説明

有機エレクトロルミネセンス素子

本発明は、発光層に加えて、前記発光層と同じ材料を含むさらなる層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも二つの材料AとBを含む少なくとも一つの発光層を含み、発光層に加えて、発光層と同じ材料AとBの混合物を含むさらなる層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、発光層中のより少ない割合を有する材料Aが、更なる層ではより高い割合で存在する有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0002】
有機半導体が、機能性材料として使用される有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)の構造は、たとえば、US 4539507、US 5151629、EP 0676461およびWO 98/27136に記載されている。先行技術によるOLEDは、アノードとカソードとの間に、通常、正孔注入層、少なくとも一つの正孔輸送層、一以上の発光層、随意に、正孔障壁層、一以上の電子輸送層および電子障壁層を含むが、これらの層の夫々は、必ずしも存在する必要はない。ここで、発光層は、一般的にはドープされた層、すなわち、少なくとも一つのホスト材料(マトリックス材料)と少なくとも一つのドーパントの混合物である。たとえば、異なるホスト材料が、同じドーパントに対して使用されか、または異なるドーピング濃度が異なる層に使用される段階的ドーピングまたは複数の個々の層から構築される発光層等の特別な素子も知られている。ドープされた層では、ドーパントの合計は、常に、ホスト材料の合計より低い濃度である。ドーピング濃度は、燐光エミッター層で、通常、5〜20体積%、蛍光エミッター層で、通常、0.5〜10体積%である。
【0003】
使用される正孔輸送層は、通常、一般的にはアリールアミン誘導体である正孔輸送材料を含む純粋であるか、または、その使用は、伝導性を増加するために、p-ドーパント、すなわち、酸化性材料でドープされた正孔輸送材料でなされる。
【0004】
一般的には、有機エレクトロルミネッセンス素子の効率、駆動電圧と駆動寿命に関して、改善の必要性が引き続き存在する。
【0005】
驚くべきことに、発光層中で同じドーパントと同じホスト材料の混合物から同様に成るさらなる層が導入され、ドーパントがこの補助的層のホスト材料よりも高い割合で混合物中で存在するならば、少なくとも一つのドーパントと少なくとも一つのホスト材料を含む発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性が、改善できることが今回見出された。
【0006】
したがって、本発明は、少なくとも二つの材料AとBの等しくない混合比の混合物から成る発光層を含み、材料Aの濃度は、材料Bの濃度より低く、発光層と同じ材料AとBの混合物から成る追加層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、発光層中の二つの材料のうちより少ない割合を有する材料Aが、この追加層においては、材料Bより高い割合で存在することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0007】
ここで、追加層は、好ましくは、非発光層であり、すなわち、この層は、OLEDの駆動中に発光を示さない。
【0008】
本発明の好ましい具体例では、材料Aは、発光層中で、30体積%未満、特に、好ましくは、10体積%未満、非常に、特に、好ましくは、7体積%未満の濃度を有する。
【0009】
本発明の好ましい具体例では、発光層中でより低い濃度で存在する材料Aは、発光材料である、これは、好ましくは、この発光層からの発光の少なくとも80%、好ましくは、少なくとも90%に寄与する。発光割合は、材料Aを省略したOLEDのエレクトロルミネッセンススペクトルと比べたOLEDのエレクトロルミネッセンススペクトルから評価することができる。
【0010】
本発明の、特に、好ましい具体例では、発光材料Aは蛍光材料である。
【0011】
本発明の、さらに、好ましい具体例では、発光層中のより高い濃度の材料Bは、30体積%超の、特に、好ましくは、50体積%超の、非常に、特に、好ましくは、70体積%超の割合を有する。
【0012】
本発明の、特に、好ましい具体例では、発光層は、正確に一つの発光ドーパントAでドープされた正確に一つのホスト材料Bから成り、ここで、ホスト材料Bはより高い濃度を有する。この場合、ホスト材料Bの濃度は、好ましくは、70体積%超の、特に、好ましくは、90体積%超の、非常に、特に、好ましくは、93体積%超である。
【0013】
本発明によれば、有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光層と同じ材料AとBを含み、この型の追加層においては、材料Aは、材料Bより高い割合で存在する。好ましい具体例では、材料Aの割合は、50体積%超の、特に、好ましくは、70体積%超の、非常に、特に、好ましくは、80体積%超である。
【0014】
対応して、追加層での材料Bの割合は、好ましくは、50体積%未満、特に、好ましくは、30体積%未満、非常に、特に、好ましくは、20体積%未満である。
【0015】
本発明の好ましい具体例では、追加層は、特に、好ましくは、アノード側で、発光層に直接隣接する。
【0016】
本発明の、さらに、好ましい具体例では、発光層は、青色発光層もしくは緑発光層である。発光層は、特に、好ましくは、青色発光層であり、非常に、特に、好ましくは、青色蛍光層である。全体として、有機エレクトロルミネッセンス素子は、単色有機エレクトロルミネッセンス素子もしくは白色発光有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【0017】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、アノード、カソードと少なくとも一つの発光層と上記追加層とを含み、前記層は、アノードとカソードとの間に配置されている。有機エレクトロルミネッセンス素子は、有機もしくは有機金属材料から構築される層のみを必ずしも含む必要はない。したがって、アノード、カソードおよび/または一以上の層が、無機材料を含むか、または無機材料から完全に構築されることも可能である。
【0018】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、蛍光もしくは燐光化合物を含むことができる。
【0019】
