説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】一表面側に発光層などが設けられる導電性基板の他表面側に絶縁層を設けながらも簡単な構成で端子部を設けることが可能な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】有機エレクトロルミネッセンス素子は、第1電極11を兼ねる導電性基板12と、導電性基板12の一表面側で第1電極11に対向した第2電極50と、第1電極11と第2電極50との間にあり発光層32を含む機能層30とを備え、第2電極50側から光を取り出すものである。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、導電性基板12の他表面側に設けられた絶縁層15と、導電性基板12から上記他表面側に突出した凸部12aとを備え、凸部12aの一部を絶縁層15から露出させて外部接続用の端子部12aaとしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図23に示す構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子が提案されている(特許文献1)。
【0003】
この有機エレクトロルミネッセンス素子は、一方の電極(陰極)101が基板104の一表面に積層され、電極101の表面上に電子注入・輸送層105を介して発光層103が積層され、発光層103上に、ホール注入・輸送層106を介して他方の電極(陽極)102が積層されている。また、この有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板104の上記一表面側に封止部材107を備えている。したがって、この有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光層103で発光した光が、光透過性電極として形成される電極102、透明体で形成される封止部材107を通して放射されるようになっている。
【0004】
反射性の電極101の材料としては、例えば、Al、Zr、Ti、Y、Sc、Ag、Inなどが挙げられている。また、光透過性電極である電極102の材料としては、例えば、インジウム−錫酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)などが挙げられている。
【0005】
また、特許文献1には、基板104が導電性で有る場合には、図24に示すように、一方の電極101を、この基板104で兼用することができる旨が記載されている。
【0006】
なお、特許文献1には、非発光点の発生および成長を防ぐために何らかの乾燥剤を封止部材107の内部に設けることがあるが、乾燥剤については光透過性のものが好ましく、その大きさ或いは配置場所によっては非透過性のものであってもよい旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−331694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図24に示した構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子では、基板104が導電性を有しているので、基板104の他表面側に絶縁層を設けることが考えられる。しかしながら、この場合は、導電性を有する基板104の上記他表面側から基板104へ通電することができなくなってしまう。
【0009】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、一表面側に発光層などが設けられる導電性基板の他表面側に絶縁層を設けながらも簡単な構成で端子部を設けることが可能な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、第1電極を兼ねる導電性基板と、前記導電性基板の一表面側で前記第1電極に対向した第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間にあり少なくとも発光層を含む機能層とを備え、前記第2電極側から光を取り出す有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記導電性基板の他表面側に設けられた絶縁層と、前記導電性基板から前記他表面側に突出した凸部とを備え、前記凸部の少なくとも一部を前記絶縁層から露出させて外部接続用の端子部としてあることを特徴とする。
【0011】
この有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記機能層の前記第2電極側の最表面において前記凸部の投影領域に凹部を有し、前記凹部に、吸湿部を設けてなることが好ましい。
【0012】
この有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記導電性基板の前記一表面において前記凸部の投影領域に凹部を有し、前記凹部に、吸湿部を設けてなることが好ましい。
【0013】
この有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記導電性基板は、少なくとも金属箔からなることが好ましい。
【0014】
この有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第2電極における前記機能層側とは反対側にあり透光性を有する封止層と、前記第2電極と前記封止層との間に介在する透光性の樹脂層とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、信頼性の向上を図ることが可能で且つ光取り出し効率の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1の有機エレクトロルミネッセンス素子の要部概略断面図である。
【図2】実施形態1の有機エレクトロルミネッセンス素子の概略断面図である。
【図3】実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子における第2電極の概略平面図である。
【図4】実施形態1の有機エレクトロルミネッセンス素子の他の要部の概略断面図である。
【図5】実施形態1の有機エレクトロルミネッセンス素子における第2電極の他の構成例の概略平面図である。
【図6】実施形態1の有機エレクトロルミネッセンス素子における第2電極の別の構成例の概略平面図である。
【図7】実施形態2の有機エレクトロルミネッセンスの概略断面図である。
【図8】実施形態3の有機エレクトロルミネッセンスの概略断面図である。
【図9】実施形態4の有機エレクトロルミネッセンスの概略断面図である。
【図10】実施形態5の有機エレクトロルミネッセンスの概略断面図である。
【図11】実施形態6の有機エレクトロルミネッセンスの概略断面図である。
【図12】実施形態7の有機エレクトロルミネッセンスの概略断面図である。
【図13】実施形態8の有機エレクトロルミネッセンスの概略断面図である。
【図14】実施形態9の有機エレクトロルミネッセンスの概略断面図である。
【図15】実施形態10の有機エレクトロルミネッセンスの概略断面図である。
【図16】実施形態11の有機エレクトロルミネッセンスの概略断面図である。
【図17】実施形態12の有機エレクトロルミネッセンスの概略断面図である。
【図18】実施形態13の有機エレクトロルミネッセンスの概略断面図である。
【図19】実施形態14の有機エレクトロルミネッセンスの概略断面図である。
【図20】実施形態15の有機エレクトロルミネッセンスの概略断面図である。
