説明

有機エレクトロルミネッセンス表示装置

【課題】 白色発光の有機EL発光層とカラーフィルタ層とを組み合わせて構成した赤色、緑色及び青色のサブピクセルと、有機EL発光層からの白色発光を利用した白色のサブピクセルとを有するフルカラー表示の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、赤色及び/または緑色の発光強度の不足を補い、色再現性を改善する。
【解決手段】 白色光を発光する有機EL発光層50と、赤色、緑色及び青色の各サブピクセルに対応して有機EL発光層50の光照射側に設けられる各色に対応したカラーフィルタ層41〜43と、赤色及び緑色の各サブピクセルのうちの少なくとも1つのサブピクセルにおいて、有機EL発光層50とカラーフィルタ層41〜43の間に、短波長成分の光を吸収して、より長波長の光に変換する色変換層31及び32が設けられていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色、赤色、緑色、及び青色の各サブピクセルを有するフルカラー表示の有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の多様化に伴い、薄型でフルカラー表示可能な薄型表示装置への要望が高まっている。その1つとして、高効率・薄型・軽量・低視野角依存性等の特徴を有する有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)が注目されている。
【0003】
このような有機EL素子は、10V程度の低電圧で100〜100000cd/m2以上の高い発光輝度が得られるという利点を有する。このため、有機EL素子のフルカラーディスプレイへの応用が期待されている。
【0004】
この有機EL素子を用いた表示装置のフルカラー化技術としては、白色の有機EL素子を光源(バックライト)として用い、3原色のRGB(赤色、緑色及び青色)のカラーフィルタを介して発光するフィルタ方式、青色の有機EL素子を光源として用い、色変換層(CCM)により青色を赤色及び緑色に変換することにより、RGBのそれぞれを表示する方式、及び3原色の有機EL素子を基板上に並列することによりRGBをそれぞれ独立して発光させる方式が提案されている(非特許文献1など)。
【0005】
特許文献1では、青色の有機EL素子を光源として用い、色変換層(CCM)で青色光を赤色及び緑色に変換する方式の表示素子において、光源として用いる青色発光層に赤色発光成分を添加するとともに、カラーフィルタを併用する表示素子が提案されている。青色発光層に赤色発光成分を添加することにより赤色変換効率を向上させるとともに、発光層からの過剰の赤色発光成分についてはRGBの各色のカラーフィルタを用いることにより取り除いている。
【0006】
白色の有機EL素子を光源として用いるカラーフィルタ方式においては、1つの色の有機EL素子でフルカラー化を実現することができるので、表示装置の製造プロセスにおける複雑化を回避することができ、コスト面において有利である。このようなフィルタ方式においては、有機EL素子から発生された白色光は、3原色のカラーフィルタを通過する際に通過する色の成分以外の光が減衰する。このため、通過した3原色を混合することにより白色光を表示する場合には、元々の白色光の利用効率はおよそ3分の1程度となる。その結果、表示装置における消費電力が増加する。
【0007】
上記のような問題を解決するため、白色の有機EL素子を光源として、3原色(RGB)に白色(W)を加えたカラー化方式(RGBW方式)が提案されている(特許文献2など)。
【0008】
上記のRGBW方式では、白色光を点灯させる場合、カラーフィルタを用いず、白色光をそのまま利用することができるため、光の利用効率が良く、結果として消費電力を減少させることができる。
【0009】
しかしながら、上記のRGBW方式では、白色光をそのまま利用するため、他の3原色を発光させる場合に、一部の光の強度が弱くなる場合があり、その色を発光させる際に有機EL素子に与える電圧を高くしなければならない。その結果、その発光色を表示させる場合において消費電力が増加するという問題を生じる。また、その発光色の寿命が極端に悪くなり、焼きつきの原因ともなる。
【0010】
上記のような現象は、特に現在市場において要求されている色温度の高い白色(6500K程度)を点灯させるため、青色光と橙色光の補色の関係で白色光を点灯し、青色成分の光を強調するような場合に起こりやすい。そのような場合、赤色や緑色の発光強度が不足しがちになる。また、白色光のスペクトルが色温度の高い白色光(6500K程度)のスペクトルであるので、赤色や緑色の色再現性が悪くなるという問題を生じる。
