説明

有機エレクトロルミネッセンス素子、その製造方法及び発光表示装置

【課題】輝度ムラや発光色ムラがない画素面積を拡大させることができる有機EL素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】画素に対応するパターンで形成された第1電極2を有する基板1を準備する工程と、基板1上の隣り合う第1電極2,2間の隙間Gに、その隙間幅W1より狭い幅W2の隔壁3を形成して前記画素に対応する開口部を形成する工程と、隔壁3で囲まれた開口部内に有機EL層の一部又は全部を構成する有機材料を塗布して有機層4,5,6を形成する工程と、有機EL層上に第2電極を形成する工程と、を少なくとも有する。有機層を塗布形成した工程後で有機EL層の一部又は第2電極を形成する工程前に、絶縁層17を形成することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、その製造方法及び発光表示装置に関し、更に詳しくは、隔壁構造を工夫して、輝度ムラや発光色ムラがない画素面積を拡大させることができる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法、及びその方法で得られた有機エレクトロルミネッセンス素子、並びに発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子という。)は、有機EL層を一対の電極間に挟み、両電極間に電圧をかけて有機EL層内の発光材料を発光させる素子である。有機EL素子では、通常、画素毎に発光色が異なるように発光層等をパターン形成している。そうした発光層等の形成手段として、発光材料等をシャドーマスクを介して真空蒸着する方法、有機溶剤に溶解させた発光材料等をインクジェット、ノズル塗布、ディスペンサー又はスクリーン印刷等で所定部位に塗布する方法、全面に形成した後に紫外線照射により特定部分の発光材料等を破壊して除去する方法等がある。
【0003】
中でも、発光層等をインクジェット法やノズル塗布法等で湿式塗布する方法は、材料の利用効率が高く且つ製造コストの点で有利であるため、実用化に向けて種々の検討がなされている。こうした塗布法は流動性のある有機材料インキを塗布するので、図8及び図9に示すように、通常、有機材料インキの塗布領域である画素領域を画定するために、基板101上の隣り合う第1電極間に絶縁層105や隔壁106を設けることが一般的である。
【0004】
図8(A)は、絶縁層を設けない場合の隣り合う第1電極102,102間の断面形態図であり、図8(B)は、絶縁層105を設けた場合の隣り合う第1電極102,102間の断面形態図である。絶縁層を設けない場合、ウエットエッチングで鋭利にエッチングされた第1電極102の周縁端103では、図8(A)に示すように、発光層等104の厚さが薄くなる。そのため、第1電極102と、後に形成される第2電極(図示しない)とが短絡するおそれがある。一方、図8(B)に示すように、第1電極102,102の周縁端103,103にそれぞれ架かるように絶縁層105を設けることにより、鋭利にエッチングされた第1電極102の周縁端103を絶縁層105で覆うことができる。その結果、第1電極102はその後に形成される第2電極との間で短絡が生じない。
【0005】
また、図9に示すように、隔壁106で囲まれた画素領域110(開口部)内にインクジェット法やノズル塗布法によって有機材料インキを塗布・乾燥して有機層を形成した場合、有機材料インキのメニスカスやインキの塗れ広がり方により、画素領域110の周縁部111の膜厚が中央部112に比べて厚くなる。こうした画素領域110内での膜厚の違いは、有機EL層が発光した際に、輝度ムラ、発光色ムラ等の表示ムラの原因となる。
【0006】
こうした問題に対し、例えば特許文献1〜3には、画素内及び画素間での有機層の膜厚を均一にする方法が提案されている。特許文献1では、有機材料と溶媒を含むインキの塗布領域を有効光学領域より大きくすることで、有効光学領域内に塗布されたインキの周囲の環境、乾燥を均一にし、画素内及び画素間での有機層の膜厚を均一にしている。また、特許文献2では、有効光学領域に有機材料と溶媒を含むインキを塗布し、非有効光学領域に溶媒のみを塗布することで、インキが塗布された塗布領域の周縁部と中央部との溶媒分子分圧を等しくし、画素内及び画素間での有機層の膜厚を均一にしている。また、特許文献3では、有機材料と表面張力が40mN/m以下である溶媒とを含有するインキを塗布し、溶媒の蒸発速度が1.0×10-3μL/sec以上となるように乾燥させて有機層の平坦化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−222695号公報
【特許文献2】特開2006−269325号公報
【特許文献3】特開2009−54608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1,2の方法では、有効光学領域の他に、インキや溶媒を塗布する余分な領域が必要であり、有効光学領域が小さくなってしまう。さらに、特許文献1に記載の方法では、有機EL材料の利用効率が低い。したがって、画素内及び画素間での有機層の膜厚を均一にする方法には改善の余地がある。また、特許文献3においては、溶媒の選定や溶媒の蒸発速度が制限される。
【0009】
本発明の目的は、輝度ムラや発光色ムラがない画素面積を拡大させることができる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、その方法で得られた有機エレクトロルミネッセンス素子及びその有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた発光表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、画素に対応するパターンで形成された第1電極を有する基板を準備する工程と、前記基板上の隣り合う第1電極間の隙間に、該隙間幅より狭い幅の隔壁を形成して前記画素に対応する開口部を形成する工程と、前記隔壁で囲まれた開口部内に有機EL層の一部又は全部を構成する有機材料を塗布して有機層を形成する工程と、前記有機EL層上に第2電極を形成する工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、隣り合う第1電極間の隙間にその隙間幅より狭い幅の隔壁を形成して画素に対応する開口部を形成し、さらに、その隔壁で囲まれた開口部内に有機EL層の一部又は全部を構成する有機材料を塗布して有機層を形成するので、塗布した流動性のある有機材料インキはインキのメニスカスやインキの塗れ広がり方が従来のような態様(図9参照)とならず、画素領域である開口部内に塗布形成された有機層の平坦部領域(輝度ムラや発光色ムラが生じない程度の平坦部)を周縁部の側にまで拡大させることができる。その結果、有機EL層が発光した際の輝度ムラ、発光色ムラ等の表示ムラを抑制することができる。
【0012】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記有機層を塗布形成した工程後で前記有機EL層の一部又は第2電極を形成する工程前に、絶縁層を形成する工程を有し、該絶縁層を、前記隔壁を覆うと共に前記隣り合う第1電極間の隙間及び該第1電極の周縁端に架かる部分の平面視領域を覆う大きさで形成する、ことが好ましい。
【0013】
この発明によれば、絶縁層を、隔壁を覆うと共に隣り合う第1電極間の隙間及びその第1電極の周縁端に架かる部分の平面視領域を覆う大きさで形成したので、第1電極と第2電極との短絡が生じる余地を無くすことができる。
