有機エレクトロルミネッセンス表示装置
【課題】視野角特性を維持しつつ、光の利用効率を高めた有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】1画素18毎に、有機EL素子の発光面側に、レンズ部16aと平坦部16bとを有するレンズアレイ16を配置し、発光層からの発光光19の一部をレンズ部16aにて集光する。
【解決手段】1画素18毎に、有機EL素子の発光面側に、レンズ部16aと平坦部16bとを有するレンズアレイ16を配置し、発光層からの発光光19の一部をレンズ部16aにて集光する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を用いた表示装置に関し、特に、光の正面の利用効率を高めることが可能な有機EL素子を用いた表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子の輝度を向上させるには、通常、発光効率そのものを上げる、或いは電流をより多く流す、などの手段が必要である。しかしながら、前者は技術的に一気に輝度を向上させるが困難であり、後者は消費電力が増加する、劣化が加速するという問題が伴う。
【0003】
これに対して、通常の駆動のまま有機EL素子の輝度を向上させるための手段として、光取り出し側に凸レンズを設置し、集光することにより、発光光の利用効率を上げる技術が知られている。特許文献1には、有機EL素子を封止する酸化窒化シリコン(SiNxOy)膜上に樹脂からなるレンズアレイを配置して正面への光取り出し効率を向上させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−39500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で示される有機EL素子においては、発光光を集光することで斜めに出射する光を正面方向に集めるため、正面の輝度は改善されるが、斜めでの輝度が著しく低下し、視野角特性が劣化してしまうという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、視野角特性を維持しつつ、光の利用効率を高めた有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の有機エレクトロルミネッセンス素子と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子毎に集光性レンズ部を有するレンズアレイと、を備えた有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発光領域の上には、前記集光性レンズ部が配置された領域と、前記集光性レンズ部が配置されていない領域とが配置され、前記集光性レンズ部の頂部が観察者側から見た状態で発光領域と重なり、且つ、前記集光性レンズ部の一部は前記発光領域の外に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、有機EL素子の一部に集光性レンズ部が配置されているため、発光光の一部を集光し、残りはそのまま出射させることができる。よって、斜めの視野での視野角特性を保ちつつ、正面輝度の高い表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の有機EL表示装置の一実施形態の画素構成を示す模式図である。
【図2】従来の有機EL表示装置の一例の画素構成を示す断面模式図である。
【図3】本発明の有機EL表示装置におけるレンズアレイの効果を示す図である。
【図4】本発明の有機EL表示装置の一実施形態の画素構成を示す模式図である。
【図5】本発明の有機EL表示装置の効果を説明するための比較形態の画素構成を示す模式図である。
【図6】本発明の有機EL表示装置の効果を説明するための比較形態の画素構成を示す模式図である。
【図7】本発明の有機EL表示装置におけるレンズアレイの効果を示す図である。
【図8】本発明の有機EL表示装置の他の実施形態の画素構成を示す断面模式図である。
【図9】本発明の有機EL表示装置の他の実施形態の画素構成を示す断面模式図である。
【図10】本発明の有機EL表示装置の他の実施形態の一部を示す断面模式図である。
【図11】本発明の有機EL表示装置の製造工程の一例を示す図である。
【図12】本発明の有機EL表示装置の製造工程の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置)は、基板上に形成された、複数の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)と、レンズアレイとを有している。係る有機EL素子は、一対の電極と前記電極間に挟持された、少なくとも発光層を有する有機化合物層とを有する。また、レンズアレイは、少なくとも有機EL素子毎に集光性レンズ部を備え、該集光性レンズ部が有機EL素子の一部領域に対応するように形成されている。つまり、有機EL素子の発光領域の上には、集光性レンズ部が配置された領域と、集光性レンズ部が配置されていない領域とが配置されている。集光性レンズ部が配置されていない領域は平坦な面を有し、以後、この領域を平坦部と称する場合がある。
【0011】
即ち、本発明の有機EL表示装置においては、発光光の一部が集光性レンズ部を通り、残りの発光光は集光性レンズ部を通らずに出射する。
【0012】
さらに、集光性レンズ部は、集光性レンズ部の頂部が観察者側から見た時に発光領域と重なり、且つ、集光性レンズ部の一部は発光領域外にあるように形成されている。この構成により集光性レンズ部の集光性が向上する。
【0013】
尚、頂部とは、集光性レンズ部の光出射側の表面から有機EL素子の発光領域に垂らした垂線のうち垂線の長さが最も長い集光性レンズ部の表面の点のことである。言い換えると、頂部は、有機EL素子の光出射側にある電極から集光性レンズ部の光出射側の表面までの距離のうち最も大きい距離を有する集光性レンズ部の表面の点のことである。
【0014】
尚、集光性レンズ部の一部が有機EL素子の発光領域外にあるとは、言い換えると、有機EL素子の発光領域の短辺の幅よりも集光レンズ部のレンズ径が大きいことを意味している。
【0015】
尚、有機EL素子の発光面側とは、有機EL素子の発光を取り出す側を意味する。尚、有機EL表示装置において、階調に応じた表示信号が有機EL素子に印加されるが、同じ表示信号が印加される最小単位が1画素である。通常、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色を組み合わせてフルカラー表示し、有機EL素子は上記R,G,Bのいずれかの色を発光する発光層を備えている。よって、表示単位である画素は、上記R,G,Bのいずれかを表示する表示信号が印加される最小単位であり、R表示のR画素、G表示のG画素、B表示のB画素の3画素が一組で所定の色相が表示される。
【0016】
以下、本発明の有機EL表示装置について、実施形態を挙げて説明する。
【0017】
図1(A)は、本発明の有機EL表示装置の実施形態に係る1画素に相当する部分を示す部分断面図であり、1画素18が1個の有機EL素子で構成される。有機EL素子は、一対の電極11,14間に挟まれた、発光層を含む有機化合物層13を備えたものである。具体的には、基板10の上に設けられた第1電極11と、第1電極11上に設けられた有機化合物層13と、有機化合物層13の上に設けられた第2電極14とを有しているものである。有機EL素子は、隔壁12により個々に分離され、該隔壁12によりその開口(発光領域)が規定される。
【0018】
ここで、有機化合物層13とは、発光層を含む単層又は複数の層からなる積層体である。例えば、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層からなる4層構成や、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層からなる3層構成等が挙げられる。有機化合物層13を構成する材料(有機発光材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子注入材料等)は、公知の材料を使用することができる。また発光層に赤色発光材料、緑色発光材料、青色発光材料を形成することで、カラー表示が可能となる。
【0019】
有機EL素子において、第1電極11は、基板10において基板面内方向に素子毎に設けられており、第2電極14は複数の有機EL素子にわたって連続して設けられている。有機化合物層13については、発光色毎に発光層の構成が異なるため、隣接する有機EL素子が同色の発光色の場合には発光層が共通して、発光層以外の層については全体で共通して形成される。例えば、後述するように、R,G,Bの各画素をそれぞれ一方向にストライプ状に配置する場合には、発光層は係るストライプに沿って形成される。また、隣接する有機EL素子の発光色が互いに異なる配置の場合には、素子毎に発光層が形成される。
【0020】
