説明

有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法

【課題】低電圧駆動、高輝度に加えて多数の色の発光が容易に得られるという有機EL素子の特徴を維持しつつ、さらにダークスポットが少ない、共役系高分子を有機発光層に用いた有機EL素子を提供する。
【解決手段】少なくとも一方が透明または半透明である一対の陽極および陰極からなる電極間に、少なくとも1層の共役系高子蛍光体を含む有機発光層を有し、該有機発光層が粒径1μmを越える粒子状異物を実質的に含まないことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ということがある。)に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、従来の無機EL素子に比べ、低電圧駆動、高輝度に加えて多数の色の発光が容易に得られるという特徴があることから素子構造や有機蛍光色素、有機電荷輸送化合物について多くの試みが報告されている〔ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.)第27巻、L269頁(1988年)〕、〔ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(J.Appl.Phys.)第65巻、3610頁(1989年)〕。
【0003】
また、有機EL素子のなかで高分子量の発光材料(以下、高分子蛍光体ということがある。)を用いる高分子発光素子が、WO9013148号公開明細書、特開平3−244630号公報、アプライド・フィジックス・レターズ(Appl.Phys.Lett.)第58巻、1982頁(1991年)などに記載されている。高分子蛍光体またはその前駆体は、溶媒に可溶であり、塗布法により発光層を形成できるという利点がある。
【0004】
有機EL素子は、ダークスポットと呼ばれる非発光欠陥が発生しやすく、それが成長することで、有機EL素子の表示品位が著しく低下する場合が知られている。この問題の解決方法として、ダークスポットの発生を抑制する方法やダークスポットの成長を抑制する方法(特開平9−148066号公報)が開示されている。ダークスポットの発生を抑制する方法については、特開平10−172768号公報に、その原因が、透明電極基板の欠陥、たとえば、透明電極の突起、ガラスのキズや外部からの付着粒子があげられ、透明電極基板の欠陥密度を低減させる方法が開示されている。また、特開平6−124785号公報には、高分子フィルム上の電極を用いた素子において、高分子フィルム内、高分子フィルムと第1電極の界面および第1電極の表面における異物、突起物、穴、空孔を低減する方法が開示されている。
【0005】
特に、高分子材料を有機EL素子に用いる場合には、たとえば、特開平8−188773号公報第7頁に、正孔輸送性ポリマー溶液から塗布にて、薄膜に製膜する場合に、該溶液を0.1μmのフィルタで濾過して用いることが記載されている。また、特開2000−48960号公報第18頁に電荷注入層材料として、ポリチオフェン誘導体や正孔輸送層材料であるポリビニルカルバゾールを溶液から塗布する際に0.45μmのフィルタで濾過した溶液を使用することが記載されている。さらに特開平9−124733号公報にはビニル系ポリマーを発光体とする場合に、塗布前に溶液を0.2μmのフィルタで濾過することが記載されている。また特開平9−104732号公報には、共役系構造をエーテル基で結合したポリマー溶液を、マイクロフィルタで濾過して溶液を得、その溶液を塗布することが記載されている。しかしながら、共役系高分子を有機発光層に用い、ダークスポットがより少ない素子については記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、低電圧駆動、高輝度に加えて多数の色の発光が容易に得られるという有機EL素子の特徴を維持しつつ、さらにダークスポットが少ない、共役系高分子を有機発光層に用いた有機EL素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、このような事情をみて、鋭意検討し、共役系高分子蛍光体を含む有機発光層が粒径1μmを越える粒子状異物を実質的に含まない有機エレクトロルミネッセンス素子が、有機EL素子の特徴を維持しつつ、さらにダークスポットが少ないことを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の〔1〕〜〔7〕に係るものである。
〔1〕少なくとも一方が透明または半透明である一対の陽極および陰極からなる電極間に、少なくとも1層の共役系高子蛍光体を含む有機発光層を有し、該有機発光層が粒径1μmを越える粒子状異物を実質的に含まない有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔2〕少なくとも一方が透明または半透明である一対の陽極および陰極からなる電極間に、少なくとも1層の共役系高子蛍光体を含む有機発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、共役系高分子蛍光体を含む溶液を孔径1μm以下のフィルタで濾過して塗布剤を作成する工程および該塗布剤を塗布して有機発光層を形成する工程を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
〔3〕上記〔2〕の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を用いてなる有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔4〕上記〔1〕または〔3〕の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた面状光源。
〔5〕上記〔1〕または〔3〕の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたセグメント表示装置。
〔6〕上記〔1〕または〔3〕の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたドットマトリックス表示装置。
〔7〕上記〔1〕または〔3〕の有機エレクトロルミネッセンス素子をバックライトとする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有機EL素子は、有機EL素子の特徴を維持しつつ、さらにダークスポットが少ないことから、バックライトとしての面状光源,フラットパネルディスプレイ等の装置として好ましく使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の有機EL素子について詳細に説明する。
【0011】
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方が透明または半透明である一対の陽極および陰極からなる電極間に、該有機発光層が粒径1μmを越える粒子状異物を実質的に含まない。ここに発光層とは、発光を生ずる層のことをいい、有機発光層とは、発光を生ずる有機層のことをいう。また、粒子状異物とは有機発光層を構成する物質とは異なる物質であり、かつその粒子状異物の一番大きな径が有機発光層の平均膜厚より大きいものをいう。
【0012】
粒径が1μmを超える粒子状異物とは、粒子状異物を分散させた溶液を孔径1μmのフィルタにて濾過したとき、該フィルタで捕捉される粒子状異物のことをいう。
【0013】