【0014】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記隔壁の少なくとも上面が撥液性を有する、ように構成する。この発明によれば、有機材料インキが隔壁を乗り越えて隣の開口部内に混ざるのを防ぐことができる。なお、隔壁の全面が撥液性であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記有機材料の塗布を液滴吐出法又は液注吐出法で行う、ように構成する。この発明によれば、より効率的な製造方法を実現できる。
【0016】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記絶縁層の形成を印刷法又はスプレー法で行う、ように構成する。この発明によれば、簡便な手段で効率的な製造を実現できる。
【0017】
上記課題を解決するための本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板と、前記基板上に画素に対応するパターンで形成された第1電極と、前記第1電極間の隙間に該隙間幅より狭い幅で形成されて前記画素に対応する開口部を形成する隔壁と、前記隔壁で囲まれた開口部内に形成された有機EL層と、前記有機EL層上に形成された第2電極と、を少なくとも有することを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、第1電極間の隙間にその隙間幅より狭い幅で形成されて画素に対応する開口部を形成する隔壁と、その隔壁で囲まれた開口部内に形成された有機EL層とを少なくとも有するので、例えばその有機EL層の全部又は一部の有機層を塗布法やノズル法で形成した場合、その有機層はインキのメニスカスやインキの塗れ広がり方が従来のような態様(図9参照)とならず、画素領域である開口部内に形成された有機層の平坦部領域が周縁部の側にまで拡大したものとなっている。その結果、そうした有機層を含む有機EL層が発光した際の輝度ムラ、発光色ムラ等の表示ムラを抑制することができる。
【0019】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記隔壁を覆うと共に前記隣り合う第1電極間の隙間及び該第1電極の周縁端に架かる部分の平面視領域を覆う大きさで形成された絶縁層を有する、ように構成する。この発明によれば、そうした絶縁層によって、第1電極と第2電極との短絡が生じる余地を無くすことができる。
【0020】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記隔壁の少なくとも上面が撥液性を有する、ように構成する。
【0021】
上記課題を解決するための本発明に係る発光表示装置は、上記本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子をパッシブマトリックス方式又はアクティブマトリックス方式のELパネルとして用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法によれば、塗布した流動性のある有機材料インキはインキのメニスカスやインキの塗れ広がり方が従来のような態様とならず、画素領域である開口部内に塗布形成された有機層の平坦部領域を周縁部の側にまで拡大させることができる。その結果、有機EL層が発光した際の輝度ムラ、発光色ムラ等の表示ムラを抑制することができる。
【0023】
本発明に係る発光表示装置によれば、上記本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を用いることにより、パッシブマトリックス方式でもアクティブマトリックス方式でも適用でき、いずれの場合も表示ムラを抑制した画像を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子が備える隔壁の形態を示す模式的な斜視図である。
【図2】本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子が備える隔壁の作用を示す模式的な断面図である。
【図3】本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法(その1)を示す模式的な断面図である。
【図4】本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法(その2)を示す模式的な断面図である。
【図5】本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法(その3)を示す模式的な断面図である。
【図6】隔壁の形成位置における拡大断面図である。
【図7】絶縁層の形成位置における拡大断面図である。
【図8】絶縁層を設けない場合の隣り合う第1電極間の断面形態図(A)と、絶縁層を設けた場合の隣り合う第1電極間の断面形態図(B)である。
【図9】従来の絶縁層と隔壁が設けられた場合の画素領域の断面形態図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)、その製造方法及び発光表示装置について詳しく説明する。なお、本発明は、その特徴的な構成を含む範囲で種々の変形が可能であり、以下の説明及び図面に記載の内容のみに限定されない。
【0026】
[有機EL素子及びその製造方法]
本発明に係る有機EL素子は、図1、図5(L)及び図6に示すように、基板1と、基板1上に画素に対応するパターンで形成された第1電極2と、第1電極間の隙間Gにその隙間幅W1より狭い幅W2で形成されて前記画素に対応する開口部10を形成する隔壁3と、その隔壁3で囲まれた開口部10内に形成された有機EL層11(4〜8)と、その有機EL層11上に形成された第2電極9と、を少なくとも有している。なお、この有機EL層11(4〜8)の一部又は全部は、有機材料が塗布法又はノズル法で形成された有機層(4〜6)で構成されてなるものである。
【0027】
図1(A)に示す有機EL素子は、パッシブマトリックス方式の発光表示装置に適用されるELパネルの例であり、有機EL素子が有する開口部10Aが一方向(図1(A)ではY方向)に延びている。一方、図1(B)に示す有機EL素子は、アクティブマトリックス方式の発光表示装置に適用されるELパネルの例であり、有機EL素子が有する各開口部10Bが個々の単位画素を構成している。なお、図1(B)中の符号32はTFTであり、符号31はTFTへの配線ビアであり、符号1aはベース基板であり、符号1bはTFTを形成したTFT基板である。
【0028】
本発明に係る有機EL素子の製造方法は、図3(A)〜図5(L)に示すように、画素に対応するパターンで形成された第1電極2を有する基板1を準備する工程と、その基板1上の隣り合う第1電極2,2間の隙間Gに、その隙間幅W1より狭い幅W2の隔壁3を形成して前記画素に対応する開口部10を形成する工程と、その隔壁3で囲まれた開口部10内に有機EL層11の一部又は全部を構成する有機材料を塗布して有機層(4〜6)を形成する工程と、有機EL層11上に第2電極9を形成する工程と、を少なくとも有している。
【0029】
本発明では、第1電極2と第2電極9との間に有機EL層11を挟んだ態様で積層している。通常、基板1側の第1電極2は陽極であり、有機EL層11を挟んで上方に設けられる第2電極9は陰極である場合が多い。こうした例の場合、有機EL層11は、陽極(第1電極2)側から陰極(第2電極9)側に向かって、例えば正孔注入層4/正孔輸送層5/発光層6/電子輸送層7/電子注入層8等の各有機層の積層構造として構成される。
【0030】
