説明

有機エレクトロルミネセント素子に使用する新規物質

本発明は、式(1)及び(2)により表される化合物、及び有機エレクトロルミネセント素子(特に、青色発光素子)に関するものである。該素子において、前記化合物は発光層において母材又はドーパントとして、及び/又は、正孔輸送物質として、及び/又は、電子輸送物質として使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体及び有機電子素子におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体は、異なる種類の多くの電子適用について開発されつつある。これら有機半導体が機能材料として使用されている有機エレクトロルミネセント素子(OLED)の構造が、例えば、特許文献1〜4に記載されている。しかしながら、高品質かつ寿命の長いディスプレイ用のこれら素子の使用を可能とする更なる改善がなお所望されている。したがって、特に青色発光有機エレクトロルミネセント素子の寿命及び効率を改善する必要性が目下のところある。更に、化合物が良好な熱安定性と高いガラス転移点を有し、分解せずに昇華し得ることが必要である。特に高温での使用においては、寿命の長期化を達成するためにガラス転移点が高いことが不可欠である。
【0003】
蛍光OLEDにおいては、主として縮合芳香族化合物(特にアントラセン誘導体)が先行技術に従い母材として使用されている。特に青色発光エレクトロルミネセント素子において使用されており、アントラセン誘導体としては、例えば、9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセンが使用されている(特許文献5)。
【0004】
特許文献6及び7には、OLEDにおいて使用される9,10−ビス(1−ナフチル)アントラセン誘導体が開示されている。更なるアントラセン誘導体が、特許文献8〜13に開示されている。アリール置換ピレン及びクリセンに基づく母材が特許文献14に開示され、ベンゾアントラセンに基づく母材が特許文献15に記載されている。質の高い適用のために、改善された母材を入手できることが望ましい。同じことが緑色及び赤色蛍光ドーパントにもいえる。
【0005】
青色発光化合物に関して言及される先行技術としては、アリールビニルアミンの使用がある(例えば、特許文献10、13及び14を参照)。しかしながら、これらの化合物は熱に不安定であり分解せずに蒸発し得ず、OLED製品に使用するためには複雑な技術が必要とされるため、技術的困難を示す。したがって、質の高い適用のために、改善されたエミッターを、特にデバイス及び昇華安定性及び発光色に関して入手できる必要がある。狭い発光スペクトルを有するエミッターを入手できることは更に有利である。
【0006】
このように物質の改善に対する要求、特に蛍光エミッター(中でも緑色及び赤色蛍光エミッターであるが、青色蛍光エミッターについても同様である)の母材の改善に対する要求は止まることはなく、熱に安定な蛍光体は有機電子素子における良好な効率と同時に寿命の長期化をもたらし、デバイスの製造及び操作中における再現可能な結果を提供し、合成において容易である。正孔輸送物質及び電子輸送物質においても更なる改善が必要である。
【0007】
驚くべきことに、9−位又は9,10−位において置換され、且つ、インデノ基が1,2−位又は2,3−位又は3,4−位において、及び/又は、5,6−位又は6,7−位又は7,8−位において縮合しているアントラセン誘導体が、有機エレクトロルミネセント素子における使用に極めて好適であることが見出された。インデノ基に替り、例えばインドール基又はベンゾチエニル基等の対応するヘテロ環基が縮合している場合に、同様のことがいえる。これら化合物は、先行技術による物質と比較して、有機電子素子の効率及び特に寿命における改善を可能とする。これは特に青色蛍光素子に当てはまる。更に、これら化合物は熱安定性に優れる。通常、これら物質はガラス転移点が非常に高いため、有機電子素子における使用に極めて好適である。したがって、本発明は、これら物質及び有機電子素子におけるこれらの使用に関する。
【0008】
最も近い先行技術として特許文献16が挙げられる。当該文献は、2つのアリール置換インデノ基が縮合した縮合芳香族化合物を開示するものであるが、これら化合物は大きなストークスシフトを有し、それはアリール置換基の回転自由度に容易に起因する。したがって、特許文献16に開示された化合物は青色エミッター(deep-blue emitter)の母材として好適ではなく、故に今なお改善の必要がある。狭い発光スペクトルを有する化合物が入手可能であれば更に有利である。
【0009】
また、9,10−ジフェニルアントラセンがエミッターとして公知である。これは蛍光量子効率が100%であるが(非特許文献1)、発光が青色領域からかなり離れているため、当該化合物は青色エミッターとして使用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4539507号明細書
【特許文献2】米国特許第5151629号明細書
【特許文献3】欧州特許第0676461号明細書
【特許文献4】国際公開第98/27136号
【特許文献5】米国特許第5935721号明細書
【特許文献6】国際公開第03/095445号
【特許文献7】中国特許第1362464号明細書
【特許文献8】国際公開第01/076323号
【特許文献9】国際公開第01/021729号
【特許文献10】国際公開第04/013073号
【特許文献11】国際公開第04/018588号
【特許文献12】国際公開第03/087023号
【特許文献13】国際公開第04/018587号
【特許文献14】国際公開第04/016575号
【特許文献15】国際公開第08/145239号
【特許文献16】米国特許出願公開第2002/132134号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】H. Du et al., Photochemistry and Photobiology 1998,68,141-142
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の化合物における発光スペクトルの半値幅(実線)と比較化合物の発光スペクトルにおける半値幅(破線)を示す図。
【発明の概要】
【0013】
明確性の観点から、アントラセンの構造及びナンバリングを以下に示す。
【化1】

