説明

有機エレクトロルミネッセント光源

透明基板3と、透明電極4と、反射性電極9と、光を発する少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセント層5であって、300nmよりも大きく、好ましくは400nmよりも大きく、特に好ましくは500nmよりも大きい厚さを有し、電極4、9間に配されている少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセント層5とを有する エレクトロルミネッセント光源である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光抽出を改善するための有機層を有するエレクトロルミネッセント光源に関する。
【背景技術】
【0002】
基板、少なくとも2つの電極及び前記電極の間に配されている有機エレクトロルミネッセント層を有する有機層(OLED)を備える非常に多くのエレクトロルミネッセント光源が、知られている。光は、典型的には、動作電圧を印加することによって前記エレクトロルミネッセント層内に生成され、透明基板を介して発せられる。従って、このような所謂底部エミッタは、これに応じて、前記基板と前記エレクトロルミネッセント層との間に配されている透明電極(通常、陽極)と、反射性第2の電極(通常、陰極)とを有する。前記基板、陽極及びエレクトロルミネッセント層の光学特性(例えば屈折率)並びに前記陰極の反射率のため、50nmと150nmとの間の典型的な層の厚さを有する前記エレクトロルミネッセント層内で生成される光の一部のみが、前記エレクトロルミネッセント光源から抽出される。前記光の約1/3は、前記反射性電極(典型的には、前記陰極)における放射を伴うことなく損失され、前記光の1/3は、前記有機エレクトロルミネッセント層内に残存し、前記光の1/3は、前記基板内に抽出される。前記基板と空気との間の界面における付加的な光損失のため、典型的なOLEDにおいて、前記有機エレクトロルミネッセント層内で生成される光の20%乃至25%のみが、前記OLEDから抽出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
非常に多くの種々の方法(例えば、前記基板の特別な表面構造、前記透明電極と前記基板との間の光散乱のための層、及び/又は前記エレクトロルミネッセント層内の光の放出方向に影響を与える所謂マイクロキャビティ構造)が、光抽出を向上させるために使用される。前記発光効率(前記有機エレクトロルミネッセント層内で生成される光の量に対する、抽出される光の割合(fraction))を増加させる全ての知られている方法は、前記エレクトロルミネッセント光源と前記透明電極との間の界面に存在する光の最大抽出を目標としている。文献、米国特許出願公開第20050062399A1号は、前記有機エレクトロルミネッセント層内で生成される光の波形を変更するための前記陽極と前記基板との間の付加的な層構造を開示している。これらの手段は、前記層表面に垂直な発光効率を、他の光の伝搬方向を犠牲にして7/3倍に増加させることができるが、前記のような既知の方法は、発光効率全体を、全ての光の伝搬方向にわたって全体的には、1.5倍の最大増加を達成することができるのみである。25%迄である元の発光効率の場合、このことは、38%までの改善に対応する。従って、生成される光のうちの半分よりも多くの光が、前記エレクトロルミネッセント光源から抽出されておらず、従って、発光効率から失われている。この状況において、前記発光効率の更なる増加が望ましい。
【0004】
従って、本発明の目的は、改善された発光効率を持つ有機エレクトロルミネッセント光源を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、透明基板、透明電極及び反射性電極と、前記反射性電極における光損失を減少するための光を発する少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセント層であって、250nmよりも大きく、好ましくは400nmよりも大きく、特に好ましくは500nmよりも大きい厚さを有する少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセント層とを有するエレクトロルミネッセント光源によって達成される。前記陰極の表面プラズモンとの結合(金属内の伝導電極ガスの集団励起)のため、前記有機エレクトロルミネッセント層内の励起状態の非放射遷移は、前記電子及び孔再結合領域の前記陰極までの距離を増加させ、従って、前記反射性電極における光損失の低減を生じさせることによって、最小化されることができる。第1の近似によると、前記再結合領域は、前記有機エレクトロルミネッセント層の中央部にある。