また、基板10には有機EL素子をアクティブに駆動する駆動回路(不図示)が設けられている。また、第2電極14の上には保護膜15が設けられている。保護膜15は光透過性であって、SiOやSiNなどの無機材料、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂などの有機材料を用いることができる。
【0021】
図1における有機EL素子は、基板10の上面側に発光を取り出す形態、即ちトップエミッション型であり、第1電極11は光を反射する電極材料、第2電極14は光透過性又は半透過性の特性を有する電極材料が好ましく選択される。尚、本発明は基板10の裏面から発光を取り出すボトムエミッション型の有機EL素子にも適用可能である。この場合、第1電極11が光透過性又は半透過性の電極となり、第2電極14が反射電極となり、基板10側にレンズアレイ16を形成する。
【0022】
本例において、レンズアレイ16は樹脂層25に、有機EL素子毎に、即ち、画素18毎に形成されており、有機EL素子からの発光光を集光する集光性レンズ部16aと、平坦部16bとを有している。本発明に用いられるレンズアレイは、図1に示した集光性レンズ部16aと平坦部16bを少なくとも有している。そして、係る集光性レンズ部16aが有機EL素子の一部の領域に、集光性レンズ部16aの頂部領域が観察者側から見た時に発光領域と重なり、且つ、集光性レンズ部16aの一部は発光領域外にある様に形成される。
【0023】
尚、本発明において、集光性レンズ部16aが有機EL素子の一部領域に形成されている、とは、有機EL素子の発光層から発光された発光光を集光しうる領域の一部に形成されていることを意味する。
【0024】
本発明に係るレンズアレイは、透明な熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂、または、熱可塑性樹脂で形成されることが好ましい。また、上記したように、平坦部にレンズ用の樹脂を残存させなくてもよい。フォトリソによりレンズアレイを形成する場合には、集光性レンズ部のみが形成され、集光性レンズ部以外の樹脂は除去され、平坦部のないレンズアレイとなる。型による場合には、集光性レンズ部と共に平坦部も形成される。
【0025】
図2に従来の有機EL表示装置の一例の1画素に相当する部分を示す部分断面図を示す。図1の本発明の有機EL表示装置との違いは、樹脂層25にレンズアレイ16の集光性レンズ部16aが形成されていない、全面が平坦部16bと同様に平坦に形成されている点である。本発明においては、図1に示したように、有機化合物層13から出射された光は、透明な第2電極14を透過し、次いで保護膜15、集光性レンズ部16aもしくは平坦部16bを透過して、有機EL表示装置の外へ出射する。ここで、集光性レンズ部16aが無い場合、図2に示したように、発光層からの発光光の一部である斜めに出射された光19は、最外層から出射する際に、さらに斜めになって出射する(21の方向)。一方、集光性レンズ部16を通過して出射する場合には、図2の場合よりも、出射角度が基板垂直方向に近づく(20の方向)。従って、集光性レンズ部16aを配置することによって、垂直方向への光を集光する機能がある。即ち、有機EL表示装置に対して正面方向における光の利用効率を高めることができる。
【0026】
本発明においては、レンズアレイ16が、従来の有機EL表示装置と同様の、平坦部16bを備えている。よって、発光層からの発光光は一部のみが集光性レンズ部16aによって垂直方向に集光され、残りが平坦部16bより、従来通り、集光されずに出射されるため、視野角特性が維持される。
【0027】
尚、光の集光の程度は、レンズの配置位置(図1に示したxy平面の位置)、レンズの曲率、発光面からレンズまでの距離(図1に示したz軸方向の位置)、発光面積に依存する。
【0028】
(平坦部と集光性レンズ部を有するレンズアレイの効果)
ここで図3に、図2の如く平坦部のみの場合と、画素毎に1つの凸レンズ(平坦部を持たず、レンズが素子の全領域を覆う)が有る場合と、図1の如く集光性レンズ部と平坦部とを有するレンズアレイがある場合の放射角度と相対輝度の相関関係を示す。尚、相対輝度とは、集光性レンズ部が無い場合における放射角度0°の時の輝度を、基準1とした場合において、放射角度が変わった場合の相対輝度や集光性レンズ部がある場合の相対輝度のことを示している。また、凸1と凸2は曲率半径の異なる凸レンズが有る場合で、その曲率半径をそれぞれR1とR2とすると、その関係はR1<R2となっている。図3では、凸2の曲率半径R2は凸1の曲率半径を持った集光性レンズ部と平坦部から成るレンズアレイを配置した表示装置の正面輝度と、同程度の輝度が得られるように設定した。
【0029】
図3より、平坦部のみの場合に比べ、前記集光性レンズ部と平坦部とを有するレンズアレイがある場合、放射角度30°以下では、相対輝度が高く、放射角度30°以上では、相対輝度が低い。次に、凸2レンズの場合に比べ、集光性レンズ部と平坦部とを有するレンズアレイがある場合、放射角度50°以下では、相対輝度は同程度であるが、放射角度50°以上では、相対輝度が高い。即ち、本発明に係るレンズアレイがある場合、集光性レンズ部で正面輝度を向上させ、平坦部を設けることで、視野角特性を維持できていることがわかる。尚、放射角度と相対輝度の相関関係が変わる境界を放射角度30°及び50°として説明したが、発光面積や発光面からレンズまでの距離に応じて、境界の放射角度は変化する。しかしながら、上述したレンズ形状の有無や曲率の大小による放射角度と相対輝度の相関関係は変わらない。
【0030】
(集光性レンズ部と発光領域との配置関係とサイズと形状の比較)
ここで、集光性レンズ部16aの頂部領域が観察者側から見た状態で発光領域と重なり、かつ、集光性レンズ部16aの一部は発光領域外にあることの効果について説明する。
図1,4に、上述した条件を満たすような、本発明の有機EL表示装置のレンズ配置を示した。図1(A)と図4(A)は断面模式図(yz平面)であり、図1(B)と図4(B)は上面模式図(xy平面)である。
【0031】
図1はレンズ部16aが発光領域の端にある場合である。図4はレンズ部16aが発光領域の真中にある。
【0032】
図5,6に、上述した条件を満たさないような形態のレンズ配置を示した。図5(A)と図6(A)は断面模式図(yz平面)であり、図5(B)と図6(B)は上面模式図(xy平面)である。
【0033】
図5は集光性レンズ部16aが発光領域内にある場合で、発光領域の短辺の長さと同じ開口の集光性レンズ部16aが発光領域の中央に配置されており、それに合わせてレンズサイズも小さくした。
【0034】
図6は、平坦部の周囲に湾曲部を設けた場合で、該湾曲部が集光性を持つ集光性レンズ部16aとなる。この時、レンズアレイ16は発光領域を覆うように配置され、平坦部がレンズの最大高さであり、この領域は発光領域より大きい。不図示ではあるが、xz断面においても、平坦部16bの領域は発光領域より大きいとした。
【0035】
図7に、図1,4,5,6のそれぞれレンズ配置の場合の放射角度と相対輝度の相関関係を示す。(α)、(β)、(γ)、(δ)がそれぞれ図1,4,5,6のレンズ配置の場合を表していている。
【0036】
図7より、(α)、(β)の正面(放射角度0°)の相対輝度は平坦部のみの相対輝度より大きく、広視野角度領域では強度が逆転しており、レンズの集光効果が現れている。(α)の方が(β)に比べ、レンズが大きく、発光領域外のレンズ部も広い為、集光性がよく、正面(視野角度0°)の相対輝度が高くなっている。
【0037】
それに比べ、(γ)と(δ)は、正面(視野角度0°)の相対輝度が平坦とほぼ同じ強度を示し、集光効果が得られていない。
【0038】
ゆえに、十分な集光効果を得るためには、集光性レンズ部16aが有機EL素子の一部領域に形成され、かつ集光性レンズ部16aの少なくとも一部が画素領域外にあることが必要である。
【0039】
即ち、本発明に係るレンズアレイがある場合、集光効果が十分な集光効果が得られる。
【0040】
尚、ここに示した図1,4は実施形態の例であり、実施形態はこの限りではない。
【0041】
また、本発明においては、封止性能を高めるために、無機材料層と樹脂層からなる封止層を設けても良く、係る封止層をレンズアレイと有機EL素子との間に設けても、或いは、封止層内の樹脂層にレンズアレイを設けても良い。具体的には、係る封止層は無機材料層/樹脂層/無機材料層の3層構造が好ましい。例えば、図8は、有機EL素子の発光面側の第2電極14の上に、第1の無機材料層としての保護膜15と、樹脂層23と、第2の無機材料層24とを、この順に配置し、その上にレンズアレイ16を形成した例である。第2の無機材料層24としては光の透過率が高く、防湿性に優れた部材が好ましく、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜が好ましい。第1の保護膜15と第2の保護膜24は同じ材質であっても、異なる材質であっても良い。また、この積層構造は保護膜15を省いた、樹脂層23/無機材料層24の2層構造でも良いが、十分な封止性能を備えるため、無機材料層24の膜厚は1μm以上とする。また、樹脂層23の最小膜厚は1μm以上50μm以下が好ましい。最小膜厚が薄すぎると、樹脂層25の形成前に存在する異物を覆い隠すことができずに無機材料層24に貫通箇所ができ、耐湿性が低下し、ダークスポットを生じる恐れがある。また、最小膜厚が厚すぎると光量減衰するためである。
