有機エレクトロルミネッセンス素子の製法
【課題】
本発明は、低コストで連続的に製造できる、有機エレクトロルミネッセンス(以下「EL」とする)素子の製法を提供する。
【解決手段】
ロールトゥロールにより有機EL素子を製造するのに際し、粘着面および所定の開口パターンを有するシート状のフレキシブルフィルムからなるマスクを、シート状の基板に対して貼り合せ、上記マスクの上から上記第2電極を形成した後、上記マスクを剥離して所定パターンを有する第2電極を形成するようにした。
本発明は、低コストで連続的に製造できる、有機エレクトロルミネッセンス(以下「EL」とする)素子の製法を提供する。
【解決手段】
ロールトゥロールにより有機EL素子を製造するのに際し、粘着面および所定の開口パターンを有するシート状のフレキシブルフィルムからなるマスクを、シート状の基板に対して貼り合せ、上記マスクの上から上記第2電極を形成した後、上記マスクを剥離して所定パターンを有する第2電極を形成するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低コストで製造できる有機エレクトロルミネッセンス素子の製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
次世代の低消費電力の発光装置として期待されている有機エレクトロルミネッセンス(以下「EL」とする)発光装置は、有機発光材料に由来する多彩な色彩の発光が得られ、また、自発光素子からなるため、TV等のディスプレイ用としても注目されている。
【0003】
このような有機EL発光装置に用いられる有機EL素子は、無機EL素子に比べると薄膜素子であり、また、面発光素子であるという特徴を有しているため、この特徴を活かした照明機器、液晶ディスプレイのバックライト、展示デコレーション用の発光部品やデジタルサイネージ等の広い範囲での用途が期待されている。
【0004】
一方、有機EL素子は生産性が悪いため、コストが高いという問題がある。したがって、有機EL素子の製造を低コスト化するために、フレキシブル性を有する基板を用い、ロールトゥロールプロセスによる効率的な製法の検討がなされている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−367774号公報
【特許文献2】特開2003−173870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の製法は、シート状基板に樹脂を塗布して所定のマスクを形成し、このマスクを含むシート状基板の全面に所望の薄膜を形成した後、マスクを剥離するようにして有機EL素子の薄膜パターンを形成している。このため、連続的に製造を行うと、マスクに含まれる樹脂の溶媒等の揮発成分による有機EL素子への悪影響が懸念されるとともに、樹脂を塗布するための装置やこの樹脂を硬化させるための装置等が別途必要になる。また、樹脂を塗布することによってマスクを形成すると、マスクの開口部の周縁がなだらかな傾斜面に形成されてしまう。そのため、上記マスクの上から真空蒸着やスパッタリング等により薄膜を形成すると、薄膜はマスク開口部から露呈しているシート状基板からマスクの上まで一続きの連続面に形成されることになり、マスクを剥離する際に、マスクの上に形成された薄膜だけでなく、マスク開口部内の、シート状基板上に形成された必要部分の薄膜も一緒に剥離されて、薄膜パターン形成の精度が低下する、という問題が生じている。
【0007】
また、特許文献2に記載の製法は、走行する帯状の金属製のマスクを用い、まず、同期走行する金属製の転写基板に有機EL層をパターニングし、つぎにこのパターニングされた有機EL層を基板上に転写するようにしている。この方法では、マスクや転写基板を走行させるための大掛かりな装置が必要になるとともに、金属製の転写基板が基板に接するため、基板がダメージを受ける可能性がある。また、金属製の転写基板と基板との位置合わせを、都度行う必要があるため、効率よく連続製造ができないという問題もある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低コストで連続的に製造できる、有機EL素子の製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の有機EL素子の製法は、ロールトゥロールによりシート状基板を搬送する工程と、上記シート状基板の上側に第1電極を形成する工程と、上記第1電極上に有機EL層を形成する工程と、上記有機EL層上にマスクを用いて所定パターンを有する第2電極を形成する工程とを有し、上記第2電極を形成する工程において、上記マスクは粘着面を有し上記所定パターンに対応する開口部を有するフレキシブルフィルムであり、上記マスクを上記有機EL層が形成されたシート状基板に貼り合せた状態で、第2電極形成材料を上記開口部を介して上記有機EL層上に蒸着した後、上記マスクを剥離することにより、所定パターンを有する第2電極を形成するようにしたことを第1の要旨とし、ロールトゥロールによりシート状基板を搬送する工程と、上記シート状基板の上側に第1電極を形成する工程と、上記第1電極上にマスクを用いて所定パターンを有する有機EL層を形成する工程と、上記有機EL層上にマスクを用いて上記有機EL層と同一パターンを有する第2電極を形成する工程とを有し、上記有機EL層を形成する工程および第2電極を形成する工程において、上記マスクとして粘着面を有し所定パターンに対応する開口部を有する同一のフレキシブルフィルムを共通に用い、上記マスクをシート状の基板に対して貼り合せた状態で、有機EL層形成材料および第2電極形成材料を上記開口部を介してこの順で上記第1電極上に蒸着した後、上記マスクを剥離することにより、所定パターンを有する有機EL層およびこれと同一パターンを有する第2電極を形成することを第2の要旨とする。
【0010】
すなわち、本発明者らは、有機EL素子を効率よく低コストで製造するため、薄膜パターンを枚葉式の処理ではなく、ロールトゥロールプロセスで形成することについて研究を重ねた。そして、上記プロセスにおいて、薄膜パターンの形成に用いるマスクに注目し、さらに研究を重ねた。その結果、上記所定パターンを有する第2電極を形成する際、上記所定パターンに対応する開口部が設けられたシート状の粘着面を有するフレキシブルフィルムをマスクに用い、その開口部と基板の第2電極形成予定部分とを位置合わせし、マスクの粘着面を利用し有機EL層が形成された基板に貼り合せ、第2電極形成材料を上記マスクの開口部を介して有機EL層上に蒸着した後、上記マスクを剥離して形成すると、有機EL素子に対し溶媒等の揮発による悪影響を与えることがなく、また、一度位置合わせを行った後は、都度の位置合わせが不用なため、迅速に低コストで有機EL素子を製造できる。しかも、上記マスクを介して第2電極形成材料を蒸着すると、第2電極は開口部から露呈している部分とマスク上の部分との段差によって非連続となる。したがって、マスク剥離工程において、マスクの開口部から露呈している部分に形成された第2電極はそのままで、マスク上に形成された第2電極をマスクごと一緒に剥離でき、所定パターンを有する第2電極を、簡単に、しかも正確に形成できることを見い出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明の有機EL素子の製法は、所定パターンを有する第2電極の形成を、マスクとして上記所定パターンに対応する開口部が設けられたシート状の粘着面を有するフレキシブルフィルムを用い、その開口部と基板の第2電極形成予定部分とを位置合わせし、マスクの粘着面を利用し有機EL層が形成された基板に貼り合せ、その状態で第2電極形成材料を上記開口部を介して上記有機EL層上に蒸着した後、上記マスクを剥離して形成するようにしている。このため、所定パターンを有する第2電極の形成に際し、大掛かりな装置が不用となり、コストの低減が図られている。また、マスクからの有機溶媒等の揮発による悪影響を受けることがない。そして、基板に金属製の転写基板やマスクが接することによる、基板ダメージが発生しない。さらに、マスクと基板とを位置合わせして貼り合せた後は、都度のアライメントが不要であるため、迅速に所定パターンを有する第2電極を形成できる。そして、上記マスクを用いて第2電極形成材料を蒸着すると、第2電極はマスクの開口部から露呈している部分とマスク上の部分との段差によって非連続となる。このため、マスクの開口部に形成された第2電極はそのままで、マスク上に形成された第2電極をマスクごと一緒に剥離でき、所定パターンを有する第2電極を、簡単に、正確に形成できる。
【0012】
そして、上記有機EL層を形成する工程において、マスクとして粘着面を有し所定パターンに対応する開口部を有するフレキシブルフィルムを用い、上記マスクをシート状の基板に対して貼り合せた状態で、有機EL層形成材料を上記開口部を介して上記第1電極上に蒸着した後、上記マスクを剥離することにより、所定パターンを有する有機EL層を形成するようにした場合には、連続的に効率よく所定パターンを有する有機EL層を形成できるため、有機EL素子の生産性が向上し、より低コストの製造を実現できる。
