説明

有機エレクトロルミネッセンス素子、およびその製造方法

【課題】発光輝度のムラが少なく、光取り出し効率に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子、その製造方法、照明装置、面状光源、及び表示装置を提供する。
【解決手段】透明な基板1と、基板に接して設けられる透明な第1電極5と、第1電極と比較して抵抗が低く、第1電極に接して設けられる補助電極2と、第1電極に対向して配置される第2電極7と、第1電極と第2電極との間に配置された発光部6と、を含み、前記第1電極の屈折率をn1、前記基板の屈折率をn2とすると、n1、およびn2がそれぞれ次式(1)


を満たし、第1電極の可視光領域の光の透過率が80%以上、体積抵抗率が1Ω・cm以下、表面粗さが100nm以下であり、補助電極が、枠状の第1補助電極2と、該第1補助電極に電気的に接続され、該第1補助電極よりも線幅が狭い第2補助電極3と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、該有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法、該有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた照明装置、面状光源、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、一対の電極と、有機発光層とを含んで構成される。有機エレクトロルミネッセンス素子は、電圧を印加すると、各電極から正孔および電子がそれぞれ注入され、注入された正孔と電子が有機発光層において再結合することによって発光する。有機エレクトロルミネッセンス素子は、無機エレクトロルミネッセンス素子と比べると低電圧での駆動が可能であり、また高輝度で発光することが可能なので、有機エレクトロルミネッセンス素子を表示装置や照明装置に用いることが検討されている。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光層からの光は、一対の電極のうちの少なくとも一方側から取出されるので、光が取出される側の電極は、透明である必要がある。例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子は、透明導電膜が形成された透明導電膜付き透明板に形成され、この透明導電膜を透明電極として用いることによって、発光層からの光を有機エレクトロルミネッセンス素子の外に効率的に取出している。
【0004】
透明電極としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)等の金属酸化物によって形成される薄膜、および不規則な網目構造を有する導電性物質から成る網目状導電体などが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
このような透明電極は、金属膜などから成る不透明な電極に比べると電気抵抗が高い。有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた装置では、発光面積が大きくなるにつれて大面積の透明電極が必要となる。大面積の透明電極を用いる場合、透明電極の抵抗が高いので、その電圧降下も大きくなり、電圧降下に起因する発光輝度のムラが無視できない程度に大きくなるという問題がある。
【0005】
上述の透明電極の電圧降下に起因する問題を解決するために、透明電極よりも電気抵抗が低い補助電極を透明電極に電気的に接続した有機エレクトロルミネッセンス素子を備える面状発光装置が開示されている(例えば特許文献2参照)。この面状発光装置では、電源に接続される接続端子から近い部分では前記補助電極を太くし、遠い部分では前記補助電極を細くしている。接続端子から近い部分では、太い補助電極のために電流値が高く発光強度が強い一方で、開口率が小さくなり、また、接続端子から遠い部分では、細い補助電極のために電流値が小さく発光強度が弱い一方で、開口率が大きくなるので、全体としての発光輝度のムラを抑制した面状発光装置を実現している。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載されているような有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた場合でも、接続端子から遠い部分では電流値が小さくなるために、発光輝度のムラを十分に抑制することができなかった。また、開口率を調整することによって発光輝度のムラを抑制するので、光の利用効率が低下するという問題があった。
【0007】
さらに発光層からの光は、透明電極と透明基板との界面において一部が反射することがあり、光取り出し効率が十分なものではく、光の利用効率が低いという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2004−228057号公報
【特許文献2】特開2004−14128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、その課題は、高い光利用効率を有し、発光面積が大きい場合でも発光輝度のムラが十分に抑制され、発光効率の高い有機エレクトロルミネッセンス素子、その製造方法、および該有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた照明装置、面状光源、及び表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、下記構成を採用した有機エレクトロルミネッセンス素子、その製造方法、および該有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた照明装置、面状光源、及び表示装置を提供する。
【0011】
[1] 透明な基板と、
前記基板に接して設けられる透明な第1電極と、
前記第1電極と比較して電気抵抗が低く、前記第1電極に接して設けられる補助電極と、
第2電極と、
前記第1電極および第2電極の間に配置された発光部と、を含み、
前記第1電極の屈折率をn1、前記基板の屈折率をn2とすると、n1、およびn2がそれぞれ次式(1)
【0012】
【数1】

を満たし、
前記第1電極の可視光領域の光の透過率が80%以上、体積抵抗率が1Ω・cm以下、表面粗さが100nm以下であり、
前記補助電極が、
枠状の第1補助電極と、
該第1補助電極の枠内に配置されるとともに、該第1補助電極に電気的に接続され、該第1補助電極よりも線幅が狭い第2補助電極と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0013】
[2] 前記第1電極が、
透明の膜本体と、
上記膜本体中に配置され、導電性を有するワイヤ状の導電体と、を含むことを特徴とする、上記[1]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0014】
[3] 前記ワイヤ状の導電体の径が200nm以下であることを特徴とする、上記[2]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0015】
[4] 前記ワイヤ状の導電体が前記膜本体中において網目構造を構成していることを特徴とする、上記[3]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0016】
[5] 前記膜本体が導電性を有する樹脂を含んでいることを特徴とする、上記[2]〜[4]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0017】
[6] 前記第2補助電極の線幅を前記第1補助電極の線幅で除した値が、1/1000〜1/10であることを特徴とする、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0018】
[7] 前記基板が、支持基板であることを特徴とする、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0019】
[8] 前記基板が、封止基板であることを特徴とする、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0020】
[9] 上記[1]〜[7]のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
導電性を有するワイヤ状の導電体を分散媒に分散させた分散液を用いる塗布法により、前記基板の前記発光部側の表面上に第1電極を形成する工程を含み、
該工程では、該第1電極の屈折率をn1、前記基板の屈折率をn2とすると、n1、およびn2がそれぞれ次式(1)
【0021】
【数2】

を満たし、可視光領域の光の透過率が80%以上、体積抵抗率が1Ω・cm以下、表面粗さが100nm以下の第1電極を形成する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0022】
[10] 前記第1電極を形成する前に、前記基板の前記発光部側の表面に前記補助電極を設けることを特徴とする、上記[9]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0023】
[11] 上記[8]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
導電性を有するワイヤ状の導電体を分散媒に分散させた分散液を用いる塗布法により、前記発光部の封止基板側に第1電極を形成する工程を含み、
該工程では、該第1電極の屈折率をn1、前記封止基板の屈折率をn2とすると、n1、およびn2がそれぞれ次式(1)
【0024】
【数3】

を満たし、可視光領域の光の透過率が80%以上、体積抵抗率が1Ω・cm以下、表面粗さが100nm以下の第1電極を形成する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0025】
[12] 前記第1電極を形成した後に、該第1電極の封止基板側に補助電極を設けることを特徴とする、上記[11]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0026】
[13] 上記[1]〜[8]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えることを特徴とする照明装置。
【0027】
[14] 上記[1]〜[8]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えることを特徴とする面状光源。
【0028】
[15] 上記[1]〜[8]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えることを特徴とする表示装置。
【0029】
なお、本明細書では、「透明な基板」、「透明な電極」とは、入射した光の少なくとも一部が透過する基板、電極を意味する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、透明電極の抵抗による電圧降下を低減し、発光面積が大きい場合でも発光輝度のムラが十分に抑制され、均一発光が可能で、発光効率の高い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することが可能となる。
したがって、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、照明装置、バックライトとしての面状光源、フラットパネルディスプレイ等の表示装置として好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、以下の説明において示す図面における各部材の縮尺は実際と異なる場合がある。
【0032】
本発明にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子は、透明な基板と、前記基板に接して設けられる透明な第1電極と、前記第1電極と比較して電気抵抗が低く、前記第1電極に接して設けられる補助電極と、第2電極と、前記第1電極および第2電極の間に配置された発光部と、を含み、
前記第1電極の屈折率をn1、前記基板の屈折率をn2とすると、n1、およびn2がそれぞれ次式(1)
【0033】
【数4】