【0042】
さらに、レンズアレイのレンズ性能の変化(水分の浸入のための膨潤による屈折率や形状の変化により焦点距離が変化してしまう等)を抑制するため、図8のレンズアレイの上に保護層を形成しても良い。保護層は、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等で形成される。但し、層構成が多層になり複雑化するため、図9に示すように、封止層を構成する樹脂層23にレンズアレイを形成し、係る樹脂層23を無機材料層24で保護しても良い。これによりプロセス工程数を削減でき、且つ、層界面での反射による取り出し効率のロスを減じることが可能になる。即ち、有機EL素子の第2電極14の上に、第1の無機材料からなる保護膜15と、樹脂からなるレンズアレイ16と、前記レンズアレイ16の形状に倣った第2の無機材料からなる無機材料層24とを、この順に配置する。このような構造にすることにより、前記無機材料層24に防湿性を有する材料を用いることで、レンズ性能の劣化を防ぐことができる。尚、樹脂層23の最小膜厚は、1μm以上50μm以下となるように形成する。最小膜厚が薄すぎると、樹脂層23の形成前に存在する異物を覆い隠すことができずに無機材料層24に貫通箇所ができ、耐湿性が低下し、ダークスポットを生じる恐れがある。また、最小膜厚が厚すぎると光量減衰したり、ある画素から発光した光が隣のレンズを通って外部へ出射されたりする。
【0043】
ここで、図9に示したような構造の場合、第1の無機材料層である保護膜15と無機材料層24は、図10に示すように、表示領域の外側で、レンズアレイ16を形成している樹脂層23を挟み込むことが好ましい。係る形態により、保護膜15と無機材料層24とでレンズアレイ16を封止している。尚、表示領域とは、基板面内方向において有機EL素子が配置されている領域のことである。ここで、有機EL素子間も表示領域に含まれるものとする。このように、封止層(保護膜15、樹脂層23、無機材料層24)内に形成されたレンズアレイ16は、保護膜15と無機材料層24とで封止された状態となっており、レンズアレイ16が外部環境と接触することはない。そのため、レンズアレイ16には酸素や水分が浸入することがない。
【0044】
その結果、封止性能が向上し、有機EL素子の劣化を防ぐことができるだけでなく、レンズアレイ16の膨潤といった現象がないため、屈折率や形状の変化による焦点距離の変化といったことはなく、集光レンズの機能の変化は生じない。
【0045】
次に、本発明の有機EL表示装置の製造方法について図11を参照して説明する。図11は、図1の有機EL表示装置の各製造工程を示す断面模式図である。
【0046】
先ず、図11(A)に示すように、トップエミッション型の有機EL素子を用意する。次に、図11(B)に示すように保護膜15上に、レンズアレイを形成するための材料である樹脂層25を10μm乃至100μm程度の厚さで塗布する。樹脂層25としては熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化型樹脂を用いることができ、熱硬化型樹脂と光硬化型樹脂については、スピンコート法、ディスペンス法などを用いる。熱可塑性樹脂についてはフィルムを真空下にて貼りつける方法がある。材料としては、エポキシ樹脂、ブチル樹脂が好適に用いられる。
【0047】
次に、図11(C)に示すように、レンズアレイを成形するための型26を用意し、樹脂層25などに気泡が混入しないように、樹脂層25と型26とを密着させる。型26は、一般的な金属を用いることができるが、樹脂層25に光硬化型樹脂を用いる場合は、光を透過することが可能な石英基板が好ましい。また、型26の表面には、フッ素樹脂などの膜を形成することにより、樹脂層25と型26との剥離性を良好にすることができる。
【0048】
さらに、樹脂層25に熱硬化型樹脂を用いる場合は、型26における各レンズの重心部と、画素の中心とが一致するようにアライメントしながら、温度を80℃に加熱して、樹脂を硬化させる。硬化温度については、一般的な有機EL素子の耐熱温度が100℃程度であるため、80℃程度の硬化温度のものが好ましい。
【0049】
次に、図11(D)に示すように、型26を硬化した樹脂層25(即ち、レンズアレイ16)から剥がす。この時、型26には、濡れ性を低下させる効果を有するフッ素樹脂などの膜が型26の表面に成膜されていれば、剥がす作業を簡単に実行することができる。
【0050】
レンズアレイ16の高さは画素ピッチと同程度まで制御性よく変化させることか可能である。球面レンズを形成する場合には、画素ピッチの半分の高さまでとする。尚、図11(B)乃至(D)のレンズアレイ16を形成する工程では、上記の型26による直接形成法の他に、下記i)乃至v)のような工程によっても作製可能である。
i)フォトリソなどのパターニング後に熱処理によるリフローでレンズを形成する方法。
ii)フォトリソなどのパターニング時の露光量を面内で階調をつけて制御してパターニング直後にレンズ形状になっている方法。
iii)イオンビーム或いは電子ビーム、レーザーによる直接形状を形成する方法。
iv)開口領域に適量の樹脂を滴下して自己整合的にレンズ形状を形成する方法。
v)薄い樹脂に事前にレンズを形成した後、レンズ付き樹脂をパネルに画素部とレンズ位置をアライメントして貼る方法。
【0051】
また、通常、基板10には有機EL素子を駆動するためのトランジスタや配線が形成され、これらを保護するために、これらを覆って層間絶縁層や平坦化膜が形成されている。本発明においては、保護膜15が表示領域の外側で、基板10に作り込まれた層間絶縁層に接していてもよい。即ち、保護膜15と基板に形成された保護層とで、基板の層間絶縁層上に形成されている平坦化膜、第1電極11、隔壁12、有機化合物層13、第2電極14を封止する。係る層間絶縁層の下に配置されたトランジスタ、配線への接続のために層間絶縁層には一部穴があるが、層間絶縁層が無機材料で形成されるために防湿性は高い。係る層間絶縁層は防湿性に優れた部材が好ましく、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜が好ましい。直接外気に触れる部分は少ないので、酸化シリコンでも構わない。また、平坦化膜はポリイミド樹脂からなる。
【0052】
本発明の表示装置の用途としては、高輝度による視認性の向上が重要なモバイル用途、例えばデジタルカメラの背面モニタ、携帯電話、などに使うことが可能である。また、同じ輝度でも低消費電力が期待されるので、モバイル用途でもバッテリーなどの交換間隔を伸ばすことが可能になる。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
図1に示す構成を有する有機EL表示装置を、図11に示す工程に従って作製した。
【0054】
先ず、ガラスの基板10上に、低温ポリシリコンからなるTFT駆動回路(不図示)を形成し、その上にアクリル樹脂からなる平坦化膜(不図示)を形成して基板とした。
【0055】
上記基板の上に厚さ38nmのITO及び厚さ100nmのAlNdを順次スパッタリング法にて形成した。続いて、係るITO/AlNd層を画素毎にパターニングし、第1電極11を形成した。さらに、アクリル樹脂により隔壁12を形成した。各画素のピッチは30μm、第1電極11の露出部を10μmとした。これをイソプロピルアルコール(IPA)で超音波洗浄し、次いで、煮沸洗浄後乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄してから有機化合物層13を真空蒸着により成膜した。始めに、ホール輸送層として下記構造のHT−1(FL03)を全ての画素に共通に87nmの厚さで成膜した。この際の真空度は1×10-4Pa、蒸着レートは、0.2nm/secである。
【0056】
【化1】
【0057】
次に、シャドーマスクを用いて、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層をそれぞれ厚さ30nm、40nm、25nmで成膜した。赤色発光層には、CBPをホストとしてIr(piq)3を9質量%添加し、緑色発光層には、Alq3をホストとして、クマリン6を1質量%添加し、青色発光層には、BAlqをホストとしてペリレンを3質量%添加した。続いて、全ての画素に共通の電子輸送層としてバソフェナントロリン(Bphen)を真空蒸着法にて10nmの厚さで形成した。蒸着時の真空度は1×10-4Pa、成膜速度は0.2nm/secの条件であった。その後、共通の電子注入層として、BphenとCs2CO3を共蒸着(質量比90:10)して40nmの厚さで形成した。蒸着時の真空度は3×10-4Pa、成膜速度は0.2nm/secの条件であった。次に、この電子注入層まで成膜した基板を、真空を破ること無しにスパッタ装置に移動し、第2電極14として厚さ10nmの極薄Ag及び厚さ50nmの透明電極IZOを成膜した。次に、窒化シリコンからなる保護膜15を、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスを用いたプラズマCVD法で成膜した(図11(A))。
