有機エレクトロルミネッセンス表示装置用基板、表示装置およびその製造方法
【課題】発注から完成までに要する時間が短くかつコントラストが大きく、信頼性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】、基板と、前記基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成され、酸素の透過が可能な第2の電極とを備え、前記発光層が、光と前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により選択的に形成された酸化物層を形成しており、前記酸化物層の存在する領域は非発光領域を構成し、画像パターンを有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを特徴とする。
【解決手段】、基板と、前記基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成され、酸素の透過が可能な第2の電極とを備え、前記発光層が、光と前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により選択的に形成された酸化物層を形成しており、前記酸化物層の存在する領域は非発光領域を構成し、画像パターンを有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用基板、表示装置およびその製造方法に係り、特にそのパターン形成に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス素子は、種々の表示装置や光源あるいは液晶のバックライト、光通信機器における発光素子などに広く利用されている。エレクトロルミネッセンス素子は、固体蛍光性物質の電界発光を利用した発光デバイスであり、現在は無機系材料を発光物質として用いた、無機エレクトロルミネッセンス素子が実用化され、液晶ディスプレイのバックライトやフラットディスプレイなど、広範囲への応用が展開され始めている。しかしながら、無機エレクトロルミネッセンス素子は発光に必要な電圧が100V以上と高く、しかも青色発光が困難であるため、RGBの三原色によるフルカラー化は困難であった。
【0003】
一方、有機材料を用いたエレクトロルミネッセンス素子についても古くからさまざまな研究が重ねられてきたが、発光効率が悪いことから本格的な実用化には進展していなかった。しかしながら、近年になって、有機材料を正孔輸送層と発光の2層に分けた機能分離型の積層構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子が提案され、10V以下の低電圧で高輝度を得ることができることが証明された。以降、有機エレクトロルミネッセンス素子が大きな注目を浴びるようになり、現在も機能分離型の積層構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の研究が広く展開されている。
【0004】
通常の有機エレクトロルミネッセンス素子について、説明する。有機エレクトロルミネッセンス素子は、通常、透光性のガラス基板表面に、スパッタリング法や抵抗加熱蒸着法などによって形成された酸化インジウム錫(ITO)などの透明導電膜からなる第1の電極と、該第1の電極上に形成されたポリ(2-メトキシ−5−ドデシロキ−p−フェニレンビニレン)(poly(2-methoky−5−dodecyloxy−p−phenylene vinylene))(以下MDOPPVと略称する)からなる発光層と、発光層上に真空蒸着法などにより形成されたAlなどの金属製の第2の電極とを順次積層して構成されている。
【0005】
かかる構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子に直流電圧を印加すると、第1の電極から発光層に正孔が注入され、第2の電極から発光層に電子が注入される。発光層では正孔と電子の再結合が生じ、これに伴って生成される励起子が励起状態から基底状態に移行する際に発光現象が起こる。この場合は、発光層にMDOPPVを用いることにより黄色の発光が得られる。また有機化合物の分子構造を変更することによって理論的には任意の発光色を得ることも可能である。
【0006】
ところで、この発光層に用いられているMDOPPVのようなポリマーは光酸化によりドラスティックな変化をすることが知られている。すなわち、有効π共役長の短縮化と分子量の低量化に起因するバンド間遷移に対応する光学吸収のブリーチングすなわち白色化が観察されている。このように、空気中での光照射によるフォトルミネッセンスの消光が研究されており、これらは、カルボニルグループのような欠陥によるものであり、これらの欠陥はエキシトンおよびまたはエキシトン−ポーラロンのような発光種に対して、消光中心として作用するものであるといわれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この現象を利用して、有機エレクトロルミネッセンス素子のパターニングを行う例が報告されている。しかしながらこの方法は、発光層を形成した後、第2の電極の形成に先立ち、酸素雰囲気中で光照射を行い、パターン露光を行う方法であり、パターン形成後に第2の電極を形成しなければならず、真空蒸着工程で、基板が高温となると、素子領域の劣化が大きく、発光領域も良好に発光しなくなり、充分なコントラストを得ることができないという問題があった。
【0008】
また、真空蒸着工程における温度で、前述の消光中心が広がり、非発光領域が拡張され、像の輪郭が広がるというような現象がみられることがあった。
【0009】
さらにまた、パターニングは、イメージ形成のための光照射から、真空蒸着工程を経て、完成するものであるため、形成すべきイメージの決定から完成までに、多大な時間を要する、すなわち、TAT(Turn Around Time)が長いという問題があった、本発明は前記実状に鑑みてなされたもので、コントラストが大きく、信頼性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【0010】
また、発注から完成までに要する時間が短く、作業性よく形成することのできる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、基板と、前記基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成され、酸素分子を透過しうる程度の開口径をもつ開孔を有する導電膜からなる第2の電極とを備え、前記発光層の一部の領域が、光と、前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により選択的に形成された酸化物層を形成しており、前記酸化物層の存在する領域は、非発光領域を構成していることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、光透過性の基板、前記第1の電極は光透過性材料でそれぞれ構成されており、前記非発光領域は、前記第2の電極側からの酸素の侵入と、前記基板側からの光照射とによって生じる光酸化によって形成されたものであるものを含む。
【0013】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第2の電極は、光透過性膜で構成されており、前記非発光領域は前記第2の電極を透過した光を用いた光選択酸化によって形成されたものを含む。
【0014】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第2の電極は、光透過性膜で構成されており、前記非発光領域は前記第2の電極を透過した光と、前記基板側からの光との両方を用いた光選択酸化によって形成されたものを含む。
【0015】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第2の電極は、多孔性のアルミニウムからなるものを含む。
【0016】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第2の電極は、可視光に対する光透過率が30%以上であるものを含む。
【0017】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第2の電極は、遮光性導電膜から構成されているものを含む。
【0018】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、基板表面に、第1の電極を形成する工程と、前記第1の電極上に発光層を形成する工程と、前記発光層上に、酸素分子を透過しうる程度の開口径をもつ開孔を有する導電膜からなる第2の電極を形成し、発光層が前記第1および第2の電極で挟まれたサンドイッチ構造の素子を形成する工程と、前記サンドイッチ構造の素子に対し、第1または前記第2の電極側から選択的に光照射を行い、光選択酸化により酸化物層からなる非発光領域を形成するパターン露光工程とを含む。
【0019】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、前記第2の電極は、酸素および光の透過を許す程度の光透過性の多孔性薄膜であり、前記パターン露光工程は、前記第2の電極側からの光照射によって光酸化を行う工程であるものを含む。
【0020】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、前記第2の電極は、酸素の透過を許す程度の遮光性の多孔性薄膜であり、前記パターン露光工程は、前記第1の電極側からの光照射によって光酸化を行う工程であるものを含む。
【0021】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用基板は、基板と、前記基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第2の電極とを備え、前記第2の電極は、酸素分子を透過しうる程度の開口径をもつ開孔を有する導電膜で構成されており、前記発光層は、光照射と前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により、選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成される。
【0022】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置用基板において、前記第2の電極は、酸素および光の透過を許す程度の光透過性の多孔性薄膜であり、前記発光層は、前記第2の電極側からの光照射と前記第2の電極を介して到達した酸素とによる、光選択酸化により選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成されるものを含む。
【0023】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置用基板において、前記第2の電極は、酸素の透過を許す程度の遮光性の多孔性薄膜であり、前記基板は光透過性の基板、前記第1の電極は光透過性材料で構成されており、前記発光層は、前記第1の電極側からの光照射と前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成されているものを含む。
【0024】
また、本発明の参考的構成を以下に示す。
本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、基板と、前記基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成され、酸素透過性の材料からなる第2の電極とを備え、前記発光層の一部の領域が、光と、前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により選択的に形成された酸化物層を形成しており、前記酸化物層の存在する領域は非発光領域を構成していることを特徴とする。
