説明

有機エレクトロルミネッセンス発光装置

【課題】面状の白色光を、高効率かつ低コストで実現することのできる有機エレクトロルミネッセンス発光装置を提供する。
【解決手段】リボン状の基材10を用いて、有機エレクトロルミネッセンス素子を帯状に形成し、上記素子の有機発光層2の幅方向両側に、有機発光層2の幅方向端面から出射される側面光を透明電極3側に向けて反射する、反射電極1用の補助電極5A,5Aを設け、反射電極用補助電極5A,5Aを覆うように、蛍光体を含有する透明絶縁層6L,6Rを配設し、短冊状の小形モジュール基板Mを形成する。そして、この小形モジュール基板Mを、その幅方向の縁部が隣り合うように、大形の実装用基板上に並べて複数配置し、大面積化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード等の有機エレクトロルミネッセンス素子を、基板上に複数並べて実装した有機エレクトロルミネッセンス発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電極間に発光層を設け、電気的に発光を得る電界発光(エレクトロルミネッセンス)素子は、発光表示装置としての利用はもちろん、平面型照明,光ファイバー用光源,液晶ディスプレイ用バックライト,液晶プロジェクタ用バックライト等の各種発光装置の光源としても利用が進んでいる。特に、有機発光ダイオード(OLED)等、発光層に有機薄膜を用いた有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELという)素子は、発光効率,長寿命,軽量,フレキシブル性の点から注目されており、大形(大面積)の面状発光装置への利用が検討されている。
【0003】
ところで、バックライト等、照明用の発光装置には、通常、光のスペクトルが可視光領域全般に広く分布した白色光が用いられる。有機EL発光装置において、このような白色光を得る方法としては、〔1〕補色関係にある2色(例えば、青色と黄色)にそれぞれ発光する素子(発光層)を、基板上に集積する方法、〔2〕光の三原色である、赤(R),緑(G),青(B)にそれぞれ発光する素子(発光層)を、基板上に並べて配置する方法、あるいは、〔3〕単色光(主に青色)を発光する素子を使用して、この単色光の一部を蛍光材料等を用いて色変換(波長変換)し、補色関係にある2色(例えば、青色と黄色)の光、または、光の三原色(R,G,B)の光を作り出す方法、等が知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0004】
なかでも、上記〔3〕単色発光素子の発光を波長変換して用いる色変換(CCM:Color Conversion Materials)方式は、素子の発光色(波長)が限定されず、より輝度の高い有機EL素子を光源に利用可能なことから、変換(発光)効率と色再現性の向上が期待されている(特許文献3,4を参照)。
【0005】
一方、有機EL発光装置における大面積化の手法としては、表示装置のLCDパネルやPDパネル等のように、素子を積層するための基材となる板ガラス等の平板状基板を大形化(大判化)し、その上に多数の有機EL素子を集積する方法が考えられる。しかしながら、平板状基板の大形化は、それを加工するための真空設備や搬送装置等も大形化するため、設備投資の増大を招いてしまう。また、上記表示装置のパネルほどの精度は要求されないものの、有機EL発光装置においても、大形の基板の中央部と周縁部とで品質がばらついたり、基板上の素子の一部に欠陥が生じたりして、製品検査に合格せず、基板全体が無駄になる場合もある。
【0006】
そこで、上記大面積化の手法としては、通常、発光素子をモジュール化し、これを組み合わせて大面積化する方法が用いられる。例えば、方形または矩形の小形基板上に、複数の素子を縦横に配列して集積し、この小形基板(モジュール)を、より大形の実装用基板に並べて実装する方法が、一般的に用いられている。
【0007】
また、より効率的に大面積の有機EL発光装置を形成する方法として、R,G,Bの各色ごとに、リボン状またはテープ状(あるいはファイバー状)等の長尺の基材を用いて、その上に有機EL素子(略方形状または円形状)を長手方向に所定の間隔で形成し、得られた各色の長尺モジュールを、大判の実装用基板上に、所定の順に並べて実装する方法が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−63209号公報
【特許文献2】特開2005−50552号公報
【特許文献3】特開2003−243153号公報
【特許文献4】特開2005−71920号公報
