説明

有機エレクトロルミネッセンス表示装置

【課題】紫外線による有機EL素子部の劣化を抑え、駆動電圧の上昇を抑制することができ、かつ良好な色表示品位を保つことができる有機エレクトロルミネッセンス表示装置を得る。
【解決手段】赤色発光領域、緑色発光領域、青色発光領域、及び白色発光領域が設けられ、白色発光の有機EL素子部と、有機EL素子部に対して発光取り出し側に設けられる透光性基板1と、赤色発光領域、緑色発光領域、及び青色発光領域において、有機EL素子部からの白色発光を各発光領域に対応する色に変換するため、有機EL素子部に対して発光取り出し側に設けられる色変換層CFR、CFG、CFBとを備え、白色発光領域において、透光性基板1と、有機EL素子部の間に、波長380nmでの光吸収率が10%以上である紫外線吸収層30が設けられていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の多様化に伴い、従来から一般に使用されているCRTに比べ、消費電力の少ない平面表示素子として、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を用いたディスプレイの開発が期待されている。
【0003】
また、有機EL素子は、蛍光灯などに代わる無公害(水銀レス)の照明デバイスとしても期待されている。
【0004】
有機EL素子では、電子注入電極と、ホール注入電極とからそれぞれ電子とホールを発光層へ注入することによって、電子とホールを発光層で再結合させて有機分子を励起状態にする。そして、この励起された有機分子が、基底状態へと戻るときに発する蛍光によって発光する。この有機EL素子では、電子輸送性の材料、ホール輸送性の材料、及び発光性の材料をそれぞれ多層構造として積層することによって、発光効率を高効率化することができることが知られている。
【0005】
また、近年、発光波長の異なる複数の発光層を含む有機EL素子が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この特許文献1には、オレンジ色を発光する第1発光層と、青色を発光する第2発光層とを含む有機EL素子が開示されている。この青色の発光とオレンジ色の発光とにより、白色の発光を得ることができる。
【0006】
これらの有機EL素子をディスプレイに応用するには、光の3原色(RGB)を発光する素子を、画素中の対応する位置にそれぞれ形成する方法があるが、製造プロセスが複雑になるという欠点がある。これに対し、白色に発光する素子をRGBの単色光を透過させるカラーフィルタ層とを組み合わせて用いることにより、複雑な製造プロセスを回避してフルカラー表示を実現する方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0007】
近年、光の3原色である赤色(R)、緑色(G)、青色(B)に、白色(W)の発光領域を画素中に加えることで、ディスプレイ上で白色を表示する際、RGBの領域を発光させる代わりに、Wの領域を発光させて、消費電力を少なく抑える有機EL表示装置が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。つまり、白色に発光する素子を用いてカラーフィルタで単色光に変換する場合、カラーフィルタを透過する光は損失になるが、白色の発光領域ではカラーフィルタを用いないため、消費電力を大幅に低減することができる。
【特許文献1】特開2000−243563号公報
【特許文献2】特開平10−12383号公報
【特許文献3】特開2004−334204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の白色の発光領域を用いる有機EL表示装置は、RGBの発光領域では、カラーフィルタを用いているが、Wの発光領域ではカラーフィルタを用いていない。カラーフィルタは紫外線をほとんど透過しないため、RGBの発光領域では、太陽光等などの外光からの紫外線が直接有機EL素子に入射して悪影響を及ぼすことはない。ところが、カラーフィルタを用いていないWの発光領域においては、紫外線が直接入射して、有機EL素子が劣化し、駆動電圧が上昇したり、素子寿命が低下する。このため、表示装置全体の消費電力が増加したり、寿命が低下してしまうという問題を生じる。
