説明

有機エレクトロルミネッセンスデバイス及びその製造方法

【課題】発光媒体積層体に結晶化及び凝集が発生しにくく、しかも発光特性に優れた有機ELデバイスを提供する。
【解決手段】有機ELデバイス100は、デバイス基板101、第1電極層102、発光媒体積層体103、及び第2電極層104を備えている。発光媒体積層体は複数の積層体構成要素層103a〜103eを積層して形成されている。それら複数の積層体構成要素層が、重量平均分子量が1000以下の低分子材料から成る低分子材料層として形成された層と、重量平均分子量が1000以上の高分子材料から成る高分子材料層として形成された層とを含んでいる。少なくとも1層の低分子材料層と少なくとも1層の高分子材料層とがそれらの表面を互いに接して積層されており、これによって、低分子材料層の表面に結晶化及び凝集が発生することが抑制されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELデバイスは、導電性の有機発光層に電流を流すことにより、その有機発光層に注入する電子と正孔とを再結合させ、この再結合の際に有機発光層を構成する有機発光材料を発光させるものである。有機発光層に電流を流すと共に光を外部へ取り出すために、有機発光層の両側に透明電極と対向電極とが設けられる。より詳しくは、有機ELデバイスは、通常、透明なデバイス基板上に透明電極層を形成し、その上に発光媒体積層体を形成し、その上に対向電極層層を形成して構成され、透明電極は陽極、対向電極は陰極として利用される。
【0003】
発光媒体積層体は、複数の積層体構成要素層を積層して形成されており、それら複数の積層体構成要素層のうちに、有機EL材料から成る有機発光層が含まれ、また更に、例えば正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、それに電子注入層などが含まれる。
【0004】
発光媒体積層体を構成するそれら複数の積層体構成要素層は、多くの場合、重量平均分子量が1000以下の低分子材料で形成される。例えば、正孔注入層は銅フタロシアニン(CuPc)などで形成され、正孔輸送層はN,N’―ジフェニル ―N,N’―ビス(3―メチルフェニル)1−1’ビフェニル−4,4’ジアミン(TPD)などで形成され、発光体層はトリス(8―キノリノール)アルミニウム(Alq3)などで形成される。低分子材料で形成される積層体構成要素層は、一般に各層の膜厚が1〜100nm程度であり、抵抗加熱方式などの真空蒸着法やスパッタ法、それに、材料を溶剤に溶解もしくは分散させて調製した塗工液を塗布ないし印刷するウエットプロセスなどにより成膜される。特に、ウエットプロセスは、真空蒸着法やスパッタ法などに比べて、設備が安価であり、大型化にも対応可能であり、大気下で作製可能であり、生産性も高いなどの数々の利点がある。
【0005】
ただし、以上のような低分子材料から成る薄膜は不安定であり、有機ELデバイスの駆動中に生じる熱により結晶化や凝集が発生することがある。また、有機ELデバイスを発光させずに保管しているだけでも結晶化や凝集が進行することがわかっている。このように一部で結晶化や凝集が発生すると、その結晶を起点に膜全体に結晶化が広がり、白濁することがある。また、結晶化や凝集が起こると膜の均質性が低下し、発光効率の低下や発光ムラの原因となる他に、結晶を起点にデバイス中にピンホールが生じ短絡の原因となる。このように結晶化や凝集はデバイスの発光効率低下や寿命低下を引き起こす。そして、ウエットプロセスを用いて低分子材料で成膜した積層体構成要素層は、特に結晶化が生じやすいという問題があった。
【0006】
そのため、有機ELデバイスの発光箇所周囲に結晶防止層を設けることが、例えば以下の特許文献1及び特許文献2などによって提案されている。しかしながら、特許文献1に開示されている方法では、発光箇所に生じる結晶や凝集を防ぐことは出来ない。また、特許文献2に開示されている方法は、低分子材料を高分子バインダーに分散させ結晶化を防ぐというものであるが、この方法では使うことのできる材料が限られ、材料の選択が困難である。
【0007】
【特許文献1】特開2004−127531号公報
【特許文献2】特開平7−192874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発光媒体積層体を構成する複数の積層体構成要素層の各々を、また特に有機発光層を、重量平均分子量が1000より大きい高分子材料で形成すれば、結晶化及び凝集が発生しにくい膜とすることができ、好都合であるが、高分子材料は低分子材料と比べると材料選択の幅が狭い上に、高分子材料を用いて有機発光層を形成した有機ELデバイスは、低分子材料を用いたものと比べて発光特性が劣ることが問題となる。
【0009】