【特許文献5】特表2002−538502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、上記白色光を面状発光する有機EL発光装置の大面積化は工夫されてきてはいるものの、さらなる普及のために、その製造コストの低減と、省エネルギー化(低消費電力で低発熱)が求められている。すなわち、上記のような構成を採用した有機EL発光装置は、現状、ある程度の大きさ(広さ)まで対応可能ではあるものの、壁面や屋外等、さらなる大面積への適用を考慮した場合、その単位面積あたりの製造コストや輝度(発光効率)が、ユーザーの要求するレベルに達しているとは言い難い。ここに改善の余地がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、面状の白色光を、高効率かつ低コストで実現することのできる有機エレクトロルミネッセンス発光装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の有機エレクトロルミネッセンス発光装置は、透明電極と反射電極との間に挟持された有機発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を、小形のモジュール基板上に形成し、このモジュール基板を、大形の実装用基板上に複数並べて実装することにより、上記透明電極側に、面状の白色光を出射する有機エレクトロルミネッセンス発光装置であって、上記モジュール基板が、リボン状の基材を用いて形成され、上記有機エレクトロルミネッセンス素子が、このリボン状基材の長手方向に沿った帯状に形成され、少なくとも上記反射電極が、上記有機発光層より幅広に形成されているとともに、上記有機発光層の幅方向両側には、この有機発光層の幅方向端面から出射される側面光を上記透明電極側に向けて反射する反射電極用補助電極が、上記反射電極の幅方向端部に接して設けられ、この反射電極用補助電極を覆うように、蛍光体を含有する透明絶縁層が形成されているという構成をとる。
【0012】
すなわち、本発明者は、面状の白色光を発光する有機EL発光装置を大形化するにあたり、部分的な不良が発生しても基板全体が無駄とならず、低コストで効率良く製造することのできる手段として、リボン状基材の上に色変換方式の有機EL素子を積層した小形のモジュール基板を作製し、これを大形の基板上に並べて実装することを着想した。そして、この大形化による有機EL発光装置の消費電力の増大を抑えるために、上記モジュール基板個々の発光効率(光の取り出し効率)を高める方法はないかと研究を重ねた。その結果、本発明者は、有機EL素子をリボン状基材の長手方向に沿った帯状として短冊状の小形モジュール基板を形成し、その幅方向両側に、上記素子から漏れ出す側面光を吸収して、この素子の直接光の補色となる波長の光を発光する色変換層(蛍光体を含有する透明絶縁層)を設けることにより、高い発光効率で白色光を得られることを見出した。さらに、本発明者は、上記短冊状モジュール基板の構成に工夫を凝らし、帯状有機EL素子の幅方向両側に位置する色変換層の中に、素子の側面光をモジュール基板の発光方向に向けて反射する補助電極を設けることによって、この側面光の利用効率をより高められることを突き止め、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の有機EL発光装置は、大形の実装用基板に実装するための小形のモジュール基板が、リボン状の基材を用いて形成され、上記有機エレクトロルミネッセンス素子が、このリボン状基材の長手方向に沿った帯状に形成され、少なくとも上記反射電極が、上記有機発光層より幅広に形成され、上記有機発光層の幅方向両側には、この有機発光層の側面光を透明電極側に向けて反射する反射電極用補助電極が、上記反射電極の幅方向端部に接して設けられ、この反射電極用補助電極を覆うように、蛍光体を含有する透明絶縁層が形成されている。そのため、有機発光層の幅方向端面から出射される側面光が、上記反射電極用補助電極により出射側に反射され、上記有機発光層から透明電極を通じて出射される直接光とともに、上記モジュール基板の発光面に向かって放射される。これにより、モジュール基板全体の発光効率(光の取り出し効率)が向上する。また、上記反射電極用補助電極で反射された側面光は、この反射電極用補助電極を覆うように配置された、蛍光体を含有する透明絶縁層により、その一部(または大部分)が、上記直接光の補色となる所定の波長の光に色変換(波長変換)される。これにより、本発明の有機EL発光装置は、バックライト等に必要な白色光を、高い発光効率で得ることができる。
【0014】
さらに、この有機EL発光装置は、白色光を得るために、多数の有機EL素子や色変換層,カラーフィルタ等を用いる従来の有機EL発光装置に比べ、構造がシンプルで、高価な材料を使用することなく、そのモジュール基板は、ロール・トゥ・ロールプロセスを利用して、効率的に製造することが可能である。したがって、本発明の有機EL発光装置は、低コストで製造することができる。
【0015】
そして、本発明の有機EL発光装置のなかでも、上記透明電極の出射側に、この透明電極を通じて出射する光(直接光)と、その幅方向両側の透明絶縁層から出射する光(側面光)とを、乱反射させて混合するための光散乱層が設けられているものは、これら直接光を出射する部位と側面光を出射する部位の間の輝度むらや色むらが少ない、均一な白色光を発光することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態の有機EL発光装置に用いられるモジュール基板の構成を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の実施形態のモジュール基板を、大形の実装用基板上に実装した例を示す平面図である。
【図3】上記モジュール基板の他の構成を示す模式的断面図である。
