説明

有機エレクトロルミネッセンス光源装置、複層フィルム及びそれらの製造方法

【課題】高い光取出効率を有し、その光取出効率の経時的な低下を抑制できる有機EL光源装置を提供する。
【解決手段】出光面側から順に、第一の透明電極層121、発光層122、第二の透明電極層123、粘着層130及び反射層143をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス光源装置100であって、反射層143は、反射層143の粘着層側に凹凸面143Uを有し、粘着層130は、水酸基を含有するアクリルポリマー及び無機微粒子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス光源装置、当該有機エレクトロルミネッセンス光源装置の製造用の複層フィルム、及び、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、適宜「有機EL素子」という。)を備えた光源装置である有機エレクトロルミネッセンス光源装置(以下、適宜「有機EL光源装置」という。)において、従来、その出光面に対して反対側に凹凸を付与した反射層を設けて、光取出効率を向上させる試みがなされている(特許文献1参照)。また、光取出効率を更に向上させるために、有機EL素子と反射層との間の層の屈折率を規定した検討もなされている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4506904号公報
【特許文献2】特開2010−73667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、有機EL光源装置の光取出効率が経時的に低下する傾向があった。そこで、高い光取出効率を有し、その光取出効率の経時的な低下を抑制できる有機EL光源装置を望まれていた。
本発明は前記の課題に鑑みて創案されたもので、高い光取出効率を有し、その光取出効率の経時的な低下を抑制できる有機EL光源装置、当該有機EL光源装置の製造用の複層フィルム、及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上述した課題を解決するべく鋭意検討した結果、有機EL素子と粘着層と反射層とをこの順に有する有機EL光源装置において、反射層の粘着層側に凹凸面を設け、且つ、粘着層に水酸基を含有するアクリルポリマー及び無機微粒子を含ませることにより、光取出効率を向上させることができ、且つ、その光取出効率を長期間高く維持することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔8〕を要旨とする。
【0006】
〔1〕 出光面側から順に、第一の透明電極層、発光層、第二の透明電極層、粘着層及び反射層をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス光源装置であって、
前記反射層は、前記反射層の前記粘着層側に凹凸面を有し、
前記粘着層は、水酸基を含有するアクリルポリマー及び無機微粒子を含む、有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
〔2〕 前記粘着層において、アクリル酸の含有量が前記アクリルポリマーに対して3重量%以下である、〔1〕に記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
〔3〕 前記粘着層の屈折率が1.65以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
〔4〕 前記反射層は、銀及びアルミニウムのうち少なくとも一種類を含む、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
〔5〕 前記凹凸面の平均傾斜角が17°〜45°である、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
〔6〕 〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置の製造用の複層フィルムであって、
前記反射層と、前記粘着層と、前記粘着層から剥離可能なセパレーターフィルムとをこの順に有する複層フィルム。
〔7〕 〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置の製造方法であって、
〔6〕記載の複層フィルムから前記セパレーターフィルムを剥がし、
前記粘着層と、前記第一の透明電極層、前記発光層及び前記第二の透明電極層をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子とを貼り合わせることを含む、有機エレクトロルミネッセンス光源装置の製造方法。
〔8〕 〔6〕記載の複層フィルムの製造方法であって、
前記セパレーターフィルムの表面に前記粘着層を形成し、
前記粘着層と前記反射層とを貼り合わせることを含む、複層フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス光学装置は、高い光取出効率を有し、その光取出効率の経時的な低下を抑制できる。
本発明の複層フィルムによれば、高い光取出効率を有し、その光取出効率の経時的な低下を抑制できる有機エレクトロルミネッセンス光学装置を製造できる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス光学装置の製造方法によれば、高い光取出効率を有し、その光取出効率の経時的な低下を抑制できる有機エレクトロルミネッセンス光学装置を製造できる。
本発明の複層フィルムの製造方法によれば、高い光取出効率を有し、その光取出効率の経時的な低下を抑制できる有機エレクトロルミネッセンス光学装置の製造に用いる複層フィルムを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態に係る有機EL光源装置の層構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の第一実施形態に係る有機EL光源装置の反射部材の一部を模式的に示す斜視図である。
【図3】図3は、図2に示す反射部材を、線2Aを通る平面で切断した断面を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の第一実施形態に係る有機EL光源装置の製造方法を説明する図であって、反射部材の製造方法を模式的に示す図である。
【図5】図5は、本発明の第一実施形態に係る有機EL光源装置の製造方法を説明する図であって、反射部材の製造方法を模式的に示す図である。
【図6】図6は、本発明の第一実施形態に係る有機EL光源装置の製造方法を説明する図であって、反射部材の製造方法を模式的に示す図である。
【図7】図7は、本発明の第一実施形態に係る有機EL光源装置の製造方法を説明する図であって、反射部材の製造方法を模式的に示す図である。
【図8】図8は、本発明の第一実施形態に係る有機EL光源装置の製造方法を説明する図であって、有機EL光源装置の製造用の複層フィルムの製造方法を模式的に示す図である。
【図9】図9は、本発明の第一実施形態に係る有機EL光源装置の製造方法を説明する図であって、有機EL光源装置の製造用の複層フィルムの製造方法を模式的に示す図である。
【図10】図10は、本発明の第一実施形態に係る有機EL光源装置の製造方法を説明する図である。
【図11】図11は、本発明の第二実施形態に係る有機EL光源装置の層構成を模式的に示す断面図である。
【図12】図12は、本発明の第三実施形態に係る有機EL光源装置の層構成を模式的に示す断面図である。
【図13】図13は、本発明の第四実施形態に係る有機EL光源装置の反射部材の一部を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。また、以下の説明において基板とは、剛直な部材だけでなく、樹脂フィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0010】
〔1.第一実施形態〕
