジャケット付フラスコを調整し、22℃の反応温度を維持した。6g(42.9ミリモル)のチエノ[3,4−b]チオフェンを、別個に、525gの脱イオン水に溶解された26.6g(51.4ミリモル)のFe2(SO4)3*H2Oと共に、上記反応器に共供給した。上記反応塊が、20分以内に、ライトグリーンから、エメラルドグリーンに、ダークブルーに変化した。モノマー及び酸化剤を導入した後、4時間の間、重合を進行させた。
【0090】
次いで、得られた分散物を、141gのAmberlite(商標)IR−120カチオン交換樹脂(Sigma−Aldrich Chemical Co)及び141gのLewatit(商標)MP−62アニオン交換樹脂(Fluka,Sigma−Aldrich Chemical Co)を含む4LのNalgene(商標)瓶に、上記反応器の内容物を添加することにより精製し、不透明なダークブルーの水性ポリ(チエノ[3,4−b]チオフェン)/NAFION(商標)分散物を得た。上記分散物を、5つの0.65及び0.45μm孔サイズフィルターを通して連続ろ過した。上記分散物を、ICP−MSにより、残余の金属イオンに関して解析し、次のイオンを検出した:Al(<1ppm);Ba(<1ppm);Ca(<20ppm);Cr(<1ppm)、Fe(29ppm);Mg(<1ppm);Mn(<1ppm);Ni(<1ppm);Zn(<1ppm);Na(<=6ppm);K(<1ppm)。最終分散物は、3%の固体含有率、12:1のNAFION:TT重量比、2.4mPa.sの粘度及び2.5のpHを有していた。
【0091】
[例A:本発明のウェットオンウェット工程を用いた素子性能]
[導電性ポリマーインク Ink−A1]
導電性ポリマーインク Ink−A1を調製するために、7.5gの導電性ポリマー分散物D1(3重量%の固形分)、2.5gのプロピレングリコールプロピルエーテル(Aldrich Chemical Company,Inc)を、インクの最終重量が、10.0gとなるように混合した。当該最終インクは、2.3重量%の導電性ポリマー及び25重量%のプロピレングリコールプロピルエーテルを含んでいた。
【0092】
[導電性ポリマーインク Ink−A2]
導電性ポリマーインク Ink−A2を調製するために、75Kの平均分子量のポリ(スチレンスルホン酸)PSSAを、その原液から、3重量%に最初に希釈した。次いで、19.3gの導電性ポリマー分散物D2(3重量%の固形分)及び0.7gのPSSA(3重量%)を、インクの最終重量が20.0gとなるように、共に混合した。最終インクは、4重量%のPSSAと共に、3重量%の総固形分を含んでいた。
【0093】
[発光素子I−D1]
有機発光素子I−D1を、次の通り実施した:10〜15Ω/スクエア(Colorado Concept Coatings LLC)の、パターン化され、インジウムスズ酸化物が被覆されたガラス基板を、アノードとして用いた。ITO基板を、脱イオン水、洗浄剤、メタノール及びアセトンの組み合わせにより清浄化した。次いで、ITO基板を、約10分間、SPI Prep II プラズマエッチング機内で、酸素プラズマを用いて処理した。その後、ITO基板を、Laurell Model WS−400−N6PP スピナー上で、5分間、2000rpmの回転速度で、導電性ポリマーインク Ink−A1を用いてスピンコーティングした。スピンコーティング前に、インク−A1を、0.45μmPVDFフィルターを用いてろ過した。KLA Tencor P−15 Profilerにより測定されるように、約70nmの膜厚を有する均一な被膜を得た。
【0094】
次いで、CDTから、約80nm厚のグリーン発光ポリマー Lumation 1304の層を、トルエン溶液からスピンコーティングした。次いで、上記試料を、N2保護の下、ホットプレート上で20分間、130℃で焼き付けした。次いで、上記試料を、アルゴン雰囲気グローブボックス内に配置された、減圧エバポレータのチャンバー内に移動した。BaのA層を減圧堆積させ、次いでAgの層を堆積した。次いで素子を、アルゴングローブボックス内で、ガラスカバーフタ及びUV硬化性エポキシを用いて密閉した。上記素子の活性領域は、約6.2mm2であった。次いで、LED素子を、室温で、空気内で試験するために、上記グローブボックスから取り出した。
【0095】
[発光素子C−D1(対照)]
上記導電性ポリマーインク Ink−A1をITO上にスピンコーティングし、ITO基板上の被膜を窒素環境下で15分間、180℃でアニールした以外は、素子I−D1と同様にして、発光素子C−D1を製造した。次いで、ITO上のアニールされたHIL被膜を、I−D1に記載されるように、発光ポリマーの堆積のために、グローブボックスに移動させた。