本発明は、以上の状況に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、発光媒体積層体に結晶化及び凝集が発生しにくく、しかも発光特性に優れた有機ELデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、デバイス基板と、該デバイス基板上に形成された第1電極層と、該第1電極層上に形成された発光媒体積層体と、該発光媒体積層体上に形成された第2電極層とを備え、前記第1電極層と前記第2電極層とは、それらの一方が透明電極を構成し他方が対向電極を構成しており、前記発光媒体積層体は複数の積層体構成要素層を積層して形成されており、前記複数の積層体構成要素層が、有機エレクトロルミネッセンス材料から成る有機発光層を含んでおり、前記透明電極と前記対向電極との間に電圧を印加することによって前記有機発光層が発光するようにしてあり、前記複数の積層体構成要素層が、重量平均分子量が1000以下の低分子材料から成る低分子材料層として形成された層と、重量平均分子量が1000より大きい高分子材料から成る高分子材料層として形成された層とを含んでおり、少なくとも1層の前記低分子材料層と少なくとも1層の前記高分子材料層とがそれらの表面を互いに接して積層されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
かかる構成によれば、低分子材料層を高分子材料層に隣接させて設けることにより、ないしは、低分子材料層を高分子材料層の間に挟むことによって、低分子材料層の結晶化や凝集を防ぎ、有機ELデバイスの駆動中の劣化や高抵抗化を防ぎ、デバイスの短寿命化を改善することができる。また特に、低分子材料層が高分子材料層の間に挟まれた構成とすることによって、低分子材料層の両面が高分子材料層の非結晶質の表面に接触するようになるため、より一層の効果が得られる。更に、低分子材料層の結晶化及び凝集が抑制されるため、ピンホールやダークスポット、電流のリークの発生が防止され、かつ発光媒体積層体の構成、作成方法、材料選択の幅が大きく広がり、発光効率および発光輝度、寿命に優れた有機ELデバイスないし有機ELディスプレイデバイスが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態に係る有機ELデバイスの一例を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明に係る有機ELデバイスの一例を示した模式的断面図である。図示のごとく、有機ELデバイス100は、デバイス基板101と、このデバイス基板101上に形成された第1電極層102と、この第1電極層102上に形成された発光媒体積層体103と、この発光媒体積層体103上に形成された第2電極層104とを備えている。第1電極層102は透明電極を構成しており、第2電極層104は対向電極を構成している。
【0014】
デバイス基板101は透光性基板であり、このデバイス基板101の材料は様々なものとすることができるが、具体的には、例えば、ガラス基板や、プラスチック製のフィルムまたはシートから成る基板とすることができる。特に、板厚が0.2〜1mm程度の薄いガラス基板を用いれば、バリア性が非常に高い薄型の有機ELデバイスを作製することができるという利点が得られる。
【0015】
透明電極を構成する第1電極層102の材料は、透明または半透明の電極を形成することのできる任意の導電性物質とすることができる。具体的には、酸化物としてインジウムと錫の複合酸化物(以下ITOという)、インジウムと亜鉛の複合酸化物(以下IZOという)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、亜鉛アルミニウム複合酸化物等を使用することができるが、ただし、それらのうちでも特にITOは、低抵抗であること、対溶剤性があること、透明性に優れていることなどの利点を有する好適な材料である。以上の材料を用いてデバイス基板101上に第1電極層102を形成するには、例えば、蒸着法やスパッタリング法を用いればよい。また、オクチル酸インジウムやアセトンインジウムなどの前駆体をデバイス基板101上に塗布後、熱分解により酸化物の層を成膜する塗布熱分解法を用いて、第1電極層102を形成することもできる。更に、アルミニウム、金、銀等の金属材料を蒸着して半透明の層を成膜する方法や、ポリアニリン等の有機半導体を用いる方法もあり、更にその他の方法を用いることも可能である。第1電極層102に対しては、必要に応じてエッチングによりパターニングを行ったり、UV処理やプラズマ処理などにより表面の活性化を行ってもよい。
【0016】
対向電極を構成する第2電極層104の材料としては、例えばMg、Al、Yb等の金属単体や、電子注入効率と安定性を両立させることのできる仕事関数の低い金属と安定な金属との合金系である例えばMgAg、AlLi、CuLi等の合金を使用することができる。対向電極の形成方法は材料に応じて、例えば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法、それにスパッタリング法などを用いればよい。対向電極の厚さ(第2電極層104の厚さ)は、10nm〜1000nm程度とすることが望ましい。
【0017】
有機ELデバイス100は更に、発光媒体積層体103を外部の酸素や水分から保護するための、例えば、ガラスキャップや接着剤などから成る封止材を備えているが、そのような封止材は、図1の模式図では不図示とした。尚、デバイス基板101が可撓性を有するものである場合には、封止材として可撓性フィルムなどを用いて密閉封止を行う。
【0018】