図1は、本発明の第一実施形態に係る有機EL光源装置の層構成を模式的に示す断面図である。本明細書においては、別に断らない限り、有機EL光源装置は、有機EL光源装置の発光層を水平にして装置の出光面を上に向けて載置した状態において説明する。したがって、別に断らない限り、以下の記載において「水平面」は発光層の主面と平行な面であり、光源装置の上側は出光面側となり、下側は出光面と反対側となる。また、通常は発光層の主面は有機EL光源装置の出光面と平行である。さらに、本明細書において、各構成要素が「平行」又は「垂直」であるとは、本発明の効果を損ねない範囲の誤差を含んでいてもよく、例えば、平行又は垂直な角度から±5°の誤差を含んでいてもよい。
【0011】
図1に示すように、有機EL光源装置100は、有機EL素子110と、粘着層130と、粘着層130を介して有機EL素子110の下側に粘着された反射部材140とを備えている。有機EL素子110は、封止基板111と、封止基板111の下側に設けられた発光素子120と、発光素子120の下側に設けられた基板112とを備える。また、発光素子120は、上側から順に第一の透明電極層121、発光層122及び第二の透明電極層123を備える。
【0012】
反射部材140は、反射基板141と、反射基板141の上面に設けられ凹凸構造を有する凹凸構造層142と、凹凸構造層142の上面に設けられた反射層143とを備える。反射層143は、粘着層130を介して基板112の下側に粘着されている。したがって、本実施形態の有機EL光源装置100は、出光面側から順に、封止基板111、第一の透明電極層121、発光層122、第二の透明電極層123、基板112、粘着層130、反射層143、凹凸構造層142及び反射基板141を、この順に有する。
【0013】
(1−1.基板及び封止基板)
封止基板111及び基板112は、発光素子120を封止している。これにより、有機EL光源装置100の使用に際し、発光素子120が外気の酸素、水分等と接触することにより劣化することを防止することができるようになっている。
【0014】
封止基板111及び基板112としては、透明の材料を用いる。ここで透明とは、光学部材として用いるのに適した程度の光線透過率を有する意味である。本実施形態においては、当該透明な部材が通常80%以上の全光線透過率を有する場合、透明として取り扱うものとする。具体例を挙げると、ガラス基板、石英ガラス基板、およびプラスチック基板などの、有機EL発光素子の基板として通常用いうる基板が挙げられる。封止基板111を構成する材料は、基板112を構成する材料と同一でもよく、異なっていてもよい。封止基板111及び基板112の厚さは、いずれも、例えば0.01mm〜5mmとしてもよい。
【0015】
(1−2.発光素子)
発光素子120は、第一の透明電極層121、発光層122、及び第二の透明電極層123をこの順に備え、第一の透明電極層121及び第二の透明電極層123から供給される電力によって発光層122が発光するようになっている。
【0016】
第一の透明電極層121及び第二の透明電極層123は、それぞれ、発光層122よりも出光面111Uに近い位置及び反射層143に近い位置に位置し、どちらか一方が陽極として機能し、他方が陰極として機能する。これらを構成する材料は、特に限定されず有機EL発光素子の透明電極として用いられる既知の材料を適宜選択してもよい。また、第一の透明電極層121及び第二の透明電極層123の間には、発光層122に加えて、例えばホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層及びガスバリア層等の他の層(図示せず。)をさらに有していてもよい。
【0017】
第一の透明電極層121と第二の透明電極層123の材料としては、例えば、金属薄膜、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、SnOなどを挙げることができる。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0018】
発光素子120の具体的な層構成としては、例えば、陽極/正孔輸送層/発光層/陰極の構成、陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極の構成、陽極/正孔注入層/発光層/陰極の構成、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極の構成、陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/等電位面形成層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極の構成、陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/電荷発生層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極の構成などが挙げられる。
【0019】
発光素子120は、発光層122を陽極と陰極との間に有する。この際、発光層122は、1層のみを備える単層構造の層としてもよいが、2層以上の層を備える複層構造の層としてもよい。また、発光層122として、複数の発光色が異なる層の積層体、あるいはある色素の層に異なる色素がドーピングされた混合層を用いてもよい。
【0020】
各層の材料は特に限定されるものではなく、また材料の種類は1種類でもよく2種類以上でもよい。発光層122に含まれる材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン系、ポリフルオレン系、およびポリビニルカルバゾール系などの材料を挙げることができる。また、正孔注入層及び正孔輸送層に含まれる材料としては、例えば、フタロシアニン系、アリールアミン系、およびポリチオフェン系などの材料を挙げることができる。電子注入層及び電子輸送層に含まれる材料としては、例えば、アルミ錯体およびフッ化リチウムなどが挙げられる。等電位面形成層、あるいは電荷発生層としては、例えば、ITO、IZO、SnOなどの透明電極、あるいはAg、Alなどの金属薄膜が挙げられる。
【0021】
第一の透明電極層121、発光層122及び第二の透明電極層123、並びに発光素子120を構成するその他の任意の層は、例えば、封止基板111又は基板112の表面にこれらを順次積層することにより設けることができる。これら各層の厚さは、例えば、10nm〜1000nmとしてもよい。
【0022】
(1−3.粘着層)
粘着層130は、粘着性を有する材料によって形成された層である。ここで粘着性を有する前記の材料は、その使用温度において粘着性を示す材料であり、例えば、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤を使用しうる。粘着層130の上側で接する層(本実施形態では基板112)と反射層143とを粘着層130が粘着することにより、反射部材140を有機EL素子110に対して固定できるようになっている。また、粘着層130は柔軟な層であり、粘着層130を反射層143の凹凸面143Uに圧接した場合には、粘着層130が凹凸面143Uの凹部144(図2参照)に進入して、凹凸面143Uの全体で密着できるようになっている。
【0023】
粘着層130は、水酸基(即ち、−OH基)を含有するアクリルポリマーを含む。アクリルポリマーが水酸基を含有することにより、金属、ガラス、金属化合物(ITO等)などの無機材料に対する粘着層130の密着性が高まり、粘着層130を有機EL素子110及び反射部材140から剥がれ難くすることができる。また、前記の粘着層130の高い密着性は、時間が経過しても低下し難い。このため、粘着層130の剥離による光取出効率の経時的な低下を抑制できる。水酸基により密着性を向上させられる理由は必ずしも定かではないが、無機材料の表面に存在する極性基に水酸基が結合することにより、前記のような高い密着性が実現できているものと推察される。
【0024】
また、水酸基はカルボキシル基(−COOH基)等とは異なり金属を腐食させ難い。このため、粘着層130に密着する反射層143が金属により形成されていた場合でも、腐食による反射層143の反射率の低下が生じ難いので、反射層143の反射率の低下による光取出効率の経時的な低下を抑制できる。
【0025】
また、アクリルポリマーが水酸基を含有することにより、分子を架橋させることが出来る。架橋することにより、粘着剤の凝集力が高まり、耐熱性、耐湿特性が向上する。
【0026】