【0025】
かかる構成によれば、第2の電極の形成後に、前記第2の電極を介して到達した酸素を用いた光選択酸化により、一部の領域の発光層の発光種を消失させているため、パターン形成後に第2の電極の形成のための、真空蒸着も不要であり、基板が高温となって、素子領域が劣化するようなこともなく、充分なコントラストを得ることが可能となる。また、真空蒸着工程における温度で、前述の消光中心が広がり、非発光領域が拡張され、像の輪郭が広がるというような現象もない。さらにまた、パターニングは、イメージ形成のための光照射から、真空蒸着工程を経て、完成するものであるため、形成すべきイメージの決定から完成まで短時間で製造することができる。なお、酸化物層は発光層の深さ全体にわたって形成されている必要はなく、深さ方向の一部であってもよい。
【0026】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記基板は光透過性の基板、前記第1の電極は光透過性材料で構成されており、前記非発光領域は、前記第2の電極側からの酸素の侵入と、前記基板側からの光照射とによって生じる光酸化によって形成されたものであってもよい。
【0027】
かかる構成によれば、第2の電極側から発光層に酸素を供給し、光照射側を基板側とするようにしているため、取り扱いが容易であり、パターン形成後必要に応じて、第2の電極側を被覆し、酸素などの透過から保護することにより素子の長寿命化をはかることも可能である。
【0028】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第2の電極は、光透過性材料で構成されており、前記非発光領域は前記第2の電極を透過した光を用いた光選択酸化によって形成されたものであってもよい。
【0029】
かかる構成によれば、第2の電極を光透過性材料で構成し、第2電極側から光照射を行うため、より近接してマスクを置くことが可能であり、パターン精度の向上を図ることが可能となる。
【0030】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第2の電極は、光透過性材料で構成されており、前記非発光領域は前記第2の電極を透過した光と、前記基板側からの光との両方を用いた光選択酸化によって形成されたものであってもよい。
【0031】
かかる構成によれば、両面から光照射を行うことにより、パターニングがなされるため、高精度でパターン切れのよい(輪郭のはっきりした)イメージを得ることが可能となる。
【0032】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第2の電極は、アルミニウム電極であってもよい。
【0033】
上記構成によれば、半透過性をもち、酸素の透過をも許容する膜であるため、極めて高度に第2の電極の機能を奏効する。
【0034】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第2の電極は、可視光に対する光透過率が30%以上であることを特徴とする。
【0035】
上記構成によれば、半透過性をもち、酸素の透過をも許容する膜であるため、十分な酸素と光の供給を行うことができ極めて高度に第2の電極の機能を奏効する。
【0036】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第2の電極は、酸素を透過しうる程度の開口径をもつ開孔の遮光性導電膜から構成されていることを特徴とする。
【0037】
上記構成によれば、十分な酸素の供給を行うことができ極めて高度に第2の電極の機能を奏効する。
【0038】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板と、前記基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第2の電極と、前記発光層内または前記発光層の近傍に形成され、前記発光層に酸素を供給し得る酸素供給層と備え、前記発光層の一部の領域が、光と前記酸素供給層からの酸素とを用いた光選択酸化により選択的に形成された酸化物層を形成しており、前記酸化物層の存在する領域は非発光領域を構成してもよい。
【0039】
上記構成によれば、あらかじめ酸素供給層を介在させておくようにしたもので、かかる構成によれば、外部からの酸素の供給なしに、光選択酸化を行うことができ、製造後に酸素の出入がなく、長寿命化を図ることが可能なる。
【0040】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法では、基板表面に、第1の電極を形成する工程と、 前記第1の電極上に発光層を形成する工程と、前記発光層上に、第2の電極を形成し、発光層が前記第1および第2の電極で挟まれたサンドイッチ構造の素子を形成する工程と、前記サンドイッチ構造の素子に対し、第1または前記第2の電極側から選択的に光照射を行い、光選択酸化により酸化物層からなる非発光領域を形成するパターン露光工程とを含むようにしてもよい。
【0041】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記第2の電極は、酸素および光の透過を許す程度の光透過性の多孔性薄膜であり、前記パターン露光工程は、前記第2の電極側からの光照射によって光酸化を行う工程であってもよい。
【0042】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記第2の電極は、酸素の透過を許す程度の遮光性の多孔性薄膜であり、前記パターン露光工程は、前記第1の電極側からの光照射によって光酸化を行う工程であってもよい。
【0043】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記第1又は第2の電極、または発光層は、酸素を供給する酸素供給層を含み、前記パターン露光工程は、前記酸素供給層からの酸素供給により光酸化を行う工程であってもよい。
【0044】
上記表示装置用基板では、基板と、前記基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第2の電極とを備え、 前記第2の電極は、酸素の透過を許す程度の多孔性薄膜であり、前記発光層は、光照射と前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により、選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成されていてもよい。
【0045】
上記表示装置用基板において、前記第2の電極は、酸素および光の透過を許す程度の光透過性の多孔性薄膜であり、前記発光層は、前記第2の電極側からの光照射と前記第2の電極を介して到達した酸素とによる、光選択酸化により選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成されていてもよい。
【0046】
上記表示装置用基板において、前記第2の電極は、酸素の透過を許す程度の遮光性の多孔性薄膜であり、前記基板は光透過性の基板、前記第1の電極は光透過性材料で構成されており、前記発光層は、前記第1の電極側からの光照射と前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成されていてもよい。
【0047】
上記表示装置用基板では、前記基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第2の電極と、前記発光層内または前記発光層の近傍に形成され、前記発光層に酸素を供給し得る酸素供給層とを備え、 前記発光層は、光照射と前記酸素供給層からの酸素とを用いた光選択酸化により選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成されていてもよい。
【0048】
上記表示装置用基板において、前記第2の電極は、アルミニウム電極であってもよい。
【0049】
上記表示装置用基板において、前記第2の電極は、可視光に対する光透過率が30%以上であってもよい。
【0050】
なお、本発明の基本的思想は、以下に示すとおりである。
( i ) 導電性ポリマー中で電気的に生成された発光種が、光酸化によって形成されるカルボニル基などの欠陥によって消失する。
( ii )光酸化による有効共役長の短縮によって導電性ポリマーの電気的導電性が減少する。
【0051】
( iii )電極/ポリマインターフェイスにおける電荷注入効率が界面におけるポリマーの光酸化による電荷注入効果が低減する。
【0052】
かかる構成によれば、極めて容易にイメージを有機エレクトロルミネッセンス素子に焼き付けることができるため、グリーティングカードなどを購入した消費者が日光写真のような原理で所望のパターンを形成して、プレゼントすることも可能である。また、表札などにも、適用可能であり、日曜大工センターのようなところで、即時に所望の文字を入れて販売することも可能である。また、自動車のナンバープレートなどにも適用可能であり、受注から引き渡しまでの時間を極めて短くすることが可能である。
【0053】
かかる構成により、発光効率が高く、コントラストの高い有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置用基板を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0054】
以上説明してきたように、本発明によれば、第2の電極の形成後に、第2の電極を介して到達した酸素などを利用した光選択酸化により、一部の領域の発光層の発光種を消失させ、発光パターンを囲む非発光領域を形成するようにしているため、パターン形成後に第2の電極の形成のための、真空蒸着も不要であり、コントラストが高く信頼性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することが可能となる。また、パターニングが極めて容易に実行可能であり、作業性が極めて良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
次に本発明の実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0056】
本発明実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子は、図1に示すように、この有機エレクトロルミネッセンス素子は、ガラス基板1表面に形成された酸化インジウム錫(ITO)からなる第1の電極2、膜厚200nmのMDOPPVからなる発光層3と、膜厚60nmのAl層からなる第2の電極4とを順次積層してなる表示用基板に、光選択酸化により、所望のパターンを露光し、パターンに応じた非発光領域を選択的に形成し、表示画面上に所望の発光パターンをもつようにしたことを特徴とする。
【0057】
製造に際しては、図2A乃至図2Dに製造工程図を示すように、まず、10Ω/□のITO薄膜2を形成してなるガラス基板1を用意し、これをエタノール、アセトン及びクロロホルム中で順次超音波洗浄し、乾燥圧縮空気により乾燥させた後、このガラス基板1(図2(A))上に、5mg/mlのクロロホルム溶液を用いて、MDOPPV薄膜3(膜厚200nm)をスピンコート法により形成する(図2(B))。この時、回転速度は2000rpmとした。
【0058】
この後、このガラス基板1を、真空蒸着装置に装着し、4-6×10-6Torrの真空度となるように排気する。
【0059】
そして、蒸発源としてのアルミニウムを加熱し、抵抗加熱蒸着法によって、膜厚60nmのAlからなる第2電極3を全面に形成する(図2(C))。この時、成膜速度は0.1−3nm/secとした。これは、アルミニウム層が酸素を透過し得る程度の多孔質となるようにしたものである。