発光媒体積層体103は、複数の積層体構成要素層103a〜103eを積層して形成されており、それら複数の積層体構成要素層には、正孔注入層103a、正孔輸送層103b、有機発光層103c、電子輸送層103d、それに、電子注入層103eが含まれている。尚、本発明に係る有機ELデバイスの発光媒体積層体の構成は、図示したものに限られず、その他の構成とすることもあり、例えば、正孔ブロック層や、絶縁層等を更に含む構成とすることもある。また、図示した積層体構成要素層103a〜103eの全てを備えた構成ではない構成とすることもあるが、ただし、いかなる場合でも、有機発光層103cは、必ず備えていなければならない必須の積層体構成要素層である。
【0019】
発光効果を得る為には、発光媒体積層体103が、有機発光層103cに加えて更に少なくとも1層のその他の積層体構成要素層を含む積層構造である必要がある。そして、本発明においては、発光媒体積層体103を構成する複数の積層体構成要素層が、重量平均分子量が1000以下の低分子材料から成る低分子材料層として形成された層と、重量平均分子量が1000より大きい高分子材料から成る高分子材料層として形成された層とを、共に含んでいる構成とすることで、優れた特性の有機ELデバイスが得られるようにしている。
【0020】
即ち、発光媒体積層体103を、少なくとも1層の低分子材料層と少なくとも1層の高分子材料層とがそれらの表面を互いに接して積層されている構成とし、より好ましくは、1層の低分子材料層が2層の高分子材料層の間に挟まれた3層以上の構成とするようにしている。これらのように、低分子材料層を高分子材料層に隣接させて設けることにより、ないしは、低分子材料層を高分子材料層の間に挟むことによって、低分子材料層の結晶化や凝集を防ぎ、有機ELデバイスの駆動中の劣化や高抵抗化を防ぎ、デバイスの短寿命化を改善することができる。また特に、低分子材料層が高分子材料層の間に挟まれた構成とすることによって、低分子材料層の両面が高分子材料層の非結晶質の表面に接触するようになるため、より一層の効果が得られる。
【0021】
図1に示した具体例では、発光媒体積層体103は、正孔注入層103a、正孔輸送層103b、有機発光層103c、電子輸送層103d、及び電子注入層103eの5層を含むものであるが、それら5層の積層体構成要素層103a〜103eはいずれも、以下に説明するように、低分子材料層として形成することも、高分子材料層としても形成することも可能である。また、それら積層体構成要素層103a〜103eの各層の厚さは任意であるが、その好ましい値は10〜100nmであり、発光媒体積層体103の総膜厚は、80〜500nmとすることが好ましい。
【0022】
以下に発光媒体積層体103を構成する積層体構成要素層103a〜103eの各々について、その層を形成する材料及び方法について説明する。
【0023】
正孔注入層103aないし正孔輸送層103bの材料としては、一般に正孔注入材料ないし正孔輸送材料として用いられている材料を使用することができる。正孔注入層103aないし正孔輸送層103bを、低分子材料層として形成する場合に使用する材料としては、例えば、銅フタロシアニンやその誘導体、1,1‐ビス(4‐ジ‐p‐トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’‐ジフェニル‐N,N’‐ビス(3‐メチルフェニル)‐1,1’‐ビフェニル‐4,4’‐ジアミン、それにTPD等の芳香族アミン系などが挙げられる。これら材料を、例えば、真空蒸着法により製膜することによって、正孔注入層103aないし正孔輸送層103bを低分子材料層として形成することができる。また別法として、これら材料を、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルアニソール、ジメチルアニソール、安息香酸エチル、安息香酸メチル、メシチレン、テトラリン、アミルベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水などの単独または混合溶媒に溶解または分散させて塗工液(正孔注入材料インキないし正孔輸送材料インキ)を調製し、その塗工液を使用したウエットプロセスにより層を成膜することによっても、正孔注入層20ないし正孔輸送層22を低分子材料層として形成することができる。
【0024】
一方、正孔注入層103aないし正孔輸送層103bを高分子材料層として形成する場合に使用する材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物やPPV(ポリパラフェニレンビニレン)誘導体、PAF誘導体などが挙げられる。これら材料を、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水などの単独または混合溶媒に溶解または分散させて塗工液(正孔注入材料インキないし正孔輸送材料インキ)を調製し、その塗工液を使用したウエットプロセスにより層を成膜することによって、正孔注入層103aないし正孔輸送層103bを高分子材料層として形成することができる。
【0025】