【0013】
また、ロールトゥロールによりシート状基板を搬送する工程と、上記シート状基板の上側に第1電極を形成する工程と、上記第1電極上にマスクを用いて所定パターンを有する有機EL層を形成する工程と、上記有機EL層上にマスクを用いて上記有機EL層と同一パターンを有する第2電極を形成する工程とを有し、上記有機EL層を形成する工程および第2電極を形成する工程において、上記マスクとして粘着面を有し所定パターンに対応する開口部を有する同一のフレキシブルフィルムを共通に用い、上記マスクをシート状の基板に対して貼り合せた状態で、有機EL層形成材料および第2電極形成材料を上記開口部を介してこの順で上記第1電極上に蒸着した後、上記マスクを剥離することにより、所定パターンを有する有機EL層およびこれと同一パターンを有する第2電極を形成するようにした場合、すなわち、ロールトゥロールプロセスにおいて、上記所定パターンを有する有機EL層およびこれと同一パターンを有する第2電極を形成する場合に、上記所定パターンに対応する開口部が設けられたシート状のフレキシブルフィルムをマスクとして用い、その開口部とシート状の基板の有機EL層および第2電極形成予定部分とを位置合わせした状態で、上記粘着面を利用しシート状の基板に対して貼り合せ、そのマスク貼り合せ面の上から、有機EL層形成材料および第2電極形成材料を上記マスクの開口部を介してこの順で上記第1電極上に蒸着した後、上記マスクを剥離することにより、所定パターンを有する有機EL層とこれと同一パターンを有する第2電極を形成するようにすると、マスクの形成、基板に対する貼り合せおよびその剥離をそれぞれ一度行うだけでよいため、より迅速な製造が可能となる。また、マスクの使用量を低減させることができるため、より低コストの製造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本発明の一実施の形態によって得られる有機EL素子の平面図、(b)はそのA−A断面図である。
【図2】(a)は上記実施の形態の説明図、(b)はそのB−B断面図である。
【図3】(a)は上記実施の形態の説明図、(b)はそのC−C断面図である。
【図4】(a)は上記実施の形態の説明図、(b)はそのD−D断面図である。
【図5】(a)は上記実施の形態の説明図、(b)はそのE−E断面図である。
【図6】(a)は上記実施の形態の説明図、(b)はそのF−F断面図である。
【図7】(a)は上記実施の形態の説明図、(b)はそのG−G断面図である。
【図8】(a)は上記実施の形態の説明図、(b)はそのH−H断面図である。
【図9】(a)は上記実施の形態の説明図、(b)はそのI−I断面図である。
【図10】上記実施の形態の説明図である。
【図11】(a)は本発明の他の実施の形態の説明図、(b)はそのJ−J断面図である。
【図12】(a)は上記他の実施の形態の説明図、(b)はそのK−K断面図である。
【図13】(a)は上記他の実施の形態の説明図、(b)はそのL−L断面図である。
【図14】(a)は上記他の実施の形態の説明図、(b)はそのM−M断面図である。
【図15】(a)は上記他の実施の形態の説明図、(b)はそのN−N断面図である。
【図16】(a)は上記他の実施の形態の説明図、(b)はそのO−O断面図である。
【図17】上記他の実施の形態の説明図である。
【図18】(a)は本発明のさらに他の実施の形態の説明図、(b)はそのP−P断面図である。
【図19】(a)は上記さらに他の実施の形態の説明図、(b)はそのQ−Q断面図である。
【図20】(a)は上記さらに他の実施の形態の説明図、(b)はそのR−R断面図である。
【図21】(a)は上記さらに他の実施の形態の説明図、(b)はそのS−S断面図である。
【図22】(a)は上記さらに他の実施の形態の説明図、(b)はそのT−T断面図である。
【図23】(a)は上記さらに他の実施の形態の説明図、(b)はそのU−U断面図である。
【図24】上記さらに他の実施の形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0016】
本発明の第1の実施の形態によって得られる有機EL素子1を、図1(a)およびそのA−A断面図である図1(b)に示す。上記有機EL素子1は、基板2上に、絶縁層3、第1電極4、有機EL層5、第2電極6がこの順に積層され、トップエミッション構造を有している。なお、図1(a),(b)において、各部分は模式的に示したものであり、実際の大きさ等とは異なっている(以下の図においても同じ)。
【0017】
この実施の形態における製法(以下「本発明の第1の製法」という)は、要約すると、ロールトゥロールにより有機EL素子1を製造するのに際し、所定パターンを有する第2電極の形成を、粘着面および所定の開口パターンを有するシート状のフレキシブルフィルムをマスクとして用い、上記マスクの上から第2電極を形成した後、上記マスクを剥離することを特徴とするものである。以下に本発明の第1の製法について詳細に説明する。
【0018】
まず、ステンレス(SUS)製のシート状(幅300mm×厚み50μm×長さ140m)基板2を、その一端を供給ロールに巻き回し、他方の端を巻き取りロールに巻き回し、ロールトゥロールで有機EL素子1を製造する準備を行う。そして、上記基板2を連続的に送りながら、この基板2の表面の全面に絶縁性を有する樹脂を塗布し、図2(a)およびそのB−B断面図である図2(b)に示すように、絶縁層3(厚み4nm)を形成する。ついで、酸化インジウム亜鉛(IZO)をスパッタリングし、さらにエッチングによりパターニングして、図3(a)およびそのC−C断面図である図3(b)に示すように、第1電極4(厚み90nm)を形成する。
【0019】
つぎに、マスク8として、一方の面に粘着層を有し、有機EL層5形成予定部分(図6参照)と同一形状の開口部9が、打ち抜き加工により連続的に設けられたシート状のフレキシブルフィルム(E−MASK RP300、日東電工社製)を準備し、基板2の有機EL層5形成予定部分と、上記マスク8の開口部9とが一致するように調整し、マスク8が有する粘着層を利用して、図4(a)およびそのD−D断面図である図4(b)に示すように、上記第1電極4が形成された基板2に対しマスク8を貼り合せる。
【0020】
そして、上記マスク8が貼り合わされた基板2に対し、図5(a)およびそのE−E断面図である図5(b)に示すように、マスク8の上から有機EL層形成材料を真空蒸着し、有機EL層5を形成する。その後、上記マスク8を剥離しながら巻き取ることで、図6(a)およびそのF−F断面図である図6(b)に示すように、所定の部分にのみ有機EL層5が形成される。
【0021】
つづいて、マスク10として、一方の面に粘着層を有し、第2電極6形成予定部分と同一形状の開口部11が、打ち抜き加工により連続的に設けられたシート状のフレキシブルフィルム(E−MASK RP300、日東電工社製)を準備し、基板2の第2電極6形成予定部分(図9参照)と、上記マスク10の開口部11とが一致するように調整し、マスク10が有する粘着層を利用して、図7(a)およびそのG−G断面図である図7(b)に示すように、有機EL層5が形成された基板2に対しマスク10を貼り合せる。
【0022】
そして、上記マスク10が貼り合わされた基板2に対し、図8(a)およびそのH−H断面図である図8(b)に示すように、マスク10の上から第2電極形成材料を真空蒸着し、第2電極6を形成する。その後、上記マスク10を剥離しながら巻き取ることで、図9(a)およびそのI−I断面図である図9(b)に示すように、所定の部分にのみ第2電極6が形成される。これを、図10に示すように、所定のサイズに切断することにより、上記有機EL素子1を得ることができる〔図1(a),(b)参照〕。
【0023】
この方法によれば、有機EL素子をロールトゥロールで製造するに際し、有機EL層5および第2電極6のパターニングを、シート状のフレキシブルフィルムからなるマスク8,10を用いて行っているため、別途、パターニングを行うための各種の装置を必要としない。また、各層が積層された基板2に接するのが、フレキシブルフィルムからなるマスク8,10であるため、基板2およびこれに積層された各層は金属製の転写基板やマスクが接する場合に比べて、ダメージを受けにくい。そして、真空蒸着装置内において、マスク8,10から溶剤等の成分が揮発しないため、有機EL素子1が溶剤等による悪影響を受けることがない。さらに、シート状の基板2に対し、シート状のマスク8,10貼り合せて用いるため、都度のアライメントが不要となる。そして、このマスク8,10を用いると、有機EL層5および第2電極6の薄膜がマスク8,10の開口部9,11から露呈している部分とマスク上部分との段差により非連続に形成されるため、マスク8,10を剥離する際に、マスク8,10の開口部9,11から露呈している部分に形成される有機EL層5および第2電極6まで剥離することがなく、精度よく所定パターンを有する有機EL層5および第2電極6を形成することができる。そして、所定パターンを有する有機EL層5および第2電極6を連続的に効率よく形成できるため、有機EL素子の生産性が向上し、より低コストでの製造を実現することができる。また、第2電極が精度よく形成され、その位置ずれ等が発生しないため、各層が形成された後のシート状の基板2を所定の大きさに切断する際に、形成予定部分以外に第2電極6が形成されることに起因する、第2電極6と基板2とが接触することによる短絡が生じない。