【0060】
このようにして、表示装置用基板が完成する。
【0061】
この後、所望のマスクパターンを介してタングステンランプからの白色光(λ)を用いて露光を行い、光選択酸化を起こすことにより、図2(D)に示すように、酸化領域Oxを形成する。
【0062】
このようにして形成された有機エレクトロルミネッセンス素子は、光酸化の生じた領域は非発光領域となり、図3および4に示すように基板上にイメージが良好に浮かびあがるようなパターン形成が可能となる。
【0063】
次に、この露光工程において、照射時間を0、1、2、3、5、7分と次第に変化させたときの、選択酸化領域の駆動電圧と発光強度との関係を測定した結果を図5に示す。この図から明らかなように、光照射時間を長くしたとき、発光はほとんどなくなっていることがわかる。これは光選択酸化により、発光層が発光機能を失ったものと考えられる。
【0064】
また、アルミニウム電極を形成したときとしないときとでの、光照射時間と光照射領域における光吸収強度との関係を測定した結果を図6に示す。この図から明らかなように、アルミニウム電極形成後に光照射を行った場合も、アルミニウム電極を形成するに先立ち光照射を行った場合も、光酸化の程度に大きな差はないことが分かる。
【0065】
また、アルミニウム電極を約2倍程度に厚くし、光透過率を7.8%程度にしたときに、同様に光照射を行い、光吸収強度との関係を測定した結果を図7に示す。この結果から、アルミニウム電極の酸素透過率が低下した分、発光強度の低下度が小さく、パターニングした場合はコントラストが低下することがわかる。
【0066】
次に本発明の第2の実施例について説明する。
【0067】
前記第1の実施例では、第2の電極を光透過性材料で構成し、パターニングのための光照射を第2の電極側から行うようにしたが、この例では、図8に示すように、第2の電極を遮光性でありかつ多孔性の導電膜である膜厚数百オングストロームのイリジウム層14で構成し、前記第2の電極側からの酸素の侵入と、記基板側からの光照射とによって生じる光酸化によって非発光領域を形成するようにしたものである。他の部分については前記第1の実施例と同様に形成する。なおこの酸化イリジウム層は、開口率50%μm程度であった。
【0068】
前記第1の実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子と同様の効果を奏効するが、さらに、第2の電極が遮光性材料で構成されているため、背面からの光をすべて前面に送出することができ、輝度の更なる向上を図ることが可能となる。また、イリジウム層は柱状の結晶構造をとるため、ポーラスであり、酸素を透過しやすい構造を有しており、かつ導電性も良好であるため、電極としても有効である。さらにまたイリジウムは酸化されて酸化イリジウムとなり、この柱状結晶の周りに酸化イリジウム層が析出し、酸素非透過性構造となるため、イメージ画像形成後に、酸素の透過による劣化が生じることもない。
【0069】
なお、イリジウム自体は柱状の結晶構造をとるため、ポーラスであり、酸素を透過しやすい構造を有している。したがって、露光前にはイリジウム層の酸化を防ぐために、酸化防止膜を貼着しておき、使用直前にこの酸化防止膜を剥離し、光照射を行うようにすることにより、さらに良好なイメージ形成が可能となる。
【0070】
また、このように電極構成材料としては、イリジウムのように、その材料自体はポーラスな結晶構造をとるものを使用し、酸化されるとポーラス度が低下し、酸素を通さなくなるような材料を用いることにより、パターン形成後、発光層の劣化を生じるのを防ぐことができ、寿命を長くすることが可能となる。
【0071】
次に本発明の第3の実施例について説明する。
【0072】
前記第1の実施例では、第2の電極を光透過性材料で構成し、パターニングのための光照射を第2の電極側から行うようにしたが、この例では、図9に示すように、同様に透過率30%のアルミニウム電極4を第2電極として用い、表裏両面からの露光により、パターニングするようにしたことを特徴とするものである。
【0073】
かかる構成によれば、両面からの露光によって非発光領域が形成されるため、パターンの増大もなくマスクパターンに対して高精度のパターン形成が可能となる。
【0074】
次に本発明の第4の実施例について説明する。
【0075】
前記第1乃至3の実施例では、第2の電極を、酸素を透過し得る材料で構成し、パターニングのための酸素を第2の電極を介して外部から供給するようにしていたが、この例では、図10に示すように、第2の電極の形成に先立ち、前記発光層3の表面に酸素供給層として膜厚10nm程度の酸化イリジウム層10を形成したことを特徴とするものである。他の部分は図1に示した前記第1の実施例と全く同様に形成されているが、この例ではパターニングに際して、赤外線(IR)露光あるいは紫外線(UV)露光を行い、発光層3の表面近傍の酸化イリジウム層10を励起し、加熱することにより、この酸素が遊離せしめられるとともに、光エネルギーにより発光層を酸化し、酸化領域と化すことにより、非発光領域が形成されるようにしたものである。
【0076】
図11は、パターニング後の有機エレクトロルミネッセンス素子を示す図である。かかる構成によれば、外部から酸素を供給するのではなく、酸素供給層をあらかじめ介在させるようにしておき、光ビームによりこの層を励起し、酸素を発生させるようにしたものである。
【0077】
このようにして、容易に電子ビーム露光工程によってのみ発光パターンの形成を行うことが可能となる。
【0078】
なお、パターニング後に、この酸素供給層からの酸素の放出が問題となるような場合には、図12に示すように、酸素吸着材20を、カプセル状にして、埋め込んでおくようにし、最後にこのカプセルを外部からエネルギーを供給することにより、非接触で破壊し、脱酸素効果を奏効し得るようにすることも可能である。
【0079】
なお、第2の電極の表面はそのままでもよいが、後で保護膜を形成するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0080】
また、発光層を形成する材料としては、前記実施例に限定されることなく、適用可能であり、上記MDOPPVのほか、ポリ(p−フェニレンビニレン)(Poly(p-phenylene vinylene:PPV)とその誘導体(ポリ(2−メトキシ−5−ドデシロキシ−p−フェニレンビニレン)(Poly(2-methoxy-5-(2'-ethylhexyloxy)-p-phenylene vinylene) )、ポリ(2,5−ジオクチロキシ−p−フェニレンビニレン)(Poly(2,5-dioctyloxy-p-phenylene vinylene))、ポリ(2,5−ジノニロキシ−p−フェニレンビニレン)(Poly(2,5-dinonyloxy-p-phenylene vinylene))、ポリ(2,5−ジデシロキシ−p−フェニレンビニレン)(Poly(2,5-didecyloxy-p-phenylene vinylene)))をはじめ、ポリチオフェン(Polythiophene)とその誘導体(ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(Poly(3-hexylthiophene)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)(Poly(3-heptylthiophene) )、ポリ(3−オクチルチオフェン)(Poly(3-ocylthiophene))、ポリ(3−ノニルチオフェン)(Poly(3-nonylthiophene))、ポリ(3−デシルチオフェン)(Poly(3-decylthiophene))、ポリ(3−ウンデシルチオフェン)(Poly(3-undecylthiophene))、ポリ(3−ドデシルチオフェン)(Poly(3-dodecylthiophene))、ポリ[3−(p−ドデシルフェニル)チオフェン](Poly[3-(p-dodecylphenyl) thiophene)])等)、ポリフルオレン(Polyfluorene)とその誘導体(ポリ(9,9−ジヘキシルフルオレン)(Poly(9,9-dihexylfluorene))、ポリ(9,9−ジヘプチルフルオレン)(Poly(9,9-diheptylfluorene))、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(Poly(9,9-dioctylfluorene))、ポリ(9,9−ジデシルフルオレン)(Poly(9,9-didecylfluorene))、ポリ[9,9−ビス(p−ヘキシルフェニル)フルオレン](Poly[9,9-bis(p-hexylphenyl)fluorene])、ポリ[9,9−ビス(p−ヘプチルフェニル)フルオレン](Poly[9,9-bis(p-heptylphenyl)fluorene])、ポリ[9,9−ビス(p−オクチルフェニル)フルオレン](Poly[9,9-bis(p-octylphenyl)fluorene])等)、ポリアセチレン(Polyacetylene)誘導体(ポリ(1,2−ジフェニルアセチレン)(Poly(1,2-diphenylacetylene))、ポリ[1−フェニルー2−(p−ブチルフェニル)アセチレン]( Poly[1-phenyl-2-(p-butylphenyl)acetylene])、ポリ(1−フェニル−2−メチルアセチレン)( Poly(1-methyl-2-phenylacetylene))、ポリ(1−フェニル−2−エチルアセチレン)(Poly(1-ethyl-2-phenylacetylene))、ポリ(1−フェニル−2−ヘキシルアセチレン)(Poly(1-hexyl-2-phenylacetylene))、ポリ(フェニルアセチレン)(Poly(phenylacetylene))等、ポリピリジン(Polypyridine)、ポリ(ピリジルビニレン) Poly(pyridyl vinylene)、ポリフェニレン(Polyphenylene)、ポリフラン( Polyfurane)、ポリ(セレノフェン)( Polyselenophene)、ポリ(フェニレン−co−チエニレン)(Poly(phenylene-co-thienylene))、ポリ[1,4−ビス(2−チエニル)フェニレン](Poly[1,4-bis(2-thienyl)phenylene])、ポリ(フェニレンエチニレン)(Poly (phenyleneethynylene))とこれらの誘導体等の、主鎖が炭素同士の飽和(1重)結合と不飽和(2重または3重)結合の連続した繰り返し構造を持つ、いわゆる共役系高分子はもちろんのこと、トリス(8−ハイドロキシキノリン)アルミニウム(Tris(8-hydroxyquinoline)aluminum)(Alq)、クマリン6(Coumarin6, 3-(2-Benzothiazolyl)-7-(diethylamino)coumarin)、クマリン7(Coumarin7, 3-(2-Benzoimidazolyl)-7-(diethylamino)coumarin))、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(4−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(4-(Dicyanomethylene)-2-methyl-6-(4-dimethylaminostyryl)-4H-pyran)(DCM)、ナイルレッド(Nile