本発明の有機EL素子は、少なくとも1層の共役系高分子蛍光体を含む有機発光層を有し、さらに正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層から選ばれる層を1層以上有していてもよい。好ましくは、正孔注入層と共役系高子蛍光体を含む有機発光層を有する素子である。
【0014】
また、本発明には、有機発光層、正孔輸送層、電子輸送層のいずれかの層を2層以上用いることも例示される。これらの各層の素子中での位置は、陰極から陽極に向かって、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に用いられるのが一般的であるが、上記の1層構造や2層構造の場合はそれぞれ対応する層を省略する。また、それぞれの層を複数用いる場合は、第2の層を用いる位置に特に制限はなく、発光効率や素子寿命を勘案して適宜用いることができる。
【0015】
次に、本発明の有機EL素子に用いる部材について説明する。
【0016】
本発明における有機EL素子の有機発光層に含まれる共役系高分子蛍光体は、π電子系が分子鎖に沿って非極在化している分子構造を有しており、固体状態で蛍光を示し、ポリスチレン換算の数平均分子量が1×104〜1×107である共役系高分子蛍光体が好ましく用いられる。より好ましくは、固体状態で蛍光を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が1×104〜1×107であり、下式(1)で示される繰り返し単位を少なくとも一種類含むものであり、さらに好ましくは、該繰り返し単位の合計が全繰り返し単位の90モル%以上のものである。
【0017】
−Ar1−(CR1=CR2k− ・・・・・(1)
〔ここで、Ar1は、隣接する2つの基とそれぞれ炭素−炭素結合を形成する2価の基であり、共役に関与する炭素原子の数が6個以上60個以下からなるアリーレン基、または共役に関与する炭素原子の数が4個以上60個以下からなる複素環化合物基であるものを示し、アリーレン基、複素環化合物基はさらに置換基を有していてもよい。7〜60のアリールアルコキシ基、炭素数6〜60のアリールアミノ基、炭素数4〜60の複素環化合物基並びにシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。またR1、R2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数4〜60の複素環化合物基およびシアノ基からなる群から選ばれる基を示し、該アリール基、複素環化合物基はさらに置換基を有していてもよい。kは0または1である。〕
ここで、上式(1)で示される繰り返し単位を少なくとも一種類含み、かつ該繰り返し単位の合計が全繰り返し単位の90モル%以上である共役系高分子蛍光体では、重合に起因する構造欠陥や非共役系モノマーの添加により、非共役系部分を10モル%未満有するものも本発明に含まれる。
【0018】
さらに、上式(1)で示されるが、異なる構造の繰り返し単位を2種類以上含む共役系高分子蛍光体も本発明に含まれる。
【0019】
また共役系高分子蛍光体が水または有機溶媒に可溶であることが好ましく、有機溶媒に可溶であることがより好ましい。
【0020】
本発明の有機EL素子においては、共役系高分子蛍光体に、低分子化合物からなる発光材料を混合して使用してもよい。上記共役系高分子蛍光体以外の発光材料を含む発光層が、上記高分子蛍光体を含む有機発光層と積層されていてもよい。
【0021】
上式(1)において、Ar1としては、高分子蛍光体の蛍光特性を損なわないように選択すればよく、具体的な例としては以下に例示される二価の基があげられる。
【0022】
【化1】

【0023】
【化2】

【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

【0029】
【化8】

【0030】
【化9】

【0031】
【化10】

【0032】
【化11】

【0033】
【化12】

【0034】
【化13】

【0035】
【化14】

【0036】
ここで、Rは、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を持つアルコキシ基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を持つアルキルチオ基、炭素数1〜60のモノ、ジまたはトリアルキルシリル基、炭素数1〜40のモノまたはジアルキルアミノ基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数6〜60のアリールオキシ基、炭素数7〜60のアリールアルキル基、炭素数7〜60のアリールアルコキシ基、炭素数8〜60のアリールアルケニル基、炭素数8〜60のアリールアルキニル基、炭素数6〜60のモノアリールアミノ基またはジアリールアミノ基(以下、モノまたはジアリールアミノ基ということがある)、炭素数2〜60の複素環化合物基ならびにシアノ基からなる群から選ばれる置換基をあらわし、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、モノまたはジアリールアミノ基および複素環化合物基はさらに置換基を有していてもよい。
【0037】
上記の例において、1つの構造式中に複数のRを有しているが、それらは同一であってもよいし、異なる基であってもよく、それぞれ独立に選択される。また、Ar1の置換基の炭素原子は、酸素原子または硫黄原子と置き換えられていてもよいし、Ar1の置換基の一つ以上の水素原子はフッ素原子に置き換えられていてもよい。
【0038】
溶媒への溶解性を高めるためには、水素原子でない置換基を少なくとも1つ以上有していることが好ましく、また置換基を含めた繰り返し単位の形状の対称性が少ないことが好ましい。
【0039】
さらにRは−X−Rの形で、Arに結合してもよい。この場合のXは−O−、−S−、−CR34−、−SiR56−、―NR7−、−CO−、−COO−、−SO2−、−CR8=CR9−、および.−C≡C−からなる群から選ばれる基を示すが、−O−,−S−、−CR10=CR11−、および−C≡C−が好ましく、−O−がさらに好ましい。R3からR11は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数4〜60の複素環化合物基およびシアノ基からなる群から選ばれる基を示し、アリール基および複素環化合物基はさらに置換基を有していてもよい。
【0040】
Rの具体的な例として、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロドデシル基などが例示され、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基が好ましい。
【0041】
炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を持つアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ラウリルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基などが例示され、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、が好ましい。
【0042】
炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を持つアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、ラウリルチオ基、シクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、シクロヘプチルチオ基などが例示され、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、シクロヘキシルチオ基が好ましい。