【0014】
したがって、本発明は式(1)及び(2)で表されるに関する。
【化2】

【0015】
式中、アントラセン単位中の1又は2以上の無置換の炭素原子は窒素原子により置換されていてもよい。また、使用された符号及び指数は以下の通りである。
【0016】
Xは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、B(R)、C(R)、Si(R)、C=O、C=NR、C=C(R)、O、S、S=O、SO、N(R)、P(R) 及びP(=O)Rから選択される2価の架橋を表す。
【0017】
Arは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、6〜40個のC原子を有するアリール基又は2〜40個のC原子を有するヘテロアリール基であり、各基は1又は2以上のRラジカルにより置換されていてもよい。
【0018】
は、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、N(R)、N(Ar)、C(=O)Ar、P(=O)(Ar)、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、CN、NO、Si(R)、B(OR)、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ又はチオアルコキシ基、3〜40個のC原子を有する分岐鎖又は環式アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ又はチオアルコキシ基であり、ここで、各基は1又は2以上のRラジカルにより置換されていてもよく、1又は2以上の非隣接CH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、S又はCONRにより置換されていてもよく、1又は2以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CN又はNOにより置換されていてもよく、またはRは、5〜40個の芳香環原子を有する芳香環又は芳香族複素環類であって、各基は1又は2以上のRラジカルにより置換されていてもよく、又は、5〜40個の芳香環原子を有するアリールオキシ又はヘテロアリールオキシ基であって、1又は2以上のRラジカルにより置換されていてもよく、もしくはこれらの組み合わせであり、2以上の隣接する置換基Rは一緒になって単環又は多環の脂環又は芳香環類を形成してもよい。
【0019】
Rは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、Rを表す。但し、少なくとも1つ置換基RはHではない。
【0020】
Arは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、5〜30個の芳香環原子を有する芳香環又は芳香族複素環類であって、1又は2以上のRラジカルにより置換されていてもよい。ここで、同じ窒素原子又はリン原子に結合している2つのArラジカルは、単結合、あるいはB(R)、C(R、Si(R、C=O、C=NR、C=C(R、O、S、S=O、SO、N(R)、P(R)及びP(=O)Rから選択される架橋により互いに結合してもよい。
【0021】
は、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、N(R)、N(Ar)、C(=O)Ar、P(=O)(Ar)、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、CN、NO、Si(R)、B(OR)、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ又はチオアルコキシ基、3〜40個のC原子を有する分岐鎖又は環式アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ又はチオアルコキシ基であり、ここで、各基は1又は2以上のRラジカルにより置換されていてもよく、1又は2以上の非隣接CH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、S又はCONRにより置換されていてもよく、1又は2以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN又はNOにより置換されていてもよく、もしくはこれらの組み合わせであり、2以上の隣接する置換基Rは一緒になって単環又は多環の脂環又は芳香環類を形成してもよい。
【0022】
は、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、H、D、Fであり、または、1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族及び/又は芳香族複素環炭化水素ラジカルであって、H原子はFにより更に置換されていてもよく、ここで2以上の隣接する置換基Rは、一緒になって単環又は多環の脂環又は芳香環類を形成してもよい。
【0023】
mは1、2又は3である。
【0024】
nは0又は1である。
【0025】
式(1)及び(2)の構造において、Ar基は炭素原子を介してアントラセンに結合し、X基はAr基の隣接する炭素原子とアントラセンの隣接する炭素原子に結合している。インデノフルオレンに類似して、シス−及びトランス−ジインデノアントラセン誘導体及び他の縮合基を有する対応する誘導体においても、n=1において可能であり、その場合の式(1)の構造はトランス誘導体となり、式(2)の構造はシス誘導体となる。
【0026】
式(1)で表される化合物は、ガラス転移温度Tが70℃より高いことが好ましく、100℃より高いことがより好ましく、130℃より高いことが更に好ましい。
【0027】
本発明の目的において、アリール基は6〜40個のC原子を含み、本発明の目的において、ヘテロアリール基は2〜40個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を含み、C原子とヘテロ原子の合計が少なくとも5個である。ヘテロ原子は好ましくはN、O及び/又はSから選択される。ここでアリール基又はヘテロアリール基は、単一の芳香環(すなわちベンゼン)又は単一の芳香族複素環(例えばピリジン、ピリミジン、チオフェン等)か、縮合アリール又は縮合ヘテロアリール基(例えばナフタレン、アントラセン、ピレン、キノリン、イソキノリン等)のいずれかを意味するものと理解される。
【0028】
本発明の目的において、芳香環類は環類に6〜40個のC原子を含む。本発明の目的において、芳香族複素環類は、環類に2〜40個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を含み、且つ、C原子とヘテロ原子の合計が少なくとも5個である。ヘテロ原子は好ましくはN、O及び/又はSから選択される。本発明の目的において、芳香環又は芳香族複素環類は、必ずしもアリール又はヘテロアリール基のみを含むものではなく、複数のアリール又はヘテロアリール基が、例えばsp混成C、N又はO原子等の短い非芳香族単位(好ましくは、H以外の原子の10%未満)により介入されていてもよい系を表すことを意図している。したがって、例えば、9,9’−スピロビフルオレン、9,9’−ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン、ベンゾフェノン等も本発明の目的において芳香環類を意味することを意図している。同様に、芳香環又は芳香族複素環は複数のアリール又はヘテロアリール基が単結合により互いに結合した系(例えば、ビフェニル、テルフェニル又はビピリジン)を表すことを意図している。
【0029】
本発明の目的において、C〜C40アルキル基としては、特に好ましくは以下のラジカルを意味することが理解される。ここで、個々のH原子又はCH基は上述した基により置換されていてもよい。すなわち、C〜C40アルキル基は特に好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、シクロオクチル、2−エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル又は2,2,2−トリフルオロエチルである。本発明の目的において、アルケニル基は、好ましくは、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル又はシクロオクテニルを意味すると理解される。本発明の目的において、アルキニル基は、好ましくは、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル又はオクチニルを意味すると理解される。C〜C40アルコキシ基は、特に好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ又は2−メチルブトキシを意味すると理解される。5〜40個の芳香環原子を有する芳香環又は芳香族複素環類としては、特に好ましくは以下の基を意味することが理解される。ここで、芳香環又は芳香族複素環類は、各場合において上述したRラジカルにより置換されていてもよく、所望されるいずれかの位置を介して芳香環又は芳香族複素環類に結合していてもよい。すなわち、5〜40個の芳香環原子を有する芳香環又は芳香族複素環類は、特には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ベンゾアントラセン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、テルフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス−又はトランス−インデノフルオレン、トルキセン(truxene)、イソトルキセン(isotruxene)、スピロトルキセン(spirotruxene)、スピロイソトルキセン(spiroisotruxene)、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾジオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリドイミダゾール(pyridimidazole)、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール(anthroxazole)、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5−ジアザアントラセン、2,7−ジアザピレン、2,3−ジアザピレン、1,6−ジアザピレン、1,8−ジアザピレン、4,5−ジアザピレン、4,5,9,10−テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、フルオルビン(fluorubin)、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルバゾール、フェナントロリン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,5−トリアジン、1,3,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン及びベンゾチアジアゾールから誘導される基を意味することが理解される。
【0030】
式(1)及び(2)で表される化合物の好ましい態様は、式(3)〜(15)で表される化合物である。
【化3】