【0096】
[発光素子I−D2]
導電性ポリマーインク−A1の代わりに導電性ポリマー分散物D2を、1分間、1000rpmを用いてITO上にスピンコーティングした以外は、素子I−D1と同様にして、発光素子I−D2を製造した。グリーン発光ポリマーの堆積の後、被膜の積み重ね全体を、N2保護下、ホットプレート上で40分間、130℃で焼き付けた。
【0097】
[発光素子C−D2(対照)]
導電性ポリマー分散物D2を、ITO上にスピンコーティングした後、ITO基板上の被膜を窒素環境下で15分間、160℃でアニールした以外は、素子I−D2と同様にして、発光素子C−D2を製造した。次いで、ITO上のアニールされたHIL被膜を、I−D2に記載されるように、発光ポリマーの堆積のために、グローブボックスに移動させた。
【0098】
[発光素子I−D3]
導電性ポリマーインク−A1の代わりに導電性ポリマー分散物D1を、2000rpmの代わりに1000rpmの回転速度を用いてITO上にスピンコーティングした以外は、素子I−D1と同様にして、発光素子I−D3を製造した。
【0099】
[発光素子C−D3(対照)]
導電性ポリマー分散物D2をITO上にスピンコーティングした後、ITO基板上の被膜を窒素環境下で15分間、180℃でアニールした以外は、素子I−D3と同様にして、発光素子C−D3を製造した。次いで、ITO上のアニールされたHIL被膜を、I−D3に記載されるように、発光ポリマーの堆積のために、グローブボックスに移動させた。
【0100】
[発光素子I−D4]
導電性ポリマーインク−A1の代わりに導電性ポリマーインク Ink−A2を、2000rpmの代わりに1000rpmの回転速度を用いてITO上にスピンコーティングした以外は、素子I−D1と同様にして、発光素子I−D4を製造した。
【0101】
[発光素子C−D4(対照)]
上記導電性ポリマーインク−A2をITO上にスピンコーティングした後、ITO基板上の被膜を窒素環境下で15分間、180℃でアニールした以外は、素子I−D4と同様にして、発光素子C−D4を製造した。次いで、ITO上のアニールされたHIL被膜を、I−D4に記載されるように、発光ポリマーの堆積のために、グローブボックスに移動させた。
【0102】
[素子試験]
上記発光素子の電流−電圧特性を、Keithley 2400 SourceMeterを用いて評価した。上記素子のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを、Oriel InstaSpec IV CCDカメラを用いて測定した。EL発光の出力を、較正されたSiフォトダイオードと共に、Newport 2835−C複数機能光学計器を用いて測定した。輝度が、EL発光の均等拡散分布を想定する、上記素子のEL前方出力パワー及びELスペクトルを用いて計算され、そしてPhoto Research PR650比色計を用いて確認された。PLED素子の寿命を、室温において、一定電流駆動条件下で、Elipse(商標)PLED Lifetime Tester(Cambridge Display Technologyより)上で測定した。
【0103】
駆動電流を、Siフォトダイオードを用いて測定された初期輝度を得るために必要な電流密度に従ってセットした。この一連の試験のために、初期素子の輝度として5000ニットを選択し、そして上記素子の寿命を、初期値の50%に達する輝度を得る時間として規定した。複数の素子を、同一インク組成物及び同一の素子製造方法を用いて製造したので、IVB測定による最高電流効率、及び寿命試験装置による素子の寿命を、範囲として報告する。ターンオン電圧V_onを、上記素子が認識できる輝度で点灯し始める電圧として評価した。漏れ電流を、ターンオン(V_on)の0.5のところにおける電流密度として規定した。
【0104】
【表1】

【0105】
表A内のデータは、一般的なウェットオンドライ方法から製造された素子(対照素子)と比較して、本発明のウェットオンウェット工程により製造された素子は、処理時間の大幅な減少(従って、より短いTAC時間)、より低い漏れ電流の組み合わせられた特徴における総合的な改良を示すが、可使時間及び効率性能を維持していることを明らかに実証している。
【0106】
[例B:本発明のウェットオンウェット工程に好適な、改良された被膜ヌレ特性を有する導電性ポリマーインク]
[導電性ポリマーインクI−B1]