【0009】
また、上述のように、オレンジ色発光層と青色発光層などの2つの発光層を積層して白色発光層としている有機EL素子においては、有機EL素子の劣化により、発光バランスが崩れ、白色発光を得ることができないなどの問題を生じる。
【0010】
本発明の目的は、紫外線による有機EL素子の劣化を抑え、駆動電圧の上昇を抑制することができ、かつ良好な色表示品位を保つことができる有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の有機EL表示装置は、赤色発光領域、緑色発光領域、青色発光領域、及び白色発光領域が設けられ、白色発光の有機EL素子部と、有機EL素子部に対して発光取り出し側に設けられる透光性基板と、赤色発光領域、緑色発光領域、及び青色発光領域において、有機EL素子部からの白色発光を各発光領域に対応する色に変換するため、有機EL素子部に対して発光取り出し側に設けられる色変換層とを備えており、白色発光領域において、透光性基板と、有機EL素子部の間に、波長380nmでの光吸収率が10%以上である紫外線吸収層が設けられていることを特徴としている。
【0012】
本発明に従い、白色発光領域において、透光性基板と有機EL素子部の間に、波長380nmでの光吸収率が10%以上である紫外線吸収層を設けることにより、白色発光領域から入射する紫外線を減少させることができ、紫外線による有機EL素子の劣化を抑制することができる。紫外線吸収層における波長380nmでの光吸収率を10%以上とすることにより、劣化による駆動電圧上昇を抑制する効果を急激に得ることができるようになる。
【0013】
また、赤色発光領域、緑色発光領域及び青色発光領域において、透光性基板と、有機EL素子部の間に色変換層が設けられており、該色変換層の上に平坦化膜が設けられている場合、この平坦化膜を、白色発光領域において、紫外線吸収層として用いることができる。平坦化膜を紫外線吸収層として用いることにより、紫外線吸収層を形成する工程を別途設ける必要がなくなり、製造工程を簡略化することができる。
【0014】
また、本発明における有機EL素子が、オレンジ色発光層と青色発光層の積層構造からなる白色発光層を有する場合、紫外線による劣化で、オレンジ色発光層と青色発光層の発光バランスが崩れ、発光する色調が変化する場合があるが、本発明によれば、このような有機EL素子の劣化を抑制することができるので、良好な色表示品位を保つことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、紫外線による有機EL素子部の劣化を抑え、駆動電圧の上昇を抑制することができ、かつ良好な色表示品位を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体的な実施形態により説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に従う第1の実施形態の有機EL表示装置の一例を示す断面図である。
【0018】
図1に示すように、有機EL表示装置の表示領域WLは、赤色発光領域(領域R)、緑色発光領域(領域G)、青色発光領域(領域B)、及び白色発光領域(領域W)に分けられており、領域Rには色変換層としての赤色カラーフィルタ層CFR、領域Gには色変換層としての緑色カラーフィルタ層(CFG)、領域Bには色変換層としての青色カラーフィルタ層(CFB)が設けられており、領域Wには色変換層は設けられていない。従って、領域Wでは、有機EL素子部から発光した光は、色変換層としてのカラーフィルタ層を通らずにそのまま出射される。
【0019】
以下、図1に示す有機EL表示装置の詳細な構造について説明する。
【0020】
図1に示すように、ガラスまたはプラスチックからなる透光性基板1の上に、例えば酸化シリコン(SiO2)からなる層と窒化シリコン(SiNx)からなる層との積層膜11が形成されている。積層膜11の上には、複数のTFT(薄膜トランジスタ)20が、領域R、G、B及びWのそれぞれに対応して形成されている。各TFT20は、チャネル領域12中に、ドレイン電極13d、ソース電極13s、ゲート酸化膜14及びゲート電極15から構成されている。チャネル領域12は、例えばポリシリコン層から形成され、チャネル領域12の上に、ドレイン電極13d及びソース電極13sが形成される。チャネル領域12の上には、ゲート酸化膜14を介して、ゲート電極15が形成される。