【化4】

【化5】

【0031】
式中、アントラセン単位中の1又は2以上の無置換の炭素原子は、窒素原子により置換されていてもよく、符号及び指数は以下に示す通りである。
【0032】
本発明の好ましい態様において、符号Arは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、6〜16個のC原子、より好ましくは6〜14個のC原子、特に好ましくは6〜10個のC原子を有するアリール基、又は、2〜16個のC原子、より好ましくは3〜13個のC原子、特に好ましくは4〜9個のC原子を有するヘテロアリール基を表し、各基は1又は2以上のRラジカルにより置換されていてもよい。本発明の特に好ましい態様において、符号Arは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、ベンゼン、ナフタレン、チオフェン、ピロール、フラン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、キノリン、キノキサリン、トリアジン、トリアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、インドール又はベンゾフランを表し、特にはベンゼン、ナフタレン又はチオフェンを表す。
【0033】
本発明の好ましい態様において、2つのAr基はn=1において同一に選択される。これは化合物の合成の容易さの改善のためである。
式(3)〜(15)で表される化合物の中で、式(3)、(4)及び(5)で表される化合物は、合成が容易な2−ブロモアントラキノン(n=1)又は2,6−ジブロモアントラキノン(n=2)から出発して合成することができるため、これら化合物は特に好ましい。
【0034】
式(3)〜(15)で表される化合物の特に好ましい態様は、式(3a)〜(15a)、(3b)〜(15b)及び(3c)〜(15c)により表される化合物である。
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【0035】
式中、符号及び指数は上記に示した意味を有する。式(3a)〜(15a)により表される化合物の中から、特に式(3a)、(4a)及び(5a)により表される化合物が選択される。
【0036】
本発明の好ましい態様において、式(1)及び(2)、(3)〜(15)、(3a)〜(15a)、(3b)〜(15b)及び(3c)〜(15c)により表される化合物中の指数mは、1又は2を表す。すなわち、中央単位はアントラセン又はナフタセンである。指数mは特に1であることが好ましく、すなわち、中央単位はアントラセンである。
【0037】
本発明の好ましい態様において、式(1)及び(2)、(3)〜(15)、(3a)〜(15a)、(3b)〜(15b)及び(3c)〜(15c)により表される化合物中のXは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、C(R)、C=O、O、S、S=O、SO、N(R)、P(R) 又はP(=O)Rを表し、より好ましくはC(R)、O、S又はN(R)であり、特に好ましくはC(R)である。X=C(R)において、複数のRラジカルは一緒に芳香環又は脂肪環を形成してもよいことが再度明確に指摘される。C(R)基における複数のRが一緒に環類を形成する場合、構造はスピロ構造となる。C(R)における2つのR基の間で環が形成されることによるこの種のスピロ構造の形成は、本発明における更に好ましい態様である。これはRが置換又は無置換のフェニル基を表し、二つのフェニル基が架橋のC原子と共に環類を形成している場合に特に当てはまる。
【0038】
本発明の好ましい態様において、式(1)及び(2)、(3)〜(15)、(3a)〜(15a)、(3b)〜(15b)及び(3c)〜(15c)により表される化合物中の両方のR基は、Hではない。これら化合物におけるR基は、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、Cl、Br、I、N(Ar)、C(=O)Ar、P(=O)(Ar)、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、B(OR)又はOSOを表し、または、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル又はアルコキシ基、又は3〜10個のC原子を有する分岐鎖又は環式アルキル又はアルコキシ基であって、各基は1又は2以上のRラジカルによって置換されていてもよく、1又は2以上の非隣接CH基はRC=CR、C≡C、C=O、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、S又はCONRにより置換されていてもよく、1又は2以上のH原子はFにより置換されていてもよい基を表し、または、5〜20個の芳香環原子を有する芳香環又は芳香族複素環類であって、各場合において各基は1又は2以上のRラジカルによって置換されていてもよい基を表し、または、5〜20個の芳香環原子を有するアリールオキシ又はヘテロアリールオキシ基であって、各基は1又は2以上のRラジカルによって置換されていてもよい基を表し、あるいはこれらの組み合わせを表す。これらの化合物におけるRラジカルは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、特に好ましくはBr、I、N(Ar)、C(=O)Ar、P(=O)(Ar)、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、B(OR)を表し、又は、5〜16個の芳香環原子を有する芳香環又は芳香族複素環であって、各基は1又は2以上のRラジカルによって置換されていてもよい基を表し、あるいはこれらの組み合わせを表す。Cl、Br、I及びOSO基は、有機化学の標準反応、特に遷移金属触媒カップリング反応により、対応するアリール−又はジアリールアミノ置換基に変換され得るので、これらの基は反応中間体として特に好ましい。これらの基は重合化反応におけるモノマーとしての使用において更に好ましい。R基は、5〜14個の芳香環原子を有し、1又は2以上のRラジカルによって置換されていてもよい芳香環又は芳香族複素環類であることが特に好ましい。
【0039】
X架橋に結合する好ましいRラジカルは、同一でも異なっていてもよく、H、1〜5個のC原子を有する直鎖アルキル基又は3〜5個のC原子を有する分岐鎖アルキル基であって、1又は2以上の非隣接CH基は−RC=CR−、−C≡C−、C=O又は−O−により置換されていてもよく、1又は2以上のH原子はFにより置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖アルキル基、または、6〜16個のC原子を有するアリール基又は2〜16個のC原子を有するヘテロアリール基であって、1又は2以上のRラジカルによって置換されていてもよいアリール又はヘテロアリール基、または、これらの2つ又は3つの組み合わせから選択され、ここで同じ架橋原子に結合している2つのRラジカルは一緒に環類を形成してもよい。X架橋に結合する特に好ましいRラジカルは、同一でも異なっていてもよく、1又は2以上のH原子がFにより置換されていてもよいメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、又は、1又は2以上のRラジカルにより置換されていてもよい、6〜14個のC原子を有するアリール基、又はこれらの2つの組み合わせから選択され、ここで同じ架橋原子に結合する2つのRラジカルは一緒に環類を形成していてもよい。溶液から製造される化合物の場合には、C原子が10個以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基もまた好ましい。
【0040】
本発明の更に好ましい態様において、Ar基は無置換である。すなわち、符号Rは好ましくはHを表す。
【0041】
本発明の更に好ましい態様において、アントラセン単位又はm>1においては対応する拡張した中央の芳香環単位中の最大2つの無置換炭素原子が窒素により差し替えられ、好ましくは最大1個の無置換の炭素原子が窒素により差し替えられ、中央の芳香環単位は純粋な炭素環であることが特に好ましい。
【0042】
R又はRラジカルがN(Ar)基を表す場合には、この基は式(16)又は(17)により表される基から選択されることが好ましい。
【化13】

【0043】
式中のRは上述した意味を有する。更に、
Eは、単結合、O、S、N(R) 又はC(R)を表す。
【0044】
Arは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、5〜20個の芳香環原子を有するアリール又はヘテロアリール基、又は、15〜30個の芳香環原子を有するトリアリールアミン基であり、各基は1又は2以上のRラジカル又はBrによって置換されていてもよい。Arは、好ましくは、6〜14個の芳香環原子を有するアリール又はヘテロアリール基、又は、18〜30個、好ましくは18〜22個の芳香環原子を有するトリアリールアミン基であり、各基は1又は2以上のRラジカル又はBrによって置換されていてもよい。
【0045】
pは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、0又は1である。
【0046】
Arは、同一でも異なっていてもよく、特に好ましくはフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−,3−又は4−トリフェニルアミン、1―又は2−ナフチルジフェニルアミンを表し、各場合において該ナフチル又はフェニル基を介して結合してもよく、または、1−又は2−ジナフチルフェニルアミンを表し、各場合において該ナフチル又はフェニル基を介して結合してもよい。これらの基は1又は2以上の1〜4個のC原子を有するアルキル基により、もしくはフッ素原子により置換されていてもよい。
【0047】
式(1)〜(15)、(3a)〜(15a)、(3b)〜(15b)及び(3c)〜(15c)により表される化合物の好ましい具体例は、以下に示す構造(1)〜(134)である。
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【0048】
本発明の式(1)及び(2)により表される化合物は、当業者に公知の合成方法で調製することができる。その合成を下記スキーム1に記載の例により説明する。好適な出発物質は2,6−ジブロモアントラキノンであり、該化合物は2,6−ジアミノアントラキノンからジアゾ化及びCuBrを用いた反応により得られる。Rラジカルは、アリール金属化合物(例えば、アリールリチウム化合物又はアリール−グリニャール化合物)の形態において導入され得、次いで形成されるアルコールを還元する。パラジウム触媒下において臭化物がジボロン化合物(例えば、ビス(ピナコラト)ジボロン)と反応し、対応するボロン酸誘導体が得られ、該誘導体はスズキカップリングにおいて2−ハロアルキルベンゾエートと反応し得る。次いで、X架橋におけるラジカルがアリールリチウム化合物又はアリールグリニャール化合物との反応により導入され、酸性条件下、環化により式(1)又は(2)で表される化合物が得られる。正確な環化条件に依存して、環化により混合物もまた得られ、次いで分離されるか、あるいは混合物としても有機電子素子において使用される。
【化31】