さらに、アクリルポリマーが水酸基を含有することにより、粘着層130に含まれる無機微粒子の分散性を向上させることができる。このため、無機微粒子が凝集して塊状になることを防止して、無機微粒子によって安定して粘着層130の屈折率を調整させることができる。
【0027】
アクリルポリマーとは、アクリル酸又はアクリル酸誘導体の重合体を意味する。また、アクリルポリマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。本実施形態ではアクリルポリマーは水酸基を含有するため、本実施形態に係るアクリルポリマーは、通常、水酸基を含有するアクリルモノマーを重合した重合体となる。したがって、本実施形態に係るアクリルポリマーは、通常、水酸基を含有するアクリルモノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0028】
水酸基を含有するアクリルモノマーの例を挙げると、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を含有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。また、水酸基を含有するアクリルモノマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0029】
また、本実施形態に係るアクリルポリマーは、水酸基を含有するアクリルモノマーと、当該アクリルモノマーに共重合可能なモノマーとの共重合体であってもよい。したがって、本実施形態に係るアクリルポリマーは、水酸基を含有するアクリルモノマーに共重合可能なモノマーに由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0030】
水酸基を含有するアクリルモノマーに共重合可能なモノマーの例を挙げると、カルボキシル基等の酸性基を含まないモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン系モノマー、ビニル系モノマーなどが挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、およびグリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0032】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレンおよびオクチルスチレン等のアルキルスチレン;フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレンおよびヨードスチレン等のハロゲン化スチレン;ニトロスチレン、アセチルスチレンおよびメトキシスチレンなどが挙げられる。
【0033】
ビニル系モノマーとしては、例えば、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ジビニルベンゼン、酢酸ビニルおよびアクリロニトリル;ブタジエン、イソプレンおよびクロロプレン等の共役ジエンモノマー;塩化ビニルおよび臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデンなどが挙げられる。
【0034】
また、水酸基を含有するアクリルモノマーに共重合可能なモノマーのうち、酸性基を含むモノマーの例を挙げると、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、スチレンスルホン酸などが挙げられる。
【0035】
ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸を意味する。また、水酸基を含有するアクリルモノマーに共重合可能なモノマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0036】
上述した水酸基を含有するアクリルモノマーに共重合可能なモノマーとしては、酸性基を含まないモノマーを用いることが好ましい。酸性基は、反射層143の金属を腐食させたり、無機微粒子の分散を妨げたりする可能性があるためである。
【0037】
水酸基を含有するアクリルモノマーは、全モノマー(すなわち、水酸基を含有するアクリルモノマーとそれに共重合可能なモノマーとの合計)の量を100重量部として、通常2.0重量部以上、好ましくは5.0重量部以上、より好ましくは7.0重量部以上であり、通常50重量部以下、好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下である。水酸基を含有するアクリルモノマーの量を十分に確保して、上述した水酸基による作用を安定して発揮させるためである。また、通常は、アクリルポリマーに含まれる全ての繰り返し単位を100重量部とした場合の、水酸基を含有するアクリルモノマーに由来する繰り返し単位の量も、前記のモノマーの範囲と同様となる。
【0038】
水酸基を含有するアクリルポリマーの重量平均分子量は、通常10万以上、好ましくは30万以上、より好ましくは50万以上であり、通常200万以下、好ましくは150万以下、より好ましくは100万以下である。これにより、粘着層を形成したフィルムの打ち抜き、再剥離等を好適に行うことが出来る。水酸基を含有するアクリルポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。
【0039】
アクリルポリマーの合成は、公知の重合方法によって行ってもよい。例えば、モノマーを有機溶剤に溶解または分散させ、この溶液または分散液を窒素ガスなどの不活性ガスで置換された反応器中で反応させることにより、アクリルポリマーを製造することができる。
【0040】
また、粘着層130は、無機微粒子を含む。無機微粒子は粘着層130に分散しており、粘着層130の屈折率を高める作用を奏する。粘着層130の屈折率を高めることにより、粘着層130と、粘着層130に上側で接触する層(本実施形態では基板112)との界面112Dにおいて屈折率差を小さくできるので、界面112Dにおける光の反射を低減させることが可能である。発光層122で発生した光の界面112Dでの反射を低減させることにより、反射層143での反射による光取出効率の向上の効果を高めることができる。
【0041】
粘着層130の具体的な屈折率の範囲は、1.65以上が好ましく、1.70以上がより好ましく、1.75以上が特に好ましく、また、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.2以下が特に好ましい。
【0042】
無機微粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、5酸化タンタル、チタン酸バリウム、窒化珪素、ITO、IZOなどの微粒子が好適に使用できる。また、無機微粒子は、1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0043】
無機微粒子には、粘着層130における分散性を高めるため、表面処理を施すことが好ましい。表面処理の例を挙げると、適切な表面処理剤で無機微粒子の表面を被覆する処理などが挙げられる。
表面処理剤の例を挙げると、シランカップリング剤;金属キレート剤;水酸基、リン酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基等を無機微粒子への吸着成分とし、ポリエステル、ポリエーテル、アクリル、ウレタン、エポキシ、シリコーン等を主骨格とした有機分散剤;重合性官能基を有するイソシアネート化合物などが挙げられる。これらの中で、シランカップリング剤、重合性官能基を有するイソシアネート化合物が好適である。
【0044】
シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0045】
重合性官能基を有するイソシアネート化合物としては、例えば、アクリロキシメチルイソシアネート、メタクリロキシメチルイソシアネート、アクリロキシエチルイソシアネート、メタクリロキシエチルイソシアネート、アクリロキシプロピルイソシアネート、メタクリロキシプロピルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。
なお、表面処理剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0046】
