説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】高輝度、高発光効率、低駆動電圧の特徴を損なわずに、駆動時の安定性
に優れ、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】少なくとも一方が透明または半透明の陽極と陰極との間に少なくとも1層の有機層を有し、発光材料と正孔輸送材料とがそれぞれ別個に異なる有機層に含有されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、該正孔輸送材料を含有する有機層の少なくとも1層が酸化防止剤および光安定剤のうち少なくとも1種を含有し、該酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤であり、該光安定剤が、ベンゾフェノン系光安定剤またはヒンダ−ドアミン系光安定剤であり、該正孔輸送層が、高分子正孔輸送材料と酸化防止剤または光安定剤とを混合し、混合溶液からの成膜により作製したことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子というこ
とがある。)に関する。
【背景技術】
【0002】
無機蛍光体を発光材料として用いた無機EL素子(以下、無機EL素子という
ことがある。)は、例えばバックライトとしての面状光源やフラットパネルディ
スプレイ等の表示装置に用いられているが、発光させるのに高電圧の交流が必要
であった。
近年、Tangらは有機蛍光色素を発光層とし、これと電子写真の感光体等に
用いられている有機電荷輸送化合物とを積層した二層構造を有する有機EL素子
を作製した(特開昭59−194393号公報)。有機EL素子は、無機EL素
子に比べ、低電圧駆動、高輝度に加えて多数の色の発光が容易に得られるという
特徴があることから素子構造や有機蛍光色素、有機電荷輸送化合物について多く
の試みが報告されている〔ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィ
ジックス(Jpn.J.Appl.Phys.)第27巻、L269頁(198
8年)〕、〔ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(J.Appl.P
hys.)第65巻、3610頁(1989年)〕。
【0003】
また、高分子量の発光材料としては、WO9013148号公開明細書、特開
平3−244630号公報、アプライド・フィジックス・レターズ(Appl.
Phys.Lett.)第58巻、1982頁(1991年)などで提案されて
いた。WO9013148号公開明細書の実施例には、可溶性前駆体を電極上に
成膜し、熱処理を行うことにより共役系高分子に変換されたポリ(p−フェニレ
ンビニレン)薄膜が得られることおよびそれを用いたEL素子が開示されている

さらに、特開平3−244630号公報には、それ自身が溶媒に可溶であり、
熱処理が不要であるという特徴を有する共役系高分子が例示されている。アプラ
イド・フィジックス・レターズ(Appl.Phys.Lett.)第58巻、
1982頁(1991年)にも、溶媒に可溶な高分子発光材料およびそれを用い
て作成した有機EL素子が記載されている。
【0004】
発光層と正孔輸送材料層を積層した有機EL素子では正孔輸送材料層の熱的な
変化により素子が劣化する問題が指摘されている。これに対して熱的な変化の少
ない高いガラス転移点を有する正孔輸送材料の使用が提案されている。しかしな
がら、酸素に対する安定性については直接接触を低減する封止などの処置が行わ
れているのみである。酸素に対する安定性や光照射時の安定性の向上が求められ
ている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高輝度、高発光効率、低駆動電圧の特徴を損なわずに、駆動
時の安定性に優れ、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子を提供すること
にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、このような事情をみて鋭意検討した結果、酸化防止剤または光
安定剤を正孔輸送材料と併用して用いることにより、輝度、発光効率などの特徴
を損なうことなく、安定性に優れ、長寿命の有機EL素子が得られることを見出
し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、〔1〕少なくとも一方が透明または半透明の陽極と陰極
との間に少なくとも1層の有機層を有し、発光材料と正孔輸送材料とが同一の有
機層またはそれぞれ別個に異なる有機層に含有されている有機エレクトロルミネ
ッセンス素子において、該正孔輸送材料を含有する有機層の少なくとも1層が酸
化防止剤および光安定剤のうち少なくとも1種を含有する有機エレクトロルミネ
ッセンス素子に係るものである。
また、本発明は、〔2〕正孔輸送材料を含有する有機層の少なくとも1層が、
酸化防止剤および光安定剤のうち少なくとも1種を該正孔輸送材料に対して0.