本発明の意味での燐光化合物は、本発明による有機素子の燐光エミッター層中に存在し、比較的高いスピン多重度、すなわち、スピン状態>1の励起状態から、特に、励起三重項状態から、室温でルミネッセンスを呈する化合物である。本発明の目的のために、第2および第3遷移金属系列からの遷移金属を含むすべてのルミネッセンス遷移金属錯体、特に、すべてのルミネッセンスイリジウムおよび白金化合物が、燐光化合物とみなされるべきである。
【0020】
本発明の意味での蛍光化合物は、青色蛍光エミッター層中に存在し、一重項状態から、室温でルミネッセンスを呈する化合物である。本発明の目的のために、元素C、H、N、O、S、F、BおよびPからのみ構築されるすべてのルミネッセンス化合物が、蛍光化合物を意味するものと解される。
【0021】
本発明の好ましい具体例では、エミッター層中でより低い濃度で存在する材料Aは、正孔輸送材料である。本発明の意味での正孔輸送材料は、>−5.6eVのHOMO(最高分子占有軌道)を有する材料として定義される。HOMOは、好ましくは、>−5.4eV、特に、好ましくは、>−5.2eVである。ここで、HOMOは、例1の具体例で一般的用語で定義されるとおりに決定される。
【0022】
本発明の好ましい具体例では、使用される正孔伝導性材料Aは、芳香族モノアミン、芳香族ジアミン、芳香族トリアミンもしくは芳香族テトラアミン、特に、芳香族モノアミンもしくは芳香族ジアミンであって、芳香族アミン上の少なくとも一つの置換基は、特に、好ましくは、縮合芳香族基である。
【0023】
材料Aとして使用することのできる好ましい芳香族アミンは、以下の式(1)〜(7)の化合物である。
【化1】

【0024】
ここで、以下が、使用される記号に適用される。
【0025】
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する二価、三価あるいは四価の芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する一価の芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、同一の窒素原子に結合する二個の基Arまたは同一の窒素原子に結合する一つの基Arと一つの基Arは、単結合またはB(R)、C(R、Si(R、C=O、C=NR、C=C(R、O、S、S=O、SO、N(R)、P(R)およびP(=O)Rより成る基から選択されるブリッジにより互いに結合されてよく、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、CN、NO、Si(R、B(OR、B(R、B(N(R、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜40個のC原子を有する直鎖アルケニルもしくはアルキニル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、また、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)、または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、またはこれらの構造の組み合わせであり;ここで、2以上の隣接する置換基Rは、互いに、モノ-あるいはポリ環状脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されてよい5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、CNもしくは1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族炭化水素基であり、加えて、H原子は、Fで置き代えられてよく;ここで、2以上の隣接する置換基Rは、互いにモノ-あるいはポリ環状、脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよい。
【0026】
同じ窒素原子に結合する二個の基Arまたは一個の基ArとArは、互いに単結合により結合するならば、それにより、カルバゾールが形成される。
【0027】
ここで、Arは、式(2)、(3)、(4)および(7)の化合物中の二価基および式(5)の化合物中の三価基および式(6)の化合物中の四価基である。
【0028】
本発明の意味でのアリール基は、少なくとも6個のC原子を含み;本発明の意味でのヘテロアリール基は、少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を含むが、但し、C原子とヘテロ原子の合計は少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選ばれる。ここで、アリール基もしくはヘテロアリール基は、単純な芳香族環、すなわちベンゼン、または、単純な複素環式芳香族環、たとえば、ピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または、縮合アリールもしくはヘテロリール基である。ここで、縮合アリールもしくはヘテロリール基は、少なくとも二個のアリールもしくはヘテロリール基が共通の端により互いに縮合する基、たとえば、ナフタレン、アントラセン、ピレン、キノリン、イソキノリン等を意味するものと解される。
【0029】
本発明の意味での芳香族環構造は、環構造中に少なくとも6個のC原子を含む。本発明の意味での複素環式芳香族環構造は、少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を環構造中に含むが、但し、C原子とヘテロ原子の合計は少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選ばれる。本発明の意味での芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、必ずしもアリールもしくはヘテロアリール基のみを含む構造ではなく、その代わりに、加えて、複数のアリールもしくはヘテロアリール基は、たとえば、sp混成のC、NあるいはO原子あるいはカルボニル基のような短い非芳香族単位(H以外の原子は、好ましくは、10%より少ない)により中断されていてもよい構造を意味するものと解される。したがって、たとえば、9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン、ベンゾフェノン等の構造も、本発明の意味での芳香族環構造を意味するものと解されることを意図されてもいる。芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、同様に、複数のアリールもしくはヘテロアリール基が互いに単結合により結合する構造、たとえば、ビフェニル、ターフェニルもしくはビピリジンを意味するものと解される。