を満たし、前記第1電極の可視光領域の光の透過率が80%以上、体積抵抗率が1Ω・cm以下、表面粗さが100nm以下であり、
前記補助電極が、枠状の第1補助電極と、該第1補助電極の枠内に配置されるとともに、該第1補助電極に電気的に接続され、該第1補助電極よりも線幅が狭い第2補助電極と、を有することを特徴としている。
【0034】
[第1の実施形態]
上記基本的構成を有する本発明の一実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子を、図1に示す。なお、以下の説明において、支持基板1の厚み方向の一方を上方(または上)といい、支持基板1の厚み方向の他方を下方(または下)という場合がある。この上下関係の表記は、説明の便宜上、設定したもので、必ずしも実際に有機エレクトロルミネッセンス素子が製造される工程および使用される状況に適用されるものではない。
【0035】
支持基板1上に、第1補助電極2と第2補助電極3とからなる補助電極4が配置されている。これら補助電極4の上に透明の陽極(第1電極)5が配置されている。この陽極(第1電極)5の上に発光部6が配置され、その上に陰極(第2電極)7が配置されている。通常、これら支持基板1上に配置された積層体(発光機能部と呼称する場合もある)を保護するために積層体全体を保護する封止基板(上部封止膜と呼称する場合もある)8が設けられる。
【0036】
なお、第1の実施形態では、透明な第1電極5が陽極であり、第2電極6が陰極であるが、積層体の積層順を逆順にして、透明な第1電極が陰極であり、第2電極が陽極である有機エレクトロルミネッセンス素子を構成してもよい。
【0037】
(支持基板)
透明な支持基板1は、可視光領域の光の透過率が高く、また有機エレクトロルミネッセンス素子を形成する工程において変化しないものが好適に用いられ、リジッド基板でも、フレキシブル基板でもよく、例えばガラス板、プラスチック板、高分子フィルムおよびシリコン板、およびこれらを積層した積層板などが好適に用いられる。
なお、支持基板1としては、例示したもののうち、透明な第1電極5との屈折率の差が、0.3未満の屈折率を示すものが適宜用いられる。
【0038】
(第1電極)
第1電極5は、透明の膜本体と、膜本体中に配置され、導電性を有するワイヤ状の導電体とを含んで構成される。透明の膜本体は、可視光領域の光の透過率が高いものが好適に用いられ、樹脂や無機ポリマー、無機−有機ハイブリッド化合物などを含んで構成される。透明の膜本体としては、樹脂の中でも導電性を有する樹脂が好適に用いられる。このようにワイヤ状の導電体に加えて、導電性を有する膜本体を用いることによって、第1電極5の低電気抵抗化(以下、電気抵抗を略して抵抗という場合がある)を図ることができる。このような低抵抗の第1電極5を用いることによって、第1電極での電圧降下を抑制し、有機エレクトロルミネッセンス素子の低電圧駆動を実現するとともに、輝度ムラを抑制することができる。
【0039】
第1電極5の膜厚は、電気抵抗および可視光の透過率などによって適宜設定され、例えば、0.03μm〜10μmであり、好ましくは0.05μm〜1μmである。
【0040】
ワイヤ状の導電体は、径の小さいものが好ましく、例えば、径が400nm以下のものが用いられ、好ましくは径が200nm以下のものであり、さらに好ましくは径が100nm以下のものである。膜本体に配置されるワイヤ状の導電体は、第1電極5を通る光を回折または散乱するので、第1電極5のヘイズ値を高めるとともに光の透過率を低下させるが、可視光の波長程度または可視光の波長よりも小さい径のワイヤ状の導電体を用いることによって、可視光に対するヘイズ値を低く抑えるとともに、光の透過率を向上させることができる。また、ワイヤ状の導電体の径は、小さすぎると、抵抗が高くなるので、径が10nm以上のものが好ましい。なお、有機エレクトロルミネッセンス素子を照明装置に用いる場合には、第1電極5のヘイズ値はある程度高い方が拡散機能を併せて付与することも可能となるので、第1電極5は、ヘイズ値の高いものが好適に用いられる場合もある。したがって第1電極5の光学的特性は、有機エレクトロルミネッセンス素子が用いられる装置に応じて適宜設定される。
【0041】
膜本体中に配置されるワイヤ状の導電体は、1本でも、複数本でもよく、膜本体中において、網目構造を形成していることが好ましい。例えば膜本体中において、1つまたは複数のワイヤ状の導電体は、膜本体の全体に渡って複雑に絡み合って配置され、網目構造を形成している。具体的には、1本のワイヤ状の導電体が複雑に絡み合ったり、複数本のワイヤ状の導電体が互いに接触し合って配置されたりする構造が2次元的または3次元的に広がって網目構造を形成している。この網目構造を形成するワイヤ状の導電体によって、第1電極5の体積抵抗率を下げることができる。
またワイヤ状の導電体は、少なくとも一部が第1電極5の基板1とは反対側の表面寄りに配置されることが好ましい。このようにワイヤ状の導電体を配置することによって、第1電極5の表面部の抵抗を下げることができる。
ワイヤ状の導電体は、例えば曲線状でも、針状でもよい。曲線状及び/又は針状の導電体が互いに接触し合って網目構造を形成することによって、体積抵抗率の低い第1電極5を実現することができる。
【0042】
(ワイヤ状の導電体の材料)
ワイヤ状の導電体の材料としては、例えば、Ag、Au、Cu、Alおよびこれらの合金などの抵抗の低い金属が好適に用いられる。ワイヤ状の導電体は、例えばN.R.Jana, L.Gearheart and C.J.Murphyによる方法(Chm.Commun.,2001, p617-p618)や、C.Ducamp-Sanguesa, R.Herrera-Urbina, and M.Figlarz等による方法(J. Solid State Chem.,Vol.100, 1992, p272〜p280)によって製造することができる。
【0043】
(第1電極の成膜方法)
第1電極5を成膜する方法としては、例えば、ワイヤ状の導電体を樹脂に練り込むことによって、ワイヤ状の導電体を樹脂に分散させる方法、ワイヤ状の導電体と、樹脂とを分散媒に分散させた分散液を用いる塗布法によって成膜化する方法、およびワイヤ状の導電体を樹脂から成る膜の表面にコーティングし、導電体を膜中に分散させる方法などを挙げることができる。
なお、第1電極5には、必要に応じて界面活性剤や酸化防止剤などの各種添加剤を加えてもよい。樹脂の種類は、屈折率、透光率および電気抵抗などの第1電極5の特性に応じて適宜選ばれる。
また、ワイヤ状の導電体を分散させる量は、第1電極5の電気抵抗、ヘイズ値および透光率などに影響するので、第1電極5の特性に応じて適宜設定される。
【0044】
本実施の形態の第1電極5は、導電性を有するワイヤ状の導電体を分散媒に分散させた分散液を、支持基板1の表面に塗布し、さらにこの塗膜を硬化することによって得られる。
【0045】
分散液は、ワイヤ状の導電体と樹脂とを分散媒に分散させることによって調合される。分散媒としては、たとえば樹脂を溶解させるものであればよく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒を挙げることができる。
【0046】
また、樹脂としては、透光率の高いものが好ましく、また第1電極5上に設けられる層を塗布法により形成する場合には、第1電極5の一部を構成する樹脂が塗布液に溶解しないものである必要がある。このような樹脂としては例えば、低密度または高密度のポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−ドモン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、メタキシレンジアミン−アジピン酸縮重合体;ポリメチルメタクリルイミドなどのアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリルなどのスチレン−アクリロニトリル系樹脂;トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロースなどの疎水化セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのハロゲン含有樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース誘導体などの水素結合性樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリメチレンオキシド樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶樹脂などのエンジニアリングプラスチック系樹脂などが挙げられる。
【0047】
また第1電極5上に設けられる層を塗布法により形成する場合、第1電極5の一部を構成する樹脂が塗布液に溶解し難いという観点からは、前記樹脂として熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、フォトレジスト材料が好適に用いられる。
【0048】
例示した樹脂の中でも、導電性を有する樹脂が好適に用いられ、導電性を有する樹脂としては例えばポリアニリン、ポリチオフェンの誘導体などが挙げられる。
【0049】
第1電極5の屈折率は、樹脂などによって構成される膜本体の屈折率によって主に決まる。この膜本体の屈折率は、例えば、用いる樹脂の種類によって主に決まるので、用いる樹脂を選択することによって、意図する屈折率を示す第1電極5を容易に形成することができる。
【0050】
なお、感光性フォトレジストに用いられる感光性材料および光硬化性モノマーに、ワイヤ状の導電体を分散させた分散液を用いれば、塗布法およびフォトリソグラフィによって所定のパターン形状を有する第1電極5を容易に形成することができる。
【0051】
第1電極5としては、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成する工程において加熱される温度で変形しないものが好ましく、第1電極5を構成する樹脂としては、ガラス転移点Tgが、150℃以上のものが好ましく、180℃以上のものがより好ましく、200℃以上のものがさらに好ましい。このような樹脂としては、例えばガラス転移点Tgが230℃のポリエーテルサルホンや高耐熱性フォトレジスト材料などを挙げることができる。
【0052】
ワイヤ状の導電体の分散量、並びに必要に応じて分散液に混入されるバインダーおよび添加剤などは、成膜の容易さ、および第1電極5の特性などの条件に応じて適宜設定および選択することができる。
【0053】
ワイヤ状の導電体を分散した分散液の塗布方法としては、ディッピング法、バーコータによるコーティング法、スピンコータによるコーティング法、ドクターブレード法、噴霧塗布法、スクリーンメッシュ印刷法、刷毛塗り、吹き付け、ロールコーティング等の工業的に通常用いられている方法を挙げることができる。なお、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂を用いる場合には、分散液を塗布した後に、加熱または光照射によって塗膜を硬化させることができる。
【0054】
(補助電極)
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、上記補助電極4は、前記陽極(第1電極)5の表面上に配置され、前記第1電極に電気的に接続された枠状の第1補助電極2と、前記第1補助電極2の枠内に配置されるとともに、該第1補助電極2に電気的に接続され、該第1補助電極2よりも線幅が狭い第2補助電極3とを備える。
【0055】
本実施形態においては、前記陽極(第1電極)5の表面上に第1補助電極2及び第2補助電極3を上記のような形態で配置することにより、上述の第1電極5内にワイヤ状の導電体を設けた構成による透明電極の電圧降下抑制効果が不十分となる場合であっても、透明電極の電圧降下を十分に抑制することができる。したがって、補助電極4を設けた有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光面積が大きい場合でも発光輝度のムラを十分に抑制することが可能となる。
【0056】
本実施形態においては、前記第1補助電極2及び前記第2補助電極3を有する補助電極4が、前記透明陽極(第1電極)5の表面のうち、発光部6側の表面上に配置されていてもよいが、前記透明陽極(第1電極)5と、前記第1補助電極2及び前記第2補助電極3との電気的な接続をより確実にするという観点から、発光部6と反対側の表面上に配置されていることが好ましい。補助電極4を第1電極の発光部6と反対側の表面上に配置する場合は、前記基板1に第1電極5を形成する前に、基板1の発光部6側の表面に補助電極4を形成する。
【0057】
第1補助電極2及び第2補助電極3とからなる補助電極4の配置形態の一例を図2〜図5に示す。
【0058】
図2に示す配置形態においては、支持基板1上に形成された補助電極4は、矩形枠状の第1補助電極2aと、この第1補助電極2aの枠の内側に配置されるとともに、該第1補助電極2aに電気的に接続されている第2補助電極3aとから構成されている。前記第2補助電極3aは、前記第1補助電極2aより線幅が狭く、複数の各第2補助電極3aは互いに直角に交差した格子状に配置されている。
【0059】
図3に示す配置形態においては、支持基板1上に形成された補助電極4は、矩形枠状の第1補助電極2bと、この第1補助電極2bの枠の内側に配置されるとともに、該第1補助電極2bに電気的に接続されている第2補助電極3bとから構成されている。前記第2補助電極3bは前記第1補助電極2bより線幅が狭く、複数の各第2補助電極3bは互いに平行に配列されている。
【0060】
図4に示す配置形態においては、支持基板1上に形成された補助電極4は、矩形枠状の第1補助電極2cと、この第1補助電極2cの枠内に配置されるとともに、該第1補助電極2cに電気的に接続されている第2補助電極3cとから構成されている。前記第2補助電極3cは前記第1補助電極2cより線幅が狭く、複数の各第2補助電極3cはハニカム構造の各六角形の各辺を構成するように配置されている。
【0061】
図5に示す配置形態においては、支持基板1上に形成された補助電極4は、矩形枠状の第1補助電極2dと、この第1補助電極2dの枠内に配置されるとともに、該第1補助電極2dに電気的に接続されている第2補助電極3dとから構成されている。前記第2補助電極3dは線幅が前記第1の補助電極2dより狭い二種類の細線電極から構成されている。すなわち、前記第2補助電極3dは、互いに直角に交差した主幹路的な複数の第1の細線電極3d−1と、これら第1の細線電極3d−1に囲まれた領域の内部、もしくは前記第1補助電極2dと第1の細線電極3d−1とで囲まれた領域の内部に形成された第2の細線電極3d−2とから構成されている。
【0062】
図5の配置形態では、前記第1の細線電極3d−1は格子状に配置され、その格子状の各枠内に複数の第2の細線電極3d−2が格子状に配列されている。前記第2の細線電極3d−2は、通常、好ましくは、前記第1の細線電極3d−1よりも線幅がさらに狭く形成されている。
【0063】
このような補助電極の配置形態を取ることにより、発光面積がさらに大きな素子においても、本発明の効果を得ることができる。
【0064】