【0021】
各TFT20のドレイン電極13dは、各領域R、G、B及びW毎に設けられるホール注入電極2に接続される。ソース電極13sは、電源線(図示せず)に接続される。TFT20により、各領域の画素が駆動される。
【0022】
ゲート電極15を覆うように、ゲート酸化膜14上に、第1の層間絶縁膜16が形成される。また、ドレイン電極13d及びソース電極13sを覆うように、第1の層間絶縁膜16の上に第2の層間絶縁膜17が形成される。ゲート電極15は、信号線(図示せず)に接続されている。なお、ゲート酸化膜14は、例えば窒化シリコンからなる層と酸化シリコンからなる層との積層構造を有する。また、第1の層間絶縁膜16は、例えば酸化シリコンからなる層と窒化シリコンからなる層との積層構造を有し、第2の層間絶縁17は、例えば窒化シリコンからなる。
【0023】
第2の層間絶縁膜17の上には、領域R、G及びBのそれぞれに対応して、赤色カラーフィルタ層CFR、緑色カラーフィルタ層CFG、及び青色カラーフィルタ層CFBがそれぞれ形成されている。赤色カラーフィルタ層CFRは、赤色の波長領域の光を透過させる。緑色カラーフィルタ層CFGは、緑色の波長領域の光を透過させる。青色カラーフィルタ層CFBは、青色の波長領域の光を透過させる。
【0024】
上記の各カラーフィルタ層は、ガラスまたはプラスチックなどの材料から形成することかできる。また、各カラーフィルタ層として、入射した光の波長を変換して出射するCCM(色彩転換媒体)を用いてもよい。また、ガラスまたはプラスチック等の材料とCCMの両方を用いて色変換層を形成してもよい。
【0025】
第2の層間絶縁膜17の上には、上記の各カラーフィルタ層を覆うように、平坦化膜18が形成されている。カラーフィルタ層が設けられていない領域Wにおいては、平坦化膜18と同一の材料から紫外線吸収層30が形成されている。平坦化膜18と紫外線吸収層30は同じ材料から形成することができるものであり、同一の製造工程で形成することができる。平坦化膜18及び紫外線吸収層30は以下のようにして形成することができる。
【0026】
例えば、アクリル系の感光性樹脂をスピンコート法により塗布した後、恒温槽やホットプレート等でプリベーク(例えば、80℃で10分間)を行う。その後、ドレイン電極13d上の感光性樹脂を露光し、現像することで、コンタクトホールを形成し、さらにポストベーク(例えば、190℃で15分間)を行うことにより、樹脂を完全に固める。
【0027】
図1に示す実施形態においては、紫外線吸収層30の厚みを、平坦化膜18の厚みよりも厚くしている。このような場合には、上記と同様にして、平坦化膜18と同じ厚みの紫外線吸収層30を形成した後、領域Wの部分にのみ感光性樹脂を塗布し、プリベークし、この部分の厚みを厚くし、その後上記と同様にしてドレイン電極13d上の感光性樹脂を露光し、現像してコンタクトホールを形成し、その後ポストベークを行う。
【0028】
平坦化膜18及び紫外線吸収層30の上に、スパッタ法等により、インジウム−錫酸化物(ITO)等からなる透明導電膜を形成し、フォトリソプロセスにより透明導電膜上にレジストパターンを形成した後、エッチングすることにより、ホール注入電極2を形成する。なお、ホール注入電極2とドレイン電極13dは、コンタクトホールにより電気的に接続されている。
【0029】
ホール注入電極2の上には、有機EL素子部が形成されている。有機EL素子部は、ホール注入電極2上に、ホール注入層3、ホール輸送層4、オレンジ色に発光するオレンジ色発光層5a、青色に発光する青色発光層5b、電子輸送層6、電子注入層7及び電子注入電極8をこの順に積層することにより形成されている。
【0030】
ホール注入電極2は、領域R、G、B及びW毎に形成されており、これらの領域の間においては、ホール注入電極2を覆うように、絶縁性の画素分離膜19が形成されている。なお、ホール注入電極2は、例えば厚さ100nmのITO等の透明導電膜から形成されている。