【特許文献1】特開平10−255983号公報
【特許文献2】特開2004−311440号公報
【非特許文献1】社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA編集・発行)、「FPDガイドブック」、2003年10月発行、P110−111
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、白色発光の有機EL発光層とカラーフィルタ層とを組み合わせて構成した赤色、緑色及び青色のサブピクセルと、有機EL発光層からの白色発光を利用した白色のサブピクセルとを有するフルカラー表示の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、赤色及び/または緑色の発光強度の不足を補い、色再現性を改善することができる有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、白色、赤色、緑色、及び青色の各サブピクセルを有するフルカラー表示の有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、白色光を発光する有機EL発光層と、赤色、緑色及び青色の各サブピクセルに対応して有機EL発光層の光照射側に設けられる各色に対応したカラーフィルタ層と、赤色及び緑色の各サブピクセルのうちの少なくとも1つのサブピクセルにおいて、有機EL発光層とカラーフィルタ層の間に設けられる、短波長成分の光を吸収して、より長波長の光に変換するための色変換層とを備えることを特徴としている。
【0013】
本発明においては、赤色及び緑色の各サブピクセルのうちの少なくとも1つのサブピクセルにおいて、有機EL発光層とカラーフィルタ層の間に、短波長成分の光を吸収して、より長波長の光に変換する色変換層が設けられている。このため、有機EL発光層からの白色発光において不足する赤色及び/または緑色の発光強度を色変換層によって補うことができ、赤色及び/または緑色の色再現性を改善することができる。
【0014】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、RGBW方式の表示装置であるので、白色光をそのまま利用することができ、消費電力を抑制して、効率の良い表示を行うことができる。
【0015】
本発明において、有機EL発光層は、好ましくは、青色発光材料と橙色発光材料を含むことにより白色光を発光する有機EL発光層である。このような有機EL発光層において、色温度の高い白色を得るためには、一般に青色発光材料のピーク波長強度が橙色発光材料のピーク波長強度よりも大きくなるように設定される。このため、従来の有機エレクトロルミネッセンス表示装置においては、赤色及び/または緑色の発光強度が不足しがちであるが、本発明によれば、上述のように、赤色及び/または緑色の発光強度を補うことができるので、色再現性に優れた有機エレクトロルミネッセンス表示装置とすることができる。
【0016】
上記の有機EL発光層における青色発光材料の発光ピーク波長と橙色発光材料の発光ピーク波長の強度比(青色発光材料:橙色発光材料)は、1:1〜5:1の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは2:1〜4:1であり、最も好ましくは3:1程度である。強度比(青色発光材料:橙色発光材料)を1:1〜5:1の範囲内とすることにより、有機EL発光層からの発光色の色度範囲を(0.38,0.38)〜(0.26,0.26)程度とすることができ、その色温度を4000〜20000K程度とすることができる。また、強度比を3:1程度とすることにより、その色度を(0.31,0.33)程度とすることができ、色温度を6500K程度とすることができる。強度比をこのような範囲とすることにより、より純白に近い白色光を発光させることができる。
【0017】
青色発光材料の発光ピーク波長は430〜490nmの範囲内であることが好ましく、橙色発光材料の発光ピーク波長は550〜580nmの範囲内であることが好ましい。
【0018】
また、本発明においては、有機EL発光層を、青色発光層と橙色発光層の積層構造としてもよい。
【0019】