【0043】
炭素数1〜60のモノ、ジまたはトリアルキルシリル基としては、モノメチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、モノエチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、モノプロピルシリル基、ジプロピルシリル基、トリプロピルシリル基、モノブチルシリル基、ジブチルシリル基、トリブチルシリル基、モノペンチルシリル基、ジペンチルシリル基、トリペンチルシリル基、モノヘキシルシリル基、ジヘキシルシリル基、トリヘキシルシリル基、モノへプチルシリル基、ジへプチルシリル基、トリへプチルシリル基、モノオクチルシリル基、ジオクチルシリル基、モノオクチルシリル基、ジオクチルシリル基、トリオクチルシリル基、モノノニルシリル基、ジノニルシリル基、トリノニルシリル基、モノデシルシリル基、ジデシルシリル基、トリデシルシリル基、モノラ
ウリルシリル基、ジラウリルシリル基、トリラウリルシリル基、エチルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、ブチルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、ラウリルジメチルシリル基などが例示され、トリペンチルシリル基、トリヘキシルシリル基、トリオクチルシリル基、トリデシルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基が好ましい。
【0044】
炭素数1〜40のモノまたはジアルキルアミノ基としては、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モノプロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、モノブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、モノペンチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、モノヘキシルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、モノヘプチルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、モノオクチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、モノノニルアミノ基、ジノニルアミノ基、モノデシルアミノ基、ジデシルアミノ基、モノラウリルアミノ基、ジラウリルアミノ基などが例示され、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、デシルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジデシルアミノ基が好ましい。
【0045】
炭素数7〜60のアリールアルコキシ基としては、フェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基などが例示され、フェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基が好ましい。炭素数6〜60のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、ペリレニル基などが例示され、C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシ基、C6〜C20アリール基をさらに置換基として有していてもよく、C1〜C12アルコキシ基を有するフェニル基、C1〜C12アルキル基を有するフェニル基が好ましい。
【0046】
炭素数6〜60のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アンスリルオキシ基などが例示され、C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシ基、C6〜C20アリール基をさらに置換基として有していてもよく、C1〜C12アルコキシ基を有するフェノキシ基、C1〜C12アルキル基を有するフェノキシ基が好ましい。
【0047】
炭素数7〜60のアリールアルキル基としては、フェニル−C1〜C12アルキル基、ナフチル−C1〜C12アルキル基、アンスリル−C1〜C12アルキル基などが例示され、C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシ基、C6〜C20アリール基をさらに置換基として有していてもよく、C1〜C12アルコキシ基を有するフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキル基を有するフェニル−C1〜C12アルキル基が好ましい。
【0048】
炭素数7〜60のアリールアルコキシ基としては、フェニル−C1〜C12アルコキシ基、ナフチル−C1〜C12アルコキシ基、アンスリル−C1〜C12アルコキシ基などが例示され、C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシ基、C6〜C20アリール基をさらに置換基として有していてもよく、C1〜C12アルコキシ基を有するフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキル基を有するフェニル−C1〜C12アルコキシ基が好ましい。
【0049】
炭素数8〜60のアリールアルケニル基としては、フェニルエテニル基、ナフチルエテニル基、アンスリルエテニル基、ピレニルエテニル基などが例示され、C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシ基、C6〜C20アリール基をさらに置換基として有していてもよく、フェニルエテニル基、C1〜C12アルコキシ基を有するフェニルエテニル基、C1〜C12アルキル基を有するフェニルエテニル基が好ましい。
【0050】
炭素数8〜60のアリールアルキニル基としては、フェニルエチニル基、ナフチルエチニル基、アンスリルエチニル基、ピレニルエチニル基などが例示され、C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシ基、C6〜C20アリール基をさらに置換基として有していてもよく、フェニルエチニル基、C1〜C12アルコキシ基を有するフェニルエチニル基、C1〜C12アルキル基を有するフェニルエチニル基が好ましい。
【0051】
炭素数6〜60のモノまたはジアリールアミノ基としては、モノフェニルアミノ基、C1〜C12アルキル−フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、モノナフチルアミノ基、C1〜C12アルキル−ナフチルアミノ基、ジナフチルアミノ基、フェニルナフチルアミノ基などが例示され、C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシ基、C6〜C20アリール基をさらに置換基として有していてもよく、C1〜C12アルキルフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基が好ましい。
【0052】
