説明

有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法

【課題】製造が簡便で且つ、駆動電圧が低い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供すること。
【解決手段】陽極と、陰極との間に発光層を有し、該陽上にカップリング膜を形成し、次いで、表面処理することにより形成された有機層が、式


[式中、A環及びB環は、互いに同一又は相異なり、環上に結合手を有する芳香環を表し、Y1は−O−、−S−、又は−C(=O)−を表し、Rは1価の有機基を表す。]で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む層である、有機エレクトロルミネッセンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代のディスプレイとして有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイが注目されている。有機ELディスプレイに用いられる有機EL素子は、陽極と、陰極と、該陽極および該陰極の間に配置される発光層とを含んで構成され、陽極および陰極からそれぞれ注入される正孔および電子が発光層において再結合することによって発光する。
【0003】
しかしながら、有機EL素子の商業利用を実現するためには、より低い電圧で素子を駆動させて、消費電力を低減する必要があり、キャリアの移動度を高める技術が模索されている。
【0004】
有機EL素子においては、光を透過し、正孔を注入する透明導電性電極として、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性材料が用いられ、この電極と発光層との間に、発光層に正孔が移動するのを補助する層を設けることにより、キャリアである正孔の移動度が高められる。
【0005】
低駆動電圧で発光する有機エレクトロルミネッセンス素子として、特許文献1には、該透明導電性電極上に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物(以下、「PEDOT:PSS」という場合がある)を含有してなる層を積層した有機エレクトロルミネッセンス素子が提案されている。しかし、PEDOT:PSSは強酸性であるため、操作性が悪く、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造が簡便でないという問題がある。
【0006】
また、特許文献2には、フルオレンに基づく光電子ポリマーの主鎖に三環アリールアミンを含む骨格のポリマーが導電性に優れることが開示され、低電圧で高いデバイス効率を提供する可能性が示唆されている。しかし、このポリマーは有機EL素子の発光層として使用されているが、発光層に正孔を注入又は輸送する効率を高める機能については説明されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2000−514590号公報
【特許文献2】特表2006−511659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、製造が簡便で且つ、通常のデバイスで使用される輝度(例えば100cd/m)で発光する駆動電圧が低い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に発光材料を含有する発光層を有し、該陽極と該発光層との間に有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
該陽極は、電極を、式
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、Mは、周期表の4族、5族、6族、13族、14族又は15族に属する原子を表す。Xは、ヘテロ原子を有する1価の有機基を表す。Raは、アルキル基、アリール基、アルキニル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基又はアリールアルキニル基を表す。v1は、1以上u以下の整数である。uは、Mの原子価を表す。Xが複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。Raが複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。]
で表される化合物と溶媒とを含む溶液に浸漬させるか、電極上に式(1)で表される化合物と溶媒とを含む溶液を印刷又は塗布して、乾燥させることにより、電極上にカップリング膜を形成し、次いで、該カップリング膜を表面処理することにより形成されたものであり、
該有機層は、式
【0012】
【化2】