Red)、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン(1,1,4,4-Tetraphenyl-1,3-butadiene)、N,N’−ジメチルキナクリドン( N,N-Dimethylquinacrydone) (DMQA)、1,2,3,4,5−ペンタフェニルシクロペンタジエン(1,2,3,4,5-Pentaphenylcyclopentadiene) (PPCP)、N.N’−ジフェニルーN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニルー4,4’−ジアミン(N, N'-Diphenyl-N,N'-bis(3-methylphenyl)-1,1'-biphenyl-4,4'-diamine) (TPD)、2−4−(ビフェニルー5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキシジアゾール(2-(4-Biphenyl)-5-(4-tert-butylphenyl)-1,3,4-oxidiazole) (PBD)、p−ターフェニル(p-Terphenyl)、p−クォーターフェニル( p-Quaterphenyl)、2,2’−ビチオフェン( 2,2'-Bithiophene)、2,2’:5,5’−ターチオフェン( 2,2':5',2''-Terthiophene)、αーヘキサチオフェン(a-Hexathiophene)、アントラセン( anthracene)、テトラセン( tetracene)、フタロシアニン( phthalocyanene)、ポルフィリン( porphyrin)等の蛍光色素及びこれらの蛍光色素を分子構造中に含む高分子、さらに上記の高分子及び蛍光色素をポリ(N−ビニルカルバゾール)(Poly(N-vinylcarbazole)) (PVK)、ポリ(メチルメタクリレート)(Poly(methylmethacrylate))(PMMA)、ポリカーボネート( Polycarbonate)、ポリスチレン( Polystyrene)、ポリ(メチルフェニルシラン)(Poly(methylphenylsilane))、 ポリ(ジフェニルシラン)(Poly(diphenylsilane))等の絶縁性高分子中に分散した材料等の、光酸化されうる有機電界発光材料全般に適用可能である。
【0081】
また、発光層を適宜選択することにより、単層構造あるいは、多層構造とし、カラー画像を形成するようにすることも可能である。
【0082】
第1乃至第3の実施例では、第1の電極として、ITOの他、導電性酸化物(アンチモンドープ酸化スズ(Sn02:Sb) (NESA)、フッ素ドープ酸化スズ(Sn02:F)、カドミウムインジウム酸化物(CdIn2O4) (CIO)、カドミウムスズ酸化物 (CdSnO4) (CTO)、酸化亜鉛 (ZnO)、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化レニウム(ReO2)、酸化イリジウム(IrO2)等)や導電性高分子(ポリピロール(polypyrrole)、ポリアニリン(polyaniline)、ポリチオフェン(polythiophene)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)( poly(3,4-ethylene dioxithiophene))(PEDOT)、ポリイソチアナフテン( polyisothianaphthene)等)等を用いた透明導電薄膜は勿論のこと、アルミニウム(Al)、マグネシウム( Mg)、カルシウム(Ca)、金(Au)、銀( Ag)、白金( Pt)、インジウム(In)、銅(Cu)、ネオジウム(Nd)、ニッケル(Ni)、スズ( Sn)等全ての半透明金属薄膜が利用可能である。
【0083】
第2の電極としても、アルミニウム(Al)に限定されることなく、カルシウム(Ca)、金(Au)、銀( Ag)、白金( Pt)、インジウム(In)、銅(Cu)、ネオジウム( Nd)などを用いた多孔質金属薄膜の他、酸化イリジウム(IrO2)、ポリピロール(polypyrrole)、ポリアニリン(polyaniline)、ポリ(チオフェン)(polythiophene)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)( poly(3,4-ethylene dioxithiophene))(PEDOT)、ポリイソチアナフテン( polyisothianaphthene)等が製膜条件により酸素を透過する多孔質膜とすることができ、利用可能である。
【0084】
第4の実施例では、電極として、導電性薄膜であればいかなる材料でも利用可能である。一方、酸素供給源として、酸化イリジウム(IrO2)に限らず、比較的小さなエネルギーによる励起で酸素を放出する物質、例えば酸化銀(Ag2O)、酸化クロム(CrO2)、酸化ルテニウム(RuO2)等が利用可能である。
【0085】
また、前記実施例では、発光層を第1および第2の電極で挟んだ構造について説明したが、電子注入層あるいは正孔注入層をこれらの電極と発光層との間に介在させた構造も有効である。またこの構造において、発光層自体は酸化領域を形成することなくそのまま残し、電子注入層あるいは正孔注入層に光選択酸化による非発光領域を形成するようにしてもよい。
【0086】
さらにまた、基板と第1の電極層にバッファ層などの他の層が介在していてもよく、あるいは各層相互間にも、バッファ層など他の層が介在していてもよいことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明してきたように、本発明によれば、TATが短く、製造が容易であることから、通常の有機エレクトロルミネッセンス表示装置だけでなく、購入した消費者が日光写真のような原理で所望のパターンを形成できるグリーティングカード、日曜大工センターのようなところで、即時に所望の文字を入れて販売する表札、自動車のナンバープレートなど、特にTATの短縮化の必要な種々の物品に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子を示す図
【図2】同素子の製造工程図
【図3】同素子による生成画像を示す図
【図4】同素子による生成画像を示す図
【図5】本発明の第1の実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子における光照射時間と発光強度との関係を示す図
【図6】アルミニウム電極を形成したときと形成しないとき光照射時間と発光強度との関係を示す図
【図7】透過率の小さいアルミニウム電極を用いたときの光照射時間と発光強度との関係を示す図
【図8】本発明の第2の実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子を示す図
【図9】本発明の第3の実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子を示す図
【図10】本発明の第4の実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子を示す図
【図11】本発明の第4の実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子を示す図
【図12】本発明の第4の実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子の変形例を示す図
【符号の説明】
【0089】
1ガラス基板
2第1の電極
3発光層
4第2の電極(アルミニウム)
14第2の電極(イリジウム)
10酸素供給層
20酸素吸着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用基板、表示装置およびその製造方法に係り、特にそのパターン形成に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス素子は、種々の表示装置や光源あるいは液晶のバックライト、光通信機器における発光素子などに広く利用されている。エレクトロルミネッセンス素子は、固体蛍光性物質の電界発光を利用した発光デバイスであり、現在は無機系材料を発光物質として用いた、無機エレクトロルミネッセンス素子が実用化され、液晶ディスプレイのバックライトやフラットディスプレイなど、広範囲への応用が展開され始めている。しかしながら、無機エレクトロルミネッセンス素子は発光に必要な電圧が100V以上と高く、しかも青色発光が困難であるため、RGBの三原色によるフルカラー化は困難であった。
【0003】
一方、有機材料を用いたエレクトロルミネッセンス素子についても古くからさまざまな研究が重ねられてきたが、発光効率が悪いことから本格的な実用化には進展していなかった。しかしながら、近年になって、有機材料を正孔輸送層と発光の2層に分けた機能分離型の積層構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子が提案され、10V以下の低電圧で高輝度を得ることができることが証明された。以降、有機エレクトロルミネッセンス素子が大きな注目を浴びるようになり、現在も機能分離型の積層構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の研究が広く展開されている。
【0004】
通常の有機エレクトロルミネッセンス素子について、説明する。有機エレクトロルミネッセンス素子は、通常、透光性のガラス基板表面に、スパッタリング法や抵抗加熱蒸着法などによって形成された酸化インジウム錫(ITO)などの透明導電膜からなる第1の電極と、該第1の電極上に形成されたポリ(2-メトキシ−5−ドデシロキ−p−フェニレンビニレン)(poly(2-methoky−5−dodecyloxy−p−phenylene vinylene))(以下MDOPPVと略称する)からなる発光層と、発光層上に真空蒸着法などにより形成されたAlなどの金属製の第2の電極とを順次積層して構成されている。
【0005】
かかる構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子に直流電圧を印加すると、第1の電極から発光層に正孔が注入され、第2の電極から発光層に電子が注入される。発光層では正孔と電子の再結合が生じ、これに伴って生成される励起子が励起状態から基底状態に移行する際に発光現象が起こる。この場合は、発光層にMDOPPVを用いることにより黄色の発光が得られる。また有機化合物の分子構造を変更することによって理論的には任意の発光色を得ることも可能である。
【0006】
ところで、この発光層に用いられているMDOPPVのようなポリマーは光酸化によりドラスティックな変化をすることが知られている。すなわち、有効π共役長の短縮化と分子量の低量化に起因するバンド間遷移に対応する光学吸収のブリーチングすなわち白色化が観察されている。このように、空気中での光照射によるフォトルミネッセンスの消光が研究されており、これらは、カルボニルグループのような欠陥によるものであり、これらの欠陥はエキシトンおよびまたはエキシトン−ポーラロンのような発光種に対して、消光中心として作用するものであるといわれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この現象を利用して、有機エレクトロルミネッセンス素子のパターニングを行う例が報告されている。しかしながらこの方法は、発光層を形成した後、第2の電極の形成に先立ち、酸素雰囲気中で光照射を行い、パターン露光を行う方法であり、パターン形成後に第2の電極を形成しなければならず、真空蒸着工程で、基板が高温となると、素子領域の劣化が大きく、発光領域も良好に発光しなくなり、充分なコントラストを得ることができないという問題があった。
【0008】
また、真空蒸着工程における温度で、前述の消光中心が広がり、非発光領域が拡張され、像の輪郭が広がるというような現象がみられることがあった。
【0009】
さらにまた、パターニングは、イメージ形成のための光照射から、真空蒸着工程を経て、完成するものであるため、形成すべきイメージの決定から完成までに、多大な時間を要する、すなわち、TAT(Turn Around Time)が長いという問題があった、本発明は前記実状に鑑みてなされたもので、コントラストが大きく、信頼性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【0010】