無機微粒子の一次粒径は、メジアン径で、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、更に好ましくは15nm以上であり、通常150nm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは80nm以下である。一次粒径を前記範囲の下限値以上とすることによって無機微粒子の分散安定性を良好にすることができ、上限値以下とすることによって粘着層130の透明度を高くすることができる。なお、無機微粒子の一次粒径としてのメジアン径は、動的光散乱法によって測定できる。
【0047】
粘着層に含まれる無機微粒子の量は、水酸基を含有するアクリルポリマー100重量部に対して、通常50重量部以上、好ましくは60重量部以上、更に好ましくは65重量部以上であり、通常90重量部以下、好ましくは80重量部以下、更に好ましくは75重量部以下である。無機微粒子の量を前記範囲の下限値以上とすることによって粘着層130の屈折率を効果的に高めることができ、上限値以下とすることによって粘着層130の透明性を高くすることができる。
【0048】
粘着層130には、本発明の効果を著しく損なわない限り、水酸基を含有するアクリルポリマー及び無機微粒子以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、水酸基を含まないアクリルポリマー、架橋剤、任意の添加剤等が挙げられる。ただし、これらの成分についても、酸性基を含有しないものが好ましい。また、これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0049】
架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、金属キレート系化合物、メラミン系化合物、多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、ポリイソシアネート化合物、多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0050】
ポリイソシアネート系化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの二重体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0051】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基を意味する。少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の具体例を挙げると、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,2一エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4一ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6一ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12一ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0052】
添加剤としては、例えば、粘着付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、帯電防止剤、難燃剤などが挙げられる。
【0053】
粘着層130において、アクリル酸の含有量は、水酸基を含有するアクリルポリマーに対して3重量%以下が好ましく、1.5%以下がより好ましく、理想的には0%が特に好ましい。水酸基を含有するアクリルポリマーを製造する際、例えば未反応のモノマーが残留することなどにより、生成物にアクリル酸が含まれることがある。このアクリル酸が粘着層130に残ると、粘着層130に接する層に含まれる金属がアクリル酸によって腐食され、有機EL光源装置100の光取出効率が経時的に低下したり、有機EL光源装置100から取り出される光の色味が黄色味を帯びたりする可能性がある。このため、粘着層130におけるアクリル酸の含有量は、前記のように少ないことが好ましい。また、無機微粒子が表面処理剤によって表面処理されている場合、表面処理剤の種類によっては酸性基と反応してゲルを生じるものがありえるが、アクリル酸を減らすことにより、前記のゲルの発生を抑制して無機微粒子の分散性を向上できる利点も得られる。
このようにアクリル酸の含有量を減らすためには、例えば、水酸基が含むアクリルポリマーの材料となるモノマーを適切に選択したり、アクリルポリマーの合成後にアクリル酸を抽出して取り除いたりしてもよい。
【0054】
粘着層130の厚みは、反射層に形成される凹凸層の高さを100とした場合に、好ましくは110以上、より好ましくは120以上、更に好ましくは130以上であり、好ましくは200以下、より好ましくは190以下、更に好ましくは180以下である。
【0055】
(1−4.反射層)
反射層143は、粘着層130と他の層を介することなく直接に接している層であり、凹凸面143Uを有する。凹凸面143Uは、反射層143の上側の面であり、したがって反射層143の粘着層側の表面であるので、反射層143と粘着層130とはこの凹凸面143Uにおいて密着している。
【0056】
有機EL光源装置100では、発光層122が発光した光の一部は、入射角が大きいために出光面111Uで内部反射することがある。しかし、そのような光でも、反射層143の凹凸面143Uで反射される際に拡散されることにより、出光面111Uへの入射角が小さくなって出光面111Uを透過できるようになる。このように、反射層143を設けることにより出光面111Uを透過できる光を増やせるので、光取出効率を向上させることができる。
【0057】
凹凸面143Uを有する反射層143は、例えば図1に示すように、反射基板141の上面に凹凸構造を有する凹凸構造層142を設け、さらにその凹凸構造層142の表面に均等な膜厚で反射層143を形成することで、構成することができる。この場合、通常は、反射基板141の主面は発光層122の主面と平行になる。
【0058】
反射基板141を構成する材料としては、例えば、封止基板111及び基板112を構成する材料と同様のものを挙げることができる。中でも、取り扱いの容易さから、樹脂基板であることが好ましい。また、凹凸構造層142を形成する際に光硬化性の樹脂を用いる場合には、反射基材141は透明であることが好ましい。
【0059】
凹凸構造層142は、通常、透明樹脂により形成する。透明樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等を挙げることができる。なかでも、熱可塑性樹脂は熱による変形が容易であるため、また紫外線硬化性樹脂は硬化性が高く効率が良いため、それぞれ凹凸構造層142の効率的な形成が可能となり、好ましい。
【0060】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系、ポリアクリレート系、シクロオレフィンポリマー系等の樹脂を挙げることができる。また紫外線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、エン/チオール系、イソシアネート系等の樹脂を挙げることができる。これらの樹脂としては、複数個の重合性官能基を有するものが好ましい。なお、前記の樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0061】
反射層143の材料としては例えば金属が挙げられる。反射層143を金属によって形成することにより、空気中の酸素及び水分が発光素子120へ侵入することを遮断する役割を、基板112に加えて反射層143においても果たすことができる。中でも、反射層143の材料としては、アルミニウム及び銀のうち少なくとも一種類を用いることが好ましい。反射層143による反射率を効果的に高めることができるからである。さらに、金属による光の吸収を抑制して特に高い反射率を実現する観点からは銀が好ましい。また、安価であることから反射層143の厚みを厚くしてバリア性を容易に向上させることが可能である観点からはアルミニウムが好ましい。
【0062】