炭素数2〜60の複素環化合物基としては、ピロリル基、ピリジル基、ピペラジル基、キノリル基、キノキサリル基、インドリル基、カルバゾイル基、フリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、オキサジアゾリル基、オキサゾリル基、トリアゾリル基、チオジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾジアゾリル基、シロリル基、ベンゾシロリル基などが例示され、C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシ基、C6〜C20アリール基をさらに置換基として有していてもよく、チエニル基、C1〜C12アルキル基を有するチエニル基、ピリジル基、C1〜C12アルキル基を有するピリジル基が好ましい。
【0053】
Ar1の置換基の例のうち、アルキル鎖を含む置換基においては、それらは直鎖、分岐または環状のいずれかまたはそれらの組み合わせであってもよく、直鎖でない場合、例えば、イソアミル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロヘキシル基、4−C1〜C12アルキルシクロヘキシル基などが例示される。高分子蛍光体の溶媒への溶解性を高めるためには、Ar1の置換基のうちの1つ以上に環状または分岐のあるアルキル鎖が含まれることが好ましい。また、2つのアルキル鎖の先端が連結されて環を形成していてもよい。さらに、アルキル鎖の一部の炭素原子がヘテロ原子を含む基で置き換えられていてもよく、それらのヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などが例示される。
【0054】
さらに、Ar1の置換基の例のうち、アリール基や複素環化合物基をその一部に含む場合は、それらがさらに1つ以上の置換基を有していてもよい。
【0055】
1〜R11が、水素原子またはシアノ基以外の置換基である場合について述べると、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロドデシル基などが例示され、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基が好ましい。
【0056】
炭素数6〜60のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、ペリレニル基などが例示され、C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシ基、C6〜C20アリール基をさらに置換基として有していてもよく、フェニル基、C1〜C12アルキル基を有するフェニル基が好ましい。
【0057】
炭素数2〜60の複素環化合物基としては、ピロリル基、ピリジル基、ピペラジル基、キノリル基、キノキサリル基、インドリル基、カルバゾイル基、フリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、オキサジアゾリル基、オキサゾリル基、トリアゾリル基、チオジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾジアゾリル基、シロリル基、ベンゾシロリル基などが例示され、C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシ基、C6〜C20アリール基をさらに置換基として有していてもよく、チエニル基、C1〜C12アルキル基を有するチエニル基、ピリジル基、C1〜C12アルキル基を有するピリジル基が好ましい。
【0058】
また、高分子蛍光体の末端基は、重合活性基がそのまま残っていると、素子にしたときの発光特性や寿命が低下する可能性があるので、安定な基で保護されていてもよい。主鎖の共役構造と連続した共役結合を有しているものが好ましく、例えば、ビニレン基を介してアリール基または複素環化合物基と結合している構造が例示される。具体的には、特開平9−45478号公報の化10に記載の置換基等が例示される。
【0059】
該蛍光体の合成法としては、主鎖にビニレン基を有する場合には、例えば特開平5−202355号公報に記載の方法が挙げられる。すなわち、ジアルデヒド化合物とジホスホニウム塩化合物との重合やジアルデヒド化合物とジ燐酸エステル化合物とのHorner−Wadsworth−Emmons法による重合などのWittig反応による重合、ジビニル化合物とジハロゲン化合物とのもしくはビニルハロゲン化合物単独でのHeck反応による重合、ハロゲン化メチル基を2つ有する化合物の脱ハロゲン化水素法による重縮合、スルホニウム塩基を2つ有する化合物のスルホニウム塩分解法による重縮合、ジアルデヒド化合物とジアセトニトリル化合物とのKnoevenagel反応による重合などの方法が例示される。これらのうち、特開平3−244630に開示されている、Wittig反応による重合、脱ハロゲン化水素法による重縮合、スルホニウム塩分解法による重縮合が、実施が容易である。
【0060】
また、主鎖にビニレン基を有しない場合には、例えば該当するモノマーからSuzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Ni(0)触媒により重合する方法、FeCl3等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法、あるいは適当な脱離基を有する中間体高分子の分解による方法などが例示される。
【0061】
より具体的には、特開平6−73374公報、WO99/20675号公報、WO99/48160号公報に記載の材料が例示される。
【0062】
また、該高分子蛍光体は、交互、ランダム、ブロックまたはグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。蛍光の量子収率の高い高分子蛍光体を得る観点からは完全なランダム共重合体よりブロック性を帯びたランダム共重合体やブロックまたはグラフト共重合体が好ましい。主鎖に枝分かれがあり、末端部が3つ以上ある場合やデンドリマーも含まれる。
【0063】
また、薄膜からの発光を利用するので該高分子蛍光体は、固体状態で蛍光を有するものが好適に用いられる。
【0064】
該高分子蛍光体に対する良溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、n−ブチルベンゼンなどが例示される。高分子蛍光体の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0065】
該高分子蛍光体は、数平均分子量がポリスチレン換算で1×104〜1×107であり、それらの重合度は、繰り返し構造やその割合によっても変わる。成膜性の点から一般には繰り返し構造の合計数が、好ましくは20〜10000、さらに好ましくは30〜10000、特に好ましくは50〜5000である。
【0066】
発光層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0067】
これらの高分子蛍光体を有機EL素子の発光材料として用いる場合、その純度が発光特性に影響を与えるため、重合前のモノマーを蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製したのちに重合することが好ましく、また合成後、再沈精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0068】
本発明において、1μmを超える粒子状異物を実質的に含まないようにする方法としては、共役系高分子蛍光体として水または有機溶媒等に可溶なものを用いる場合には、通常、共役系高分子蛍光体を含む有機発光層の形成を、該共役系高分子蛍光体溶液を塗布することにより行うので、塗布前に共役系高分子蛍光体溶液を孔径1μmのフィルターで濾過して粒子状異物を取り除くことが工業的に有利である。