本発明の特徴は、図1及び図5(L)に示すように、有機EL層11を構成する各有機層の一部又は全部が、流動性を有する有機材料インキで塗布形成される場合に効果的に適用される技術である。具体的には、第1電極2,2間の隙間Gにその隙間幅W1より狭い幅W2で形成される隔壁3を設けた点に特徴がある。この隔壁3は、画素に対応する開口部10を画定するように作用する。こうした技術は、第1電極2上に設ける1又は2以上の有機層(4〜6)を有機材料インキで形成する場合に好ましく適用される技術であって、その結果、上記記載の効果を奏するものとなる。
【0031】
以下、本発明の構成を、図3(A)〜図5(L)の製造工程順に詳しく説明する。なお、以下の説明では、第1電極2が陽極であり、第2電極9が陰極であり、第1電極2側から正孔注入層4/正孔輸送層5/発光層(発光物質を含む層)6/電子輸送層7/電子注入層8からなる5層構造の有機EL層11である例で説明するが、これに限定されるものではない。
【0032】
(基板準備工程)
先ず、図3(A)に示すように、画素に対応するパターンで形成された第1電極2を有する基板1を準備する。準備する基板1は、(i)画素に対応する電極パターンが既に形成されたものであってもよいし、(ii)基板1上の全面に第1電極層を形成し、その後にフォトリソグラフィでパターニングして画素に対応する電極パターンを形成したものであってもよいし、(iii)基板上にレジストパターンを形成し、その後に第1電極層を全面に形成してリフトオフさせて、画素に対応する電極パターンを形成したものであってもよい。
【0033】
基板1の材料、透明性、厚さ等は特に限定されず、必要に応じた性質を有するものを任意に採用できる。例えば石英、ガラス、シリコンウェハ等の無機材料、例えばポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料を挙げることができる。透明基板であるか不透明基板であるかは、光の取り出し側が第1電極側か第2電極側かあるいは両側かで任意に選択することができる。
【0034】
また、図1(B)に示すように、TFT(薄膜トランジスタ)32が形成されたTFT基板1(1a,1b)は、アクティブマトリックス方式の発光表示装置に用いる有機EL素子用基板の一部として用いられる。
【0035】
第1電極2は、画素に対応するパターンで形成されている。第1電極2が陽極であるか陰極であるかで好ましい構成材料が選択され、さらに第1電極2が光の取り出し側であるか否かでも好ましい構成材料が選択される。そうした構成材料としては各種のものが選択して採用される。
【0036】
第1電極2が有機EL層11に正孔を供給する陽極である場合、例えば金属単体、合金、導電性金属酸化物(透明導電膜)、導電性無機化合物、導電性高分子等を挙げることができる。これらの材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上を用いて積層させてもよい。なお、第1電極2に透明性をもたせて第1電極2側からも光を取り出すような場合には、透明導電膜であるITO、IZOが特に好ましく用いられる。
【0037】
第1電極2の厚さは特に限定されるものではなく、用いる導電性材料に応じて適宜設定される。具体的には、陽極2の厚さは、5nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは40nm〜500nmの範囲内である。第1電極2の成膜手段としては、例えば化学的気相成長法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法が挙げられる。
【0038】
パターン状の第1電極2は、基板1上の全面に前記の成膜手段で第1電極層を形成し、その後にフォトリソグラフィでパターニングされるか、或いは、基板1上にレジストパターンを形成し、その後にレジストパターンを含む全面に前記の成膜手段で第1電極層を形成し、リフトオフさせてパターニングされる。なお、図6に示すように、隣り合う第1電極2の向かい合うエッジ面は、パターンエッチングにより、切り立った鋭利な周縁端21,21を有している。
【0039】
図1(A)に示すパッシブマトリックス方式の場合には、パターン状の第1電極2は、一方向(Y方向)に短冊状又はストライプ状に延びた電極として設けられている。短冊状又はストライプ状の電極パターンのピッチは、等間隔であることが好ましい。なお、パターン幅は、ディスプレイサイズや解像度によって任意の値に設定される。
【0040】
第1電極パターンの外周には、第1電極2への接続配線部を除き、隙間Gが形成されている。パッシブマトリックス方式においては、有機EL層11を介して短冊状又はストライプ状の第2電極9が設けられるが、そうした第2電極9は、図1(A)に示す第1電極2が延びる方向と直交するように設けられる。
【0041】
一方、図1(B)に示すアクティブマトリックス方式の場合には、パターン状の第1電極2は、単位画素を構成する画素電極として設けられている。この場合における第1電極2の形状としては、例えば、円形、正方形等の点対称の形状や、長方形、トラック形、楕円形等の点対称ではないが線対称の形状を挙げることができる。また、パターン配列としては、モザイク配列、デルタ配列等とすることができる。さらに、パターンピッチは、縦横に等間隔であることが好ましい。また、パターンの大きさは特に限定されるものではなく、第1電極パターンの形状やディスプレイサイズや解像度に応じて適宜選択される。例えば、第1電極パターンの形状が円形であれば、その直径を20μm〜200μm程度とすることができる。
【0042】
図1(A)(B)のいずれの場合においても、パターン状の第1電極の隣り合う第1電極間には、図1及び図6等で示すように、隙間Gが形成されている。この隙間Gの幅W1はディスプレイサイズや解像度によって任意に設定され、特に限定されないが、通常の一般的なフルカラーディスプレイを想定した場合、15〜60μmである。その隙間Gの幅W1が15μm未満では、後述する隔壁3を隙間G内に設けることが難しいことがある。一方、その隙間GのW1が60μmを超えると、有機EL素子全体から見た場合における画素の発光領域が相対的に小さくなる、もしくは解像度が低くなり、ディスプレイの使用用途が限られる、という難点がある。また、第1電極の配線抵抗を考慮すると、第1電極の幅はできる限り広いことが好ましいので、隙間Gの幅W1は、好ましくは15〜40μmである。こうした範囲とすることにより、高解像度かつ低抵抗な配線形成を可能にするという利点がある。
【0043】
なお、基板1と第1電極2の種類によっては、第1電極2の下地層として、密着層、熱緩衝層、ガスバリア層等を任意に設けてもよい。
【0044】
(隔壁形成工程)
次に、図3(B)に示すように、基板1上の隣り合う第1電極2,2間の隙間Gに、その隙間幅W1より狭い幅W2の隔壁3を形成する。隔壁3を形成することにより、画素に対応した開口部10が形成され、その開口部10には、後述の有機層形成工程で有機材料インキ(4’,5’,6’)が塗布される。こうして形成される隔壁3は、第1電極2には接触することはない。なお、基板1上に上記した下地層が形成されている場合には、隔壁3も下地層上に形成される。
【0045】
隔壁3の形状は特に限定されるものではないが、その断面形状が順テーパー形状(上底幅よりも下底幅が広い下広がり形状。図1及び図7参照。)又は矩形状(上底幅と下底幅が同じ形状。図6参照。)であることが好ましい。また、図1等に示すように一様に形成された一体構造であってもよいし、2段以上で形成された積層構造であってもよい。
【0046】