ここで、枠状の第1補助電極2の枠形状としては、第1補助電極2内に第2補助電極3が形成され得るものであれば、特に限定されず、例えば、矩形状、円形状等が可能である。また第1補助電極2は、光が透過する主たる領域を囲むように設けられることが好ましい。第1補助電極2の線幅は、電気抵抗および有機エレクトロルミネッセンス素子の発光面積に応じて適宜選択することができ、1〜50mmの範囲であることが好ましく、3〜20mmの範囲であることがより好ましい。
【0065】
第2補助電極3が設けられる前記第1補助電極2の枠内は、発光部6からの光が透過する主たる領域であるので、第2補助電極3の線幅は、光の透過を阻害しないような寸法であることが好ましい。かかる観点から、第2補助電極3を構成する細線電極の線幅(以下、「第2補助電極の線幅」という)は、光の利用効率の観点から、1〜200μmの範囲であることが好ましく、10〜100μmの範囲であることがより好ましい。
【0066】
また、第1の実施形態においては、前記第2補助電極の線幅を前記第1補助電極の線幅で除した値が、1/1000〜1/10であることがより好ましい。線幅の比が前記範囲内であれば、光の利用効率を更に向上させるとともに、発光輝度のムラを更に抑制することができる傾向となる。
【0067】
このような第1補助電極2及び第2補助電極3の材料としては、透明陽極(第1電極)5よりも電気伝導度が高い(電気抵抗値の低い)ものが好ましく、通常は10S/cm以上の電気伝導度を有する導電材料が使用される。かかる導電材料の具体例としては、アルミニウム、銀、クロミニウム、金、銅、タンタル等の金属材料を挙げることができる。これらの中でも、電気伝導度の高さ、および材料のハンドリングの容易さの観点から、アルミニウム、クロミニウム、銅、銀がより好ましい。このような材料を用いることにより、第1電極よりも電気抵抗が低い第1補助電極2及び第2補助電極3を実現することができ、具体的には第1電極よりもシート抵抗が低い第1補助電極2及び第2補助電極3を実現することができる。
【0068】
第1補助電極2及び第2補助電極3からなる補助電極4が透明陽極(第1電極)5に接する面積は、第1電極5の抵抗による電圧降下を低減するという目的から、広ければ広い程良い。したがって、第1補助電極2及び第2補助電極3の材料として金属を用いた場合には、素子の発光する面積に対する補助電極4で被われる面積の割合に換算すると、補助電極4が透明陽極(第1電極)5に接する面積は、少なくとも20%であることが好ましく、より好ましくは、30%以上である。
【0069】
他方、補助電極4は発光部6からの光を透過させる透明陽極(第1電極)5に接して設けられるため、光をできるだけ遮断しないように、補助電極4の占有面積はできるだけ少ない方がよい。かかる観点からは、素子の発光する面積に対する補助電極4で被われる面積の割合は、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。
【0070】
これらを勘案すると、素子の発光する面積に対する補助電極4で被われる面積の割合は、20%以上であり且つ90%以下であることが好ましく、30%以上であり且つ80%以下であることがより好ましい。
【0071】
さらに、このような第1補助電極2及び第2補助電極3の厚みは、面抵抗が所望の値となるように適宜選択することができ、例えば10〜500nmであり、好ましくは20〜300nmであり、より好ましくは50〜150nmである。
【0072】
上述の第1補助電極2及び第2補助電極3を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等により補助電極の構成材料から成る膜を形成した後に、フォトレジストを用いたエッチング法によりパターン形成する方法が挙げられる。なお、エッチングを行うことなく補助電極をパターン形成することもできる。例えば、補助電極の形状に対応する開口が形成された1又は複数のマスクを用いて、複数回真空蒸着などを行うことによって、所定のパターンの補助電極を形成することができる。第2電極を構成する材料によっては、第2電極がエッチャントによって損傷を受けるおそれがあるが、マスクを用いて補助電極を形成することによって、エッチャントに対する耐性の低い第2電極などにでも補助電極を形成することができる。
【0073】
(発光部)
発光部6は、第1電極5と第2電極7との間に設けられる。発光部6は、少なくとも発光層10を備える。陽極(本実施の形態では第1電極5)と発光層10との間には、必要に応じて所定の1または複数の層9が設けられる。また発光層10と陰極(本実施の形態では第2電極7)との間には、必要に応じて所定の1または複数の層11が設けられる。
【0074】
(陽極と発光層との間に設けられる層)
陽極(本実施の形態では第1電極5)と発光層10との間に設けられる層9としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層等が挙げられる。正孔注入層は、陽極(第1電極)5からの正孔注入効率を改善する機能を有する層である。正孔輸送層は、陽極、正孔注入層または陽極により近い正孔輸送層からの正孔注入を改善する機能を有する層である。電子ブロック層は、電子の輸送を堰き止める機能を有する層である。なお正孔注入層、及び/又は正孔輸送層が電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が電子ブロック層を兼ねることがある。電子ブロック層が電子の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば、電子電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
【0075】
(陰極と発光層との間に設けられる層)
発光層10と陰極(本実施の形態では第2電極7)との間に設けられる層11としては、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層等が挙げられる。陰極7と発光層10との間に電子注入層と電子輸送層との両方の層が設けられる場合、陰極に接する層を電子注入層といい、この電子注入層を除く層を電子輸送層という。電子注入層は、陰極からの電子注入効率を改善する機能を有する層である。電子輸送層は、陰極、電子注入層または陰極により近い電子輸送層からの電子注入を改善する機能を有する層である。正孔ブロック層は、正孔の輸送を堰き止める機能を有する層である。なお電子注入層、及び/又は電子輸送層が正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が正孔ブロック層を兼ねることがある。正孔ブロック層が正孔の輸送を堰き止める機能を有することは、例えばホール電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
【0076】
本実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子における、陽極5から陰極7までの層構成の組み合わせ例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
e)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
f)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
g)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
h)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
j)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
k)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
l)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
m)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
n)陽極/発光層/電子注入層/陰極
o)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
p)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0077】
また、本実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、2層以上の発光層を有していてもよく、2層の発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子としては、以下のq)に示す層構成を挙げることができる。
q)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/電荷発生層/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
また、3層以上の発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子としては、具体的には、(電荷発生層/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層)を一つの繰り返し単位として、以下のr)に示す前記繰り返し単位を2つ以上含む層構成を挙げることができる。
r) 陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/(該繰り返し単位)/(該繰り返し単位)/・・・/陰極
上記層構成q)およびr)において、陽極、電極、陰極、発光層以外の各層は必要に応じて削除することができる。
ここで、電荷発生層とは、電界を印加することにより、正孔と電子を発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、酸化モリブデンなどから成る薄膜を挙げることができる。
【0078】
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、本実施の形態のように基板側に陽極が配置されるのが通常であるが、基板側に陰極を配置するようにしてもよい。
【0079】
本実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、さらに電極との密着性向上や電極からの電荷注入性の改善のために、電極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよい。また界面での密着性向上や混合の防止などのために、前述した各層間に薄いバッファー層を挿入してもよい。
以下、各層の構成についてさらに詳細に説明する。
【0080】
(正孔注入層)
正孔注入層を構成する材料としては、公知の材料を適宜用いることができ、特に制限はない。例えば、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。
【0081】
正孔注入層の成膜方法としては、例えば、正孔注入層となる材料(正孔注入材料)を含む溶液からの成膜を挙げることができる。溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔注入材料を溶解させるものであれば、特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒、および水を挙げることができる。
【0082】
溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法などの塗布法を挙げることができる。
【0083】
また、正孔注入層の厚みとしては、5〜300nm程度であることが好ましい。この厚みが5nm未満では、製造が困難になる傾向があり、他方、300nmを超えると、駆動電圧、および正孔注入層に印加される電圧が大きくなる傾向となる。
【0084】
(正孔輸送層)
正孔輸送層を構成する材料としては、特に制限はないが、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)4,4’−ジアミノビフェニル(TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)等の芳香族アミン誘導体、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリアリールアミンもしくはその誘導体、ポリピロールもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体などが例示される。
【0085】
これらの中でも、正孔輸送層に用いる正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリアリールアミンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体等の高分子正孔輸送材料が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0086】
正孔輸送層の成膜方法としては、特に制限はないが、低分子の正孔輸送材料では、高分子バインダーと正孔輸送材料とを含む混合液からの成膜を挙げることができ、高分子の正孔輸送材料では、正孔輸送材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。
【0087】
溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば、特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒などを挙げることができる。
溶液からの成膜方法としては、前述した正孔注入層の成膜法と同様の塗布法を挙げることができる。
【0088】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収の弱いものが好適に用いられ、例えばポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどを挙げることができる。
【0089】
正孔輸送層の厚みは、特に制限されないが、目的とする設計に応じて適宜変更することができ、1〜1000nm程度であることが好ましい。この厚みが前記下限値未満となると、製造が困難になる、または正孔輸送の効果が十分に得られないなどの傾向があり、他方、前記上限値を超えると、駆動電圧および正孔輸送層に印加される電圧が大きくなる傾向がある。したがって正孔輸送層の厚みは、上述のように、好ましくは、1〜1000nmであるが、より好ましくは、2nm〜500nmであり、さらに好ましくは、5nm〜200nmである。
【0090】
(発光層)
前記発光部6を構成する発光層10は、通常、主として蛍光または燐光を発光する有機物を有し、さらにドーパント材料を含んでいてもよい。有機物としては低分子化合物、及び/又は高分子化合物が用いられ、好ましくは高分子化合物が用いられ、発光層は、ポリスチレン換算の数平均分子量が、10〜10である高分子化合物を含むことが好ましい。この実施形態において用いることができる発光層を構成する発光材料としては、例えば以下のものが挙げられる。なお、陽極5と陰極7との間には、一層の発光層に限らず、複数の発光層が配置されてもよい。