また、発注から完成までに要する時間が短く、作業性よく形成することのできる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、基板と、前記基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成され、酸素分子を透過しうる程度の開口径をもつ開孔を有する導電膜からなる第2の電極とを備え、前記発光層の一部の領域が、光と、前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により選択的に形成された酸化物層を形成しており、前記酸化物層の存在する領域は、非発光領域を構成していることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、光透過性の基板、前記第1の電極は光透過性材料でそれぞれ構成されており、前記非発光領域は、前記第2の電極側からの酸素の侵入と、前記基板側からの光照射とによって生じる光酸化によって形成されたものであるものを含む。
【0013】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第2の電極は、光透過性膜で構成されており、前記非発光領域は前記第2の電極を透過した光を用いた光選択酸化によって形成されたものを含む。
【0014】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第2の電極は、光透過性膜で構成されており、前記非発光領域は前記第2の電極を透過した光と、前記基板側からの光との両方を用いた光選択酸化によって形成されたものを含む。
【0015】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第2の電極は、多孔性のアルミニウムからなるものを含む。
【0016】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第2の電極は、可視光に対する光透過率が30%以上であるものを含む。
【0017】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第2の電極は、遮光性導電膜から構成されているものを含む。
【0018】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、基板表面に、第1の電極を形成する工程と、前記第1の電極上に発光層を形成する工程と、前記発光層上に、酸素分子を透過しうる程度の開口径をもつ開孔を有する導電膜からなる第2の電極を形成し、発光層が前記第1および第2の電極で挟まれたサンドイッチ構造の素子を形成する工程と、前記サンドイッチ構造の素子に対し、第1または前記第2の電極側から選択的に光照射を行い、光選択酸化により酸化物層からなる非発光領域を形成するパターン露光工程とを含む。
【0019】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、前記第2の電極は、酸素および光の透過を許す程度の光透過性の多孔性薄膜であり、前記パターン露光工程は、前記第2の電極側からの光照射によって光酸化を行う工程であるものを含む。
【0020】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、前記第2の電極は、酸素の透過を許す程度の遮光性の多孔性薄膜であり、前記パターン露光工程は、前記第1の電極側からの光照射によって光酸化を行う工程であるものを含む。
【0021】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用基板は、基板と、前記基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第2の電極とを備え、前記第2の電極は、酸素分子を透過しうる程度の開口径をもつ開孔を有する導電膜で構成されており、前記発光層は、光照射と前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により、選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成される。
【0022】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置用基板において、前記第2の電極は、酸素および光の透過を許す程度の光透過性の多孔性薄膜であり、前記発光層は、前記第2の電極側からの光照射と前記第2の電極を介して到達した酸素とによる、光選択酸化により選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成されるものを含む。
【0023】
また、本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示装置用基板において、前記第2の電極は、酸素の透過を許す程度の遮光性の多孔性薄膜であり、前記基板は光透過性の基板、前記第1の電極は光透過性材料で構成されており、前記発光層は、前記第1の電極側からの光照射と前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成されているものを含む。
【0024】
また、本発明の参考的構成を以下に示す。
本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、基板と、前記基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成され、酸素透過性の材料からなる第2の電極とを備え、前記発光層の一部の領域が、光と、前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により選択的に形成された酸化物層を形成しており、前記酸化物層の存在する領域は非発光領域を構成していることを特徴とする。
【0025】
かかる構成によれば、第2の電極の形成後に、前記第2の電極を介して到達した酸素を用いた光選択酸化により、一部の領域の発光層の発光種を消失させているため、パターン形成後に第2の電極の形成のための、真空蒸着も不要であり、基板が高温となって、素子領域が劣化するようなこともなく、充分なコントラストを得ることが可能となる。また、真空蒸着工程における温度で、前述の消光中心が広がり、非発光領域が拡張され、像の輪郭が広がるというような現象もない。さらにまた、パターニングは、イメージ形成のための光照射から、真空蒸着工程を経て、完成するものであるため、形成すべきイメージの決定から完成まで短時間で製造することができる。なお、酸化物層は発光層の深さ全体にわたって形成されている必要はなく、深さ方向の一部であってもよい。
【0026】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記基板は光透過性の基板、前記第1の電極は光透過性材料で構成されており、前記非発光領域は、前記第2の電極側からの酸素の侵入と、前記基板側からの光照射とによって生じる光酸化によって形成されたものであってもよい。
【0027】
かかる構成によれば、第2の電極側から発光層に酸素を供給し、光照射側を基板側とするようにしているため、取り扱いが容易であり、パターン形成後必要に応じて、第2の電極側を被覆し、酸素などの透過から保護することにより素子の長寿命化をはかることも可能である。
【0028】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第2の電極は、光透過性材料で構成されており、前記非発光領域は前記第2の電極を透過した光を用いた光選択酸化によって形成されたものであってもよい。
【0029】
かかる構成によれば、第2の電極を光透過性材料で構成し、第2電極側から光照射を行うため、より近接してマスクを置くことが可能であり、パターン精度の向上を図ることが可能となる。
【0030】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第2の電極は、光透過性材料で構成されており、前記非発光領域は前記第2の電極を透過した光と、前記基板側からの光との両方を用いた光選択酸化によって形成されたものであってもよい。
【0031】
かかる構成によれば、両面から光照射を行うことにより、パターニングがなされるため、高精度でパターン切れのよい(輪郭のはっきりした)イメージを得ることが可能となる。
【0032】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第2の電極は、アルミニウム電極であってもよい。
【0033】
上記構成によれば、半透過性をもち、酸素の透過をも許容する膜であるため、極めて高度に第2の電極の機能を奏効する。
【0034】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第2の電極は、可視光に対する光透過率が30%以上であることを特徴とする。
【0035】
上記構成によれば、半透過性をもち、酸素の透過をも許容する膜であるため、十分な酸素と光の供給を行うことができ極めて高度に第2の電極の機能を奏効する。
【0036】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第2の電極は、酸素を透過しうる程度の開口径をもつ開孔の遮光性導電膜から構成されていることを特徴とする。
【0037】
上記構成によれば、十分な酸素の供給を行うことができ極めて高度に第2の電極の機能を奏効する。
【0038】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板と、前記基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第2の電極と、前記発光層内または前記発光層の近傍に形成され、前記発光層に酸素を供給し得る酸素供給層と備え、前記発光層の一部の領域が、光と前記酸素供給層からの酸素とを用いた光選択酸化により選択的に形成された酸化物層を形成しており、前記酸化物層の存在する領域は非発光領域を構成してもよい。
【0039】
上記構成によれば、あらかじめ酸素供給層を介在させておくようにしたもので、かかる構成によれば、外部からの酸素の供給なしに、光選択酸化を行うことができ、製造後に酸素の出入がなく、長寿命化を図ることが可能なる。
【0040】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法では、基板表面に、第1の電極を形成する工程と、 前記第1の電極上に発光層を形成する工程と、前記発光層上に、第2の電極を形成し、発光層が前記第1および第2の電極で挟まれたサンドイッチ構造の素子を形成する工程と、前記サンドイッチ構造の素子に対し、第1または前記第2の電極側から選択的に光照射を行い、光選択酸化により酸化物層からなる非発光領域を形成するパターン露光工程とを含むようにしてもよい。
【0041】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記第2の電極は、酸素および光の透過を許す程度の光透過性の多孔性薄膜であり、前記パターン露光工程は、前記第2の電極側からの光照射によって光酸化を行う工程であってもよい。
【0042】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記第2の電極は、酸素の透過を許す程度の遮光性の多孔性薄膜であり、前記パターン露光工程は、前記第1の電極側からの光照射によって光酸化を行う工程であってもよい。
【0043】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記第1又は第2の電極、または発光層は、酸素を供給する酸素供給層を含み、前記パターン露光工程は、前記酸素供給層からの酸素供給により光酸化を行う工程であってもよい。