【0024】
上記の例において、シート状の基板2として、SUSを用いているが、これに限らず、36アロイ、42アロイ等の合金、銅(Cu)、ニッケル、鉄、アルミニウム(Al)、チタン等の金属フィルムや、芳香族ポリアミドフィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アラミドフィルム、ポリエステルフィルム等からなる単層もしくは多層の樹脂フィルムや、金属フィルムと樹脂フィルムとの積層体等を用いることができる。なかでも、有機EL層5から発せられる熱を効率よく分散でき、強度が高い点で、SUS、Al等の金属フィルムを用いることが好ましい。
【0025】
また、上記の例においては、基板2の表面の全面に絶縁性を有する樹脂を塗布し、絶縁層3(厚み4nm)を形成しているが、基板2の表面粗さ(Ra)が小さいときや、絶縁性基板等の場合には、必ずしも形成する必要はない。しかし、絶縁層3を形成すると、基板2表面の平滑性が担保される点で好ましい。
【0026】
そして、上記の例においては、第1電極4として、IZOを用いているが、そのほかにも、酸化インジウム錫(ITO)、酸化ゲルマニウム亜鉛(GZO)等の各種電極として用いられる材料を用いることができる。また、その厚みは、導電性の点において、10nm〜500nmの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは50nm〜300nmの範囲である。さらに、スパッタリングの代わりに、他の蒸着手段として、真空蒸着を用いることも可能である。しかし、スパッタリングを用いることが、精度、工程の簡便化の点から好ましい。
【0027】
また、上記の例では、基板2上に絶縁層3を設けているが、基板2と絶縁層3との間に、反射層を設けてもよい。この場合、基板2の種類に関係なく、反射層によってより有効に光を反射できるため、トップエミッション型素子の場合において、より多くの光を第2電極6側から取り出すことができる。反射層は、例えば、銀(Ag)、Al、クロム、モリブデン、パラジウムおよびCuを含有するAg系合金(APC)等を、単層または複層に形成することによって得られる。その厚みは、光を充分に反射するだけの厚みがあればよく、10nm〜500nmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは50nm〜300nmの範囲である。なお、絶縁層3を設けない場合には、基板2と第1電極4との間に反射層が設けられる。
【0028】
そして、上記の例では、マスク8,10として、ポリエステル系樹脂をベースとするフレキシブルフィルム(E−MASK RP300、日東電工社製)を用いているが、その他にも、開口部の打ち抜き加工の容易性、軽量性、柔軟性のそれぞれが高い点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂をベースとするものを用いてもよい。また、マスク8,10が有する粘着面の粘着力は、ともに5N/m〜100N/mの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは、10N/m〜60N/mの範囲である。粘着力が低すぎると、プロセス中に剥がれてしまうおそれがあり、逆に、高すぎると、剥離する際に基板1を変形させる可能性があるためである。そして、このマスク8,10の厚みは、ともに10μm〜400μmの範囲にあることが好ましく、特に好ましくは20μm〜300μmの範囲である。厚みが薄すぎると、剥離時にマスク8,10が破れたり、裂けたりするおそれがあり、逆に厚すぎると、供給ロールおよび巻き取りロールが意味なく大型化し、製造コストの上昇を招く傾向がみられるためである。また、マスク8,10のサイズは、基板2と同等かやや小さい程度が好ましい。サイズが小さすぎると、マスクを多数準備し、これをその都度位置合わせの上、継ぎ足して貼り合せる必要が生じ、ロールトゥロールプロセスを連続的に運転するのが困難になる傾向がみられるためである。
【0029】
さらに、上記の例では、マスク8,10を剥離した後に、次の工程を行うため基材2の巻き取りを行っているが、マスク8,10を剥離せずに基材2を巻き取るようにしてもよい。この場合、マスク8,10がスペーサーの役目を果たし、有機EL層5が基板2に接触することなく巻き取れるため、巻きずれ等により傷が入るリスクを減らすことができる。マスク8,10を剥離せずに巻き取った場合には、次の工程で基板2を巻き出し、その工程での処理を行う前にマスク8,10を剥離すればよい。
【0030】
また、上記の例では、有機EL層5および第2電極6の形成の際、蒸着手段として、いずれも真空蒸着を用いているが、他の蒸着手段として、スパッタリングやEB蒸着(電子線蒸着)等を用いてもよい。しかし、効率の点から、真空蒸着が好ましく用いられる。
【0031】
そして、上記の例では、第2電極6として、Alを用いているが、そのほかにも、Ag、マグネシウム、これらの合金等の各種電極として用いられる材料を用いることができる。また、その厚みは、5nm〜200nmの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは8nm〜150nmの範囲である。すなわち、厚みが薄すぎると、電極として作用しない傾向がみられ、逆に、厚すぎると、上記マスク10の開口部11の内周壁面に連続的に形成され、マスク10剥離の際に、必要な部分まで一緒に剥離される傾向がみられるためである。さらに、真空蒸着の代わりに、他の蒸着手段として、スパッタリングを用いることも可能である。しかし、真空蒸着を用いることが、有機EL層5へ与えるダメージが少ない点から好ましい。
【0032】
つぎに、図11〜図17に、本発明の第2の実施の形態である製法(以下「本発明の第2の製法」という)を示す。本発明の第2の製法では、本発明の第1の製法において、有機EL層5のパターニングをせずに、所定パターンを有する第2電極6を形成して、図11(a)およびそのJ−J断面図である図11(b)に示す有機EL素子12を製造している。なお、本発明の第2の製法では、本発明の第1の製法と同一構成部分については同一符号を付してその説明は省略している。
【0033】
すなわち、本発明の第1の製法と同様にして、図12(a)およびそのK−K断面図である図12(b)に示すように、基板2上に絶縁層3と第1電極4とをこの順で形成する。そして、図13(a)およびそのL−L断面図である図13(b)に示すように、有機EL層形成材料を基板2に対し真空蒸着し、基材2のほぼ全面に有機EL層5を形成する。
【0034】
つぎに、マスク10として、一方の面に粘着層を有し、第2電極6形成予定部分(図16参照)と同一形状の開口部11が、打ち抜き加工により連続的に設けられたシート状のフレキシブルフィルム(E−MASK RP300、日東電工社製)を準備し、基板2の第2電極6形成予定部分と、上記マスク10の開口部11とが一致するように調整し、マスク10が有する粘着層を利用して、図14(a)およびそのM−M断面図である図14(b)に示すように、上記有機EL層5までが形成された基板2に対しマスク10を貼り合せる。
【0035】
そして、上記基板2に対し、マスク10の上から第2電極形成材料を真空蒸着し、図15(a)およびそのN−N断面図である図15(b)に示すように、第2電極6を形成する。その後、上記マスク10を剥離しながら巻き取ることで、図16(a)およびそのO−O断面図である図16(b)に示すように、所定の部分にのみ第2電極6が形成される。その後、これを、図17に示すように、所定のサイズに切断することにより、上記有機EL素子12〔図11(a),(b)〕を得ることができる。
【0036】
この本発明の第2の製法によれば、本発明の第1の製法で得られる効果に加えて、有機EL層5をパターニングする必要がないため、より迅速に低コストの有機EL素子12を製造することができる。
【0037】