【図21】実施形態16の有機エレクトロルミネッセンスの概略断面図である。
【図22】実施形態17の有機エレクトロルミネッセンスの概略断面図である。
【図23】従来の有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す概略断面図である。
【図24】従来の有機エレクトロルミネッセンス素子の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
以下、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子について図1〜図4に基づいて説明する。
【0018】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、第1電極11を兼ねる導電性基板12と、導電性基板12の一表面側で第1電極11に対向した第2電極50と、第1電極11と第2電極50との間にあり発光層32を含む機能層30とを備えている。
【0019】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、導電性基板12の他表面側に設けられた絶縁層15と、導電性基板12から上記他表面側に突出した凸部12aとを備えている。そして、この有機エレクトロルミネッセンス素子は、凸部12aの一部を絶縁層15(以下、第1絶縁層15とも称する)から露出させて外部接続用の端子部12aaとしてある。
【0020】
この有機エレクトロルミネッセンス素子は、機能層30の第2電極50側の最表面において凸部12aの投影領域に凹部30bを有しており、この凹部30bに、吸湿部100を設けてあることが好ましい。
【0021】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、機能層30の側面側に設けられ第2電極50と第1電極11とを絶縁する絶縁層60(以下、第2絶縁層60とも称する)を備えている。
【0022】
第2電極50は、機能層30からの光を取り出すことが可能となるように構成されている。ここで、第2電極50は、機能層30に接する導電性高分子層39と、この導電性高分子層39における機能層30側とは反対側に位置し機能層30からの光の取り出し用の開口部41(図3および図4参照)を有する電極パターン40とを備えていることが好ましい。要するに、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50が、機能層30からの光の取り出し用の開口部41を有していることが好ましい。
【0023】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、第1電極11および第2電極50の電極パターン40それぞれの抵抗率を、透明導電性酸化物(Transparent Conducting Oxide:TCO)の抵抗率よりも低くしてある。透明導電性酸化物としては、例えば、ITO、AZO、GZO、IZOなどがある。
【0024】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、導電性基板12の上記一表面側に対向配置され透光性を有する封止層(カバー基板)70と、第2電極50と封止層70との間に介在する透光性の樹脂層90とを備えている。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50側から樹脂層90および封止層70を通して光を取り出すことが可能となる。樹脂層90は、導電性高分子層39の屈折率以上の屈折率を有することが好ましい。
【0025】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、上述の端子部12aa(以下、第1端子部12aaとも称する)と、第2電極50に引出し配線46を介して電気的に接続された端子部47(以下、第2端子部47とも称する)とを備えている。ここで、引出し配線46および第2端子部47は、導電性基板12の上記一表面側に設けられている。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、上述の第2の絶縁層60が、導電性基板12の上記一表面と機能層30の側面と、機能層30における第2電極50側の表面の外周部とに跨って形成されている。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子は、引出し配線46と、機能層30、第1電極11とが、第2の絶縁層60によって電気的に絶縁されている。
【0026】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、導電性基板12の周部と封止層70の周部との間に介在する枠状(本実施形態では、矩形枠状)のフレーム部80とを備えていることが好ましい。また、樹脂層90は、導電性基板12と封止層70とフレーム部80とで囲まれる空間において、第1電極11、機能層30、第2電極50などからなる素子部1を覆うように設けることが好ましい。
【0027】
以下、有機エレクトロルミネッセンス素子の各構成要素について詳細に説明する。
【0028】
導電性基板12は、平面視形状を矩形状としてある。ここで、導電性基板12の平面視形状は、矩形状に限らず、例えば、矩形状以外の多角形状、円形状などでもよい。
【0029】
第1電極11を兼ねる導電性基板12は、金属箔10と、金属箔10の一面に形成した導電層20とで構成してあるが、これに限らず、金属箔10のみで構成してもよい。要するに、第1電極11を金属箔10のみにより構成することも可能である。
【0030】
金属箔10の材料としては、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウムなどを採用することができる。また、第1電極11が、陰極を構成する場合、導電層20の材料としては、例えば、アルミニウム、銀、マグネシウム、金、銅、クロム、モリブデン、パラジウム、錫など、およびこれらと他の金属との合金、例えばマグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金を例として挙げることができる。また、金属、金属酸化物など、およびこれらと他の金属との混合物、例えば、酸化アルミニウムからなる極薄膜(ここでは、トンネル注入により電子を流すことが可能な1nm以下の薄膜)とアルミニウムからなる薄膜との積層膜なども使用可能である。第1電極11が反射電極となるので、陰極を反射電極とする場合、陰極の材料としては、発光層32から放射される光に対する反射率が高く、且つ、抵抗率の低い金属が好ましく、アルミニウムや銀が好ましい。
【0031】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、第1電極11が陰極を構成し、第2電極50が陽極を構成している。この場合、第1電極11から機能層30へ注入する第1キャリアは電子であり、第2電極50から機能層30へ注入する第2キャリアは正孔である。機能層30は、第1電極11側から順に、発光層32、第2キャリア輸送層33、第2キャリア注入層34を備えている。ここにおいて、第2キャリア輸送層33、第2キャリア注入層34は、それぞれ、ホール輸送層、ホール注入層である。なお、第1電極11が陽極を構成し、第2電極50が陰極を構成する場合には、例えば、第2キャリア輸送層33として電子輸送層を、第2キャリア注入層34として電子注入層を採用すればよい。
【0032】