【0091】
(色素系材料)
色素系材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー(誘導体)、ピラゾリンダイマーなどが挙げられる。
【0092】
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、例えば、イリジウム錯体、白金錯体等の三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体など、中心金属に、Al、Zn、BeなどまたはTb、Eu、Dyなどの希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを有する金属錯体などを挙げることができる。
【0093】
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素体や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどが挙げられる。
【0094】
上記発光性材料のうち、青色に発光する材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、およびそれらの重合体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体やポリフルオレン誘導体などが好ましい。
また、緑色に発光する材料としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
また、赤色に発光する材料としては、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることが出来る。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0095】
(ドーパント材料)
発光層中に発光効率の向上や発光波長を変化させるなどの目的で、ドーパントを添加することができる。このようなドーパントとしては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンなどを挙げることができる。なお、このような発光層の厚さは、通常約20〜2000Åである。
【0096】
(発光層の成膜方法)
有機物を含む発光層の成膜方法としては、発光材料を含む溶液を発光層形成領域の面上に塗布する方法、発光層形成領域の面上に真空蒸着法を用いて堆積させる方法、所定の基体の上に発光材料を含む溶液を塗布し、この塗膜を成膜化し、得られた膜を発光層領域に転写する方法などを用いることができる。溶液からの成膜に用いる溶媒の具体例としては、前述の溶液から正孔輸送層を成膜する際に正孔輸送材料を溶解させる溶媒と同様の溶媒が挙げられる。
【0097】
発光材料を含む溶液を発光層形成領域の面上、もしくは転写用の膜を形成するための基体の上に塗布する方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法等の塗布法を用いることができる。パターン形成や多色の色分けが容易であるという点で、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法が好ましい。また、昇華性の低分子化合物の場合は、真空蒸着法を用いることができる。さらには、レーザーによる転写や熱転写により、所望のところのみに発光層を形成する方法も用いることができる。
【0098】
(電子注入層)
電子注入層は、先に述べたように、電子輸送層と陰極との間、または発光層と陰極との間に設けられる。電子注入層としては、発光層の種類に応じて、アルカリ金属やアルカリ土類金属、あるいは前記金属を一種類以上含む合金、あるいは前記金属の酸化物、ハロゲン化物および炭酸化物、あるいは前記物質の混合物などが挙げられる。
【0099】
前記アルカリ金属またはその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウム等が挙げられる。
【0100】
前記アルカリ土類金属またはその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0101】
さらに、金属、金属酸化物、金属塩をドーピングした有機金属化合物、および有機金属錯体化合物、またはこれらの混合物も、電子注入層の材料として用いることができる。
【0102】
この電子注入層は、2層以上を積層した積層構造を有していても良い。具体的には、Li/Caなどが挙げられる。この電子注入層は、蒸着法、スパッタリング法、印刷法などにより形成される。
この電子注入層の膜厚としては、1nm〜1μm程度が好ましい。
【0103】
(電子輸送層)
電子輸送層を形成する材料としては、公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンもしくはその誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、ナフトキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンもしくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンもしくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体等が例示される。
【0104】
これらのうち、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
【0105】
なお、電子注入層および正孔注入層を総称して電荷注入層と言う場合があり、電子輸送層および正孔輸送層を総称して電荷輸送層と言う場合がある。
【0106】
(第2電極)
第1の実施形態における第2電極7は、前記第1電極5に対向して配置される電極であって、有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極となるものであるが、本発明においては、後述の第2の実施形態に示すように、陽極である場合も可能である。このような陰極の材料としては、仕事関数が小さく、発光層への電子注入が容易な材料が好ましい。また陰極の材料としては電気伝導度が高く、可視光反射率の高い材料が好ましい。かかる陰極材料としては、具体的には、金属、金属酸化物、合金、グラファイトまたはグラファイト層間化合物、酸化亜鉛(ZnO)等の無機半導体などを挙げることができる。
【0107】
上記金属としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属や周期表の13族金属等を用いることができる。これら金属の具体的例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等を挙げることができる。
【0108】
また、合金としては、上記金属の少なくとも一種を含む合金を挙げることができ、具体的には、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等を挙げることができる。
【0109】
陰極7は、必要に応じて光透過性を有する電極とされるが、それらの材料としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、IZOなどの導電性酸化物;ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの導電性有機物を挙げることができる。
【0110】
なお、陰極(第2電極)7を2層以上の積層構造としてもよい。また、電子注入層が陰極として用いられる場合もある。
【0111】
陰極(第2電極)7の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0112】
上述の陰極(第2電極)7を形成させる方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が挙げられる。なお、この第2電極を2層以上の積層構造としてもよい。
【0113】
(封止基板)
上述のように陰極(第2電極)7が形成された後、基本構造として補助電極4−第1電極(陽極)5−発光部6−第2電極(陰極)7を有してなる発光機能部を保護するために、該発光機能部を封止する封止基板(上部封止膜)8が形成されることが好ましい。この封止基板8は、通常、少なくとも一つの無機層と少なくとも一つの有機層を有する。積層数は、必要に応じて決定され、基本的には、無機層と有機層は交互に積層される。
【0114】
なお、ガラス基板に比べると、プラスチック基板は酸素および水などのガスの透過性が高い。発光層10などの発光物質は酸化されやすく、酸素および水などと接触することにより劣化しやすいので、前記基板1としてプラスチック基板が用いられる場合には、ガスバリア性を高めるための処理を基板に予め施すことが好ましい。例えばプラスチック基板上にガスなどに対するバリア性の高い下部封止膜を積層し、その後、この下部封止膜の上に上記発光機能部を積層することが好ましい。この下部封止膜は、通常、上記封止基板(上部封止膜)と同様の構成、同様の材料にて形成される。
【0115】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、第1電極(陽極)5に接する位置に配置される層としては、上述のように、正孔注入層、正孔輸送層、および発光層などが挙げられる。正孔注入層、正孔輸送層、および発光層の屈折率は、それぞれ通常1.5〜1.8程度である。第1電極5の屈折率(n1)は、前述した式(1)を満たし、好ましくは、第1電極5に接する層の屈折率(n3)以下になるように設定される。
【0116】
従来のボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス素子では、ガラス基板上に形成されたITOが陽極として用いられてきた。ITOの屈折率(n1)は、2程度であり、ガラス基板の屈折率(n2)は、1.5程度であり、有機体のITOに接する部分(たとえば発光層)の屈折率(n3)は、1.7程度なので、従来のボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス素子では、屈折率の低いガラス基板と発光層とで屈折率の高いITOが挟まれた構成を形成していた。したがって、発光層からの光の一部が、全反射などによってITOで反射されるので、発光層からの光を効率的に取出すことができなかった。
【0117】
それに対して、本実施形態では、前述の式(1)の関係を満たす第1電極5と支持基板1を用いることによって、従来の有機エレクトロルミネッセンス素子に比べて、支持基板1、第1電極5、および発光部6の第1電極5に接する部分の各屈折率の差が小さい有機エレクトロルミネッセンス素子を構成することができる。これによって、発光層からの光が第1電極5で反射することを抑制し、有機エレクトロルミネッセンス素子の光取出し効率を向上することができる。特に、n2≦n1≦n3の関係を満たす第1電極5と支持基板1を用いれば、支持基板1、第1電極5、および発光部6の第1電極5に接する部分の各屈折率の差をさらに小さくすることができ、発光層からの光が第1電極5で反射することを抑制し、有機エレクトロルミネッセンス素子の光取出し効率をさらに向上することができる。これによって発光効率が高い有機エレクトロルミネッセンス素子を実現することができる。
【0118】
また、表面粗さRaが、100nm以下の平坦な第1電極5に発光部6を成膜するので、各層における膜厚のばらつきを抑制することができる。これによって、第1電極5の突起による短絡をなくすことができる。
【0119】
また、第1電極5を塗布法によって形成することができるので、真空蒸着およびスパッタ法などのように真空装置を用いて透明な第1電極を形成する場合、または特殊な工程で第1電極を形成する場合に比べて、簡易に第1電極を形成することができ、低コスト化を図ることができる。さらに、第1電極5の特性は、樹脂およびワイヤ状の導電体の種類、並びにワイヤ状の導電体の形状などによって決まるので、これらを適宜選択するだけで、意図する光学特性および電気的特性などを示す第1電極5を容易に得ることができる。
【0120】
さらに、本実施形態では、前記陽極(第1電極)5の表面上に第1補助電極2及び第2補助電極3を配置しており、上述の第1電極5の枠の内側にワイヤ状の導電体を設けた構成による透明電極の電圧降下抑制効果が不十分となる場合であっても、透明電極の電圧降下を十分に抑制することができる。すなわち、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光面積が大きい場合でも発光輝度のムラを十分に抑制することが可能となる。さらに本実施の形態では輝度ムラを抑制するために開口率を意図的には調整していないので、開口率を調整することによって輝度ムラを抑制する従来の技術に比べると、光の利用効率が向上し、結果として発光効率が向上する。
【0121】
[有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法]
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造は、上述の各層の材料説明のところで、それぞれ説明した形成方法を組み合わせることによって、実現することができる。すなわち、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、
(1)上述した構成の基板から適宜に選択した基板を用意する工程、
(2)用意した基板上に補助電極を上述した方法により形成する工程、
(3)基板および補助電極上に上述した方法により第1電極を形成する工程、
(4)第1電極上に上述した方法により1つ又は複数の層からなる発光部を形成する工程、
(5)発光部の上に上述した方法により第2電極を形成する工程、
を有する。
【0122】
[第2の実施形態]
次に、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の第2の実施形態を、図6を参照して説明する。第2の実施形態と、上述の第1の実施形態との違いは、上述の第1の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子が発光部6からの光を透明な陽極(第1電極)5を透過させて透明な支持基板1から外部へ出射するボトムエミッション型の素子であったのに対し、第2の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では発光部26からの光を透明な陰極(第1電極)27を透過させて透明な封止基板28から外部へ出射するトップエミッション型の素子である点にある。
【0123】
第2の実施形態では、発光部26からの光を透過させる透明な第1電極が透明陰極27であり、この透明陰極27には、上述の第1の実施形態の第1電極(陽極)5と同様に、内部にワイヤ状の導電体が設置されるとともに、透明陰極27の屈折率をn1、透明な封止基板28の屈折率をn2とすると、n1、およびn2がそれぞれ次式(1)
【0124】
【数5】