【0069】
次に本発明の有機EL素子の製造方法について説明する。
【0070】
本発明の製造方法は、少なくとも一方が透明または半透明である一対の陽極および陰極からなる電極間に、少なくとも1層の共役系高子蛍光体を含む有機発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、共役系高分子蛍光体を含む溶液を孔径1μm以下のフィルタで濾過することにより塗布剤を作成する工程および該塗布剤を塗布して有機発光層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0071】
ここに、塗布剤を塗布して有機発光層を形成するとは、塗布剤を基板に塗布して有機発光層を形成する場合、塗布剤を、有機EL素子を形成する他の層上に塗布して有機発光層を形成する場合などが挙げられる。
【0072】
濾過する工程については、共役系高分子蛍光体を合成する工程から、素子作製の基板への塗布工程の間であれば、特に制限はない。
【0073】
塗布剤の性状は、塗布できるものであれば特に限定されないが、製造の容易さの観点から溶液であることが好ましい。
【0074】
塗布剤を作成する工程としては、共役系高分子蛍光体を含む溶液を孔径1μm以下のフィルタで濾過して塗布剤を作成する工程;共役系高分子蛍光体を含む溶液を孔径1μm以下のフィルタで濾過して得た溶液から共役系高分子蛍光体を固体として取り出して塗布剤を作成する工程が挙げられる。粒子状異物の混入を防止する観点から、共役系高分子蛍光体を含む溶液を孔径1μm以下のフィルタで濾過して塗布剤を作成する工程が好ましい。
【0075】
共役系高分子蛍光体を固体として取り出す方法としては、例えば、濾過して得た溶液を共役系高分子蛍光体に対する貧溶媒と接触させて該蛍光体を再沈殿させて固体を得、該固体を必要に応じ乾燥する方法が挙げられる。
【0076】
このようにして取り出された固体を溶媒に溶解することにより溶液の塗布液を得ることができる。
【0077】
また、本発明の製造方法は、必要に応じ、上述した工程以外に、乾燥工程、塗布剤を貯蔵する工程、塗布剤を運搬する工程、濃度を調整する工程、その他の工程を含んでいてもよい。
【0078】
塗布剤を作成する工程と該塗布剤を塗布して有機発光層を形成する工程との間に、該塗布剤を貯蔵および/または運搬する工程を有することもできる。
【0079】
貯蔵および/または運搬する工程としては特に制限はないが、異物や水分の混入を防止することが好ましい。このためには、外気から密閉される構造の容器に入れて貯蔵および/または運搬することが好ましい。
【0080】
濾過に用いるフィルタ(濾紙)としては、孔径がそろったフィルタを用いることが好ましい。ダークスポットの発生を少なくする孔径としては、通常1μm以下であり、好ましくは0.5μm以下である。ここに孔径とは、日本工業規格JISK3832のバブルポイント試験方法で測定した孔径をいう。
【0081】
フィルタの材質に特に制限はないが、有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒の耐性の高いポリ4フッ化エチレン製のフィルタが好ましい。
【0082】
本発明の方法の具体例としては、共役系高分子蛍光体溶液を濾過し、引き続き塗布する方法;共役系高分子蛍光体溶液としたのち、該溶液を貯蔵し、塗布する直前に濾過する方法;共役系高分子蛍光体を合成後に溶液として、該溶液を濾過し、濾過液から共役系高分子蛍光体を固体として取り出し、固体状態で貯蔵後、溶液として、塗布する方法が例示される。これらのうち、塗布工程の直前に濾過を行うことが好ましい。なお、濾過は複数回行ってもよい。
【0083】
有機膜中での異物の存在数については、顕微鏡で観察することもできるが、素子にして発光させ、ダークスポットとして観察するのが、簡便である。この場合、基板に由来するダークスポットと区別するために、濾過前の溶液を用いて作成された素子のダークスポットの数と濾過後の溶液を用いて作成された素子のダークスポットの数とを比較することで、有機膜中の異物に由来するダークスポット数をほぼ算出することができる。
【0084】
このようにして検出されるダークスポット数は少ないほど良好であるが、ドットマトリックス型の素子では画素の大きさが300μm角であることが多いことから、1画素に2個以下のダークスポットの発生とすると、18個/mm2以下であることが好ましい。
【0085】
本発明において、電荷注入層(電子注入層、正孔注入層)を設けた有機EL素子としては、陰極に隣接して電荷注入層を設けた有機EL素子、陽極に隣接して電荷注入層を設けた有機EL素子があげられる。
【0086】
使用される電荷注入層の具体的な例としては、導電性高分子を含む層、陽極と正孔輸送層との間に設けられ、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層、陰極と電子輸送層との間に設けられ、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層などが例示される。
【0087】
上記電荷注入層が導電性高分子を含む層の場合、該導電性高分子の電気伝導度は、10-3S/m以上105S/m以下であることが好ましく、発光画素間のリーク電流を小さくするためには、10-3S/m以上104S/m以下がより好ましく、10-3S/m以上103S/cm以下がさらに好ましい。
【0088】
通常は該導電性高分子の電気伝導度を10-3S/m以上105S/m以下とするために、該導電性高分子に適量のイオンをドープする。
【0089】
ドープするイオンの種類は、正孔注入層であればアニオン、電子注入層であればカチオンである。アニオンの例としては、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオンなどが例示され、カチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンなどが例示される。
【0090】
電荷注入層の膜厚としては、例えば1nm〜100nmであり、2nm〜50nmが好ましい。
【0091】
電荷注入層に用いる材料は、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよく、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体、ポリキノリンおよびその誘導体、ポリキノキサリンおよびその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖または側鎖に含む重合体などの導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニンなど)、カーボンなどが例示される。
【0092】
膜厚2nm以下の絶縁層は電荷注入を容易にする機能を有するものである。上記絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料等があげられる。膜厚2nm以下の絶縁層を設けた有機EL素子としては、陰極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けた有機EL素子、陽極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けた有機EL素子があげられる。
【0093】
本発明の有機EL素子が正孔輸送層を有する場合、使用される正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリピロールもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体などが例示される。