上述の機能層30の構造は、図1の例に限らず、例えば、第1電極11と発光層32との間に、第1キャリア注入層、第1キャリア輸送層を設けたり、発光層32と第2キャリア輸送層33との間にインターレイヤーを設けたりした構造でもよい。第1電極11が陰極を構成し、第2電極50が陽極を構成している場合、第1キャリア注入層は、電子注入層であり、第1キャリア輸送層は、電子輸送層である。
【0033】
また、機能層30は、少なくとも発光層32を含んでいればよく(つまり、機能層30は、発光層32のみでもよく)、発光層32以外の、第1キャリア注入層、第1キャリア輸送層、インターレイヤー、第2キャリア輸送層33、第2キャリア注入層34などは適宜設ければよい。発光層32は、単層構造でも多層構造でもよい。例えば、所望の発光色が白色の場合には、発光層中に赤色、緑色、青色の3種類のドーパント色素をドーピングするようにしてもよいし、青色正孔輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよいし、青色電子輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよい。
【0034】
発光層32の材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体など、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、色素体、金属錯体系発光材料を高分子化したものなどや、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、ピラン、キナクリドン、ルブレン、およびこれらの誘導体、あるいは、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、およびこれらの発光性化合物からなる基を分子の一部分に有する化合物などが挙げられる。また、上記化合物に代表される蛍光色素由来の化合物のみならず、いわゆる燐光発光材料、例えばイリジウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体、ユーロピウム錯体などの発光材料、又はそれらを分子内に有する化合物若しくは高分子も好適に用いることができる。これらの材料は、必要に応じて、適宜選択して用いることができる。発光層32は、塗布法(例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法など)のような湿式プロセスによって成膜することが好ましい。ただし、発光層32の成膜方法は、塗布法に限らず、例えば、真空蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって発光層32を成膜してもよい。
【0035】
電子注入層の材料は、例えば、フッ化リチウムやフッ化マグネシウムなどの金属フッ化物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどに代表される金属塩化物などの金属ハロゲン化物や、チタン、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウムなどの酸化物、などを用いることができる。これらの材料の場合、電子注入層は、真空蒸着法により形成することができる。また、電子注入層の材料は、例えば、電子注入を促進させるドーパント(アルカリ金属など)を混合した有機半導体材料を用いることができる。このような材料の場合、電子注入層は、塗布法により形成することができる。
【0036】
また、電子輸送層の材料は、電子輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、Alq等の電子輸送性材料として知られる金属錯体や、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、テトラジン誘導体、オキサジアゾール誘導体などのヘテロ環を有する化合物などが挙げられるが、この限りではなく、一般に知られる任意の電子輸送材料を用いることが可能である。
【0037】
ホール輸送層の材料としては、LUMO(Lowest UnoccupiedMolecular Orbital)準位が小さい低分子材料や高分子材料を用いることができる。例えば、ポリビニルカルバゾール(PVCz)や、ポリピリジン、ポリアニリンなどの側鎖や主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体などの芳香族アミンを含むポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、ホール輸送層の材料としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを用いることが可能である。
【0038】
ホール注入層の材料としては、例えば、チオフェン、トリフェニルメタン、ヒドラゾリン、アミールアミン、ヒドラゾン、スチルベン、トリフェニルアミンなどを含む有機材料が挙げられる。具体的には、たとえば、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、TPDなどの芳香族アミン誘導体などで、これらの材料を単独で用いてもよいし、2種類以上の材料を組み合わせて用いてもよい。このようなホール注入層は、塗布法(スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法など)のような湿式プロセスによって成膜することができる。
【0039】
インターレイヤーは、発光層32側からの第2電極50側への第1キャリア(ここでは、電子)の漏れを抑制する第1キャリア障壁(ここでは、電子障壁)としてのキャリアブロッキング機能(ここでは、電子ブロッキング機能)を有することが好ましく、更に、第2キャリア(ここでは、正孔)を発光層32へ輸送する機能、発光層32の励起状態の消光を抑制する機能などを有していることが好ましい。なお、本実施形態では、インターレイヤーが、発光層32側からの電子の漏れを抑制する電子ブロッキング層を構成している。
【0040】
有機エレクトロルミネッセンス素子では、インターレイヤーを設けることにより、発光効率の向上および長寿命化を図ることが可能となる。インターレイヤーの材料としては、例えば、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、トリフェニルジアミン誘導体などを用いることができる。このようなインターレイヤーは、塗布法(スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法など)のような湿式プロセスによって成膜することができる。
【0041】
また、陰極は、機能層30中に第1電荷である電子(第1キャリア)を注入するための電極である。第1電極11が陰極の場合、陰極の材料としては、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が1.9eV以上5eV以下のものを用いるのが好ましい。陰極の電極材料としては、例えば、アルミニウム、銀、マグネシウム、金、銅、クロム、モリブデン、パラジウム、錫など、およびこれらと他の金属との合金、例えばマグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金を例として挙げることができる。また、金属、金属酸化物など、およびこれらと他の金属との混合物、例えば、酸化アルミニウムからなる極薄膜(ここでは、トンネル注入により電子を流すことが可能な1nm以下の薄膜)とアルミニウムからなる薄膜との積層膜なども使用可能である。陰極を反射電極とする場合、陰極の材料としては、発光層32から放射される光に対する反射率が高く、且つ、抵抗率の低い金属が好ましく、アルミニウムや銀が好ましい。なお、第1電極11が、機能層30中に第2電荷であるホール(第2キャリア)を注入するための電極である陽極を構成する場合、第1電極11の材料としては、仕事関数の大きい金属を用いることが好ましく、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が4eV以上6eV以下のものを用いるのが好ましい。