【0044】
上記表示装置用基板では、基板と、前記基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第2の電極とを備え、 前記第2の電極は、酸素の透過を許す程度の多孔性薄膜であり、前記発光層は、光照射と前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により、選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成されていてもよい。
【0045】
上記表示装置用基板において、前記第2の電極は、酸素および光の透過を許す程度の光透過性の多孔性薄膜であり、前記発光層は、前記第2の電極側からの光照射と前記第2の電極を介して到達した酸素とによる、光選択酸化により選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成されていてもよい。
【0046】
上記表示装置用基板において、前記第2の電極は、酸素の透過を許す程度の遮光性の多孔性薄膜であり、前記基板は光透過性の基板、前記第1の電極は光透過性材料で構成されており、前記発光層は、前記第1の電極側からの光照射と前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成されていてもよい。
【0047】
上記表示装置用基板では、前記基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第2の電極と、前記発光層内または前記発光層の近傍に形成され、前記発光層に酸素を供給し得る酸素供給層とを備え、 前記発光層は、光照射と前記酸素供給層からの酸素とを用いた光選択酸化により選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成されていてもよい。
【0048】
上記表示装置用基板において、前記第2の電極は、アルミニウム電極であってもよい。
【0049】
上記表示装置用基板において、前記第2の電極は、可視光に対する光透過率が30%以上であってもよい。
【0050】
なお、本発明の基本的思想は、以下に示すとおりである。
( i ) 導電性ポリマー中で電気的に生成された発光種が、光酸化によって形成されるカルボニル基などの欠陥によって消失する。
( ii )光酸化による有効共役長の短縮によって導電性ポリマーの電気的導電性が減少する。
【0051】
( iii )電極/ポリマインターフェイスにおける電荷注入効率が界面におけるポリマーの光酸化による電荷注入効果が低減する。
【0052】
かかる構成によれば、極めて容易にイメージを有機エレクトロルミネッセンス素子に焼き付けることができるため、グリーティングカードなどを購入した消費者が日光写真のような原理で所望のパターンを形成して、プレゼントすることも可能である。また、表札などにも、適用可能であり、日曜大工センターのようなところで、即時に所望の文字を入れて販売することも可能である。また、自動車のナンバープレートなどにも適用可能であり、受注から引き渡しまでの時間を極めて短くすることが可能である。
【0053】
かかる構成により、発光効率が高く、コントラストの高い有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置用基板を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0054】
以上説明してきたように、本発明によれば、第2の電極の形成後に、第2の電極を介して到達した酸素などを利用した光選択酸化により、一部の領域の発光層の発光種を消失させ、発光パターンを囲む非発光領域を形成するようにしているため、パターン形成後に第2の電極の形成のための、真空蒸着も不要であり、コントラストが高く信頼性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することが可能となる。また、パターニングが極めて容易に実行可能であり、作業性が極めて良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
次に本発明の実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0056】
本発明実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子は、図1に示すように、この有機エレクトロルミネッセンス素子は、ガラス基板1表面に形成された酸化インジウム錫(ITO)からなる第1の電極2、膜厚200nmのMDOPPVからなる発光層3と、膜厚60nmのAl層からなる第2の電極4とを順次積層してなる表示用基板に、光選択酸化により、所望のパターンを露光し、パターンに応じた非発光領域を選択的に形成し、表示画面上に所望の発光パターンをもつようにしたことを特徴とする。
【0057】
製造に際しては、図2A乃至図2Dに製造工程図を示すように、まず、10Ω/□のITO薄膜2を形成してなるガラス基板1を用意し、これをエタノール、アセトン及びクロロホルム中で順次超音波洗浄し、乾燥圧縮空気により乾燥させた後、このガラス基板1(図2(A))上に、5mg/mlのクロロホルム溶液を用いて、MDOPPV薄膜3(膜厚200nm)をスピンコート法により形成する(図2(B))。この時、回転速度は2000rpmとした。
【0058】
この後、このガラス基板1を、真空蒸着装置に装着し、4-6×10-6Torrの真空度となるように排気する。
【0059】
そして、蒸発源としてのアルミニウムを加熱し、抵抗加熱蒸着法によって、膜厚60nmのAlからなる第2電極3を全面に形成する(図2(C))。この時、成膜速度は0.1−3nm/secとした。これは、アルミニウム層が酸素を透過し得る程度の多孔質となるようにしたものである。
【0060】
このようにして、表示装置用基板が完成する。
【0061】
この後、所望のマスクパターンを介してタングステンランプからの白色光(λ)を用いて露光を行い、光選択酸化を起こすことにより、図2(D)に示すように、酸化領域Oxを形成する。
【0062】
このようにして形成された有機エレクトロルミネッセンス素子は、光酸化の生じた領域は非発光領域となり、図3および4に示すように基板上にイメージが良好に浮かびあがるようなパターン形成が可能となる。
【0063】
次に、この露光工程において、照射時間を0、1、2、3、5、7分と次第に変化させたときの、選択酸化領域の駆動電圧と発光強度との関係を測定した結果を図5に示す。この図から明らかなように、光照射時間を長くしたとき、発光はほとんどなくなっていることがわかる。これは光選択酸化により、発光層が発光機能を失ったものと考えられる。
【0064】
また、アルミニウム電極を形成したときとしないときとでの、光照射時間と光照射領域における光吸収強度との関係を測定した結果を図6に示す。この図から明らかなように、アルミニウム電極形成後に光照射を行った場合も、アルミニウム電極を形成するに先立ち光照射を行った場合も、光酸化の程度に大きな差はないことが分かる。
【0065】
また、アルミニウム電極を約2倍程度に厚くし、光透過率を7.8%程度にしたときに、同様に光照射を行い、光吸収強度との関係を測定した結果を図7に示す。この結果から、アルミニウム電極の酸素透過率が低下した分、発光強度の低下度が小さく、パターニングした場合はコントラストが低下することがわかる。
【0066】
次に本発明の第2の実施例について説明する。
【0067】
前記第1の実施例では、第2の電極を光透過性材料で構成し、パターニングのための光照射を第2の電極側から行うようにしたが、この例では、図8に示すように、第2の電極を遮光性でありかつ多孔性の導電膜である膜厚数百オングストロームのイリジウム層14で構成し、前記第2の電極側からの酸素の侵入と、記基板側からの光照射とによって生じる光酸化によって非発光領域を形成するようにしたものである。他の部分については前記第1の実施例と同様に形成する。なおこの酸化イリジウム層は、開口率50%μm程度であった。
【0068】
前記第1の実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子と同様の効果を奏効するが、さらに、第2の電極が遮光性材料で構成されているため、背面からの光をすべて前面に送出することができ、輝度の更なる向上を図ることが可能となる。また、イリジウム層は柱状の結晶構造をとるため、ポーラスであり、酸素を透過しやすい構造を有しており、かつ導電性も良好であるため、電極としても有効である。さらにまたイリジウムは酸化されて酸化イリジウムとなり、この柱状結晶の周りに酸化イリジウム層が析出し、酸素非透過性構造となるため、イメージ画像形成後に、酸素の透過による劣化が生じることもない。
【0069】
なお、イリジウム自体は柱状の結晶構造をとるため、ポーラスであり、酸素を透過しやすい構造を有している。したがって、露光前にはイリジウム層の酸化を防ぐために、酸化防止膜を貼着しておき、使用直前にこの酸化防止膜を剥離し、光照射を行うようにすることにより、さらに良好なイメージ形成が可能となる。
【0070】
また、このように電極構成材料としては、イリジウムのように、その材料自体はポーラスな結晶構造をとるものを使用し、酸化されるとポーラス度が低下し、酸素を通さなくなるような材料を用いることにより、パターン形成後、発光層の劣化を生じるのを防ぐことができ、寿命を長くすることが可能となる。
【0071】
次に本発明の第3の実施例について説明する。
【0072】
前記第1の実施例では、第2の電極を光透過性材料で構成し、パターニングのための光照射を第2の電極側から行うようにしたが、この例では、図9に示すように、同様に透過率30%のアルミニウム電極4を第2電極として用い、表裏両面からの露光により、パターニングするようにしたことを特徴とするものである。
【0073】
かかる構成によれば、両面からの露光によって非発光領域が形成されるため、パターンの増大もなくマスクパターンに対して高精度のパターン形成が可能となる。
【0074】
次に本発明の第4の実施例について説明する。
【0075】
前記第1乃至3の実施例では、第2の電極を、酸素を透過し得る材料で構成し、パターニングのための酸素を第2の電極を介して外部から供給するようにしていたが、この例では、図10に示すように、第2の電極の形成に先立ち、前記発光層3の表面に酸素供給層として膜厚10nm程度の酸化イリジウム層10を形成したことを特徴とするものである。他の部分は図1に示した前記第1の実施例と全く同様に形成されているが、この例ではパターニングに際して、赤外線(IR)露光あるいは紫外線(UV)露光を行い、発光層3の表面近傍の酸化イリジウム層10を励起し、加熱することにより、この酸素が遊離せしめられるとともに、光エネルギーにより発光層を酸化し、酸化領域と化すことにより、非発光領域が形成されるようにしたものである。
【0076】
図11は、パターニング後の有機エレクトロルミネッセンス素子を示す図である。かかる構成によれば、外部から酸素を供給するのではなく、酸素供給層をあらかじめ介在させるようにしておき、光ビームによりこの層を励起し、酸素を発生させるようにしたものである。
【0077】
このようにして、容易に電子ビーム露光工程によってのみ発光パターンの形成を行うことが可能となる。
【0078】
なお、パターニング後に、この酸素供給層からの酸素の放出が問題となるような場合には、図12に示すように、酸素吸着材20を、カプセル状にして、埋め込んでおくようにし、最後にこのカプセルを外部からエネルギーを供給することにより、非接触で破壊し、脱酸素効果を奏効し得るようにすることも可能である。
【0079】
なお、第2の電極の表面はそのままでもよいが、後で保護膜を形成するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0080】