【0094】
具体的には、該正孔輸送材料として、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示される。
【0095】
これらの中で、正孔輸送層に用いる正孔輸送材料として、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体等の高分子正孔輸送材料が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0096】
ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体は、例えばビニルモノマーからカチオン重合またはラジカル重合によって得られる。
【0097】
ポリシランもしくはその誘導体としては、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.)第89巻、1359頁(1989年)、英国特許GB2300196号公開明細書に記載の化合物等が例示される。合成方法もこれらに記載の方法を用いることができるが、特にキッピング法が好適に用いられる。
【0098】
ポリシロキサンもしくはその誘導体は、シロキサン骨格構造には正孔輸送性がほとんどないので、側鎖または主鎖に上記低分子正孔輸送材料の構造を有するものが好適に用いられる。特に正孔輸送性の芳香族アミンを側鎖または主鎖に有するものが例示される。
【0099】
正孔輸送層の成膜の方法に制限はないが、低分子正孔輸送材料では、高分子バインダーとの混合溶液からの成膜による方法が例示される。また、高分子正孔輸送材料では、溶液からの成膜による方法が例示される。
【0100】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0101】
溶液からの成膜方法としては、溶液からのスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0102】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとして、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0103】
正孔輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層の膜厚としては、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0104】
本発明の有機EL素子が電子輸送層を有する場合、使用される電子輸送材料としては公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンもしくはその誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、ナフトキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンもしくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンもしくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体等が例示される。
【0105】
具体的には、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示される。
【0106】
これらのうち、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
【0107】
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、または溶液もしくは溶融状態からの成膜による方法が、高分子電子輸送材料では溶液または溶融状態からの成膜による方法がそれぞれ例示される。溶液または溶融状態からの成膜時には、高分子バインダーを併用してもよい。
【0108】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、電子輸送材料および/または高分子バインダーを溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0109】
溶液または溶融状態からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0110】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとして、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリシロキサンなどが例示される。
【0111】
電子輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該電子輸送層の膜厚としては、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0112】
本発明の有機EL素子を形成する基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよく、例えばガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン基板などが例示される。不透明な基板の場合には、反対の電極が透明または半透明であることが好ましい。
【0113】
本発明において、陽極が透明または半透明であることが好ましいが、該陽極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が用いられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、およびそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラスを用いて作成された膜(NESAなど)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等があげられる。また、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0114】
陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nmから10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0115】
また、陽極上に、電荷注入を容易にするために、フタロシアニン誘導体、導電性高分子、カーボンなどからなる層、あるいは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよい。
【0116】
本発明の有機EL素子で用いる陰極の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましい。上記アルカリ金属またはアルカリ金属を含む合金を用いることができるがそれ以外の金属として、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、およびそれらのうち2つ以上の合金、あるいはそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイトまたはグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、カルシウム−アルミニウム合金などがあげられる。陰極を2層以上の積層構造としてもよい。
【0117】
陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nmから10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0118】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が用いられる。また、陰極と有機物層との間に、導電性高分子からなる層、あるいは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよく、陰極作製後、該有機EL素子を保護する保護層を装着していてもよい。該有機EL素子を長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層および/または保護カバーを装着することが好ましい。
【0119】
該保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物などを用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板などを用いることができ、該カバーを熱効果樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子がキズつくのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にタメージを与えるのを抑制することが容易となる。これらのうち、いずれか1つ以上の方策をとることが好ましい。
【0120】
本発明の有機EL素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、前記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極または陰極のいずれか一方、または両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にOn/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号などを表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。更に、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子蛍光体を塗り分ける方法や、カラーフィルタまたは蛍光変換フィルタを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFTなどと組み合わせてアクティブ駆動してもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダーなどの表示装置として用いることができる。
【0121】
さらに、前記面状の発光素子は、自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、あるいは面状の照明用光源として好適に用いることができる。また、フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
【実施例】
【0122】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0123】
ここで、数平均分子量については、クロロホルムを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算の数平均分子量を求めた。
【0124】
参考合成例1
<高分子蛍光体1の合成>
1、4−ビス(クロロメチル)―2−{4’−(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニル}ベンゼンと亜リン酸トリエチルとを反応させて得られたジホスホン酸エステル0.66gと2―メトキシー5−(2’−エチルヘキシルオキシ)−p―キシリレンジクロライドと亜リン酸トリエチルとを反応させて得られたジホスホン酸エステル0.11gと1、4−ジホルミル―2−{4’−(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニル}ベンゼン0.50gとを、THF(脱水)30gに溶解した後、系内を窒素ガスで置換した。この溶液に、あらかじめ、第三ブトキシカリウム0.46gをTHF(脱水)15mlに溶解し、窒素ガスでバブリングすることで、窒素ガス置換した溶液の1/2量を約20分間で滴下した。滴下後、引き続き室温で1時間反応した。次に、この反応溶液に、第三ブトキシカリウム溶液の残りの1/2量を滴下した。滴下後、引き続き室温で2時間反応した。なお、反応は窒素ガス雰囲気中で行った。
【0125】
次に、この溶液に酢酸を加えて中和した。この溶液に、メタノールを加え、生成した沈殿を回収した。次に、この沈殿をエタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、重合体0.74gを得た。次に、この沈殿を少量のクロロホルムに溶解した後、メタノールで再沈精製した。得られた沈殿を、エタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、重合体0.65gを得た。得られた重合体を高分子蛍光体1と呼ぶ。
【0126】
該高分子蛍光体1のポリスチレン換算の数平均分子量は、2.2×104であった。
【0127】
参考合成例2
<高分子蛍光体2の合成>
4−ビス(クロロメチル)−2−{4’−(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニル}ベンゼン0.41gと1,4−ビス(ブロムメチル)−2−(ジメチルオクチルシリル)ベンゼン0.184gと2−メチル−5−(3,7−ジメチルオクチル)−p−キシリレンジブロミド0.18gと2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−p−キシリレンジクロライド0.0533gとを、1,4−ジオキサン(脱水)200gに溶解した。この溶液を、20分間窒素バブリングすることで系内を窒素置換した後、窒素雰囲気中、95℃まで昇温した。次にこの溶液に、あらかじめ、カリウム−t−ブトキシド 1.1gを1,4−ジオキサン(脱水)30mlに溶解し、窒素ガスでバブリングすることで、窒素ガス置換した溶液を、約10分間で滴下した。滴下後、引き続き95℃で2時間反応した。なお、反応は窒素ガス雰囲気中で行った。
【0128】
次に、この溶液を冷却した後、酢酸を加え中和した。この溶液に、メタノールを加え、生成した沈殿を回収した。次に、この沈殿をエタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、重合体0.40gを得た。次に、この沈殿をTHF約120gに溶解した後、この溶液に、メタノールを加える方法で、再沈精製した。得られた沈殿を、エタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、重合体0.36gを得た。得られた重合体を高分子蛍光体2と呼ぶ。
【0129】
該高分子蛍光体2のポリスチレン換算の数平均分子量は、1.2×105であった。
【0130】
実施例1〜3
高分子蛍光体1を用いて1.0重量%のクロロホルム溶液を調整した。この溶液を、アドバンテック東洋株式会社製の0.2μm、0.5μmのPTFE濾紙およびGelman Sciences Inc.の1.0μmのPTFE濾紙(Acrodisc syringe filter)でそれぞれ濾過して、溶液を調整した。スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(Bayer製、Bytron P TP AI 4083)の懸濁液を、0.5μmの孔径を有するアドバンテック東洋株式会社製のPETF濾紙で濾過したのち、スピンコートにより約50nmの厚みで成膜し、120℃で10分間乾燥した。その上に、上記高分子蛍光体1の3種類のクロロホル溶液を用いてスピンコートによりそれぞれ100nm〜120nmの厚みで発光層を成膜した。さらに、これを減圧下80℃で1時間乾燥した後、5×10-5Paに真空度が到達したのち、0.5%のLiを含有するAL−Li合金を50nm蒸着して、有機EL素子を作製した。