01重量%以上50重量%以下含む層である〔1〕記載の有機エレクトロルミネ
ッセンス素子に係るものである。
【0008】
また、本発明は、〔3〕酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤、芳香族アミ
ン系酸化防止剤、有機硫黄系酸化防止剤および有機リン系酸化防止剤からなる群
から選ばれる少なくとも1種の化合物である〔1〕または〔2〕記載の有機エレ
クトロルミネッセンス素子に係るものである。
また、本発明は、〔4〕光安定剤が、サリシレート系光安定剤、ベンゾフェノ
ン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤、
シアノアクリレート系光安定剤、オキザリックアシッドアニリド系光安定剤およ
びニッケル系消光剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である〔1
〕または〔2〕記載の有機エレクトロルミネッセンス素子に係るものである。
【0009】
さらに、本発明は、〔5〕発光材料が下記式(1)で示される繰り返し単位を
、全繰り返し単位の50モル%以上含み、ポリスチレン換算の数平均分子量が1
3〜107である高分子発光体である〔1〕〜〔4〕記載のいずれかの有機エレ
クトロルミネッセンス素子に係るものである。
【0010】
【化1】

〔ここで、Arは、共役結合に関与する炭素原子数が4個以上20個以下からな
るアリーレン基または複素環化合物基である。R、R’は、それぞれ独立に水素
、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20
の複素環化合物およびシアノ基からなる群から選ばれる基を示す。〕
【発明の効果】
【0011】
正孔輸送材料を含有する層に酸化防止剤と光安定剤のうち少なくとも1種を併
用することで輝度の減衰と駆動電圧の上昇が小さく長寿命化の有機EL素子が得
られる。したがって、該有機EL素子は、バックライトとしての曲面状や面状光
源,フラットパネルディスプレイ等の装置として好ましく使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の有機EL素子について詳細に説明する。
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方が透明または半透明の陽極と陰極と
の間に少なくとも1層の有機層を有し、発光材料と正孔輸送材料とが同一の有機
層またはそれぞれ別個に異なる有機層に含有されている有機エレクトロルミネッ
センス素子において、該正孔輸送材料を含有する有機層の少なくとも1層が酸化
防止剤および光安定剤のうち少なくとも1種を含有することを特徴とする。
本発明の有機EL素子の構造としては、正孔輸送材料が含まれている層に酸化
防止剤と光安定剤のうち少なくとも1種が含まれておればよい。
例えば、発光材料、酸化防止剤と光安定剤のうち少なくとも1種、および正孔
輸送材料とを含む発光層を含む素子構造が挙げられる。
また、発光材料、酸化防止剤と光安定剤のうち少なくとも1種、正孔輸送材料
、および電子輸送材料とを含む発光層を含む素子構造が挙げられる。
また、発光材料を含む発光層と酸化防止剤と光安定剤のうち少なくとも1種と
正孔輸送材料を含む正孔輸送層を含む素子構造が挙げられる。
また、発光材を含む発光層、酸化防止剤と光安定剤のうち少なくとも1種と正
孔輸送材料を含む正孔輸送層、および電子輸送材料を含む電子輸送層を含む素子
構造が挙げられる。
また、本発明には正孔輸送材料が発光機能を有する場合も含まれる。さらに、
発光層、正孔輸送層、電子輸送層は2層以上用いることも例示される。これらの
各層の素子中での位置は、陰極から陽極に向かって、電子輸送層、発光層、正孔
輸送層、陽極の順に用いられるのが一般的であるが、上記の1層構造や2層構造
の場合はそれぞれ対応する層を省略する。また、それぞれの層を複数用いる場合
は、第2の層を用いる位置に特に制限はなく、発光効率や素子寿命を勘案して適
宜用いることができる。
【0013】
本発明の有機EL素子において、正孔輸送材料とともに用いられる酸化防止剤
または光安定剤には特に制限はないが、酸化防止剤として、フェノール系酸化防
止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、有機硫黄系酸化防止剤および有機リン系酸化
防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好適に用いられる。これらのう
ち、有機硫黄系酸化防止剤、有機リン系酸化防止剤は、単独で用いてもよいが、
フェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤との併用が好ましい。
また、光安定剤としては、サリシレート系光安定剤、ベンゾフェノン系光安定
剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤、シアノアク
リレート系光安定剤、オキザリックアシッドアニリド系光安定剤およびニッケル
系消光剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好適に用いられる。これらの
うちフェノール系酸化防止剤、ベンゾフェノン系光安定剤、ヒンダードアミン系
光安定剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤がさらに好ましい。
【0014】
具体的にはフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル
フェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル
−4−メトキシフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジ−メチルフェノ
ール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t
ert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチル
フェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール
、2,6−ジ−tert−ブチル−2−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,
5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルヒドロ
キノン、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−
ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−
6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5
−トリアジン、1−フェニルエチル基で置換されたフェノール、1−フェニルエ
チル基およびメチル基で置換されたフェノール、2−tert−ブチル−6−(
3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メ
チルフェニルアクリレート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t
ert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−
tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−シクロヘキ
シル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−[6−(1−メチ