【0006】
好適なエレクトロルミネッセント光源において、前記有機エレクトロルミネッセント層は、少なくとも1つの正孔伝導層と1つの電子伝導層とを有しており、前記電子伝導層の厚さは、200nmよりも大きく、好ましくは250nmよりも大きく、特に好ましくは300nmよりも大きい。正孔伝導層は、以下ではHTL層と称され、電子伝導層は、以下ではETL層と称される。類似の伝導特性を有するETL及びHTL層の場合、前記再結合領域は、典型的には、前記ETL層と前記HTL層との間の界面の近くにある。ここで、前記再結合領域から前記陰極までの距離は、前記ETL層の厚さに比例する。
【0007】
特に好適なエレクトロルミネッセント光源において、前記正孔伝導層の厚さは、90nmよりも大きく、好ましくは150nmよりも大きく、特に好ましくは200nmよりも大きい。実験により、固定されているETL層厚さの場合、前記発光効率(前記有機エレクトロルミネッセント層内で生成される光の量に対する、基板内に抽出される光の割合)は、前記HTL層厚さの適切な選択によって15%改善されることができることが示された。
【0008】
前記電子伝導層及び前記正孔伝導層が、差が|n−n|≦0.1である屈折率n(ETL)及びn(HTL)を有するのが、更に好ましい。実験によって、前記ETL層と前記HTL層との間の屈折率の差ができる限り小さい場合、前記発光効率が、特に高くなることが示された。
【0009】
この場合において、伝導性を増加させるために、前記電子伝導層が、n型ドーパント(好ましくは金属)を含む、及び/又は前記正孔伝導層が、前記正孔伝導層(好ましくは有機材料)を含むことが特に好ましい。前記ETL層及び前記HTL層におけるドーパントによって、これらの層の電気伝導性は、大きい層厚さに適合化されることができ、この結果、小さい層厚さの場合と本質的に同じ動作電圧が、達成されることができる。
【0010】
エレクトロルミネッセント光源の好適実施例において、前記有機エレクトロルミネッセント層は、1,000nmよりも小さく、好ましくは800nmよりも小さく、特に好ましくは600nmよりも小さい層の厚さを有する。電気特性は、全体的な層の厚さが、可能な限り小さい場合に、有利に調整されることができる。
【0011】
他の好適な実施例において、前記透明基板は、1.6よりも大きく、好ましくは1.8よりも大きい屈折率を有する。前記発光効率は、より高い屈折率を有する基板によって大幅に増加されることができる。
【0012】
エレクトロルミネッセント光源の特に好適な実施例において、前記透明基板、前記透明電極及び前記有機エレクトロルミネッセント層の屈折率の間の差分は、0.1よりも小さく、好ましくは前記屈折率は同一である。このようにして、光損失は、前記エレクトロルミネッセント光源内部の界面における反射のために、減少される又は回避されることができる。
【0013】
この場合において、前記エレクトロルミネッセント光源の前記反射性電極が、90%よりも大きい反射率を持つことが更に好ましい。基板/空気の界面によって反射され戻される光は、前記エレクトロルミネッセント光源から抽出され、この界面に再び到達した後、対応する背面反射電極の反射率が高い場合に、整合的に大きくなることがあるであろう。
【0014】
この場合、前記基板が、空気との界面に光抽出構造を有するのが特に好ましい。この種の抽出構造によれば、前記基板内に注入される光が、前記エレクトロルミネッセント光源のほぼ完全に外に抽出されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のこれらの及び他の見地は、以下に記載される実施例を参照して、明らかになり、説明されるであろう。
【0016】
図1は、所謂底部発光エレクトロルミネッセント光源であって、一般に、透明電極4と少なくとも部分的に反射性の電極9との間に配されている少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセント層5とを有する層構造(平面の透明基板3な基板上に設けられている)から構成されている底部発光エレクトロルミネッセント光源を示している。前記透明基板の屈折率は、1.4と2.0との間で変化し得て、例えば、ホウ珪酸ガラスは、屈折率n=1.45を有し、PMMAは屈折率n=1.49を有し、PETは屈折率n=1.65を有し、高指数(high−index)スコットガラスSF57はn=1.85を有する。有機エレクトロルミネッセント層5は、典型的には、複数のサブ層6乃至8から作られている。有機エレクトロルミネッセント層5の場合において、低い仕事関数を有する材料の電子注入層が、更に、電極9(典型的には前記陰極)と前記エレクトロルミネッセント層5との間に配されることができ、孔注入層が、更に、電極4(典型的には前記陽極)と前記エレクトロルミネッセント層5との間に配されることができる。底部発光光源において、光10は、基板3を介して観測者に到達する。