【0031】
ホール注入電極2及び画素分離膜19を覆うように、ホール注入層3が全体の領域の上に形成されている。ホール注入層3は、例えば、厚さ1nmのフッ化炭素(CFx)から形成されている。
【0032】
ホール注入層3の上には、ホール輸送層4が形成されている。ホール輸送層4は、例えば厚さ60nmの以下の(化1)に示す構造を有するNPB(N,N′−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N′−ジフェニルベンジジン)から形成されている。
【0033】
【化1】

【0034】
なお、ホール輸送層を形成するホール輸送性材料としては、一般に、トリアリールアミン誘導体、ベンジジン誘導体などを用いることができる。
【0035】
ホール輸送層4の上には、オレンジ色発光層5aが形成されている。オレンジ色発光層5aは、ホスト材料に第1のドーパント及び第2のドーパントがドープされた構成を有している。オレンジ色発光層5aは、例えば厚さ30nmを有する。オレンジ色発光層5aのホスト材料としては、例えばホール輸送層4の材料と同じNPBを用いることができる。
【0036】
オレンジ色発光層5aの第1のドーパントとしては、例えば(化2)に示されるtBuDPN(5,12−ビス(4−ターシャリーブチルフェニル)ナフタセン)を用いることができる。この第1のドーパントをオレンジ色発光層5aに対して20重量%となるようにドープする。
【0037】
【化2】

【0038】
オレンジ色発光層5aの第2のドーパントとしては、例えば、(化3)に示されるDBzR(5,12−ビス(4−(6−メチルベンゾチアゾール−2−イル)フェニル)−6,11−ジフェニルナフタセン)を用いることができる。この第2のドーパントをオレンジ色発光層5aに対して3重量%となるようにドープする。
【0039】
【化3】

【0040】
オレンジ色発光層5aにおいて、第2のドーパントが発光し、第1のドーパントは、その最高被占分子軌道(HOMO)レベルと最低空分子軌道(LUMO)レベルが共に、ホスト材料と第2のドーパントのレベルの中間の値をもつため、ホスト材料から第2のドーパントへのエネルギー移動を促進することにより、第2のドーパントの発光を補助する役割を担う。これにより、オレンジ色発光層5aは、500nmよりも大きく、650nmよりも小さいピーク波長を有するオレンジ色を発光する。
【0041】
次に、オレンジ色発光層5aの上に、青色発光層5bを形成する。青色発光層5bは、ホスト材料に第1のドーパント及び第2のドーパントがドープされた構成を有する。なお、青色発光層5bは、例えば厚さ40nmを有する。
【0042】
青色発光層5bのホスト材料として、例えば(化4)に示されるTBADN(2−ターシャリーブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン)を用いることができる。
【0043】
【化4】

【0044】
青色発光層5bの第1のドーパントとしては、例えば、ホール輸送層4の材料と同じNPBを用いることができる。この第1のドーパントを青色発光層5bに対して、10重量%となるようにドープする。
【0045】
青色発光層5bの第2のドーパントとしては、例えば、(化5)に示されるTBP(1,4,7,10−テトラ−ターシャリーブチルフェニレン)を用いることができる。この第2のドーパントを青色発光層5bに対して、2.5重量%となるようにドープする。
【0046】
【化5】

【0047】
青色発光層5bにおいて、第2のドーパントが発光し、第1のドーパントは、ホール輸送性材料からなり、ホールの輸送を促進し、青色発光層5b内でのキャリアの再結合を促進することにより、第2のドーパントの発光を補助する役割を担う。これにより、青色発光層5bは、400nmよりも大きく500nmよりも小さいピーク波長を有する青色を発光する。
【0048】
次に、青色発光層5bの上に、電子輸送層6、電子注入層7、及び電子注入電極8を形成する。
【0049】
電子輸送層6は、例えば厚さ10nmの(化6)で示されるAlq3(トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム)から形成される。