【0030】
本発明の目的のためには、C〜C40-アルキル基は、ここで、加えて、個々のH原子もしくはCH基は、上記した基により置換されていてよく、特に、好ましくは、基メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、t-ペンチル、2-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、s-ヘキシル、t-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、シクロヘキシル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、4-ヘプチル、シクロヘプチル、1-メチルシクロヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、シクロオクチル、1-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-(2,6-ジメチル)オクチル、3-(3,7-ジメチル)オクチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたは2,2,2-トリフルオロエチルを意味するものと解される。C〜C40-アルケニル基は、好ましくは、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニルまたはシクロオクタジエニルを意味するものと解される。C〜C40-アケニル基は、好ましくは、エテニル、プロピペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニルあるいはシクロオクテニルを意味するものと解される。C〜C40-アルキニル基は、好ましくは、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルあるいはオクチニルを意味するものと解される。C〜C40-アルコキシ基は、特に、好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシまたは2-メチルブトキシを意味するものと解される。5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、各場合に、上記した基Rにより置換されていてもよく、任意の所望の位置を介して、芳香族もしくは複素環式芳香族系に連結していてもよいが、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ベンズアントラセン、ベンゾフェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランセン、ベンゾフルオランセン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、ベンゾフルオレン、ジベンゾフルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス-もしくはトランス-インデノフルオレン、シス-もしくはトランス-モノベンゾインデノフルオレン、シス-もしくはトランス-ジベンゾインデノフルオレン、トルクセン、イソトルクセン、スピロトルクセン、スピロイソトルクセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジンイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールから誘導される基を意味するものと解される。
【0031】
本発明の好ましい具体例では、式(1)〜(7)の化合物中の少なくとも一つの基Arおよび/またはArは、10個以上の芳香族環原子を有する縮合芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。
【0032】
式(2)〜(7)の化合物中の少なくとも一つの基Arまたは式(1)の化合物中の少なくとも一つのArは、好ましくは、14〜40個、特に、好ましくは、14〜30個の芳香族環原子を有する縮合芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。縮合芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、非常に、特に、好ましくは、アントラセン、クリセン、ピレン、ペリレン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾフルオレン、ジベンゾフルオレン、シス-もしくはトランス-モノベンゾインデノフルオレンまたはシス-もしくはトランス-ジベンゾインデノフルオレンより成る基から選択される。
【0033】
本発明の好ましい具体例では、式(2)〜(7)の化合物中の少なくとも一つの基Arは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜18個の芳香族環原子、特に、好ましくは、6〜12個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。基Arは、非常に、特に、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、夫々1以上の基Rにより置換されてよいフェニル、1-ナフチル、2-ナフチルもしくはオルト-、メタ-あるいはパラ-ビフェニルである。式(1)の化合物中で二個の基Arは、上記定義されるものが好ましく、第三の基Arは、10を超える芳香族環原子を有する縮合芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であるものが好ましい。
【0034】
その好ましい例は、芳香族2-あるいは9-アントラセンアミン、芳香族2,6-あるいは9,10-アントラセンジアミン、芳香族1-ピレンアミン、芳香族1,6-ピレンジアミン、芳香族クリセンアミンあるいは芳香族クリセンジアミンもしくは。たとえば、WO08/006449にしたがうベンゾインデノフルオレンンアミンあるいはベンゾインデノフルオレンジアミン、たとえば、WO07/140847にしたがうジベンゾインデノフルオレンアミンあるいはジベンゾインデノフルオレンジアミンである。
【0035】
本発明のさらに好ましい具体例では、発光層中でより高い割合で存在する材料Bは、電子輸送材料である。これは、好ましくは、<−2.3eV、特に、好ましくは、<−2.5eV>のLUMO(最低空分子軌道)を有する。ここで、LUMOは、例1の具体例で一般的用語で定義されるとおりに決定される。
【0036】