【図4】上記モジュール基板の他の構成を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて詳しく説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態の有機EL発光装置に用いられるモジュール基板の構成を示す模式的断面図であり、図2は、上記モジュール基板を実装用基板上に複数配置した実装例を示す平面図である。なお、図1における紙面表裏方向を有機EL素子の長手方向、図示左右方向を有機EL素子の幅方向として説明する。
【0019】
本実施形態における有機EL発光装置は、液晶ディスプレイ等のバックライトに使用される発光装置であり、図1の断面図に示すような、リボン状基材10の上に有機EL素子が形成されたモジュール基板Mを、図2の平面図のように、大形の実装用基板(図示省略)上に、その幅方向の縁部が隣り合うように、横方向に並べて配置し、これらを電気的に接続(実装)して形成されている。
【0020】
上記モジュール基板Mは、図1のように、長尺のリボン状基材10を用いて形成されており、その上に、このリボン状基材10の長手方向(図面の表裏方向)に沿って、有機発光層2と、反射電極1,透明電極3等からなる帯状の有機EL素子が積層され、長手方向に所定の長さ(長さL:図2参照)で切断されることにより、全体として短冊形状のモジュール(幅W:図2参照)となっている。そして、上記帯状の有機EL素子のなかの反射電極1が、有機発光層2より幅広に形成されているとともに、この有機発光層2の幅方向(図示左右方向)外側に位置する上記反射電極1の幅方向端部1a,1aに、断面略三角状の反射電極(1)用補助電極5A,5Aが設けられ、これら反射電極用補助電極5A,5Aを覆うように、その周囲に蛍光体を含有する透明絶縁層6L,6Rが形成されている。これが、本実施形態における有機EL発光装置の特徴である。
【0021】
有機EL発光装置に用いる上記モジュール基板Mの構成について、その製法と併せて、より詳しく説明する。このモジュール基板Mは、リボン状基材10と反対側の発光面(図1では上方向、図2では紙面表方向)に向かって白色光を発光する、トップエミッションタイプのモジュールである。なお、上記モジュール基板Mの発光面(図1の上側)には、有機EL素子から出射した光(白抜き矢印)を乱反射させて混合する光散乱層(光散乱板7)が配設されている。
【0022】
上記モジュール基板Mは、製造工程の効率化によるコストダウンのために、その製造プロセスは、基本的にロール・トゥ・ロールプロセスや、真空一貫プロセスにより行われる。そのため、上記有機EL素子を積層するためのリボン状基材10としては、樹脂や金属箔,極薄ガラス等、柔軟性を有する材料を用いて形成された長尺のフィルム状あるいはシート状のフレキシブル基材が好適に使用される。なお、リボン状基材10の代表的な寸法としては、幅5〜50mm,長さ10〜10000m,厚さ10〜500μm程度のものが使用される。
【0023】
上記モジュール基板Mの反射電極1は、アルミニウム(Al)や銀(Ag)等からなる光反射(光沢)性で、かつ、導電性の被膜であり、スパッタリングや真空蒸着等を用いて、ロール・トゥ・ロールにより連続して(帯状に)形成される。なお、この反射電極1の作製幅は、後記の有機発光層2の幅を考慮して、それより広幅となるように形成されている。上記反射電極1の厚さ(膜厚)は、30〜300nm程度、より好ましくは100〜150nmである。
【0024】
この反射電極1の幅方向端部1a,1aに接して設けられる反射電極(1)用補助電極5Aは、上記反射電極1と同様、アルミニウム(Al)や銀(Ag)等からなる光反射性で、かつ、導電性の構造物(長手方向に連続する突条)であり、図2のように電源や制御装置(図示省略)の正極(+)に接続され、上記反射電極1に対して長手方向に均等な給電を行う。
【0025】
この反射電極用補助電極5Aは、上記補助電極材料を、電子線ビーム(EB)方式もしくは抵抗加熱方式の真空蒸着装置を用いて、所要の厚みまで積層した後、フォトリソグラフィー法を用いたエッチングにより、図1のような断面三角状の反射形状に形成されている。なお、上記反射電極用補助電極5Aの幅は、通常100μm〜10mm、好ましくは100μm〜2mm、さらに好ましくは100μm〜1mmである。また、上記反射電極用補助電極(5A)の断面形状は、図1に示す三角形状以外にも、例えば図3の変形例に示すような断面半円状の突条(反射電極用補助電極5B)や、図4の変形例に示すような断面方形のリブ状(反射電極用補助電極5C)としてもよく、台形状やその他の多角形状とすることもできる。
【0026】
また、モジュール基板Mの有機発光層2は、通常、有機薄膜(発光層)と、有機薄膜への正孔・電子の移動を補助するその他の層とが積層された多層構造(図示省略)であり、例えば、有機薄膜を挟んで、陽極(本実施形態においては反射電極1)側には正孔注入層,正孔輸送層,(電子ブロック層)等が配置され、陰極(本実施形態においては透明電極3)側には電子輸送層,電子注入層,(正孔ブロック層)等が配置される。なお、これらの層は、用途や目的に応じて、適宜、組み合わせて用いられ、本実施形態の場合、真空蒸着装置を用いた連続工程(真空一貫プロセス)により作製・成膜される。各層を合わせた有機発光層2の厚さは、数nm〜数百nmである。