有機発光層103cは、一般に有機発光材料として用いられている材料により形成することができる。有機発光層103cを低分子材料層として形成する場合に用いる材料としては、例えば、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’―ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’―ジアリール置換ピロロピロール系等、一重項状態から発光可能な公知の蛍光性低分子材料や、希土類金属錯体系の三重項状態から発光可能な公知の燐光性低分子材料が挙げられる。これら材料を、例えば、真空蒸着法により成膜することによって、有機発光層103cを低分子材料層として形成することができる。また別法として、これら材料を、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルアニソール、ジメチルアニソール、安息香酸エチル、安息香酸メチル、メシチレン、テトラリン、アミルベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水などの単独または混合溶媒に溶解または分散させて塗工液(有機発光材料インキ)を調製し、その塗工液を使用したウエットプロセスにより層を成膜することによっても、有機発光層103cを低分子材料層として形成することができる。
【0026】
一方、有機発光層103cを高分子材料層として形成する場合に用いる材料としては、例えば、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’―ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’―ジアリール置換ピロロピロール系等の蛍光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に溶解させたものや、PPV系やPAF系等の高分子蛍光発光体や、希土類金属錯体を含む高分燐光発光体などの高分子発光体が挙げられる。これら高分子有機発光材料を、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルアニソール、ジメチルアニソール、安息香酸エチル、安息香酸メチル、メシチレン、テトラリン、アミルベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水などの単独または混合溶媒に溶解または分散させて塗工液(有機発光材料インキ)を調製し、その塗工液を使用したウエットプロセスにより層を成膜することによって、有機発光層103cを高分子材料層として形成することができる。それら溶媒のうちでも特に、トルエン、キシレン、アニソール、メチルアニソール、ジメチルアニソール、安息香酸エチル、安息香酸メチル、メシチレン、テトラリン、それにアミルベンゼン等の芳香族系溶媒は、高分子有機発光材料の溶解性が良く、扱いも容易であることから、より好ましい溶媒であるといえる。
【0027】
正孔ブロック層ないし電子輸送層103dを形成する正孔ブロック材料ないし電子輸送材料としては、一般に正孔ブロック材料ないし電子輸送材料として用いられている材料を使用することができる。正孔ブロック層ないし電子輸送層103dを低分子材料層として形成する場合に用いる材料としては、例えば、トリアゾール系、オキサゾール系、オキサジアゾール系、シロール系、ボロン系などの低分子材料が挙げられ、これら材料を、例えば、真空蒸着法により成膜することによって、正孔ブロック層ないし電子輸送層103dを低分子材料層として形成することができる。
【0028】
一方、正孔ブロック層ないし電子輸送層103dを高分子材料層として形成する場合には、低分子材料であるそれら電子輸送材料を、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾールなどの高分子材料中に溶解させた上で、更にそれを、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水などの単独または混合溶媒に溶解または分散させて塗工液(正孔ブロック材料インキないし電子輸送材料インキ)を調製し、その塗工液を使用したウエットプロセスにより層を成膜するようにすればよく、それによって、正孔ブロック層ないし電子輸送層103dを高分子材料層として形成することができる。
【0029】
電子注入層103eに用いる電子注入材料としては、上述した電子輸送層103dに用いる低分子材料や、フッ化リチウムや酸化リチウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩や酸化物などを使用することができる。これら材料を、例えば、真空蒸着法により製膜することによって、電子注入層103eを低分子材料層として形成することができる。
【0030】
一方、電子注入層103eを高分子材料層として形成する場合には、それら低分子材料を、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾールなどの高分子材料中に溶解させた上で、更にそれを、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水などの単独または混合溶媒に溶解または分散させて塗工液(電子注入材料インキ)を調製し、その塗工液を使用したウエットプロセスにより層を成膜するようにすればよく、それによって、電子注入層103eを高分子材料層として形成することができる。
【0031】
以上の説明から明らかなように、発光媒体積層体103を構成する複数の積層体構成要素層103a〜103eはいずれも、その層を低分子材料層として形成する場合に、真空蒸着法を用いることもでき、また、ウエットプロセスを用いることもできる。ただし、多くの場合、これら2種類の方法のうちではウエットプロセスを用いる方が好ましく、なぜならば、ウエットプロセスには、設備が安価である、大型化にも対応可能である、大気下で作製可能である、それに、スピーディーで効率よく作製可能である等の数々の利点があるからである。