本発明においては、赤色及び緑色の各サブピクセルのうちの少なくとも1つのサブピクセルにおいて色変換層が設けられる。赤色サブピクセルにおいて設けられる色変換層としては、有機EL発光層より発光された光のうち赤色波長領域よりも短波長成分の光を吸収し、赤色波長領域の光に変換する色変換層が挙げられる。具体的には、例えば、570nmよりも短波長成分の光を吸収して570nmよりも長波長の光に変換できる発光材料を含有する色変換層が挙げられる。
【0020】
緑色サブピクセルに設けられる色変換層としては、有機EL発光層より発光された光のうち緑色波長領域よりも短波長成分の光を吸収して緑色波長領域の光に変換する色変換層が挙げられる。具体的に、例えば、480nmよりも短波長成分の光を吸収して480nmよりも長波長の光に変換できる発光材料を含有する色変換層が挙げられる。
【0021】
また、本発明においては、赤色、緑色及び青色の各サブピクセルに対応して各有機EL発光層の光照射側に各色に対応したカラーフィルタ層が設けられる。
【0022】
赤色サブピクセルに対応して設けられるカラーフィルタ層は、赤色波長領域を透過するものであることが好ましく、例えば、610〜700nmの波長領域において透過率70%以上を有し、575nm以下の可視光波長領域において透過率10%以下であるカラーフィルタ層が好ましく用いられる。
【0023】
緑色サブピクセルに対応して設けられるカラーフィルタ層としては、例えば、500〜550nmの波長領域において透過率70%以上を有し、470nm以下の可視光波長領域において透過率10%以下であり、かつ610nm以上の可視光波長領域において透過率10%以下であるものが好ましく用いられる。
【0024】
青色サブピクセルに対応して設けられるカラーフィルタ層としては、例えば、450〜490nmの波長領域において透過率70%以上を有し、560nm以上の可視光波長領域において透過率10%以下であるものが好ましく用いられる。
【0025】
白色サブピクセルにおいては、カラーフィルタ層及び色変換層を設けずに、有機EL発光層からの発光をそのまま外部に出射させることが好ましい。通常、白色光は、図7に示すような色度図において曲線で囲まれた部分、すなわち色度座標(x,y)が(0.333,0.333)を中心とする領域である。曲線で囲まれた中の曲線で示す部分の数値は色温度を示している。白色光の色温度は、2800〜∞K(ケルビン)程度の範囲であり、色温度が4000〜20000Kのものが、より純白色に近い色を呈する。本発明における有機EL発光層の白色光は、上述のように、色度範囲が(0.38,0.38)〜(0.26,0.26)の範囲内の白色光であることが好ましく、その色温度は4000〜20000K程度であることが好ましい。
【0026】
本発明における有機EL発光層、カラーフィルタ層、及び色変換層は、1つの基板上に設けられていてもよい。すなわち、有機EL発光層が基板上に設けられており、基板と有機EL発光層の間にカラーフィルタ層及び色変換層が設けられていてもよい。
【0027】
また、有機EL発光層が第1の基板上に設けられており、カラーフィルタ層及び色変換層が第2の基板上に設けられており、第2の基板上に設けられたカラーフィルタ層及び色変換層を、第1の基板上の有機EL発光層または第1の基板に貼り付けることにより構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、白色発光の有機EL発光層とカラーフィルタ層とを組み合わせて構成した赤色、緑色及び青色のサブピクセルと、有機EL発光層からの白色発光を利用した白色のサブピクセルとを有するフルカラー表示の有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、赤色及び/または緑色の発光強度の不足を補い、色再現性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を具体的な実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
図1は、本発明に従う一実施例の有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置)を示す断面図である。本実施例の有機EL表示装置においては、赤色を発光して表示する赤色サブピクセルR、緑色を発光して表示する緑色サブピクセルG、青色を発光して表示する青色サブピクセルB、及び白色を発光して表示する白色サブピクセルWが形成されており、RGBW方式のフルカラー表示の有機EL表示装置である。
【0031】