【0058】
その後、露点温度60℃の窒素雰囲気下で、粘度3000mPa・sの熱硬化性の樹脂層25(エポキシ樹脂)を精密描画が可能なディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製SHOT MINI SL)を用いて塗布した(図11(B))。
【0059】
樹脂層25を熱硬化する前に、別途用意したレンズアレイを成形するための型26を塗布した表面に押し当てた(図11(C))。押し当てる際、型26に形成してあるアライメントマークと基板に形成してあるアライメントマークをあわせる事により位置を決め、押すことにより、画素に合わせて平坦部を含むレンズアレイ16が形成された。型26は、画素ピッチと同じピッチで凹状の窪み或いは平坦部が形成されており、その窪みの表面には離形剤としてテフロン(登録商標)系の樹脂がコートされている。窪みの形状、即ちレンズアレイ16の集光性レンズ部16aの形状は、曲率半径30μmで形成した。画素ピッチが30μmであるので、レンズアレイ16の高さは平坦部16bに対して4μm程度の高さになった(図11(D))。
【0060】
本例の有機EL表示装置は、図2のような集光性レンズ部16aを形成しない場合の輝度とを比較すると、レンズを蒲鉾型のような一断面で集光するような場合では真正面から見たときに1.3倍乃至1.5倍程度の輝度向上が得られた。また有機EL素子の開口(発光領域)の上面形状が正方形や円、六角形などに設定した場合には、集光性レンズ部16aを球状にすることができ、この場合は全方向からの集光が可能になるため、真正面から見た時に2倍程度の輝度向上が得られた。これらの倍率は、レンズ形状、平坦部の厚さ、発光領域の開口率などにも依存しているので、本発明ではこの数字に限定されない。
【0061】
図1(B)は本例の有機EL表示装置の上面模式図である。図中、91Ra,91Ga,91BaはR,G,Bの各発光色を発光する有機EL素子の発光領域の集光性レンズ部16aに対応する領域であり、91Rb,91Gb,91Bbは平坦部(不図示)に対応する領域である。
【0062】
(実施例2)
封止性能を向上させるため、図8に示すように、保護膜15の上に更に、樹脂層23と無機材料層24とを形成し、その上の樹脂層25にレンズアレイ16を形成した以外は実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製した。
【0063】
本例では、実施例1と同様にして保護膜15まで形成した。その後、露点温度60℃の窒素雰囲気下で、粘度3000mPa・sの熱硬化性のエポキシ樹脂を精密描画が可能なディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製SHOT MINI SL)を用いて塗布した。次いで、真空環境下で100℃の温度で15分間加熱してエポキシ樹脂を熱硬化させ、樹脂層23を形成した。ここで、クリーンルーム及びプロセス装置の環境を考慮して、異物等があっても樹脂層で埋めることを目的としているので、樹脂層23の膜厚は10μmとした。さらに、窒化シリコンからなる無機材料層24を、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスを用いたプラズマCVD法で成膜した。無機材料層24の膜厚は1μmとし、有機EL素子が形成された基板面全体を覆うように、形成した。
【0064】
(実施例3)
封止性能を向上させつつ、レンズの性能の劣化を抑制するために、図9に示すように、保護膜15の上に、樹脂層23と無機材料層24を形成し、該樹脂層23にレンズアレイ16を形成した。
【0065】
本例では、実施例1と同様にして保護膜15まで形成した。その後、露点温度60℃の窒素雰囲気下で、粘度3000mPa・sの熱硬化性のエポキシ樹脂を精密描画が可能なディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製SHOT MINI SL)を用いて塗布した。該エポキシ樹脂が熱硬化する前に、別途用意したレンズアレイ16を成形するための型を塗布した表面に押し当てた。押し当てる際、型に形成してあるアライメントマークと基板に形成してあるアライメントマークを合わせる事により位置を決め、押すことにより、画素に合わせて集光性レンズ部16aと平坦部16bとを含むレンズアレイ16を形成した。最後に、窒化シリコンからなる無機材料層24を、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスを用いたプラズマCVD法で成膜した。無機材料層24の膜厚は1μmとし、有機EL素子が形成された基板面全体を覆うように、形成した。
【0066】
本例では、マイクレンズアレイ16が、保護膜15と無機材料層24とで完全に包まれているため、高温高湿の環境においても樹脂層23に水が透湿せず、樹脂層23が膨潤してレンズの集光が変化することは無かった。
【0067】
(実施例4)
樹脂層25に形成されるレンズアレイ16を、図12に示したパターニングによって形成した以外は実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製した。
【0068】
本例では、図12(A)に示すように、実施例1と同様にして保護膜15まで形成した。その後、図12(B)に示すように、露点温度60℃の窒素雰囲気下で、粘度3000mPa・sの熱硬化性のエポキシ樹脂を精密描画が可能なディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製SHOT MINI SL)を用いて10μm厚に塗布した。該エポキシ樹脂を真空環境下で100℃の温度で15分間加熱して硬化させ、樹脂層25を形成した。引き続いて、図12(C)に示すように、樹脂層25の上に4μm厚で同じエポキシ樹脂28を塗布し、図12(D)に示すように、フォトマスク29を介して露光した。露光量は図12(E)に示す集光性レンズ部16aの形状から換算した2次元の分布を持つようにして、現像後には、集光性レンズ部16aの形状になった。露光量の面内の制御は、フォトマスク29の透過率を面内で制御することで行なった。その後、再度真空環境下で100℃の温度で15分間加熱して硬化させた。この熱処理は、レンズアレイ表面の平滑化も兼ねている。本例では異物等があっても樹脂層25で埋めることを目的としているので、樹脂層25の最薄部で10μmとした。図12(E)では、レンズアレイは実質集光性レンズ部16aのみで、平坦部を持たないが、樹脂層28に平坦部を形成しても良い。
【符号の説明】
【0069】
10:基板、11,14:電極、13:有機化合物層、16:レンズアレイ、16a:集光性レンズ部、16b:平坦部、23,25:樹脂層、24:無機材料層
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を用いた表示装置に関し、特に、光の正面の利用効率を高めることが可能な有機EL素子を用いた表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子の輝度を向上させるには、通常、発光効率そのものを上げる、或いは電流をより多く流す、などの手段が必要である。しかしながら、前者は技術的に一気に輝度を向上させるが困難であり、後者は消費電力が増加する、劣化が加速するという問題が伴う。
【0003】
これに対して、通常の駆動のまま有機EL素子の輝度を向上させるための手段として、光取り出し側に凸レンズを設置し、集光することにより、発光光の利用効率を上げる技術が知られている。特許文献1には、有機EL素子を封止する酸化窒化シリコン(SiNxOy)膜上に樹脂からなるレンズアレイを配置して正面への光取り出し効率を向上させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−39500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で示される有機EL素子においては、発光光を集光することで斜めに出射する光を正面方向に集めるため、正面の輝度は改善されるが、斜めでの輝度が著しく低下し、視野角特性が劣化してしまうという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、視野角特性を維持しつつ、光の利用効率を高めた有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の有機エレクトロルミネッセンス素子と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子毎に集光性レンズ部を有するレンズアレイと、を備えた有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発光領域の上には、前記集光性レンズ部が配置された領域と、前記集光性レンズ部が配置されていない領域とが配置され、前記集光性レンズ部の頂部が観察者側から見た状態で発光領域と重なり、且つ、前記集光性レンズ部の一部は前記発光領域の外に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、有機EL素子の一部に集光性レンズ部が配置されているため、発光光の一部を集光し、残りはそのまま出射させることができる。よって、斜めの視野での視野角特性を保ちつつ、正面輝度の高い表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の有機EL表示装置の一実施形態の画素構成を示す模式図である。