【0027】
上記有機発光層2の有機薄膜(発光層)を構成する発光材料としては、例えば、色素系,金属錯体系,高分子系等の多種の有機蛍光物質のなかから、適宜選択することができる。上記発光材料には、発光効率の向上もしくは発光波長を変化させる目的で、ドーピングを行ってもよい。また、本実施形態においては、色変換の効率の観点から、青色から青緑色に発光する発光材料、または、青色に発光する発光材料を選択することが好ましい。
【0028】
青色から青緑色の発光を得ることが可能な発光材料(有機蛍光物質)としては、ベンゾチアゾール系,ベンゾイミダゾール系,ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤、金属キレート化オキシノイド化合物、スチリルベンゼン系化合物、ジスチリルピラジン誘導体、もしくは、1,4−フェニレンジメチリディン、4,4−フェニレンジメチリディン、4,4’−ビス(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル〔DTBPBBi〕、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル〔DPVBi〕等の芳香族ジメチリディン系化合等物があげられる。
【0029】
また、青色の発光を得ることが可能な発光材料(有機蛍光物質)としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラ−フェニルフェノラート)アルミニウム(III),ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム(III)等があげられる。
【0030】
つぎに、上記有機発光層2の上に形成される透明電極3の材料としては、可視光領域に充分な透明性があり、電極として必要な電気伝導性を持ち合わせている物質が使用できる。通常、酸化インジウム錫(ITO),酸化インジウム亜鉛(IZO)等のインジウム酸化物系化合物が用いられる。その他、酸化錫、酸化錫にアンチモンやフッ素などをドープしたもの、酸化亜鉛にガリウムをドープしたもの等があげられる。これらは単独で、もしくは、2種以上併せて使用される。また、有機発光層2の界面から厚さ数nm〜十数nmの透光性を維持できる薄さの金属電極を形成し、その上にITO等を形成して、透明電極3としてもよい。なお、本実施形態においては、図1のように、上記透明電極3の上に、この透明電極3に対して安定して電流を供給するための透明電極(3)用補助電極4が設けられており、図2のように、電源や制御装置(図示省略)の負極(−)に接続される。
【0031】
上記反射電極用補助電極5A,5Aの周囲に形成された透明絶縁層6L,6Rは、蛍光体(蛍光材料)をバインダー樹脂中に分散させた組成物から形成されている。上記透明絶縁層6L,6Rは、蛍光体をバインダー樹脂中に分散させた組成物に溶媒を添加し、樹脂組成物溶液(ワニス)とすることによって、スピンコータ,バーコータ等の塗布法を用いて形成することができる。上記透明絶縁層6L,6Rの個々の幅は、通常200μm〜20mm、好ましくは200μm〜4mm、さらに好ましくは200μm〜2mmである。また、上記塗布法の他にも、インクジェット機やフォトリソグラフィを用いたパターニングや、真空蒸着法を用いたマスクパターニング等により、所定の形状に形成することができる。
【0032】
上記透明絶縁層6L,6Rを構成するバインダー樹脂としては、熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂等を用いることができる。これらの例として、具体的には、オリゴマーまたはポリマー形態のメラミン樹脂,フェノール樹脂,アルキド樹脂,エポキシ樹脂,ポリウレタン樹脂,マレイン酸樹脂,ポリアミド系樹脂、あるいは、ポリメチルメタクリレート(PMMA),ポリアクリレート,ポリカーボネート,ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,ヒドロキシエチルセルロース,カルボキシメチルセルロール等があげられる。これらは単独で、もしくは、2種以上併せて使用することができる。また、光硬化型樹脂としては、感光剤を含む反応性ビニル基を有するアクリル酸,メタクリル酸系の光重合型や、ポリケイ皮酸ビニル等の光架橋型等が用いられる。これら光硬化型樹脂を使用して、フォトリソグラフィ法により上記透明絶縁層6L,6Rをパターン形成(パターニング)してもよい。
【0033】
一方、上記透明絶縁層6L,6Rに用いられる蛍光材料としては、有機系,無機系ともに多様なものが知られている。例えば、青色光を赤色光に変換する有機系蛍光材料としては、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン等のシアニン系色素、1−エチル−2−(4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)−ピリジウム−パークロレート等のピリジン系色素、ローダミンB,ローダミン6G等のローダミン系色素、オキサジン系色素等があげられる。
【0034】