図1に示すように、赤色サブピクセルRの領域においては、基板1の上に、赤色カラーフィルタ41が設けられており、赤色カラーフィルタ41の上に赤色変換層31が設けられている。緑色サブピクセルGの領域においては、基板1上に緑色カラーフィルタ42が設けられており、緑色カラーフィルタ42の上に緑色変換層32が設けられている。
【0032】
青色サブピクセルBの領域には、基板1上に青色カラーフィルタ43が設けられている。
【0033】
白色サブピクセルWの領域には、基板1上にカラーフィルタ層も色変換層も設けられていない。
【0034】
上記のカラーフィルタ層41〜43及び色変換層31及び32が形成された基板1の上には、平坦化層18が形成されており、この平坦化層18の上に有機EL発光層50が設けられている。有機EL発光層50は、白色光を発光するEL素子である。本実施例において、有機EL発光層50は、青色発光材料と橙色発光材料を含んでおり、青色発光材料のピーク波長強度が橙色発光材料のピーク波長強度よりも大きくなっている。
【0035】
赤色サブピクセルRの領域においては、有機EL発光層50から出射された光を赤色変換層31で受ける。赤色変換層31においては、短波長成分の光を吸収して、より長波長の光に変換する。具体的には、緑色波長領域及び青色波長領域の光を吸収して、赤色波長領域の光に変換し、赤色波長領域の光を出射する。赤色変換層31から出射された光は、赤色カラーフィルタ層41を通り赤色波長領域の光のみを出射する。赤色変換層31において、短波長成分の光を長波長の光に変換して出射しているので、赤色波長領域の光をより強い強度で出射することができる。特に、有機EL発光層50からの発光は、青色波長領域の強度が強いので、このような短波長成分の光を利用して、赤色波長領域の光をより強く出射することができる。
【0036】
緑色サブピクセルGにおいては、有機EL発光層50からの光を緑色変換層32で受け、短波長成分の光を吸収して、より長波長の光に変換して出射する。具体的には、青色波長領域の光を吸収して、これを緑色波長領域の光に変換して出射することができる。色変換層32から出射された光は、緑色カラーフィルタ層42を通り緑色波長領域の光のみを透過して出射させることができる。青色波長領域の光を緑色波長領域の光に変換して出射することができるので、緑色波長領域の光の強度を高めて出射することができる。
【0037】
青色サブピクセルBの領域においては、有機EL発光層50からの白色光を、青色カラーフィルタ層43を通り出射させる。有機EL発光層50からの白色光は、上述のように青色波長領域の成分が強い白色光であるので、青色カラーフィルタ層43から強い強度で青色光を出射することができる。
【0038】
白色サブピクセルWの領域においては、色変換層及びカラーフィルタ層を介在させずに、有機EL発光層50からの白色光をそのまま出射させる。
【0039】
以上のように、本実施例では、赤色サブピクセルR及び緑色サブピクセルGにおいて、それぞれの色変換層31及び32により短波長成分の光を長波長成分の光に変換して出射させている。有機EL発光層50からの出射光は、青色波長成分が多く、赤色波長成分及び緑色波長成分の少ない白色光であるが、赤色波長成分及び緑色波長成分の光強度を色変換層31及び32で補うことができ、RGBの3原色をバランスよく出射させることができる。また、白色サブピクセルWにおいては、有機EL発光層50からの発光をそのまま出射しているので、青色波長領域の強度が強い、より純白色に近い白色光を発光させることができる。
【0040】
図2は、本発明に従う他の実施例の有機EL表示装置を示す断面図である。図2に示す実施例においては、第1の基板1の上に、平坦化膜18が設けられ、平坦化膜18の上に有機EL発光層50が設けられている。また、第2の基板9の赤色サブピクセルR及び緑色サブピクセルGの上には、図1に示す実施例と同様に、赤色フィルタ層41及び赤色変換層31と緑色フィルタ層42及び緑色変換層32がそれぞれ積層して設けられている。また、青色サブピクセルBの領域の第2の基板9の上には青色カラーフィルタ層43が設けられている。白色サブピクセルWの領域の第2の基板9の上にはカラーフィルタ層及び色変換層が設けられていない。
【0041】
カラーフィルタ層41〜43並びに色変換層31及び32が設けられた第2の基板9の上に接着剤が塗布されて接着剤層10が形成され、この接着剤層10を介して第1の基板1と貼り合わせることにより、本実施例の有機EL表示装置が構成されている。
【0042】