この際、反射層143の材料は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、反射層143は、1層のみからなる単層構造の層にしてもよく、2層以上の層からなる複層構造の層にしてもよい。例えば、反射層143を銀の層とアルミニウムの層とを組み合わせた複層構造の層とし、更に、銀の層が凹凸面143Uに露出するようにしてもよい。これにより、銀の高い反射率と、アルミニウムの優れたバリア性とを両方とも活用できる。したがって、反射性能と封止性能の両立を図ることができるとともに、反射層143全体としての厚みを抑えることができる。
【0063】
図2は、本発明の第一実施形態に係る有機EL光源装置の反射部材140の一部を模式的に示す斜視図である。図3は、図2に示す反射部材140を、線2Aを通る平面で切断した断面を模式的に示す断面図である。
図2及び図3に示すように、反射層143の凹凸面143Uは凹凸構造を有するため、水平面に対して平行でない斜面144A〜144Dを有する。これらの斜面144A〜144Dでの反射により光が拡散されて、発光層122から発せられた光の出光面111Uへの入射角度を小さくできるので、有機EL光源装置100の光取出効率を向上させられるようになっている。
【0064】
光取出効率を更に高める観点からは、反射層143の凹凸面143Uの平均傾斜角は、好ましくは17°以上、より好ましくは20°以上、特に好ましくは25°以上であり、好ましくは45°以下、より好ましくは40°以下、特に好ましくは35°以下である。ここで平均傾斜角とは、凹凸面143Uと、有機EL光源装置100の水平面となす角度θの平均値である。
【0065】
本実施形態では、図2に示すように、凹凸面143Uが有する凹凸構造は、正四角錐状の凹部144が面内の直交する2方向に並んで設けられた形状となっている。ここで例えば、凹部144の正四角錐の底面の一辺の長さLが0.1mmであり、凹部144の深さ(即ち、正四角錐の高さ)Hが0.05mmであるとすると、凹部144の4つの斜面144A〜144Dはすべて、水平面に対して45°の角度θをなすこととなる。また、この場合に凹部144のピッチPが0.1mmであるとすると、凹凸面143Uは前記の斜面144A〜144D以外の面を有さないことになるので、その場合、反射層143の凹凸面143Uの平均傾斜角は45°となる。
【0066】
また、凹凸面143Uの凹凸構造が、例えば多面体あるいは曲面などのように、さらに複雑な形状である場合には、前記の平均傾斜角は、以下の通り規定する。すなわち、凹凸面143Uを、凹凸構造の単位(本実施形態では、凹部144)よりも十分に小さいn個の微小面積に分割し、それぞれの微小面積をΔSとした場合に、前述のΔSが基板平面となす角度の値をθとして、平均傾斜角は
【0067】
【数1】

【0068】
で規定する。ここで
【0069】
【数2】

【0070】
は、反射層143の凹凸面143Uの全面積を表す。
【0071】
(1−5.主な利点)
本発明の第一実施形態に係る有機EL光源装置100は以上のように構成されている。したがって、その使用時には、第一の透明電極層121及び第二の透明電極層123に電圧を印加することにより、発光層122を発光させる。発光層122で生じた光の一部分は第一の透明電極層121及び封止基板111を透過し、出光面111Uを通って有機EL光源装置100の外部へと出光する。生じた光のそれ以外の部分は、様々な経路をとり得るが、例えば第二の透明電極層123を透過した後、基板112及び粘着層130を透過して反射層143の凹凸面143Uに達し、この凹凸面143Uで反射されて上向きの経路を辿り、出光面111Uから出光する。さらに、反射層143の凹凸面143Uにおける反射以外にも、封止基板111から粘着層130までの各層の間の界面においてもそれぞれ反射が発生しうるが、このうち封止基板111から粘着層130までの各層の間の界面で下向きに反射した光は、反射層143の凹凸面143Uにより進行方向の変更を受けて、有機EL光源装置100の外部へと出光する。有機EL光源装置100では、反射層143の凹凸面143Uでの反射の際に、光が拡散されるので、光取出効率を高めることが可能となっている。
【0072】
また、反射層143の凹凸面143Uが非平面であるために、発光層122と反射層143との距離が一定でない。このため、通常は、封止基板111から粘着層130までの各層の間における光の干渉を抑制できる。したがって、前記の干渉による光量の低減を抑制し、光取出効率を高めることが可能である。
【0073】
また、粘着層130が無機微粒子を含むため、粘着層130の屈折率が高くなる。粘着層130と基板112の屈折率差が近い材料を用いると、界面112Dにおける光の反射を低減させることができる。このため、出光面111Uと界面112Dとの両方で反射されて有機EL光源装置100から取り出せなくなる光の量を低減させられるので、反射層143での反射による光取出効率の向上の効果を高めることができる。
【0074】
また、粘着層130が水酸基を含有するアクリルポリマーを含むので、粘着層130の基板112及び反射層143への密着性を高め、粘着層130の剥離による光取出効率の経時的な低下を抑制できる。
【0075】
さらに、水酸基を含有するアクリルポリマーは金属の腐食、無機微粒子の分散性の低下、ゲルの発生などを生じ難いので、長期間にわたって高い光取出効率を維持することができる。
ここで、反射層143に含まれる金属の腐食を防止するための技術としては、反射層143の凹凸面143Uに保護層を設けることも考えられる。しかし、その場合には保護層の分だけコストが上昇する。また、粘着層130と保護層との屈折率差を小さくする観点から、保護層の屈折率の範囲が制限されるため、保護層の材料選択の自由度が低くなる。これに対し、本実施形態の有機EL光源装置100によれば前記のような課題は無いため、好ましい。
【0076】
(1−6.製造方法)
本実施形態の有機EL光源装置100は、例えば、反射層143と、粘着層130と、粘着層130から剥離可能なセパレーターフィルム151(図8参照)とをこの順に有する複層フィルム160(図9参照)を用意し、この複層フィルム160からセパレーターフィルム151を剥がし、露出した粘着層130と有機EL素子110とを貼り合わせることを含む製造方法によって製造できる。
また、前記の複層フィルム160は、セパレーターフィルム151の表面に粘着層130を形成し、粘着層130と反射層143とを貼り合わせることを含む製造方法により、製造できる。
以下、これらの製造方法について、図面を参照して説明する。
【0077】
図4から図7は、いずれも、本発明の第一実施形態に係る有機EL光源装置100の製造方法を説明する図であって、反射部材140の製造方法を模式的に示す図である。
図4に示すように、反射部材140を製造する際には、まず、反射基板141の表面に透明樹脂を塗布し、透明樹脂の塗膜145を形成する。
【0078】
その後、図5に示すように、塗膜145に型146を押し当て、その状態で塗膜145を硬化させることにより、凹凸構造層142を得る。ここでは、矢印A1で示すように、反射基板141を通して塗膜145に光を照射することにより、塗膜145を硬化させているものとする。型146には、反射層143の凹凸面143Uの凹凸構造を反転させた形状の凹凸構造が形成されている。したがって、塗膜145が硬化した層である凹凸構造層142には、図6に示すように、反射層143の凹凸面143Uと同様の凹凸構造が転写される。
【0079】
その後、凹凸構造層142から型146を外し、図7に示すように、凹凸構造層142の表面に反射層143を形成する。反射層143の形成は、例えば矢印A2で示すように、凹凸構造層142の表面に金属材料を蒸着することによって行ってもよい。蒸着法は、大面積で均一な層を形成できる点で、好ましい。反射層143を形成することによって、反射基板141、凹凸構造層142及び反射層143をこの順に備える反射部材140が得られる。反射層143の厚みが均一であるので、反射層143の上面の形状は、凹凸構造層142の表面の形状と同様になる。そのため、反射層143の上面として、所望の凹凸構造を有する凹凸面143Uが形成される。
【0080】
図8及び図9は、いずれも、本発明の第一実施形態に係る有機EL光源装置100の製造方法を説明する図であって、有機EL光源装置100の製造用の複層フィルム160の製造方法を模式的に示す図である。