【0013】
[式中、A環及びB環は、同一又は相異なり、環上に結合手を有する芳香環を表し、Y1は−O−、−S−、又は−C(=O)−を表し、Rは1価の有機基を表す。]
で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む層である、
有機エレクトロルミネッセンス素子を提供するものである。
【0014】
ある一形態においては、上記表面処理はUVオゾン処理である。
【0015】
ある一形態においては、UVオゾン処理におけるUVの照射量は1J/cm2以上である。
【0016】
ある一形態においては、上記Mは、ケイ素原子又はチタン原子である。
【0017】
ある一形態においては、上記Y1は、−O−である。
【0018】
ある一形態においては、陽極の最高被占有軌道(HOMO)のエネルギー準位と式(2)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物のHOMOのエネルギー準位との差が0.5eV以下である。
【0019】
また、本発明は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた面状光源を提供する。
【0020】
更に、本発明は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、その製造に強酸性の材料を用いないため、製造が簡便であり、さらに、100cd/mの輝度で発光する駆動電圧が低い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態である有機EL素子の構造を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<用語の説明>
以下、本明細書において共通して用いられる用語を説明する。本明細書において、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、又はアルキニル基についての「Cm〜Cn」(m、nはm<nを満たす正の整数である)という用語は、この用語とともに記載されたアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、又はアルキニル基の炭素数がm〜nであることを表す。
【0024】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が例示される。
【0025】
アルキル基は、非置換のアルキル基及びハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基等で置換されたアルキル基を意味し、直鎖状アルキル基及び環状アルキル基(シクロアルキル基)の両方を含む。アルキル基は分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素数は、通常1〜20程度、好ましくは1〜15程度、より好ましくは1〜10程度である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、トリフルオロプロピル基、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル基、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル基、アミノプロピル基、アミノオクチル基、アミノデシル基、メルカプトプロピル基、メルカプトオクチル基、メルカプトデシル基等が例示される。
【0026】
アルコキシ基は、非置換のアルコキシ基及びハロゲン原子等で置換されたアルコキシ基を意味し、直鎖状アルコキシ基及び環状アルコキシ基(シクロアルコキシ基)の両方を含む。アルコキシ基は分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素数は、通常1〜20程度、好ましくは1〜15程度、より好ましくは1〜10程度である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基等が例示される。
【0027】
アルキルチオ基は、非置換のアルキルチオ基及びハロゲン原子等で置換されたアルキルチオ基を意味し、直鎖状アルキルチオ基及び環状アルキルチオ基(シクロアルキルチオ基)の両方を含む。アルキルチオ基は分岐を有していてもよい。アルキルチオ基の炭素数は、通常1〜20程度、好ましくは1〜15程度、より好ましくは1〜10程度である。具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基、トリフルオロメチルチオ基等が例示される。
【0028】
アリール基は、芳香族炭化水素から芳香環を構成する炭素原子に結合した水素原子1個を除いた残りの原子団であり、非置換のアリール基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリール基を意味する。アリール基には、ベンゼン環をもつもの、縮合環をもつもの、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が単結合又は2価の基、例えば、ビニレン基等のアルケニレン基を介して結合したものも含まれる。アリール基の炭素数は、通常6〜60程度、好ましくは7〜48程度、より好ましくは7〜30程度である。アリール基としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、ペンタフルオロフェニル基等が例示され、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基が好ましい。
【0029】
1〜C12アルコキシフェニル基として具体的には、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基、イソプロピルオキシフェニル基、ブトキシフェニル基、イソブトキシフェニル基、sec−ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基、ペンチルオキシフェニル基、ヘキシルオキシフェニル基、シクロヘキシルオキシフェニル基、ヘプチルオキシフェニル基、オクチルオキシフェニル基、2−エチルヘキシルオキシフェニル基、ノニルオキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェニル基、ラウリルオキシフェニル基等が例示される。
【0030】
1〜C12アルキルフェニル基として具体的には、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、プロピルフェニル基、メシチル基、メチルエチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、イソアミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ドデシルフェニル基等が例示される。
【0031】
アリールオキシ基は、非置換のアリールオキシ基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールオキシ基を意味する。アリールオキシ基の炭素数は、通常6〜60程度、好ましくは7〜48程度、より好ましくは7〜30程度である。その具体例としては、フェノキシ基、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基等が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基が好ましい。
【0032】
1〜C12アルコキシフェノキシ基として具体的には、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、プロピルオキシフェノキシ基、イソプロピルオキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、イソブトキシフェノキシ基、sec−ブトキシフェノキシ基、tert−ブトキシフェノキシ基、ペンチルオキシフェノキシ基、ヘキシルオキシフェノキシ基、シクロヘキシルオキシフェノキシ基、ヘプチルオキシフェノキシ基、オクチルオキシフェノキシ基、2−エチルヘキシルオキシフェノキシ基、ノニルオキシフェノキシ基、デシルオキシフェノキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェノキシ基、ラウリルオキシフェノキシ基等が例示される。
【0033】
1〜C12アルキルフェノキシ基として具体的には、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、1,3,5−トリメチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、イソブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、ペンチルフェノキシ基、イソアミルフェノキシ基、ヘキシルフェノキシ基、ヘプチルフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、ノニルフェノキシ基、デシルフェノキシ基、ドデシルフェノキシ基等が例示される。
【0034】
アリールチオ基は、非置換のアリールチオ基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールチオ基を意味する。アリールチオ基の炭素数は、通常6〜60程度、好ましくは7〜48程度、より好ましくは7〜30程度である。具体的には、フェニルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニルチオ基、C1〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基等が例示される。
【0035】
アリールアルキル基は、非置換のアリールアルキル基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルキル基を意味する。アリールアルキル基の炭素数は、通常7〜60程度、好ましくは7〜48程度、より好ましくは7〜30程度である。具体的には、フェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキル基等が例示される。
【0036】
アリールアルコキシ基は、非置換のアリールアルコキシ基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルコキシ基を意味する。アリールアルコキシ基の炭素数は、通常7〜60程度、好ましくは7〜48程度、より好ましくは7〜30程度である。具体的には、フェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基等が例示される。
【0037】
アリールアルキルチオ基は、非置換のアリールアルキルチオ基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルキルチオ基を意味する。アリールアルキルチオ基の炭素数は、通常7〜60程度、好ましくは7〜48程度、より好ましくは7〜30程度である。具体的には、フェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基等が例示される。
【0038】
アリールアルケニル基は、非置換のアリールアルケニル基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルケニル基を意味する。アリールアルケニル基の炭素数は、通常8〜60程度、好ましくは8〜48程度、より好ましくは8〜30程度である。その具体例としては、フェニル−C2〜C12アルケニル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルケニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルケニル基、1−ナフチル−C2〜C12アルケニル基、2−ナフチル−C2〜C12アルケニル基等が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルケニル基、C2〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルケニル基が好ましい。
【0039】
2〜C12アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基等が挙げられる。
【0040】
アリールアルキニル基は、非置換のアリールアルキニル基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルキニル基を意味する。アリールアルキニル基の炭素数は、通常8〜60程度、好ましくは8〜48程度、より好ましくは8〜30程度である。その具体例としては、フェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルキニル基、1−ナフチル−C2〜C12アルキニル基、2−ナフチル−C2〜C12アルキニル基等が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルキニル基が好ましい。
【0041】
2〜C12アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、1−オクチニル基等が挙げられる。
【0042】
1価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団をいい、非置換の1価の複素環基及びアルキル基等の置換基で置換された1価の複素環基を意味する。1価の複素環基の炭素数は、置換基の炭素数を含めないで、通常3〜60程度、好ましくは3〜30程度、より好ましくは3〜20程度である。ここに複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素として、炭素原子だけでなく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子、ヒ素原子等のヘテロ原子を含むものをいう。1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピロリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基等が挙げられ、中でもチエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基が好ましい。
【0043】
複素環チオ基は、メルカプト基の水素原子が1価の複素環基で置換された基を意味する。複素環チオ基としては、例えば、ピリジルチオ基、ピリダジニルチオ基、ピリミジルチオ基、ピラジニルチオ基、トリアジニルチオ基等のヘテロアリールチオ基等が挙げられる。
【0044】
アミノ基は、非置換のアミノ基並びにアルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基から選ばれる1又は2個の置換基で置換されたアミノ基(以下、置換アミノ基という。)を意味する。置換基は更に置換基(以下、二次置換基という場合がある。)を有していてもよい。置換アミノ基の炭素数は、二次置換基の炭素数を含めないで、通常1〜60程度、好ましくは2〜48程度、より好ましくは2〜40程度である。置換アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ドデシルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、C1〜C12アルキルフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジニルアミノ基、トリアジニルアミノ基、フェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基等が挙げられる。
【0045】
シリル基は、非置換のシリル基並びにアルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基から選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されたシリル基(以下、置換シリル基という。)を意味する。置換基は二次置換基を有していてもよい。置換シリル基の炭素数は、二次置換基の炭素数を含めないで、通常1〜60程度、好ましくは3〜48程度、より好ましくは3〜40程度である。置換シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、ジメチル−イソプロピルシリル基、ジエチル−イソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ドデシルジメチルシリル基、フェニル−C1〜C12アルキルシリル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルシリル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルシリル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルシリル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルシリル基、フェニル−C1〜C12アルキルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基等が挙げられる。
【0046】
アシル基は、非置換のアシル基及びハロゲン原子等で置換されたアシル基を意味する。アシル基の炭素数は、通常1〜20程度、好ましくは2〜18程度、より好ましくは2〜16程度である。アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロベンゾイル基等が挙げられる。
【0047】
アシルオキシ基は、非置換のアシルオキシ基及びハロゲン原子等で置換されたアシルオキシ基を意味する。アシルオキシ基の炭素数は、通常1〜20、好ましくは2〜18、より好ましくは2〜16程度である。アシルオキシ基としては、例えば、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0048】
イミン残基は、式:H−N=C<及び式:−N=CH−の少なくとも一方で表される構造を有するイミン化合物から、この構造中の水素原子1個を除いた残基を意味する。このようなイミン化合物としては、例えば、アルジミン、ケチミン及びアルジミン中の窒素原子に結合した水素原子がアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基等で置換された化合物が挙げられる。イミン残基の炭素数は、通常2〜20程度、好ましくは2〜18程度、より好ましくは2〜16程度である。イミン残基としては、例えば、一般式:−CR'=N−R''又は一般式:−N=C(R'')2(式中、R'は水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基を表し、R''はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基を表し、ただし、R''が2個存在する場合、2個のR''は相互に結合し一体となって2価の基、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数2〜18のアルキレン基として環を形成してもよい。)で表される基等が挙げられる。イミン残基の具体例としては、以下の構造式で示される基等が挙げられる。
【0049】
【化3】

【0050】
式中、Meはメチル基を示す。
【0051】
アミド基は、非置換のアミド基及びハロゲン原子等で置換されたアミド基を意味する。アミド基の炭素数は、通常2〜20程度、好ましくは2〜18程度、より好ましくは2〜16程度である。アミド基としては、例えば、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、ジペンタフルオロベンズアミド基等が挙げられる。
【0052】
酸イミド基は、酸イミドからその窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる残基を意味する。酸イミド基の炭素数は、通常4〜20程度、好ましくは4〜18程度、より好ましくは4〜16程度である。酸イミド基としては、例えば、以下に示す基等が挙げられる。
【0053】
【化4】