【0042】
第2電極50の導電性高分子層39の材料としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリカルバゾールなどの導電性高分子材料を用いることができる。また、導電性高分子層39の導電性高分子材料としては、導電性を高めるために、例えば、スルホン酸、ルイス酸、プロトン酸、アルカリ金属、アルカリ土類金属などのドーパントをドーピングしたものを採用してもよい。ここで、導電性高分子層39は、抵抗率がより低いほうが好ましく、抵抗率が低いほど、横方向(面内方向)への通電性が向上し、発光層32に流れる電流の面内ばらつきを低減することが可能となり、輝度むらを低減することが可能となる。
【0043】
第2電極50の電極パターン40は、金属の粉末と有機バインダとを含む電極からなる。この種の金属としては、例えば、銀、金、銅などを採用することができる。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50が、導電性透明酸化物により形成された薄膜の場合に比べて、第2電極50の電極パターン40の抵抗率およびシート抵抗を小さくすることが可能となり、輝度むらを低減することが可能となる。なお、第2電極50の電極パターン40の導電性材料としては、金属の代わりに、合金や、カーボンブラックなどを用いることも可能である。
【0044】
電極パターン40は、例えば、金属の粉末に有機バインダおよび有機溶剤を混合させたペースト(印刷インク)を、例えばスクリーン印刷法、グラビア印刷法などにより印刷して形成することができる。有機バインダとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン、ポリアクリルニトリル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ジアクリルフタレート樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、その他の熱可塑性樹脂や、これらの樹脂を構成する単量体の2種以上の共重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
また、引出し配線46および第2端子部47の材料としては、第2電極50の電極パターン40と同じ材料を採用しているが、特に限定するものではない。引出し配線46および第2端子部47の材料と第2電極50の電極パターン40の材料とが同じ場合には、引出し配線46および第2端子部47と電極パターン40とを同時に形成することが可能となる。第2端子部47は、単層構造に限らず、2層以上の積層構造としてもよい。
【0046】
なお、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光層32の膜厚を60〜200nm、第2キャリア輸送層33の膜厚を5〜30nm、第2キャリア注入層34の膜厚を10〜60nm、導電性高分子層39の膜厚を200〜400nmにそれぞれ設定してあるが、これらの数値は一例であって、特に限定するものではない。
【0047】
電極パターン40は、図1および図3に示すように、格子状(網状)に形成されており、複数(図3に示した例では、6×6=36)の開口部41を有している。ここで、図3に示した電極パターン40は、各開口部41の各々の平面視形状が正方形状である。要するに、図3に示した電極パターン40は、正方格子状に形成されている。
【0048】
第2電極50は、正方格子状の電極パターン40の寸法に関して、例えば、線幅L1(図4参照)を1μm〜100μm、高さH1(図4参照)を50nm〜100μm、ピッチP1(図4参照)を100μm〜2000μmとすればよい。ただし、第2電極50の電極パターン40の線幅L1、高さH1およびピッチP1それぞれの数値範囲は、特に限定するものではなく、素子部1の平面サイズに基づいて適宜設定すればよい。ここにおいて、第2電極50の電極パターン40の線幅L1については、発光層32で発光する光の利用効率の観点からは狭い方が好ましく、第2電極50の低抵抗化によって輝度むらを低減するという観点からは広い方が好ましいので、有機エレクトロルミネッセンス素子の平面サイズなどに基づいて適宜設定することが好ましい。また、第2電極50の電極パターン40の高さH1については、第2電極50の低抵抗化の観点、電極パターン40をスクリーン印刷法などの塗布法により形成する際の電極パターン40の材料の使用効率(材料使用効率)の観点、機能層30から放射される光の放射角の観点などから、100nm以上10μm以下が、より好ましい。
【0049】
また、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、電極パターン40における各開口部41を、図2および図4に示したように、機能層30から離れるにつれて開口面積が徐々に大きくなる開口形状としてある。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子は、機能層30から放射される光の広がり角を大きくすることが可能になり、輝度むらを、より低減することが可能となる。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50の電極パターン40での反射損失や吸収損失を低減することが可能となり、外部量子効率のより一層の向上を図ることが可能となる。
【0050】
電極パターン40を格子状の形状とする場合、各開口部41の各々の平面視形状は正方形状に限らず、例えば、長方形状や正三角形状や正六角形状の形状としてもよい。
【0051】
電極パターン40は、各開口部41の各々の平面視形状が正三角形状の場合、三角格子状の形状となり、各開口部41の各々の平面視形状が正六角形状の場合、六角格子状の形状となる。なお、電極パターン40は、格子状の形状に限らず、例えば、櫛形状の形状でもよいし、2つの櫛形状の電極パターンにより構成してもよい。また、電極パターン40は、開口部41の数も特に限定するものではなく、複数に限らず、1つでもよい。例えば、電極パターン40を櫛形状の形状としたり、2つの櫛形状の電極パターンにより構成とした場合などは、開口部41の数を1つとすることが可能である。
【0052】
また、電極パターン40は、例えば、図5に示すような平面形状としてもよい。すなわち、電極パターン40は、平面視において、直線状の細線部44の線幅を一定として、電極パターン40における周部から中心部に近づくにつれて隣り合う細線部44間の間隔が狭くなり開口部41の開口面積が小さくなる形状としてもよい。有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50の電極パターン40の平面形状を図5のような平面形状とすることにより、図3のような平面形状とした場合に比べて、第2電極50において第2端子部47(図2参照)からの距離が周部よりも遠い中央部での発光効率を向上させることが可能となり、外部量子効率の向上を図ることが可能となる。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50の電極パターン40の平面形状を図5のような形状とすることにより、図3のような平面形状とした場合に比べて、機能層30のうち第2端子部47からの距離が近い周部での電流集中を抑制することが可能となるから、長寿命化を図ることが可能となる。