蛍光ドーパントのためのホスト材料(マトリックス材料)として使用することができる適切な材料Bは、特に、上記言及したドーパントであり、たとえば、オリゴアリーレン(たとえば、EP 676461に記載されるとおりの2,2’,7,7’-テトラフェニルスピロビフルオレンもしくはジナフチルアントラセン)、特に、縮合芳香族基を含むオリゴアリーレン、オリゴアリーレンビニレン(たとえば、DPVBiもしくはEP 676461にしたがうスピロ-DPVBi)、ポリポダル金属錯体(たとえば、WO 04/081017にしたがう)、電子伝導化合物、特に、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド等(たとえば、WO 05/084081およびWO 05/084082にしたがう)、アトロプ異性体(たとえば、WO 06/048268にしたがうに)、ボロン酸誘導体(たとえば、WO 06/177052にしたがう)、ベンゾアントラセン誘導体(たとえば、WO 08/145239にしたがうベンゾ[a]アントラセン誘導体)およびベンゾフェナントレン誘導体(未公開出願DE 102009005746.3にしたがうベンゾ[c]フェナントレン)の種から選択される。特に、好ましいホスト材料は、ナフタレン、アントラセン、ベンゾアントラセン、特に、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾフェナントレン、特に、ベンゾ[c]フェナントレンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体の種から選択される。本発明の意味でのオリゴアリーレンは、少なくとも3個のアリールあるいはアリーレン基が互いに結合する化合物を意味するものと解されることを意図している。
【0037】
特に、好ましい材料Bは、は、以下の式(8)の化合物である。
【0038】
Ar-Ant-Ar 式(8)
ここで、Rは上記に示される意味を有し、使用される他の記号は以下が適用される。
【0039】
Antは、9-および10-位でArにより置換されるアントラセン基であって、さらに一以上のRより置換されてもよく、
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。
【0040】
本発明の好ましい具体例では、少なくとも一つの基Arは、10個以上の芳香族環原子を有する縮合アリール基を含む。好ましい基Arは、出現毎に同一であるか異なり、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、アントラセニル、オルト-、メタ-あるいはパラ-ビフェニル、フェニレン-1-ナフチル、フェニレン-2-ナフチル、フェナントレニル、ベンズ[a]アントラセニルもしくはベンズ[c] フェナントレニルから成る基より選択され、夫々は、1以上の基Rにより置換されてよい。
【0041】
発光層の層厚は、好ましくは、5〜60nm、特に、好ましくは、10〜30nmである。
【0042】
発光層と同じ材料を含む追加層の層厚は、好ましくは、1〜50nm、特に、好ましくは、3〜20nmである。
【0043】
OLEDのさらなる層の好ましい具体例は、以下に示される。
【0044】
さらなる発光層が存在するならば、一般的に先行技術にしたがって使用されるようなすべた材料を、これら発光層に使用することができる。
【0045】
本発明の好ましい具体例では、素子は、白色発光有機エレクトロルミネッセンス素子である。これは、0.28/0.29〜0.45/0.41の範囲のCIE1931年色座標を有する光を発光することを特徴とする。
【0046】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、正確に二個の発光層を有し、第2の発光層は、好ましくは、黄色-あるいはオレンジ色-燐光エミッター層である。最初の層は、すでに一般的選好として上記に示したとおり、好ましくは、青色-蛍光エミッター層である。ここで、黄色-あるいはオレンジ色-燐光層は、好ましくは、アノード側に、青色-蛍光層は、カソード側に配置される。ついで、追加層は、好ましくは、青色-蛍光層と同じ材料を含む層である。この層は、好ましくは、青色-蛍光層のアノード側に配置され、青色-蛍光エミッター層と黄色-あるいはオレンジ色-燐光エミッター層との間の中間層である。
【0047】
本発明の好ましい具体例では、本発明によるエレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも三個のエミッター層を有する。
【0048】
有機エレクトロルミネッセンス素子が三個のエミッター層を有するならば、これら層の一つは、好ましくは、赤色-あるいはオレンジ色-燐光エミッター層であり、層の一つは、緑色-燐光エミッター層である。最初の層は、すでに一般的選好として示したとおり、好ましくは、青色-蛍光エミッター層である。本発明の好ましい具体例では、赤色-あるいはオレンジ色-燐光層はアノード側上にあり、青色-蛍光層はカソード側上にあり、緑色-燐光層は、赤色-燐光層と青色-蛍光層との間にある。ついで、追加層は、好ましくは、青色-蛍光層と同じ材料を含む層である。この層は、好ましくは、青色-蛍光層のアノード側に配置され、青色-蛍光エミッター層と緑色-燐光エミッターとの間の中間層である。
【0049】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、たとえば、未公開出願DE 102009017064.2に記載されているとおりに蛍光および燐光エミッター層の間の一つに代えて、二個以上の中間層を有することも可能である。この場合、青色-蛍光層と同じ材料AとBを有する追加層がこれら中間層の一つであり、好ましくは、青色-蛍光層に直接隣接する。
【0050】
有機エレクトロルミネッセンス素子が三個以上のエミッター層を有することも可能である。
【0051】
ここで、黄色発光層は、そのフォトルミネッセンス最大が、540〜570nmの範囲である層を意味するものと解される。オレンジ色発光層は、そのフォトルミネッセンス最大が、570〜600nmの範囲である層を意味するものと解される。赤色発光層は、そのフォトルミネッセンス最大が、600〜750nmの範囲である層を意味するものと解される。緑色発光層は、そのフォトルミネッセンス最大が、490〜540nmの範囲である層を意味するものと解される。青色発光層は、そのフォトルミネッセンス最大が、440〜490nmの範囲である層を意味するものと解される。ここで、フォトルミネッセンス最大は、50nmの層厚を有する層のフォトルミネッセンススペクトルの測定により決定される。
【0052】