【0049】
異なる置換化合物も類似に調製され得、あるいは式(1)又は(2)の異なる誘導体が異なるジハロアントラキノンを用いて調製され得る。
【0050】
本発明は、更に、ジハロアントラキノンから式(1)及び(2)で表される化合物を製造する方法に関するものであり、該方法は下記工程を含む。
【0051】
a)アリール金属化合物の付加反応、
b)アントラセンへの還元、
c)任意にハロゲン官能基をボロン酸官能基に変換した後における、官能化芳香族化合物へのカップリング、及び
d)好ましくは酸性条件下における閉環。
【0052】
上述した本発明の化合物、特には、臭素、ヨウ素、ボロン酸又はボロン酸エステル等の反応性離脱基により置換された化合物は、対応する二量体、三量体、四量体、五量体、オリゴマー、ポリマー又はデンドリマーのコアとして使用され得る。ここでオリゴマー化又はポリマー化は好ましくはハロゲン官能基又はボロン酸官能基を介して行われる。
【0053】
したがって、本発明は、更に、一般式(1)又は(2)により表される1又は2以上の化合物を含む二量体、三量体、四量体、五量体、オリゴマー、ポリマー又はデンドリマーに関するものであり、その場合のR又はRラジカルは、二量体、三量体、四量体又は五量体における式(1)又は(2)で表される化合物間の結合を表し、あるいは、式(1)又は(2)で表される化合物からオリゴマー、ポリマー又はデンドリマーへの結合を表す。本発明の目的において、オリゴマーは、式(1)及び/又は(2)で表される単位を少なくとも6個有する化合物を意味することが理解される。ポリマー、オリゴマー又はデンドリマーは共役し得、あるいは部分的に共役し得、あるいは非共役であり得る。三量体、四量体、五量体、オリゴマー又はポリマーは、直線状又は分岐状であり得る。直鎖状に連結した構造において、式(1)及び/又は(2)で表される単位は、互いに直接に連結していてもよいし、2価の基、例えば、置換又は無置換のアルキレン基、ヘテロ原子、二価の芳香環もしくは芳香族複素環基を介して連結していてもよい。分岐状の構造においては、例えば、式(1)及び/又は(2)で表される3つ以上の単位が3価もしくは多価(例えば、3価又は多価の芳香環もしくは芳香族複素環基)を介して連結され、分岐状の三量体、四量体、五量体、オリゴマー又はポリマーを形成していてもよい。
【0054】
二量体、三量体、四量体、五量体、オリゴマー及びポリマーにおける式(1)及び(2)で表される繰り返し単位において、上述したのと同様の選択が適用される。
【0055】
オリゴマー又はポリマーの調製において、本発明に係るモノマーは、ホモポリマー化され、あるいは更なるモノマーと共重合化される。好適且つ好ましいコモノマーは、フルオレン(例えば、EP842208又はWO00/22026に準拠する)、スピロビフルオレン(例えば、EP707020、EP894107又はWO06/061181に準拠する)パラ−フェニレン(例えば、WO92/18552に準拠する)、カルバゾール(例えば、WO04/070772又はWO04/113468に準拠する)、チオフェン(例えば、EP1028136に準拠する)、ジヒドロフェナントレン(例えば、WO05/014689に準拠する)、シス−及びトランス−インデノフルオレン(例えば、WO04/041901又はWO04/113412に準拠する)、ケトン(例えば、WO05/040302に準拠する)、フェナントレン(例えば、WO05/104264又はWO07/017066に準拠する)、もしくはこれらの複数の単位から選択される。ポリマー、オリゴマー及びデンドリマーは、通常、更なる単位を含んでいてもよい。更なる単位としては、例えば、発光性(蛍光又はリン光)単位(例えば、ビニルトリアリールアミン(例えば、WO 07/068325に準拠する)又はりん光金属錯体(例えば、WO06/003000に準拠する)等)、及び/又は、電荷輸送単位(特にトリアリールアミンに基づく)が挙げられる。
【0056】
式(1)及び(2)により表される化合物は、電子素子、特に有機エレクトロルミネセント素子(OLED、PLED)における使用に好適である。置換基に応じて、化合物は様々な機能及び層に使用される。
【0057】
したがって、本発明は更に、電子素子、特に有機エレクトロルミネセント素子における式(1)又は(2)により表される化合物の使用に関する。
【0058】
本発明は、また、式(1)及び/又は(2)により表される化合物の少なくとも1種を含有する有機電子素子に関するものであり、特に、本発明は、アノード、カソード、及び少なくとも1層の発光素子を含む有機電子エレクトロルミネセント素子であって、一般式(1)及び/又は(2)で表される少なくとも1種の化合物を少なくとも1層の有機層(発光層でも他の層でもよい)に含有することを特徴とする有機エレクトロルミネセント素子に関する。
【0059】
有機エレクトロルミネセント素子は、カソード、アノード及び発光層とは別に、更なる層を含んでいてもよい。これらは、例えば、場合ごとに、1又は2以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、電子ブロック層、電荷発生層(IDMC 2003, Taiwan; Session 21 OLED (5), T. Matsumoto, T. Nakada, J.Endo, K. Mori, N.Kawamura, A.Yokoi, J.Kido, Multiphoton Organic EL Device Having Charge Generation Layer)、及び/又は、有機又は無機p/n接合から選択される。しかしながら、これらの各層は存在しなければいけないものではなく、層の選択は、使用される化合物や、特に素子が蛍光エレクトロルミネセント素子かりん光エレクトロルミネセント素子かに常に依存する。
【0060】
本発明の更に好ましい態様において、有機エレクトロルミネセント素子は複数の発光層を含み、少なくとも1層の有機層は式(1)又は(2)により表される少なくとも1種の化合物を含有する。これら発光層は、特に好ましくは380nm〜750nmの間に合計で複数の発光極大を有し、全体として白色発光をもたらす。すなわち、蛍光またはりん光を発することができ、青色及び黄色、橙又は赤色を発することができる種々の発光化合物が発光層で使用される。具体的な選択として、三層系、すなわち、3つの発光層を有し、そのうちの少なくとも1層は少なくとも1つの式(1)又は(2)で表される化合物を含有し、3層が青、緑、及び、橙又は赤の発光を示す系が挙げられる(典型的な構造として、例えば、WO05/011013を参照)。幅広い発光バンドを有し、そのため白色を示すエミッターは、同様に白色発光に好適である。
【0061】
本発明の好ましい態様において、式(1)及び(2)で表される化合物は、蛍光ドーパント、特に緑色及び赤色蛍光ドーパントの母材として使用される。この場合、X基がC(R) 基であり、Ar基がアリール基であり、R基がH、アルキル基又はアリール基であって、少なくとも1つのRがアルキル又はアリール基を表すことが好ましく、双方のR基がアリール基を表すことが好ましい。同様の選択が、式(3)〜(15)、(3a)〜(15a)、(3b)〜(15b)、(3c)〜(15c)におけるX、Ar及びR基に適用される。
【0062】
母材及びドーパントを含有する系において、母材は、高割合において混合物中に存在する成分を意味することが理解される。一つの母材と複数のドーパントを含有する系において、母材は混合物中の割合が最も高い成分を意味することが理解される。
【0063】
発光層中の式(1)又は(2)で表される母材の割合は、50.0〜99.9体積%であり、80.0〜99.5体積%であることが好ましく、90.0〜99.0体積%であることが特に好ましい。一方、ドーパントの割合は、0.1〜50.0体積%であり、0.5〜20.0体積%であることが好ましく、1.0〜10.0体積%であることが特に好ましい。
【0064】
蛍光素子における好ましいドーパントは、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン及びアリールアミンの部類から選択される。モノスチリルアミンは、1つのスチリル基と少なくとも1つのアミン(好ましくは芳香族アミン)を含有することを意味することが理解される。ジスチリルアミンは、2つのスチリル基と少なくとも1つのアミン(好ましくは芳香族アミン)を含有することを意味することが理解される。トリスチリルアミンは、3つのスチリル基と少なくとも1つのアミン(好ましくは芳香族アミン)を含有することを意味することが理解される。テトラスチリルアミンは、4つのスチリル基と少なくとも1つのアミン(好ましくは芳香族アミン)を含有することを意味することが理解される。本発明の目的において、アリールアミン又は芳香族アミンは、窒素に直接結合した3つの芳香環又は芳香族複素環類を含む化合物を意味することが理解され、そのうちの少なくとも1つは少なくとも14個の芳香環原子を有する縮合環であることが好ましい。スチリル基は特に好ましくはスチルベンであり、二重結合又は芳香環に更に置換基を有していてもよい。この種のドーパントの具体例としては、置換又は無置換のトリスチルベンアミン、又はWO06/000388、WO06/058737、WO06/000389、WO07/065549及びWO07/115610に記載のドーパントが挙げられる。更に好ましいドーパントは、WO06/122630に記載の化合物である。アリールアミンの具体例としては、ジアリールアミノアントラセン(ジアリールアミノ基が2−又は9−位に結合している)、ビス(ジアリールアミノアントラセン)(ジアリールアミノ基が2,6−位又は9,10−位に結合している)、ジアリールアミノピレン、ビス(ジアリールアミノ)ピレン、ジアリールアミノクリセン又はビス(ジアリールアミノ)クリセンが挙げられる。好ましいドーパントとしては、更に、モノベンゾインデノフルオレン又はジベンゾインデノフルオレンのジアリールアミノ誘導体又はビス(ジアリールアミノ)誘導体が挙げられ、例えばWO08/006449又はWO07/140847に記載されている。
【0065】
式(1)又は式(2)により表される化合物が好適な母材であるために好適なドーパントが、下記表に示す構造であり、これら構造の誘導体がJP06/001973、WO04/047499、WO06/098080、WO07/065678、US2005/0260442及びWO04/092111に記載されている。
【化32】