また、青色光を緑色光に変換する有機系蛍光材料としては、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジノ(9,9a,1−gh)クマリン、3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2’−ベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン等のクマリン色素、ベーシックイエロー51等のクマリン色素系染料、ソルベントイエロー11,ソルベントイエロー116等のナフタルイミド系色素等があげられる。
【0035】
さらに、青色から緑色までの発光を、橙色から赤色まで(具体的には、オレンジ色や黄色に)変換する有機系蛍光材料としては、例えば、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチルリル)−4H−ピラン(DCM)等のシアニン系色素、1−エチル−2−(4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)−ピリジニウム−パークロレート(ピリジン1)等のピリジン系色素、ローダミンB、ローダミン6G等のローダミン系色素、オキサジン系色素等があげられる。
【0036】
そして、蛍光材料としては、無機蛍光体微粒子を用いることもできる。上記無機蛍光体微粒子としては、Y23,Gd23,ZnO,Y2Al512,Zn2SiO4等の金属酸化物に、Eu2+,u3+,Ce3+,Tb3+等の可視光を吸収する遷移金属イオンをドープしたもの、ZnS,CdS,CdSe等の金属カルコゲナイド化物に、Eu2+,Eu3+,Ce3+,Tb3+等の可視光を吸収する遷移金属イオンをドープしたもの等をあげることができる。
【0037】
これらの蛍光材料は単独で、もしくは、2種以上併せて使用することができる。また、上記透明絶縁層6L,6Rには、通常、両方に同じ配合の蛍光材料(例えば、有機発光層2が青色光を発光する場合は、この青色光を、補色である黄色光に変換する蛍光材料)が使用されるが、これら透明絶縁層6Lと透明絶縁層6Rに、異なる配合の蛍光材料を用いてもよい。その場合、例えば、上記有機発光層2が青色光を発光する場合、透明絶縁層6Lに青色光を赤色光に変換する蛍光材料を添加し、透明絶縁層6Rに青色光を緑色光に変換する蛍光材料を添加すれば、これら青色(B)と、赤色(R),緑色(G)の光の混色により、白色光を得ることができる。
【0038】
つぎに、上記透明電極3と透明絶縁層6L,6Rの上側(出射側)に配置される光散乱板7は、ガラス板や樹脂板等、光透過性のものであればよく、無色透明の他に、すりガラス状のものや、母材となる樹脂等のなかに屈折率が異なる光散乱材を分散させたもの等を用いてもよい。また、光散乱板7として別途形成されたものを貼り合わせてもよく、上記透明電極3と透明絶縁層6L,6Rの上側に、塗布法等を用いて層状に形成してもよい。なお、この光散乱板7と上記透明電極3との間には、通常、窒素やアルゴン等の不活性ガスや、ゲッター材と呼ばれる水分吸収剤等が充填される。
【0039】
光散乱板7を構成する母材としては、ガラスの他、例えばアクリル樹脂,エポキシ樹脂,シリコン樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリエチレンテレフタレート樹脂,フッ素系樹脂等を使用することができる。また、光散乱材としては、光吸収性が低く、屈折率が母材と異なるものであればよく、例えばシリカ,チタン,硫酸バリウム,炭酸カルシウム等を用いることができる。母材に対する光散乱材の添加量は、目的とする光散乱板7のヘーズ値(曇価)に応じて適宜設定される。なお、マイクロレンズアレイフィルムや、液晶バックライト用拡散フィルムとして市販されているものを用いてもよく、この光散乱板7のさらに上に、光散乱板7から出射する光の方向を目的の方向(照明方向)に揃える、プリズムシートや集光板等を配置してもよい。
【0040】
また、光散乱板7は、図1のように、短冊形状のモジュール基板M一つ一つに個別に形成してもよいが、図2のように大形の実装用基板の上に並べて実装された後に、これら複数の短冊状モジュール基板Mを一括して覆う、大形の光散乱板7(一枚)を配設してもよい。この大形の光散乱板7を用いることにより、各短冊状モジュール基板Mの間の境界(無発光部分)に起因するむら(縞模様)を軽減することができる。
【0041】
これらの構成により、本実施形態の有機EL発光装置は、有機発光層2の幅方向端面から出射される側面光が、上記モジュール基板Mの発光面から取り出され、見かけ上、モジュール基板M全体の発光効率が向上する。また、上記反射電極用補助電極5Aで反射された側面光の一部(または大部分)が、蛍光体を含有する透明絶縁層6L,6Rを通過することにより、上記有機発光層2の直接光の補色となる所定の波長の光に色変換することができる。これにより、本実施形態の有機EL発光装置は、高輝度でかつ色むらの少ない白色光を、高い発光効率で発光することができる。
【0042】
また、本実施形態の有機EL発光装置は、上記のように各モジュール基板Mの発光効率が向上することから、従来の有機EL素子を使用した発光装置に比べ、より少ない消費電力(電圧)で同じ光量(輝度)を得ることができる。そのため、低電圧駆動により、有機EL発光装置の省エネルギー化や長寿命化が可能になる。