図2に示す実施例においても、赤色及び緑色の各サブピクセルの領域において、有機EL発光層50から発光した白色光は色変換層31及び32に吸収される。赤色変換層31においては赤色波長領域の光に変換され、緑色変換層32においては緑色波長領域の光に変換されて、それぞれカラーフィルタ層41及び42を透過して出射される。有機EL発光層50から発光した白色光は、青色波長領域の発光ピーク強度が大きい白色光であるので、このような短波長成分の光を、より長波長の光に変換することにより、赤色及び緑色の発光強度の不足を補うことができる。
【0043】
図3は、本発明に従うさらに他の実施例の有機EL表示装置を示す断面図である。図3に示す実施例においては、図2に示す実施例と同様に、第1の基板1の上に平坦化層18を介して有機EL発光層50が設けられている。また、第2の基板9の上の赤色サブピクセルRの領域には赤色カラーフィルタ層41及び赤色変換層31が設けられており、緑色サブピクセルGの領域の上には緑色カラーフィルタ層42及び緑色変換層32が設けられている。青色サブピクセルBの領域の上には、青色カラーフィルタ層43が設けられている。白色サブピクセルWの領域の上にはカラーフィルタ層及び色変換層が設けられていない。
【0044】
このようにカラーフィルタ層41〜43並びに色変換層31及び32が設けられた第2の基板9の上に接着剤が塗布され接着剤層10が形成されており、この接着剤層10を第1の基板1上の有機EL発光層50に接着させることにより、第1の基板1と第2の基板9とが貼り合わされて有機EL表示装置が構成されている。
【0045】
図3に示す実施例においても、図2に示す実施例と同様に、有機EL発光層50から出射された白色光における短波長成分を色変換層31及び32で長波長成分に変換することにより、赤色及び緑色の発光強度の不足を補うことができ、色再現性を改善することができる。
【0046】
図4は、本発明に従うより具体的な実施例の有機EL表示装置を示す断面図である。
【0047】
図4に示すように、ガラスまたはプラスチック等からなる透明の基板1の上には、酸化シリコン(SiO2)からなる層と窒化シリコン(SiNx)からなる層の積層膜11が形成されている。積層膜11の上には、TFT(薄膜トランジスタ)20が所定の領域に形成されている。図4に示す実施例の有機EL表示装置においては、赤色サブピクセルR、緑色サブピクセルG、青色サブピクセルB、及び白色サブピクセルWが設定されており、図4に示す実施例においては、これらのサブピクセルを駆動するための駆動素子としてTFT20が、各サブピクセル領域間の部分に設けられている。
【0048】
TFT20は、多結晶シリコン層12のソース領域の上にソース電極13s、ドレイン領域の上にドレイン電極13dを形成し、チャネル領域の上にゲート絶縁膜13を介してゲート電極15を設けることにより構成されている。
【0049】
ゲート電極15を覆うように、ゲート酸化膜14の上には第1の層間絶縁膜16が形成されている。また、ドレイン電極13d及びソース電極13sを覆うように、第1の層間絶縁膜16の上には第2の層間絶縁膜17が設けられている。第1の層間絶縁膜16及び第2の層間絶縁膜17は、例えばSiO2またはSiNxから形成されている。
【0050】
赤色サブピクセルRの領域においては、第2の層間絶縁膜17の上に、赤色カラーフィルタ層41が形成され、その上に赤色変換層31が形成されている。
【0051】
緑色サブピクセルGの領域の第2の層間絶縁膜17の上には、緑色カラーフィルタ層42が形成されており、その上に緑色変換層32が形成されている。
【0052】
青色サブピクセルBの領域の第2の層間絶縁膜17の上には、青色カラーフィルタ層43が形成されている。
【0053】
これらのカラーフィルタ層41〜43並びに色変換層31及び32を覆うように、第2の層間絶縁膜17の上には、例えばアクリル樹脂等からなる第1の平坦化層18が形成されている。
【0054】
赤色変換層31を形成する材料としては、例えば、赤色蛍光材料ローダミン6G(Rhodamine6G)をアクリル樹脂中に1.5重量%となるように分散した溶液を用い、これを塗布することによりフィルム状に形成して色変換層とすることができる。例えば、フィルムの吸収波長域は450〜580nm(吸収ピーク波長538nm、吸光度0.8)であり、発光波長域は570〜700nm(発光ピーク波長582nm)である。
【0055】
緑色変換層32を形成する材料としては、例えば、緑色蛍光材料クマリン153(Coumarin153)をアクリル樹脂中に1.5重量%となるように分散させた溶液を用い、これを塗布することによりフィルム状に形成して色変換層とすることができる。例えば、フィルムの吸収波長域340〜470nm(吸収ピーク波長418nm、吸光度0.8)であり、発光波長域は410〜620nm(発光ピーク波長486nm)である。