図8に示すように、複層フィルム160を製造する際には、粘着層130と、粘着層130から剥離可能なセパレーターフィルム151とをこの順に備える粘着フィルム150を用意する。この粘着フィルム150は、例えば、アクリルポリマー又はそのモノマーと、無機微粒子と、適切な溶媒と、必要に応じて用いられるその他の成分とを含む液状の組成物をセパレーターフィルム151の表面に塗布し、乾燥により塗膜から溶媒を除去し、必要に応じて塗膜中の成分を重合又は架橋させて塗膜を硬化させることによって製造できる。
【0081】
用意した粘着フィルム150は、図8に矢印A3で示すように、反射部材140に貼り合わせる。貼り合せの向きは、粘着フィルム150の粘着層130と、反射部材140の反射層143とが貼り合せられる向きにする。これにより、図9に示すように、反射基板141、凹凸構造層142、反射層143、粘着層130及びセパレーターフィルム151をこの順に備える複層フィルム160が製造される。こうして得られた複層フィルム160は、その用途に応じた形状の凹凸面143Uを有する反射層143を備えるので、層構成だけでなく凹凸面143Uの形状を特定することにより、有機EL光源装置100の製造用のフィルムであることが特定できる。
【0082】
その後、図10に示すように、複層フィルム160からセパレーターフィルム151を剥がしてから、露出した粘着層130を矢印A4で示すように有機EL素子110の基板112に貼り合わせるようにすることで、図1に示すような有機EL光源装置100が製造できる。
【0083】
ここで説明した製造方法によれば、本実施形態に係る有機EL光源装置100を容易に製造することができる。特に、粘着フィルム150と反射部材140とを貼り合わせることによって反射層143上に粘着層130を設けることは、有機EL光源装置100の光取出効率を向上させる点では効果的である。以下、この点について説明する。
反射層143上に粘着層130を形成する方法としては、例えば、粘着層130を形成するための組成物を反射層143上に塗布し、乾燥させて粘着層130を形成する方法も考えられる。しかし、この方法では液状の組成物が反射層143の凹凸面143Uの凹部144に浸入しきれず、微小な気泡が生じる可能性がある。また、溶媒を含む組成物では、当該組成物に含まれるアクリル酸等の酸及びカルボキシル基等の酸性基が反射層143に含まれる金属を腐食し易くなる可能性がある。特に、組成物を硬化させるために加熱したり紫外線を照射したりした場合には、前記の腐食が促進されるおそれがある。
これに対し、本実施形態のように粘着フィルム150と反射部材140とを貼り合わせることによって反射層143上に粘着層130を設けると、貼り合せの際に圧力をかけることで粘着層130を凹凸面143Uに容易に密着させることができるので、気泡の発生を防止できる。また、硬化後の粘着層130を貼り合わせるので、反射層143に含まれる金属の腐食を抑制することも可能である。有機EL素子110の劣化を防止するために、張り合わせ温度は、40℃以下であることが好ましい。
【0084】
なお、上述した製造方法では、更に別の工程を行ってもよい。例えば、反射部材140と粘着フィルム150とを貼り合わせる前に、反射層143の表面である凹凸面143Uの汚れを除去する工程を行ってもよい。汚れを除去する工程での処理としては、例えば、粘着ロールによる除去、プラズマ処理、コロナ処理、UVオゾン処理などが挙げられる。
【0085】
〔2.第二実施形態〕
図11は、本発明の第二実施形態に係る有機EL光源装置200の層構成を模式的に示す断面図である。図11に示すように、有機EL光源装置200は、有機EL素子210が封止基材112を備えず、粘着層130が他の層を介さずに第二の透明電極層123に直接粘着していること以外は、第一実施形態と同様である。
【0086】
この有機EL光源装置200でも、反射層143の凹凸面143Uでの反射の際に光が拡散されるので、光取出効率を高めることが可能である。また、粘着層130が無機微粒子を含むため、粘着層130の屈折率が高くなり、粘着層130と第二の透明電極層123との界面123Dにおける屈折率差を小さくできるので、反射層143での反射による光取出効率の向上の効果を高めることができる。さらに、粘着層130が水酸基を含有するアクリルポリマーを含むので、粘着層130の第二の透明電極層123及び反射層143への密着性を高め、粘着層130の剥離による光取出効率の経時的な低下を抑制できる。水酸基を含有するアクリルポリマーは、第二の透明電極層123の導電率の低下を生じ難いため、長期にわたって高い発光効率を得る事が出来る。また、本実施形態の有機EL光源装置200でも、第一実施形態の有機EL光源装置100と同様の利点を得ることができる。
【0087】
〔3.第三実施形態〕
図12は、本発明の第三実施形態に係る有機EL光源装置300の層構成を模式的に示す断面図である。図12に示すように、有機EL光源装置300は、反射部材340の凹凸構造層342として曲面を有する凹凸構造を有するものを採用し、この凹凸構造層342の表面に均等な膜厚で反射層343を設けることにより、反射層343の上面である凹凸面343Uが曲面を有するようにしたこと以外は、第一実施形態と同様である。本実施形態の有機EL光源装置300でも、第一実施形態の有機EL光源装置100と同様の利点を得ることができる。さらに、凹凸面343Uが曲面を有することにより、平面のみから構成される凹凸面を採用した場合に比べ、凹凸面343Uにおける反射方向がより拡散されたものとなり、光取出効率を更に高めることができる。また、通常は、出光面111Uを観察した際に、出光面111Uより観察者に近い位置に存在する事物の像が映り込むことを防止することができる。
【0088】
〔4.第四実施形態〕
図13は、本発明の第四実施形態に係る有機EL光源装置の反射部材440の一部を模式的に示す斜視図である。図13に示すように、本実施形態に係る有機EL光源装置の反射部材440は、凹凸構造層442として互いに平行に並んだ条列状の凹凸構造を有するものを採用し、この凹凸構造層442の表面に均等な膜厚で反射層443を設けることにより、反射層443の上面である凹凸面443Uも互いに平行に並んだ条列状となるようにしたこと以外は、第一実施形態と同様である。ここで条列状とは、角柱、円柱等の柱が平行に並んだ周期的な形状を意味する。図13においては、前記凹凸構造は三角柱が並んだ形状となっているので、当該三角柱が延在する方向と直交する平面で本実施形態に係る有機EL光源装置を切った断面は、図1に示す有機EL光源装置100と同様になる。本実施形態の有機EL光源装置でも、第一実施形態の有機EL光源装置100と同様の利点を得ることができる。
【0089】
〔5.他の変形例〕
上述した実施形態は、更に変更して実施してもよい。
例えば、反射層の凹凸面の形状は、前記の各実施形態における形状以外の形状にしてもよい。具体例を挙げると、凹部の形状を、図2に示したような正四角錐に代えて、正四角錐以外の角錐、角柱、角錐の一部である断面台形形状、円錐、球又は楕円回転体の一部等の形状としてもよい。また、例えば、これらの形状の凹部の代わりに凸部を設けるようにしてもよく、凹部と凸部とを組み合わせて設けてもよい。さらに、凹凸面には異なる形状の凹部又は凸部が混在していてもよく、大きさの異なる凹部又は凸部が混在していてもよく、隣り合う凹部又は凸部同士の間に間隔が空いていてもよい。ただし、これらの凹凸面の凹部又は凸部の高さHは、最も高い部分と低い部分との差として、0.3μm〜100μmとすることが好ましい。また、凹部又は凸部のピッチPは、通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、より好ましくは0.2μm以上であり、通常500μm以下、好ましくは450μm以下、より好ましくは400μm以下である。
【0090】
また、例えば、上述した実施形態では、反射部材として反射基材、凹凸構造層及び反射層を備える部材を示したが、反射部材は少なくとも反射層を備えていれば上述した実施形態よりも少ない層から構成されたものであってもよく、逆にこれらの層に加えて任意の層をさらに含むものであってもよい。
【0091】
さらに、例えば、上述した有機EL光源装置に、更に別の層を設けてもよい。その具体例を挙げると、有機EL素子を外気及び湿気から保護するガスバリア層、紫外線を遮断する紫外線カット層、光を拡散させる拡散層などが挙げられる。さらに、発光素子の縁部を封止する封止部材、電極層へ通電するための通電手段等、光源装置を構成する任意の構成要素を備えていてもよい。