ルシクロヘキシル)−p−クレゾール]、2,2’−エチリデン−ビス−(2、
4−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス−(2−
tert−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス−(2
、6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3
−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビ
ス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロ
ピオネート]、トリ−エチレングリコール−ビス−[3−(3−tert−ブチ
ル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、N,N’−ビ
ス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロ
ピオニル]−ヒドラジン、N,N’−ビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブ
チル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオニル]−ヘキサメチレンジアミン、
2,2’−チオ−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4
,4’−チオ−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,
2’−チオ−ジエチレン−ビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−
ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−
メチル−6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)
−フェニル]−テレフタレート、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒド
ロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−ブタン、1,3,5−トリメチル−
2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジ
ル)−ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベン
ジル)−イソシアヌレート、トリス[2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4
−ヒドロキシヒドロ−シンナモイロキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス(
4−tert−ブチル−2,6−ジ−メチル−3−ヒドロキシベンジル)−イソ
シアヌレート、テトラキス−[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル
−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]−メタン、カルシウムビス−[エ
チル−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒロドキシベンジル)−ホスフェ
イト]、プロピル−3,4,5−トリ−ヒドロキシベンゼンカーボネート、オク
チル−3,4,5−トリ−ヒドロキシベンゼンカーボネート、ドデシル−3,4
,5−トリ−ヒドロキシベンゼンカーボネート、2,2’−メチレン−ビス−(
4−m−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビ
ス−(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、1,1−ビス−(4−ヒド
ロキシ−フェニル)−シクロヘキサン、1,1,3−トリス−(2−メチル−4
−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−ブタン、1,3,5−トリメ
チル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ
ベンジル)ベンゼン、3、9−ビス[1,1,−ジ−メチル−2−[β−(3−
tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ]
エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が例
示される。
【0015】
芳香族アミン系酸化防止剤としては、4,4’−ジオクチル−ジフェニルアミ
ン、アルキル基で置換されたジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フ
ェニレンジアミン、N,N’−ジアリール−p−フェニレンジアミン、6−エト
キシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、N−フェニル−N
’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、 N−フェニル−N’−1,3−
ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−
ジヒドロキノリン重合体、アルドール−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2
−ナフチルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等が
挙げられる。
【0016】
有機硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネー
ト、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’
−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−メチル−3,3’−チオジ
プロピオネート、ビス[2−メチル−4−[3−n−アルキルチオプロピオニロ
キシ]−5−tert−ブチルフェニル]サルファイド、ペンタエリトリチル−
テトラキス−(3−ラウリルチオプロピオネート)、2−メルカプトベンズイミ
ダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0017】
有機リン系酸化防止剤としては、トリス(イソデシル)ホスファイト、トリス
(トリデシル)ホスファイト、フェニルジイソオクチルホスファイト、フェニル
ジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニ
ルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル
トリデシルホスファイト、亜リン酸[1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイル
ビステトラキス[2,4−ビス−(1,1−ジメチルエチル)フェニル]]エス
テル、トリフェニルホスフィト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,
4’−イソプロピリデン−ジフェノールアルキルホスファイト、トリス(2,4
−ジ−tert−ブチルフェニル)−ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホス
ファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、ジ(2,4−ジ
−tert−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジ(ノニ
ルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、フェニル−ビスフェノール
−ペンタエリトリトールジホスファイト、テトラトリデシル−4,4’−ブチリ
デンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)−ジホスファイト、
ヘキサトリデシル−1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−
tert−ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、3,5−ジ−tert−
ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフェイト−ジ−エチルエステル、9,10
−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスフォフェナントラセン−10−オキサイド
、ナトリウムビス(4−tert−ブチルフェニル)ホスフェイト、ナトリウム
−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフ
ェイト、1,3−ビス(ジフェノキシホスフォニロキシ)−ベンゼン等が挙げら
れる。
【0018】
サリシレート系光安定剤としては、フェニルサリシレート、4−tert−ブ
チルサリシレート、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−
tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、4−tert−オクチルフ
ェニルサリシレート等が挙げられる。
【0019】
ベンゾフェノン系光安定剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ
ベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾ
フェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒド
ロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒド
ロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキ
シベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェ
ノン2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ
−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カル
ボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0020】
ベンゾトリアゾール系光安定剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチル
フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α
−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−
3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒド
ロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリ
アゾール、2−(2−ヒドロキシ−3、5−ジ−tert−ブチルフェニル)−
5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert
−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert
−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1
,1,3,3,−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2
−イル)フェノール]等が挙げられる。
【0021】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、フェニル−4−ピペリジルカーボネー
ト、ビス−[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル]セバケート、ビ
ス−[N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル]セバケー
ト、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3
,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロ
ネート、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3
,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6,−テトラメチル−4
−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4
−ピペリジル)イミノール]]、テトラキス(2,2,6,6−テトラ−メチル
−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタン−テトラカルボキシレート、1,
1’−(1,2−エタンジイル)ビス(3,3,5,5−テトラ−メチルピペラ
ジノン),4−ヒドロキシ−2,2,6,6,−テトラメチル−1−ピペリジン
エタノールとジメチルサクシネートの重合体、(2,2,6,6−テトラメチル
−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレ
ート、(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−
1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、[2,2,6,6−テトラメ
チル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4
,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル]−1,2,
3,4−ブタンテトラカルボキシレート、[1,2,2,6,6−ペンタメチル
−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8
,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル]−1,2,3,
4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
【0022】
シアノアクリレート系光安定剤としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフ
ェニルアクレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルア
クリレート、ブチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)