【図2】従来の有機EL表示装置の一例の画素構成を示す断面模式図である。
【図3】本発明の有機EL表示装置におけるレンズアレイの効果を示す図である。
【図4】本発明の有機EL表示装置の一実施形態の画素構成を示す模式図である。
【図5】本発明の有機EL表示装置の効果を説明するための比較形態の画素構成を示す模式図である。
【図6】本発明の有機EL表示装置の効果を説明するための比較形態の画素構成を示す模式図である。
【図7】本発明の有機EL表示装置におけるレンズアレイの効果を示す図である。
【図8】本発明の有機EL表示装置の他の実施形態の画素構成を示す断面模式図である。
【図9】本発明の有機EL表示装置の他の実施形態の画素構成を示す断面模式図である。
【図10】本発明の有機EL表示装置の他の実施形態の一部を示す断面模式図である。
【図11】本発明の有機EL表示装置の製造工程の一例を示す図である。
【図12】本発明の有機EL表示装置の製造工程の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置)は、基板上に形成された、複数の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)と、レンズアレイとを有している。係る有機EL素子は、一対の電極と前記電極間に挟持された、少なくとも発光層を有する有機化合物層とを有する。また、レンズアレイは、少なくとも有機EL素子毎に集光性レンズ部を備え、該集光性レンズ部が有機EL素子の一部領域に対応するように形成されている。つまり、有機EL素子の発光領域の上には、集光性レンズ部が配置された領域と、集光性レンズ部が配置されていない領域とが配置されている。集光性レンズ部が配置されていない領域は平坦な面を有し、以後、この領域を平坦部と称する場合がある。
【0011】
即ち、本発明の有機EL表示装置においては、発光光の一部が集光性レンズ部を通り、残りの発光光は集光性レンズ部を通らずに出射する。
【0012】
さらに、集光性レンズ部は、集光性レンズ部の頂部が観察者側から見た時に発光領域と重なり、且つ、集光性レンズ部の一部は発光領域外にあるように形成されている。この構成により集光性レンズ部の集光性が向上する。
【0013】
尚、頂部とは、集光性レンズ部の光出射側の表面から有機EL素子の発光領域に垂らした垂線のうち垂線の長さが最も長い集光性レンズ部の表面の点のことである。言い換えると、頂部は、有機EL素子の光出射側にある電極から集光性レンズ部の光出射側の表面までの距離のうち最も大きい距離を有する集光性レンズ部の表面の点のことである。
【0014】
尚、集光性レンズ部の一部が有機EL素子の発光領域外にあるとは、言い換えると、有機EL素子の発光領域の短辺の幅よりも集光レンズ部のレンズ径が大きいことを意味している。
【0015】
尚、有機EL素子の発光面側とは、有機EL素子の発光を取り出す側を意味する。尚、有機EL表示装置において、階調に応じた表示信号が有機EL素子に印加されるが、同じ表示信号が印加される最小単位が1画素である。通常、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色を組み合わせてフルカラー表示し、有機EL素子は上記R,G,Bのいずれかの色を発光する発光層を備えている。よって、表示単位である画素は、上記R,G,Bのいずれかを表示する表示信号が印加される最小単位であり、R表示のR画素、G表示のG画素、B表示のB画素の3画素が一組で所定の色相が表示される。
【0016】
以下、本発明の有機EL表示装置について、実施形態を挙げて説明する。
【0017】
図1(A)は、本発明の有機EL表示装置の実施形態に係る1画素に相当する部分を示す部分断面図であり、1画素18が1個の有機EL素子で構成される。有機EL素子は、一対の電極11,14間に挟まれた、発光層を含む有機化合物層13を備えたものである。具体的には、基板10の上に設けられた第1電極11と、第1電極11上に設けられた有機化合物層13と、有機化合物層13の上に設けられた第2電極14とを有しているものである。有機EL素子は、隔壁12により個々に分離され、該隔壁12によりその開口(発光領域)が規定される。
【0018】
ここで、有機化合物層13とは、発光層を含む単層又は複数の層からなる積層体である。例えば、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層からなる4層構成や、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層からなる3層構成等が挙げられる。有機化合物層13を構成する材料(有機発光材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子注入材料等)は、公知の材料を使用することができる。また発光層に赤色発光材料、緑色発光材料、青色発光材料を形成することで、カラー表示が可能となる。
【0019】
有機EL素子において、第1電極11は、基板10において基板面内方向に素子毎に設けられており、第2電極14は複数の有機EL素子にわたって連続して設けられている。有機化合物層13については、発光色毎に発光層の構成が異なるため、隣接する有機EL素子が同色の発光色の場合には発光層が共通して、発光層以外の層については全体で共通して形成される。例えば、後述するように、R,G,Bの各画素をそれぞれ一方向にストライプ状に配置する場合には、発光層は係るストライプに沿って形成される。また、隣接する有機EL素子の発光色が互いに異なる配置の場合には、素子毎に発光層が形成される。
【0020】
また、基板10には有機EL素子をアクティブに駆動する駆動回路(不図示)が設けられている。また、第2電極14の上には保護膜15が設けられている。保護膜15は光透過性であって、SiOやSiNなどの無機材料、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂などの有機材料を用いることができる。
【0021】
図1における有機EL素子は、基板10の上面側に発光を取り出す形態、即ちトップエミッション型であり、第1電極11は光を反射する電極材料、第2電極14は光透過性又は半透過性の特性を有する電極材料が好ましく選択される。尚、本発明は基板10の裏面から発光を取り出すボトムエミッション型の有機EL素子にも適用可能である。この場合、第1電極11が光透過性又は半透過性の電極となり、第2電極14が反射電極となり、基板10側にレンズアレイ16を形成する。
【0022】
本例において、レンズアレイ16は樹脂層25に、有機EL素子毎に、即ち、画素18毎に形成されており、有機EL素子からの発光光を集光する集光性レンズ部16aと、平坦部16bとを有している。本発明に用いられるレンズアレイは、図1に示した集光性レンズ部16aと平坦部16bを少なくとも有している。そして、係る集光性レンズ部16aが有機EL素子の一部の領域に、集光性レンズ部16aの頂部領域が観察者側から見た時に発光領域と重なり、且つ、集光性レンズ部16aの一部は発光領域外にある様に形成される。
【0023】
尚、本発明において、集光性レンズ部16aが有機EL素子の一部領域に形成されている、とは、有機EL素子の発光層から発光された発光光を集光しうる領域の一部に形成されていることを意味する。
【0024】
本発明に係るレンズアレイは、透明な熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂、または、熱可塑性樹脂で形成されることが好ましい。また、上記したように、平坦部にレンズ用の樹脂を残存させなくてもよい。フォトリソによりレンズアレイを形成する場合には、集光性レンズ部のみが形成され、集光性レンズ部以外の樹脂は除去され、平坦部のないレンズアレイとなる。型による場合には、集光性レンズ部と共に平坦部も形成される。
【0025】
図2に従来の有機EL表示装置の一例の1画素に相当する部分を示す部分断面図を示す。図1の本発明の有機EL表示装置との違いは、樹脂層25にレンズアレイ16の集光性レンズ部16aが形成されていない、全面が平坦部16bと同様に平坦に形成されている点である。本発明においては、図1に示したように、有機化合物層13から出射された光は、透明な第2電極14を透過し、次いで保護膜15、集光性レンズ部16aもしくは平坦部16bを透過して、有機EL表示装置の外へ出射する。ここで、集光性レンズ部16aが無い場合、図2に示したように、発光層からの発光光の一部である斜めに出射された光19は、最外層から出射する際に、さらに斜めになって出射する(21の方向)。一方、集光性レンズ部16を通過して出射する場合には、図2の場合よりも、出射角度が基板垂直方向に近づく(20の方向)。従って、集光性レンズ部16aを配置することによって、垂直方向への光を集光する機能がある。即ち、有機EL表示装置に対して正面方向における光の利用効率を高めることができる。