【0131】
得られた素子に窒素気流下で0.1mAを印加し、20倍の顕微鏡下で、2mmx2mmの範囲内での目視できる最小の大きさのダークスポットも含めて計測した。
【0132】
下表1に示すように、1μmの孔径以下の濾紙で濾過により、ダークスポット数は大幅に減少することから、比較例1,2で観察された大多数のダークスポットは、透明電極などの電極やポリチオフェン誘導体膜の異物や突起から、発生したのではなく、溶液からの異物により生成していることがわかった。これらの実施例は、1μmの孔径の濾紙での濾過で、溶液中に含まれる異物は除去できたことを示している。
【0133】
比較例1、2
高分子蛍光体1を用いて1.0重量%のクロロホルム溶液を調整した。この溶液を、日本ミリポア株式会社製フロリナートメンブレンタイプの5.0μmのPTFE濾紙で濾過したもの(比較例1)と濾過しない溶液(比較例2)を調整した。
【0134】
この溶液を用いて、実施例1と同様に有機EL素子とし、ダークスポット数を数えた。実施例1〜3と比較例1,2のダークスポット数を表1に示す。
【0135】
【表1】

【0136】
実施例4
<素子の作成および評価>
高分子蛍光体2を用いて0.75重量%のトルエン溶液を調整した。この溶液を、アドバンテック東洋株式会社製の1.0μmのPTFE濾紙でそれぞれ濾過して、溶液を調整した。
【0137】
この溶液を用いて、実施例1と同様に有機EL素子とし、ダークスポット数を数えた。
【0138】
比較例3,4
高分子蛍光体2を用いて0.75重量%のトルエン溶液を調整した。この溶液を、日本ミリポア株式会社製フロリナートメンブレンタイプの5.0μmのPTFE濾紙で濾過したもの(比較例3)と濾過しない溶液(比較例4)を調整した。
【0139】
この溶液を用いて、実施例1と同様に有機EL素子とし、ダークスポット数を数えた。実施例4と比較例3,4のダークスポット数を表2に示す。
【0140】
【表2】

【0141】
実施例5
参考例2で得た高分子蛍光体2を用いて1%クロロホルム溶液を調整した。この溶液をアドバンテック東洋株式会社製の0.5μmのPTFE濾紙で濾過して得た溶液を、イソプロピルアルコール中に投入して再沈殿し、得られた沈殿を回収して、乾燥した。この沈殿をトルエンに溶解し、0.75wt%の溶液を調整した。この溶液を用いて、実施例1と同様に有機EL素子とし、ダークスポット数を数えたところ、67個であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明または半透明である一対の陽極および陰極からなる電極間に、少なくとも1層の共役系高子蛍光体を含む有機発光層を有し、該有機発光層が粒径1μmを越える粒子状異物を実質的に含まないことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
共役系高分子蛍光体が水または有機溶媒に可溶であることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
共役系高分子蛍光体が、固体状態で蛍光を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が1×104〜1×107であり、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を少なくとも一種類含むものであることを特徴とする請求項1または2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
−Ar1−(CR1=CR2k− ・・・・・(1)
〔ここで、Ar1は、隣接する2つの基とそれぞれ炭素−炭素結合を形成する2価の基であり、共役に関与する炭素原子の数が6個以上60個以下からなるアリーレン基、または共役に関与する炭素原子の数が4個以上60個以下からなる複素環化合物基であるものを示し、該アリーレン基、複素環化合物基はさらに置換基を有していてもよい。またR1、R2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数4〜60の複素環化合物基およびシアノ基からなる群から選ばれる基を示し、該アリール基、複素環化合物基はさらに置換基を有していてもよい。kは0または1である。〕
【請求項4】
少なくとも一方が透明または半透明である一対の陽極および陰極からなる電極間に、少なくとも1層の共役系高子蛍光体を含む有機発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、共役系高分子蛍光体を含む溶液を孔径1μm以下のフィルタで濾過することにより塗布剤を作成する工程および該塗布剤を塗布して有機発光層を形成する工程を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項5】
塗布剤を作成する工程が、共役系高分子蛍光体を含む溶液を孔径1μm以下のフィルタで濾過して得た溶液から、共役系高分子蛍光体を固体として取り出して塗布剤を作成する工程であることを特徴とする請求項4記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項6】
塗布剤を作成する工程と該塗布剤を塗布して有機発光層を形成する工程との間に、該塗布剤を貯蔵および/または運搬する工程を有することを特徴とする請求項4または5記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項7】
塗布剤が溶液であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を用いてなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
請求項1〜3、または8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたことを特徴とする面状光源。
【請求項10】
請求項1〜3、または8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたことを特徴とするセグメント表示装置。
【請求項11】
請求項1〜3、または8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたことを特徴とするドットマトリックス表示装置。
【請求項12】
請求項1〜3、または8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子をバックライトとすることを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2010−232696(P2010−232696A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161378(P2010−161378)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【分割の表示】特願2000−266643(P2000−266643)の分割
【原出願日】平成12年9月4日(2000.9.4)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】