【0043】
さらに、本実施形態の有機EL発光装置は、長手方向に長い短冊状モジュール基板Mを用いたが、反射電極1側には、これに沿った帯状の反射電極用補助電極5A,5Aが設けられ、透明電極3側には、これに沿った帯状の透明電極用補助電極4,4が設けられている。このため、上記のような低電圧駆動としても、帯状の有機発光層2に対して、その長手方向に均等な電流を安定して供給することができる。したがって、この有機EL発光装置は、その長い短冊状のモジュール基板Mであっても、長手方向に輝度むらや色むらが発生することがない。
【0044】
そして、本実施形態の有機EL発光装置は、方形または矩形等のモジュールを使用する有機EL発光装置と同様、モジュール基板M単位で欠陥が生じても、製品(実装用基板)全体が無駄になることがないという利点を有する。
【0045】
なお、上記短冊状のモジュール基板Mにおける長辺(長手方向)と短辺(幅方向)との比率(寸法比:図2参照)は、その長辺の長さLが、少なくとも短辺の長さWの5倍以上、好ましくは短辺の長さWの10倍以上とすることが望ましい。これは、以下の理由による。すなわち、短冊状のモジュール基板Mにおいて、長辺の長さLが短辺の長さWの5倍以上になっているものは、それ以下の比率のもの(例えば、モジュールの平面形状が正方形や円状のもの等)に比べ、有機EL素子(有機発光層2)の上側発光面の面積(投影面積)が同じであっても、各有機EL素子の周縁(全周)の長さが長くなる。そのため、リボン状基材10の上に形成される有機EL素子の端面長さ(長手方向側面の長さ)が長くなり、ひいては、側面光を出射する側部端面の面積を大きくとることができる。これにより、長辺の長さLが短辺の長さWの5倍以上になっているモジュール基板Mは、その上面方向へ出射される上面発光の光量が、正方形や円状等のものと変わらす、各素子の側面に出射される側面光の光量だけが増えることとなる。したがって、上記のように、長辺の長さLが少なくとも短辺の長さWの5倍以上になっている短冊状モジュール基板Mを用いた発光装置は、各モジュール基板Mからの側面光が増えることにより、光の取り出し効率がより向上する。ちなみに、有機発光層から発せられる全光エネルギーのうち、私たちが目にする外部光は全体の約25%(内部導波光は約40%)であり、全光エネルギーの約35%が側面光として消失(失活)する、との報告もあることから、上記のモジュール形状による発光効率向上効果は大きいと推測される。
【0046】
また、上記実施形態におけるモジュール基板Mのリボン状基材10には、ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポススチレン(PS),ポリカーボネート(PC),ポリイミド(PI),メタクリル樹脂(PMMA),ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),シクロオレフィン樹脂(COP)といったポリマー基材や、ステンレス(SUS),アルミ(Al),銅(Cu)等の金属箔基材、もしくは、極薄ガラス等のフレキシブル性を有した材料を用いることができる。ただし、上記リボン状基材10の表面(有機EL素子形成側の表面)の最大粗さRmaxが20nm以上の場合は、低アウトガス性の材料を、スリットコート法やスプレー法などの湿式法で塗工することにより、上記表面の最大粗さRmaxを、20nm以下になるよう平坦化することが望ましい。
【0047】
上記有機発光層2を構成する正孔輸送層には、例えば、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリシラン、ポリエチレンジオキサイドチオフェン(PEDOT)等の導電性高分子、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス(N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ)ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物等を用いることができる。また、正孔注入層としては、銅フタロシアニン等を使用することが可能である。
【0048】
上記有機発光層2を構成する電子輸送層には、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体(Alq3)等のアルミニウムのキノリノール錯体、2−(4−ビフェニル)−5−(p−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(ButylPBD)のようなオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルキノキサリン類等を用いることができる。また、電子注入層としては、Li,Ca,Cs,Mgなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属、あるいはこれら金属のフッ化物(LiF等)または酸化物等を使用することが可能である。なお、上記有機発光層2における各層の成膜方法としては、先に述べた真空蒸着装置を用いた連続工程(真空一貫プロセス)以外にも、例えば、イオン化蒸着法,MBE法,インクジェット法等を使用することができる。