【0054】
式中、Meはメチル基を示す。
【0055】
カルボキシル基は、非置換のカルボキシル基並びにアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、1価の複素環基等の置換基で置換されたカルボキシル基(以下、置換カルボキシル基という。)を意味する。置換基は二次置換基を有していてもよい。置換カルボキシル基の炭素数は、二次置換基の炭素数を含めないで、通常1〜60程度、好ましくは2〜48程度、より好ましくは2〜45程度である。置換カルボキシル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0056】
アリーレン基は、芳香族炭化水素の芳香環から水素原子2個を除いてなる原子団を意味し、独立したベンゼン環又は縮合環を持つものを含む。前記アリーレン基は、炭素原子数が通常6〜60程度、好ましくは6〜48程度であり、より好ましくは6〜30程度であり、更に好ましくは6〜18である。該炭素原子数は置換基の炭素原子数は含まない。アリーレン基の具体例としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基等の非置換又は置換のフェニレン基;1,4−ナフタレンジイル基、1,5−ナフタレンジイル基、2,6−ナフタレンジイル基等の非置換又は置換のナフタレンジイル基;1,4−アントラセンジイル基、1,5−アントラセンジイル基、2,6−アントラセンジイル基、9,10−アントラセンジイル基等の非置換又は置換のアントラセンジイル基;2,7−フェナントレンジイル基等の非置換又は置換のフェナントレンジイル基;1,7−ナフタセンジイル基、2,8−ナフタセンジイル基、5,12−ナフタセンジイル基等の非置換又は置換のナフタセンジイル基;2,7−フルオレンジイル基、3,6−フルオレンジイル基等の非置換又は置換のフルオレンジイル基;1,6−ピレンジイル基、1,8−ピレンジイル基、2,7−ピレンジイル基、4,9−ピレンジイル基等の非置換又は置換のピレンジイル基;3,9−ペリレンジイル基、3,10−ペリレンジイル基等の非置換又は置換のペリレンジイル基等が挙げられ、好ましくは、非置換又は置換のフェニレン基、非置換又は置換のフルオレンジイル基である。
【0057】
2価の複素環基は、炭素原子数が通常4〜60程度、好ましくは4〜30程度であり、特に好ましくは6〜12程度である。該炭素原子数は置換基の炭素原子数は含まない。2価の複素環基としては、2価の芳香族複素環基が好ましい。前記2価の複素環の具体例としては、2,5−ピリジンジイル基、2,6−ピリジンジイル基等の非置換又は置換のピリジンジイル基;2,5−チオフェンジイル基等の非置換又は置換のチオフェンジイル基;2,5−フランジイル基等の非置換又は置換のフランジイル基;2,6−キノリンジイル基等の非置換又は置換のキノリンジイル基;1,4−イソキノリンジイル基、1,5−イソキノリンジイル基等の非置換又は置換のイソキノリンジイル基;5,8−キノキサリンジイル基等の非置換又は置換のキノキサリンジイル基;4,7−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基等の非置換又は置換のベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基;4,7−ベンゾチアゾールジイル基等の非置換又は置換のベンゾチアゾールジイル基;2,7−カルバゾールジイル基、3,6−カルバゾールジイル基等の非置換又は置換のカルバゾールジイル基;3,7−フェノキサジンジイル基等の非置換又は置換のフェノキサジンジイル基;3,7−フェノチアジンジイル基等の非置換又は置換のフェノチアジンジイル基;2,7−ジベンゾシロールジイル基等の非置換又は置換のジベンゾシロールジイル基等が挙げられ、好ましくは、非置換又は置換のベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基、非置換又は置換のフェノキサジンジイル基、非置換又は置換のフェノチアジンジイル基である。
【0058】
<有機EL素子>
本発明の有機EL素子の積層構造としては、例えば、以下のものが挙げられる。さらに、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子注入層、正孔注入層等が積層されてもよい。
【0059】
陽極/(式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む有機層)/正孔輸送層/発光層/陰極
陽極/(式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む有機層)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
陽極/(式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む有機層)/発光層/電子輸送層/陰極
(ここで、/は、この記号の両側に記載された層同士又は層と電極を積層したことを表す。さらに、各層は一層でも二層以上でもよい。)
【0060】
前記正孔輸送層には、通常、正孔輸送材料が含まれ、前記電子輸送層には、通常、電子輸送材料が含まれる。これらの正孔輸送材料、電子輸送材料は、高分子化合物でも低分子化合物でもよいが、高分子化合物が好ましい。正孔輸送材料、電子輸送材料としては、以降に説明する発光材料の項で挙げた文献に記載のポリフルオレン及びその誘導体並びにフルオレンジイル基を含む共重合体、ポリアリーレン及びその誘導体並びにアリーレン基を含む共重合体、ポリアリーレンビニレン及びその誘導体並びにアリーレンビニレン基を含む共重合体、芳香族アミン及びその誘導体並びにその(共)重合体等が挙げられる。
【0061】
高分子化合物の正孔輸送材料としては、さらに、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体等も挙げられる。また、低分子化合物の正孔輸送材料としては、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等が挙げられる。
【0062】
前記電子輸送層に使用される電子輸送材料としては、公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が例示される。具体的には、特開昭63-70257号公報、同63-175860号公報、特開平2-135359号公報、同2-135361号公報、同2-209988号公報、同3-37992号公報、同3-152184号公報に記載されているもの等が例示される。
【0063】
これらのうち、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
【0064】
前記電荷輸送層全体に含まれる各層の厚みとしては、発光効率や駆動電圧が所望の値になるように、適宜選択されるが、正孔輸送層の厚さは、通常、1〜300nmであり、好ましくは5〜100nmである。有機層の厚さは、通常、5〜300nmであり、好ましくは30〜200nmであり、さらに好ましくは40〜150nmである。電子輸送層の厚さは、通常、1〜100nmであり、好ましくは1〜40nmである。
【0065】
本発明の有機EL素子においては、陽極及び陰極の少なくともいずれか一方が透明又は半透明であれば、発生した光が透過するため、発光の取出し効率がよく好都合である。
【0066】
本発明の有機EL素子においては、陰極に接して絶縁層(通常、厚さ10nm以下)を設けてもよい。絶縁層の材料としては、金属フッ化物や金属酸化物、又は有機絶縁材料等が挙げられ、アルカリ金属或いはアルカリ土類金属等の金属フッ化物や金属酸化物が好ましい。絶縁層に用いる無機化合物の成膜方法には真空蒸着法が例示される。
【0067】
更に、陰極の上に、該有機EL素子を保護する保護層を装着していてもよい。該有機EL素子を長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層及び/又は保護カバーを該素子に装着することが好ましい。
【0068】
該保護層の材料としては、高分子化合物、金属酸化物、金属窒化物、金属窒酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物等を用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板等を用いることができ、保護カバーの装着方法としては、該カバーを熱硬化樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子が破損するのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム、酸化カルシウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子の性能を低下させるのを制することが容易となる。これらのうち、いずれか1つ以上の方策をとることが好ましい。
【0069】
図1は本発明の一実施形態である有機EL素子の構造を示す模式断面図である。この有機EL素子は、基板1の上に形成された陽極2と、陰極3と、陽極および陰極の間に発光材料を含有する発光層4、及び陽極と該発光層との間に有機層5を有している。陽極2は電極6とその表面上に積層されたカップリング膜7とから形成されている。
【0070】
(基板1)
本発明の有機EL素子を形成する基板1は、電極や該素子の各層を形成する際に変化しないものであればよく、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等の基板等が例示される。不透明な基板の場合には、該基板により近い電極と反対側の電極が透明又は半透明であることが好ましい。ここで、「透明」とは、波長750〜400nmの光が該電極を通過したときの入射光強度に対する透過光強度の比(透過率)が90〜100%であることをいう。また、「半透明」とは、前記透過率が40%以上90%未満であることをいう。
【0071】
(電極6)
陽極2の形成時に用いられる電極6としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性材料(NESA等)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズ等の導電性の無機酸化物が好ましい。また、該陽極として、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0072】
電極6の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0073】
電極6の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。
【0074】
(カップリング膜7)
カップリング膜7は電極6の表面に存在する原子又は基と相互作用する基及び有機層5のようなその上に設けられる層の材料と親和性を示す基の両方を有する化合物を含む膜である。かかるカップリング膜が存在することで電極表面とその上に形成される有機層との界面における密着性が改善されて、電荷が電極から有機層に移動しやすくなる。
【0075】
カップリング膜7に含まれる上記化合物としては、金属原子又は半金属原子と、有機基とを有するカップリング剤、例えば、シラン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、スズ化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、ビスマス化合物、ホウ素化合物、カドミウム化合物、カルシウム化合物、セリウム化合物、クロム化合物、コバルト化合物、銅化合物、ユーロピウム化合物、ガリウム化合物、インジウム化合物、イリジウム化合物、鉄化合物、鉛化合物、リチウム化合物、マグネシウム化合物、マンガン化合物、モリブデン化合物、ニッケル化合物、パラジウム化合物、銀化合物等が挙げられる。
【0076】
好ましいかかる化合物の一例は、上記式(1)で表される構造を有する化合物である。式(1)中、Xは、ヘテロ原子を有する1価の有機基であり、電極の表面に存在する原子若しくは基と相互作用するか、又はXと他の化合物とが反応して生成した基が電極の表面に存在する原子若しくは基と相互作用する。Xに含まれるヘテロ原子は、1価のハロゲン原子又はMと結合しているヘテロ原子であることが好ましい。前記電極が金属、金属の酸化物又は金属の硫化物である場合には、Xとしては、水酸基、カルボキシル基、アシル基、アシルオキシ基、ハロカルボニル基(式:−C(O)−Y(式中、Yはハロゲン原子を表す。)で表される基を意味し、式:−C(O)−Clで表される基及び式:−C(O)−Brで表される基が好ましい。)、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアルコキシ基、リン酸基(式:(HO)2P(O)−O−で表される基)、リン酸エステル基(式:(R1O)2P(O)−O−又は式:(R1O)(HO)P(O)−O−(式中、R1は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、又はアリールアルキニル基を表す。)で表される基)、亜リン酸基(式:(HO)2P−O−で表される基)、亜リン酸エステル基(式:(R1O)2P−O−又は式:(R1O)(HO)P−O−(式中、R1は前記のとおりである。)で表される基)、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキルチオ基、複素環チオ基、アミノ基等が例示される。これらの中で、Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基、リン酸基、アミノ基又は水酸基であることが好ましい。
【0077】
Xが電極の表面に存在する原子又は基と相互作用することにより、式(1)で表される化合物と電極との間に、共有結合、配位結合、イオン結合、水素結合等の結合が形成されると推定される。
【0078】
なお、式(1)で表される化合物は、該化合物が有するXが、電極の表面に存在する基又は原子と直接相互作用してもよいが、他の化合物と反応し、反応により生成した基が電極の表面に存在する基又は原子と相互作用してもよい。上記反応としては、水との加水分解反応等が挙げられる。
【0079】
式(1)で表される化合物が加水分解するとは、有機基X又はXの一部が、水との反応により、水酸基になる現象をいう。生成した水酸基が電極の表面に存在する原子又は基と相互作用することにより、水酸基と電極との間に、共有結合、配位結合、イオン結合、水素結合等の結合が形成されると推定される。本発明の陽極の形成工程において、加水分解して水酸基を生成することで電極と結合しやすくなるため、式(1)で表される化合物を加水分解させることが好ましい。加水分解を受けやすい有機基Xの例としては、アルコキシ基、アセトキシ基、塩素原子、リン酸基等が挙げられる。また、有機基X中にアルコキシ基、アセトキシ基、塩素原子、リン酸基等を含んでいてもよい。
【0080】
式(1)中、Mは、4族、5族、6族、13族、14族、若しくは15族に属する原子を表す。Mとしては、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子等の4族に属する原子;バナジウム原子、ニオブ原子、タンタル原子等の5族に属する原子;クロム原子、モリブデン原子、タングステン原子等の6族に属する原子;ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、タリウム原子等の13族に属する原子;ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、鉛原子等の14族に属する原子;リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子、ビスマス原子等の15族に属する原子等が挙げられるが、Mは、スズ原子、チタン原子、ジルコニウム原子、アルミニウム原子、ニオブ原子、ホウ素原子、ケイ素原子又はリン原子であることが好ましく、ジルコニウム原子、アルミニウム原子、チタン原子、ケイ素原子又はリン原子であることがより好ましく、チタン原子又はケイ素原子であることがさらに好ましく、ケイ素原子であることが特に好ましい。
【0081】
式(1)中、Raは、有機層5のようなその上に設けられる層の材料と親和性を示す基である。Raは、アルキル基、アリール基、アルキニル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基又はアリールアルキニル基を表すが、好ましくはアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基である。Raで表される基は、置換基を有していてもよい。
【0082】
式(1)中、uは、Mの原子価を表す。Mが、例えば、ケイ素原子、チタン原子、ジルコニウム原子等である場合、uは4であり、Mが、ホウ素原子、アルミニウム原子等である場合、uは3である。
【0083】
式(1)中、v1は1以上u以下の整数であるが、好ましくは2以上の整数であり、より好ましくは3以上の整数である。
【0084】
式(1)で表される化合物としては、例えば、式(1−a)で表される化合物が表される。
【0085】
【化5】