さらに、図18〜図24に、本発明の第3の実施の形態である製法(以下「本発明の第3の製法」という)を示す。本発明の第3の製法では、本発明の第1の製法において、所定パターンを有する有機EL層5を形成する際に用いるマスクを、有機EL層形成材料を真空蒸着した後に剥離せず、第2電極形成材料を真空蒸着する際に援用し、第2電極形成材料を真空蒸着した後に剥離するようにして、有機EL層5と同一のパターンを有する第2電極6が形成される有機EL素子13〔図18(a)およびそのP−P断面図である図18(b)参照〕を製造している。なお、本発明の第3の製法でも、本発明の第1または第2の製法と同一構成部分については同一符号を付してその説明は省略している。
【0038】
すなわち、本発明の第1の製法と同様にして、図19(a)およびそのQ−Q断面図である図19(b)に示すように、基板2上に絶縁層3と第1電極4とをこの順で形成する。そして、有機EL層5および第2電極6形成予定部分(図23参照)と同一形状の開口部15が、打ち抜き加工により連続的に設けられたシート状のマスク14(フレキシブルフィルムE−MASK RP300、日東電工社製)を準備し、基板2の有機EL層5および第2電極6形成予定分と、上記マスク14の開口部15とが一致するように調整し、マスク14が有する粘着層を利用して、図20(a)およびそのR−R断面図である図20(b)に示すように、第1電極4までが形成された基板2に対しマスク14を貼り合せる。そして、図21(a)およびそのS−S断面図である図21(b)に示すように、上記基板2に対し、マスク14の上から有機EL層形成材料を真空蒸着し、上記マスク14を剥離せずに、このマスク14の上から続けて、図22(a)およびそのT−T断面図である図22(b)に示すように、第2電極形成材料を真空蒸着し、有機EL層5および第2電極6を形成する。その後、上記マスク14を剥離しながら巻き取り、図23(a)およびそのU−U断面図である図23(b)に示すように、上記有機EL層5および第2電極6形成予定部分にのみ有機EL層5および第2電極6が形成された、所定パターンを有する有機EL層5およびこれと同一のパターンを有する第2電極6を形成する。これを、図24に示すように、所定のサイズに切断することにより、上記有機EL素子13〔図18(a),(b)参照〕を得ることができる。
【0039】
この本発明の第3の製法によれば、本発明の第1の製法で得られる効果に加えて、有機EL層5を形成した後にマスクを剥離する必要がないため、より迅速に効率的に有機EL素子13を製造することができる。また、所定パターンを有する有機EL層5および第2電極6を形成するにも関わらず、用いるマスクを共通化しているため、より低コストでの製造を実現できる。
【0040】
つぎに、実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
〔実施例1〕
ロールトゥロールを用いて有機EL素子を製造するに際し、幅が20mm、長さが140m、厚み50μmのフレキシブル性を持たせたSUS製の基板2を用意し、この一端側を供給ロールに巻き回し、他端側を巻き取りロールに巻き回した。そして、上記基板2を連続的に送りながら、この基板2の表面に、絶縁性を有するアクリル系樹脂(JEM−477、JSR社製)を塗布し、絶縁層3(厚み4μm)を形成した。その上に、IZO(厚み20nm)をスパッタリングし、エッチングによりパターニングして第1電極4を形成した。第1電極4まで形成した基板2に対し、マスク8として、有機EL層5形成予定部に対応する開口部9を設けたフレキシブルフィルム(E−MASK RP300、日東電工社製)を位置合わせしながら貼り合せ、このマスク8の上から、10-4Paの真空で銅フタロシアニン(CuPc)25nm/N,N’−ジフェニル−N−N−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(NPB)45nm/8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3)60nm/フッ化リチウム(LiF)0.5nmを、0.1nm/secの速度で蒸着した後、上記マスク8を巻き取りながら剥離し、所定パターンを有する有機EL層5を形成した。つぎに、マスク10として、第2電極6形成予定部に対応する開口部11を設けたフレキシブルフィルム(E−MASK RP300、日東電工社製)を位置合わせしながら、上記有機EL層5までが形成された基板2に貼り合せ、このマスク10の上から、10-4Paの真空でAl(厚み10nm)を蒸着した後、上記マスク10を巻き取りながら剥離し、所定パターンを有する第2電極6を形成した。これを長さ30mmのサイズで切断して、目的とする有機EL素子を得た。
【0042】
〔実施例2〕
有機EL層5をパターニングせずに、基板2に対しほぼ全面に形成した他は、実施例1と同様にして、目的とする有機EL素子を得た。
【0043】
〔実施例3〕
有機EL層5を形成した後、マスク8を剥離せずに続けてそのマスク8の上から10-4Paの真空でAl(厚み10nm)を蒸着した後、マスク8を巻き取りながら剥離して、所定パターンを有する有機EL層5およびこれと同一のパターンを有する第2電極6を形成した他は、実施例1と同様にして、目的とする有機EL素子を得た。
【0044】
〔比較例1〕
所定パターンを有する有機EL層5の形成を、フレキシブルフィルムからなるマスク8に代えてSUS304製のシャドウマスク(厚み50μm)を用い、さらに所定パターンを有する第2電極の形成を、フレキシブルフィルムからなるマスク10に代えて、SUS304製のシャドウマスク(厚み50μm)を用いて行った他は、実施例1と同様にして、目的とする有機EL素子を得た。
【0045】
得られたこれらの実施例1〜3、比較例1の有機EL素子について、第1電極と第2電極との間に10mA/cm2の電流を印加し、その素子特性(発光効率)を有機EL発光効率測定装置(EL−3000、プレサイスゲージ社製)にて測定した。その結果、実施例1〜3品は、1cd/Aの発光効率が得られた。比較例1品は、短絡を起こし、発光しなかった。
【0046】
上記の結果より、実施例1〜3品はいずれも、ロールトゥロールプロセスで連続的に製造することができ、しかも優れた素子特性を有していることがわかる。一方、比較例1品は、ロールトゥロールプロセスで製造できるものの、実施例品と同様の連続製造を行うと、短絡を起こし発光しなかった。これは、金属製のシャドウマスクとの接触によって、各層に微細な傷が発生したことに起因するためであると思われる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の有機EL素子の製法は、照明機器、液晶ディスプレイのバックライト、展示デコレーション用の発光部品やデジタルサイネージ等に用いられる有機EL素子を迅速に効率よく製造する方法として適している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、低コストで製造できる有機エレクトロルミネッセンス素子の製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
次世代の低消費電力の発光装置として期待されている有機エレクトロルミネッセンス(以下「EL」とする)発光装置は、有機発光材料に由来する多彩な色彩の発光が得られ、また、自発光素子からなるため、TV等のディスプレイ用としても注目されている。
【0003】
このような有機EL発光装置に用いられる有機EL素子は、無機EL素子に比べると薄膜素子であり、また、面発光素子であるという特徴を有しているため、この特徴を活かした照明機器、液晶ディスプレイのバックライト、展示デコレーション用の発光部品やデジタルサイネージ等の広い範囲での用途が期待されている。
【0004】
一方、有機EL素子は生産性が悪いため、コストが高いという問題がある。したがって、有機EL素子の製造を低コスト化するために、フレキシブル性を有する基板を用い、ロールトゥロールプロセスによる効率的な製法の検討がなされている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−367774号公報
【特許文献2】特開2003−173870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の製法は、シート状基板に樹脂を塗布して所定のマスクを形成し、このマスクを含むシート状基板の全面に所望の薄膜を形成した後、マスクを剥離するようにして有機EL素子の薄膜パターンを形成している。このため、連続的に製造を行うと、マスクに含まれる樹脂の溶媒等の揮発成分による有機EL素子への悪影響が懸念されるとともに、樹脂を塗布するための装置やこの樹脂を硬化させるための装置等が別途必要になる。また、樹脂を塗布することによってマスクを形成すると、マスクの開口部の周縁がなだらかな傾斜面に形成されてしまう。そのため、上記マスクの上から真空蒸着やスパッタリング等により薄膜を形成すると、薄膜はマスク開口部から露呈しているシート状基板からマスクの上まで一続きの連続面に形成されることになり、マスクを剥離する際に、マスクの上に形成された薄膜だけでなく、マスク開口部内の、シート状基板上に形成された必要部分の薄膜も一緒に剥離されて、薄膜パターン形成の精度が低下する、という問題が生じている。