【0066】
本発明の更に好ましい態様において、式(1)及び(2)で表される化合物は発光物質として使用される。該化合物は、特に、式中のRラジカルが芳香環又は芳香族複素環類を表す場合に好ましい。これにより、極めて狭い発光スペクトルを有する青色発光(deep-blue emission)を示す発光化合物となる。化合物は、少なくとも1つの置換基Rが少なくとも1つのビニルアリール単位、少なくとも1つのビニルアリールアミン単位及び/又は少なくとも1つのアリールアミノ又はジアリールアミノ単位を含む場合に、発光化合物として更に好適である。好ましいアリールアミノ単位は、先に示した式(16)及び(17)により表される基である。式(3)〜(15)、(3a)〜(15a)、(3b)〜(15b)及び(3c)〜(15c)により表される構造中のR基に同様の選択が適用される。特に好ましいドーパントは、2つのRラジカルが式(16)又は(17)により表される基であるドーパント、あるいは、1つのRラジカルが式(16)又は(17)により表される基であり、他のRラジカルがH、アルキル基又はアリール基であるドーパントのいずれかである。
【0067】
発光層における混合物中の式(1)又は(2)で表される化合物の割合は、0.1〜50.0体積%であり、好ましくは0.5〜20.0体積%であり、特に好ましくは1.0〜10.0体積%である。一方、母材の割合は、50.0〜99.9体積%であり、好ましくは80.0〜99.5体積%であり、特に好ましくは90.0〜99.0体積%である。
【0068】
この目的に好適な母材は、様々な種類の物質から得られる材料である。好ましい母材としては、オリゴアリーレン(例えば、EP676461に準拠した2,2’,7,7’−テトラフェニルスピロビフルオレン、又はジナフチルアントラセン)、特に縮合芳香環基を含むオリゴアリーレン、オリゴアリーレンビニレン(例えば、EP676461に準拠したDPVBi又はスピロ−DPVBi)、ポリポダル(polypodal)金属錯体(例えば、WO04/081017に準拠)、正孔導電化合物(例えば、WO04/058911に準拠)、電子導電化合物(特に、ケトン、ホスフィン、オキサイド、スルホジシド等)(例えば、WO05/084081及びWO05/084082に準拠)、アトロプ異性体(例えば、WO06/048268に準拠)、ボロン酸誘導体(例えば、WO06/117052に準拠)、又はベンゾアントラセン誘導体(例えば、WO08/145239に準拠)の部類から選択される。更に好適な母材として、上述した本発明の化合物も挙げられる。本発明の化合物は別として、特に好ましい母材が、ナフタレン、アントラセン、ベンゾアントラセン及び/又はピレン、もしくはこれら化合物のアトロプ異性体を含むオリゴアリーレン、オリゴアリーレンビニレン、ケトン、ホスフィンオキシド、及びスルホキシドの群から選択される。本発明の化合物は別として、特に好ましい母材が、アントラセン、ベンゾアントラセン及び/又はピレン又はこれら化合物のアトロプ異性体を含むオリゴアリーレンの部類から選択される。本発明の目的において、オリゴアリーレンは、少なくとも3つのアリール又はアリーレン基が互いに結合した化合物を意図するものである。
【0069】
好適な母材として、更に、下記表に示した物質が挙げられ、また、これら物質の誘導体であって、WO04/018587、WO08/006449、US5935721、US2005/0181232、JP2000/273056, EP681019、US2004/0247937及びUS2005/0211958に記載されている化合物が挙げられる。
【化33】