アクリレート等が挙げられる。
【0023】
オキザリックアシッドアニリド系光安定剤としては、2−エトキシ−2’−エ
チルオキザリックアシドビスアニリド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−
2’−エチルオキザリックアシドビスアニリド等が例示されがこれらに限られる
ものではない。
【0024】
ニッケル系消光剤としては、[2,2’−チオ−ビス(4−tert−オクチ
ルフェノレート)]−2−エチルヘキシルアミン−ニッケル(II)、ニッケル
ジブチル−ジチオカルバメート、[2,2’−チオビス(4−tert−オクチ
ルフェノラート)]n−ブチルアミンニッケル、ニッケルビス(オクチルフェニ
ル)サルファイド、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンズリッ
クアシッドモノエチレートニッケル錯体、2,2’−ティオビス(4−tert
−オクチルフェノレート)トリエタノールアミンニッケル(II)錯体等が挙げ
られる。
【0025】
これらの酸化防止剤または光安定剤は、単独で用いてもよいし、酸化防止剤の
少なくとも2種を用いてもよく、光安定剤の少なくとも2種を用いてもよく、酸
化防止剤の少なくとも1種と光安定剤の少なくとも1種とを用いてもよい。これ
らの酸化防止剤、光安定剤またはこれらの混合物の使用量、すなわち酸化防止剤
および光安定剤のうち少なくとも1種の使用量は、正孔輸送材料を含有する有機
層において、材料の種類によって異なるが、使用される正孔輸送材料に対して0
.01重量%以上50重量%以下が好ましい。さらに好ましくは0.1重量%以
上20重量%以下であり、0.2重量%以上10重量%以下が特に好ましい。該
使用量が、正孔輸送材料を含有する有機層において、使用される正孔輸送材料に
対して0.01重量%未満のときには、本発明の効果が不充分なので好ましくな
く、50重量%を超えると正孔輸送能力が損なわれるので好ましくない。
【0026】
本発明に用いる正孔輸送材料として、特に制限はないが、ピラゾリン誘導体、
アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリ
ビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポ
リチオフェンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはそ
の誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体が例
示される。
具体的には、該正孔輸送材料として、特開昭63−70257号公報、同63
−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号
公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−15218
4号公報に記載されているもの等が例示される。
これらの中で、発光層に用いる正孔輸送材料として、トリフェニルジアミンも
しくはその誘導体、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、共役系高分子
、またはポリアニリン等が好ましく、さらに好ましくは4,4’−ビス(N(3
−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル、またはポリビニルカル
バゾールもしくはその誘導体である。
【0027】
正孔輸送材料と酸化防止剤または光安定剤との混合方法に制限はないが、低分
子正孔輸送材料では、真空蒸着法による共蒸着や混合蒸着、または混合溶液から
の成膜による方法が例示される。溶液からの成膜時には、高分子バインダーを併
用してもよい。また、高分子正孔輸送材料では、混合溶液からの成膜による方法
が例示される。
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔輸送材料、酸化防止剤と光安定剤
を溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化
メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系
溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチル
ケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルセルブアセテー
ト等のエステル系溶媒が例示される。
【0028】
溶液からの成膜方法としては、溶液からのマイクログラビアコート法、グラビ
アコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップ
コート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット
印刷法などが挙げられる。
高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、ま
た可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダー
として、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリ
メチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例
示される。
【0029】
次に、本発明の有機EL素子に用いる部材について説明する。
本発明における有機EL素子の発光層に含まれる発光材料としては、公知のも
のが使用できる。低分子化合物では、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン
もしくはその誘導体、ペリレンもしくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン
系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキシキノリンもしくはそ
の誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエンもしく
はその誘導体、またはテトラフェニルブタジエンもしくはその誘導体などを用い
ることができる。
具体的には、例えば特開昭57−51781号、同59−194393号公報
に記載されているもの等、公知のものが使用可能である。
【0030】
また、本発明における有機EL素子の発光層に含まれる発光材料として、高分
子蛍光体が好ましく、該高分子蛍光体として、ポリアリーレンビニレンおよびそ
の誘導体であり、前記式(1)で示される繰り返し単位を全繰り返し単位の50
モル%以上含む重合体が挙げられる。該繰り返し単位の構造にもよるが、式(1
)で示される繰り返し単位が全繰り返し単位の70モル%以上であることが好ま
しい。該高分子蛍光体は、式(1)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位
として、2価の芳香族化合物基もしくはその誘導体、2価の複素環化合物基もし
くはその誘導体、またはそれらを組み合わせて得られる基などを含んでいてもよ
い。また、式(1)で示される繰り返し単位や他の繰り返し単位が、エーテル基
、エステル基、アミド基、イミド基などを有する非共役の単位で連結されていて
もよいし、繰り返し単位にそれらの非共役部分が含まれていてもよい。
【0031】
発光材料が式(1)の繰り返し単位を含む高分子蛍光体の場合、式(1)のA
rとしては、共役結合に関与する炭素原子数が4個以上20個以下からなるアリ
ーレン基または複素環化合物基であり、下記化2〜化4に示す2価の芳香族化合