【0092】
〔6.用途〕
本発明の有機EL光源装置の用途は特に限定されないが、高い光取出効率等の利点を生かし、例えば液晶表示装置のバックライト、照明装置などの光源としてもよい。
【実施例】
【0093】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施してもよい。なお、以下の説明において、量を示す「部」及び「%」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0094】
[有機EL素子の作製]
厚さ0.7mmの高屈折率のガラス基板(屈折率1.8)の一方の面上に、第一の透明電極層、有機発光層及び第二の透明電極層を含む発光素子を設けた。厚さ0.7mmのガラス製の封止基板(屈折率1.51)の一方の面上に、封止剤(屈折率1.53)を塗布した。封止基材の封止剤を塗布した面と、発光素子の第二の透明電極層側の面とを貼り合わせた。発光素子の周辺部に、第一の透明電極層及び第二の透明電極層への通電手段を設け、その周辺部を封止剤で封止して、有機EL素子を得た。
【0095】
[凹凸面を有する反射層の製造]
ポリエステルフィルム(東レ社製「ルミラーU34」)からなる反射基板の一方の面に、アクリル系紫外線硬化型樹脂(協立化学産業社製「ワールドロック5550」、屈折率n=1.53)を塗布し、塗膜を形成した。当該塗膜に所定の形状の金属型を圧接し、反射基板を通して紫外線を1000mJ/cmの積算光量で塗膜に照射して塗膜を硬化させた。これにより、反射基板の表面に、凹凸構造層が形成された。
【0096】
次いで、凹凸構造層から金型を剥がして、反射基板及び凹凸構造層を備える凹凸基板を得た。得られた凹凸基板の凹凸構造層の表面は凹凸のある凹凸面となっていて、当該凹凸面の凹凸構造は、図2及び図3に示すように、複数の正四角錐形状の凹部からなるものであった。凹部を構成する斜面が反射基板の表面に対してなす角度θは30°であった。また、凹部の底辺(すなわち、正四角錐の底辺)の長さLは20μmであった。さらに、凹部は凹凸構造層の表面の面内において直交する2方向に20μmのピッチPで配列されていた。得られた凹凸基板の凹凸面に、銀を厚み200nmで真空蒸着することにより、反射層を形成した。これにより、反射基板、凹凸構造層及び反射層をこの順で備えた反射部材を得た。この反射部材の反射層は、反射層の表面が、凹凸基板の凹凸面と同じ形状の凹凸面となっていた。
【0097】
[アクリル粘着剤塗工液の配合]
〔アクリル共重合体Aの製造〕
n−ブチルアクリレート80.0重量部、シクロヘキシルアクリレート10.0重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10.0重量部、および重合開始剤である2,2−アゾイソブチルニトリル0.4重量部を酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して、重量平均分子量90万のアクリル共重合体Aを得た。
【0098】
〔アクリル共重合体Bの製造〕
n−ブチルアクリレート80.0重量部、シクロヘキシルアクリレート10.0重量部、アクリル酸10.0重量部、および重合開始剤である2,2−アゾイソブチルニトリル0.4重量部を酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して、重量平均分子量90万のアクリル共重合体Bを得た。
【0099】
〔アクリル共重合体Cの製造〕
n−ブチルアクリレート80.0重量部、シクロヘキシルアクリレート10.0重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート7.0重量部、アクリル酸3.0重量部、および重合開始剤である2,2−アゾイソブチルニトリル0.4重量部を酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して、重量平均分子量90万のアクリル共重合体Cを得た。
【0100】
〔アクリル共重合体Dの製造〕
n−ブチルアクリレート80.0重量部、シクロヘキシルアクリレート20.0重量部、および重合開始剤である2,2−アゾイソブチルニトリル0.4重量部を酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して、重量平均分子量90万のアクリル共重合体Dを得た。
【0101】
〔配合液Aの調製〕
上記アクリル共重合体Aに、ZrOナノ粒子(株式会社ソーラー社製「ZR−010−02」、平均粒径33.7nm、メチルエチルケトン分散液)を、アクリル共重合体100重量部に対してZrOナノ粒子が70重量部になるように加え、酢酸エチルで固形分濃度が30重量部になるように希釈し、十分に攪拌した。得られた配合液にヘキサメチレンジイソシアネートを、アクリル共重合体100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネートが0.5重量部になるようにさらに加えて、十分に攪拌した。
【0102】
〔配合液Bの調製〕
上記アクリル共重合体Aに、TiOナノ粒子(ナガセケムテックス社製「NOD−742GTF」、平均粒径48nm、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル分散液)を、アクリル共重合体100重量部に対してTiOナノ粒子が70重量部になるように加え、酢酸エチルで固形分濃度が30重量部になるように希釈し、十分に攪拌した。得られた配合液にヘキサメチレンジイソシアネートを、アクリル共重合体100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネートが0.5重量部になるようにさらに加えて、十分に攪拌した。
【0103】
〔配合液Cの調製〕
上記アクリル共重合体Aに酢酸エチルを加え、固形分濃度が30重量部になるように希釈し、十分に攪拌した。得られた配合液にヘキサメチレンジイソシアネートを、アクリル共重合体100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネートが0.5重量部になるようにさらに加えて、十分に攪拌した。
【0104】
〔配合液Dの調製〕
上記アクリル共重合体Bに、ZrOナノ粒子(株式会社ソーラー社製「ZR−010−02」、平均粒径33.7nm、メチルエチルケトン分散液)を、アクリル共重合体100重量部に対してZrOナノ粒子が70重量部になるように加え、酢酸エチルで固形分濃度が30重量部になるように希釈し、十分に攪拌した。得られた配合液にヘキサメチレンジイソシアネートを、アクリル共重合体100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネートが0.5重量部になるようにさらに加えて、十分に攪拌した。
【0105】
〔配合液Eの調製〕
上記アクリル共重合体Cに、ZrOナノ粒子(株式会社ソーラー社製「ZR−010−02」、平均粒径33.7nm、メチルエチルケトン分散液)を、アクリル共重合体100重量部に対してZrOナノ粒子が70重量部になるように加え、酢酸エチルで固形分濃度が30重量部になるように希釈し、十分に攪拌した。得られた配合液にヘキサメチレンジイソシアネートを、アクリル共重合体100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネートが0.5重量部になるようにさらに加えて、十分に攪拌した。
【0106】
〔配合液Fの調製〕
上記アクリル共重合体Dに、ZrOナノ粒子(株式会社ソーラー社製「ZR−010−02」、平均粒径33.7nm、メチルエチルケトン分散液)を、アクリル共重合体100重量部に対してZrOナノ粒子が70重量部になるように加え、酢酸エチルで固形分濃度が30重量部になるように希釈し、十分に攪拌した。得られた配合液にヘキサメチレンジイソシアネートを、アクリル共重合体100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネートが0.5重量部になるようにさらに加えて、十分に攪拌した。
【0107】
[有機EL光源装置の製造及び評価]
〔実施例1〕