【0086】
式中、X’は、アルコキシ基、アセトキシ基,クロル原子又はリン酸基である。Ra'は、アルキル基、アリール基、アルキニル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基を表す。該アルキル基は、置換基としてアミノ基を有してもよい。該アリール基は、置換基としてアミノ基を有してもよい。複数個あるX’は同一であっても異なっていてもよい。
【0087】
前記式(1)で表される化合物としては、アセトキシプロピルトリクロロシラン、アセトキシプロピルトリメトキシシラン、アダマンチルエチルトリクロロシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、ベンジルトリクロロシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、3−ブロモプロピルトリクロロシラン、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、3−ブテニルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリクロロシラン、2-クロロエチルトリエトキシシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリメトキシシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、クロロフェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、(ジクロロメチル)ジメチルクロロシラン、(ジクロロメチル)メチルジクロロシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリクロロシラン、n−オクタデシルトリクロロシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、ペンタフルオロプロピルトリクロロシラン、ペンタフルオロプロピルトリメトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェノキシトリクロロシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラエトキシシラン、3−チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)メチルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;プロピルトリメトキシチタン、オクチルトリメトキシチタン、アミノプロピルトリメトキシチタン、アミノデシルトリメトキシチタン、メルカプトプロピルトリメトキシチタン、メルカプトオクチルトリメトキシチタン、アミノプロピルトリエトキシチタン、メルカプトプロピルトリエトキシチタン、メルカプトデシルトリエトキシチタン、プロピルトリクロロチタン、オクチルトリクロロチタン、デシルトリクロロチタン、アミノプロピルトリクロロチタン、メルカプトプロピルトリクロロチタン、メルカプトオクチルトリクロロチタン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリエトキシチタン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリクロロチタン、チタンエトキサイド、チタンイソブトキサイド、チタンイソプロポキサイド、チタンメトキサイド等のチタンカップリング剤;ブチルクロロジヒドロキシスズ、ブチルトリクロロスズ、ジアリルジブチルスズ、ジブチルジアセトキシスズ、ジブチルジクロロスズ、ジブチルジブロモスズ、ジブチルジメトキシスズ、ジメチルジクロロスズ、ジオクチルジクロロスズ、ジフェニルジクロロスズ、メチルトリクロロスズ、フェニルトリクロロスズ、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムイソプロポキサイド、アルミニウムブトキサイド、テトラブトキシゲルマン、テトラエトキシゲルマン、テトラメトキシゲルマン、ハフニウムブトキサイド、ハフニウムエトキサイド、インジウムメトキシエトキサイド、ニオブブトキサイド、ニオブエトキサイド、ジルコニウムブトキサイド、ジルコニウムエトキサイド、ジルコニウムプロポキサイド等が挙げられる。
【0088】
なお、式(1)で表される化合物は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0089】
本発明に用いられる陽極2を形成する方法としては、式(1)で表される化合物を溶媒に溶解又は分散させ、得られた溶液に電極6を浸漬して該電極の表面に存在する原子又は基と該化合物中のXで表される基と相互作用させ、カップリング膜7を形成する方法や、該化合物を溶媒に溶解または分散させ、得られた溶液を適宜の方法により電極上に印刷又は塗布することにより、カップリング膜7を形成する方法が挙げられる。
【0090】
前記化合物を溶解又は分散させる溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;水等が例示される。なお、前記溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0091】
式(1)で表される化合物を溶媒に溶解又は分散させて得られた溶液における該化合物の濃度は、浸漬法を用いる場合、0.01〜100mmol/lが好ましい。濃度が低すぎると該化合物と電極との反応に長時間必要となる場合がある。また、濃度が高すぎると該化合物の凝集により成膜性が低下する場合がある。印刷法を用いる場合、該化合物の濃度は、0.001〜10mmol/lが好ましい。濃度が低すぎると均一な薄膜を得ることが難しくなる場合があり、濃度が高すぎると厚い膜を形成するため電荷の注入が困難になることがある。
【0092】
式(1)で表される化合物と溶媒とを含む溶液を用いて印刷法または浸漬法により形成した膜の平均膜厚は、電荷注入・輸送性の観点からは、好ましくは0.1〜30nmであり、より好ましくは1.0〜20nmであり、さらに好ましく1.0〜10nmである。該膜の平均膜厚が厚い場合、電極から発光層への電荷注入が十分行われない場合があり、駆動電圧が上昇したり、耐久性が低下したりすることがある。
【0093】
印刷法としては、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等を用いることができる。適切な厚みの薄膜を形成するための溶液の濃度は、塗布法によって異なるため、適宜、調整する必要がある。
【0094】
(表面処理)
次に、表面処理について説明する。カップリング膜7の表面は、その上に層、例えば有機層5を設ける前に表面処理を行う。ここで表面処理とは、プラズマ処理、コロナ放電処理、UVオゾン処理などが挙げられ、UVオゾン処理が好ましい。表面処理を行うことにより、カップリング膜7上に塗布法を用いて有機層を形成する際、溶液に対する濡れ性が向上し、有機層を均一な膜厚で形成することができる。UVオゾン処理を行った場合、カップリング膜7の表面に存在するカップリング剤を酸化させることで、濡れ性を高めることができる。また、UVオゾン処理を施したカップリング膜を含む陽極の最高被占有軌道(HOMO)のエネルギー準位が有機層5のHOMOのエネルギー準位と近くなり、正孔が有機層に移動する障壁が低くなりうる。
【0095】
また、電極6の表面も、その上にカップリング膜7を設ける前にUVオゾン処理されることが好ましい。電極6の表面に存在する有機物が除去されて、その表面に存在する原子又は基と前記式(1)における基Xとの相互作用が強化されるからである。
【0096】
「UVオゾン処理」とは、酸素の存在下で物品に紫外線(UV)を照射することを意味する。空気中の酸素をオゾンに変化させ、このオゾン及び紫外線により該膜を改質する。UV光源は、UV照射により酸素をオゾンに変化させることができればよい。
【0097】
UV光源としては、低圧水銀ランプが挙げられる。低圧水銀ランプは185nmと254nmのUV光を発生し、185nm線が酸素をオゾンに変化させることができる。UVとオゾンの相乗効果で生ずる強力な酸化力により、前記電極の表面を改質し、電荷注入を促進することができる。照射の際の照度は、用いる光源により異なるが、一般的に数十〜数百mW/cmの光源が使用される。また、集光や拡散することで照度を変更することができる。照射時間は、ランプの照度及び前記非処理層の種類により異なるが、通常、1分〜24時間である。処理温度は、通常、10〜200℃である。また、UVの照射量(即ち、紫外線量)(J/cm)は、通常、1J/cm以上であり、好ましくは1〜100000J/cmであり、より好ましくは10〜100000J/cmであり、さらに好ましくは100〜100000J/cmであり、特に好ましくは1000〜100000J/cmである。
【0098】
(有機層5)
本発明の有機EL素子では、陽極2と発光層4との間に有機層5を有する。有機層5は上記式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を含んでいる。この繰り返し単位の構造において、アリールアミンがYを介して架橋していることで高分子化合物の平面性が高くなり、高分子化合物の分子鎖間の相互作用が起こりやすくなり、正孔を発光層に輸送しやすくなる。
【0099】
式(2)中のRとしては、好ましくは、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、1価の複素環基、置換カルボキシル基が挙げられ、より好ましくは、アルキル基、アリール基が挙げられる。また、式(2)中のY1としては、好ましくは−O−が挙げられる。
【0100】
また、式(2)で表される繰り返し単位は、A環上及びB環上にそれぞれ結合手を有する。A環及びB環は、同一又は相異なり、単環の芳香環又は縮合した芳香環を表す。また、A環及びB環は、それぞれ置換基を有していてもよい。
【0101】
このような芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、ペリレン環、テトラセン環、ペンタセン環、フルオレン環等の芳香族炭化水素環;ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、チオフェンオキシド環、ベンゾチオフェンオキシド環、ジベンゾチオフェンオキシド環、フラン環、ベンゾフラン環、ピロール環、インドール環、ジベンゾピロール環、シロール環、ベンゾシロール環、ジベンゾシロール環、ボロール環、ベンゾボロール環、ジベンゾボロール環等の芳香族複素環が挙げられる。これらの中でも、高分子化合物の耐熱性、高分子化合物を用いて製造した有機EL素子の素子特性等の観点からは、芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環がより好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0102】
また、A環及びB環が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、2個の置換基で置換された置換アミノ基、3個の置換基で置換された置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、置換カルボキシル基等が挙げられる。
【0103】
式(2)で表される繰り返し単位の好ましい具体例としては、式(3)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0104】
【化6】