白色発光有機エレクトロルミネッセンス素子中の燐光エミッター層のための適切な材料は、先行技術にしたがって使用されるとおりのすべての燐光エミッターと燐光エミッターのためのすべてのマトリックス材料であり、燐光エミッターは、好ましくは、環状金属化合物イリジウムおよび白金錯体である。特に、どの燐光錯体がどの発光色で発光するかは当業者に知られている。
【0053】
カソード、アノード、発光層と発光層と同じ材料を含む追加層とは別に、有機エレクトロルミネッセンス素子は、さらなる層を含んでもよい。これらは、たとえば、各場合に、一以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層、電子注入層、電子障壁層、励起子障壁層、電荷生成層および/または有機あるいは無機p/n接合である。さらに、複数の発光層の間に中間層が存在してもよい。さらに、層、特に、電荷輸送層は、ドープされていてもよい。層のドーピングは、改善された電荷輸送のために有利であり得る。しかしながら、これらの各層は必ずしも存在する必要はなく、層の選択は、常に使用される化合物に依存することが指摘されねばならない。
【0054】
この型の層の使用は、当業者に知られ、先行技術にしたがって、この目的のためのこの型に知られるすべての材料を、進歩性を必要とすることなく使用することができる。
【0055】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子のカソードは、好ましくは、低い仕事関数を有する金属、たとえば、アルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属あるいはランタノイド金属(たとえば、Ca、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Sm等)のような種々の金属を含む金属合金もしくは多層構造を含む。多層構造の場合、たとえばAgのような比較的高い仕事関数を有する金属を前記金属に加えて使用してもよく、たとえば、Ca/AgもしくはBa/Agのような金属の組み合わせが一般的に使用される。同様に好ましいものは、金属合金、特に、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属と銀を含む合金、特に、好ましくは、MgとAgの合金である。高い誘電定数を有する材料の薄い中間層を金属カソードと有機半導体との間に導入することも好ましいかもしれない。この目的のために適切なものは、たとえば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属フッ化物だけでなく対応する酸化物もしくは炭酸塩等である(たとえば、LiF、LiO、CsF、CsCO、BaF、MgO、NaF等)。この層の層厚さ、好ましくは、0.5〜5nmである。
【0056】
本発明によるエレクトロルミネッセンス素子のアノードは、好ましくは、高い仕事関数を有する材料を含む。アノードは、好ましくは、真空に対して4.5eV超の電位を有する。この目的のために適切なものは、一方で、たとえば、Ag、PtもしくはAuのような高還元電位を有する金属である。他方で、金属/金属酸化物電極(たとえば、Al/Ni/NiO、Al/PtO)も好ましいかもしれない。ここで、少なくとも一つの電極は、光のアウトカップリングを容易とするために、透明でなければならない。好ましい構成は、透明アノードを使用する。ここで、好ましいアノード材料は、伝導性混合金属酸化物である。特に、好ましいものは、インジウム錫酸化物(ITO)もしくはインジウム亜鉛酸化物(IZO)である。さらに好ましいものは、伝導性のドープされた有機材料、特に、伝導性のドープされたポリマーである。
【0057】
素子は、(用途に応じて)対応して構造化され、接点を供給され、このような素子の寿命が水および/または空気の存在で徹底的に短くなることから、最後に密封される。
【0058】
有機エレクトロルミネッセンス素子で先行技術に使用されるとおりのすべてのさらなる材料を、材料AとBを含む本発明による層と組み合わせて、使用することも、一般的に可能である。
【0059】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔注入層あるいは正孔輸送層あるいは電子輸送層で使用することができる適切な電荷輸送材料は、たとえば、Y. Shirota et al., Chem. Rev. 2007, 107(4), 953-1010に開示される化合物または先行技術にしたがって、これらの層中で使用される他の材料である。
【0060】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送層あるいは正孔注入層で使用することができる好ましい正孔輸送材料の例は、インデノフルオレンアミンおよび誘導体(たとえば、WO 06/122630もしくはWO 06/100896にしたがう)、EP 1661888に開示されたアミン誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体(たとえば、WO 01/049806にしたがう)、縮合芳香族環構造を含むアミン誘導体(たとえば、US 5,061,569にしたがう)、WO 95/09147に開示されたアミン誘導体、モノベンゾインデノフルオレンアミン(たとえば、WO 08/006449にしたがう)またはジベンゾインデノフルオレンジアミンン(たとえば、WO 07/140847にしたがう)である。さらに適切な正孔輸送および正孔注入材料は、JP 2001/226331、EP 676461、EP 650955、WO 01/049806、US 4780536、WO 98/30071、EP 891121、EP 1661888、JP 2006/253445、EP 650955、WO 06/073054およびUS 5061569に記載されたとおりの上記化合物の誘導体である。
【0061】
適切な正孔輸送もしくは正孔注入材料は、さらに、以下の表に挙げられる材料である。
【化2】

【0062】
電子輸送層のために使用することのできる材料は、電子輸送層中で電子輸送材料として先行技術にしたがって使用されるとおりのすべての材料である。特に適切なものは、アルミニウム錯体、たとえば、Alq、ジルコニウム錯体、たとえば、Zrq、ベンズイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、たとえば、未公開出願DE 102008064200.2に開示された材料、もしくは芳香族ケトンである。適切な材料は、たとえば、以下の表に挙げられた材料である。他の適切な材料はJP2000/053957、WO03/060956、WO 04/028217およびWO 04/080975に開示されたとおりの誘導体である。
【化3】

【0063】