【0026】
本発明においては、レンズアレイ16が、従来の有機EL表示装置と同様の、平坦部16bを備えている。よって、発光層からの発光光は一部のみが集光性レンズ部16aによって垂直方向に集光され、残りが平坦部16bより、従来通り、集光されずに出射されるため、視野角特性が維持される。
【0027】
尚、光の集光の程度は、レンズの配置位置(図1に示したxy平面の位置)、レンズの曲率、発光面からレンズまでの距離(図1に示したz軸方向の位置)、発光面積に依存する。
【0028】
(平坦部と集光性レンズ部を有するレンズアレイの効果)
ここで図3に、図2の如く平坦部のみの場合と、画素毎に1つの凸レンズ(平坦部を持たず、レンズが素子の全領域を覆う)が有る場合と、図1の如く集光性レンズ部と平坦部とを有するレンズアレイがある場合の放射角度と相対輝度の相関関係を示す。尚、相対輝度とは、集光性レンズ部が無い場合における放射角度0°の時の輝度を、基準1とした場合において、放射角度が変わった場合の相対輝度や集光性レンズ部がある場合の相対輝度のことを示している。また、凸1と凸2は曲率半径の異なる凸レンズが有る場合で、その曲率半径をそれぞれR1とR2とすると、その関係はR1<R2となっている。図3では、凸2の曲率半径R2は凸1の曲率半径を持った集光性レンズ部と平坦部から成るレンズアレイを配置した表示装置の正面輝度と、同程度の輝度が得られるように設定した。
【0029】
図3より、平坦部のみの場合に比べ、前記集光性レンズ部と平坦部とを有するレンズアレイがある場合、放射角度30°以下では、相対輝度が高く、放射角度30°以上では、相対輝度が低い。次に、凸2レンズの場合に比べ、集光性レンズ部と平坦部とを有するレンズアレイがある場合、放射角度50°以下では、相対輝度は同程度であるが、放射角度50°以上では、相対輝度が高い。即ち、本発明に係るレンズアレイがある場合、集光性レンズ部で正面輝度を向上させ、平坦部を設けることで、視野角特性を維持できていることがわかる。尚、放射角度と相対輝度の相関関係が変わる境界を放射角度30°及び50°として説明したが、発光面積や発光面からレンズまでの距離に応じて、境界の放射角度は変化する。しかしながら、上述したレンズ形状の有無や曲率の大小による放射角度と相対輝度の相関関係は変わらない。
【0030】
(集光性レンズ部と発光領域との配置関係とサイズと形状の比較)
ここで、集光性レンズ部16aの頂部領域が観察者側から見た状態で発光領域と重なり、かつ、集光性レンズ部16aの一部は発光領域外にあることの効果について説明する。
図1,4に、上述した条件を満たすような、本発明の有機EL表示装置のレンズ配置を示した。図1(A)と図4(A)は断面模式図(yz平面)であり、図1(B)と図4(B)は上面模式図(xy平面)である。
【0031】
図1はレンズ部16aが発光領域の端にある場合である。図4はレンズ部16aが発光領域の真中にある。
【0032】
図5,6に、上述した条件を満たさないような形態のレンズ配置を示した。図5(A)と図6(A)は断面模式図(yz平面)であり、図5(B)と図6(B)は上面模式図(xy平面)である。
【0033】
図5は集光性レンズ部16aが発光領域内にある場合で、発光領域の短辺の長さと同じ開口の集光性レンズ部16aが発光領域の中央に配置されており、それに合わせてレンズサイズも小さくした。
【0034】
図6は、平坦部の周囲に湾曲部を設けた場合で、該湾曲部が集光性を持つ集光性レンズ部16aとなる。この時、レンズアレイ16は発光領域を覆うように配置され、平坦部がレンズの最大高さであり、この領域は発光領域より大きい。不図示ではあるが、xz断面においても、平坦部16bの領域は発光領域より大きいとした。
【0035】
図7に、図1,4,5,6のそれぞれレンズ配置の場合の放射角度と相対輝度の相関関係を示す。(α)、(β)、(γ)、(δ)がそれぞれ図1,4,5,6のレンズ配置の場合を表していている。
【0036】
図7より、(α)、(β)の正面(放射角度0°)の相対輝度は平坦部のみの相対輝度より大きく、広視野角度領域では強度が逆転しており、レンズの集光効果が現れている。(α)の方が(β)に比べ、レンズが大きく、発光領域外のレンズ部も広い為、集光性がよく、正面(視野角度0°)の相対輝度が高くなっている。
【0037】
それに比べ、(γ)と(δ)は、正面(視野角度0°)の相対輝度が平坦とほぼ同じ強度を示し、集光効果が得られていない。
【0038】
ゆえに、十分な集光効果を得るためには、集光性レンズ部16aが有機EL素子の一部領域に形成され、かつ集光性レンズ部16aの少なくとも一部が画素領域外にあることが必要である。
【0039】
即ち、本発明に係るレンズアレイがある場合、集光効果が十分な集光効果が得られる。
【0040】
尚、ここに示した図1,4は実施形態の例であり、実施形態はこの限りではない。
【0041】
また、本発明においては、封止性能を高めるために、無機材料層と樹脂層からなる封止層を設けても良く、係る封止層をレンズアレイと有機EL素子との間に設けても、或いは、封止層内の樹脂層にレンズアレイを設けても良い。具体的には、係る封止層は無機材料層/樹脂層/無機材料層の3層構造が好ましい。例えば、図8は、有機EL素子の発光面側の第2電極14の上に、第1の無機材料層としての保護膜15と、樹脂層23と、第2の無機材料層24とを、この順に配置し、その上にレンズアレイ16を形成した例である。第2の無機材料層24としては光の透過率が高く、防湿性に優れた部材が好ましく、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜が好ましい。第1の保護膜15と第2の保護膜24は同じ材質であっても、異なる材質であっても良い。また、この積層構造は保護膜15を省いた、樹脂層23/無機材料層24の2層構造でも良いが、十分な封止性能を備えるため、無機材料層24の膜厚は1μm以上とする。また、樹脂層23の最小膜厚は1μm以上50μm以下が好ましい。最小膜厚が薄すぎると、樹脂層25の形成前に存在する異物を覆い隠すことができずに無機材料層24に貫通箇所ができ、耐湿性が低下し、ダークスポットを生じる恐れがある。また、最小膜厚が厚すぎると光量減衰するためである。
【0042】
さらに、レンズアレイのレンズ性能の変化(水分の浸入のための膨潤による屈折率や形状の変化により焦点距離が変化してしまう等)を抑制するため、図8のレンズアレイの上に保護層を形成しても良い。保護層は、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等で形成される。但し、層構成が多層になり複雑化するため、図9に示すように、封止層を構成する樹脂層23にレンズアレイを形成し、係る樹脂層23を無機材料層24で保護しても良い。これによりプロセス工程数を削減でき、且つ、層界面での反射による取り出し効率のロスを減じることが可能になる。即ち、有機EL素子の第2電極14の上に、第1の無機材料からなる保護膜15と、樹脂からなるレンズアレイ16と、前記レンズアレイ16の形状に倣った第2の無機材料からなる無機材料層24とを、この順に配置する。このような構造にすることにより、前記無機材料層24に防湿性を有する材料を用いることで、レンズ性能の劣化を防ぐことができる。尚、樹脂層23の最小膜厚は、1μm以上50μm以下となるように形成する。最小膜厚が薄すぎると、樹脂層23の形成前に存在する異物を覆い隠すことができずに無機材料層24に貫通箇所ができ、耐湿性が低下し、ダークスポットを生じる恐れがある。また、最小膜厚が厚すぎると光量減衰したり、ある画素から発光した光が隣のレンズを通って外部へ出射されたりする。
【0043】
ここで、図9に示したような構造の場合、第1の無機材料層である保護膜15と無機材料層24は、図10に示すように、表示領域の外側で、レンズアレイ16を形成している樹脂層23を挟み込むことが好ましい。係る形態により、保護膜15と無機材料層24とでレンズアレイ16を封止している。尚、表示領域とは、基板面内方向において有機EL素子が配置されている領域のことである。ここで、有機EL素子間も表示領域に含まれるものとする。このように、封止層(保護膜15、樹脂層23、無機材料層24)内に形成されたレンズアレイ16は、保護膜15と無機材料層24とで封止された状態となっており、レンズアレイ16が外部環境と接触することはない。そのため、レンズアレイ16には酸素や水分が浸入することがない。
【0044】
その結果、封止性能が向上し、有機EL素子の劣化を防ぐことができるだけでなく、レンズアレイ16の膨潤といった現象がないため、屈折率や形状の変化による焦点距離の変化といったことはなく、集光レンズの機能の変化は生じない。
【0045】
次に、本発明の有機EL表示装置の製造方法について図11を参照して説明する。図11は、図1の有機EL表示装置の各製造工程を示す断面模式図である。
【0046】