【0032】
また、ウエットプロセスと呼ばれる方法のうちに、塗布法と呼ばれるものと、印刷法と呼ばれるものとがある。塗布法には、スピンコーターを用いた塗布法もあり、また、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、或いはグラビアコーターなどを用いる塗布法もある。ただし、製造する有機ELデバイスがディスプレイデバイスである場合には、発光媒体積層体103に高精細度のパターニングを施す必要があるため、成膜後に別途パターニングの工程を必要とする塗布法よりも、成膜とパターニングとを同時に行える印刷法の方が好都合であることが多い。
【0033】
印刷法には、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、それにオフセット印刷法などがある。それらのうちでも特に、凸版印刷法は、通常の塗工液の粘度領域に適合しやすいこと、デバイス基材を傷つけることなく印刷可能であること、それに材料の利用効率がよいことなどの数々の利点を有する印刷法であることから、有機ELデバイスを製造するのに適した方法である。
【0034】
次に、本発明を適用した有機ELデバイスの具体例として、本発明に係る有機ELディスプレイデバイスの構成、並びにその製造手順について説明する。
【0035】
図2は本発明に従って構成したパッシブマトリックスタイプの有機ELディスプレイデバイスの一例を示した模式的断面図である。図示のごとく、有機ELディスプレイデバイス200は、デバイス基板201と、このデバイス基板201上に形成された第1電極層202と、この第1電極層202上に形成された発光媒体積層体204と、この発光媒体積層体204上に形成された第2電極層205とを備えている。第1電極層202は透明電極を構成しており、第2電極層205は対向電極を構成している。
【0036】
第1電極層202が構成する透明電極は、ライン状にパターニングされた多数の画素電極から成り、互いに隣接する2本の画素電極の間に絶縁層203が形成されている。発光媒体積層体204は、マトリックス状にパターニングされており、第2電極層205が構成する対向電極は、ライン状にパターニングされている。
【0037】
図1の発光媒体積層体103と同様に、図2の発光媒体積層体204もまた、複数の積層体構成要素層204a〜204eを積層して形成されており、それら複数の積層体構成要素層には、正孔注入層204a、正孔輸送層204b、有機発光層204c、電子輸送層204d、及び電子注入層204eの5層が含まれている。
【0038】
デバイス基板201は透光性基板であり、このデバイス基板201上に、ライン状にパターニングされた多数の画素電極から成る透明電極を構成する第1電極層202を形成する。続いて、互いに隣接する画素電極の間に、感光性材料を用いてフォトリソグラフィ法により絶縁層203を形成する。
【0039】
絶縁層203は、その厚さ(高さ)が0.5μm〜5.0μmの範囲内にあるものとすることが望ましい。互いに隣接する画素電極の間に設けられた絶縁層203は、正孔注入層203aを形成する際に、各画素電極上に印刷される上述した正孔輸送材料インキの広がりを抑えて、画素電極の間のリーク電流を防止する機能を果たす。この絶縁層203の高さが不足していると、正孔輸送材料インキの広がりを抑えることができず、絶縁層上に正孔注入層が成膜形成されてしまい、リーク電流を防止できなくなる。そのため、絶縁層203の高さを0.5μm以上とすることが望まれるのである。一方、パッシブマトリックスタイプの有機ELディスプレイデバイスにおいては、画素電極の間に設けた絶縁層の上をまたいで延在する対向電極が形成されるが、絶縁層が高すぎると、対向電極の断線が発生するおそれがあるため、絶縁層の高さを5.0μm以下とすることが望まれるのである。
【0040】
絶縁層203を形成する感光性材料としては、市販の様々なレジスト材料を用いることができ、ポジ型レジスト、ネガ型レジストのどちらでもよいが、絶縁性を有するレジスト材料を使用する。使用するレジスト材料が絶縁性を有さない場合には、そのレジスト材料を通じて隣り合うが画素電極の間に電流が流れてしまい表示不良が発生してしまう。具体的には、例えば、ポリイミド系、アクリル樹脂系、ノボラック樹脂系のレジスト材料などが挙げられる。また、有機ELディスプレイデバイスの表示品位を上げる目的で、絶縁層203を形成する感光性材料に遮光性材料を含有させるのもよい。さらに、正孔輸送材料インキの絶縁層への広がりを防ぐために、その感光性材料に撥インキ材料を含有させるのもよい。
【0041】
絶縁層203を形成する感光性材料として使用するレジスト材料は、例えば、スピンコーター、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーターなどを用いた塗布法などによって、第1電極層202が形成されたデバイス基板201上に塗布され、そして、フォトリソグラフィ法よりパターニングされる。スピンコーターを用いた塗布法を採用した場合、1回の塗布では所望の膜厚の塗布膜を得られないことがあるが、その場合は同様の作業を複数回繰り返せばよい。また、このようにして形成した絶縁層203に対して更に、プラズマ洗浄、UV洗浄などの処理を施して撥インキ性を調整するようにしてもよい。