【0105】
式中、Y及びRbは、前述と同じ意味を表す。
【0106】
一般式(3)で表される繰り返し単位の具体的な例としては、下記の繰り返し単位が挙げられる。
【0107】
【化7】

【0108】
本発明の有機EL素子は、陽極の最高被占有軌道(HOMO)のエネルギー準位と式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物のHOMOのエネルギー準位の差はできるだけ小さいことが好ましい。このエネルギー準位の差は、正孔が陽極から式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物へ注入される際のエネルギー障壁を表し、これが小さいと正孔が陽極から式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物へ注入されやすくなるからである。具体的には、上記エネルギー順位の差は0.5eV以下であることが好ましく、0.3eV以下であることがより好ましい。
【0109】
式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む有機層の膜厚は、素子の耐久性や電流特性の観点から、好ましくは10nm以上500nm以下であり、より好ましくは20nm以上300nm以下であり、さらに好ましくは、30nm以上200nm以下である。
【0110】
式(2)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物は、式(2)で表される繰り返し単位以外に、繰り返し単位としてアリーレン基、アリーレンビニレン基、2価の複素環基、2価の芳香族アミン残基を含んでいてもよい。上記の基の内、好ましくは、アリーレン基、2価の芳香族アミン残基であり、アリーレン基の中でも1,4−フェニレン基、2,7−フルオレンジイル基、3,6−フルオレンジイル基等の非置換又は置換のフルオレンジイル基がさらに好ましい。
【0111】
例えば、好ましいフルオレンジイル基の構造は、式
【0112】
【化8】

【0113】
[式中、Rは、各々独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、1価の複素環基、又はカルボキシル基を表す。また、上記置換基はさらに架橋性基を有していてよい。]
【0114】
で表される。好ましい実施形態では、式(6)中、各々のRは独立して、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基が好ましく、さらに好ましくは、直鎖状アルキル基を表す。
【0115】
上記高分子化合物に上記フルオレンジイル基が含まれることにより、ホール輸送性が優れるという効果が得られる。
【0116】
また、好ましい2価の芳香族アミン残基の構造は、式
【0117】
【化9】