【0053】
また、第2電極50の電極パターン40は、例えば、図6に示すような平面形状としてもよい。すなわち、電極パターン40は、平面視において、電極パターン40における最外周にある4つの第1細線部42の線幅と、図6において左右方向の中央にある1つの第2細線部43の線幅とを、第1細線部42と第2細線部43との間にある細線部(第3細線部)44よりも幅広としてある。有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50の電極パターン40を図6のような平面形状とすることにより、図3のような平面形状の場合に比べて、第2電極50において第2端子部47(図2参照)からの距離が周部よりも遠い中央部での発光効率を向上させることが可能となり、外部量子効率の向上を図ることが可能となる。なお、電極パターン40は、図6のような平面形状とする場合、相対的に線幅の広い第1細線部42および第2細線部43の高さを第3細線部44の高さよりも高くすることにより、第1細線部42および第2細線部43それぞれの、より一層の低抵抗化を図ることが可能となる。
【0054】
カバー基板である封止層70としては、ガラス基板を用いているが、これに限らず、例えば、プラスチック板などを用いてもよい。ガラス基板の材料としては、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどを採用することができる。また、プラスチック板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネートなどを採用することができる。
【0055】
本実施形態では、封止層70として、平板状のものを用いているが、これに限らず、導電性基板12との対向面に、上述の素子部1を収納する収納凹所を形成したものを用い、上記対向面における収納凹所の周部を全周に亘って導電性基板12側と接合するようにしてもよい。この場合は、別部材のフレーム部80を用いる必要がなくなるという利点がある。一方、平板状の封止層70と枠状のフレーム部80とを別部材により構成している場合には、封止層70に要求される光学的な物性(光透過率、屈折率など)と、フレーム部80に要求される物性(ガスバリア性など)との両方の要求を各別に満たす材料を採用することが可能になるという利点がある。
【0056】
フレーム部80と導電性基板12の上記一表面側とを接合する第1接合材料としては、エポキシ樹脂を用いているが、これに限らず、例えば、アクリル樹脂などを採用してもよい。第1接合材料として用いるエポキシ樹脂やアクリル樹脂は、例えば、紫外線硬化型のものでもよいし、熱硬化型のものでもよい。また、第1接合材料として、エポキシ樹脂にフィラー(例えば、シリカ、アルミナなど)を含有させたものを用いてもよい。ここで、フレーム部80は、導電性基板12の上記一表面側に対して、フレーム部80における導電性基板12側との対向面を全周に亘って気密的に接合してある。また、フレーム部80と封止層70とを接合する第2接合材料としては、エポキシ樹脂を用いているが、これに限らず、例えば、アクリル樹脂、フリットガラスなどを採用してもよい。第2接合材料として用いるエポキシ樹脂やアクリル樹脂は、例えば、紫外線硬化型のものでもよいし、熱硬化型のものでもよい。また、第2接合材料として、エポキシ樹脂にフィラー(例えば、シリカ、アルミナなど)を含有させたものを用いてもよい。ここで、フレーム部80は、封止層70に対して、フレーム部80における封止層70との対向面を全周に亘って気密的に接合してある。
【0057】
ところで、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、樹脂層90の材料である透光性樹脂として、第2電極50の導電性高分子層39の材料の屈折率以上の屈折率を有するものを用いることが好ましい。このような透光性樹脂としては、例えば、屈折率が高くなるように調整されたイミド系樹脂などを用いることができる。
【0058】
第2絶縁層60の材料としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。
【0059】
吸湿部100の材料としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの光硬化性樹脂に吸湿剤を含有させたものを用いることができる。
【0060】
吸湿剤としては、アルカリ土類金属の酸化物や硫酸塩が好ましい。アルカリ土類金属の酸化物としては、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウムなどを挙げることができる。また、硫酸塩としては、例えば、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸ガリウム、硫酸チタン、硫酸ニッケルなどを挙げることができる。また、吸湿剤としては、その他に、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、酸化マグネシウムなどを用いることができる。また、吸湿剤としては、例えば、シリカゲルや、ポリビニルアルコールなどの吸湿性を有する有機化合物を用いることもできる。吸湿剤は、これらに限定されるものではないが、これらの中でも、酸化カルシウム、酸化バリウム、シリカゲルなどが特に好ましい。なお、吸湿部100中の吸湿剤の含有率は、特に限定するものではない。また、吸湿部100は、吸湿剤のみにより形成してもよい。
【0061】
導電性基板12の上記他表面側に設けられた絶縁層15の材料としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。
【0062】
また、導電性基板12から上記他表面側に突出した凸部12aは、金属箔10の一部を断面V字状に加工することによって形成することができる。なお、凸部12aの形状は特に限定するものではない。
【0063】
以上説明した本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、第1電極11を兼ねる導電性基板12と、導電性基板12の上記一表面側で第1電極11に対向した第2電極50と、第1電極11と第2電極50との間にあり少なくとも発光層32を含む機能層30とを備えている。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、導電性基板12の上記他表面側に設けられた絶縁層15と、導電性基板12から上記他表面側に突出した凸部12aとを備え、凸部12aの一部を絶縁層15から露出させて外部接続用の端子部12aaとしてある。
【0064】
しかして、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、上記一表面側に発光層32などが設けられる導電性基板12の上記他表面側に絶縁層15を設けながらも簡単な構成で端子部12aaを設けることが可能となる。
【0065】
ところで、図24の構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子では、封止部材107(図23参照)の内部に設ける乾燥剤として光透過性のものを用いたとしても、散乱損失や吸収損失などに起因して光取り出し効率が低下してしまう懸念がある。また、この場合には、乾燥剤の材料の選択肢が少なくなってしまう。
【0066】