【0017】
向上された発光効率を有するエレクトロルミネッセント光源1は、一般に、基板3の空気に面している側における発光効率を改善するように光抽出構造2を有する。光抽出構造2は、四角錐構造、三角錐構造、六角錐構造、楕円状のドーム構造及び/又は円錐構造を有していても良い。このようにして、構造化されている層は、例えば、注入モールディング方法によって製造され、前記基板上に積層されることができる。前記基板の前記屈折率以上の屈折率を有する材料は、第2の光抽出層と前記基板との間の界面における全反射を回避するために、光抽出層2に好ましい。前記基板と同じ屈折率を有する材料は、空気との界面において反射される光の割合を最小化するように前記空気との屈折率の差をできるだけ小さく保持するために、好ましい。他の実施例において、光抽出層2は、透明マトリクス材及び光散乱粒子(例えば、前記マトリクス材とは異なる屈折率を有する反射性粒子及び/又は粒子)の粒子層として設計されることもできる。
【0018】
これに代わるものとして、付加的な光抽出層を回避するために、薄膜の、リソグラフィ及び/又はのこ引き(sawing)のプロセスによって、光抽出構造2を前記基板上に直接的に設けることも更に可能である。
【0019】
透明電極4は、例えばpドープシリコン、インジウムドープ酸化スズ(ITO)又はアンチモンドープ酸化スズ(ATO)を含んでいても良い。透明電極4を、特に高い電気伝導性を有する有機材料、例えば、ポリスチレンスルホン酸(PEDT/PSS(HC Starck社によるバイトロン(登録商標)P)内の合成樹脂(3、4−エチレンジオキシチオフェン)から作ることも可能である。電極4は、好ましくは、1.6と2.0との間の屈折率を有するITOから構成されている。反射性電極9自身は、例えば、アルミニウム、銅、銀又は金から作られている反射性のものであっても良く、又は反射層構造を有していても良い。前記反射性層又は層構造が、光放出方向10から見て電極9の下方に配されている場合、電極9は、透明であっても良い。電極9は、構造化されていても良く、例えば、前記のような伝導材料又は複数の伝導材料の平行な多数の片を含んでいても良い。代替的には、電極9が構造化されており、平坦な表面として設計されていても良い。
【0020】
発光ポリマ(PLED)又は小さい発光有機分子は、有機孔又は電子輸送マトリクス材内に埋め込まれており、例えば、エレクトロルミネッセント層5用の前記有機材料として使用されることができる。前記有機エレクトロルミネッセント層内に小さい発光分子を有するOLEDは、SMOLED(小分子有機発光ダイオード)とも称される。前記のような層において、正孔及び電子は、遭遇し、互いに再結合する。前記発光材料の前記マトリクス材への材料依存の電子結合によって、前記発光材料は、直接的に、又はエネルギ伝達を介しての何れかによって、励起される。励起された前記発光材料は、光を発することによって基底状態に戻る。前記のような効率を改善させるために、典型的なエレクトロルミネッセント光源1の前記有機エレクトロルミネッセント層は、孔輸送層6(HTL層)、再結合層7(EL層)及び電子輸送層8(ETL層)を有しており、再結合層7は、前記HTL層と前記ETL層との間に配されている。ETL層8は、再結合層7と陰極9との間にあり、HTL層6は、再結合層7と陽極4との間にある。
【0021】
例えば、テトラフルオロ−テトラシアノ−キノジメタン(quinodimethane)(F4−TCNQ)をドープされた4,4',4''−トリス−(N−(3−メチル−フェニル)−N−フェニルアミノ)−トリフェニルアミン(MTDATA)と、例えば、トリアリルアミン、ジアリルアミン、トリスチルべネアミン(tristilbeneamines)又はポリエチレンジオキシチオフェン(PDOT)及びポリ(スチレンスルホン酸塩)の混合物である孔輸送層とは、HTL層6用の材料として使用される。
【0022】
例えば、トリス−(8−ヒドロキシ−キノリナト(quinolinato))−アルミニウム(Alq)、1,3,5−トリス−(1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール−2基)ベンゼン(TPBI)又は低電子複素環化合物(例えば、1,3,4−オキサジアゾール又は1,2,4−トリアゾール)は、ETL層8のための材料として使用される。
【0023】