先ず、図11(A)に示すように、トップエミッション型の有機EL素子を用意する。次に、図11(B)に示すように保護膜15上に、レンズアレイを形成するための材料である樹脂層25を10μm乃至100μm程度の厚さで塗布する。樹脂層25としては熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化型樹脂を用いることができ、熱硬化型樹脂と光硬化型樹脂については、スピンコート法、ディスペンス法などを用いる。熱可塑性樹脂についてはフィルムを真空下にて貼りつける方法がある。材料としては、エポキシ樹脂、ブチル樹脂が好適に用いられる。
【0047】
次に、図11(C)に示すように、レンズアレイを成形するための型26を用意し、樹脂層25などに気泡が混入しないように、樹脂層25と型26とを密着させる。型26は、一般的な金属を用いることができるが、樹脂層25に光硬化型樹脂を用いる場合は、光を透過することが可能な石英基板が好ましい。また、型26の表面には、フッ素樹脂などの膜を形成することにより、樹脂層25と型26との剥離性を良好にすることができる。
【0048】
さらに、樹脂層25に熱硬化型樹脂を用いる場合は、型26における各レンズの重心部と、画素の中心とが一致するようにアライメントしながら、温度を80℃に加熱して、樹脂を硬化させる。硬化温度については、一般的な有機EL素子の耐熱温度が100℃程度であるため、80℃程度の硬化温度のものが好ましい。
【0049】
次に、図11(D)に示すように、型26を硬化した樹脂層25(即ち、レンズアレイ16)から剥がす。この時、型26には、濡れ性を低下させる効果を有するフッ素樹脂などの膜が型26の表面に成膜されていれば、剥がす作業を簡単に実行することができる。
【0050】
レンズアレイ16の高さは画素ピッチと同程度まで制御性よく変化させることか可能である。球面レンズを形成する場合には、画素ピッチの半分の高さまでとする。尚、図11(B)乃至(D)のレンズアレイ16を形成する工程では、上記の型26による直接形成法の他に、下記i)乃至v)のような工程によっても作製可能である。
i)フォトリソなどのパターニング後に熱処理によるリフローでレンズを形成する方法。
ii)フォトリソなどのパターニング時の露光量を面内で階調をつけて制御してパターニング直後にレンズ形状になっている方法。
iii)イオンビーム或いは電子ビーム、レーザーによる直接形状を形成する方法。
iv)開口領域に適量の樹脂を滴下して自己整合的にレンズ形状を形成する方法。
v)薄い樹脂に事前にレンズを形成した後、レンズ付き樹脂をパネルに画素部とレンズ位置をアライメントして貼る方法。
【0051】
また、通常、基板10には有機EL素子を駆動するためのトランジスタや配線が形成され、これらを保護するために、これらを覆って層間絶縁層や平坦化膜が形成されている。本発明においては、保護膜15が表示領域の外側で、基板10に作り込まれた層間絶縁層に接していてもよい。即ち、保護膜15と基板に形成された保護層とで、基板の層間絶縁層上に形成されている平坦化膜、第1電極11、隔壁12、有機化合物層13、第2電極14を封止する。係る層間絶縁層の下に配置されたトランジスタ、配線への接続のために層間絶縁層には一部穴があるが、層間絶縁層が無機材料で形成されるために防湿性は高い。係る層間絶縁層は防湿性に優れた部材が好ましく、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜が好ましい。直接外気に触れる部分は少ないので、酸化シリコンでも構わない。また、平坦化膜はポリイミド樹脂からなる。
【0052】
本発明の表示装置の用途としては、高輝度による視認性の向上が重要なモバイル用途、例えばデジタルカメラの背面モニタ、携帯電話、などに使うことが可能である。また、同じ輝度でも低消費電力が期待されるので、モバイル用途でもバッテリーなどの交換間隔を伸ばすことが可能になる。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
図1に示す構成を有する有機EL表示装置を、図11に示す工程に従って作製した。
【0054】
先ず、ガラスの基板10上に、低温ポリシリコンからなるTFT駆動回路(不図示)を形成し、その上にアクリル樹脂からなる平坦化膜(不図示)を形成して基板とした。
【0055】
上記基板の上に厚さ38nmのITO及び厚さ100nmのAlNdを順次スパッタリング法にて形成した。続いて、係るITO/AlNd層を画素毎にパターニングし、第1電極11を形成した。さらに、アクリル樹脂により隔壁12を形成した。各画素のピッチは30μm、第1電極11の露出部を10μmとした。これをイソプロピルアルコール(IPA)で超音波洗浄し、次いで、煮沸洗浄後乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄してから有機化合物層13を真空蒸着により成膜した。始めに、ホール輸送層として下記構造のHT−1(FL03)を全ての画素に共通に87nmの厚さで成膜した。この際の真空度は1×10-4Pa、蒸着レートは、0.2nm/secである。
【0056】
【化1】
【0057】
次に、シャドーマスクを用いて、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層をそれぞれ厚さ30nm、40nm、25nmで成膜した。赤色発光層には、CBPをホストとしてIr(piq)3を9質量%添加し、緑色発光層には、Alq3をホストとして、クマリン6を1質量%添加し、青色発光層には、BAlqをホストとしてペリレンを3質量%添加した。続いて、全ての画素に共通の電子輸送層としてバソフェナントロリン(Bphen)を真空蒸着法にて10nmの厚さで形成した。蒸着時の真空度は1×10-4Pa、成膜速度は0.2nm/secの条件であった。その後、共通の電子注入層として、BphenとCs2CO3を共蒸着(質量比90:10)して40nmの厚さで形成した。蒸着時の真空度は3×10-4Pa、成膜速度は0.2nm/secの条件であった。次に、この電子注入層まで成膜した基板を、真空を破ること無しにスパッタ装置に移動し、第2電極14として厚さ10nmの極薄Ag及び厚さ50nmの透明電極IZOを成膜した。次に、窒化シリコンからなる保護膜15を、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスを用いたプラズマCVD法で成膜した(図11(A))。
【0058】
その後、露点温度60℃の窒素雰囲気下で、粘度3000mPa・sの熱硬化性の樹脂層25(エポキシ樹脂)を精密描画が可能なディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製SHOT MINI SL)を用いて塗布した(図11(B))。
【0059】
樹脂層25を熱硬化する前に、別途用意したレンズアレイを成形するための型26を塗布した表面に押し当てた(図11(C))。押し当てる際、型26に形成してあるアライメントマークと基板に形成してあるアライメントマークをあわせる事により位置を決め、押すことにより、画素に合わせて平坦部を含むレンズアレイ16が形成された。型26は、画素ピッチと同じピッチで凹状の窪み或いは平坦部が形成されており、その窪みの表面には離形剤としてテフロン(登録商標)系の樹脂がコートされている。窪みの形状、即ちレンズアレイ16の集光性レンズ部16aの形状は、曲率半径30μmで形成した。画素ピッチが30μmであるので、レンズアレイ16の高さは平坦部16bに対して4μm程度の高さになった(図11(D))。
【0060】
本例の有機EL表示装置は、図2のような集光性レンズ部16aを形成しない場合の輝度とを比較すると、レンズを蒲鉾型のような一断面で集光するような場合では真正面から見たときに1.3倍乃至1.5倍程度の輝度向上が得られた。また有機EL素子の開口(発光領域)の上面形状が正方形や円、六角形などに設定した場合には、集光性レンズ部16aを球状にすることができ、この場合は全方向からの集光が可能になるため、真正面から見た時に2倍程度の輝度向上が得られた。これらの倍率は、レンズ形状、平坦部の厚さ、発光領域の開口率などにも依存しているので、本発明ではこの数字に限定されない。
【0061】
図1(B)は本例の有機EL表示装置の上面模式図である。図中、91Ra,91Ga,91BaはR,G,Bの各発光色を発光する有機EL素子の発光領域の集光性レンズ部16aに対応する領域であり、91Rb,91Gb,91Bbは平坦部(不図示)に対応する領域である。
【0062】
(実施例2)
封止性能を向上させるため、図8に示すように、保護膜15の上に更に、樹脂層23と無機材料層24とを形成し、その上の樹脂層25にレンズアレイ16を形成した以外は実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製した。
【0063】
本例では、実施例1と同様にして保護膜15まで形成した。その後、露点温度60℃の窒素雰囲気下で、粘度3000mPa・sの熱硬化性のエポキシ樹脂を精密描画が可能なディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製SHOT MINI SL)を用いて塗布した。次いで、真空環境下で100℃の温度で15分間加熱してエポキシ樹脂を熱硬化させ、樹脂層23を形成した。ここで、クリーンルーム及びプロセス装置の環境を考慮して、異物等があっても樹脂層で埋めることを目的としているので、樹脂層23の膜厚は10μmとした。さらに、窒化シリコンからなる無機材料層24を、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスを用いたプラズマCVD法で成膜した。無機材料層24の膜厚は1μmとし、有機EL素子が形成された基板面全体を覆うように、形成した。