第1電極間の隙間Gは、パターニングされた第1電極2の外周に形成されている。パッシブマトリックス方式の電極パターンを形成する場合には、短冊状又はストライプ状の第1電極2の周り(接続配線部を除く。以下同じ。)を切れ目なく囲む隙間Gに隔壁3を設け、一方、アクティブマトリックス方式の電極パターンを設ける場合には、単位画素パターンの第1電極2の周りを切れ目なく囲む隙間Gに隔壁3を設ける。隔壁3で第1電極パターンを囲むことにより、囲まれた開口部10に有機材料インキを塗布することが可能となる。
【0047】
隔壁3の幅W2は、図6(A)に示すように隙間Gの幅W1に比べてかなり小さい幅であってもよいし、図6(B)に示すように周縁端21に触れない程度のぎりぎりの幅であってもよい。隔壁3の位置は特に限定されないが、隔壁3の幅W2の中心22が隙間Gの幅W1の中心と一致していることが好ましい。こうすることにより、隔壁3の両側で、有機EL層11に対象性を与えることができる。
【0048】
隔壁3の幅W2は、幅W1の大きさにもよるが、具体的には、隙間Gの幅W1の1/4〜3/4程度であればよく、好ましくは1/4〜2/4程度である。隔壁3の幅W2が隙間Gの幅W1に比べて1/4〜3/4程度の場合には、隔壁両側にある隔壁3と第1電極2との間の隙間23をある程度の幅W3で確保することができるので、その幅W3を確保することにより、後述する有機層(4,5,6)の隔壁側の盛り上がり部分14,15,16による悪影響(平坦部領域を減少させるという悪影響)を抑制することができる。
【0049】
こうした作用効果を示す「ある程度の幅W3」とは、絶対値で5〜10μmであることが好ましい。したがって、5〜10μmの幅W3を隔壁3と第1電極2との間に確保できるように、第1電極間の隙間Gの幅W1を考慮した幅W2[=W1−(2×W3)]で隔壁3を設けることが望ましい。なお、上記のように、隔壁3の幅W2の中心22を隙間Gの幅W1の中心と一致させることにより、隔壁3の両側で前記した作用効果を示すことができるので、より好ましい。
【0050】
隔壁3の高さHは特に限定されないが、後の有機材料インキの塗布工程で、有機材料インキ(4’,5’,6’)が隔壁3を越えて隣の開口部10に流入しない程度の高さであることが望ましい。なお、隔壁3の少なくとも上面24は撥液性で設けられるので、例えば図3(C)に示すように、隔壁3で囲まれた開口部10の容量を超えた有機材料インキ4’を塗布しても隣の開口部10には流入しにくいが、各有機層(4〜6)を形成するのに必要な量の有機材料インキを塗布した場合でも、隣の開口部10には流入しない高さであることが好ましい。そうした高さは一概には言えないが、通常は0.5〜5μm程度である。
【0051】
隔壁3は、上記のように少なくとも上面24が撥液性で形成される。撥液性は、隔壁3の全面であることがより好ましい。隔壁3の上面24が撥液性を有することにより、隔壁3で囲まれた開口部10に有機材料インキ(4’,5’,6’)を塗布した際に、その有機材料インキが隣の開口部10に流入するのを防ぐことができる。隔壁3の上面24は、基板側の反対面であり、その上面形状は、図6及び図7に示すような平坦面であってもよいし、曲面であってもよいし、尖っていてもよい。尖っている場合には、「上面」という代わりに「隔壁3の上部24」と言い換えることができる。
【0052】
本願での撥液性は、有機溶媒を有する有機材料インキに対する撥液性である。その撥液性の評価としては、隔壁3と同じ材料で同じ方法で形成した平面試料で測定した濡れ性試験において、表面張力29mN/m(常温)の液体に対する接触角が40°以上、好ましくは45°以上、より好ましくは50°以上である。こうした撥液性により、上記の作用効果を奏することができる。なお、これと同様の結果を水に対する接触角で測定した場合、その接触角が70°以上、好ましくは75°以上、より好ましくは80°以上の結果で、上記の有機溶媒を有する有機材料インキに対する撥液性と同様の結果を得ることができる。なお、液体との接触角は、温度23℃で、液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから水滴1μLを滴下して30秒後)し、その結果から得たものである。
【0053】
隔壁3に撥液性を付与する方法としては、(i)撥液性材料を用いて隔壁3を形成する方法と、(ii)隔壁3を形成した後に隔壁3の表面を撥液化処理する方法とが挙げられる。
【0054】
(i)撥液性材料を用いて隔壁を形成する方法において、撥液性材料としては、例えば、樹脂材料自体が撥液性を有する樹脂材料と、撥液剤が添加された樹脂材料を挙げることができる。樹脂材料自体が撥液性を有する樹脂材料としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等を挙げることができる。この場合、樹脂材料自体が撥液性を有する樹脂材料のみを用いてもよいし、その樹脂材料に他の汎用の材料を混合して用いてもよい。なお、樹脂材料自体が撥液性を有する樹脂材料に対しても、必要に応じて下記の撥液剤を添加してもよい。
【0055】
撥液剤が添加された樹脂材料を用いる場合の撥液剤としては、有機EL層を構成する各有機層4〜8に対して悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではなく、例えばフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、パーフルオロアルキル基含有アクリレート又はメタクリレートを主成分とする共重合オリゴマー等を挙げることができる。中でも、パーフルオロアルキル基含有アクリレート又はメタクリレートを主成分とする共重合オリゴマーを用いることが好ましい。また、市販品としては、サーフロン(ランダム型オリゴマー;セイミケミカル社製)、アロンG(グラフト型オリゴマー;東亜合成化学社製)、モディパーF(ブロック型オリゴマー;日本油脂社製)等を挙げることができる。こうした撥液剤の樹脂材料に対する添加量としては、撥液剤の種類及び樹脂の種類によっても異なるが、樹脂材料100重量部に対して、通常、1重量部〜20重量部程度であり、好ましくは5重量部〜10重量部の範囲内である。
【0056】
撥液剤が添加された樹脂材料を用いる場合の樹脂材料としては、一般的に隔壁に用いられるものを使用することができ、例えばノボラック系樹脂、ポリイミド、アクリレート等を挙げることができる。
【0057】
(ii)隔壁3を形成した後に隔壁3の表面を撥液化処理する方法において、隔壁3の構成材料としては、撥液化処理が可能なものであれば特に限定されるものではなく、一般的に隔壁に用いられるものを使用することができ、例えばノボラック系樹脂、ポリイミド等を挙げることができる。
【0058】
隔壁3の撥液化処理方法は特に限定されるものではなく、例えばシリコーン化合物や含フッ素化合物等の撥液処理剤を用いて表面処理する方法、フルオロカーボンガスのプラズマを用いて表面処理する方法(プラズマ処理)等が挙げられる。中でも、プラズマ処理は、有機物を選択的に撥液化することができるので好ましく適用できる。例えば、第1電極間の隙間Gに隔壁3を形成した後であっても、第1電極2を撥液化させずに、隔壁3の表面のみを撥液化することができるので、基板全面にプラズマ処理を施すことができる。
【0059】
プラズマ処理にて使用されるフルオロカーボンガスとしては、例えば、CF4、C26、C38、c−C48、CCl22、CClF3、C2Cl24、C2ClF5、CBrF3、CHF3、C233、CH3CHF2、NF3、SF6等を用いることでき、中でも、CF4ガスが好適に用いられる。
【0060】
隔壁3の形成方法は特に限定されないが、上記した撥液性材料又は樹脂材料を第1電極パターンが形成された基板1上の全面に形成し、その後にフォトリソグラフィで形成する方法を挙げることができる。用いる撥液性材料又は樹脂材料がレジスト材料であれば、フォトリソグラフィ法により、所定の寸法及び形状の隔壁3を所定の位置に容易に形成することができる。