また、発光層を形成する材料としては、前記実施例に限定されることなく、適用可能であり、上記MDOPPVのほか、ポリ(p−フェニレンビニレン)(Poly(p-phenylene vinylene:PPV)とその誘導体(ポリ(2−メトキシ−5−ドデシロキシ−p−フェニレンビニレン)(Poly(2-methoxy-5-(2'-ethylhexyloxy)-p-phenylene vinylene) )、ポリ(2,5−ジオクチロキシ−p−フェニレンビニレン)(Poly(2,5-dioctyloxy-p-phenylene vinylene))、ポリ(2,5−ジノニロキシ−p−フェニレンビニレン)(Poly(2,5-dinonyloxy-p-phenylene vinylene))、ポリ(2,5−ジデシロキシ−p−フェニレンビニレン)(Poly(2,5-didecyloxy-p-phenylene vinylene)))をはじめ、ポリチオフェン(Polythiophene)とその誘導体(ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(Poly(3-hexylthiophene)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)(Poly(3-heptylthiophene) )、ポリ(3−オクチルチオフェン)(Poly(3-ocylthiophene))、ポリ(3−ノニルチオフェン)(Poly(3-nonylthiophene))、ポリ(3−デシルチオフェン)(Poly(3-decylthiophene))、ポリ(3−ウンデシルチオフェン)(Poly(3-undecylthiophene))、ポリ(3−ドデシルチオフェン)(Poly(3-dodecylthiophene))、ポリ[3−(p−ドデシルフェニル)チオフェン](Poly[3-(p-dodecylphenyl) thiophene)])等)、ポリフルオレン(Polyfluorene)とその誘導体(ポリ(9,9−ジヘキシルフルオレン)(Poly(9,9-dihexylfluorene))、ポリ(9,9−ジヘプチルフルオレン)(Poly(9,9-diheptylfluorene))、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(Poly(9,9-dioctylfluorene))、ポリ(9,9−ジデシルフルオレン)(Poly(9,9-didecylfluorene))、ポリ[9,9−ビス(p−ヘキシルフェニル)フルオレン](Poly[9,9-bis(p-hexylphenyl)fluorene])、ポリ[9,9−ビス(p−ヘプチルフェニル)フルオレン](Poly[9,9-bis(p-heptylphenyl)fluorene])、ポリ[9,9−ビス(p−オクチルフェニル)フルオレン](Poly[9,9-bis(p-octylphenyl)fluorene])等)、ポリアセチレン(Polyacetylene)誘導体(ポリ(1,2−ジフェニルアセチレン)(Poly(1,2-diphenylacetylene))、ポリ[1−フェニルー2−(p−ブチルフェニル)アセチレン]( Poly[1-phenyl-2-(p-butylphenyl)acetylene])、ポリ(1−フェニル−2−メチルアセチレン)( Poly(1-methyl-2-phenylacetylene))、ポリ(1−フェニル−2−エチルアセチレン)(Poly(1-ethyl-2-phenylacetylene))、ポリ(1−フェニル−2−ヘキシルアセチレン)(Poly(1-hexyl-2-phenylacetylene))、ポリ(フェニルアセチレン)(Poly(phenylacetylene))等、ポリピリジン(Polypyridine)、ポリ(ピリジルビニレン) Poly(pyridyl vinylene)、ポリフェニレン(Polyphenylene)、ポリフラン( Polyfurane)、ポリ(セレノフェン)( Polyselenophene)、ポリ(フェニレン−co−チエニレン)(Poly(phenylene-co-thienylene))、ポリ[1,4−ビス(2−チエニル)フェニレン](Poly[1,4-bis(2-thienyl)phenylene])、ポリ(フェニレンエチニレン)(Poly (phenyleneethynylene))とこれらの誘導体等の、主鎖が炭素同士の飽和(1重)結合と不飽和(2重または3重)結合の連続した繰り返し構造を持つ、いわゆる共役系高分子はもちろんのこと、トリス(8−ハイドロキシキノリン)アルミニウム(Tris(8-hydroxyquinoline)aluminum)(Alq)、クマリン6(Coumarin6, 3-(2-Benzothiazolyl)-7-(diethylamino)coumarin)、クマリン7(Coumarin7, 3-(2-Benzoimidazolyl)-7-(diethylamino)coumarin))、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(4−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(4-(Dicyanomethylene)-2-methyl-6-(4-dimethylaminostyryl)-4H-pyran)(DCM)、ナイルレッド(Nile Red)、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン(1,1,4,4-Tetraphenyl-1,3-butadiene)、N,N’−ジメチルキナクリドン( N,N-Dimethylquinacrydone) (DMQA)、1,2,3,4,5−ペンタフェニルシクロペンタジエン(1,2,3,4,5-Pentaphenylcyclopentadiene) (PPCP)、N.N’−ジフェニルーN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニルー4,4’−ジアミン(N, N'-Diphenyl-N,N'-bis(3-methylphenyl)-1,1'-biphenyl-4,4'-diamine) (TPD)、2−4−(ビフェニルー5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキシジアゾール(2-(4-Biphenyl)-5-(4-tert-butylphenyl)-1,3,4-oxidiazole) (PBD)、p−ターフェニル(p-Terphenyl)、p−クォーターフェニル( p-Quaterphenyl)、2,2’−ビチオフェン( 2,2'-Bithiophene)、2,2’:5,5’−ターチオフェン( 2,2':5',2''-Terthiophene)、αーヘキサチオフェン(a-Hexathiophene)、アントラセン( anthracene)、テトラセン( tetracene)、フタロシアニン( phthalocyanene)、ポルフィリン( porphyrin)等の蛍光色素及びこれらの蛍光色素を分子構造中に含む高分子、さらに上記の高分子及び蛍光色素をポリ(N−ビニルカルバゾール)(Poly(N-vinylcarbazole)) (PVK)、ポリ(メチルメタクリレート)(Poly(methylmethacrylate))(PMMA)、ポリカーボネート( Polycarbonate)、ポリスチレン( Polystyrene)、ポリ(メチルフェニルシラン)(Poly(methylphenylsilane))、 ポリ(ジフェニルシラン)(Poly(diphenylsilane))等の絶縁性高分子中に分散した材料等の、光酸化されうる有機電界発光材料全般に適用可能である。
【0081】
また、発光層を適宜選択することにより、単層構造あるいは、多層構造とし、カラー画像を形成するようにすることも可能である。
【0082】
第1乃至第3の実施例では、第1の電極として、ITOの他、導電性酸化物(アンチモンドープ酸化スズ(Sn02:Sb) (NESA)、フッ素ドープ酸化スズ(Sn02:F)、カドミウムインジウム酸化物(CdIn2O4) (CIO)、カドミウムスズ酸化物 (CdSnO4) (CTO)、酸化亜鉛 (ZnO)、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化レニウム(ReO2)、酸化イリジウム(IrO2)等)や導電性高分子(ポリピロール(polypyrrole)、ポリアニリン(polyaniline)、ポリチオフェン(polythiophene)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)( poly(3,4-ethylene dioxithiophene))(PEDOT)、ポリイソチアナフテン( polyisothianaphthene)等)等を用いた透明導電薄膜は勿論のこと、アルミニウム(Al)、マグネシウム( Mg)、カルシウム(Ca)、金(Au)、銀( Ag)、白金( Pt)、インジウム(In)、銅(Cu)、ネオジウム(Nd)、ニッケル(Ni)、スズ( Sn)等全ての半透明金属薄膜が利用可能である。
【0083】
第2の電極としても、アルミニウム(Al)に限定されることなく、カルシウム(Ca)、金(Au)、銀( Ag)、白金( Pt)、インジウム(In)、銅(Cu)、ネオジウム( Nd)などを用いた多孔質金属薄膜の他、酸化イリジウム(IrO2)、ポリピロール(polypyrrole)、ポリアニリン(polyaniline)、ポリ(チオフェン)(polythiophene)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)( poly(3,4-ethylene dioxithiophene))(PEDOT)、ポリイソチアナフテン( polyisothianaphthene)等が製膜条件により酸素を透過する多孔質膜とすることができ、利用可能である。
【0084】
第4の実施例では、電極として、導電性薄膜であればいかなる材料でも利用可能である。一方、酸素供給源として、酸化イリジウム(IrO2)に限らず、比較的小さなエネルギーによる励起で酸素を放出する物質、例えば酸化銀(Ag2O)、酸化クロム(CrO2)、酸化ルテニウム(RuO2)等が利用可能である。
【0085】
また、前記実施例では、発光層を第1および第2の電極で挟んだ構造について説明したが、電子注入層あるいは正孔注入層をこれらの電極と発光層との間に介在させた構造も有効である。またこの構造において、発光層自体は酸化領域を形成することなくそのまま残し、電子注入層あるいは正孔注入層に光選択酸化による非発光領域を形成するようにしてもよい。
【0086】
さらにまた、基板と第1の電極層にバッファ層などの他の層が介在していてもよく、あるいは各層相互間にも、バッファ層など他の層が介在していてもよいことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明してきたように、本発明によれば、TATが短く、製造が容易であることから、通常の有機エレクトロルミネッセンス表示装置だけでなく、購入した消費者が日光写真のような原理で所望のパターンを形成できるグリーティングカード、日曜大工センターのようなところで、即時に所望の文字を入れて販売する表札、自動車のナンバープレートなど、特にTATの短縮化の必要な種々の物品に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子を示す図
【図2】同素子の製造工程図
【図3】同素子による生成画像を示す図
【図4】同素子による生成画像を示す図
【図5】本発明の第1の実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子における光照射時間と発光強度との関係を示す図