【0070】
本発明の更なる態様において、式(1)及び(2)で表される化合物は正孔輸送物質又は正孔注入物質として使用される。その場合、該化合物は、少なくとも1つのN(Ar)、好ましくは少なくとも2つのN(Ar)により、置換されていることが好ましく、及び/又は、該化合物は、正孔輸送を改善する更なる基を含んでいることが好ましい。N(Ar)基は、好ましくは先に示した式(16)及び(17)から選択される。これは特に、式(3)〜(15)、(3a)〜(15a)、(3b)〜(15b)及び(3c)〜(15c)により表される構造中のRラジカルに当てはまる。正孔輸送を改善する更に好ましい基は、例えば、架橋単位Xとしては、N(R)、S又はO、特にN(R)であり、あるいはAr基としては電子リッチ芳香族複素環基、特にチオフェン、ピロール又はフランである。該化合物は、好ましくは正孔輸送層又は正孔注入層において使用される。本発明の目的において、正孔注入層はアノードに直接接合する層である。本発明の目的において、正孔輸送層は、正孔注入層と発光層との間の層である。式(1)及び(2)で表される化合物が正孔輸送層又は正孔注入層として使用される場合、それらは電子受容体化合物(例えばF−TCNQ)、又はEP1476881もしくはEP1596445に記載の化合物と共にドープされることが好ましい場合がある。
【0071】
本発明の更なる態様において、式(1)及び(2)で表される化合物は電子輸送物質として使用される。その場合、1つ又は2つの架橋基X、好ましくは2つの架橋基Xが、C=O、P(=O)、SO又はSOであり、置換基RがH、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基(電子不足複素環を表す)であることが好ましい。また、架橋基XがC(R) を表し、1つまたは2つの置換基Rがイミダゾール、ピラゾール、チアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、ベンゾチアジアゾール、フェナントロリル等の電子不足複素環を含むことが更に好ましい。これは、特に式(3)〜(14)、(3a)〜(14a)、(3b)〜(14b)及び(3c)〜(14c)により表される構造上のX基及びR基に当てはまる。該化合物は電子供与体化合物と共にドープされることが更に好ましい場合がある。
【0072】
本発明の物質とは別に、本発明の有機エレクトロルミネセント素子の正孔注入層又は正孔輸送層で使用され得るものとして、又は電子輸送層で使用され得るものとして好適な電荷輸送物質は、例えば、Y. Shirota et al., Chem. Rev. 2007, 107(4), 953-1010、に記載された化合物、又は該先行技術に準拠したこれらの層で使用される他の物質である。
【0073】
式(1)又は(2)で表される化合物を含有する本発明のエレクトロルミネセント素子において使用され得る好適な正孔輸送物質又は正孔注入物質は、例えば、下記表に示す物質である。
【化34】

【0074】
更に好適な正孔輸送物質又は正孔注入物質は、上記化合物の誘導体であり、JP2001/226331、EP676461、EP650955、WO01/049806、US4780536、WO98/30071、EP891121、EP1661888、JP2006/253445、EP650955、WO06/073054、US5061569及びWO06/122630に記載されている。
【0075】
式(1)又は(2)で表される化合物を含有する本発明のエレクトロルミネセント素子において使用され得る好適な電子輸送物質又は電子注入物質は、例えば、下記表に示す物質である。
【化35】

【0076】
更に好適な電子輸送物質及び電子注入物質は、上記化合物の誘導体であり、JP2000/053957、WO03/060956、WO04/028217及びWO04/080975に記載されている。
【0077】
式(1)及び(2)で表される繰り返し単位は、同様に、ポリマー中において、ポリマー骨格、発光単位、正孔輸送単位、及び/又は、電子輸送単位のいずれかとして使用され得る。ここで好ましい置換パターンは、上述した各々に対応する。
【0078】
更なる選択は、1又は2以上の層が昇華プロセスにより施される特徴を有する有機エレクトロルミネセント素子にあり、物質は通常10−5mbar未満、好ましくは10−6mbar未満の初期圧力において真空昇華ユニットにて蒸着される。ここで、初期圧力は更に低くすることも可能であり、例えば、10−7mbar未満であってもよい。
【0079】
同様に、更なる選択は、1又は2以上の層が、OVPD(有機気相蒸着:organic vapour phase deposition)プロセスにより、場合により搬送ガス昇華を用いて、10−5mbar〜1barの圧力において形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネセント素子である。このプロセスの特別な形態として、OVJP(有機蒸気ジェット印刷; organic vapour jet printing)法においては、物質がノズルから直接塗布され構造形成される(例えば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301を参照)。
【0080】
更なる選択は、1又は2以上の層が、例えば、スピンコーティングや所望される印刷法(例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、特に好ましくはLITI(光誘導赤外線画像、熱転写印刷)又はインクジェット印刷))などにより溶液から製造されることを特徴とする有機エレクトロルミネセント素子である。この目的において可溶性化合物は必須である。化合物の置換基を好適なものとすることにより、高い溶解性は実現することができる。
【0081】
本発明に係る化合物は、有機エレクトロルミネセント素子に使用されることにより、先行技術に対して以下に示す驚くべき効果を有する。すなわち、
1.本発明の化合物は優れた熱安定性を有し、分解することなく昇華することができる。
【0082】
2.本発明の化合物、特にRが芳香環又は芳香族複素環類を表す化合物、またはジアリールアミノ置換基により置換された化合物は、極めて良好な青色又は緑色座標を有し、故に青色エミッターとして非常に好適である。更に、該化合物はストークスシフトが低く、発光スペクトルが非常に狭い。
【0083】
3.本発明の化合物は母材として、特には赤色及び緑色蛍光ドーパントとして非常に好適である。
【0084】
4.本発明の化合物、特にジアリールアミノ基により置換された化合物、及び/又は、X架橋中にS、O又はN(R)を含む化合物、及び/又は、Ar基として電子リッチ芳香族複素環基を含む化合物は、正孔注入物質及び正孔輸送物質としての使用に非常に好適であり、作業電圧が低減される。
【0085】
5.本発明の化合物を用いて製造されたOLEDは、非常に長い寿命を有する。
【0086】
6.本発明の化合物を用いて製造されたOLEDは、非常に高い量子効率を有する。
【0087】
本願の書類は、OLED及びPLED、並びに対応するディスプレイに関する発明に係る化合物の使用に関するものである。本書類の限定に拘らず、当業者であれば困難なく本発明の化合物を他の電子素子、例えば、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機集積回路(O−IC)、有機太陽電池(O−SC)、有機電界クエンチ素子(organic field-quench device;O−FQD)、発光電気化学セル(LEC)、有機半導体レーザー(O−レーザー)又は有機光受容体に使用することができる。
【0088】
同様に、本発明は、対応する素子における本発明の化合物の使用、並びにこれら素子自体に関する。
【0089】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0090】
以下に示す合成は、他に言及のない限り、保護ガス雰囲気下、無水溶剤中において実施される。出発物質はALDRICHから購入することができる。
【0091】
例1:2,3,8,9−ジベンゾ−1,1,7,7,−テトラフェニル−5,11−ジフェニル−1,7−ジヒドロジシクロペンタ[b,i]アントラセン
a)2,6−ジブロモアントラキノンの合成
(Lee et al., Organic Letters 2005, 7(2), 323-326)
【化36】

【0092】
2,6−ジアミノアントラキノン62.6g(255mmol)とCuBr124g(550ml)を最初にアセトニトリル1000ml中に導入し、tert−ブチルニトリル68ml(515mmol)を、60℃の内部温度において滴下して加える。30分後、反応混合物を150mlの濃縮HClと1lの冷水の混合物中に注ぎ、生成する固体を吸引下において濾過し、水、EtOH及びヘプタンで洗浄し、乾燥することにより、茶色の固体89g(243mmol、96%)を得る。得られた固体はH−NMRにおいて均一であり、更なる精製をすることなく次の反応に使用される。
【0093】
b)2,6−ジブロモ−9,10−ジフェニルアントラセンの合成
【化37】