を満たし、前記透明陰極27の可視光領域の光の透過率が80%以上、体積抵抗率が1Ω・cm以下、表面粗さが100nm以下に設定されている。
【0125】
上記透明封止基板28は、有機エレクトロルミネッセンス素子の雰囲気に含まれる酸素および水蒸気などを通し難い封止膜によって実現され、例えば金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物または金属酸窒化物などから成る無機層、あるいは前記無機層と有機層とを組合せた層、あるいは無機−有機ハイブリッド層などが好適に用いられる。無機層としては、薄膜層であって空気中で安定なものが好ましく、具体的には、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、インジウム錫酸化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸窒化ケイ素、及びそれらの組合せの薄膜層が挙げられる。より好ましくは、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素からなる薄膜層であり、さらに好ましくは酸窒化ケイ素の薄膜層である。なお、透明封止基板28としては、例示したもののうち、透明陰極(第1電極)27との屈折率の差が、0.3未満の屈折率を示すものが適宜用いられる。
【0126】
さらに、第2の実施形態では、第1電極27の封止基板28側の表面に補助電極24が形成されている。本実施の形態における第1電極には、例えば陰極電極として例示した金属薄膜を透明陰極として用いることができる。なお透明陰極に用いられる金属薄膜は、光が透過可能な程度に薄膜に形成されるので、シート抵抗が高くなる。したがって、透明陰極は、金属箔膜状にITO薄膜などの透明電極を積層させた積層体によって構成されることが好ましい。また第2電極25と基板21との間に、例えば銀などの反射率の高い反射膜を設けることが好ましく、このような反射膜を設けることによって、基板21側に向かう光を第1電極27側に反射することができ、光の取出し効率を向上させることができる。補助電極24は、上述の第1の実施形態における補助電極4と形状、寸法、構成材料は、同一でよく、上述のように、透明陰極(第1電極)27に接して設けられている点が異なるだけである。この第2の実施形態では、第1電極27を形成した後に、該第1の電極27の封止基板28側に補助電極24を形成する。補助電極24の形成方法は、第1の実施形態に述べた補助電極4の形成方法と同様である。
【0127】
本発明にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子を、上記第2の実施形態のように構成しても、上述の第1の実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
すなわち、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記第1の実施形態によっても、第2の実施形態によっても、透明電極の抵抗による電圧降下を低減し、発光面積が大きい場合でも発光輝度のムラが十分に抑制され、均一発光が可能となり、かつ光取り出し効率が向上する。
【0128】
上記第1の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光部からの光を透明陽極(第1電極)を透過させて透明な支持基板から外部に出射するボトムエミッション型の素子構造を有している。この第1の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構造を第1の構造と仮称すると、同じボトムエミッション型の素子構造であって、透明基板側に透明陰極(第1電極)を設け、封止基板側に陽極を設けた構造(第2の構造)の有機エレクトロルミネッセンス素子も作製可能である。このような第2の構造の有機エレクトロルミネッセンス素子に対しても、本発明は適用可能である。
【0129】
また、上記第2の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光部からの光を透明陰極(第1電極)を透過させて透明な封止基板から外部に出射するトップエミッション型の素子構造を有している。この第2の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構造を第3の構造と仮称すると、同じトップエミッション型の素子構造であって、透明な封止基板側に透明陽極(第1電極)を設け、支持基板側に陰極を設けた構造(第4の構造)の有機エレクトロルミネッセンス素子も作製可能である。このような第4の構造の有機エレクトロルミネッセンス素子に対しても、本発明は適用可能である。
【0130】
また、発光部からの光を、透明陽極(第1電極)を透過させて透明な支持基板から外部に出射すると同時に、透明陰極(第1電極)を透過させて透明な封止基板から外部に出射するダブルエミッション型の素子構造も作製可能であり、このようなダブルエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス素子に対しても、本発明は適用可能である。
【0131】
以上説明したような本発明の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、曲面状や平面状の照明装置、例えばスキャナの光源として用いられる面状光源、表示装置に好適に用いることができる。
【0132】
有機エレクトロルミネッセンス素子を備える表示装置としては、アクティブマトリックス表示装置、パッシブマトリックス表示装置、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、および液晶表示装置などを挙げることができる。なお有機エレクトロルミネッセンス素子は、アクティブマトリックス表示装置、パッシブマトリックス表示装置において、各画素を構成する発光素子として用いられ、セグメント表示装置において、各セグメントを構成する発光素子として用いられ、ドットマトリックス表示装置、および液晶表示装置において、バックライトとして用いられる。
【実施例】
【0133】
以下、作製例及び参考例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の例示に限定されるものではない。
【0134】
なお、以下に示す作製例1および参考例1,2では、合成例1、2において得られる下記構造式(A)〜(C)で表される化合物A〜Cを用いたが、これら化合物A〜Cは、国際公開2000/046321号パンフレットに記載された方法に従って合成したものである。
【0135】
【化1】