【0042】
絶縁層203の形成後、発光媒体積層体204を構成する積層体構成要素層である、正孔注入層204a、正孔輸送層204b、発光層204c、電子輸送層204d、及び電子注入層204eを順次形成し、それら積層体構成要素層204a〜204eは、ウエットプロセスにより成膜形成することが好ましく、また特に、凸版印刷法を用いて成膜形成ことが望ましい。
【0043】
図3に、積層体構成要素層204a〜204eを形成するための塗工液(上述した正孔注入材料インキ、正孔輸送材料インキ、有機発光材料インキ、電子輸送材料インキ、それに電子注入材料インキなど)を、画素電極及び絶縁層が形成されたデバイス基板(被印刷基板)上にパターン印刷するために使用する凸版印刷機の具体例を概略図で示した。図示した凸版印刷機300は、インキタンク301と、インキチャンバー302と、アニロックスロール303と、凸版が設けられた版305がマウントされた版胴306と、被印刷基板が載置される平台307とを備えている。
【0044】
インキタンク301には、先に図1の具体例に関連して説明した各種塗工液のような、形成しようとする積層体構成要素層204a〜204eに対応した塗工液(インキ)が貯留されており、その塗工液がインキタンク301からインキチャンバー302へ送り込まれるようになっている。アニロックスロール303は回転可能に支持されており、インキチャンバー302のインキ供給部から、このアニロックスロール303の周面へ、インキが供給される。そして、アニロックスロール303の回転に伴い、このアニロックスロール303の周面に供給されたインキにより、均一な膜厚のインキ層303aが形成されるようになっている。
【0045】
版胴304は、アニロックスロール303に隣接して配設されており、不図示の駆動機構によって回転駆動される。アニロックスロール303の周面に形成されたインキ層303aは、この版胴304にマウントされた版305の凸部に転移する。平台306には、透明電極及び絶縁層が形成され、また場合によっては既に下層の積層体構成要素層が形成されたデバイス基板(被印刷基板)307が載置され、この被印刷基板307は不図示の搬送手段を介して、版305の凸部により印刷される印刷位置を通過して搬送されるようになっている。そして、版305の凸部のインキが被印刷基板307に印刷され、また必要に応じて乾燥工程を経ることで、被印刷基板307上に積層体構成要素層が成膜形成される。
【0046】
図1の有機ELデバイス100と同様に、以上に説明した図2の有機ELディスプレイデバイス200でも、発光媒体積層体204を構成する複数の積層体構成要素層204a〜204eが、重量平均分子量が1000以下の低分子材料から成る低分子材料層として形成された層と、重量平均分子量が1000以上の高分子材料から成る高分子材料層として形成された層とを、共に含んでいる構成とすることで、優れた特性の有機ELディスプレイデバイスが得られるようにしている。即ち、発光媒体積層体204を、少なくとも1層の低分子材料層と少なくとも1層の高分子材料層とがそれらの表面を互いに接して積層されている構成とし、より好ましくは、1層の低分子材料層が2層の高分子材料層の間に挟まれた3層以上の構成とするようにしており、それによって、図1の有機ELデバイス100に関連して述べた利点が得られるものとなっている。
【0047】
以上のようにして発光媒体積層体204を形成したならば、続いて、対向電極を構成する第2電極層205を形成する。図1の有機ELデバイス100の場合と同様に、第2電極層205の材料としては、例えばMg、Al、Yb等の金属単体や、電子注入効率と安定性を両立させることのできる仕事関数の低い金属と安定な金属との合金系である例えばMgAg、AlLi、CuLi等の合金を使用すればよい。対向電極の形成方法は材料に応じて、例えば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法、それにスパッタリング法などを用いればよい。対向電極の厚さ(第2電極層205の厚さ)は、10nm〜1000nm程度とすることが望ましい。
【0048】
有機ELディスプレイデバイス200は更に、発光媒体積層体204を外部の酸素や水分から保護するための、例えば、ガラスキャップや接着剤などから成る封止材を備えているが、そのような封止材は、図2の模式図では不図示とした。尚、デバイス基板201が可撓性を有するものである場合には、封止材として可撓性フィルムなどを用いて密閉封止を行う。
【0049】
なお、版305としては、感光性樹脂凸版を用いることが好ましく、なぜならば、感光性樹脂凸版は、高精細度の版を容易に形成することができるという利点を有するからである。更に、感光性樹脂版には、露光した樹脂版を現像する際に用いる現像液が有機溶剤である溶剤現像タイプのものと現像液が水である水現像タイプのものがあり、溶剤現像タイプのものは水系のインキに対し耐性を示し、水現像タイプのものは有機溶剤系のインキに耐性を示す。そのため、使用する塗工液(インキ)の溶媒の種類に応じて、感光性樹脂凸版のタイプを適当に選択するようにする。
【実施例1】
【0050】