【0007】
また、特許文献2に記載の製法は、走行する帯状の金属製のマスクを用い、まず、同期走行する金属製の転写基板に有機EL層をパターニングし、つぎにこのパターニングされた有機EL層を基板上に転写するようにしている。この方法では、マスクや転写基板を走行させるための大掛かりな装置が必要になるとともに、金属製の転写基板が基板に接するため、基板がダメージを受ける可能性がある。また、金属製の転写基板と基板との位置合わせを、都度行う必要があるため、効率よく連続製造ができないという問題もある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低コストで連続的に製造できる、有機EL素子の製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の有機EL素子の製法は、ロールトゥロールによりシート状基板を搬送する工程と、上記シート状基板の上側に第1電極を形成する工程と、上記第1電極上に有機EL層を形成する工程と、上記有機EL層上にマスクを用いて所定パターンを有する第2電極を形成する工程とを有し、上記第2電極を形成する工程において、上記マスクは粘着面を有し上記所定パターンに対応する開口部を有するフレキシブルフィルムであり、上記マスクを上記有機EL層が形成されたシート状基板に貼り合せた状態で、第2電極形成材料を上記開口部を介して上記有機EL層上に蒸着した後、上記マスクを剥離することにより、所定パターンを有する第2電極を形成するようにしたことを第1の要旨とし、ロールトゥロールによりシート状基板を搬送する工程と、上記シート状基板の上側に第1電極を形成する工程と、上記第1電極上にマスクを用いて所定パターンを有する有機EL層を形成する工程と、上記有機EL層上にマスクを用いて上記有機EL層と同一パターンを有する第2電極を形成する工程とを有し、上記有機EL層を形成する工程および第2電極を形成する工程において、上記マスクとして粘着面を有し所定パターンに対応する開口部を有する同一のフレキシブルフィルムを共通に用い、上記マスクをシート状の基板に対して貼り合せた状態で、有機EL層形成材料および第2電極形成材料を上記開口部を介してこの順で上記第1電極上に蒸着した後、上記マスクを剥離することにより、所定パターンを有する有機EL層およびこれと同一パターンを有する第2電極を形成することを第2の要旨とする。
【0010】
すなわち、本発明者らは、有機EL素子を効率よく低コストで製造するため、薄膜パターンを枚葉式の処理ではなく、ロールトゥロールプロセスで形成することについて研究を重ねた。そして、上記プロセスにおいて、薄膜パターンの形成に用いるマスクに注目し、さらに研究を重ねた。その結果、上記所定パターンを有する第2電極を形成する際、上記所定パターンに対応する開口部が設けられたシート状の粘着面を有するフレキシブルフィルムをマスクに用い、その開口部と基板の第2電極形成予定部分とを位置合わせし、マスクの粘着面を利用し有機EL層が形成された基板に貼り合せ、第2電極形成材料を上記マスクの開口部を介して有機EL層上に蒸着した後、上記マスクを剥離して形成すると、有機EL素子に対し溶媒等の揮発による悪影響を与えることがなく、また、一度位置合わせを行った後は、都度の位置合わせが不用なため、迅速に低コストで有機EL素子を製造できる。しかも、上記マスクを介して第2電極形成材料を蒸着すると、第2電極は開口部から露呈している部分とマスク上の部分との段差によって非連続となる。したがって、マスク剥離工程において、マスクの開口部から露呈している部分に形成された第2電極はそのままで、マスク上に形成された第2電極をマスクごと一緒に剥離でき、所定パターンを有する第2電極を、簡単に、しかも正確に形成できることを見い出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明の有機EL素子の製法は、所定パターンを有する第2電極の形成を、マスクとして上記所定パターンに対応する開口部が設けられたシート状の粘着面を有するフレキシブルフィルムを用い、その開口部と基板の第2電極形成予定部分とを位置合わせし、マスクの粘着面を利用し有機EL層が形成された基板に貼り合せ、その状態で第2電極形成材料を上記開口部を介して上記有機EL層上に蒸着した後、上記マスクを剥離して形成するようにしている。このため、所定パターンを有する第2電極の形成に際し、大掛かりな装置が不用となり、コストの低減が図られている。また、マスクからの有機溶媒等の揮発による悪影響を受けることがない。そして、基板に金属製の転写基板やマスクが接することによる、基板ダメージが発生しない。さらに、マスクと基板とを位置合わせして貼り合せた後は、都度のアライメントが不要であるため、迅速に所定パターンを有する第2電極を形成できる。そして、上記マスクを用いて第2電極形成材料を蒸着すると、第2電極はマスクの開口部から露呈している部分とマスク上の部分との段差によって非連続となる。このため、マスクの開口部に形成された第2電極はそのままで、マスク上に形成された第2電極をマスクごと一緒に剥離でき、所定パターンを有する第2電極を、簡単に、正確に形成できる。
【0012】
そして、上記有機EL層を形成する工程において、マスクとして粘着面を有し所定パターンに対応する開口部を有するフレキシブルフィルムを用い、上記マスクをシート状の基板に対して貼り合せた状態で、有機EL層形成材料を上記開口部を介して上記第1電極上に蒸着した後、上記マスクを剥離することにより、所定パターンを有する有機EL層を形成するようにした場合には、連続的に効率よく所定パターンを有する有機EL層を形成できるため、有機EL素子の生産性が向上し、より低コストの製造を実現できる。
【0013】
また、ロールトゥロールによりシート状基板を搬送する工程と、上記シート状基板の上側に第1電極を形成する工程と、上記第1電極上にマスクを用いて所定パターンを有する有機EL層を形成する工程と、上記有機EL層上にマスクを用いて上記有機EL層と同一パターンを有する第2電極を形成する工程とを有し、上記有機EL層を形成する工程および第2電極を形成する工程において、上記マスクとして粘着面を有し所定パターンに対応する開口部を有する同一のフレキシブルフィルムを共通に用い、上記マスクをシート状の基板に対して貼り合せた状態で、有機EL層形成材料および第2電極形成材料を上記開口部を介してこの順で上記第1電極上に蒸着した後、上記マスクを剥離することにより、所定パターンを有する有機EL層およびこれと同一パターンを有する第2電極を形成するようにした場合、すなわち、ロールトゥロールプロセスにおいて、上記所定パターンを有する有機EL層およびこれと同一パターンを有する第2電極を形成する場合に、上記所定パターンに対応する開口部が設けられたシート状のフレキシブルフィルムをマスクとして用い、その開口部とシート状の基板の有機EL層および第2電極形成予定部分とを位置合わせした状態で、上記粘着面を利用しシート状の基板に対して貼り合せ、そのマスク貼り合せ面の上から、有機EL層形成材料および第2電極形成材料を上記マスクの開口部を介してこの順で上記第1電極上に蒸着した後、上記マスクを剥離することにより、所定パターンを有する有機EL層とこれと同一パターンを有する第2電極を形成するようにすると、マスクの形成、基板に対する貼り合せおよびその剥離をそれぞれ一度行うだけでよいため、より迅速な製造が可能となる。また、マスクの使用量を低減させることができるため、より低コストの製造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本発明の一実施の形態によって得られる有機EL素子の平面図、(b)はそのA−A断面図である。
【図2】(a)は上記実施の形態の説明図、(b)はそのB−B断面図である。
【図3】(a)は上記実施の形態の説明図、(b)はそのC−C断面図である。
【図4】(a)は上記実施の形態の説明図、(b)はそのD−D断面図である。
【図5】(a)は上記実施の形態の説明図、(b)はそのE−E断面図である。
【図6】(a)は上記実施の形態の説明図、(b)はそのF−F断面図である。
【図7】(a)は上記実施の形態の説明図、(b)はそのG−G断面図である。
【図8】(a)は上記実施の形態の説明図、(b)はそのH−H断面図である。
【図9】(a)は上記実施の形態の説明図、(b)はそのI−I断面図である。
【図10】上記実施の形態の説明図である。
【図11】(a)は本発明の他の実施の形態の説明図、(b)はそのJ−J断面図である。
【図12】(a)は上記他の実施の形態の説明図、(b)はそのK−K断面図である。
【図13】(a)は上記他の実施の形態の説明図、(b)はそのL−L断面図である。
【図14】(a)は上記他の実施の形態の説明図、(b)はそのM−M断面図である。