【0118】
[式中、RおよびRは各々独立してアルキル基またはアリール基を表し、xは0〜5の整数を表し、yは0〜5の整数を表す。RまたはRが複数個存在する場合、各々のR又はRは同一であっても相違していてもよい。aは0又は1を表す。また、上記置換基はさらに架橋性基を有していてよい。]
【0119】
上記高分子化合物に上記2価の芳香族アミン残基が含まれることにより、式(2)で表される化合物を単独で用いる場合よりホール輸送性が優れることがある。
【0120】
該高分子化合物に含まれる式(2)で表される繰り返し単位の量は、該高分子化合物に含まれる繰り返し単位の量を100mol%とした場合、好ましくは3mol%以上100mol%以下であり、より好ましくは5mol%以上100mol%以下であり、さらに好ましくは10mol%以上100mol%以下であり、特に好ましくは、30mol%以上100mol%以下である。
【0121】
式(2)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含む有機層は、正孔輸送層として用いてもよい。その場合、正孔輸送層中に、該高分子化合物以外にも他の正孔輸送材料を含んでいてもよい。正孔輸送材料は、高分子化合物でも低分子化合物でもよいが、高分子化合物が好ましい。たとえば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体等も挙げられる。また、低分子化合物の正孔輸送材料としては、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等が挙げられる。
【0122】
式(2)で表される繰り返し単位を含有する高分子化合物は、ポリスチレン換算の数平均分子量が103〜108であることが好ましく、104〜106であることがより好ましい。
【0123】
主鎖に式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物の合成方法としては、例えば、所望の高分子化合物が有する繰り返し単位に応じたモノマーをSuzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Ni(0)触媒により重合する方法、FeCl3等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法、適切な脱離基を有する中間体高分子化合物の分解による方法等が挙げられる。これらのうち、Suzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Ni(0)触媒により重合する方法が、反応制御が容易である点で好ましい。
【0124】
前記反応においては、反応促進のために、適宜、アルカリ、適切な触媒を添加することができる。これらアルカリ、適切な触媒は、反応の種類に応じて選択すればよいが、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。アルカリとしては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基;トリエチルアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩基;フッ化セシウム等の無機塩が挙げられる。触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート類が挙げられる。
【0125】
主鎖に式(2)で表される繰り返し単位を含有する高分子化合物の純度は、素子の発光特性に影響を与えるため、重合前のモノマーを蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製した後に重合させることが好ましく、また、合成後、再沈精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0126】
前記反応に用いられる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類;蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類;塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸等が挙げられる。これらの溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0127】
反応後は、例えば、水を添加して反応を停止した後に有機溶媒で抽出し、該有機溶媒を留去する等の通常の後処理で、粗製の高分子化合物を得ることができる。また、上記のとおり、高分子化合物の単離及び精製はクロマトグラフィーによる分取、再結晶等の方法により行うことができる。
【0128】
式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物の合成方法の具体例としては、式(4)で表される化合物を単独で、又は、式(4)で表される化合物と式(5)で表される化合物とを、上記の方法により重合させる方法が挙げられる。
【0129】
【化10】

【0130】
【化11】

【0131】
式(4)及び(5)中、Y及びRbは前述と同じ意味を表し、Ar1は、アリーレン基、2価の複素環基又は2価の芳香族アミン残基を表し、Z〜Zは、同一又は相異なり、ハロゲン原子、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アリールアルキルスルホニルオキシ基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基(−B(OH)2)、ホルミル基又はビニル基を表す。
【0132】
好ましい実施形態では、Arは式(6)で表されるフルオレンジイル基、又は式(7)で表される2価の芳香族アミン残基である。これら2種類の式(5)で表される化合物は、両方一緒に式(4)で表される化合物と重合させてよい。
【0133】
式(4)で表される化合物又は式(5)で表される化合物の合成上の観点及び反応のし易さの観点からは、Z〜Zは、同一又は相異なり、ハロゲン原子、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アリールアルキルスルホニルオキシ基、ホウ酸エステル残基又はホウ酸残基であることが好ましい。
【0134】
アルキルスルホニルオキシ基としては、メタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等が例示される。アリールスルホニルオキシ基としては、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等が例示される。アリールアルキルスルホニルオキシ基としては、ベンジルスルホニルオキシ基等が例示される。
【0135】
ホウ酸エステル残基としては、例えば、下記式で示される基が挙げられる。
【0136】
【化12】

【0137】
式中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。
【0138】
スルホニウムメチル基としては、下記式で示される基が例示される。
【0139】
【化13】

【0140】
式中、αはハロゲン原子を示し、Meはメチル基を示し、Phはフェニル基を示す。
【0141】
ホスホニウムメチル基としては、下記式で示される基が例示される。
【0142】
【化14】

【0143】
式中、αはハロゲン原子を示し、Phはフェニル基を示す。
【0144】
ホスホネートメチル基としては、下記式で示される基が例示される。
【0145】
【化15】