所謂SMOLED層としての実施例において、再結合層7は、例えば、マトリクス材(例えば、4,4',4''−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)又は1,3,5−トリス−(1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール−2−基)ベンゼン(TPBI)又はN、N−ジフェニル−N、N−ジ−(3−メチル−フェニル)−ベンジジン(TPD))内に埋め込まれた発光材料としてのインジウム合成物を有していても良い。本発明は、光放出のための励起の仕組みとは独立のものである。
【0024】
従来のエレクトロルミネッセント光源は、30nmと65nmと間の厚さを有するHTL層と、40nmと80nmとの間の厚さを有するETL層とを有する。再結合層7と一緒に、従来の有機エレクトロルミネッセント層5は、100nmと150nmとの間の全体の厚さを有する。前記のような電荷輸送特性及び前記のような意図されている効果的な光生成により、有機エレクトロルミネッセント層5は、できるだけ薄いものであるように予め選択される。
【0025】
しかしながら、本発明によるエレクトロルミネッセント光源1は、300nmよりも大きく、好ましくは400nmよりも大きく、特に好ましくは500nmよりも大きい厚さを有する、光を発する有機エレクトロルミネッセント層5を有している。前記有機層内の励起された状態の非放射遷移は、前記陰極の表面プラズモン(金属内の伝導電極気体の集団励起)との結合によるものであり、前記電子及び孔再結合領域からの距離を増加させることによって最小化されることができ、これに応じて、前記反射性電極における光損失の低減を生じる。類似の伝導特性を有するETL及びHTL層の場合、再結合領域は、典型的には、前記ETLと前記HTL層との間の界面の近くにある。ここで、前記再結合領域から前記陰極への距離は、前記ETL層の厚さに比例する。
【0026】
図1に示されている有機エレクトロルミネッセント層5は、ドープされた正孔伝導HTL層6と、前記電子及び孔再結合領域が本質的に存在する光を発する再結合層7と、ドープされた電子伝導ETL層8との所謂pin構造を持っている。この層構造により、前記再結合領域は、前記陰極から規定された距離にあり、本質的には、前記ETL層の厚さに対応している。
【0027】
図2は、透明電極4から基板3に励起される有機エレクトロルミネッセント層5内に生成された光のパーセント割合を、様々なHTL層の厚さ6に対するETL層8の厚さの関数として示している。ここで、基板3は屈折率1.7を有しており、前記透明電極4は屈折率1.9を有している。異なるHTL層厚さのためのデータは、50nmの場合は実線により、100nmの場合は点線により、150nmの場合は破線により、200nmの場合は一点鎖線により、250nmの場合はダイアモンド印を有する線により示されている。
【0028】
図2から分かるように、前記基板への最大光抽出65%が、(同じ屈折率1.75を有する場合)50nm/80nmの従来のHTL/ETL層厚さによって達成され、大気中における約45%の発光効率に対応する。基板3内に抽出される光の量は、250nm前後のETL層の厚さにおいて最大に到達する。前記HTL層の厚さ6に依存して、前記光抽出は、再び僅かに低下する、又はより大きいETL層の厚さ8に対してほぼ一定に留まる。基板3内に抽出される光の割合の著しい増大は、90nmよりも大きいHTL層厚さに対して達成される。HTL層の厚さ6が200nmよりも大きい場合、エレクトロルミネッセント層5内で生成される光の80%以上が、最適化されたETL層の厚さを有する基板3内に抽出されることができる。前記基板上に配されている最適化された光抽出構造2を有する光抽出層によれば、前記基板内に注入される光は、大部分に渡って、エレクトロルミネッセント光源1から抽出される光であることができる。前記エレクトロルミネッセント光源から抽出される光の量も、前記陰極の反射率に依存する。80%−85%の反射率を有する従来のアルミニウム陰極の場合、大気中への光抽出によってエレクトロルミネッセント光源に関して60%よりも大きい発光効率が、得られる。90%よりも大きい陰極の反射率の場合(例えば、95%までの反射率を有する金の陰極)、この値は、65%よりも大きくなるまで増加されることができる。可視スペクトル範囲における基板3内への光抽出が、波長に、微弱にしか依存しないことも好ましい。
【0029】
基板3の屈折率の効果は、図3から分かる。図2、図3は、透明電極4から基板3内に抽出される有機エレクトロルミネッセント光源1の光のパーセント割合を、ここでは屈折率1.5を有する基板について、様々なHTL層の厚さ6に関するETL層8の厚さの関数として示している。異なるHTL層の厚さに関するデータは、50nmの場合は実線により、100nmの場合は点線により、150nmの場合は破線により、200nmの場合は一点鎖線により、250nmの場合はダイアモンド印を有する線により表されている。前記ETL層の厚さの変化は、図2と比較して発光効率に対する効果が小さく、150nmと200nmとの間のHTL層の厚さに関して、前記発光効率は、従来技術によるエレクトロルミネッセント装置の場合の典型的な層の厚さと比較して、屈折率1.7を有する基板の場合の80%よりも同じく高い発光効率を達成することなく、層の厚さと比較して、100nm乃至120nmのETL層の厚さの場合に約10%だけ増加されることができる。