【0094】
2,6−ジブロモアントラキノン36.6g(100mmol)をTHF600mlに溶解し、溶液を−75℃に冷却し、THF中の2Mフェニルリチウム溶液100mlを滴下して添加する。2時間後、混合物をRTまで温め、4MのHCL50mlを加え、混合物をトルエンと水に分配し、有機相をNaSOを用いて乾燥し、溶剤を減圧下において除去する。残渣をDMF350mlに採り、SnCl68g(350mmol)を加え、混合物を内部温度140℃で2時間おく。次いで、2MのHCL180mlを約40℃において加え、吸引下において沈殿を濾過し、水、EtOH及び酢酸エチルで洗浄し、次いで減圧下において80℃で乾燥する。トルエンからの再結晶化により黄土色の固体30.8g(63mmol、63%)を得る。得られた固体はTLC及びH−NMRにおいて均一であり、この形態において次の反応において使用される。
【0095】
c)9,10−ジフェニルアントラセン−2,6−ジボロン酸ピナコールエステルの合成
【化38】

【0096】
2,6−ジブロモ−9,10−ジフェニルアントラセン9.5g(19.5mmol)を乾燥ジオキサン240mlに溶解し、ビス(ピナコラト)ジボロン16.3g(64mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)クロリド(ジクロロメタンとの錯体(1:1)、Pd含有率13%)1g(1.2mmol)、及び酢酸カリウム23g(234mmol)を加え、混合物を2時間沸点において加熱し、氷水中に注ぎ、吸引下において沈殿物を濾過し、EtOHで洗浄し、減圧下において乾燥し、黄白色の粉末10g(17.1mmol、88%)を得る。得られた粉末はTLC及びH−NMRにおいて均一である。
【0097】
d)9,10−ジフェニル−2,6−(2−カルボキシメチルフェニル)アントラセンの合成
【化39】

【0098】
9,10−ジフェニルアントラセン−2,6−ジボロン酸ピナコールエステル9.4g(16mmol)を、EtOH115ml、トルエン115ml、2MのNaCO溶液60ml、2−ブロモ安息香酸メチル4.5ml(32.3mmol)及びPd(PPh)750ml(0.7mmol)の混合物中で沸点において4時間加熱する。次いで反応混合物を氷水/MeOH/HClの1:1:1混合物中に注ぎ、吸引下において無色の沈殿物を濾過し、水、EtOH及びヘプタンで洗浄し、乾燥する。固体を沸騰したトルエンに溶解し、溶液をシリカゲル層を通して濾過し、ヘプタンをろ液に加え、沈殿物を吸引下において濾過し、無色粉末のジエステル8.9g(14.8mmol、92%)を得る。
【0099】
e)(2−{6−[2−(ヒドロキシジフェニルメチル)フェニル]−9,10−ジフェニル−アントラセン−2−イル}フェニル)ジフェニルメタノールの合成
【化40】

【0100】
THF中の0.5Mフェニルマグネシウムブロミド溶液180ml(90mmol)を室温にてジエステル8.9g(14.9mmol)に加え、混合物を沸点において3時間加熱する。その後、50%の酢酸50mlを滴下して加え、減圧下において溶剤を除去し、残りの固体をMeOH中に採り、吸引下において濾過し、MeOHで洗浄し、乾燥し、無色の固体11.3g(13.3mmol、90%)を得る。TLC及びH−NMRにより、得られた固体は98%を超える純度である。
【0101】
f)ジベンゾ−1,1,7,7−テトラフェニル−5,11−ジフェニル−1,7−ジヒドロジシクロペンタ[b,i]アントラセンの合成
【化41】

【0102】
氷酢酸70ml及び濃縮HCl1mlの混合物中でジオール10.3g(12.2mmol)を沸点において2時間加熱する。反応が完了したとき、沈殿した固体を吸引下において濾過し、水、EtOH及びヘプタンで洗浄し、乾燥する。クロロベンゼンから4回結晶化させた後、減圧下において2回昇華させ(T=340℃、p=1×10−5mbar)、黄白色のガラス形態の残物6g(7.4mmol、61%)を得る。RP−HPLCにより測定される純度は99.9%を超える。
【0103】
例2:2,3−ベンゾ−1,1−ジフェニル−5,11−ジフェニル−1−ジヒドロシクロペンタ[b]アントラセン
【化42】

【0104】
この化合物の合成は、出発化合物として使用される2−アミノアントラキノンを用い、例1に類似の方法で行われる。
【0105】
例3:OLEDの製品
OLEDは、WO04/058911に概括的に記載された方法で製造され、それぞれの事情(例えば、最適効率又は色を達成するための層厚みの多様性)に対する個々の場合に応じて変更される。
【0106】
種々のOLEDに対する結果が下記の例4〜7に示されている。構造化されたITO(インジウムスズ酸化物)で被覆されたガラスプレートはOLEDの基盤を形成する。OLEDは下記層配列からなる。すなわち、基板/正孔注入層(HTM1)60nm/正孔輸送層(HTM2)20nm/発光層(EML)30nm/電子輸送層(ETM)20nm及び最後にカソードの順である。物質は真空槽内で熱的に蒸着される。ここで発光層は常にマトリクス材(母材)及びドーパントからなり、同時蒸着により母材と混合される。カソードは1nmのLiF薄層及び頂上に堆積される100nmのAl層により形成される。
表1はOLEDを構築するために使用された物質の化学構造を示す。
【0107】
これらのOLEDは標準方法により特徴づけられる。この目的において、エレクトロルミネセンススペクトル、効率(cd/Aにおいて測定)、電流−電圧−輝度特性ライン(IUL特性ライン)から計算される輝度の関数としての電力効率(Im/VVにおいて測定)、及び寿命が決定される。寿命は、当初輝度25000cd/mが半分に落ちた後の時間として決定される。半値幅(FWHM=full width half maximum)がエレクトロルミネセンススペクトルから決定される。
【0108】
表1はOLED(例4〜7)の結果を示す。本発明の母材及びエミッター物質は例1及び2からの化合物である。先行技術に準拠した母材H1及びエミッター物質D1が比較例として使用される。
【0109】
表2の結果から明らかなように、マトリクスの例において本発明の化合物を含有する有機エレクトロルミネセント素子は、遥かに長い寿命を有する。表3の結果から明らかなように、ドーパントとして本発明の化合物を含有する有機エレクトロルミネセント素子は先行技術と比較して有意に改善された半値幅を有することがわかる。
【表1】

【表2】

【表3】

【0110】
図1に半値幅が優位に狭い発光ピークを示す。図1には、上述した化合物D2における発光スペクトル及び半値幅(破線、WO08/006449に準拠した化合物)と、トルエン中の本発明に係る化合物(例1)における発光スペクトル及び半値幅(実践)が表されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)及び(2)により表される化合物。
【化1】