【図15】(a)は上記他の実施の形態の説明図、(b)はそのN−N断面図である。
【図16】(a)は上記他の実施の形態の説明図、(b)はそのO−O断面図である。
【図17】上記他の実施の形態の説明図である。
【図18】(a)は本発明のさらに他の実施の形態の説明図、(b)はそのP−P断面図である。
【図19】(a)は上記さらに他の実施の形態の説明図、(b)はそのQ−Q断面図である。
【図20】(a)は上記さらに他の実施の形態の説明図、(b)はそのR−R断面図である。
【図21】(a)は上記さらに他の実施の形態の説明図、(b)はそのS−S断面図である。
【図22】(a)は上記さらに他の実施の形態の説明図、(b)はそのT−T断面図である。
【図23】(a)は上記さらに他の実施の形態の説明図、(b)はそのU−U断面図である。
【図24】上記さらに他の実施の形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0016】
本発明の第1の実施の形態によって得られる有機EL素子1を、図1(a)およびそのA−A断面図である図1(b)に示す。上記有機EL素子1は、基板2上に、絶縁層3、第1電極4、有機EL層5、第2電極6がこの順に積層され、トップエミッション構造を有している。なお、図1(a),(b)において、各部分は模式的に示したものであり、実際の大きさ等とは異なっている(以下の図においても同じ)。
【0017】
この実施の形態における製法(以下「本発明の第1の製法」という)は、要約すると、ロールトゥロールにより有機EL素子1を製造するのに際し、所定パターンを有する第2電極の形成を、粘着面および所定の開口パターンを有するシート状のフレキシブルフィルムをマスクとして用い、上記マスクの上から第2電極を形成した後、上記マスクを剥離することを特徴とするものである。以下に本発明の第1の製法について詳細に説明する。
【0018】
まず、ステンレス(SUS)製のシート状(幅300mm×厚み50μm×長さ140m)基板2を、その一端を供給ロールに巻き回し、他方の端を巻き取りロールに巻き回し、ロールトゥロールで有機EL素子1を製造する準備を行う。そして、上記基板2を連続的に送りながら、この基板2の表面の全面に絶縁性を有する樹脂を塗布し、図2(a)およびそのB−B断面図である図2(b)に示すように、絶縁層3(厚み4nm)を形成する。ついで、酸化インジウム亜鉛(IZO)をスパッタリングし、さらにエッチングによりパターニングして、図3(a)およびそのC−C断面図である図3(b)に示すように、第1電極4(厚み90nm)を形成する。
【0019】
つぎに、マスク8として、一方の面に粘着層を有し、有機EL層5形成予定部分(図6参照)と同一形状の開口部9が、打ち抜き加工により連続的に設けられたシート状のフレキシブルフィルム(E−MASK RP300、日東電工社製)を準備し、基板2の有機EL層5形成予定部分と、上記マスク8の開口部9とが一致するように調整し、マスク8が有する粘着層を利用して、図4(a)およびそのD−D断面図である図4(b)に示すように、上記第1電極4が形成された基板2に対しマスク8を貼り合せる。
【0020】
そして、上記マスク8が貼り合わされた基板2に対し、図5(a)およびそのE−E断面図である図5(b)に示すように、マスク8の上から有機EL層形成材料を真空蒸着し、有機EL層5を形成する。その後、上記マスク8を剥離しながら巻き取ることで、図6(a)およびそのF−F断面図である図6(b)に示すように、所定の部分にのみ有機EL層5が形成される。
【0021】
つづいて、マスク10として、一方の面に粘着層を有し、第2電極6形成予定部分と同一形状の開口部11が、打ち抜き加工により連続的に設けられたシート状のフレキシブルフィルム(E−MASK RP300、日東電工社製)を準備し、基板2の第2電極6形成予定部分(図9参照)と、上記マスク10の開口部11とが一致するように調整し、マスク10が有する粘着層を利用して、図7(a)およびそのG−G断面図である図7(b)に示すように、有機EL層5が形成された基板2に対しマスク10を貼り合せる。
【0022】
そして、上記マスク10が貼り合わされた基板2に対し、図8(a)およびそのH−H断面図である図8(b)に示すように、マスク10の上から第2電極形成材料を真空蒸着し、第2電極6を形成する。その後、上記マスク10を剥離しながら巻き取ることで、図9(a)およびそのI−I断面図である図9(b)に示すように、所定の部分にのみ第2電極6が形成される。これを、図10に示すように、所定のサイズに切断することにより、上記有機EL素子1を得ることができる〔図1(a),(b)参照〕。
【0023】
この方法によれば、有機EL素子をロールトゥロールで製造するに際し、有機EL層5および第2電極6のパターニングを、シート状のフレキシブルフィルムからなるマスク8,10を用いて行っているため、別途、パターニングを行うための各種の装置を必要としない。また、各層が積層された基板2に接するのが、フレキシブルフィルムからなるマスク8,10であるため、基板2およびこれに積層された各層は金属製の転写基板やマスクが接する場合に比べて、ダメージを受けにくい。そして、真空蒸着装置内において、マスク8,10から溶剤等の成分が揮発しないため、有機EL素子1が溶剤等による悪影響を受けることがない。さらに、シート状の基板2に対し、シート状のマスク8,10貼り合せて用いるため、都度のアライメントが不要となる。そして、このマスク8,10を用いると、有機EL層5および第2電極6の薄膜がマスク8,10の開口部9,11から露呈している部分とマスク上部分との段差により非連続に形成されるため、マスク8,10を剥離する際に、マスク8,10の開口部9,11から露呈している部分に形成される有機EL層5および第2電極6まで剥離することがなく、精度よく所定パターンを有する有機EL層5および第2電極6を形成することができる。そして、所定パターンを有する有機EL層5および第2電極6を連続的に効率よく形成できるため、有機EL素子の生産性が向上し、より低コストでの製造を実現することができる。また、第2電極が精度よく形成され、その位置ずれ等が発生しないため、各層が形成された後のシート状の基板2を所定の大きさに切断する際に、形成予定部分以外に第2電極6が形成されることに起因する、第2電極6と基板2とが接触することによる短絡が生じない。
【0024】
上記の例において、シート状の基板2として、SUSを用いているが、これに限らず、36アロイ、42アロイ等の合金、銅(Cu)、ニッケル、鉄、アルミニウム(Al)、チタン等の金属フィルムや、芳香族ポリアミドフィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アラミドフィルム、ポリエステルフィルム等からなる単層もしくは多層の樹脂フィルムや、金属フィルムと樹脂フィルムとの積層体等を用いることができる。なかでも、有機EL層5から発せられる熱を効率よく分散でき、強度が高い点で、SUS、Al等の金属フィルムを用いることが好ましい。
【0025】
また、上記の例においては、基板2の表面の全面に絶縁性を有する樹脂を塗布し、絶縁層3(厚み4nm)を形成しているが、基板2の表面粗さ(Ra)が小さいときや、絶縁性基板等の場合には、必ずしも形成する必要はない。しかし、絶縁層3を形成すると、基板2表面の平滑性が担保される点で好ましい。
【0026】
そして、上記の例においては、第1電極4として、IZOを用いているが、そのほかにも、酸化インジウム錫(ITO)、酸化ゲルマニウム亜鉛(GZO)等の各種電極として用いられる材料を用いることができる。また、その厚みは、導電性の点において、10nm〜500nmの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは50nm〜300nmの範囲である。さらに、スパッタリングの代わりに、他の蒸着手段として、真空蒸着を用いることも可能である。しかし、スパッタリングを用いることが、精度、工程の簡便化の点から好ましい。
【0027】
また、上記の例では、基板2上に絶縁層3を設けているが、基板2と絶縁層3との間に、反射層を設けてもよい。この場合、基板2の種類に関係なく、反射層によってより有効に光を反射できるため、トップエミッション型素子の場合において、より多くの光を第2電極6側から取り出すことができる。反射層は、例えば、銀(Ag)、Al、クロム、モリブデン、パラジウムおよびCuを含有するAg系合金(APC)等を、単層または複層に形成することによって得られる。その厚みは、光を充分に反射するだけの厚みがあればよく、10nm〜500nmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは50nm〜300nmの範囲である。なお、絶縁層3を設けない場合には、基板2と第1電極4との間に反射層が設けられる。
【0028】