導電性ポリマーインクI−B1を調製するために、75Kの平均分子量のポリ(スチレンスルホン酸)PSSAを、その原液から、3重量%に最初に希釈した。次いで、19.3gの導電性ポリマー分散物D2(3重量%の固形分)及び0.7gのPSSA(3重量%)を、インクの最終重量が20.0gとなるように、共に混合した。最終インクは、4重量%のPSSAと共に、3重量%の総固形分を含んでいた。
【0107】
[導電性ポリマーインクI−B2]
添加されるPSSAの量を、最終インクが5重量%のPSSAと共に、3重量%の総固形分を含むように計算したこと以外は、I−B1と同様にして、導電性ポリマーインクI−B2を調製した。
【0108】
[導電性ポリマーインクI−B3]
用いたPSSAが、75Kの代わりに1000KのMwを有し、そして添加されたPSSAの量を、最終インクが10重量%のPSSAと共に、3重量%の総固形分を含むように計算したこと以外は、I−B1と同様にして、導電性ポリマーインクI−B3を調製した。
【0109】
[導電性ポリマーインクI−B4]
用いたPSSAが、75Kの代わりに1000KのMwを有し、そして添加されるPSSAの量を、最終インクが25重量%のPSSAと共に、3重量%の総固形分を含むように計算したこと以外は、I−B1と同様にして、導電性ポリマーインクI−B4を調製した。このインク内に用いられたPSSAのイオン含有率からのさらなる分析は、残余の例に用いられたPSSAと比較してより顕著に高い水準の金属イオンを含んでいた。
【0110】
[導電性ポリマーインクI−B5]
用いたPSSAが、75Kの代わりに200KのMwを有し、そしてPSSAの量を、最終インクが50重量%のPSSAと共に、3重量%の総固形分を含むように添加されたこと以外は、I−B1と同様にして、導電性ポリマーインクI−B5を調製した。さらに、用いた上記導電性ポリマー分散物は、D2の代わりにD1であった。
【0111】
[導電性ポリマーインクI−B6]
最終インクが、4重量%のPSSA及び5%のプロピレングリコールプロピルエーテルと共に、3重量%の総固形分を含むように、追加量のプロピレングリコールプロピルエーテル(Aldrich Chemical Company,Inc)を上記分散物中に添加したこと以外は、I−B1と同様にして、導電性ポリマーインクI−B6を調製した。
【0112】
[導電性ポリマーインクI−B7]
TTモノマーの添加前に、反応器内に存在するアイオノマー分散剤が、7重量%のPSSA及び93重量%のNAFIONを含む以外は、導電性ポリマー分散物D1と同様にして、導電性ポリマーインクI−B7を調製した。最終インクは、重合工程の際に添加された7重量%のPSSAと共に、3重量%の固形分を含んでいた。
【0113】
[導電性ポリマーインクI−B8]
TTモノマーの添加の前に、添加されるPSSAの量が、14重量%のPSSA及び86重量%のNAFIONを含んでいたこと以外は、導電性ポリマーインクI−B7と同様にして、導電性ポリマーインクI−B8を調製した。最終インクは、重合工程の際に添加された14重量%のPSSAと共に、3重量%の固形分を含んでいた。
【0114】
[導電性ポリマーインクI−B9]
TTモノマーの添加の前に、添加されたPSSAの量が、50重量%のPSSA及び50重量%のNAFIONを含んでいたこと以外は、導電性ポリマーインクI−B7と同様にして、導電性ポリマーインクI−B9を調製した。最終インクは、重合工程の際に添加された50重量%のPSSAと共に、3重量%の固形分を含んでいた。
【0115】
[導電性ポリマーインクI−B10]
導電性ポリマーインクI−B10は、H.C Starckから入手できる、市販の導電性ポリマーBaytron CH8000(PEDOT/PSSA分散物)であった。
【0116】
素子の製作及び試験を、次の通り実施した:上記発光素子は、10〜15Ω/スクエア(Colorado Concept Coatings LLC)の、パターン化され、インジウムスズ酸化物が被覆されたガラス基板上に制作された。ITO基板を、脱イオン水、洗浄剤、メタノール及びアセトンの組み合わせにより清浄化した。次いで、ITO基板を、約10分間、SPI Prep II プラズマエッチング機内で、酸素プラズマを用いて処理した。その後、ITO基板を、70〜100nmの膜厚を得るために選択された回転速度で、導電性ポリマーインクを用いてスピンコーティングした。Laurell Model WS−400−N6PP スピナー上で、回転長さが1分間となるようにプログラムした。全ての導電性のポリマーインクを、スピンコーティング前に、0.45μmPVDFフィルターを用いてろ過した。均一な被膜が得られた。次いで、ITO基板を、15分間、180〜200℃でアニールした。アニーリングの後、約80nm厚のグリーン発光ポリマーの層を、トルエン溶液からスピンコーティングした。次いで、試料をN2保護下、ホットプレート上で20分間、130℃で焼き付けた。