【0030】
ETL及びHTL層の異なる屈折率(例えば、屈折率1.7を有するETL層と、屈折率1.9を有するHTL層)の効果が、図4に示されている。これまでの図にあったように、図4は、透明電極4から基板3内に抽出される有機エレクトロルミネッセント光源1の光のパーセント割合を、様々なHTL層厚さ6に関するETL層8の厚さの関数として示している。前記基板の屈折率は、1.7である。異なるHTL層の厚さに関する当該データは、50nmの場合には実線により、100nmの場合には点線により、150nmの場合には破線により、200nmの場合には一点鎖線により、250nmの場合にはダイアモンド印を有する線により表されている。光のせいぜい70%が、同じ屈折率を有するHTL/ETL層よりも10%小さい約250nmの最適なETL層の厚さに関して基板内に抽出されるが、前記ETL層の厚さに対する発光効率の類似の依存性は、図2内に見られる。ここで、最適なHTL層の厚さは、150nmと200nmとの間にある。この最適なHTL層の厚さは、前記ETL及び前記HTL層の屈折率間の差によって変化する。
【0031】
特に好適な実施例において、基板3、透明電極4及び有機エレクトロルミネッセント層5は、ほぼ同じ屈折率、好ましくは等しい屈折率を有しており、有機エレクトロルミネッセント層5内で生成される光の約90%が、前記基板内に抽出されることができる。これに応じて最適化される前記基板の光抽出構造2であって、光抽出構造2を備える光抽出層として前記基板内に設けられ得る光抽出構造2によれば、有機エレクトロルミネッセント光源1に関して60%乃至68%(金の陰極の場合、65%乃至72%でさえある)の発光効率が得られ、従来技術に対する劇的な改善を表している。有機エレクトロルミネッセント層は、典型的には、1.7と1.8との間の屈折率を有しており、透明電極(例えば、ITOから作られる)は、典型的には、1.8と2.0との間の屈折率を有している。材料に依存して、基板の屈折率は、1.4と3.0との間で変化し得る。従って、対応する特に好適な実施例において、前記基板、前記透明電極及び前記有機エレクトロルミネッセント層は、屈折率1.8を有する。
【0032】
他の実施例において、前記基板からの光抽出を改善するための付加的な層(例えば、小さい濃度において光散乱粒子を含む数十μmのオーダの厚さを有する高指数ポリマ)が、透明電極4と基板3との間に配されることもできる。
【0033】
有機エレクトロルミネッセント層5に関して1,000nmまでの層の厚さの場合、電気伝導性は、それぞれ孔及び電子伝導HTL及びETL層のための所謂n型及び/又はp型ドーパントによって、改善されることができる。従って、ETL及びHTL層6及び8に最適な層の厚さを含む1,000nmよりも小さい層の厚さが、有利である。有機エレクトロルミネッセント層5の層の厚さは、好ましくは、800nm未満であり、特に好ましくは600nm未満である。しかしながら、このことは、従来技術と比較して3倍よりも大きい因子によって、有機エレクトロルミネッセント層5の層の厚さに未だ対応している。例えば、高い導電性が、2mol%のテトラフルオロ−テトラシアノ−キノジメタン(quinodimethane)(F−TCNQ)をドープされた4,4',4''−トリス−(3−メチルフェニルフェニルアミノ)−トリフェニルアミン(m−MTDATA)を有するHTL層6において達成されることができる。ETL層8において、高い導電性が、例えば、1 Bphen 分子に対してLi原子のドーピング濃度を有する4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(phenantroline)(BPhen)層内のLiドーピングによって達成されることができる。これに応じてドープされている有機層は、100nmの付加的な層厚さごとに約0.1Vの前記層の厚さに渡って電圧降下を生じることを示している。有機エレクトロルミネッセント層5(200nmの代わりに600nm)の三重の層の厚さと、4Vと8Vとの間の従来の動作電圧とにより、前記層厚さの増大は、10%よりも小さい動作電圧の上昇に対応する。
【0034】
様々なドーピングレベルが、既知の技術(例えば、水晶振動子モニタによる対応する蒸着レート制御を伴う同時電子ビーム蒸着)によって調整されることができる。上述のドーピングレートは、例としてのものであり、意図されている動作電圧及び意図されている光生成レートに依存し、それぞれの要件に応じて適応化されることができる。