そして、上記の例では、マスク8,10として、ポリエステル系樹脂をベースとするフレキシブルフィルム(E−MASK RP300、日東電工社製)を用いているが、その他にも、開口部の打ち抜き加工の容易性、軽量性、柔軟性のそれぞれが高い点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂をベースとするものを用いてもよい。また、マスク8,10が有する粘着面の粘着力は、ともに5N/m〜100N/mの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは、10N/m〜60N/mの範囲である。粘着力が低すぎると、プロセス中に剥がれてしまうおそれがあり、逆に、高すぎると、剥離する際に基板1を変形させる可能性があるためである。そして、このマスク8,10の厚みは、ともに10μm〜400μmの範囲にあることが好ましく、特に好ましくは20μm〜300μmの範囲である。厚みが薄すぎると、剥離時にマスク8,10が破れたり、裂けたりするおそれがあり、逆に厚すぎると、供給ロールおよび巻き取りロールが意味なく大型化し、製造コストの上昇を招く傾向がみられるためである。また、マスク8,10のサイズは、基板2と同等かやや小さい程度が好ましい。サイズが小さすぎると、マスクを多数準備し、これをその都度位置合わせの上、継ぎ足して貼り合せる必要が生じ、ロールトゥロールプロセスを連続的に運転するのが困難になる傾向がみられるためである。
【0029】
さらに、上記の例では、マスク8,10を剥離した後に、次の工程を行うため基材2の巻き取りを行っているが、マスク8,10を剥離せずに基材2を巻き取るようにしてもよい。この場合、マスク8,10がスペーサーの役目を果たし、有機EL層5が基板2に接触することなく巻き取れるため、巻きずれ等により傷が入るリスクを減らすことができる。マスク8,10を剥離せずに巻き取った場合には、次の工程で基板2を巻き出し、その工程での処理を行う前にマスク8,10を剥離すればよい。
【0030】
また、上記の例では、有機EL層5および第2電極6の形成の際、蒸着手段として、いずれも真空蒸着を用いているが、他の蒸着手段として、スパッタリングやEB蒸着(電子線蒸着)等を用いてもよい。しかし、効率の点から、真空蒸着が好ましく用いられる。
【0031】
そして、上記の例では、第2電極6として、Alを用いているが、そのほかにも、Ag、マグネシウム、これらの合金等の各種電極として用いられる材料を用いることができる。また、その厚みは、5nm〜200nmの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは8nm〜150nmの範囲である。すなわち、厚みが薄すぎると、電極として作用しない傾向がみられ、逆に、厚すぎると、上記マスク10の開口部11の内周壁面に連続的に形成され、マスク10剥離の際に、必要な部分まで一緒に剥離される傾向がみられるためである。さらに、真空蒸着の代わりに、他の蒸着手段として、スパッタリングを用いることも可能である。しかし、真空蒸着を用いることが、有機EL層5へ与えるダメージが少ない点から好ましい。
【0032】
つぎに、図11〜図17に、本発明の第2の実施の形態である製法(以下「本発明の第2の製法」という)を示す。本発明の第2の製法では、本発明の第1の製法において、有機EL層5のパターニングをせずに、所定パターンを有する第2電極6を形成して、図11(a)およびそのJ−J断面図である図11(b)に示す有機EL素子12を製造している。なお、本発明の第2の製法では、本発明の第1の製法と同一構成部分については同一符号を付してその説明は省略している。
【0033】
すなわち、本発明の第1の製法と同様にして、図12(a)およびそのK−K断面図である図12(b)に示すように、基板2上に絶縁層3と第1電極4とをこの順で形成する。そして、図13(a)およびそのL−L断面図である図13(b)に示すように、有機EL層形成材料を基板2に対し真空蒸着し、基材2のほぼ全面に有機EL層5を形成する。
【0034】
つぎに、マスク10として、一方の面に粘着層を有し、第2電極6形成予定部分(図16参照)と同一形状の開口部11が、打ち抜き加工により連続的に設けられたシート状のフレキシブルフィルム(E−MASK RP300、日東電工社製)を準備し、基板2の第2電極6形成予定部分と、上記マスク10の開口部11とが一致するように調整し、マスク10が有する粘着層を利用して、図14(a)およびそのM−M断面図である図14(b)に示すように、上記有機EL層5までが形成された基板2に対しマスク10を貼り合せる。
【0035】
そして、上記基板2に対し、マスク10の上から第2電極形成材料を真空蒸着し、図15(a)およびそのN−N断面図である図15(b)に示すように、第2電極6を形成する。その後、上記マスク10を剥離しながら巻き取ることで、図16(a)およびそのO−O断面図である図16(b)に示すように、所定の部分にのみ第2電極6が形成される。その後、これを、図17に示すように、所定のサイズに切断することにより、上記有機EL素子12〔図11(a),(b)〕を得ることができる。
【0036】
この本発明の第2の製法によれば、本発明の第1の製法で得られる効果に加えて、有機EL層5をパターニングする必要がないため、より迅速に低コストの有機EL素子12を製造することができる。
【0037】
さらに、図18〜図24に、本発明の第3の実施の形態である製法(以下「本発明の第3の製法」という)を示す。本発明の第3の製法では、本発明の第1の製法において、所定パターンを有する有機EL層5を形成する際に用いるマスクを、有機EL層形成材料を真空蒸着した後に剥離せず、第2電極形成材料を真空蒸着する際に援用し、第2電極形成材料を真空蒸着した後に剥離するようにして、有機EL層5と同一のパターンを有する第2電極6が形成される有機EL素子13〔図18(a)およびそのP−P断面図である図18(b)参照〕を製造している。なお、本発明の第3の製法でも、本発明の第1または第2の製法と同一構成部分については同一符号を付してその説明は省略している。
【0038】
すなわち、本発明の第1の製法と同様にして、図19(a)およびそのQ−Q断面図である図19(b)に示すように、基板2上に絶縁層3と第1電極4とをこの順で形成する。そして、有機EL層5および第2電極6形成予定部分(図23参照)と同一形状の開口部15が、打ち抜き加工により連続的に設けられたシート状のマスク14(フレキシブルフィルムE−MASK RP300、日東電工社製)を準備し、基板2の有機EL層5および第2電極6形成予定分と、上記マスク14の開口部15とが一致するように調整し、マスク14が有する粘着層を利用して、図20(a)およびそのR−R断面図である図20(b)に示すように、第1電極4までが形成された基板2に対しマスク14を貼り合せる。そして、図21(a)およびそのS−S断面図である図21(b)に示すように、上記基板2に対し、マスク14の上から有機EL層形成材料を真空蒸着し、上記マスク14を剥離せずに、このマスク14の上から続けて、図22(a)およびそのT−T断面図である図22(b)に示すように、第2電極形成材料を真空蒸着し、有機EL層5および第2電極6を形成する。その後、上記マスク14を剥離しながら巻き取り、図23(a)およびそのU−U断面図である図23(b)に示すように、上記有機EL層5および第2電極6形成予定部分にのみ有機EL層5および第2電極6が形成された、所定パターンを有する有機EL層5およびこれと同一のパターンを有する第2電極6を形成する。これを、図24に示すように、所定のサイズに切断することにより、上記有機EL素子13〔図18(a),(b)参照〕を得ることができる。
【0039】
この本発明の第3の製法によれば、本発明の第1の製法で得られる効果に加えて、有機EL層5を形成した後にマスクを剥離する必要がないため、より迅速に効率的に有機EL素子13を製造することができる。また、所定パターンを有する有機EL層5および第2電極6を形成するにも関わらず、用いるマスクを共通化しているため、より低コストでの製造を実現できる。
【0040】
つぎに、実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
〔実施例1〕