【実施例】
【0049】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
[反射電極の形成]
リボン状基材として、ロール状に巻回されたSUS304箔(幅20mm,長さ100m、厚さ50μm)を準備し、その表面を平坦にするために、液体レジスト(フェノールノボラック樹脂系:日本ゼオン社製 ZWD6216−6)をスピンコート法で塗布し、乾燥させて、平滑化層(膜厚3μm)を形成した。そして、この平滑化層の上に、スパッタ装置を用いて、ロール・トゥ・ロールにより、銀系合金(フルヤ金属社製 APC−TR,パラジウムおよび銅を含有する銀系合金)からなる反射電極(幅20mm,厚さ100nm)を成膜した。なお、この反射電極の幅は、後に作製される有機発光層(幅18mm)より広くなるように設計されている。
【0051】
[反射電極用補助電極の形成]
つぎに、上記反射電極を覆うように、リボン状基材の全面に電子線ビーム(EB)蒸着もしくは抵抗加熱蒸着により、Al薄膜(厚さ1000μm)を形成し、このAl薄膜上に感光性レジストを塗布して、マスク露光,現像を行い、薄膜の不要部分をエッチングで除去して、上記反射電極の幅方向両側(端部近傍)に、断面三角状(底辺の幅1mm,高さ1mm)の反射電極用補助電極を形成した(図1参照)。
【0052】
[透明絶縁層の形成]
透明絶縁層(波長変換層)の材料として、有機発光層からの発光波長(435〜440nm)と励起波長が一致している蛍光体:(E)−2−(2−(4−(dimethylamino)styryl)−6−methyl−4H−pyran−4−ylidene)malononitrile〔DCM OHJEC社製〕 5wt%と、バインダ樹脂:メタクリル酸メチル〔PMMA〕 100wt%とを、200mlのテトラハイドロフラン〔THF 和光純薬工業社製〕に分散溶解させたワニスを調製した。
【0053】
ついで、調製された透明絶縁層材料(ワニス)を、スピンコート法により、上記反射電極および反射電極用補助電極を覆うように、リボン状基材の全面に塗布し、ポストベーク(220℃×60分間)を行って、厚さ(リボン状基材上面からの高さ)100nmの透明絶縁層を形成した。その後、この透明絶縁層上に、感光性レジスト〔JSR社製 JEN−477〕を塗布して、マスク露光,現像を行い、絶縁層の不要部分をエッチングで除去して、所要パターンの透明絶縁層を作製した。得られた各透明絶縁層の幅(リボン状基材の幅方向縁部からの幅)は4mm(高さ100nm)であった。
【0054】
[有機発光層の形成]
つぎに、上記透明絶縁層が形成されたリボン状基材を真空蒸着機にセットし、真空下、ロール・トゥ・ロールで、上記各透明絶縁層の間の反射電極上(露出面)に、各材料を以下の順(膜厚は個別に表示)で連続して成膜し、有機発光層を形成した。
1)正孔輸送層として、ポリビニルカルバゾール〔PVK Aldrich社製〕 30nm
2)発光層として、4,4’−ビス(N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ)ビフェニル〔α−NPD OHJEC社製〕 30nm
3)正孔ブロッキング層として、2−(4−ビフェニル)−5−(p−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール〔ButylPBD OHJEC社製〕 30nm
4)電子輸送層として、トリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体〔Alq3 OHJEC社製〕 20nm
5)電子注入層として、フッ化リチウム〔LiF フルヤ金属社製〕 0.5nm
【0055】
[透明電極の形成]
続いて、同じ真空蒸着機を用いて、上記有機発光層の上に、
6)半透過金属電極として、アルミニウム〔Al〕 15nm
を蒸着した。つぎに、上記半透過金属電極が形成されたリボン状基材を、スパッタ装置にセットし、真空下、ロール・トゥ・ロールで、酸化インジウム錫〔ITO〕からなる透明電極(幅20mm,厚さ100μm)を成膜した。
【0056】
[透明電極用補助電極の形成]
最後に、シャドーマスクを介して、上記透明電極の幅方向両側(端部近傍)を覆うように、スパッタリングにより、電気抵抗値の低いAlやAg等の金属薄膜を形成した。なお、幅方向両側の透明電極用補助電極は、それぞれ幅0.1mm,厚さ100μmであった(図1参照)。
【0057】
なお、前記実施形態とは異なり、有機EL素子上に配置される光散乱層(光散乱板)はこの段階で取り付けられず、複数のモジュール基板を後記の実装用基板に実装した後に、これら複数のモジュール基板全てを一度に覆う、大形の光散乱層を取り付けるものとする。また、上記透明電極用補助電極まで形成されたモジュール基板(未だ「長尺のリボン状」である)を、大気下に取り出し、100mmの長さ毎に切断して、幅(W)20mm×長さ(L)100mmの短冊状モジュール基板(L/W=5)を、多数作製した。
【0058】
[モジュール基板の実装]