【0064】
(実施例3)
封止性能を向上させつつ、レンズの性能の劣化を抑制するために、図9に示すように、保護膜15の上に、樹脂層23と無機材料層24を形成し、該樹脂層23にレンズアレイ16を形成した。
【0065】
本例では、実施例1と同様にして保護膜15まで形成した。その後、露点温度60℃の窒素雰囲気下で、粘度3000mPa・sの熱硬化性のエポキシ樹脂を精密描画が可能なディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製SHOT MINI SL)を用いて塗布した。該エポキシ樹脂が熱硬化する前に、別途用意したレンズアレイ16を成形するための型を塗布した表面に押し当てた。押し当てる際、型に形成してあるアライメントマークと基板に形成してあるアライメントマークを合わせる事により位置を決め、押すことにより、画素に合わせて集光性レンズ部16aと平坦部16bとを含むレンズアレイ16を形成した。最後に、窒化シリコンからなる無機材料層24を、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスを用いたプラズマCVD法で成膜した。無機材料層24の膜厚は1μmとし、有機EL素子が形成された基板面全体を覆うように、形成した。
【0066】
本例では、マイクレンズアレイ16が、保護膜15と無機材料層24とで完全に包まれているため、高温高湿の環境においても樹脂層23に水が透湿せず、樹脂層23が膨潤してレンズの集光が変化することは無かった。
【0067】
(実施例4)
樹脂層25に形成されるレンズアレイ16を、図12に示したパターニングによって形成した以外は実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製した。
【0068】
本例では、図12(A)に示すように、実施例1と同様にして保護膜15まで形成した。その後、図12(B)に示すように、露点温度60℃の窒素雰囲気下で、粘度3000mPa・sの熱硬化性のエポキシ樹脂を精密描画が可能なディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製SHOT MINI SL)を用いて10μm厚に塗布した。該エポキシ樹脂を真空環境下で100℃の温度で15分間加熱して硬化させ、樹脂層25を形成した。引き続いて、図12(C)に示すように、樹脂層25の上に4μm厚で同じエポキシ樹脂28を塗布し、図12(D)に示すように、フォトマスク29を介して露光した。露光量は図12(E)に示す集光性レンズ部16aの形状から換算した2次元の分布を持つようにして、現像後には、集光性レンズ部16aの形状になった。露光量の面内の制御は、フォトマスク29の透過率を面内で制御することで行なった。その後、再度真空環境下で100℃の温度で15分間加熱して硬化させた。この熱処理は、レンズアレイ表面の平滑化も兼ねている。本例では異物等があっても樹脂層25で埋めることを目的としているので、樹脂層25の最薄部で10μmとした。図12(E)では、レンズアレイは実質集光性レンズ部16aのみで、平坦部を持たないが、樹脂層28に平坦部を形成しても良い。
【符号の説明】
【0069】
10:基板、11,14:電極、13:有機化合物層、16:レンズアレイ、16a:集光性レンズ部、16b:平坦部、23,25:樹脂層、24:無機材料層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の有機エレクトロルミネッセンス素子と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子毎に集光性レンズ部を有するレンズアレイと、を備えた有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発光領域の上には、前記集光性レンズ部が配置された領域と、前記集光性レンズ部が配置されていない領域とが配置され、
前記集光性レンズ部の頂部が観察者側から見た状態で発光領域と重なり、且つ、前記集光性レンズ部の一部は前記発光領域の外に配置されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、前記レンズアレイとの間に、無機材料層と樹脂層とからなる封止層を有することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、発光面側に、無機材料層と樹脂層とからなる封止層を有し、前記レンズアレイが、前記樹脂層に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
前記封止層が、無機材料層/樹脂層/無機材料層の3層構造である請求項2又は3に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
前記封止層を構成する2層の無機材料層が、前記表示装置の表示領域の外側において互いに接して前記樹脂層を封止していることを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項6】
前記樹脂層の最小膜厚が、1μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項7】
前記基板が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動するためのトランジスタと配線と前記トランジスタと配線を覆って保護する層間絶縁層とを有しており、前記層間絶縁層と、前記封止層を構成する無機材料層とが、前記表示装置の表示領域の外側において互いに接して前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を封止していることを特徴とする請求項2又は3に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項1】
複数の有機エレクトロルミネッセンス素子と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子毎に集光性レンズ部を有するレンズアレイと、を備えた有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発光領域の上には、前記集光性レンズ部が配置された領域と、前記集光性レンズ部が配置されていない領域とが配置され、
前記集光性レンズ部の頂部が観察者側から見た状態で発光領域と重なり、且つ、前記集光性レンズ部の一部は前記発光領域の外に配置されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、前記レンズアレイとの間に、無機材料層と樹脂層とからなる封止層を有することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、発光面側に、無機材料層と樹脂層とからなる封止層を有し、前記レンズアレイが、前記樹脂層に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
前記封止層が、無機材料層/樹脂層/無機材料層の3層構造である請求項2又は3に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
前記封止層を構成する2層の無機材料層が、前記表示装置の表示領域の外側において互いに接して前記樹脂層を封止していることを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項6】
前記樹脂層の最小膜厚が、1μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項7】
前記基板が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動するためのトランジスタと配線と前記トランジスタと配線を覆って保護する層間絶縁層とを有しており、前記層間絶縁層と、前記封止層を構成する無機材料層とが、前記表示装置の表示領域の外側において互いに接して前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を封止していることを特徴とする請求項2又は3に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−59692(P2012−59692A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136084(P2011−136084)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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