離型処理を施したセパレーターフィルム(リンテック社製「38X」)の表面に、上記配合液Aを乾燥後の厚さが40μmになるように塗布し、80℃で15分乾燥し、粘着層を形成した(粘着フィルム1)。粘着層をガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)により分析した結果、アクリル酸含有量は0.0%であった。また、分光エリプソメーターにより粘着層の屈折率を測定すると、1.65であった。
【0108】
粘着フィルム1の粘着層を上記反射部材の反射層に押し当て、0.5MPaに加圧して圧接して、複層フィルム1を得た。
得られた複層フィルム1のセパレーターフィルムを剥がして、上記有機EL素子の高屈折のガラス基板に貼り合せ、有機EL光源装置を製造した。
【0109】
得られた有機EL光源装置に定電流を通電して発光させ、光度をELDIM社製の視野角特性測定評価装置「EZ−contrast」を用いて測定し、全光量を求めた。この値を100%とする。
その後、上記有機EL光源装置を65℃90%RHの高温高湿槽内に250時間配置し、同様に発光させて全光量を測定することにより、湿熱試験を実施した。湿熱試験後に粘着層のはがれは無く、湿熱試験前と比較して全光量の低下は無かった。
【0110】
〔実施例2〕
配合液Aを配合液Bに変更した以外は実施例1と同様にして、複層フィルム2を製造した。複層フィルム2の粘着層のアクリル酸含有量は0.0%、粘着層の屈折率は1.77であった。
【0111】
複層フィルム1の代わりに複層フィルム2を用いた以外は実施例1と同様にして、有機EL光源装置を製造し、評価した。湿熱試験前の有機EL光源装置の全光量は実施例1と比較して15%向上した。また、湿熱試験後の粘着層の剥がれは無く、湿熱試験前と比較して全光量の低下は無かった。
【0112】
〔実施例3〕
配合液Aを配合液Eに変更した以外は、実施例1と同様にして、複層フィルム3を製造した。複層フィルム3の粘着層のアクリル酸含有量は1.5%、粘着層の屈折率は1.65であった。
【0113】
複層フィルム1の代わりに複層フィルム3を用いた以外は実施例1と同様にして、有機EL光源装置を製造し、評価した。湿熱試験前の有機EL光源装置の全光量は実施例1と同じ値であった。また、湿熱試験後の粘着層の剥がれは無く、湿熱試験前と比較して全光量は5%低下した。
【0114】
〔比較例1〕
配合液Aを配合液Cに変更した以外は、実施例1と同様にして、複層フィルム4を製造した。複層フィルム4の粘着層のアクリル酸含有量は0.0%、粘着層の屈折率は1.49であった。
【0115】
複層フィルム1の代わりに複層フィルム4を用いた以外は実施例1と同様にして、有機EL光源装置を製造し、評価した。湿熱試験前の有機EL光源装置の全光量は実施例1と比較して20%低下した。また、湿熱試験後の粘着層の剥がれは無く、湿熱試験前と比較して全光量の低下は無かった。
【0116】
〔比較例2〕
配合液Aを配合液Dに変更した以外は、実施例1と同様にして、複層フィルム5を製造した。複層フィルム5の粘着層のアクリル酸含有量は4.0%、粘着層の屈折率は1.65であった。
【0117】
複層フィルム1の代わりに複層フィルム5を用いた以外は実施例1と同様にして、有機EL光源装置を製造し、評価した。湿熱試験前の有機EL光源装置の全光量は実施例1と同じ値であった。また、湿熱試験後の粘着層の剥がれは無く、湿熱試験前と比較して全光量は40%低下した。
【0118】
〔比較例3〕
配合液Aを配合液Fに変更した以外は、実施例1と同様にして、複層フィルム6を製造した。複層フィルム6の粘着層のアクリル酸含有量は0.0%、粘着層の屈折率は1.65であった。
【0119】
複層フィルム1の代わりに複層フィルム6を用いた以外は実施例1と同様にして、有機EL光源装置を製造し、評価した。湿熱試験前の有機EL光源装置の全光量は実施例1と同じ値であった。また、湿熱試験後には粘着層が端部から大きく剥離した。
【0120】
【表1】

【0121】
【表2】

【0122】
[検討]
実施例1〜3と比較例1とを比べれば、無機微粒子により粘着層の屈折率が向上し、粘着層とガラス基板との間の屈折率差が小さくなったので、粘着層とガラス基板との間の界面での反射が低下し、取出効率が向上したことが分かる。
また、実施例1〜3と比較例2とを比べれば、粘着層に含まれるアクリルポリマーが水酸基を含有することにより、湿熱試験後の全光量の低下が抑制されたことが分かる。湿熱試験のように過酷な環境で使用した場合でも全光量の低下が抑制できるので、実施例1〜3のサンプルでは経時的な光取出効率の低下が抑制され、長期間にわたって高い光取出効率が期待できる。
さらに、実施例1〜3と比較例3とを比べれば、水酸基を含有するアクリルポリマーによって粘着層とガラス基板との粘着性を高く維持できるので、粘着層の剥離による光取出効率の経時的な低下を抑制できることが分かる。
以上から、本発明によれば、高い光取出効率を有し、その光取出効率の経時的な低下を抑制できる有機EL光源装置が実現できることが確認された。
【符号の説明】
【0123】
100 有機EL光源装置
110 有機EL素子
111 封止基板
111U 出光面
112 基板
112D 基板と粘着層との界面
120 発光素子
121 第一の透明電極層
122 発光層
123 第二の透明電極層
123D 第二の透明電極層と粘着層との界面
130 粘着層
140 反射部材
141 反射基板
142 凹凸構造層
143 反射層
143U 凹凸面
144 凹部
144A〜144D 斜面
145 塗膜
146 型
150 粘着フィルム
151 セパレーターフィルム
160 複層フィルム
200 有機EL光源装置
210 有機EL素子
300 有機EL光源装置
340 反射部材
342 凹凸構造層
343 反射層
343U 凹凸面
440 反射部材
442 凹凸構造層
443 反射層
443U 凹凸面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出光面側から順に、第一の透明電極層、発光層、第二の透明電極層、粘着層及び反射層をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス光源装置であって、
前記反射層は、前記反射層の前記粘着層側に凹凸面を有し、
前記粘着層は、水酸基を含有するアクリルポリマー及び無機微粒子を含む、有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
【請求項2】
前記粘着層において、アクリル酸の含有量が前記アクリルポリマーに対して3重量%以下である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
【請求項3】
前記粘着層の屈折率が1.65以上である、請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
【請求項4】
前記反射層は、銀及びアルミニウムのうち少なくとも一種類を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
【請求項5】
前記凹凸面の平均傾斜角が17°〜45°である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置の製造用の複層フィルムであって、
前記反射層と、前記粘着層と、前記粘着層から剥離可能なセパレーターフィルムとをこの順に有する複層フィルム。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス光源装置の製造方法であって、
請求項6記載の複層フィルムから前記セパレーターフィルムを剥がし、
前記粘着層と、前記第一の透明電極層、前記発光層及び前記第二の透明電極層をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子とを貼り合わせることを含む、有機エレクトロルミネッセンス光源装置の製造方法。
【請求項8】
請求項6記載の複層フィルムの製造方法であって、
前記セパレーターフィルムの表面に前記粘着層を形成し、
前記粘着層と前記反射層とを貼り合わせることを含む、複層フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−190647(P2012−190647A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53083(P2011−53083)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】