【0056】
赤色カラーフィルタ層41としては、図8に示す透過特性を有するものを用いた。また、緑色カラーフィルタ層42としては、図9に示す透過特性を有するものを用いた。青色カラーフィルタ層43としては、図10に示す透過特性を有するものを用いた。図8〜図10において、縦軸は透過率を示しており、横軸は波長を示している。
【0057】
第1の平坦化層18上の各サブピクセルの領域には、それぞれホール注入電極2が形成されている。このホール注入電極2は、例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜から形成されている。ホール注入電極2は、第1の平坦化層18及び第2の層間絶縁膜17に形成されたビアホールを通り、TFT20のドレイン電極13dに電気的に接続されている。
【0058】
各サブピクセルの領域以外の部分のホール注入電極2を覆うように、第2の平坦化層19が設けられている。従って、第2の平坦化層19は各サブピクセルの部分には設けられていない。
【0059】
ホール注入電極2及び第2の平坦化層19を覆うように、ホール注入層3が形成されている。このホール注入層3は、第1の注入層3aと第2の注入層3bの積層構造から形成されている。第1の注入層3aは、例えば、銅フタロシアニン(CuPc)から形成されており、その厚みは10nmである。第2の注入層3bは、例えば、フッ化炭素(CFx)から形成されており、その厚みは1nmである。
【0060】
ホール注入層3の上には、ホール輸送層4、発光層5、電子輸送層6、及び電子注入層7が順次形成されている。電子注入層7の上には、例えばフッ化リチウム(LiF)及びアルミニウム(Al)の積層構造からなる電子注入電極8が形成されている。
【0061】
ホール注入層4は、例えば、以下に示す構造を有するNPBから形成されている。NPBは、N,N′−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N′−ジフェニル−ベンジジンである。ホール輸送層4の厚さは、例えば240nmである。
【0062】
【化1】

【0063】
発光層5は、例えばNPBをホスト材料とし、以下に示す構造を有するt−BuDPNを第1の発光ドーパントとし、以下に示す構造を有するDBzRを第2の発光ドーパントとして用いて形成させることができる。t−BuDPNは、青色発光材料であり、DBzRは橙色発光材料である。従って、発光層5からは、白色光が発光される。t−BuDPNは5,12−ビス(4−ターシャリー−ブチルフェニル)−ナフタセンであり、DBzRは、5,12−ビス(4−(6−メチルベンゾチアゾール−2−イル)フェニル)−6,11−ジフェニルナフタセンである。
【0064】
発光層5の厚みは、例えば30nmである。発光層5から発光される白色光の色温度は、6500Kである。
【0065】
【化2】

【0066】
【化3】

【0067】
なお、発光層5に対し、例えば20.0重量%となるようにt−BuDPNをドープし、発光層5に対し、例えば3.0重量%となるようにDBzRをドープする。
【0068】
電子輸送層6は、例えば、以下に示す構造を有するTBADNをホスト材料とし、NPBを第1のドーパントとし、TBPを第2のドーパントとして形成することができる。TBADNは、ターシャリー−ブチル置換ジナフチルアントラセンであり、TBPは、1,4,7,10−テトラ−ターシャリー−ブチルペリレンである。電子輸送層6の厚さは、例えば60nmである。
【0069】
【化4】

【0070】
【化5】

【0071】
なお、電子輸送層6に対し、例えば35.0重量%となるようにNPBをドープし、電子輸送層6に対し例えば、2.5重量%となるようにTBPをドープする。
【0072】
電子注入層7は、例えば、以下に示す構造を有するAlq3から形成することができる。Alq3は、(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウムである。電子注入層7の厚さは、例えば10nmである。
【0073】
【化6】

【0074】
本発明において、カラーフィルタ層41〜43の厚みは、100nm〜1mmの範囲内であることが好ましく、本実施例では1.5μmである。また、色変換層31及び32の厚みは、100nm〜1mmの範囲内であることが好ましく、本実施例では1.5μmである。