ロールトゥロールを用いて有機EL素子を製造するに際し、幅が20mm、長さが140m、厚み50μmのフレキシブル性を持たせたSUS製の基板2を用意し、この一端側を供給ロールに巻き回し、他端側を巻き取りロールに巻き回した。そして、上記基板2を連続的に送りながら、この基板2の表面に、絶縁性を有するアクリル系樹脂(JEM−477、JSR社製)を塗布し、絶縁層3(厚み4μm)を形成した。その上に、IZO(厚み20nm)をスパッタリングし、エッチングによりパターニングして第1電極4を形成した。第1電極4まで形成した基板2に対し、マスク8として、有機EL層5形成予定部に対応する開口部9を設けたフレキシブルフィルム(E−MASK RP300、日東電工社製)を位置合わせしながら貼り合せ、このマスク8の上から、10-4Paの真空で銅フタロシアニン(CuPc)25nm/N,N’−ジフェニル−N−N−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(NPB)45nm/8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3)60nm/フッ化リチウム(LiF)0.5nmを、0.1nm/secの速度で蒸着した後、上記マスク8を巻き取りながら剥離し、所定パターンを有する有機EL層5を形成した。つぎに、マスク10として、第2電極6形成予定部に対応する開口部11を設けたフレキシブルフィルム(E−MASK RP300、日東電工社製)を位置合わせしながら、上記有機EL層5までが形成された基板2に貼り合せ、このマスク10の上から、10-4Paの真空でAl(厚み10nm)を蒸着した後、上記マスク10を巻き取りながら剥離し、所定パターンを有する第2電極6を形成した。これを長さ30mmのサイズで切断して、目的とする有機EL素子を得た。
【0042】
〔実施例2〕
有機EL層5をパターニングせずに、基板2に対しほぼ全面に形成した他は、実施例1と同様にして、目的とする有機EL素子を得た。
【0043】
〔実施例3〕
有機EL層5を形成した後、マスク8を剥離せずに続けてそのマスク8の上から10-4Paの真空でAl(厚み10nm)を蒸着した後、マスク8を巻き取りながら剥離して、所定パターンを有する有機EL層5およびこれと同一のパターンを有する第2電極6を形成した他は、実施例1と同様にして、目的とする有機EL素子を得た。
【0044】
〔比較例1〕
所定パターンを有する有機EL層5の形成を、フレキシブルフィルムからなるマスク8に代えてSUS304製のシャドウマスク(厚み50μm)を用い、さらに所定パターンを有する第2電極の形成を、フレキシブルフィルムからなるマスク10に代えて、SUS304製のシャドウマスク(厚み50μm)を用いて行った他は、実施例1と同様にして、目的とする有機EL素子を得た。
【0045】
得られたこれらの実施例1〜3、比較例1の有機EL素子について、第1電極と第2電極との間に10mA/cm2の電流を印加し、その素子特性(発光効率)を有機EL発光効率測定装置(EL−3000、プレサイスゲージ社製)にて測定した。その結果、実施例1〜3品は、1cd/Aの発光効率が得られた。比較例1品は、短絡を起こし、発光しなかった。
【0046】
上記の結果より、実施例1〜3品はいずれも、ロールトゥロールプロセスで連続的に製造することができ、しかも優れた素子特性を有していることがわかる。一方、比較例1品は、ロールトゥロールプロセスで製造できるものの、実施例品と同様の連続製造を行うと、短絡を起こし発光しなかった。これは、金属製のシャドウマスクとの接触によって、各層に微細な傷が発生したことに起因するためであると思われる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の有機EL素子の製法は、照明機器、液晶ディスプレイのバックライト、展示デコレーション用の発光部品やデジタルサイネージ等に用いられる有機EL素子を迅速に効率よく製造する方法として適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールトゥロールによりシート状基板を搬送する工程と、上記シート状基板の上側に第1電極を形成する工程と、上記第1電極上に有機エレクトロルミネッセンス層を形成する工程と、上記有機エレクトロルミネッセンス層上にマスクを用いて所定パターンを有する第2電極を形成する工程とを有し、上記第2電極を形成する工程において、上記マスクは粘着面を有し上記所定パターンに対応する開口部を有するフレキシブルフィルムであり、上記マスクを上記有機エレクトロルミネッセンス層が形成されたシート状基板に貼り合せた状態で、第2電極形成材料を上記開口部を介して上記有機エレクトロルミネッセンス層上に蒸着した後、上記マスクを剥離することにより、所定パターンを有する第2電極を形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製法。
【請求項2】
上記有機エレクトロルミネッセンス層を形成する工程において、マスクとして粘着面を有し所定パターンに対応する開口部を有するフレキシブルフィルムを用い、上記マスクをシート状の基板に対して貼り合せた状態で、有機エレクトロルミネッセンス層形成材料を上記開口部を介して上記第1電極上に蒸着した後、上記マスクを剥離することにより、所定パターンを有する有機エレクトロルミネッセンス層を形成するようにした請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製法。
【請求項3】
ロールトゥロールによりシート状基板を搬送する工程と、上記シート状基板の上側に第1電極を形成する工程と、上記第1電極上にマスクを用いて所定パターンを有する有機エレクトロルミネッセンス層を形成する工程と、上記有機エレクトロルミネッセンス層上にマスクを用いて上記有機エレクトロルミネッセンス層と同一パターンを有する第2電極を形成する工程とを有し、上記有機エレクトロルミネッセンス層を形成する工程および第2電極を形成する工程において、上記マスクとして粘着面を有し所定パターンに対応する開口部を有する同一のフレキシブルフィルムを共通に用い、上記マスクをシート状の基板に対して貼り合せた状態で、有機エレクトロルミネッセンス層形成材料および第2電極形成材料を上記開口部を介してこの順で上記第1電極上に蒸着した後、上記マスクを剥離することにより、所定パターンを有する有機エレクトロルミネッセンス層およびこれと同一パターンを有する第2電極を形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製法。
【請求項1】
ロールトゥロールによりシート状基板を搬送する工程と、上記シート状基板の上側に第1電極を形成する工程と、上記第1電極上に有機エレクトロルミネッセンス層を形成する工程と、上記有機エレクトロルミネッセンス層上にマスクを用いて所定パターンを有する第2電極を形成する工程とを有し、上記第2電極を形成する工程において、上記マスクは粘着面を有し上記所定パターンに対応する開口部を有するフレキシブルフィルムであり、上記マスクを上記有機エレクトロルミネッセンス層が形成されたシート状基板に貼り合せた状態で、第2電極形成材料を上記開口部を介して上記有機エレクトロルミネッセンス層上に蒸着した後、上記マスクを剥離することにより、所定パターンを有する第2電極を形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製法。
【請求項2】
上記有機エレクトロルミネッセンス層を形成する工程において、マスクとして粘着面を有し所定パターンに対応する開口部を有するフレキシブルフィルムを用い、上記マスクをシート状の基板に対して貼り合せた状態で、有機エレクトロルミネッセンス層形成材料を上記開口部を介して上記第1電極上に蒸着した後、上記マスクを剥離することにより、所定パターンを有する有機エレクトロルミネッセンス層を形成するようにした請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製法。
【請求項3】
ロールトゥロールによりシート状基板を搬送する工程と、上記シート状基板の上側に第1電極を形成する工程と、上記第1電極上にマスクを用いて所定パターンを有する有機エレクトロルミネッセンス層を形成する工程と、上記有機エレクトロルミネッセンス層上にマスクを用いて上記有機エレクトロルミネッセンス層と同一パターンを有する第2電極を形成する工程とを有し、上記有機エレクトロルミネッセンス層を形成する工程および第2電極を形成する工程において、上記マスクとして粘着面を有し所定パターンに対応する開口部を有する同一のフレキシブルフィルムを共通に用い、上記マスクをシート状の基板に対して貼り合せた状態で、有機エレクトロルミネッセンス層形成材料および第2電極形成材料を上記開口部を介してこの順で上記第1電極上に蒸着した後、上記マスクを剥離することにより、所定パターンを有する有機エレクトロルミネッセンス層およびこれと同一パターンを有する第2電極を形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−164581(P2012−164581A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25370(P2011−25370)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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