式中、アントラセン単位中の1又は2以上の無置換の炭素原子は窒素原子により置換されていてもよい。使用された符号及び指数は以下の通りである。
Xは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、B(R)、C(R)、Si(R)、C=O、C=NR、C=C(R)、O、S、S=O、SO、N(R)、P(R) 及びP(=O)Rから選択される2価の架橋を表す。
Arは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、6〜40個のC原子を有するアリール基又は2〜40個のC原子を有するヘテロアリール基であり、各基は1又は2以上のRラジカルにより置換されていてもよい。
は、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、N(R)、N(Ar)、C(=O)Ar、P(=O)(Ar)、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、CN、NO、Si(R)、B(OR)、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ又はチオアルコキシ基、又は、3〜40個のC原子を有する分岐鎖又は環式アルキル、アルコキシ又はチオアルコキシ基であり、ここで各基は1又は2以上のRラジカルにより置換されていてもよく、1又は2以上の非隣接CH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、S又はCONRにより置換されていてもよく、1又は2以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CN又はNOにより置換されていてもよく、またはRは、5〜40個の芳香環原子を有する芳香環又は芳香族複素環類であって、各基は1又は2以上のRラジカルにより置換されていてもよく、又は、5〜40個の芳香環原子を有するアリールオキシ又はヘテロアリールオキシ基であって、1又は2以上のRラジカルにより置換されていてもよく、もしくはこれらの組み合わせを表す。ここで、2以上の隣接する置換基Rは一緒になって単環又は多環の脂環又は芳香環類を形成してもよい。
Rは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、Rを表す。但し、少なくとも1つ置換基RはHではない。
Arは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、5〜30個の芳香環原子を有する芳香環又は芳香族複素環類であって、1又は2以上のRラジカルにより置換されていてもよい。ここで、同じ窒素原子又はリン原子に結合している2つのArラジカルは、単結合、あるいはB(R)、C(R、Si(R、C=O、C=NR、C=C(R、O、S、S=O、SO、N(R)、P(R)及びP(=O)Rから選択される架橋により互いに結合してもよい。
は、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、N(R)、N(Ar)、C(=O)Ar、P(=O)(Ar)、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、CN、NO、Si(R)、B(OR)、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシ又はチオアルコキシ基、または3〜40個のC原子を有する分岐鎖又は環式アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ又はチオアルコキシ基であり、ここで、各基は1又は2以上のRラジカルにより置換されていてもよく、1又は2以上の非隣接CH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、S又はCONRにより置換されていてもよく、1又は2以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN又はNOにより置換されていてもよく、もしくはこれらの組み合わせを表す。ここで、2以上の隣接する置換基Rは一緒になって単環又は多環の脂環又は芳香環類を形成してもよい。
は、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、H、D、Fであり、または、1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族及び/又は芳香族複素環炭化水素ラジカルであって、H原子はFにより更に置換されていてもよい。ここで2以上の隣接する置換基Rは、一緒になって単環又は多環の脂環又は芳香環類を形成してもよい。
mは1、2又は3である。
nは0又は1である。
【請求項2】
式(3)〜(15)により表される請求項1に記載の化合物。
【化2】

【化3】

【化4】

式中、アントラセン単位中の1又は2以上の無置換の炭素原子は、窒素により置換されていてもよく、符号及び指数は請求項1に記載の意味を有する。
【請求項3】
符号Arは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、6〜16個のC原子を有するアリール基、又は2〜16個のC原子を有するヘテロアリール基であって、各基は1又は2以上のRラジカルによって置換されていてもよい基を表し、特に、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、ベンゼン、ナフタレン、チオフェン、ピロール、フラン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、キノリン、キノキサリン、ベンゾチオフェン、インドール又はベンゾフランであることを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
式(3a)〜(15a)、(3b)〜(15b)及び(3c)〜(15c)により表される請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

式中の符号及び指数は請求項1に記載の意味を有する。
【請求項5】
符号Xは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、C(R)、C=O、O、S、S=O、SO、N(R)、P(R)又はP(=O)Rを表し、特に好ましくはC(R)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
2つのR基はHではなく、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、好ましくは、Cl、Br、I、N(Ar)、C(=O)Ar、P(=O)(Ar)、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、B(OR)、OSO、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル又はアルコキシ基、又は、3〜10個のC原子を有する分岐鎖又は環式アルキル又はアルコキシ基であり、ここで各基は1又は2以上のRラジカルにより置換されていてもよく、1又は2以上の非隣接CH基は、RC=CR、C≡C、C=O、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、S又はCONRにより置換されていてもよく、1又は2以上のH原子はFにより置換されていてもよく、またはRは、5〜20個の芳香環原子を有する芳香環又は芳香族複素環類であって、各基は1又は2以上のRラジカルにより置換されていてもよく、又は、5〜20個の芳香環原子を有するアリールオキシ又はヘテロアリールオキシ基であって、1又は2以上のRラジカルにより置換されていてもよく、もしくはこれらの組み合わせを表すことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
Ar基が無置換であること、すなわち、RがHであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
R又はRラジカルがN(Ar)基を表す場合において、当該基が式(16)又は(17)により表される基から選択されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【化12】

式中のRは請求項1に記載の意味を有する。更に、
Eは、単結合、O、S、N(R) 又はC(R)を表す。
Arは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、5〜20個の芳香環原子を有するアリール又はヘテロアリール基、又は、15〜30個の芳香環原子を有するトリアリールアミン基であり、各基は1又は2以上のRラジカル又はBrによって置換されていてもよい。Arは、好ましくは、6〜14個の芳香環原子を有するアリール又はヘテロアリール基、又は、18〜30個、好ましくは18〜22個の芳香環原子を有するトリアリールアミン基であり、各基は1又は2以上のRラジカル又はBrによって置換されていてもよい。
pは、出現するごとに同一でも異なっていてもよく、0又は1である。
【請求項9】
ジハロアントラキノンから請求項1〜8のいずれかに記載の化合物を合成する方法であって、下記反応工程:
a)アリール金属の付加反応
b)アントラセンへの還元、
c)任意にハロゲン基をボロン酸誘導体に変換した後における、官能化芳香族化合物へのカップリング、及び
d)好ましくは酸性条件下における、閉環
を含む方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の化合物を1種又は2種以上含有する二量体、三量体、四量体、五量体、オリゴマー、ポリマー又はデンドリマーであって、1又は2以上のR、R又はRが、二量体、三量体、四量体又は五量体における式(1)又は(2)で表される化合物間の結合を表し、あるいは、式(1)又は(2)で表される化合物からオリゴマー、ポリマー又はデンドリマーへの結合を表す二量体、三量体、四量体、五量体、オリゴマー、ポリマー又はデンドリマー。
【請求項11】
電子素子、特に有機エレクトロルミネセント素子(OLED、PLED)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機集積回路(O−IC)、有機太陽電池(O−SC)、有機電界クエンチ素子(O−FQD)、発光電気化学セル(LEC)、有機半導体レーザー(O−レーザー)又は有機光受容体における請求項1〜8及び10のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項12】
請求項1〜8及び10のいずれかに記載の化合物を少なくとも1種含有する電子素子、特に有機エレクトロルミネセント素子(OLED、PLED)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機集積回路(O−IC)、有機太陽電池(O−SC)、有機電界クエンチ素子(O−FQD)、発光電気化学セル(LEC)、有機半導体レーザー(O−レーザー)及び有機光受容体から選択される電子素子。
【請求項13】
カソード、アノード及び発光層に加え、各場合において、1又は2以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、電子ブロック層、電荷発生層、及び/又は、更に発光層から選択される層を更に具備することを特徴とする請求項12に記載の有機エレクトロルミネセント素子。ここで、各層は必ずしも存在しなければならないものではない。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれかに記載の化合物が、蛍光ドーパントにおける母材、蛍光ドーパント、正孔輸送物質、正孔注入物質又は電子輸送物質として使用されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の有機エレクトロルミネセント素子。

【図1】
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【公表番号】特表2011−520784(P2011−520784A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504338(P2011−504338)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001938
【国際公開番号】WO2009/127307
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】