【0061】
(有機層形成工程1)
次に、図3(C)〜図4(H)に示すように、隔壁3で囲まれた開口部10内に有機EL層11の一部又は全部を構成する有機材料インキ(4’,5’,6’)を塗布して有機層(4,5,6)を形成する。なお、ここで例示する有機材料インキ4’は正孔注入層用インキ、有機層4は正孔注入層、有機材料インキ5’は正孔輸送層用インキ、有機層5は正孔輸送層、有機材料インキ6’は発光層用インキ、有機層6は発光層である。各有機材料インキ4’〜6’は、いずれも溶媒含有タイプ(ソルベントタイプ)の有機材料インキであり、有機層4〜6は、各有機材料インキ4’〜6’を塗布・乾燥して形成する。
【0062】
隔壁3は少なくともその上面24(好ましくは全面)が撥液性を有するので、図3(C)に示すように、隔壁3で囲まれた開口部10内に流動性のある有機材料インキ4’を塗布すると、有機材料インキ4’は、撥液性を有する隔壁3を超えて隣の開口部10に混ざることなく盛り上がる。その後、図3(D)に示すように、乾燥処理によって有機材料インキ4’中の溶媒が揮発し、有機層4が形成される。
【0063】
形成された有機層4は、図2及び図7に示すように、隔壁3の近傍では盛り上がり部分14を有するものの、開口部10内の平坦部領域aが第1電極2の周縁部の側にまで拡大する。本発明では隔壁3を第1電極間の隙間G内に設けたので、従来に比べ、盛り上がり部分14(非平坦部)が平坦部領域aを狭めるのを少なくすることができる。
【0064】
同様に、図4(E)〜(H)に示すように、有機材料インキ5’を塗布乾燥して有機層5を形成し、さらに有機材料インキ6’を塗布乾燥して有機層6を形成する。形成された有機層5,6は、図2及び図7に示すように、いずれも隔壁3の近傍では盛り上がり部分15,16を有するものの、開口部10内の平坦部領域aが第1電極2の周縁部の側にまで拡大する。
【0065】
隔壁3の近傍での盛り上がり部分14,15,16の大きさは、塗布する有機材料インキ4’,5’,6’の粘度によって異なるので一概に言えないが、いずれの場合であっても、図2及び図7に示す態様となる。粘度が小さい場合には総じて盛り上がり部分の幅は小さく、粘度が大きい場合には総じて盛り上がり部分の幅は大きくなる。盛り上がり部分の幅が小さいほど平坦部領域aは拡大するので、粘度調整を行うことにより、平坦部領域aをより拡大させることが可能となる。なお、有機材料インキを円錐・平板型粘度計で測定した好ましい粘度は1mPa・s〜50mPa・sである。
【0066】
各層を形成するための塗布型の有機材料インキは、各種のものを挙げることができ、特に限定されない。本発明では、そうした有機材料インキを、印刷法、インクジェット法(液滴吐出法)、ノズルプリンティング法(液柱吐出法)、ディスペンス法、スピンコート法、キャスティング法、ディップコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等の湿式塗布法等を用いて塗布することができる。
【0067】
塗布後の有機材料インキは乾燥によって溶媒が揮発し、所定の厚さの有機層を形成する。有機層の厚さは、その有機層が正孔注入層4であるか正孔輸送層5であるか発光層6であるか等によって異なる。そのため、それぞれの層に適した厚さとなるように有機材料インキが塗布される。
【0068】
各有機層を形成するための有機材料インキは、ソルベントタイプ塗布型の有機材料インキであれば特に限定されず、各種のものを用いることができる。
【0069】
溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系;メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−エトキシエタノール等のアルコール系;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、p−シメン、ジイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系;酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル系;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ウンデカン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素系;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類等が挙げられる。
【0070】
正孔注入層用インキ4’としては、例えば、アリールアミン誘導体、ポルフィリン誘導体、カルバゾール誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体等の導電性高分子を挙げることができる。
【0071】
正孔輸送層用インキ5’としては、例えば、アリールアミン誘導体、アントラセン誘導体、カルバゾール誘導体、チオフェン誘導体、フルオレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スピロ化合物等を挙げることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0072】
発光層用インキ6’としては、例えば、色素系材料インキ、金属錯体系材料インキ、高分子系材料インキ等の発光材料含有インキを挙げることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0073】
金属錯体系材料インキとしては、例えば、中心金属に、Al、Zn、Be、Ir、Pt等、又はTb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体を挙げることができる。この金属錯体としては、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体、イリジウム金属錯体、プラチナ金属錯体等が挙げられる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0074】
高分子系材料インキとしては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体、及びそれらの共重合体等を挙げることができる。また、上記色素系発光材料及び金属錯体系発光材料を高分子化したものも挙げられる。
【0075】
こうした発光層用インキ中には、蛍光発光又は燐光発光するドーパントが添加されていてもよい。このようなドーパントとしては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体等を挙げることができる。
【0076】
以上のように、この有機層形成工程では、塗布型の正孔注入層用インキ4’、正孔輸送層用インキ5’及び発光層用インキ6’を用いて、正孔注入層4、正孔輸送層5及び発光層6の3層を形成しているが、本発明はこうした例に限定されず、種々の態様に対しても適用可能である。例えば、塗布型の有機材料インキで形成する層は3層ではなくてもよく、1層(正孔注入層4)でも2層(正孔注入層4と正孔輸送層5)でも4層(正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7)でも5層(正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8)でもよい。
【0077】