二個の別の電子輸送層を使用することも好ましいかもしれない。これは、エレクトロルミネッセンス素子の色配置のルミネッセンス依存性に関して優位性を有するかもしれない(たとえば、未公開出願DE 102009012346.6参照)。
【0064】
さらに、電子輸送層がドープされることも可能である。適切なドーパントは、たとえば、LiQ(リチウムキノリナート)等のアルカリ金属もしくはアルカリ金属化合物である。本発明の好ましい具体例では、特に、電子輸送材料がベンズイミダゾール誘導体もしくはトリアジン誘導体であると、電子輸送層はドープされる。そのとき、好ましいドーパントは、LiQである。
【0065】
さらに好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、昇華プロセスにより適用されることを特徴とし、材料は、10−5mbar未満、好ましくは10−6mbar未満の初期圧力で、真空昇華ユニット中で気相堆積される。しかしながら、圧力が、たとえば、10−7mbar未満よりさらに低いことも可能である。
【0066】
同様に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスもしくはキャリアガス昇華により適用され、材料は、10−5mbar〜1barの圧力で、適用されることを特徴とする。このプロセスの特別な場合は、OVJP(有機気相ジェット印刷)プロセスであり、材料はノズルにより直接適用され、それにより構造化される(たとえば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。
【0067】
さらに、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、もしくは、たとえばスクリーン印刷、フレキソ印刷あるいはオフセット印刷、特に、好ましくは、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)インクジェット印刷あるいはノズル印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。可溶性の化合物が、この目的のためには必要である。高い溶解度は、化合物の適切な置換により達成することができる。ここで、個々の材料の溶液だけでなく、複数の化合物、たとえば、マトリックス材料とドーパントを含む溶液からの適用も可能である。
【0068】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、一以上の層を溶液から適用し、一以上の他の層を気相堆積により適用することにより製造することもできる。
【0069】
これらのプロセスは、当業者に一般的に知られ、発明性を要することなく、本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子に適用することができる。
【0070】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、先行技術を超える以下の驚くべき優位性を有する。
【0071】
1.本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、材料AとBを含む追加層の使用により非常に高い効率を有する。
【0072】
2.本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、同時に非常に良好な寿命を有する。特に、寿命は、追加層での材料Aだけの使用または追加層でのより低い割合の材料Aの使用よりも長い。
【0073】
3.さらに、材料AとBを含む本発明による追加層の使用は、素子の寿命にわたって電圧のより小さな増加を生じる。
【0074】
本発明は、以下の例により、より詳細に説明されるが、それにより限定することを望むものではない。当業者は、発明性を要せず、さらなる本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子を製造することができる。
【0075】

例1:サイクリックヴォルタンメトリと吸収スペクトルからのHOMO、LUMOとエネルギーギャップの測定
本発明の意味でのHOMO、LUMO値とエネルギーギャップが、以下に記載される一般的な方法で測定される。
【0076】
HOMO値は酸化電位から生じ、室温でサイクリックヴォルタンメトリ(CV)により測定される。この目的のために使用される測定機器は、Metrohm 663 VA satandを有するECO Autolab systemである。作業電極は、金電極であり、参照電極は、Ag/AgClであり、中間電極は、KCl(3 モル/l)であり、補助電極は白金である。
【0077】
測定のために、まず、ジクロロメタン中のテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(NHPF)の0.11Mの伝導性塩溶液が調製され、測定セル中に導入され、5分間脱気される。二測定サイクルが、引き続き以下のパラメーターで実行される。
【0078】
測定技術:CV
初期パージ時間:300s
清浄電位:−1V
清浄時間:10s
堆積電位:−0.2V
堆積時間D:10s
出発電位:−0.2V
最終電位:1.6V
電圧ステップ:6mV
掃引速度: 50mV/s
1mlの試料溶液(1mlのジクロロメタン中で測定される10mgの基板)が、引き続き伝導性塩溶液に添加され、再度、混合物は5分間脱気される。引き続き、さらなる五測定サイクルが実行され、最後の三回が評価のために記録される。同じパラメーターが上記のとおりに設定される。
【0079】
0.1mlのフェロセン溶液(1mlのジクロロメタン中の100mgのフェロセン)が、引き続き溶液に添加され、混合物は1分間脱気され、測定サイクルは、引き続き以下のパラメーターで実行される。
【0080】
測定技術:CV
初期パージ時間:60s
清浄電位:−1V
清浄時間:10s
堆積電位:−0.2V
堆積時間D:10s
出発電位:−0.2V
最終電位:1.6V
電圧ステップ:6mV
掃引速度:50mV/s
評価のために、試料溶液とフェロセン溶液が添加された溶液両者に対する最初の最大酸化での電圧平均が順曲腺からとられ、関連する最大還元での電圧平均が逆曲腺(VとV)からとられ、ここで使用される電圧は、各場合に、フェロセンに対する電圧である。調査される物質のHOMO値、EHOMOは、EHOMO=−[e(V−V)+4.8eV]から得られ、ここで、eは、要素電荷である。
【0081】