【0075】
<有機EL表示装置の評価>
図4に示す実施例の有機EL表示装置についてその特性を評価した。また、比較例として、図4に示す実施例において色変換層31及び32を有しない以外は図4に示す実施例と同様のものを作製し評価した。
【0076】
図11は、図4に示す実施例の有機EL表示装置の白色サブピクセルからの白色光のELスペクトルWを示している。図11におけるスペクトルB、G、Rは、それぞれ青色波長領域、緑色波長領域及び赤色波長領域のELスペクトルを示しており、それぞれのカラーフィルタ層のみを透過したと想定した場合のELスペクトルである。
【0077】
図11に示すように、白色光のELスペクトルWは、青色領域のEL強度が強く、白色光から赤色カラーフィルタ層及び緑色カラーフィルタ層のみを透過して緑色波長領域及び赤色波長領域を得た場合、緑色波長領域及び赤色波長領域のEL強度(G及びR)が低くなることがわかる。
【0078】
また、緑色波長領域のELスペクトルGの中央部分が低く、赤色波長領域のELスペクトルRは短波長成分の割合が多くなっており、色再現性が悪くなっている。
【0079】
図12は、赤色カラーフィルタ層を透過したELスペクトルを示しており、「CFR」は、カラーフィルタ層のみを透過した場合のELスペクトルであり、「CCMR+CFR」は、色変換層及びカラーフィルタ層を透過した場合のELスペクトルである。
【0080】
図12に示すように、色変換層を透過させた場合のELスペクトルの方が、カラーフィルタ層のみを透過させた場合のEL強度よりも高くなっていることがわかる。
【0081】
図13は、緑色波長領域におけるELスペクトルを示しており、「CFC」は、緑色カラーフィルタ層のみを透過したELスペクトルを示しており、「CCMG+CFG」は、色変換層とカラーフィルタ層を透過した場合のELスペクトルを示している。
【0082】
図13に示すように、本発明に従い色変換層を通すことにより、緑色波長領域におけるEL強度が増大していることがわかる。
【0083】
<赤色サブピクセル>
本実施例の有機EL表示装置における赤色サブピクセルにおける白色光の色度は、CIE色度座標(0.643,0.355)となり、その発光効率は2.90cd/Aであった。
【0084】
一方、比較例の赤色変換層を用いていない有機EL表示装置において、色度はCIE色度座標(0.639,0.357)であり、発光効率は2.73cd/Aであった。
【0085】
このことから、本発明に従い赤色変換層を用いることにより、色度及び発光効率が向上することがわかる。
【0086】
<緑色サブピクセル>
本実施例の有機EL表示装置における緑色サブピクセルにおける白色光の色度は、CIE色度座標(0.260,0.554)となり、その発光効率は8.08cd/Aであった。
【0087】
一方、比較例の緑色変換層を用いていない有機EL表示装置においては、色度はCIE色度座標(0.257,0.536)であり、発光効率は7.93cd/Aであった。
【0088】
このことから、本発明に従い緑色変換層を用いることにより、色度及び発光効率が向上することがわかる。
【0089】
<青色サブピクセル>
本実施例の有機EL表示装置における青色サブピクセルにおける青色光の色度はCIE色度座標(0.111,0.919)であり、発光効率は3.33cd/Aであった。比較例の有機EL表示装置においても同様の値であった。
【0090】
<白色サブピクセル>
本実施例の有機EL表示装置における白色サブピクセルの白色光の色度は、CIE色度座標(0.301,0.343)であり、発光効率は14.7cd/Aであった。比較例の有機EL表示装置においても同様の値であった。
【0091】
以上の結果を表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
表1に示す結果から明らかなように、本発明に従う実施例においては、赤色サブピクセル及び緑色サブピクセルにおける発光効率を高めることができ、これによって色再現性を向上できることがわかる。従って、本発明によれば、白色光及び青色光の特性を変化させることなく、赤色光及び緑色光の発光効率を改善し、その色再現性を向上できることがわかる。
【0094】
図5は、図4に示す有機EL表示装置における各サブピクセルの配置状態を示す平面図である。図5に示すように各サブピクセルはストライプ状に配置されている。しかしながら、本発明におけるサブピクセルの配置はこのような配置に限定されるものではなく、例えば、図6に示すように赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、及び白色(W)のサブピクセルを配置させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に従う一実施例の有機EL表示装置を示す断面図。