また、有機EL層の構造は、上記した5層タイプ(正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8)以外のものであってもよく、例えば、発光層からなる単一構造の有機層、正孔注入輸送層/発光層からなる2層構造の有機層、発光層/電子注入輸送層からなる2層構造の有機層、正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層からなる3層構造の有機層等を挙げることができる。また、5層構造の有機EL層から必要に応じて任意の層を省略したものであってもよいし、正孔ブロック層や電子ブロック層等のように、正孔又は電子の突き抜けを防止し、さらに励起子の拡散を防止して発光層内に励起子を閉じ込めて再結合効率を高めるための層等を加えたものであってもよい。
【0078】
(絶縁層形成工程)
次に、図5(I)に示すように、絶縁層17を形成する。絶縁層17は、有機層を塗布形成した工程後で、有機EL層11の一部の層又は第2電極9を形成する工程前に形成する。詳しくは、有機材料インキを塗布・乾燥して有機層を形成した後、有機EL層11の一部の層を形成する場合にはその前に、又は、形成する一部の層が無い場合には第2電極を形成する前に、絶縁層17を形成する。
【0079】
図3〜図5の例では、正孔注入層4、正孔輸送層5及び発光層6を有機材料インキを塗布・乾燥して形成し、その後に有機EL層11の一部の層として電子輸送層7と電子注入層8を形成している。したがって、絶縁層17は、発光層6を形成した後、電子輸送層7を形成する前に形成される。なお、この場合において、仮に電子輸送層7を有機材料インキで形成する場合には、絶縁層17は、電子輸送層7を形成した後、電子注入層8を形成する前に形成され、また、仮に電子輸送層7と電子注入層8が有機材料インキで形成する場合には、絶縁層17は、第2電極9を形成する前に形成される。
【0080】
絶縁層17の形成材料としては、一般的な絶縁レジスト材料や絶縁性の無機材料を好ましく挙げることができる。具体的には、ノボラック系樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂等の絶縁性の有機材料や、酸化ケイ素、窒化ケイ素等の絶縁性の無機材料を挙げることができる。
【0081】
絶縁層17は、塗布法、蒸着法又はスパッタリング法で全面に形成した後にパターニングして所定の形成領域に形成してもよいし、マスクを利用したスプレーコート、スクリーン印刷等で所定の形成領域にパターン形成してもよいし、マスク蒸着等の手段で所定の形成領域にパターン形成してもよい。なお、絶縁層17は、少なくとも上面が撥液性の隔壁3上に形成するので、インキを塗布形成してなる絶縁層の場合には、隔壁3の上面で弾かれないインキ組成に調整する。
【0082】
絶縁層17の形成領域は、図5(I)及び図7に示すように、隔壁3を覆うと共に隣り合う第1電極2,2間の隙間G及び第1電極2の周縁端21に架かる部分の平面視領域を覆う大きさで形成する。
【0083】
絶縁層17の厚さは特に限定されないが、通常、0.5〜2.0μm程度である。
【0084】
絶縁層17を、有機層の湿式工程後に形成するのは、例えば、湿式工程後の有機層が溶剤揮発に基づいた収縮により隔壁3と有機層との間に微細な隙間が生じた場合であっても、上記形成領域を絶縁層17で覆うことにより、そうした微細な隙間に、その後に形成される有機層用材料や電極材料が入り込むことがない。具体的には、電子注入層8や第2電極9の形成材料が、そうした微細な隙間に入り込んで第1電極2と短絡する可能性を無くすことができる。
【0085】
また、絶縁層17の形成領域を、隣り合う第1電極2,2間の隙間Gを覆うと共に、第1電極2の周縁端21に架かる部分の平面視領域を覆う大きさで形成するのは、第1電極2,2間の隙間Gの幅W1と隔壁3の幅W2によっては、図7に示すように、第1電極2の周縁端21での有機層の厚さが薄くなる場合もあり得るので、そうした部分(第1電極2の周縁端21)に架かるように絶縁層17を形成すれば、その後に形成する導電性の電子注入層8や第2電極9が、第1電極2と短絡する可能性を無くすことができる。
【0086】
なお、絶縁層17が第1電極2の周縁端21に架かる程度は、図7に示すように、第1電極2の周縁端21から内方に所定の幅W4入り込んでいればよく、具体的には、0μmを超え5μm以下程度であればよい。なお、この幅W4は、上方から平面視したときの幅である。
【0087】
(有機層形成工程2)
次に、図5(J)に示すように、形成すべき有機EL層11の一部の層がある場合には、そうした層を形成する。この実施形態では、発光層6上に、電子輸送層7と電子注入層8を形成する。
【0088】
電子輸送層7と電子注入層8の形成手段は特に限定されないが、通常、マスク蒸着により順次パターン形成してもよいし、図5(K)に示すように、全面に積層させた後にパターニングしてパターン形成してもよい。
【0089】
電子輸送層用材料としては、例えば、オキサジアゾール類、トリアゾール類、フェナントロリン類、シロール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、アルミニウム錯体等を挙げることができる。
【0090】
電子注入層用材料としては、例えば、ストロンチウム、カルシウム、リチウム、セシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の金属単体;酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化リチウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物;フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物;ポリメチルメタクリレートポリスチレンスルホン酸ナトリウム等のアルカリ金属の有機錯体等を挙げることができる。
【0091】
こうして形成された層(電子輸送層7と電子注入層8)は、発光層6が最表面となっている開口部10と絶縁層17の上に設けられる。そのため、第1電極2に接触して短絡する可能性のある隙間はなく、したがって、第1電極2との間の短絡はあり得ない。
【0092】
(第2電極形成工程)
次に、図5(L)に示すように、有機EL層11上に第2電極9を形成する。第2電極9は、上記のように、パターニングされた有機EL層11上に選択的にマスク蒸着等で所定のパターンで形成してもよいし、パターニングされた有機EL層11上の全面に成膜した後にパターニングして所定のパターンとしてもよい。
【0093】
なお、図1(A)に示すパッシブマトリックス方式の場合には、第2電極9は、短冊状又はストライプ状の第1電極2の延びる方向に直交する短冊状又はストライプ状のパターンで形成され、その交差部分がパッシブマトリックス方式における画素となる。一方、図1(B)に示すアクティブマトリックス方式の場合は、第2電極9は、通常、各画素に対応した第1電極2の対向電極として、全面にベタ形成される。
【0094】
第2電極9の形成方法としては、例えば化学的気相成長法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法が挙げられる。
【0095】
第2電極9である陰極用材料としては、In−Sn−O(ITO)、In−Zn−O(IZO)、Zn−O、Zn−O−Al、Zn−Sn−O等の透明導電性酸化物や、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属を挙げることができる。
【0096】
(その他の工程)
第2電極9を形成した後においては、必要に応じて、例えば封止材を設けてもよいし、封止材を介して透明基材を設けてもよい。その場合の封止材としては、エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、透明基材としては、上記した基材1のうち、特に透明性の高いガラス、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を用いることができる。