【0146】
式中、R11はアルキル基、アリール基、又はアリールアルキル基を示す。
【0147】
モノハロゲン化メチル基としては、フッ化メチル基、塩化メチル基、臭化メチル基、ヨウ化メチル基が例示される。
【0148】
また、主鎖に式(2)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含有する有機層に、別の層、例えば、発光層を積層する際に、両層の混合や有機層中の化合物の溶出を防止するために、該有機層を不溶化することが好ましい。不溶化する処理としては、可溶性の高分子前駆体を用いて、熱処理により高分子前駆体を共役系高分子化合物に転換する処理、可溶性の置換基を有する高分子化合物を用いて該置換基を分解し、溶解性を低下させる処理、架橋性基を分子内に有する高分子化合物を用い、熱、光、電子線等で架橋させる処理、熱、光、電子線等により架橋反応を生ずるモノマーを混合し架橋する処理等が例示される。特に、架橋性基を分子内に有する高分子化合物を用いることが好ましい。
【0149】
前記架橋性基を分子内に有する主鎖に式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物としては、側鎖に架橋性基を有する前記高分子化合物が例示される。このような架橋性基としては、例えば、ビニル基、アセチレン基、ブテニル基、アクリル構造を有する基、アクリレート構造を有する基、アクリルアミド構造を有する基、メタクリル構造を有する基、メタクリレート構造を有する基、メタクリルアミド構造を有する基、ビニルエーテル構造を有する基、ビニルアミノ構造を有する基、シラノール基、小員環(例えば、シクロプロピル環、シクロブチル環、エポキシ環、オキセタン環、ジケテン環、エピスルフィド環等)を有する基、ラクトン構造を有する基、ラクタム構造を有する基、シロキサン結合を含有する基等がある。また、これらの基の他に、エステル結合やアミド結合を形成可能な基の組み合わせ等も用いることができる。例えば、エステル構造を有する基とアミノ基、エステル構造を有する基とヒドロキシル基等の組み合わせである。更に、WO97/09394公開明細書記載のベンゾシクロブタン構造を含む基等も例示される。その中でも、とりわけアクリレート構造を有する基、メタクリレート構造を有する基、及びベンゾシクロブタン構造を有する基が好ましい。
【0150】
アクリレート構造を有する基又はメタクリレート構造を有する基を有する単官能モノマーの具体例としては、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。アクリレート構造を有する基又はメタクリレート構造を有する基を有する2官能モノマーの具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、3−メチルペンタンジオールジアクリレート、3−メチルペンタンジオールジメタクリレート等が挙げられる。その他のアクリレート構造を有する基又はメタクリレート構造を有する基を有する多官能モノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。
【0151】
前記架橋性基を分子内に有する主鎖に式(2)で表される繰り返し単位を含有する高分子化合物において、該架橋性基の含有率は、通常、架橋基を有する繰り返し単位が全繰り返し単位に対して0.01〜30モル%であり、好ましくは0.5〜25モル%であり、より好ましくは1〜20モル%である。
【0152】
架橋反応を生ずるモノマーとしては、ポリスチレン換算の重量平均分子量が2000以下であり、上記架橋性基を二つ以上有するモノマーが例示される。架橋性基を有する高分子化合物や架橋反応を生ずるモノマーの架橋反応としては、加熱や光、電子線等照射により起こる反応が例示される。熱重合開始剤、光重合開始剤、熱重合開始助剤、光重合開始助剤等の存在下で前記反応を行ってもよい。
【0153】
加熱して不溶化する場合、加熱の温度は、材料の分解により特性が低下する温度より低ければよいが、例えば、50〜300℃であり、100〜250℃が好ましい。
【0154】
加熱して不溶化する場合、併用できる熱重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られている化合物が使用でき、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート、1,1’−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物;及び過酸化水素が挙げられる。
【0155】
ラジカル重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、過酸化物を還元剤とともに用いてレドックス型開始剤としてもよい。これらの熱重合開始剤はそれぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。熱重合開始剤を併用する場合の反応温度は、例えば、40〜250℃であり、50〜200℃が好ましい。光重合開始剤を用いた光重合では、紫外線を0.01mW/cm2以上の照射強度で1秒〜3600秒間、好ましくは30秒〜600秒照射すればよい。
【0156】
光重合開始剤としては、光を照射されることによって活性ラジカルを発生する活性ラジカル発生剤、酸を発生する酸発生剤等が挙げられる。活性ラジカル発生剤としては、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、それぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0157】
有機層の形成方法としては、溶液から成膜する方法等が挙げられる。溶液からの成膜には、例えば、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法や、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、キャピラリコート法等の塗布法を用いることができる。これらの中でも、パターン形成や多色の塗分けが容易であるという点で、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法が好ましい。
【0158】
上記の溶液から成膜する方法には、通常、インクが用いられる。このインクは、各層を構成する材料(有機層の場合には式(2)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物)と、溶媒とを含んでなるものである。この溶媒は、特に制限されないが、前記インクを構成する溶媒以外の成分を溶解又は均一に分散できるものが好ましい。前記溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が例示される。なお、前記溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0159】
また、インク中の溶媒の割合は、溶質に対して1重量%〜99.9重量%であり、好ましくは60重量%〜99.5重量%であり、さらに好ましくは80重量%〜99.0重量%である。
【0160】
インクの粘度は適用する印刷法によって異なるが、インクジェットプリント法等のようにインクが吐出装置を経由するものの場合には、吐出時の目づまりや飛行曲がりを防止するために、粘度が25℃において1〜20mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0161】
有機層の厚さは、発光効率や駆動電圧が所望の値になるように適宜選択されるが、通常、1〜300nmであり、好ましくは5〜50nmである。
【0162】
(発光層4)
本発明の有機EL素子が有する発光層4は、例えば、発光材料等の共蒸着や発光材料と溶媒とを含む溶液からの成膜により得られる。なお、前記発光材料は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0163】
前記発光材料としては、「有機ELディスプレイ」(時任静夫、安達千波矢、村田英幸 共著 株式会社オーム社 平成16年刊 第1版第1刷発行)17〜48頁、83〜99頁、101〜120頁に記載の蛍光材料又は三重項発光材料が利用できる。低分子の蛍光材料としては、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体、8−ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体等が挙げられ、より具体的には、特開昭57-51781号公報、特開昭59-194393号公報に記載されているもの等が使用可能である。その他にも、前記発光材料としては、例えば、WO99/13692号公開明細書、WO99/48160公開明細書、GB2340304A、WO00/53656公開明細書、WO01/19834公開明細書、WO00/55927公開明細書、GB2348316、WO00/46321公開明細書、WO00/06665公開明細書、WO99/54943公開明細書、WO99/54385公開明細書、US5777070、WO98/06773公開明細書、WO97/05184公開明細書、WO00/35987公開明細書、WO00/53655公開明細書、WO01/34722公開明細書、WO99/24526公開明細書、WO00/22027公開明細書、WO00/22026公開明細書、WO98/27136公開明細書、US573636、WO98/21262公開明細書、US5741921、WO97/09394公開明細書、WO96/29356公開明細書、WO96/10617公開明細書、EP0707020、WO95/07955公開明細書、特開2001−181618号公報、特開2001−123156号公報、特開2001−3045号公報、特開2000−351967号公報、特開2000−303066号公報、特開2000−299189号公報、特開2000−252065号公報、特開2000−136379号公報、特開2000−104057号公報、特開2000−80167号公報、特開平10−324870号公報、特開平10−114891号公報、特開平9−111233号公報、特開平9−45478号公報等に開示されているポリフルオレン、その誘導体及び共重合体、ポリアリーレン、その誘導体及び共重合体、ポリアリーレンビニレン、その誘導体及び共重合体、芳香族アミン及びその誘導体の(共)重合体が例示される。
【0164】
前記三重項発光材料としては、例えば、イリジウムを中心金属とするIr(ppy)3、Btp2Ir(acac)、白金を中心金属とするPtOEP、ユーロピウムを中心金属とするEu(TTA)3phen等の三重項発光錯体等が挙げられる。
【0165】
【化16】

【0166】
【化17】

【0167】
【化18】

【0168】
【化19】

【0169】
前記三重項発光錯体としては、さらに、Nature, (1998), 395, 151、Appl. Phys. Lett. (1999), 75(1), 4、Proc. SPIE-Int. Soc. Opt. Eng. (2001), 4105(Organic Light-Emitting Materials and DevicesIV), 119、J. Am. Chem. Soc., (2001), 123, 4304、Appl. Phys. Lett., (1997), 71(18), 2596、Adv. Mater., (1999), 11(10), 852 、Jpn.J.Appl.Phys.,34, 1883 (1995)等に記載されているものが挙げられる。
【0170】
前記発光材料は、高分子化合物であってもよく、例えば、交互共重合体、ランダム重合体、ブロック重合体及びグラフト共重合体のいずれであってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子化合物、例えば、ブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。前記発光材料は、高い電荷輸送性能を発現し、高発光効率化、低駆動電圧化、長寿命化できる観点から、完全なランダム共重合体よりブロック性を帯びたランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が好ましい。なお、前記発光材料には、主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある高分子化合物や、所謂デンドリマーも含まれる。
【0171】
(陰極3)
陰極3は、通常、透明又は半透明である。このような陰極の材料としては、仕事関数の小さいものが好ましく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の他の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、又はそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物等が用いられる。合金としては、例えば、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。なお、陰極は、一層であっても二層以上であってもよい。また、前記陰極の材料は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0172】
陰極3の厚さは、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜調整することができるが、例えば、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0173】
陰極3の作製には、真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を熱圧着するラミネート法等の方法が用いられる。また、導電性高分子化合物からなる層、金属酸化物、金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる層を設けてもよい。
【0174】
<用途>
本発明の有機EL素子は、面状光源、表示装置(例えば、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置)、液晶表示装置のバックライト等として用いることができる。
【0175】
本発明の有機EL素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、前記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極又は陰極のいずれか一方、又は両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号等を表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。
【0176】
更に、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる重合体を塗り分ける方法や、カラーフィルター又は蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動でも、アモルファスシリコンや低温ポリシリコンを用いた薄膜トランジスタ等と組み合わせたアクティブ駆動でもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等の表示装置に用いることができる。
【0177】
また、前記面状の発光素子は、自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、面状の照明用光源として好適に用いることができる。また、フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
【実施例】
【0178】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例及び比較例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない
【0179】
GPC測定
高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、サイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)(島津製作所製「LC−10Avp」)により求めた。測定する高分子化合物は、約0.05重量%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、SECに10μL注入した。SECの移動相としてテトラヒドロフランを用い、2.0mL/minの流速で流した。カラムとして、ポリマーラボラトリーズ製「PLgel MIXED−B」を用いた。検出器にはUV−VIS検出器(島津製作所製「SPD−10Avp」)を用いた。
【0180】
合成例1
高分子化合物Aの合成
下記構造式、N,N-ビス(4-ブロモフェニル)−N−(1,2−ジヒドロベンゾシクロブタン−4−イル)−アミンの合成は特表2007―511636の実施例1の方法で合成した。即ち、ジフェニルアミンと1,2−ジヒドロ−4−ブロモベンゾシクロブタンとを反応させ、ジフェニルベンゾシクロブタンアミンを得た。次いで、ジフェニルベンゾシクロブタンアミンとN−ブロモスクシンイミドとを反応させて、N,N-ビス(4-ブロモフェニル)−N−(1,2−ジヒドロベンゾシクロブタン−4−イル)-アミンを得た。
【0181】
【化20】