【0136】
【化2】

【0137】
【化3】

【0138】
(合成例1)
下記一般式(1)で表される高分子化合物1を以下の方法により合成した。
【0139】
【化4】

【0140】
先ず、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ社製、商品名:Aliquat336)0.91gと、上記化合物A5.23gと、上記化合物C4.55gとを反応容器(200mLセパラブルフラスコ)に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。その後、トルエン70mLを加え、酢酸パラジウム2.0mg、トリス(o−トリル)ホスフィン15.1mgを加えた後に、還流させて混合溶液を得た。
【0141】
得られた混合溶液に、炭酸ナトリウム水溶液19mLを滴下後、還流下で終夜攪拌した後、フェニルホウ酸0.12gを加えて7時間攪拌した。その後、300mlのトルエンを加え、反応液を分液し、有機相を酢酸水溶液及び水で洗浄した後、ナトリウムN,N−ジエチルジチオカルバメート水溶液を加えて4時間攪拌した。
【0142】
次いで、攪拌後の混合溶液を分液した後、シリカゲル−アルミナカラムに通し、トルエンで洗浄した後に、メタノールに滴下してポリマーを沈殿させ、その後、得られたポリマーを濾過、減圧乾燥した後にトルエンに溶解させた。得られたトルエン溶液を再度メタノールに滴下して沈殿物を生じさせ、この沈殿物を濾過、減圧乾燥して高分子化合物1を6.33g得た。得られた高分子化合物1のポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは3.2×10であり、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは8.8×10であった。
【0143】
(合成例2)
下記一般式(2)で表される高分子化合物2を以下の方法により合成した。
【0144】
【化5】