たとえば、調査される物質がジクロロメタン中に溶解することができないとき、または測定中に物質の分解が生じるときには、測定方法の適切な変更が個々の場合に実行される必要があり得ることに留意しなければならない。有意な測定が、上記方法を使用するCVにより可能でないならば、HOMOエネルギーは、Riken Keiki Co. Ltd. (http://www.rikenkeiki.com/pages/AC2.htm)からのAC-2型光電子スペクトロメータによる光電子スペクトル法により測定されるが、その場合、得られた値は、CVを使用して測定されたものよりも典型的には約0.3eVマイナスであることに留意しなければならない。ついで、本発明の意味での、HOMO値は、RikenAC-2型+0.3eVであることを意味するものと解される。
【0082】
さらに、−6eVより低いHOMO値は、上記CV法を使用しても、上記光電子スペクトル法のいずれを使用しても、信頼できる測定をすることはできない。この場合には、HOMO値は、密度関数理論(DFT)による量子化学計算から決定される。これは、市販のB3PW91/6-31G(d)法を使用する市販のソフトウエアGaussian 03W(Gaussian Inc.)により実行される。CV値への計算値の標準化は、CVを使用して測定することのできる材料との比較によりなされる。このために、一連の材料のHOMO値が、CV法を使用して測定され、同様に計算される。ついで、計算値は測定値により較正され、この較正ファクターは、すべての更なる計算に使用される。こうして、CVで測定されるのに非常によく対応したHOMO値を計算することができる。ある物質のHOMO値が、上記のとおりのCVまたはRikenAC-2型で測定できないならば、本発明の目的のために、HOMO値は、それゆえに、上記のとおりにCVに較正されたDFT計算による説明にしたがって得られる値を意味するものと解される。いくつかの通常の有機材料に対してこうして計算された値の例は、NPB(HOMO−5.16eV、LUMO−2.28eV);TCA(HOMO−5.33eV、LUMO−2.20eV);TPBI(HOMO−6.26eV、LUMO−2.48eV)である。これらの値は、計算法の較正のために使用することができる。
【0083】
エネルギーギャップは、50μmの層厚を有するフィルム上で測定された吸収スペクトルの吸収端から決定される。ここで、吸収端は、直線が、吸収スペクトルの最大波長の落下勾配面で最大勾配で適合するときに得られる波長として定義され、この直線が、波長軸と交わる値、すなわち、吸収値=0である値が決定される。
【0084】
LUMO値は、上記HOMO値へのエネルギーギャップの付加により得られる。
【0085】
例2:本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子の製造と特性決定
本発明によるエレクトロルミネッセンス素子が、たとえば、WO 05/003253に記載されるプロセスにより製造される。
【0086】
使用される材料の構造が、明確さのために以下に示される。
【化4−1】

【化4−2】

【0087】
これらいまだ最適化されないOLEDは、標準方法により特性決定される。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、色座標(CIE1931にしたがう)、電流-電圧-輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度、駆動電圧の関数としての効率(Cd/Aで測定)、および寿命が測定される。得られた結果は表1に要約される。
【0088】
種々のOLEDの結果が以下に比較される。これらは、先行技術にしたがう通常構造を有する変種(a)と本発明にしたがう追加層を含む変種(b)を夫々有する単色もしくは白色OLEDである。
【0089】
例3:
例3は以下の構造により達成される:150nmのHIM、20nmのNPB、5%BH(変種3bの場合だけ)でドープされた5nmのBD、5%BDでドープされた20nmのBH、30nmのETM、1nmのLiF、100nmのAl。
【0090】
例3は、蛍光青色OLEDに関する。本発明によるOLED3bは、OLED3aと同様の色、効率、駆動電圧および寿命の値を有する。しかしながら、駆動中の電圧増加に顕著な改善を示す。定電流モードで、輝度が1000cd/m〜500cd/mに低下した時点で測定される電圧増加は、比較例3aよりも例3bにおいて約3倍低い。
【0091】
例4:
例4は以下の構造により達成される:50nmのHIM、7%のTERでドープされた40nmのNPB、70%TMM、15%SKおよび15%TEGから成る7nmの混合層、20%SK3でドープされた3nmのHTM1、20%BH(変種4bの場合だけ)でドープされた3nmのBD、5%BDでドープされた25mのBH、10nmのSK、20nmのETM、1nmのLiF、100nmのAl。
【0092】
例4のOLEDは、ハイブリッド白色OLEDである。ここで、また、OLED4aと4bは、色、効率および、駆動電圧に関して同様の値を示す。駆動中の電圧増加の改善が、例3と比べて減少した程度ではあるが、同様に、本発明による追加層の使用に関して生じる。しかしながら、ここで、顕著な改善が駆動寿命において追加的に生じ、比較例のOLEDの場合より本発明OLEDの場合、2倍以上長い。
【0093】
表1:素子結果
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つの材料AとBの等しくない混合比の混合物から成る発光層を含み、ここで、材料Aの濃度は、材料Bの濃度より低く、発光層と同じ材料AとBの混合物から成る追加層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、発光層中の二つの材料のより少ない割合を有する材料Aが、この追加層においては、材料Bより高い割合で存在することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
材料Aが、発光層中で、30体積%未満、好ましくは、10体積%未満、特に、好ましくは、7体積%未満の濃度を有することを特徴とする、請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
材料Aが、発光材料、特に、蛍光発光材料であることを特徴とする、請求項1または2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
材料Bが、発光層中で、30体積%超の、好ましくは、50体積%超の、特に、好ましくは、70体積%超の割合を有することを特徴とする、請求項1〜3何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
発光層が、正確に一つの発光ドーパントAでドープパントされた正確に一つのホスト材料Bから成り、ここで、ホスト材料Bの濃度が、好ましくは、70体積%超の、特に、好ましくは、90体積%超の、非常に、特に、好ましくは、93体積%超であることを特徴とする、請求項1〜5何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