【図6】アルミニウム電極を形成したときと形成しないとき光照射時間と発光強度との関係を示す図
【図7】透過率の小さいアルミニウム電極を用いたときの光照射時間と発光強度との関係を示す図
【図8】本発明の第2の実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子を示す図
【図9】本発明の第3の実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子を示す図
【図10】本発明の第4の実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子を示す図
【図11】本発明の第4の実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子を示す図
【図12】本発明の第4の実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子の変形例を示す図
【符号の説明】
【0089】
1ガラス基板
2第1の電極
3発光層
4第2の電極(アルミニウム)
14第2の電極(イリジウム)
10酸素供給層
20酸素吸着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成され、酸素分子を透過しうる程度の開口径をもつ開孔を有する導電膜からなる第2の電極とを備え、
前記発光層の一部の領域が、光と、前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により選択的に形成された酸化物層を形成しており、前記酸化物層の存在する領域は、非発光領域を構成していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
前記基板は、光透過性の基板、前記第1の電極は光透過性材料でそれぞれ構成されており、前記非発光領域は、前記第2の電極側からの酸素の侵入と、前記基板側からの光照射とによって生じる光酸化によって形成されたものである請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
前記第2の電極は、光透過性膜で構成されており、前記非発光領域は前記第2の電極を透過した光を用いた光選択酸化によって形成されたものである請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
前記第2の電極は、光透過性膜で構成されており、前記非発光領域は前記第2の電極を透過した光と、前記基板側からの光との両方を用いた光選択酸化によって形成されたものである請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
前記第2の電極は、多孔性のアルミニウムからなる請求項1乃至4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項6】
前記第2の電極は、可視光に対する光透過率が30%以上であることを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項7】
前記第2の電極は、遮光性導電膜から構成されている請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項8】
基板表面に、第1の電極を形成する工程と、
前記第1の電極上に発光層を形成する工程と、
前記発光層上に、酸素分子を透過しうる程度の開口径をもつ開孔を有する導電膜からなる第2の電極を形成し、発光層が前記第1および第2の電極で挟まれたサンドイッチ構造の素子を形成する工程と、
前記サンドイッチ構造の素子に対し、第1または前記第2の電極側から選択的に光照射を行い、光選択酸化により酸化物層からなる非発光領域を形成するパターン露光工程とを含む有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2の電極は、酸素および光の透過を許す程度の光透過性の多孔性薄膜であり、
前記パターン露光工程は、前記第2の電極側からの光照射によって光酸化を行う工程である請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記第2の電極は、酸素の透過を許す程度の遮光性の多孔性薄膜であり、
前記パターン露光工程は、前記第1の電極側からの光照射によって光酸化を行う工程である請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項11】
基板と、前記基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第2の電極とを備え、
前記第2の電極は、酸素分子を透過しうる程度の開口径をもつ開孔を有する導電膜で構成されており、
前記発光層は、光照射と前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により、選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置用基板。
【請求項12】
前記第2の電極は、酸素および光の透過を許す程度の光透過性の多孔性薄膜であり、
前記発光層は、前記第2の電極側からの光照射と前記第2の電極を介して到達した酸素とによる、光選択酸化により選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成されている請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用基板。
【請求項13】
前記第2の電極は、酸素の透過を許す程度の遮光性の多孔性薄膜であり、前記基板は光透過性の基板、前記第1の電極は光透過性材料で構成されており、
前記発光層は、前記第1の電極側からの光照射と前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成されている請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用基板。
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成され、酸素分子を透過しうる程度の開口径をもつ開孔を有する導電膜からなる第2の電極とを備え、
前記発光層の一部の領域が、光と、前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により選択的に形成された酸化物層を形成しており、前記酸化物層の存在する領域は、非発光領域を構成していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
前記基板は、光透過性の基板、前記第1の電極は光透過性材料でそれぞれ構成されており、前記非発光領域は、前記第2の電極側からの酸素の侵入と、前記基板側からの光照射とによって生じる光酸化によって形成されたものである請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
前記第2の電極は、光透過性膜で構成されており、前記非発光領域は前記第2の電極を透過した光を用いた光選択酸化によって形成されたものである請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
前記第2の電極は、光透過性膜で構成されており、前記非発光領域は前記第2の電極を透過した光と、前記基板側からの光との両方を用いた光選択酸化によって形成されたものである請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
前記第2の電極は、多孔性のアルミニウムからなる請求項1乃至4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項6】
前記第2の電極は、可視光に対する光透過率が30%以上であることを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項7】
前記第2の電極は、遮光性導電膜から構成されている請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項8】
基板表面に、第1の電極を形成する工程と、
前記第1の電極上に発光層を形成する工程と、
前記発光層上に、酸素分子を透過しうる程度の開口径をもつ開孔を有する導電膜からなる第2の電極を形成し、発光層が前記第1および第2の電極で挟まれたサンドイッチ構造の素子を形成する工程と、
前記サンドイッチ構造の素子に対し、第1または前記第2の電極側から選択的に光照射を行い、光選択酸化により酸化物層からなる非発光領域を形成するパターン露光工程とを含む有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2の電極は、酸素および光の透過を許す程度の光透過性の多孔性薄膜であり、
前記パターン露光工程は、前記第2の電極側からの光照射によって光酸化を行う工程である請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記第2の電極は、酸素の透過を許す程度の遮光性の多孔性薄膜であり、
前記パターン露光工程は、前記第1の電極側からの光照射によって光酸化を行う工程である請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項11】
基板と、前記基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第2の電極とを備え、
前記第2の電極は、酸素分子を透過しうる程度の開口径をもつ開孔を有する導電膜で構成されており、
前記発光層は、光照射と前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により、選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置用基板。
【請求項12】
前記第2の電極は、酸素および光の透過を許す程度の光透過性の多孔性薄膜であり、
前記発光層は、前記第2の電極側からの光照射と前記第2の電極を介して到達した酸素とによる、光選択酸化により選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成されている請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用基板。
【請求項13】
前記第2の電極は、酸素の透過を許す程度の遮光性の多孔性薄膜であり、前記基板は光透過性の基板、前記第1の電極は光透過性材料で構成されており、
前記発光層は、前記第1の電極側からの光照射と前記第2の電極を介して到達した酸素とを用いた光選択酸化により選択的に酸化物層を形成することにより、非発光領域を構成しうるように構成されている請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−286654(P2006−286654A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168943(P2006−168943)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【分割の表示】特願平11−199225の分割
【原出願日】平成11年7月13日(1999.7.13)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【分割の表示】特願平11−199225の分割
【原出願日】平成11年7月13日(1999.7.13)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
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