【0117】
次いで、上記試料を、アルゴン雰囲気グローブボックス内に配置された、減圧エバポレータのチャンバー内に移動した。BaのA層を減圧堆積させ、次いでAgの層を堆積した。次いで素子を、アルゴングローブボックス内で、ガラスカバーフタ及びUV硬化性エポキシを用いて密閉した。上記素子の活性領域は、約6.2mm2であった。次いで、LED素子を、室温で、空気内で試験するために、上記グローブボックスから取り出した。厚さを、KLA Tencor P−15 Profiler上で測定した。電流−電圧特性を、Keithley 2400 SourceMeterを用いて評価した。
【0118】
上記素子のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを、Oriel InstaSpec IV CCDカメラを用いて測定した。EL発光の出力を、構成されたSiフォトダイオードと共に、Newport 2835−C複数機能光学計器を用いて測定した。輝度が、EL発光の均等拡散分布を想定する、上記素子のEL前方出力パワー及びELスペクトルを用いて計算され、そしてPhoto Research PR650比色計を用いて確認された。
【0119】
PLED素子の寿命を、室温において、一定電流駆動条件下で、Elipse(商標)PLED Lifetime Tester(Cambridge Display Technologyより)上で測定した。駆動電流を、Siフォトダイオードを用いて測定された初期輝度を得るために必要な電流密度に従ってセットした。この一連の試験のために、初期素子の輝度として5000ニットを選択し、そして上記素子の寿命を、初期値の50%に達する輝度を得る時間として規定した。複数の素子を、同一インク組成物を用いて製造したので、IVB測定による最高電流効率、及び寿命試験装置による素子の寿命を、表B1に範囲として報告する。
【0120】
上記被膜のヌレ特性を特徴付けるために、インクを、基板(例えば、Colorado Concept Coatings LLCから供給された1”×1”ITO/ガラス)上に堆積させた。本発明の例のために、スピンコーティング方法を用いた。50〜100nmの間の膜厚を得るために、特定の回転速度を選択した。検討中の被膜上の液滴(例えば、水又は有機溶媒)の接触角を得るために、Kruss Drop Shape Analysis System model DSA10 MK2を用いた。当該装置は、規定時間(60秒)に渡り、液滴の広がりを記録する。液滴形状分析ソフトウェアが、この60秒間にわたり、サークルフィッティング法を用いて接触角を計算する。表B1に示されるデータは、液滴として水を用いて収集された。アニールされない場合、被膜は、スピンコーティング方法により堆積され、そして2時間の間周囲条件に放置された跡に得られた被膜を表す。アニールされた被膜を、空気中で、15分間、180℃のホットプレート上で熱処理した。
【0121】
【表2】

【0122】
上記導電性ポリマーの被膜特性をさらに実証するために、2成分Flowkes理論モデルを用いて、被膜表面エネルギーを決定した。Flowkesの理論は、固体及び液体の間の接着エネルギーを、当該2相の分散成分の間の相互作用と、当該2相の非分散(極性)成分の間の相互作用とに分離することができると仮定している。表面エネルギーσsDの分散成分を、分散成分のみを有する液体、例えば、ジヨードメタン(σL=σLD=50.8mN/m)との被膜接触角度を測定することにより決定する。その後、分散成分及び非分散成分の両方を有する第2の液体、例えば、水(σLP=46.4mN/m、σLD=26.4mN/m)との上記被膜の接触角を測定する。方程式(σLD1/2(σSD1/2+(σLP1/2(σsP1/2=σL(cosθ+1)/2により計算することができる。
【0123】
[導電性ポリマー被膜I−B1]
被膜構造体I−B1を、ITO/ガラス基板上に導電性ポリマーインク−B6をスピンコーティングすることにより得た。
【0124】
[導電性ポリマー被膜C−B1]
上記被膜を、15分間、空気中で、180℃においてアニールした以外は、導電性ポリマー被膜I−B1と同様にして、被膜構造体C−B1を得た。
【0125】
【表3】

【0126】