【0050】
【化6】

【0051】
電子注入層7は、例えば、厚さ1nmのフッ化リチウム(LiF)から形成され、電子注入電極8は、例えば、厚さ200nmのアルミニウム(Al)から形成される。
【0052】
図2は、領域R、G、B及びWの配置状態の一例を示す平面図である。
【0053】
図1に示す有機EL表示装置においては、図2に示すように、領域R、G、B及びWが一列に配置されている。各領域の面積が異なっているのは、各領域における発光強度の違いを補整するためである。
【0054】
各領域の配置は、例えば図3に示すような四角形を4つの四角形に分割したような配置であってもよい。
【0055】
図4は、赤色カラーフィルタ層CFR、緑色カラーフィルタ層CFG及び青色カラーフィルタ層CFBの吸収スペクトルを示す図である。図4において、縦軸は各カラーフィルタ層の光透過率を示し、横軸は各カラーフィルタ層の透過する光の波長を示している。図4において、赤色カラーフィルタ層CFRの吸収スペクトルを〇、緑色カラーフィルタ層CFGの吸収スペクトルを△、青色カラーフィルタ層CFBの吸収スペクトルを□で示している。
【0056】
図4に示すように、紫外線領域(400nm以下)では、全てのカラーフィルタ層において、その透過率は40%以下(吸収率60%以上)となっており、波長380nmにおいては、その透過率は10%以下(吸収率90%以上)となっており、殆どの紫外線が透過しない。このため、カラーフィルタ層を配置している領域R、G及びBにおいては、紫外線による劣化等の悪影響を受けることが殆どない。
【0057】
本実施例においては、領域Wにおいて、紫外線吸収層30を形成している。紫外線吸収層30は、アクリル系の感光性樹脂から形成しており、その厚みは2.0μmである。
【0058】
ここで、紫外線吸収層における紫外線の吸収率と光劣化との関係を検討するため、図5に示す有機EL素子を作製した。
【0059】
図5に示すように、ガラス基板1の上に、スピンコート法によりアクリル系の感光性樹脂からなる紫外線吸収層30を、種々の膜厚となるように調整して塗布し、ホットプレートにて190℃で15分間ベークすることにより、硬化させた。この上に、ITOからなるホール注入電極2(陽極)を100nmの膜厚で形成し、ホール注入電極2が形成されたガラス基板1を中性洗剤を用いて洗浄し、アセトンに浸漬して10分間超音波洗浄を行い、続いてエタノールに浸漬して10分間の超音波洗浄を行った後、オゾンクリーナーにてガラス基板1の表面の洗浄を行った。次に、ホール注入電極(陽極)2の上に、CHF3ガスを用いたプラズマCVD法によりCFxからなるホール注入層3を形成した。
【0060】
ホール注入層3の上に、膜厚60nmのNPBからなるホール輸送層4を真空蒸着法により形成した。ホール輸送層4の上に、膜厚30nmのオレンジ色発光層5aを真空蒸着法により形成した。オレンジ色発光層5aは、ホスト材料としてNPBを含み、ドーパントとしてtBuDPNを20重量%及びDBzRを3重量%含んでいる。
【0061】
オレンジ色発光層5aの上に、厚さ40nmの青色発光層5bを真空蒸着法により形成した。青色発光層5bは、ホスト材料としてTBADNを含み、ドーパントとしてNPBを10重量%、及びTBPを2.5重量%含んでいる。
【0062】
青色発光層5bの上に、Alq3からなる電子輸送層6を厚さ10nmで形成し、その上にLiFからなる電子注入層7を1nmの厚みで形成し、Alからなる電子注入電極8を200nmの厚さで形成した。
【0063】
真空蒸着法は、いずれも真空度1×10-6Torrの雰囲気中において、基板温度制御を行わずに行った。
【0064】
紫外線吸収層30の厚みを0.5μm、1.0μm、1.5μm、2.0μm、2.5μm、3.0μm、及び3.5μmの厚みでそれぞれ形成した。
【0065】
上記のようにして、紫外線吸収層の厚みを変えて形成した各有機EL素子について、光照射後の電圧上昇を測定した。初期駆動電圧は、いずれの有機EL素子についても6.5Vであった。なお、電流密度が20mA/cm2となるように駆動電圧を調整し、初期駆動電圧及び光照射後の駆動電圧を測定した。光照射条件としては、エアマス(AirMass:以下、AMと呼ぶ)1.5における100mW/cm2の光を30時間照射した。