【0035】
添付図面及び本明細書を参照して上述で説明された実施例は、単に、エレクトロルミネッセント光源からの光抽出の改善の例を表しているものであり、添付の特許請求の範囲をこれらの範囲に限定するものであるとみなしてはならない。添付の特許請求の範囲によって覆われているような代替的な実施例は、当業者にとって可能なものである。添付の従属請求項の番号は、前記請求項の他の組み合わせが、本発明の有利な実施例を表すことができないと意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明によるエレクトロルミネッセント光源を示している。
【図2】前記基板内に光を抽出した場合の発光効率を、屈折率n=1.7を有する基板に関して、前記ETL層の厚さの関数として示している。
【図3】前記基板内に光を抽出した場合の発光効率を、屈折率n=1.5を有する基板に関して、前記ETL層の厚さの関数として示している。
【図4】前記基板内に光を抽出した場合の発光効率を、前記HTL層及び前記ETL層に関してそれぞれ1.9及び1.7の屈折率nを有し、前記基板に関してn=1.7の屈折率を有する前記ETL層の厚さの関数として示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、透明電極と、反射性電極と、光を発する少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセント層であって、250nmよりも大きく、好ましくは400nmよりも大きく、特に好ましくは500nmよりも大きい厚さを有すると共に前記電極間に配されている少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセント層とを有するエレクトロルミネッセント光源。
【請求項2】
前記有機エレクトロルミネッセント層が、少なくとも1つの正孔伝導層及び1つの電子伝導層を有しており、前記電子伝導層の厚さは、200nmよりも大きく、好ましくは250nmよりも大きく、特に好ましくは300nmよりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載のエレクトロルミネッセント光源。
【請求項3】
前記正孔伝導層の厚さが、90nmよりも大きく、好ましくは150nmよりも大きく、特に好ましくは200nmよりも大きいことを特徴とする、請求項2に記載のエレクトロルミネッセント光源。
【請求項4】
前記電子伝導層及び前記正孔伝導層が、|n−n|≦0.1の差である屈折率n及びnを有していることを特徴とする、請求項2又は3に記載のエレクトロルミネッセント光源。
【請求項5】
導電性を増加させるために、前記電子伝導層が、好ましくは金属であるn型ドーパントを含んでおり、及び/又は前記正孔伝導層が好ましくは有機材料であるp型ドーパントを含んでいることを特徴とする、請求項2乃至4の何れか一項に記載のエレクトロルミネッセント光源。
【請求項6】
前記有機エレクトロルミネッセント層が、1,000nmよりも小さく、好ましくは800nmよりも小さく、特に好ましくは600nmよりも小さい層の厚さを有することを特徴とする、請求項1乃至5の何れか一項に記載のエレクトロルミネッセント光源。
【請求項7】
前記透明基板が、1.6よりも高く、好ましくは1.8よりも高い屈折率を有することを特徴とする、請求項1乃至6の何れか一項に記載のエレクトロルミネッセント光源。
【請求項8】
前記透明基板、前記透明電極及び前記有機エレクトロルミネッセント層の屈折率が、0.1よりも小さいだけ異なっており、好ましくは同一であることを特徴とする、請求項1乃至7の何れか一項に記載のエレクトロルミネッセント光源。
【請求項9】
前記反射性電極が90%よりも大きい反射率を有することを特徴とする、前記1乃至8の何れか一項に記載のエレクトロルミネッセント光源。
【請求項10】
前記基板が、大気との界面に光抽出構造を有していることを特徴とする、請求項1乃至9の何れか一項に記載のエレクトロルミネッセント光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−543074(P2008−543074A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514276(P2008−514276)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051705
【国際公開番号】WO2006/129265
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】