以下に、本発明の実施例について説明する。実施例1においては、図4に示すように厚さが0.7mm、対角1.8インチサイズのガラス基板をデバイス基板401として用い、このデバイス基板401上に、スパッタ法を用いてITO膜を形成し、そのITO膜を、フォトリソグラフィ法と酸溶液によるエッチングでパターニングして、透明電極(画素電極)を構成する第1電極層402を形成した。画素電極のラインパターンは、ライン幅を136μm、ライン間のスペースを30μmとし、約32mmの幅の中に192本のラインが形成されるパターンとした。
【0051】
次に、絶縁層403を以下のようにして形成した。先ず、画素電極202を形成したデバイス基板201上にアクリル系のフォトレジスト材料を全面スピンコートした。このスピンコートの条件は、150rpmで5秒間回転させた後に500rpmで20秒間回転させるものとし、コーティングの回数は1回のみとし、それによって形成される絶縁層の高さを1.5μmとした。こうしてデバイス基板201の全面に塗布したフォトレジスト材料に対し、フォトリソグラフィ法により画素電極の間にラインパターンを有する絶縁層403を形成した。
【0052】
次に、絶縁層403と絶縁層403との間に、銅フタロシアニン(CuPc)を真空蒸着法により成膜することによって、正孔注入層404aを、厚さ20nmの低分子材料層として形成した。
【0053】
次に、正孔輸送材料であるトリフェニルアミン誘導体を1重量%の濃度になるようにシクロヘキサノールに溶解させた塗工液(正孔輸送材料インキ)を調製し、この塗工液を凸版印刷法により、絶縁層403と絶縁層403とに挟まれた画素電極の真上にそのラインパターンに合わせて印刷することによって、正孔輸送層404bを低分子材料層として形成した。このとき、150線/インチのアニロックスロールおよび水現像タイプの感光性樹脂版を利用した。乾燥後の正孔輸送層404bの膜厚は30nmとなった。
【0054】
次に、キシレン85%及びアニソール15%から成る混合溶媒に、高分子材料の有機発光材料であるPPV(ポリパラフェニレンビニレン)誘導体を1重量%の濃度になるように溶解させた塗工液(有機発光材料インキ)を調製し、この塗工液を凸版印刷法によりパターン印刷することによって、有機発光層404cを厚さ80nmの高分子材料層として形成した。
【0055】
次に、LiFを真空蒸着法により成膜することによって、電子注入層404eを、厚さ0.5nmの低分子材料層として形成した。
【0056】
最後に、Alを真空蒸着法により成膜することによって、対向電極を構成する第2電極層405を、厚さ150nmのAl層として形成した。そしてガラスキャップと接着剤を用いて密閉封止し、パッシブ駆動型の有機ELディスプレイデバイスを製作した。
【0057】
こうして製作した実施例1のパッシブ型有機ELディスプレイデバイスは、画素電極間の短絡がなく、選択した画素のみを点灯でき、発光ムラの無い良好なディスプレイデバイスであることが判明した。その輝度は、印加電圧を6Vとしたときに160cd/mであった。また、その初期輝度を400cd/mに設定して計測した輝度半減時間は1600時間であった。さらに、気温85℃、湿度90%の高温高湿下で400時間放置した後、顕微鏡で画素を観察した結果、部分的に結晶が析出しており、非発光箇所が数箇所確認された。
【実施例2】
【0058】
実施例2は、実施例1の変更例であり、実施例1において正孔注入層404aを低分子材料であるCuPcで形成したことに替えて、高分子材料であるPEDOT(ポリ(3,4―エチレンジオキシチオフェン))を1重量%の濃度になるように水に溶解させた塗工液(正孔注入材料インキ)を調製し、この塗工液を凸版印刷法によりパタ一ン印刷することによって、正孔注入層404aを、厚さ40nmの高分子材料層として形成したものである。正孔注入層404a以外の部分は、実施例1の構成と同ーとした。従ってこの実施例2の構造においては、低分子材料層として形成された正孔輸送層404bが、いずれも高分子材料層として形成された正孔注入層404aと有機発光層404cとの間に挟まれた構成となっている。
【0059】
こうして製作した実施例2のパッシブ型有機ELディスプレイデバイスは、画素電極間の短絡がなく、選択した画素のみを点灯でき、発光ムラの無い良好なディスプレイデバイスであることが判明した。その輝度は、印加電圧を6Vとしたときに150cd/mであった。また、その初期輝度を400cd/mに設定して計測した輝度半減時間は2000時間であった。さらに、気温85℃、湿度90%の高温高湿下で400時間放置した後、顕微鏡で画素を観察した結果、結晶の析出による非発光箇所はなく、選択した画素のみを点灯でき、発光ムラは無なかった。
【0060】
<比較例>
更に、実施例1に対する比較例として、本発明に係る有機ELデバイスには該当しない構成の有機ELディスプレイデバイスを製作した。この比較例は、実施例1の構成において、有機発光層404cを高分子材料であるPPV誘導体で形成したことに替えて、キシレン85%及びアニソール15%から成る混合溶媒に、低分子材料であるペリレン誘導体を1重量%の濃度になるように溶解させた塗工液(有機発光材料インキ)を調製し、この塗工液を凸版印刷法によりパタ一ン印刷することによって、有機発光層404cを厚さ80nmの高分子材料層として形成したものである。有機発光層404c以外の部分は、実施例1の構成と同ーとした。従って、この実施例2の構造においては、3層の積層体構成要素層404a、404b、404cの全てが低分子材料層として形成されており、高分子材料層として形成された積層体構成要素層が存在しないため、本発明に係る有機ELデバイスには該当しない構成となっている。