【0066】
各有機EL素子について、光照射後の電圧上昇値を求め、紫外線吸収層の膜厚の違いにより生じる波長380nmでの光吸収率と光照射後の電圧上昇の関係を表1及び図6に示した。
【0067】
【表1】

【0068】
表1及び図6に示すように、波長380nmでの光吸収率が、10%以上となることにより、急激に光照射後の電圧上昇値が低くなる。従って、紫外線吸収層における波長380nmでの光吸収率を10%以上とすることにより、劣化による駆動電圧の上昇を抑制することができ、消費電力の低減及び長寿命化を図ることができる。
【0069】
また、紫外線吸収層の膜厚が、1.0μm(波長380nmでの光吸収率5.3%)の有機EL素子と、紫外線吸収層の膜厚2.0μm(波長380nmでの光吸収率13.5%)の有機EL素子について、光照射後の色度の変化を測定した。
【0070】
光照射前の有機EL素子の色度は、共にCIEx=0.31,CIEy=0.33であった。ここで、CIExとCIEyは、それぞれ色空間をXY座標系で表したCIE表色系でのx座標、y座標である。光照射後において、紫外線吸収層の膜厚が2.0μmの場合は、CIEx=0.31,CIEy=0.34とほとんど変化はなかったが、紫外線吸収層の膜厚が1.0μmの場合は、CIEx=0.33,CIEy=0.40とオレンジ寄りの色に変化した。これは、紫外線吸収層の膜厚が1.0μmになると、紫外線による青色発光材料の劣化が、オレンジ発光材料に比べて大きく進行し、青色の発光強度が相対的に低下したためであると考えられる。
【0071】
(第2の実施形態)
図7は、本発明に従う第2の実施形態の有機EL表示装置の一例を示す断面図である。図7に示す有機EL表示装置は、有機EL素子部からの発光を駆動回路が設けられた基板側と反対側から取り出す、いわゆるトップエミッション型の有機EL表示装置である。
【0072】
図7に示す有機EL表示装置においては、図1に示す有機EL表示装置と同様に、基板1上に、積層膜11、TFT20、第1の層間絶縁膜16、第2の層間絶縁膜17、平坦化膜18、画素分離膜19が形成されており、その上に有機EL素子部が形成されている。
【0073】
有機EL素子部の上方には、透明の接着剤層23を介して封止基板21が接着されている。封止基板21の接着面の上には、領域R、G及びBに対応して、赤色カラーフィルタ層CFR、緑色カラーフィルタ層CFG及び青色カラーフィルタ層CFBが形成されている。封止基板21の接着剤側の表面上には、これらのカラーフィルタ層、CFR、CFG、CFGを覆うように、保護膜22が形成されている。保護膜22は、例えば、アクリル系の光硬化性樹脂により形成することができる。
【0074】
領域Wにおいては、この保護膜22の厚みを厚く形成することにより、紫外線吸収層30が形成されている。本実施例では、紫外線吸収層30の厚みは1.5μmとなるように形成されている。
【0075】
本実施例において、封止基板21としては、例えば、ガラス、酸化シリコン(SiO2)からなる層、または窒化シリコン(SiNx)からなる層から形成することができる。
【0076】
本実施例の有機EL表示装置において、基板1は、不透明な材料から形成されていてもよい。ホール注入電極2は、例えば、膜厚約50nmのITOと膜厚100nmのアルミニウム、クロムまたは銀、あるいはそれらの合金とを積層することにより形成される。この場合、ホール注入電極2は、有機EL素子から出射された光を、封止基板21側へ反射する。
【0077】
電子注入電極7は、透明な材料から形成されている。電子注入電極7は、例えば、膜厚100nmのITOと膜厚20nmの銀とを積層することにより形成することができる。
【0078】
図7に示す有機EL表示装置におけるその他の構成は、図1に示す有機EL表示装置とほぼ同様である。
【0079】
図7に示す有機EL表示装置において、有機EL素子部から出射された白色光は、領域R、G及びBにおいては、透明の接着剤層23、保護膜22、各カラーフィルタ層及び透明の封止基板21を通り、それぞれ、赤色光、緑色光及び青色光として外部に取り出される。一方、領域Wにおいては、カラーフィルタ層は存在しておらず、有機EL素子部からの着色光は、透明の接着剤層23、紫外線吸収層30、及び透明の封止基板21を通り、直接白色光として、外部に取り出される。