【図2】本発明に従う他の実施例の有機EL表示装置を示す断面図。
【図3】本発明に従うさらに他の実施例の有機EL表示装置を示す断面図。
【図4】本発明に従うさらに他の実施例の有機EL表示装置の詳細を示す断面図。
【図5】本発明における各サブピクセルの配置状態を示す平面図。
【図6】本発明における各サブピクセルの他の配置状態を示す平面図。
【図7】白色光の色座標を示す図。
【図8】赤色カラーフィルタ層の透過特性を示す図。
【図9】緑色カラーフィルタ層の透過特性を示す図。
【図10】青色カラーフィルタ層の透過特性を示す図。
【図11】本発明の実施例における白色光のELスペクトル(W)を示す図。
【図12】赤色光のELスペクトルを示す図。
【図13】緑色光のELスペクトルを示す図。
【符号の説明】
【0096】
1…基板
2…ホール注入電極
3…ホール注入層
4…ホール輸送層
5…発光層
6…電子輸送層
7…電子注入層
8…電子注入電極
11…積層膜
12…多結晶シリコン層
13d…ドレイン電極
13s…ソース電極
14…ゲート絶縁膜
15…ゲート電極
16…第1の層間絶縁膜
17…第2の層間絶縁膜
18…第1の平坦化層
19…第2の平坦化層
20…薄膜トランジスタ(TFT)
31…赤色変換層
32…緑色変換層
41…赤色フィルタ層
42…緑色フィルタ層
43…青色フィルタ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色、赤色、緑色、及び青色の各サブピクセルを有するフルカラー表示の有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、
白色光を発光する有機EL発光層と、
赤色、緑色及び青色の前記各サブピクセルに対応して前記有機EL発光層の光照射側に設けられる各色に対応したカラーフィルタ層と、
赤色及び緑色の前記各サブピクセルのうちの少なくとも1つのサブピクセルにおいて、前記有機EL発光層と前記カラーフィルタ層の間に設けられる、短波長成分の光を吸収して、より長波長の光に変換する色変換層とを備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
前記有機EL発光層が、青色発光材料と橙色発光材料を含むことにより構成されており、青色発光材料のピーク波長強度が橙色発光材料のピーク波長強度よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
前記青色発光材料の発光ピーク波長が430〜490nmの範囲内であり、前記橙色発光材料の発光ピーク波長が550〜580nmの範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
前記青色発光材料の発光ピーク波長と前記橙色発光材料の発光ピーク波長の強度比(青色発光材料:橙色発光材料)が、1:1〜5:1の範囲内であることを特徴とする請求項2または3に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
赤色及び緑色の両方のサブピクセルにおいて、前記色変換層が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項6】
前記有機EL発光層が基板上に設けられており、前記基板と前記有機EL発光層の間に前記カラーフィルタ層及び前記色変換層が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項7】
前記有機EL発光層が第1の基板上に設けられており、前記カラーフィルタ層及び前記色変換層が第2の基板上に設けられており、前記第2の基板上の前記カラーフィルタ層及び前記色変換層を、前記第1の基板上の前記有機EL素子または前記第1の基板に貼り付けることにより構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−338910(P2006−338910A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159404(P2005−159404)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】