【0097】
以上説明したように、本発明の有機EL素子の製造方法によれば、隣り合う第1電極2,2間の隙間Gにその隙間幅W1より狭い幅W2の隔壁3を形成して画素に対応する開口部10を形成し、さらに、その隔壁3で囲まれた開口部10内に有機EL層11の一部又は全部を構成する有機材料インキ(4’〜6’)を塗布して有機層(4〜6)を形成するので、塗布した流動性のある有機材料インキ(4’〜6’)はインキのメニスカスやインキの塗れ広がり方が従来のような態様(図9参照)とならず、画素領域である開口部10内に塗布形成された有機層(4〜6)の平坦部領域(輝度ムラや発光色ムラが生じない程度の平坦部)を第1電極2の周縁端21の側にまで拡大させることができる。その結果、有機EL層11が発光した際の輝度ムラ、発光色ムラ等の表示ムラを抑制することができる。
【0098】
[発光表示装置]
本発明の発光表示装置は、上記本発明に係る有機EL素子をパッシブマトリックス方式又はアクティブマトリックス方式のELパネルとして用いることができる。
【0099】
具体的には、図1(A)に示す有機EL素子はパッシブマトリックス方式の発光表示装置に適用されるELパネルの例であり、有機EL素子が有する開口部10Aが一方向(図1(A)ではY方向)に延びている。このパッシブマトリックス方式の場合には、第2電極9は、短冊状又はストライプ状の第1電極2の延びる方向に直交する短冊状又はストライプ状のパターンで形成され、その交差部分がパッシブマトリックス方式における画素となる。
【0100】
一方、図1(B)に示す有機EL素子は、アクティブマトリックス方式の発光表示装置に適用されるELパネルの例であり、有機EL素子が有する各開口部10Bが個々の単位画素を構成している。このアクティブマトリックス方式の場合は、第2電極9は、通常、各画素に対応した第1電極2の対向電極として、全面にベタ形成される。また、図1(B)のアクティブマトリックス方式の場合においては、第1電極2、有機EL層11及び第2電極9はTFT基板1b上に設けられ、その第1電極2はTFT基板1bに形成された配線ビア31を介してTFT32に接続される。
【0101】
なお、そうしたTFT32は、少なくともゲート電極、絶縁層(ゲート絶縁膜を含む)、半導体膜、ソース電極及びドレイン電極から構成されていればよく、構造形態としては、ボトムゲート・トップコンタクト構造、ボトムゲート・ボトムコンタクト構造、トップゲート・トップコンタクト構造、トップゲート・ボトムコンタクト構造のいずれの構造であってもよい。なお、半導体膜は、有機半導体膜であってもよいし、無機半導体膜であってもよい。TFT基板1bには、ゲート電極のゲートバスラインとソース電極のソースバスラインが縦横に延びている。各TFT32のドレイン電極には出力素子が接続され、その出力素子は上記本発明の有機EL素子である。
【0102】
こうした発光表示装置は、パッシブマトリックス方式の有機EL素子でもアクティブマトリックス方式の有機EL素子でも適用でき、いずれの場合も表示ムラを抑制した画像を提供できる。
【実施例】
【0103】
以下に、実施例と比較例を挙げて、本発明の有機EL素子を更に具体的に説明する。
【0104】
[実施例1]
(1)パッシブマトリックス方式の画素に対応する第1電極パターンが形成された厚さ0.7mmのガラス基板1を準備した。第1電極2は、一方向に延びる幅が100μmのストライプ状であり、隣り合う電極間の隙間Gの幅W1が30μmで厚さ0.2μmのITO膜からなっている。
【0105】
(2)次に、その隙間Gの中心(中間位置)に、第1電極2に接触しない幅W2が15μmの隔壁3を形成した。このとき隔壁3の幅W2の中心を隙間Gの幅W1の中心と一致させ、隔壁3両側には、7.5μmの幅W3を確保した。隔壁3は、含フッ素樹脂、光酸発生剤、酸架橋剤及びアルカリ可溶性樹脂を含む撥液性材料を全面に塗布し、露光、現像して、厚さが2.0μm、幅W2が15μmで形成した。隔壁3で画定される開口部10は、幅が115μmで一方向に延びる画素を構成することになる。
【0106】
(3)次に、隔壁3で隔てられた開口部10に、モリブデンヘキサカルボニル錯体を安息香酸エチルにてインク化した溶液をインクジェットヘッドから吐出した。その後、モリブデンヘキサカルボニル錯体が塗布された基板を大気下で200℃、60分間加熱した。これにより、液中の溶媒を揮発させ、厚さ15nmの正孔注入層4を形成した。
【0107】
(4)次に、共役系の高分子材料であるポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4’−(N−(4−sec−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)の安息香酸エチル溶液を、インクジェットヘッドから吐出した。大気下で200℃、1分間加熱し、溶媒が蒸発するのを待った後、グローブボックス内で200℃、1時間加熱した。これにより、厚さ30nmの正孔輸送層5を形成した。
【0108】
(5)次に、発光層として1−tert−ブチル−ペリレン(TBP)を発光性ドーパントとして含有し、2−メチル−9,10ビス(ナフタレン−2−イル)アントラセン(MADN)をホストとして含有した安息香酸エチル溶液を調製し、インクジェットヘッドから吐出した。大気下で200℃、1分間加熱し、溶媒が蒸発するのを待った後、グローブボックス内で130℃、1時間加熱した。これにより、厚さ40nmの発光層6を形成した。
【0109】
(6)これらの3層(正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6)を形成した後、基板1表面からの膜厚を測定した。画素内の発光層6の中心部分を含む断面において、発光層6の幅は115μmであり、平坦部領域a(図2参照)の幅は100μmであった。なお、膜厚は走査型白色干渉法により測定し、平坦部領域とは中心膜厚の±10%以内の範囲とした。
【0110】
(7)次に、隔壁3を覆うと共に、第1電極間の隙間G及び第1電極2の周縁端21に2μmの幅W4で架かるように、厚さ2μmの絶縁層17を設けた。絶縁層17は、ステンシルマスクを通して、スプレー法にて塗布、パターニングして設けた。
【0111】
(8)次に、発光層6上に、電子輸送層7としてAlq3を厚さ20nm、電子注入層8としてLiFを厚さ0.5nmで、それぞれ真空加熱蒸着法により積層成膜した。
【0112】
(9)次に、全面に厚さ250nmのAlを真空加熱蒸着法で成膜し、その後、ストライプ状の第1電極2が延びる方向と直交するように、幅300μmのストライプ状となるようにパターニングして第2電極パターンを形成した。続いて、封止材としてエポキシ樹脂を塗布し、その上からガラス基板を載せ、紫外線を照射してエポキシ樹脂を硬化させて封止を行った。
【0113】
(10)こうして、パッシブマトリックス方式のELパネルとなる有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子は、幅が100μmの第1電極2に対する平坦部領域aの幅が90μmであり、90%の高い割合で平坦部領域を形成できた。
【0114】
[実施例2]
アクティブマトリックス方式の画素に対応する第1電極パターンが形成された厚さ0.7mmのTFT基板1bを含む基板1準備した。第1電極2は、アクティブマトリックス方式の各画素に対応するものであり、縦300μmで横100μmの矩形のパターンであり、縦横に隣り合う電極間の隙間Gの幅W1が25μmで厚さ0.2μmのITO膜からなっている。TFT基板1bを含む基板1は、図1(B)に示す態様であり、第1電極2は配線ビア31を介してTFT32に接続されている。