表B1及び表B2内のデータは、本発明のウェットオンウェット工程を用いることにより、本質的に低い表面エネルギーの導電性ポリマー材料、例えば、フルオロポリマー含有導電性ポリマーインクを改良し、改良された寿命及び効率を有し、次の層材料のためにヌレ性を有する素子を製造することができる。いかなる理論又は説明に拘束されることを望まないが、導電性被膜の表面エネルギーの増加は、上記極性成分の表面エネルギーの増加により推進されると考えられる。
【0127】
[例C:アニール化及び非アニール化導電性ポリマー被膜の間の被膜粗度及び被膜構造体差の特性付け]
[導電性ポリマー被膜I−C1]
被膜構造体I−C1を、ITO/ガラス基板上に導電性ポリマーインク−A1をスピンコーティングすることにより得た。回転速度を、膜厚が約20nmとなるように制御した。
【0128】
[導電性ポリマー被膜I−C2]
被膜構造体I−C2を、ITO/ガラス基板上に導電性ポリマーインク−A1をスピンコーティングすることにより得た。回転速度を、膜厚が約50nmとなるように制御した。
【0129】
[導電性ポリマー被膜I−C3]
被膜構造体I−C3を、ITO/ガラス基板上に導電性ポリマーインク−A1をスピンコーティングすることにより得た。回転速度を、膜厚が約80nmとなるように制御した。
【0130】
[導電性ポリマー被膜I−C4]
被膜構造体I−C4を、ITO/ガラス基板上に導電性ポリマーインク−A1をスピンコーティングすることにより得た。回転速度を、膜厚が約110nmとなるように制御した。
【0131】
[導電性ポリマー被膜C−C1]
被膜を、15分間、窒素下で、180℃でアニールした以外は、導電性ポリマー被膜I−C1と同様にして、被膜構造体C−C1を得た。膜厚は、約20nmであった。
【0132】
[導電性ポリマー被膜C−C2]
被膜を、15分間、窒素下で、180℃でアニールした以外は、導電性ポリマー被膜I−C2と同様にして、被膜構造体C−C2を得た。膜厚は、約50nmであった。
【0133】
[導電性ポリマー被膜C−C3]
被膜を、15分間、窒素下で、180℃でアニールした以外は、導電性ポリマー被膜I−C3と同様にして、被膜構造体C−C3を得た。膜厚は、約80nmであった。
【0134】
[導電性ポリマー被膜C−C4]
被膜を、15分間、窒素下で、180℃でアニールした以外は、導電性ポリマー被膜I−C4と同様にして、被膜構造体C−C4を得た。膜厚は、約110nmであった。
【0135】
原子間力顕微鏡(AFM)は、試料表面をスキャンするために、カンチレバーの下面に取り付けられたピラミッド型のプローブを用いる。上記プローブそれ自体は、10〜20nmの公称の先端部を有する約1μmのサイズである。レーザー光線(HeNe、約633nm)は、上記カンチレバーの裏面から、4つの四分円の位置感度ダイオード検出器(PSD)に反射する。上記表面と接近又は接触すると、上記カンチレバーがたわみ、そしてこのたわみをPSDにより読み取る。試料を、表面にわたるラスターパターンにおいてスキャンすると、絶対たわみ(接触モード)又は振幅減衰(タッピングモード)のどちらかにより、プローブ及び試料の間の一定の間隔を保つためのフィードバックインプットが提供される。一定のたわみ(又は減衰)を維持するために要求される電圧を高さに転換し、ひいては、高さ値の2次元の配列を収集する。
【0136】
タッピングモードは、カンチレバーをその共振振動数において振動させ、次いでフィードックインプットとしてある程度の減衰を用いることにより達成される。タッピングモードイメージと共に、層投影を行うことができる;ここで、励起シグナルと実際のカンチレバーの振動との間の相のラグが、受動的にモニターされ、そしてイメージとして表示される。相イメージ内のコントラストは、主として、機械的な相違、例えば、弾性及び接着に起因する。AFM機器:Nanoscope IIIaコントローラを有するDigital Instruments Dimension 3000を、Sbドープ化Siスプリングボードスタイルカンチレバー、プローブ型として、Vistaprobes,Nanoscience instruments(0.01〜0.025Ω/cm2、k 約40N/m、カンチレバー長さ125μm及び共振振動数 約350kHz)と共に、タッピングモード内で用いた。
【0137】