これに対して、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、機能層30の第2電極50側の最表面において凸部12aの投影領域に凹部30bを有しており、この凹部30bに、吸湿部100を設けてある。すなわち、吸湿部100は、機能層30の凹部30bの内面と封止層70との間に設けられており、機能層30、封止層70、第2電極50および樹脂層90の各々と接触している。ここで、機能層30の最表面において凹部30bの形成されている領域は小さい方が好ましい。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子では、信頼性の向上を図ることが可能で且つ光取り出し効率の向上を図ることが可能となる。機能層30の第2電極50側の最表面において凸部12aの投影領域にある凹部30bは、導電性基板12の上記一表面において上記他表面の凸部12aに対応する凹部12bの形状を反映して形成される。すなわち、機能層30の厚み寸法が凹部12bの深さ寸法よりも小さいので、凹部12bの投影領域に凹部30bが形成されることとなる。
【0067】
また、第2電極50が透明導電性酸化物からなる透明電極により構成されている場合には、第2電極50のシート抵抗が、第1電極11のシート抵抗に比べて高いため、第2電極50での電位勾配が大きくなって、輝度の面内ばらつきが大きくなる懸念がある。しかしながら、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、第2電極50が、機能層30に接する導電性高分子層39と、導電性高分子層39における機能層30側とは反対側に位置し機能層30からの光の取り出し用の開口部41を有する電極パターン40とを備えている。したがって、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、第2電極50が透明導電性酸化物からなる透明電極により構成されている場合に比べて、輝度むらの低減を図ることが可能で且つ光取り出し効率の向上を図ることが可能となる。さらに、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、導電性基板12の上記一表面側に対向配置され透光性を有する封止層70と、第2電極50と封止層70との間に介在する透光性の樹脂層90とを備えている。したがって、有機エレクトロルミネッセンス素子は、信頼性の向上を図ることが可能となる。また、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、樹脂層90が、導電性高分子層39の屈折率以上の屈折率を有しているので、光取り出し効率の向上を図ることが可能となる。
【0068】
また、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、導電性基板12が、少なくとも金属箔10からなることが好ましい。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子は、機能層30などで発生した熱が導電性基板12を通して放熱されやすくなるから、信頼性の向上を図ることが可能となる。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、導電性基板12が少なくとも金属箔10からなることにより、機能層30の温度の面内均一性が向上し、輝度むらの低減を図ることが可能となる。
【0069】
また、この有機エレクトロルミネッセンス素子においては、第2電極50が陽極であり、機能層30が、発光層32よりも第2電極50側にあるホール注入層34を含んでいることが好ましい。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光層32へ第2キャリアであるホールを、より効率良く注入することが可能となり、結果的に外部量子効率の向上を図ることが可能となる。
【0070】
また、封止層70における外面側(導電性基板12側とは反対の面側)には、発光層32から放射された光の上記外面での反射を抑制する光取出し構造部(図示せず)を備えていることが好ましい。このような光取出し構造部としては、例えば、2次元周期構造を有した凹凸構造部が挙げられる。このような2次元周期構造の周期は、発光層32で発光する光の波長が例えば300〜800nmの範囲内にある場合、媒質内の波長をλ(真空中の波長を媒質の屈折率で除した値)とすれば、波長λの1/4〜10倍の範囲で適宜設定することが望ましい。このような凹凸構造部は、例えば、封止層70の上記外面側に、例えば、熱インプリント法(熱ナノインプリント法)、光インプリント法(光ナノインプリント法)などのインプリント法により、予め形成することが可能である。また、封止層70の材料によっては、封止層70を射出成形により形成するようにし、射出成形時に適宜の金型を用いて、封止層70に凹凸構造部を直接形成することも可能である。また、凹凸構造部は、封止層70とは別部材により構成することも可能であり、例えば、プリズムシート(例えば、株式会社きもと製のライトアップ(登録商標)GM3のような光拡散フィルムなど)により構成することができる。
【0071】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、上述の光取出し構造部を備えることにより、発光層32から放射され封止層70の上記外面側まで到達した光の反射ロスを低減でき、光取り出し効率の向上を図ることが可能となる。
【0072】
(実施形態2)
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構成は実施形態1と略同じであり、図7に示すように、実施形態1とは吸湿部100を設けてある位置が相違する。
【0073】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、実施形態1と同様、導電性基板12の上記一表面において凸部12aの投影領域に凹部12bを有している。ここにおいて、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、この凹部12bに、吸湿部100を設けてある点が実施形態1とは相違する。本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、この凹部12bが吸湿部100により埋め込まれているので、実施形態1に比べて機能層30の段差を低減することが可能となり、第2電極50と第1電極11との短絡をより確実に防止することが可能となり、信頼性を向上させることが可能となる。
【0074】
(実施形態3)
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構成は実施形態1と略同じであり、図8に示すように、実施形態1とは吸湿部100を設けてある位置が相違する。
【0075】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、実施形態1と同様、導電性基板12の上記一表面において凸部12aの投影領域に凹部12bを有し、機能層30の第2電極50側の最表面において凸部12aの投影領域に凹部30bを有している。さらに、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、樹脂層90の封止層70側の表面において凸部12aの投影領域に凹部95を有している。実施形態1では、機能層30の凹部30bの内面と封止層70との間に吸湿部100を設けてあるのに対して、本実施形態では、樹脂層90の凹部95に、吸湿部100を設けてある。ここで、吸湿部100は、樹脂層90の凹部95の内面と封止層70との間に設けられており、樹脂層90および封止層70の各々と接触している。
【0076】