準備した大形の実装用基板の上に、上記幅20mm×長さ100mmの短冊状モジュール基板を5枚用いて、その幅方向の縁部が隣り合うように、横方向に並べて配置し、これらを電気的に接続(実装)した(図2参照)。そして、これら5枚の短冊状モジュール基板の上に、これらを覆う光散乱層(脂環式樹脂製光散乱フィルム:ツジデン社製D114シリーズ,厚さ10μm)を貼り付け、実施例1の有機EL発光装置とした。
【0059】
(比較例1)
上記「透明絶縁層の形成」において、透明絶縁層を形成するための材料(ワニス)に、DCMを添加しなかったこと以外、実施例1と同様にして、比較例1のモジュール基板および有機EL発光装置を作製した。
【0060】
(比較例2)
上記「モジュール基板の実装」において、モジュール基板上に光散乱層を配置しなかったこと以外、実施例1と同様にして、比較例2のモジュール基板および有機EL発光装置を作製した。
【0061】
得られた実施例1および比較例1,2の有機EL発光装置を電源に接続して発光させ、これら有機EL発光装置の正面(上面発光面)に放出される発光の「色度(CIE色度)」および「発光強度(輝度)」を比較した。その結果を以下に示す。
〈測定条件〉室温下、サンプルの陽極(反射電極)−陰極(透明電極)間に9V,60mAの電流を印加した。
〈色度,輝度の測定装置〉プレサイズゲージ社製有機EL発光効率測定装置 EL1003
測定プローブとサンプルとの間の距離:200mm
【0062】
なお、CIE色度は、(x,y)で表記され、色度図上の座標(x−y直交座標)位置を表す。ちなみに、放送受信用テレビ(発光ブラウン管)においては、NTSC(全米テレビジョン放送方式標準化委員会)規格で、白色(W)が(0.310,0.316)、青色(B)が(0.14,0.08)、緑色(G)が(0.21,0.71)、赤色(R)が(0.67,0.33)と規定されている。
【0063】
また、発光装置の輝度としては、近年、屋外用大画面タイプの液晶表示装置(LCD)として、その内蔵バックライトの輝度が1700〜2000cd/m2で、コントラスト比が500〜1000:1程度のものが市販されている。
【0064】
[色度と輝度の測定結果]
実施例1:CIE色度=(0.35,0.30)白色 輝度=2200cd/m2
比較例1:CIE色度=(0.16,0.09)青色 輝度=846cd/m2
比較例2:CIE色度=(0.35,0.26)やや青味 輝度=3142cd/m2
【0065】
〈評価〉
実施例1に対して、色変換していない比較例1の有機EL発光装置は、輝度が低く、青色の発光しか得られなかった。これにより、色変換による輝度の向上が確認された。また、実施例1に対して、光散乱層を設置しない比較例2の有機EL発光装置は、高輝度ではあるものの、各モジュール基板の間の無発光部分が、黒い縞模様となって、見栄えが悪い。これにより、光散乱板の効果が確認された。上記比較例1,2に対して、実施例1の有機EL発光装置は、ナチュラルな白色光を高輝度で得ることができ、バックライト等の照明装置に適することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス発光装置は、モジュールあたりの製造コストが低く、均一な白色光を高効率で発光することができる。したがって、バックライト等、大面積の発光装置に適する。
【符号の説明】
【0067】
1 反射電極
2 有機発光層
3 透明電極
5A 補助電極
6L,6R 透明絶縁層
10 基材
M モジュール基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極と反射電極との間に挟持された有機発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を、小形のモジュール基板上に形成し、このモジュール基板を、大形の実装用基板上に複数並べて実装することにより、上記透明電極側に、面状の白色光を出射する有機エレクトロルミネッセンス発光装置であって、上記モジュール基板が、リボン状の基材を用いて形成され、上記有機エレクトロルミネッセンス素子が、このリボン状基材の長手方向に沿った帯状に形成され、少なくとも上記反射電極が、上記有機発光層より幅広に形成されているとともに、上記有機発光層の幅方向両側には、この有機発光層の幅方向端面から出射される側面光を上記透明電極側に向けて反射する反射電極用補助電極が、上記反射電極の幅方向端部に接して設けられ、この反射電極用補助電極を覆うように、蛍光体を含有する透明絶縁層が形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス発光装置。
【請求項2】
上記透明電極の出射側に、この透明電極を通じて出射する光と、その幅方向両側の透明絶縁層から出射する光とを、乱反射させて混合するための光散乱層が設けられている請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−160603(P2012−160603A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19617(P2011−19617)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】