【0061】
こうして製作した比較例のパッシブ型有機ELディスプレイデバイスは、その輝度が、印加電圧を6Vとしたときに170cd/mであった。しかしながら、白濁箇所が多数存在しており、また、短絡が発生していたため、選択した画素のみを点灯することは困難であった。
【0062】
一般に積層体構成要素層の材料に関しては、低分子材料の方が高分子材料より材料の種類が多く、また、低分子材料は多層化することによって電子ないし正孔の輸送がスムーズになり再結合確率を向上させることができるため、積層体構成要素層の材料として低分子材料を用いた有機ELデバイスは、高分子材料を用いた有機ELデバイスと比べて、発光効率及びデバイス寿命の改善が期待される。しかしながら、上述した比較例からも明らかなように、低分子材料層として形成された積層体構成要素層は、形成後に凝集や結晶化が進み、電流リーク、短絡、ダークスポットなどが発生するおそれがある。特に、低分子材料層をウエットプロセスにより形成した場合には、これらの欠陥が顕著に発生する傾向がある。しかるに、本発明においては、低分子材料により成膜した積層体構成要素層の表面に、凝集の発生しにくい高分子材料の積層体構成要素層を成膜するようにしており、これによって、低分子材料層の表面に結晶化及び凝集が発生することが抑制されている。そのため、積層体構成要素層を、低分子材料を用いてウエットプロセスで形成することが可能となっている。ウエットプロセスを採用することで、大画面の有機ELディスプレイデバイスを容易に製造することができ、またウエットプロセスのうちでも特に、凸版印刷法を用いることにより、有機ELデバイスの生産性を顕著に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る有機ELデバイスの一例を示した模式的断面図である。
【図2】本発明に従って構成したパッシブマトリックスタイプの有機ELディスプレイデバイスの一例を示した模式的断面図である。
【図3】積層体構成要素層を形成するための塗工液を、画素電極及び絶縁層が形成されたデバイス基板(被印刷基板)上にパターン印刷するために使用する凸版印刷機の具体例を示した概略図である。
【図4】本発明に係る有機ELデバイスの実施例を示した模式的断面図である。
【符号の説明】
【0064】
100,200,400 有機ELデバイス
101,201,401 デバイス基板
102,202,402 第1電極層
103,204,403 発光媒体積層体
103a,204a,404a 正孔注入層
103b,204b,404b 正孔輸送層
103c,204c,404c 有機発光層
103d,204d 電子輸送層
103e,204d,404e 電子注入層
104,205,404 第2電極層
203,403 絶縁層
301 インキタンク
302 インキチャンバー
303 アニロックスロール
303a インキ層
304 版
305 版胴
306 平台
307 デバイス基板(被印刷基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス基板と、該デバイス基板上に形成された第1電極層と、該第1電極層上に形成された発光媒体積層体と、該発光媒体積層体上に形成された第2電極層とを備え、
前記第1電極層と前記第2電極層とは、それらの一方が透明電極を構成し他方が対向電極を構成しており、
前記発光媒体積層体は複数の積層体構成要素層を積層して形成されており、
前記複数の積層体構成要素層が、有機エレクトロルミネッセンス材料から成る有機発光層を含んでおり、前記透明電極と前記対向電極との間に電圧を印加することによって前記有機発光層が発光するようにしてあり、
前記複数の積層体構成要素層が、重量平均分子量が1000以下の低分子材料から成る低分子材料層として形成された層と、重量平均分子量が1000より大きい高分子材料から成る高分子材料層として形成された層とを含んでおり、少なくとも1層の前記低分子材料層と少なくとも1層の前記高分子材料層とがそれらの表面を互いに接して積層されている、
ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【請求項2】
前記発光媒体積層体において1層の前記低分子材料層が2層の前記高分子材料層の間に挟まれていることを特徴とする請求項2記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【請求項3】
前記有機エレクトロルミネッセンスデバイスがディスプレイデバイスであることを特徴とする請求項1又は2記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【請求項4】
前記低分子材料層をウエットプロセスにより形成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法。
【請求項5】
上記ウエットプロセスが凸版印刷法であることを特徴とする請求項4記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−242816(P2007−242816A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61829(P2006−61829)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】