物基もしくはその誘導体基、2価の複素環化合物基もしくはその誘導体基、また
はそれらを組み合わせて得られる基などが例示される。
【0032】
【化2】

【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

(R1〜R92は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アルコ
キシ基およびアルキルチオ基;炭素数6〜18のアリール基およびアリールオキ
シ基;ならびに炭素数4〜14の複素環化合物基からなる群から選ばれた基であ
る。)
【0035】
これらのなかで、フェニレン基、置換フェニレン基、ビフェニレン基、置換ビ
フェニレン基、ナフタレンジイル基、置換ナフタレンジイル基、アントラセン−
9,10−ジイル基、置換アントラセン−9,10−ジイル基、ピリジン−2,
5−ジイル基、置換ピリジン−2,5−ジイル基、チエニレン基または置換チエ
ニレン基が好ましい。さらに好ましくは、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフ
タレンジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基またはチエニレン基である。
【0036】
式(1)のR、R’が水素またはシアノ基以外の置換基である場合について述
べると、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル
基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、
ラウリル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘ
プチル基、オクチル基が好ましい。
アリール基としては、フェニル基、4−C1〜C12アルコキシフェニル基(C1
〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、4−C1
〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが例示される

【0037】
溶媒可溶性の観点からは式(1)のArが、1つ以上の炭素数4〜20のアル
キル基、アルコキシ基およびアルキルチオ基、炭素数6〜18のアリール基およ
びアリールオキシ基ならびに炭素数4〜14の複素環化合物基からなる群より選
ばれた基を有していることが好ましい。
【0038】
これらの置換基としては、以下のものが例示される。炭素数4〜20のアルキ
ル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、
デシル基、ラウリル基などが挙げられ、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、
オクチル基が好ましい。
また、炭素数4〜20のアルコキシ基としては、ブトキシ基、ペンチルオキシ
基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基
、ラウリルオキシ基などが挙げられ、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘ
プチルオキシ基、オクチルオキシ基が好ましい。
アルキルチオ基としては、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、
ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、デシルオキシ基、ラウリルチオ基などが挙げ
られ、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基が好
ましい。
【0039】
アリール基としては、フェニル基、4−C1〜C12アルコキシフェニル基、4
−C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが例示
される。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基が例示される。複素環化合物基とし
ては2−チエニル基、2−ピロリル基、2−フリル基、2−、3−または4−ピ
リジル基などが例示される。
これら置換基の数は、該高分子蛍光体の分子量と繰り返し単位の構成によって
も異なるが、溶解性の高い高分子蛍光体を得る観点から、これらの置換基が分子
量600当たり1つ以上であることが好ましい。
該高分子蛍光体の合成法としては、特に限定されず、例えば特開平5−202
355号公報に記載の方法が挙げられる。
【0040】
なお、該高分子蛍光体は、ランダム、ブロックまたはグラフト共重合体であっ
てもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えばブロック性を帯びた
ランダム共重合体であってもよい。蛍光の量子収率の高い高分子蛍光体を得る観
点からは完全なランダム共重合体よりブロック性を帯びたランダム共重合体やブ
ロックまたはグラフト共重合体が好ましい。
また、薄膜からの発光を利用するので該高分子蛍光体は、固体状態で蛍光を有
するものが好適に用いられる。
【0041】
該高分子蛍光体に対する良溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジク
ロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレンなどが例示される。高分
子蛍光体の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に0.1重量%以上溶
解させることができる。
【0042】
該高分子蛍光体は、分子量がポリスチレン換算で102 〜107であり、それ
らの重合度は、繰り返し構造やその割合によっても変わる。成膜性の点から一般
には繰り返し構造の合計数が、好ましくは4〜10000、さらに好ましくは5
〜3000、特に好ましくは10〜2000である。
【0043】
これらの高分子蛍光体を有機EL素子の発光材料として用いる場合、その純度
が発光特性に影響を与えるため、合成後、再沈精製、クロマトグラフィーによる
分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0044】
有機EL素子作成の際に、これらの有機溶媒可溶性の高分子蛍光体を用いるこ
とにより、溶液から成膜する場合、この溶液を塗布後乾燥により溶媒を除去する
だけでよく、また電荷輸送材料や発光材料を混合した場合においても同様な手法
が適用でき、製造上非常に有利である。溶液からの成膜方法としては、マイクロ
グラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイア
ーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フ
レキソ印刷法、オフセット印刷法などが挙げられる。
【0045】
発光材料が高分子蛍光体である場合、さらに発光層に例えば該高分子蛍光体以
外の前記に述べた発光材料を混合使用してもよい。また、該高分子蛍光体および
/または電荷輸送材料を高分子バインダーに分散させた層とすることもできる。
【0046】
本発明において、有機EL素子が電子輸送材料を含有する層を有する場合、使
用される電子輸送材料としては公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体
、アントラキノジメタンもしくはその誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体
、ナフトキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、テト
ラシアノアンスラキノジメタンもしくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフ
ェニルジシアノエチレンもしくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、または8
−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体等が例示される。
具体的には、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、
特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−20998
8号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されてい
るもの等が例示される。
【0047】
これらのうち、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、
アントラキノンもしくはその誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはそ
の誘導体の金属錯体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブ
チルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノ
ン、トリス(8−キノリノール)アルミニウムがさらに好ましい。
【0048】
電子輸送材料を含有する層の成膜法としては特に制限はないが、低分子電子輸
送材料では、粉末からの真空蒸着法、あるいは溶液または溶融状態からの成膜に
よる方法が、高分子電子輸送材料では溶液または溶融状態からの成膜による方法
がそれぞれ例示される。溶液または溶融状態からの成膜時には、高分子バインダ
ーを併用してもよい。
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、電子輸送材料および/または高分子バ
インダーを溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホル
ム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエ
ーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチ
ルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルセルブ
アセテート等のエステル系溶媒が例示される。
溶液または溶融状態からの成膜方法としては、マイクログラビアコート法、グ
ラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディ
ップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセ
ット印刷法などが挙げられる。混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を
極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対する吸収が強くないものが
好適に用いられる。
該高分子バインダーとして、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン
もしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレ
ンビニレン)もしくはその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしく
はその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート
、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリシロ
キサンなどが例示される。
【0049】
本発明において、透明または半透明の陽極の材料としては、導電性の金属酸化
物膜、半透明の金属薄膜等が用いられる。具体的には、インジウム・スズ・オキ
サイド(ITO)、ZnO、酸化スズ(SnO2)等からなる導電性ガラスを用
いて作成された膜や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、ZnO、SnO
2が好ましい。作製方法としては、真空蒸着法、スパッター法、イオンプレーテ
ィング法、メッキ法等が挙げられる。また、該陽極として、ポリアニリンなどの
有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0050】
次に、本発明で用いる陰極の材料としては、イオン化エネルギーの小さい材料
が好ましい。例えば、アルミニウム、インジウム、マグネシウム、カルシウム、
リチウム、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、リチウム−
アルミニウム合金、リチウム−銀合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム
−アルミニウム合金またはグラファイト薄膜等が用いられる。
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱
圧着するラミネート法等が用いられる。また陰極作製後、該有機EL素子を保護
する保護層を装着していてもよい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれら
に限定されるものではない。
ここで、数平均分子量については、クロロホルムを溶媒として、ゲルパーミエ
ーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算の数平均分子量
を求めた。
実施例1
<高分子蛍光体1の合成>
2,5−ジオクチルオキシ−p−キシリレンジクロライドをN,N−ジメチル
ホルムアミド溶媒中、トリフェニルホスフィンと反応させてホスホニウム塩を合
成した。得られたホスホニウム塩47.75重量部、およびテレフタルアルデヒ
ド5.5重量部を、エチルアルコール/クロロホルム混合溶媒に溶解させた。5
.4重量部のリチウムエトキシドを含むエチルアルコール/クロロホルム混合溶
液をホスホニウム塩とジアルデヒドのエチルアルコール溶液に滴下し、重合した
。引き続き、この反応溶液に1−ピレンカルバルデヒドのクロロホルム溶液を加
えた後、さらにリチウムエトキシドを含むエチルアルコール溶液を溶液に滴下し
、室温で3時間重合させた。一夜室温で放置した後、沈殿を濾別し、エチルアル
コールで洗浄後、クロロホルムに溶解、これにエタノールを加え再沈生成した。
これを減圧乾燥して、重合体8.0重量部を得た。
これを高分子蛍光体1という。モノマーの仕込み比から計算される高分子蛍光体
1の繰り返し単位とそのモル比を下記に示す。分子末端にはピレニル基を有する
ことをH1−NMRより確認した。
【0052】
【化5】

(上式において、二つの繰り返し単位のモル比は、50:50であり、二つの繰
り返し単位は、交互に結合している。)
該高分子蛍光体1のポリスチレン換算の数平均分子量は、4.0×103であ
った。該高分子蛍光体1の構造については赤外吸収スペクトル、NMRで確認し
た。
【0053】
<素子の作成および評価>
ポリ(N−ビニルカルバゾール)(以下、PVCzと記すことがある。)に対
して1.0重量%のフェノール系酸化防止剤(チバ・カイギー社製、商品名:I
rganox1330)を含むPVCzの1.0重量%塩化メチレン溶液を調製
した。電子ビーム蒸着によって、300nmの厚みでITO膜を付けたガラス基