【0182】
不活性ガス置換した反応器に2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン18g、N,N−ビス(4-ブロモフェニル)−N−(4−sec−ブチルフェニル)−アミン13g、N,N-ビス(4-ブロモフェニル)−N−(1,2−ジヒドロベンゾシクロブタン−4−イル)−アミン2g、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:A1iquat336(登録商標)、アルドリッチ製)3g、トルエン200gを量りとった。反応容器を100℃に加熱し、酢酸パラジウム(II)7.4mgとトリ(o−トリル)ホスフィン70mg、および約18%の炭酸ナトリウム水溶液64gを加え、5時間加熱撹拌を続けた。その後、フェニルボロン酸400mgを添加し、さらに5時間加熱撹拌を続けた。190gのトルエンで反応液を希釈し、3%酢酸水溶液60gで2回、イオン交換水60gで1回水洗した後、取り出した有機相ヘDDC(ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物)1.5gを加え、4時間撹拌した。その溶液を、アルミナとシリカゲルの等量混合物を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。得られたトルエン溶液をメタノール中へ滴下し、撹拌した後、得られた沈殿物を濾取し、乾燥させた。高分子化合物Aのポリスチレン換算の数平均分子量は8.9×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は4.2×10であった。
【0183】
高分子化合物Aは下記繰り返し単位を有している。ここで、( )の添え数字は繰り返し単位のモル%を示している。
【0184】
【化21】

【0185】
合成例2
高分子化合物Bの合成
合成例lのN,N−ビス(4-ブロモフェニル)−N−(4-sec-ブチルフェニル)-アミンの代わりに3,7-ジブロモ−N−ヘキシルフェノキサジンを用いて、下記で表される高分子化合物Bを合成した。高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は6.0×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は2.3×10であった。
【0186】
高分子化合物Bは下記繰り返し単位を有している。ここで、( )の添え数字は繰り返し単位のモル%を示している。
【0187】
【化22】

【0188】
実施例1
有機EL素子1の作製
ガラス基板の表面上にスパッタ法により150nmの厚みでITO膜をつけて透明電極を作成した。この電極表面を、UVオゾン装置(テクノビジョン社製「Model 312 UV-O3 cleaning system」)を用いて、20分間照射した。次に、3−アミノプロピルトリエトキシシランをエタノール/水=95/5(重量比)の混合溶媒に0.10重量%の濃度で溶解させた溶液を用い、スピンコート法により2000rpmの回転数で上記電極上に薄膜を形成した。その後、110℃に設定したホットプレート上で薄膜が形成された基板を30分間加熱した。大気中で室温になるまで冷却し、上記のUVオゾン装置を用いて20分間照射し、薄膜をUVオゾン処理することで陽極を形成した。
【0189】
次に、高分子化合物Bをキシレン(関東化学社製)に1.5重量%の濃度で溶解して得られたキシレン溶液を、スピンコート法により該陽極上に塗布し、約80nmの厚みとなるように成膜した後、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下において、200℃で60分間乾燥し、有機層を形成した。
【0190】
次に、発光材料(Sumation社製「BP361」)をキシレン(関東化学社製)に1.4重量%の濃度で溶解させ、得られたキシレン溶液を、スピンコート法により有機層上に塗布し、約65nmの膜厚となるように成膜した。そして、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下において、90℃で10分間乾燥し、発光層を形成した。1.0×10-4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、発光層上にバリウムを約5nmの厚さで蒸着し、次いでバリウムの層の上にアルミニウムを約100nmの厚さで蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止を行うことで、有機EL素子を作製した。
【0191】
得られた有機EL素子が100cd/mの輝度で発光する駆動電圧は5.66Vであった。
【0192】
比較例1
高分子化合物Bの代わりに高分子化合物Aを用いること以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0193】
得られた有機EL素子が100cd/mの輝度で発光する駆動電圧は6.01Vであった。
【0194】
比較例2
ガラス基板の表面上にスパッタ法により150nmの厚みでITO膜をつけて透明電極を作成した。この電極表面上に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(H.C.Starck社製、商品名:BaytronP:CH8000)をスピンコート法により約65nmの厚みとなるように成膜した後、大気中において、200℃で10分間加熱処理した。
【0195】
ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸で被覆した透明電極を陽極として用いること以外は比較例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0196】
得られた有機EL素子が100cd/mの輝度で発光する駆動電圧は6.90Vであった。
【0197】
比較例3
ガラス基板の表面上にスパッタ法により45nmの厚みでITO膜をつけて透明電極を作成した。この電極表面を、UVオゾン装置(テクノビジョン社製「Model 312 UV-03 cleaning system」)を用いて、20分間照射し、陽極を作製した。次に、高分子化合物Bをキシレン(関東化学社製)に1.5重量%で溶解して得られたキシレン溶液を、スピンコート法により該陽極上に塗布し、約80nmの厚みとなるように成膜した後、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下において、200℃で60分間乾燥し、有機層を形成した。
【0198】
次に、発光材料(Sumation社製「BP361」)をキシレン(関東化学社製)に1.4重量%の濃度で溶解させ、得られたキシレン溶液を、スピンコート法により有機層上に塗布し、約65nmの膜厚となるように成膜した。そして、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下において、90℃で10分間乾燥し、発光層を形成した。1.0×10−4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、発光層の膜の上にバリウムを約5nmの厚さで蒸着し、次いでバリウムの層の上にアルミニウムを約100nmの膜厚で蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止を行うことで、有機EL素子を作製した。
【0199】
得られた有機EL素子が100cd/mの輝度で発光する駆動電圧は8.01Vであった。
【符号の説明】
【0200】
1…基板、
2…陽極、
3…陰極、
4…発光層、
5…有機層、
6…電極、
7…カップリング膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に発光材料を含有する発光層を有し、該陽極と該発光層との間に有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
該陽極は、電極を、式
【化1】

[式中、Mは、周期表の4族、5族、6族、13族、14族又は15族に属する原子を表す。Xは、ヘテロ原子を有する1価の有機基を表す。Raは、アルキル基、アリール基、アルキニル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基又はアリールアルキニル基を表す。v1は、1以上u以下の整数である。uは、Mの原子価を表す。Xが複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。Raが複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。]
で表される化合物と溶媒とを含む溶液に浸漬させるか、電極上に式(1)で表される化合物と溶媒とを含む溶液を印刷又は塗布して、乾燥させることにより、電極上にカップリング膜を形成し、次いで、該カップリング膜を表面処理することにより形成されたものであり、
該有機層は、式
【化2】

[式中、A環及びB環は、同一又は相異なり、環上に結合手を有する芳香環を表し、Y1は−O−、−S−、又は−C(=O)−を表し、Rは1価の有機基を表す。]
で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む層である、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
表面処理がUVオゾン処理である請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
UVオゾン処理におけるUVの照射量が1J/cm2以上である請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
が、ケイ素原子又はチタン原子である請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
1が−O−である請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
陽極の最高被占有軌道(HOMO)のエネルギー準位と式(2)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物のHOMOのエネルギー準位との差が0.5eV以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた面状光源。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−54954(P2011−54954A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176847(P2010−176847)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】