【0115】
次に、その隙間Gの中心(中間位置)に、第1電極2に接触しない幅W2が15μmの隔壁3を形成した。このとき隔壁3の幅W2の中心を隙間Gの幅W1の中心と一致させ、隔壁3両側には、5μmの幅W3を確保した。隔壁3は、含フッ素樹脂、光酸発生剤、酸架橋剤及びアルカリ可溶性樹脂を含む撥液性材料を全面に塗布し、露光、現像して、厚さが2μm、幅W2が15μmで形成した。隔壁3で画定される開口部10は、縦が300μm、横が110μmの格子状に画素を構成することになる。
【0116】
その後の工程は、実施例1と同様であり、順次、正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、絶縁層17、電子輸送層7、電子注入層8をパターン形成した。
【0117】
次に、全面に厚さ250nmのAlを真空加熱蒸着法で成膜して第2電極9を形成した。続いて、封止材としてエポキシ樹脂を塗布し、その上からガラス基板を載せ、紫外線を照射してエポキシ樹脂を硬化させて封止を行った。
【0118】
こうして、アクティブマトリックス方式のELパネルとなる有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子は、縦300μmで横100μmの第1電極2に対する平坦部領域aは、縦280μmで横90μmとなり、84%の高い面積割合で平坦部領域を形成できた。
【0119】
[実施例3]
実施例1と同様に発光層まで形成した後、隔壁3を覆うと共に、第1電極間の隙間G及び第1電極2の周縁端21に5μmの幅W4で架かるように、厚さ3μmの絶縁層17を設けた。絶縁層17は、スクリーン印刷法を用い、スキージで絶縁層インクをスクリーン版から押し出して設けた。次に、実施例1と同様に、発光層6上に、電子輸送層7、電子注入層8、第2電極9を形成した。続いて、封止を行い、パッシブマトリックス方式の有機EL素子を作製した。こうして得られた有機EL素子は、幅が100μmの第1電極間に対する平坦部領域aの幅が85μmであり、85%の高い割合で平坦部領域を形成できた。
【0120】
[比較例1]
実施例1において、第1電極間の隙間Gを覆い、第1電極2の周縁端21に2μm架かるように隔壁3を形成した他は、実施例1と同様にして、比較例1の有機EL素子を作製した。こうして得られた有機EL素子は、幅が100μmの第1電極2に対する平坦部領域aの幅が70μmであり、平坦部領域は70%であった。
【0121】
[比較例2]
実施例2において、第1電極間の隙間Gを覆い、第1電極2の周縁端21に2μm架かるように隔壁3を形成した他は、実施例2と同様にして、比較例2の有機EL素子を作製した。こうして得られた有機EL素子は、縦300μmで横100μmの第1電極2に対する平坦部領域aは、縦270μmで横70μmとなり、平坦部領域の面積割合は63%であった。
【0122】
[表示ムラの評価]
実施例1及び比較例1にて作製した有機EL素子について、直流電圧をともに8Vずつ印加し、発光したエリアを2次元色彩輝度計(コニカミノルタ社製:CA−2000)にて測定した。測定の結果、膜厚の平坦部領域aとほぼ同等の領域が非常に明るく発光し、その他の厚膜領域(平坦部領域以外の部分であって、隔壁側の盛り上がり部分)はほとんど発光が確認されなかった。こうしたことから、実施例1の有機EL素子は約90%の発光領域を達成し、対して、比較例1の有機EL素子は70%のみの発光に留まった。
【符号の説明】
【0123】
1 基板
1a ベース基板
1b TFT基板
2 第1電極
3 隔壁
4 正孔注入層
4’ 正孔注入層用インキ
5 正孔輸送層
5’ 正孔輸送層用インキ
6 発光層
6’ 発光層用インキ
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 第2電極
10,10A,10B 開口部
11 有機EL層
14,15,16 隔壁側の盛り上がり部分
17 絶縁層
21 第1電極の周縁端
22 隔壁の幅の中心
23 隔壁と第1電極との間の隙間
24 隔壁の上面
31 ビア
32 TFT
【0124】
G 隙間
W1 隙間の幅
W2 隔壁の幅
W3 隔壁と第1電極との間の隙間の幅
W4 絶縁層が第1電極の周縁端から内方に架かる所定の幅
H 隔壁の高さ
a 平坦部領域
【0125】
101 基板
102 第1電極
103 第1電極の周縁端
104 有機層
105 絶縁膜
106 隔壁
110 開口部
111 隔壁側の盛り上がり部分
112 中央部
a’ 平坦部領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素に対応するパターンで形成された第1電極を有する基板を準備する工程と、
前記基板上の隣り合う第1電極間の隙間に、該隙間幅より狭い幅の隔壁を形成して前記画素に対応する開口部を形成する工程と、
前記隔壁で囲まれた開口部内に有機EL層の一部又は全部を構成する有機材料を塗布して有機層を形成する工程と、
前記有機EL層上に第2電極を形成する工程と、を少なくとも有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項2】
前記有機層を塗布形成した工程後で前記有機EL層の一部又は第2電極を形成する工程前に、絶縁層を形成する工程を有し、該絶縁層を、前記隔壁を覆うと共に前記隣り合う第1電極間の隙間及び該第1電極の周縁端に架かる部分の平面視領域を覆う大きさで形成する、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項3】
前記隔壁の少なくとも上面が撥液性を有する、請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項4】
前記有機材料の塗布を液滴吐出法又は液注吐出法で行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁層の形成を印刷法又はスプレー法で行う、請求項2〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項6】
基板と、
前記基板上に画素に対応するパターンで形成された第1電極と、
前記第1電極間の隙間に該隙間幅より狭い幅で形成されて前記画素に対応する開口部を形成する隔壁と、
前記隔壁で囲まれた開口部内に形成された有機EL層と、
前記有機EL層上に形成された第2電極と、を少なくとも有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記隔壁を覆うと共に前記隣り合う第1電極間の隙間及び該第1電極の周縁端に架かる部分の平面視領域を覆う大きさで形成された絶縁層を有する、請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記隔壁の少なくとも上面が撥液性を有する、請求項6又は7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子をパッシブマトリックス方式又はアクティブマトリックス方式のELパネルとして用いることを特徴とする発光表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−60435(P2011−60435A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205443(P2009−205443)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】