発光層と同じ材料AとBを含む追加層での材料Aの割合が、50体積%超の、好ましくは、70体積%超の、特に、好ましくは、80体積%超であり、材料Bの割合が、50体積%未満、好ましくは、30体積%未満、特に、好ましくは、20体積%未満であることを特徴とする、請求項1〜5何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
追加層が、好ましくは、アノード側で、発光層に直接隣接することを特徴とする、請求項1〜6何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
材料Aが、>−5.6eV、好ましくは、>−5.4eV、特に、好ましくは、>−5.2eVのHOMOを有する正孔輸送材料であることを特徴とする、請求項1〜7何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
使用される材料Aが、以下の式(1)〜(7)の化合物であることを特徴とする、請求項1〜8何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】

(ここで、以下が、使用される記号に適用される。
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する二価、三価あるいは四価の芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する一価の芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、同一の窒素原子に結合する二個の基Arまたは同一の窒素原子に結合する一つの基Arと一つの基Arは、単結合またはB(R)、C(R、Si(R、C=O、C=NR、C=C(R、O、S、S=O、SO、N(R)、P(R)およびP(=O)Rより成る基から選択されるブリッジにより互いに結合されてよく、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、CN、NO、Si(R、B(OR、B(R、B(N(R、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜40個のC原子を有する直鎖アルケニルもしくはアルキニル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、また、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)、または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、またはこれらの構造の組み合わせであり;ここで、2以上の隣接する置換基Rは、互いに、モノ-あるいはポリ環状、脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されてよい5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、CNもしくは1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族炭化水素基であり、加えて、H原子は、Fで置き代えられてよく;ここで、2以上の隣接する置換基Rは、互いにモノ-あるいはポリ環状、脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよい。)
【請求項10】
式(1)〜(7)の化合物中の少なくとも一つの基Arおよび/またはArは、10個以上の芳香族環原子を有する縮合芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であることを特徴とする、請求項9記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
材料Bが、<−2.3eV、好ましくは、<−2.5eVのLUMOを有す電子輸送材料であることを特徴とする、請求項1〜10何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
材料Bは、オリゴアリーレン、特に、縮合芳香族基を含むオリゴアリーレン、オリゴアリーレンビニレン、ポリポダル金属錯体、ケトン、ホスフィンオキシド、スホキシド、アトロプ異性体、ボロン酸誘導体、ベンゾアントラセン誘導体の種から選ばれることを特徴とする、請求項1〜11何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
材料Bが以下の式(8)の化合物であることを特徴とする、請求項1〜12何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Ar-Ant-Ar 式(8)
(ここで、Rは請求項9に示される意味を有し、使用される他の記号は、以下が適用される。
Antは、9-および10-位で基Arにより置換されるアントラセン基であって、さらに一以上のRより置換されてもよく、
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。)
【請求項14】
発光層の層厚が、5〜60nm、好ましくは、10〜30nmであることを特徴とする、請求項1〜13何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
発光層と同じ材料を含む追加層の層厚が、1〜50nm、好ましくは、3〜20nmであることを特徴とする、請求項1〜14何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項16】
一以上の層が昇華プロセスにより適用されるか、OVPD(有機気相堆積)プロセスもしくはキャリアーガス昇華により適用されるか、一以上の層が、溶液からか、印刷プロセスにより、適用されることを特徴とする、請求項1〜15何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造法。

【公表番号】特表2013−505591(P2013−505591A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530141(P2012−530141)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005218
【国際公開番号】WO2011/035835
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】