板に、前記PVCzの塩化メチレン溶液を用いて、スピンコートにより80nm
の厚みで成膜した。
次に、高分子蛍光体の1.0重量%のトルエン溶液を用いて、スピンコートに
より40nmの厚みで成膜した。次いで、これを減圧下120℃で1時間乾燥し
た後、電子輸送層として、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(以下、A
lq3と記すことがある。)を0.1〜0.2nm/sの速度で40nm蒸着した
。最後に、その上に陰極として、アルミニウムリチウム合金(Al:Li=約2
00:1重量比)を100nm蒸着して有機EL素子を作製した。蒸着のときの
真空度はすべて1×10-5Torr以下であった。
この素子を25mA/cm2の定電流密度で、窒素雰囲気下で連続駆動をした
。10時間エージング後の輝度は962cd/m2、70時間駆動後の輝度は6
05cd/m2で輝度の半減寿命の外挿値は約100時間であった。また10時
間エージング後の駆動中の駆動電圧の上昇率は0.052V/hrであった。
【0054】
実施例2
<素子の作成および評価>
PVCzの塩化メチレン溶液に添加する商品名Irganox1330(チバ・
カイギー社製)の代わりに、ヒンダードアミン系光安定剤(住友化学工業株式会
社製、商品名:Sumisorb577)を用いた以外は実施例1と同じ方法で
有機EL素子を作製した。
この素子を25mA/cm2の定電流密度で、窒素雰囲気下で連続駆動をした
。10時間エージング後の輝度は839cd/m2、70時間駆動後の輝度は4
82cd/m2で輝度の半減寿命の外挿値は約90時間であった。また10時間
エージング後の駆動中の駆動電圧の上昇率は0.035V/hrであった。
【0055】
実施例3
<素子の作成および評価>
PVCzの塩化メチレン溶液に添加する商品名Irganox1330(チバ
・カイギー社製)の代わりに、ベンゾフェノン系光安定剤(住友化学工業株式会
社製、商品名:Sumisorb130)を用いた以外は実施例2と同じ方法で
有機EL素子を作製した。
この素子を25mA/cm2の定電流密度で、窒素雰囲気下で連続駆動をした
。10時間エージング後の輝度は919cd/m2、80時間駆動後の輝度は6
49cd/m2で輝度の半減寿命の外挿値は約120時間であった。また10時
間エージング後の駆動中の駆動電圧の上昇率は0.062V/hrであった。
【0056】
実施例4
<素子の作成および評価>
PVCzの塩化メチレン溶液に添加する商品名Irganox1330(チバ
・カイギー社製)の代わりに、フェノール系酸化防止剤(住友化学工業株式会社
製、商品名:SumilizerGM)を用いた以外は実施例1と同じ方法で有
機EL素子を作製した。
この素子を25mA/cm2の定電流密度で、窒素雰囲気下で連続駆動をした
。10時間エージング後の輝度は1008cd/m2、70時間駆動後の輝度は
715cd/m2で輝度の半減寿命の外挿値は約130時間であった。また、1
0時間エージング後の駆動中の駆動電圧の上昇率は0.072V/hrであった

【0057】
実施例5
<素子の作成および評価>
PVCzの塩化メチレン溶液に添加する商品名SumilizerGM(住友
化学工業株式会社製)の添加量を0.5重量%にした以外は、実施例4と同じ方
法で有機EL素子を作製した。
10時間エージング後の輝度は1111cd/m2、100時間駆動後の輝度
は687cd/m2で、輝度の半減寿命の外挿値は約100時間であった。また
10時間エージング後の駆動中の駆動電圧の上昇率は0.89V/hrであった

【0058】
実施例6
<素子の作成および評価>
PVCzの塩化メチレン溶液に添加する商品名SumilizerGM(住友
化学工業株式会社製)の添加量をを10%にした以外は、実施例4と同じ方法で
有機EL素子を作製した。
10時間エージング後の輝度は1023cd/m2、70時間駆動後の輝度は
756cd/m2で、輝度の半減寿命の外挿値は約1400時間であった。また
10時間エージング後の駆動中の駆動電圧の上昇率は0.069V/hrであっ
た。
【0059】
比較例1
<素子の作成および評価>
PVCzの塩化メチレン溶液に、光安定剤または酸化防止剤を添加しない以外
は実施例1と同じ方法で有機EL素子を作製した。
この素子を25mA/cm2の定電流密度で、窒素雰囲気下で連続駆動をした
。10時間エージング後の輝度は1050cd/m2、70時間駆動後の輝度は
566cd/m2で、輝度の半減寿命の外挿値は約70時間であった。また、1
0時間エージング後の駆動中の駆動電圧の上昇率は0.111V/hrであった


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明または半透明の陽極と陰極との間に少なくとも1層の有機層を有し、発光材料と正孔輸送材料とがそれぞれ別個に異なる有機層に含有されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、該正孔輸送材料を含有する有機層の少なくとも1層が酸化防止剤および光安定剤のうち少なくとも1種を含有し、該酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤であり、該光安定剤が、ベンゾフェノン系光安定剤またはヒンダ−ドアミン系光安定剤であり、該正孔輸送材料を含有する有機層が、高分子正孔輸送材料と酸化防止剤または光安定剤と溶媒とを含む混合溶液からの成膜により作製したものであることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
正孔輸送材料を含有する有機層の少なくとも1層が、酸化防止剤および光安定剤のうち少なくとも1種を該正孔輸送材料に対して0.01重量%以上50重量%以下含む層であることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
発光材料を含有する層と陰極との間に、該発光材料を含有する層に隣接して電子輸送材料を含有する層を設けることを特徴とする請求項1または2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
陰極と陽極との間に、陰極から陽極に向かって、電子輸送材料を含有する層、発光材料を含有する層、正孔輸送材料を含有する層を、記載した順で有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
発光材料が下記式(1)で示される繰り返し単位を、全繰り返
し単位の50モル%以上含み、ポリスチレン換算の数平均分子量が103〜107
である高分子発光体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機
エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】

〔ここで、Arは、共役結合に関与する炭素原子数が4個以上20個以下からな
るアリーレン基または複素環化合物基である。R、R’は、それぞれ独立に水素
、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20
の複素環化合物およびシアノ基からなる群から選ばれる基を示す。〕


【公開番号】特開2007−59935(P2007−59935A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286072(P2006−286072)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【分割の表示】特願平9−59583の分割
【原出願日】平成9年3月13日(1997.3.13)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】