【0080】
本実施例の有機EL表示装置においては、カラーフィルタ層が設けられていない領域Wにおいて、膜厚1.5μmの紫外線吸収層30が設けられている。この紫外線吸収層30は、波長380nmの光吸収率が10%以上であり、外部から有機EL素子部に浸入する紫外線をカットすることができる。このため、本実施例の有機EL表示装置においては、紫外線による有機EL素子部の劣化を抑え、駆動電圧の上昇を抑制することができる。また、有機EL素子部における発光のバランスの劣化を抑えることができ、良好な色表示品位を保つことができる。
【0081】
図7に示す有機EL表示装置は、トップエミッション構造であり、TFT上の領域も画素領域として用いることができる。このため、より広い領域を画素領域として用いることができるので、有機EL表示装置の輝度をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に従う第1の実施形態の有機EL表示装置を示す断面図。
【図2】領域R、G、B及びWの配置の一例を示す平面図。
【図3】領域R、G、B及びWの配置の他の例を示す平面図。
【図4】赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタ及び青色カラーフィルタにおける各波長における透過率を示す図。
【図5】波長380nmでの光吸収率と光照射後の電圧上昇との関係を検討するため作製した有機EL表示装置の構造を示す断面図。
【図6】波長380nmでの光吸収率と光照射後の電圧上昇との関係を示す図。
【図7】本発明に従う第2の実施形態に有機EL表示装置を示す断面図。
【符号の説明】
【0083】
1…基板
2…ホール注入電極
3…ホール注入層
4…ホール輸送層
5a…オレンジ色発光層
5b…青色発光層
6…電子輸送層
7…電子注入層
8…電子注入電極
11…積層膜
14…ゲート酸化膜
16…第1の層間絶縁膜
17…第2の層間絶縁膜
18…平坦化膜
19…画素分離膜
20…TFT
21…封止基板
22…保護膜
23…接着剤層
30…紫外線吸収層
CFR…赤色カラーフィルタ層
CFG…緑色カラーフィルタ層
CFB…青色カラーフィルタ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色発光領域、緑色発光領域、青色発光領域、及び白色発光領域が設けられ、
白色発光の有機EL素子部と、
前記有機EL素子部に対して発光取り出し側に設けられる透光性基板と、
前記赤色発光領域、前記緑色発光領域、及び前記青色発光領域において、前記有機EL素子部からの白色発光を各発光領域に対応する色に変換するため、前記有機EL素子部に対して発光取り出し側に設けられる色変換層とを備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、
前記白色発光領域において、前記透光性基板と、前記有機EL素子部の間に、波長380nmでの光吸収率が10%以上である紫外線吸収層が設けられていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
前記赤色発光領域、前記緑色発光領域、及び前記青色発光領域において、前記透光性基板と、前記有機EL素子部の間に前記色変換層が設けられており、該色変換層の上に設けられる平坦化膜が、前記白色発光領域において、前記紫外線吸収層を構成していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
前記有機EL素子部が、オレンジ色発光層と青色発光層の積層構造からなる白色発光層を有することを特徴とする請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−103028(P2007−103028A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287561(P2005−287561)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】