【0145】
先ず、化合物B22.5gと2,2’−ビピリジル17.6gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。その後、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)1500gを加え、混合溶液を得た。得られた混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)31gを加え、室温で10分間攪拌した後、60℃で3時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気中で行った。
【0146】
次に、得られた反応溶液を冷却した後、この溶液に、25質量%アンモニア水200mL/メタノール900mL/イオン交換水900mL混合溶液をそそぎ込み、約1時間攪拌した。その後、生成した沈殿物を濾過して回収し、この沈殿物を減圧乾燥した後、トルエンに溶解させた。そして、得られたトルエン溶液を濾過して不溶物を除去した後、このトルエン溶液を、アルミナを充填したカラムに通過させることにより精製した。
【0147】
次に、精製後のトルエン溶液を、1規定塩酸水溶液で洗浄し、静置、分液した後、トルエン溶液を回収した。そして、このトルエン溶液を、約3質量%アンモニア水で洗浄し、静置、分液した後、トルエン溶液を回収した。その後、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄し、静置、分液した後、洗浄後のトルエン溶液を回収した。
【0148】
次いで、洗浄後のトルエン溶液をメタノール中にそそぎ込み、沈殿物を生じさせ、この沈殿物をメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して高分子化合物2を得た。得られた高分子化合物2のポリスチレン換算の重量平均分子量は8.2×10であり、ポリスチレン換算の数平均分子量は1.0×10であった。
【0149】
(作製例1)
この作製例1では、透明な第1電極に補助電極を形成した場合の効果を確認するために、透明な基板と透明な第1電極の屈折率を特定の範囲に制御せず、また第1電極内にワイヤ状の導電体を設置する第1電極内にワイヤ状の導電体を配置せずに、透明な第1電極(陽極)の基板側の表面に補助電極を配置した有機エレクトロルミネッセンス素子を製造した。
【0150】
支持基板としてガラス基板(100mm×100mm)を用いた。支持基板の温度を120℃にして、Crターゲット及びスパッタリングガスとしてArを用いたDCスパッタリング法により、膜厚1000nmのCrを前記支持基板に堆積させた。このときの製膜圧力は0.5Pa、スパッタリングパワーは2.0kWであった。Cr膜の上にフォトレジストを塗布し、さらに110℃で90秒間ベークした。次に、線幅20mmのラインから構成される正方形の枠状の開口部と前記開口部の枠内に、縦×横のピッチがそれぞれ300μm×100μm、縦×横の線幅がそれぞれ70μm×30μmからなる格子型の開口部とを有するフォトマスクを通して、200mJのエネルギーで露光し、0.5質量%の水酸化カリウム水溶液によって現像後、130℃で110秒間ポストベークした。次いで、Cr用エッチング液に、40℃、120秒間浸漬し、Crのパターニングを行い、次に2質量%水酸化カリウム水溶液に浸漬することで、レジスト残渣を剥離し、Crからなる補助電極(第1補助電極及び第2補助電極)を形成した。
【0151】
次に、補助電極が形成された基板上に第1電極を形成した。具体的には、基板温度を120℃にし、第1電極材料としてITO焼成ターゲット、スパッタリングガスとしてArを用いて、DCスパッタリング法により、膜厚3000nmのITOを堆積させた。このときの製膜圧力は0.25Pa、スパッタリングパワーは0.25kWであった。その後、200℃のオーブンで40分間アニール処理を行った。その後、第1電極が形成された基板を60℃の弱アルカリ性洗剤、冷水、50℃の温水をもちいて超音波洗浄し、50℃の温水から引き上げて乾燥した後、20分間UV/O洗浄を行った。
【0152】
次に、0.45μm径のフィルター及び0.2μm径のフィルターをそれぞれ用いて、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(スタルクヴィテック社製、商品名:BaytronP CH8000)の懸濁液を2段階濾過し、2段階目に濾過した溶液を用いて、前記洗浄後の基板にスピンコート法により80nmの厚みで薄膜を形成し、大気雰囲気下においてホットプレート上で、200℃で15分間熱処理し、正孔注入層を形成した。
【0153】
次いで、合成例1、2で得られた高分子化合物1及び高分子化合物2を重量比で1:1の比で計り取り、トルエンに溶解させ、1質量%の高分子溶液を作製した。上記正孔注入層が形成された基板上に、作製した高分子溶液をスピンコート法により80nmの膜厚で製膜した後、窒素雰囲気下のホットプレート上で130℃、60分間熱処理し、発光層を形成した。
【0154】
その後、前記発光層が形成された基板を真空蒸着機に導入し、陰極としてLiF、Ca、Alを順次それぞれ、2nm、5nm、200nmの厚みで蒸着し、第2電極を形成した。なお、この蒸着工程においては、真空度が1×10−4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
【0155】
最後に、不活性ガス中で、第2電極が形成された基板における第2電極の表面をガラス板で覆い、さらに4辺を光硬化樹脂で覆った後に、光硬化樹脂を硬化させることで保護層を形成して、有機エレクトロルミネッセンス発光素子を得た。
【0156】
(参考例1)
上記作製例1において、補助電極を形成する際のフォトマスクとして、線幅20mmのラインから構成される正方形の枠状の開口部のみを有するフォトマスクを用いた以外は、作製例1と同様にして、比較用の有機エレクトロルミネッセンス発光素子を作製した。
【0157】
(参考例2)
上記作製例1において、補助電極を形成する際のフォトマスクとして、縦×横のピッチがそれぞれ300μm×100μm、縦×横の線幅がそれぞれ70μm×30μmからなる格子型の開口部とを有するフォトマスクを用いた以外は、作製例1と同様にして、参考比較用の有機エレクトロルミネッセンス発光素子を作製した。
【0158】
(補助電極形成効果の評価)
作製例1及び参考例1,2で得られた有機エレクトロルミネッセンス発光素子の発光特性を評価した。具体的には、素子全体に8Vの電圧を印加した際の発光輝度を測定し、さらに発光面の様子を目視にて観察した。得られた結果を下記(表1)に示す。
【0159】
【表1】