経路−平均−二乗粗さ(Rq)値を、トポグラフィーイメージから誘導した。留意するように、上記トポグラフィーイメージ内のコントラストは、高さの相違を示し、より高い領域は、より明るいところであり、そしてより低い領域は、より暗いところであるように見える。高さのスケールは、対応するトポグラフィーイメージの下に示されている。表面粗度を実施する前に、垂直(Z)スキャナードリフト、イメージのそり、スキップ、及びラインスキャンの間の垂直オフセットに起因するイメージのアーチファクトを除去するために、二次フィッティングアルゴリズムを用いて、イメージを平坦化した。
【0138】
導電性ポリマー分散物インク−A1から製造されたアニール化及び非アニール化被膜から得られた表面粗さ測定は、表Cに示されるアニール化被膜と比較してなめらかでない表面を有していた。非アニール化被膜の表面粗度は、その上に堆積している半導電性ポリマー層の接着を手助けするであろう。
【0139】
【表4】

【0140】
[例D:非アニール化HIL層及びアニール化HIL層の頂部に半導電性ポリマーをスピンコーティングすることにより形成した層構造体からのXPSの結果]
X線光電子放出分光法(XPS)により、固体の上面の原子組成(元素濃度及び化学的状態)が提供される。減圧条件下で、X線の単色ビームが、重要な試料の表面に向けられ、原子が、X線によりイオン化され、そして光放出電子を分析器により測定する。光電子の運動エネルギー及びX線光子のエネルギーの間の関係により、各化学元素、その化学的状態、又は結合配置に関する特有のサインが提供される。
【0141】
その表面のところで他の材料の薄層からの減衰に続いて、バルク材料からのXPSシグナル(例えば、LEP薄層に覆われた導電性ポリマーインク層からのシグナル)を、ランベルト・ベールの法則を用いて計算することができる。
表面法線に対する角度θのところで、表面で検出される、バルク材料からのシグナルは、以下:
I=I0exp(−d/λcosθ)
により与えられる。
強度I0を有するXPSシグナル(導電性インクからの)は、厚さdの(LEPの)層を通ることにより、強度Iに減衰される。当業者は、上に位置する層の厚さを測定するためにこの方法を用いることができるが、同一の上に位置する層の厚さを有する試料を比較する場合に、層間の界面が、境界がはっきりしているか又は拡散しているか推測するためにこの方法を用いることができる。
【0142】
XPS実験を、複数のチャネルプレート検出器(MCD)及び焦点を合わせたAl単色X線供給源を備えているPhysical Electronics 5000 VersaProbe XPS分光計上で実施することができる。XPSデータを、Al kα X線励起(25ワット及び15kV)を用いて収集する。高分解能スペクトルを、23.50eVパスエネルギー、50msec停止時間、0.1eV/ステップで収集した。分析領域は、テイクオフ角度θ=90°のところの100μm2であった。定量的な元素分析を、上記スペクトルからのピーク面積を測定し、そして透過関数補正原子感度係数を適用することにより測定した。元素検出限界は、0.1質量%であり、そしてプロービング深さは、20nm未満である。試料均一性は、何点かの位置においてデータを記録することによりチェックされ、そして光電子放出の立ち上がりを用いて、精査された領域の均一性を確認した。
【0143】
上記導電性ポリマーインク及びLEP層の間の界面を特徴付けるために、複数層の薄膜を、Colorado Concept Coatings LLCにより供給された1”×1”のITO/ガラス基板上にスピンコーティングすることにより調製した。ITO/ガラス基板を、脱イオン水、洗浄剤、メタノール及びアセトンの組み合わせにより最初に洗浄した。次いで、ITO基板を、約10分間、SPI Prep II プラズマエッチング機内で、酸素プラズマを用いて処理した。
【0144】
被膜構造体D1−ITOを、ITO/ガラス基板上に導電性ポリマーインク−A1をスピンコーティングすることにより得た。
被膜構造体D2−ITOを、ITO/ガラス基板上に導電性ポリマーインク−A1をスピンコーティングし、続いてそれを180℃で15分間、ホットプレート上でアニールすることにより得た。
【0145】
被膜構造体D3−ITOを、ITO/ガラス基板上に導電性ポリマーインク−A1をスピンコーティングし、続いてそれを180℃で15分間、ホットプレート上でアニールすることにより得た。次いで、CDTからの半導電性ポリマーLumation1304発光ポリマーの28nm+/−2nmの層を、アニールされたHIL層の頂部にスピンコーティングした。
【0146】
被膜構造体D4−ITOを、ITO/ガラス基板上に導電性ポリマーインク−A1をスピンコーティングし、次いで、CDTからの半導電性ポリマーLumation1304発光ポリマーの28nm+/−2nmの層を、アニールされたHIL層の頂部にスピンコーティングした。