本実施形態では、機能層30の凹部30bに比べて小さな樹脂層90の凹部95に吸湿剤100が設けられているので、光取り出し効率の、より一層の向上を図ることが可能となる。
【0077】
(実施形態4)
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構成は実施形態3と略同じであり、図9に示すように、第2電極50と第1電極11とを絶縁する第2絶縁層60が、機能層30の凹部30bの内面および機能層30の最表面における凹部30bの周部にまで設けられている点が相違する。
【0078】
これにより、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、実施形態3に比べて、第2電極50と第1電極11との短絡をより確実に防止することが可能となる。
【0079】
(実施形態5)
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構成は実施形態3と略同じであり、図10に示すように、吸湿剤100と封止層70との間に樹脂層90の一部が介在しており、吸湿剤100の全体が樹脂層90により覆われている点が相違する。すなわち、本実施形態では、吸湿部100が封止層70とは接触していない点が実施形態3と相違する。
【0080】
これにより、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、吸湿剤100と封止層70とを接触させて接着する必要がないので、吸湿剤100の材料の選択肢が多くなる。
【0081】
(実施形態6)
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構成は実施形態5と略同じであり、図11に示すように、第2電極50と第1電極11とを絶縁する第2絶縁層60が、機能層30の凹部30bの内面および機能層30の最表面における凹部30bの周部にまで設けられている点が相違する。
【0082】
これにより、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、実施形態5に比べて、第2電極50と第1電極11との短絡をより確実に防止することが可能となる。
【0083】
(実施形態7)
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構成は実施形態1と略同じであり、図12に示すように、実施形態1とは吸湿部100を設けてある位置が相違する。
【0084】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、実施形態1と同様、導電性基板12の上記一表面において凸部12aの投影領域に凹部12bを有し、機能層30の第2電極50側の最表面において凸部12aの投影領域に凹部30bを有している。さらに、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンスそしは、第2電極50の樹脂層90側の表面において凸部12aの投影領域に凹部55を有している。実施形態1では、機能層30の凹部30bの内面と封止層70との間に吸湿部100を設けてあるのに対して、本実施形態では、第2電極50の凹部55に、吸湿部100を設けてある。ここで、吸湿部100は、第2電極50の凹部55の内面と樹脂層90との間に設けられており、第2電極50および樹脂層90の各々と接触している。
【0085】
本実施形態では、機能層30の凹部30bに比べて小さな第2電極50の凹部55に吸湿剤100が設けられているので、光取り出し効率の、より一層の向上を図ることが可能となる。
【0086】
(実施形態8)
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構成は実施形態7と略同じであり、図13に示すように、第2電極50と第1電極11とを絶縁する第2絶縁層60が、機能層30の凹部30bの内面および機能層30の最表面における凹部30bの周部にまで設けられている点が相違する。
【0087】
これにより、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、実施形態7に比べて、第2電極50と第1電極11との短絡をより確実に防止することが可能となる。
【0088】
(実施形態9)
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構成は実施形態4と略同じであり、図14に示すように、機能層30が、導電性基板12の上記一表面における凹部12bの内面に形成されていない点などが相違する。ここにおいて、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、凹部12bの内面および導電性基板12の上記一表面における凹部12bの周部に、第2電極50と第1電極11とを絶縁する第2絶縁層60が形成されている。
【0089】
これにより、本実施形態の有機エレクトルミネッセンス素子では、導電性基板12の凹部12bの箇所で第1電極11と機能層30と第2電極50との積層構造が形成されないから、当該箇所での機能層30の絶縁破壊や劣化を防止することが可能となり、実施形態4に比べて信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0090】
(実施形態10)
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構成は実施形態9と略同じであり、図15に示すように、第2絶縁層60および第2電極50が、導電性基板12の凹部12bの箇所で形成されていない点が相違する。ここにおいて、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、凹部12bの内面が樹脂層90と接している。
【0091】
これにより、本実施形態の有機エレクトルミネッセンス素子では、実施形態9に比べて、第1電極11と第2電極50との短絡をより確実に防止することが可能となり、信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0092】
(実施形態11)
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構成は実施形態10と略同じであり、図16に示すように、凹部12bの内面および導電性基板12の上記一表面における凹部12bの周部に、第2電極50と第1電極11とを絶縁する第2絶縁層60が形成されている点が相違する。ここにおいて、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、第2絶縁層60のうち凹部12bの内面に形成された部位が、樹脂層90と接している。
【0093】
本実施形態の有機エレクトルミネッセンス素子では、実施形態10に比べて、第1電極11と第2電極50との短絡をより確実に防止することが可能となり、信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0094】
(実施形態12)
本実施形態の有機エレクトルミネッセンス素子の基本構成は実施形態5と略同じであり、図17に示すように、機能層30が、導電性基板12の上記一表面における凹部12bの内面に形成されていない点などが相違する。ここにおいて、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、凹部12bの内面および導電性基板12の上記一表面における凹部12bの周部に、第2電極50と第1電極11とを絶縁する第2絶縁層60が形成されている。
【0095】