(表1)に示した結果から明らかなように、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、発光面積が大きい場合でも発光輝度のムラが十分に抑制され、均一発光が可能であることが確認された。
【0160】
以下の作製例2〜4では、透明な基板と透明な第1電極の屈折率を特定の範囲に制御するとともに、第1電極内にワイヤ状の導電体を設置することによる効果を確認するために、透明陽極の基板側の表面に補助電極を配置せず、透明な基板と透明な第1電極の屈折率を特定の範囲に制御するとともに、第1電極内にワイヤ状の導電体を設置した有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する。
【0161】
(作製例2)
ワイヤ状の導電体として、アミノ基含有高分子系分散剤(アイ・シー・アイ・ジャパン社製、商品名「ソルスパース24000SC」)で表面を保護した銀ナノワイヤー(長軸平均長さ1μm、短軸平均長さ10nm)を用いる。この銀ナノワイヤーのトルエン分散液2g(銀ナノワイヤー1.0g含有)と、膜本体となる光硬化性モノマーであるトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製、商品名「NKエステル−TMPT」)0.25gとを混合し、さらに重合開始剤(日本チバ・ガイギー社製、商品名「イルガキュア907」)0.0025gを添加する。この混合溶液を厚さ0.7mmのガラス基板(透明板本体)に塗布し、ホットプレート上で110℃20分加熱して溶媒を乾燥し、さらにUVランプで光照射(6000mW/cm2)することによって硬化して、膜厚が150nmの透明導電膜を得る。このように成膜することによって、透過率が80%以上、体積抵抗率が1Ω・cm以下、表面粗さが100nm以下である透明導電膜が得られる。
【0162】
光硬化樹脂の屈折率は1.47であり、得られる透明導電膜の屈折率も1.47となり、この透明導電膜付き透明板を、透明第1電極を有する透明基板あるいは封止基板に用いることにより有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができる。得られた有機エレクトロルミネッセンス素子では光取出し効率が向上する。
【0163】
(作製例3)
ワイヤ状の導電体として、アミノ基含有高分子系分散剤(アイ・シー・アイ・ジャパン社製、商品名「ソルスパース24000SC」)で表面を保護した銀ナノワイヤー(長軸平均長さ1μm、短軸平均長さ10nm)を用いる。この銀ナノワイヤーのトルエン分散液2g(銀ナノワイヤー1.0g含有)と、膜本体となるポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(スタルク社製、商品名「BaytronP」)2.5gとを混合する。この混合溶液を厚さ0.7mmのガラス基板(透明板本体)に塗布し、ホットプレート上で200℃20分加熱し、溶媒を乾燥すると膜厚が150nmの透明導電膜を得る。このように成膜することによって、透過率が80%以上、体積抵抗率が1Ω・cm以下、表面粗さが100nm以下である透明導電膜が得られる。
【0164】
「BaytronP」の屈折率は1.7であり、得られる透明導電膜の屈折率も1.7となり、この透明導電膜付き透明板を、透明第1電極を有する透明基板あるいは封止基板に用いることにより有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができる。得られた有機エレクトロルミネッセンス素子では、光取出し効率が向上する。
【0165】
(作製例4)
ワイヤ状の導電体として、アミノ基含有高分子系分散剤(アイ・シー・アイ・ジャパン社製、商品名「ソルスパース24000SC」)で表面を保護した銀ナノワイヤー(長軸平均長さ1μm、短軸平均長さ10nm)を用いる。膜本体となるポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(スタルク社製、商品名「BaytronP」)2.5gに、ジメチルスルホキシド0.125gを混合した混合液と、前記銀ナノワイヤーのトルエン分散液2g(銀ナノワイヤー1.0g含有)とを混合する。この混合溶液を0.7mm厚のガラス基板に塗布し、ホットプレート上で200℃20分加熱し、溶媒を乾燥すると膜厚が150nmの導電膜を得る。このように成膜することによって透過率が80%以上、体積抵抗率が1Ω・cm以下、表面粗さが100nm以下である透明導電膜が得られる。
【0166】
「BaytronP」の屈折率は1.7であり、得られる透明導電膜の屈折率も1.7となり、この透明導電膜付き透明板を、透明第1電極を有する透明基板あるいは封止基板に用いることにより有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができる。得られた有機エレクトロルミネッセンス素子では光取出し効率が向上する。
【0167】
なお、上記作製例1では、透明な基板と透明な第1電極の屈折率を特定の範囲に制御せず、また第1電極内にワイヤ状の導電体を配置せずに、透明な第1電極(陽極)の基板側の表面に補助電極を配置した有機エレクトロルミネッセンス素子を製造し、透明な第1電極に補助電極を形成した場合の効果を確認した。
【0168】
また、上記作製例2〜4では、透明陽極の基板側の表面に補助電極を配置せず、透明な基板と透明な第1電極の屈折率を特定の範囲に制御するとともに、第1電極内にワイヤ状の導電体を設置した有機エレクトロルミネッセンス素子を製造し、透明な基板と透明な第1電極の屈折率を特定の範囲に制御している。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】本発明の第1の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の断面図である。
【図2】有機エレクトロルミネッセンス素子における第1補助電極及び第2補助電極の位置関係の一例を概略的に示す平面図である。
【図3】有機エレクトロルミネッセンス素子における第1補助電極及び第2補助電極の位置関係の一例を概略的に示す平面図である。
【図4】有機エレクトロルミネッセンス素子における第1補助電極及び第2補助電極の位置関係の一例を概略的に示す平面図である。
【図5】有機エレクトロルミネッセンス素子における第1補助電極及び第2補助電極の位置関係の他の一例を概略的に示す平面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の断面図である。
【符号の説明】
【0170】
1 透明支持基板
2,2a,2b,2c,2d 第1補助電極
3,3a,3b,3c,3d 第2補助電極
4 補助電極
5 透明陽極(第1電極)
6 発光部
7 陰極(第2電極)
8 保護膜(上部封止膜)
9 陽極と発光層との間に設けられる層
10 発光層
11 陰極と発光層との間に設けられる層
21 支持基板
22 第1補助電極
23 第2補助電極
24 補助電極
25 陽極(第2電極)
26 発光部
27 透明陰極(第1電極)
28 保護膜(上部封止膜)
29 陽極と発光層との間に設けられる層
30 発光層
31 陰極と発光層との間に設けられる層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基板と、
前記基板に接して設けられる透明な第1電極と、
前記第1電極と比較して電気抵抗が低く、前記第1電極に接して設けられる補助電極と、
第2電極と、
前記第1電極および第2電極の間に配置された発光部と、を含み、
前記第1電極の屈折率をn1、前記基板の屈折率をn2とすると、n1、およびn2がそれぞれ次式(1)
【数1】

を満たし、
前記第1電極の可視光領域の光の透過率が80%以上、体積抵抗率が1Ω・cm以下、表面粗さが100nm以下であり、
前記補助電極が、
枠状の第1補助電極と、
該第1補助電極の枠内に配置されるとともに、該第1補助電極に電気的に接続され、該第1補助電極よりも線幅が狭い第2補助電極と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記第1電極が、
透明の膜本体と、
上記膜本体中に配置され、導電性を有するワイヤ状の導電体と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記ワイヤ状の導電体の径が200nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記ワイヤ状の導電体が前記膜本体中において網目構造を構成していることを特徴とする請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記膜本体が導電性を有する樹脂を含んでいることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記第2補助電極の線幅を前記第1補助電極の線幅で除した値が、1/1000〜1/10であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記基板が、支持基板であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記基板が、封止基板であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
導電性を有するワイヤ状の導電体を分散媒に分散させた分散液を用いる塗布法により、前記基板の前記発光部側の表面上に第1電極を形成する工程を含み、
該工程では、該第1電極の屈折率をn1、前記基板の屈折率をn2とすると、n1、およびn2がそれぞれ次式(1)
【数2】

を満たし、可視光領域の光の透過率が80%以上、体積抵抗率が1Ω・cm以下、表面粗さが100nm以下の第1電極を形成する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項10】
前記第1電極を形成する前に、前記基板の前記発光部側の表面に前記補助電極を設けることを特徴とする請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
導電性を有するワイヤ状の導電体を分散媒に分散させた分散液を用いる塗布法により、前記発光部の封止基板側に第1電極を形成する工程を含み、
該工程では、該第1電極の屈折率をn1、前記封止基板の屈折率をn2とすると、n1、およびn2がそれぞれ次式(1)
【数3】

を満たし、可視光領域の光の透過率が80%以上、体積抵抗率が1Ω・cm以下、表面粗さが100nm以下の第1電極を形成する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項12】
前記第1電極を形成した後に、該第1電極の封止基板側に補助電極を設けることを特徴とする請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項14】
請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えることを特徴とする面状光源。
【請求項15】
請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−61874(P2010−61874A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224027(P2008−224027)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】