【0147】
【表5】

【0148】
フッ素(F)は、上記導電性ポリマーインク被膜のFSAポリマー内にのみ存在するので、二重層(導電性ポリマーインク/LEP)構造体を調査するために.プローブとして用いることができる。試料D3−ITOにおいて、Fは検出されず、LEP層がXPS技法のプロービング深さよりも厚いという事実と一致する。対照的に、Fは、試料D4−ITO上で検出され、F原子が、上記被膜表面の方向に、LEP層内で拡散していることを示している。これにより、本発明のウェットオンウェット工程により得られうる上記導電性ポリマーインク層及びLEP層の間の拡散/混合された界面が確認される。
【0149】
本発明は、一定の態様又は実施形態に関連して記載しているが、当業者は、本発明の範囲から外れることなく、種々の変形をなすことができ、そして均等物が、それらの要素を置換することができることを理解するであろう。さらに、本発明の本質的な範囲から外れることなく、特定の状況又は材料に本発明の教示を適合させることができる。従って、本発明は、本発明を実施するために考慮されるベストモードとして開示される特定の発明に制限されないことが意図されるが、本発明は、添付の特許請求の範囲内にある全ての実施形態を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の各ステップを含む有機電子素子の製造方法;
a)アノードを準備するステップ;
b)導電性ポリマーを前記アノード上に堆積し、正孔注入層を形成するステップ;
c)半導電層を前記正孔注入層上に堆積するステップ;及び
d)これらの層を、前記正孔注入層及び半導電層の間に界面結合を形成するために十分な条件の下でこれらの層に適用するステップ:
e)カソードを供給するステップ。
【請求項2】
前記素子が、有機発光素子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記導電性ポリマーが、少なくとも1種のポリチオフェンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記導電性ポリマーが、前記ポリチオフェンと、PSSA及び高分子量スルホン酸から成る群から選択される少なくとも1種の要素とを含む分散物を構成する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記高分子量スルホン酸が、少なくとも1種のポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)及び(PAAMPS)を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記半導電層が、発光ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分散物が、被膜表面エネルギーを高めるために十分な量の少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記半導電層を堆積する前に、前記正孔注入層をアニールすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
アノード、カソード、前記アノード及びカソードの間の半導電層、並びに前記アノード及び半導電層の間の導電性ポリマー含有正孔注入層;
を含む有機電子素子であって、
界面結合層が、前記正孔注入層及び半導電層の間に形成されている、
前記有機電子素子。
【請求項10】
前記素子が、有機発光素子を含む、請求項9に記載の素子。
【請求項11】
前記界面結合層が、正孔注入に富む領域と、半導電に富む領域とを含む、請求項9に記載の素子。
【請求項12】
前記半導電層が、発光ポリマーを含む、請求項9に記載の素子。
【請求項13】
前記界面結合層が、XPSにより検出可能な、前記正孔注入層及び半導電層の混合物を含む、請求項9に記載の素子。
【請求項14】
前記ポリチオフェンが、ポリエチレンジオキシチオフェン及びポリチエノチオフェンから成る群から選択される少なくとも1種の要素を含む、請求項3に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−231843(P2009−231843A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−72331(P2009−72331)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】