これにより、本実施形態の有機エレクトルミネッセンス素子では、導電性基板12の凹部12bの箇所で第1電極11と機能層30と第2電極50との積層構造が形成されないから、当該箇所での機能層30の絶縁破壊や劣化を防止することが可能となり、実施形態5に比べて信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0096】
(実施形態13)
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構成は実施形態12と略同じであり、図18に示すように、第2絶縁層60および第2電極50が、導電性基板12の凹部12bの箇所で形成されていない点が相違する。ここにおいて、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、凹部12bの内面が樹脂層90と接している。
【0097】
これにより、本実施形態の有機エレクトルミネッセンス素子では、実施形態12に比べて、第1電極11と第2電極50との短絡をより確実に防止することが可能となり、信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0098】
(実施形態14)
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構成は実施形態13と略同じであり、図19に示すように、凹部12bの内面および導電性基板12の上記一表面における凹部12bの周部に、第2電極50と第1電極11とを絶縁する第2絶縁層60が形成されている点が相違する。ここにおいて、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、第2絶縁層60のうち凹部12bの内面に形成された部位が、樹脂層90と接している。
【0099】
本実施形態の有機エレクトルミネッセンス素子では、実施形態13に比べて、第1電極11と第2電極50との短絡をより確実に防止することが可能となり、信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0100】
(実施形態15)
本実施形態の有機エレクトルミネッセンス素子の基本構成は実施形態8と略同じであり、図20に示すように、機能層30が、導電性基板12の上記一表面における凹部12bの内面に形成されていない点などが相違する。ここにおいて、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、凹部12bの内面および導電性基板12の上記一表面における凹部12bの周部に、第2電極50と第1電極11とを絶縁する第2絶縁層60が形成されている。
【0101】
これにより、本実施形態の有機エレクトルミネッセンス素子では、導電性基板12の凹部12bの箇所で第1電極11と機能層30と第2電極50との積層構造が形成されないから、当該箇所での機能層30の絶縁破壊や劣化を防止することが可能となり、実施形態8に比べて信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0102】
(実施形態16)
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構成は実施形態15と略同じであり、図21に示すように、第2絶縁層60および第2電極50が、導電性基板12の凹部12bの箇所で形成されていない点が相違する。ここにおいて、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、凹部12bの内面が吸湿部100と接している。
【0103】
これにより、本実施形態の有機エレクトルミネッセンス素子では、実施形態12に比べて、第1電極11と第2電極50との短絡をより確実に防止することが可能となり、信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0104】
(実施形態17)
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構成は実施形態16と略同じであり、図22に示すように、凹部12bの内面および導電性基板12の上記一表面における凹部12bの周部に、第2電極50と第1電極11とを絶縁する第2絶縁層60が形成されている点が相違する。ここにおいて、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、第2絶縁層60のうち凹部12bの内面に形成された部位が、吸湿部100と接している。
【0105】
本実施形態の有機エレクトルミネッセンス素子では、実施形態16に比べて、第1電極11と第2電極50との短絡をより確実に防止することが可能となり、信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0106】
上述の各実施形態で説明した有機エレクトロルミネッセンス素子は、例えば、照明用の有機エレクトロルミネッセンス素子として好適に用いることができるが、照明用に限らず、他の用途に用いることも可能である。
【0107】
なお、上述の各実施形態において説明した各図は、模式的なものであり、各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際のものの寸法比を反映しているとは限らない。
【符号の説明】
【0108】
10 金属箔
11 第1電極
12 導電性基板
12a 凸部
12aa 端子部
12b 凹部
15 絶縁層
30 機能層
30b 凹部
32 発光層
50 第2電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極を兼ねる導電性基板と、前記導電性基板の一表面側で前記第1電極に対向した第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間にあり少なくとも発光層を含む機能層とを備え、前記第2電極側から光を取り出す有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記導電性基板の他表面側に設けられた絶縁層と、前記導電性基板から前記他表面側に突出した凸部とを備え、前記凸部の少なくとも一部を前記絶縁層から露出させて外部接続用の端子部としてあることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記機能層の前記第2電極側の最表面において前記凸部の投影領域に凹部を有し、前記凹部に、吸湿部を設けてなることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記導電性基板の前記一表面において前記凸部の投影領域に凹部を有し、前記凹部に、吸湿部を設けてなることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記導電性基板は、少なくとも金属箔からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記第2電極における前記機能層側とは反対側にあり透光性を有する封止層と、前記第2電極と前記封止層との間に介在する透光性の樹脂層とを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−30334(P2013−30334A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165077(P2011−165077)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】