説明

有機エレクトロルミネッセント画像表示装置およびその製造方法

【課題】 良好な画像表示が可能で信頼性の高い有機エレクトロルミネッセント画像表示装置と、このような有機エレクトロルミネッセント画像表示装置を簡便に製造するための方法を提供する。
【解決手段】 有機エレクトロルミネッセント画像表示装置を、透明基材上にストライプ状の透明電極層と、非発光領域にマトリックス状に配設された無機化合物膜と絶縁層と、透明電極層と直交する方向の絶縁層上に位置する隔壁を備え、各隔壁間には透明電極層と直交する方向に順次延設積層された有機エレクトロルミネッセンス素子層と背面電極層とを備えたものとし、上記の無機化合物膜の厚みを有機エレクトロルミネッセンス素子層の厚み以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセント画像表示装置と、有機エレクトロルミネッセント画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機のエレクトロルミネッセンス(EL)素子は、自己発色により視認性が高いこと、液晶ディスプレーと異なり全固体ディスプレーであること、温度変化の影響をあまり受けないこと、視野角が大きいこと等の利点をもっており、近年、画像表示装置の画素等としての実用化が進んでいる。
有機EL素子を用いた画像表示装置の基本構造としては、例えば、図9に示されるように、透明基板42上にカラーフィルタ層44、透明平滑化層46、ストライプ形状の透明電極層48を積層して有し、これらの積層の上には、透明電極層48と直交する方向に隔壁55が絶縁層54を介して延設され、各隔壁55間(絶縁層54間)にはストライプ状に有機EL素子層50と背面電極層51とが積層されたものがある。(特許文献1)
【0003】
このような有機EL画像表示装置としては、例えば、(1)所望の単色発光の有機EL素子層を使用して表示するもの、(2)三原色の有機EL素子層を各発光色毎に所定のパターンで形成したもの、(3)白色発光の有機EL素子層を使用し、三原色のカラーフィルタを介して表示するもの、(4)青色発光の有機EL素子層を使用し、蛍光色素を利用した色変換蛍光体層を設置して、青色光を緑色蛍光や赤色蛍光に変換して三原色表示をするもの等が提案されている。
【特許文献1】特開2000−195677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のいずれの有機EL画像表示装置も、透明電極層48上に絶縁層54を介して隔壁55を備えており、通常、絶縁層54は絶縁性の有機化合物膜をパターニングして形成されるため、透明電極層48上に絶縁層形成時の有機物残渣等の汚染物54′が存在すると、この上に形成される有機EL素子層50の劣化を生じ、画像表示品質の低下、短寿命化による信頼性低下を来たすという問題があった。
また、工程管理を厳しくすることにより、上記のような汚染物54′が透明導電層48上に存在しないようにすることも可能であるが、有機化合物膜である絶縁層54からのガス成分発生を防止することは困難である。このため、有機EL素子層50は、隣接する絶縁層54からの脱ガス成分の拡散により劣化を生じ、特に、透明電極層48上に位置する部位(直接表示部位(絵素))の有機EL素子層50aの劣化を生じて絵素縮小を来たし、画像表示品質の低下、短寿命化が避けられないという問題があった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、良好な画像表示が可能で信頼性の高い有機エレクトロルミネッセント画像表示装置と、このような有機エレクトロルミネッセント画像表示装置を簡便に製造するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するために、本発明の有機エレクトロルミネッセント画像表示装置は、透明基材と、該透明基材上に設けられたストライプ状の複数の透明電極層と、非発光領域にマトリックス状に配設された無機化合物膜と該無機化合物物膜上に配設された絶縁層と、前記透明電極層と直交する方向で前記絶縁層上にストライプ状に延設された隔壁と、該隔壁間において前記透明電極層と直交する方向に順次延設積層された有機エレクトロルミネッセンス素子層と背面電極層と、を少なくとも備え、前記無機化合物膜の厚みは前記有機エレクトロルミネッセンス素子層の厚み以上であるような構成とした。
【0006】
本発明の他の態様として、前記無機化合物膜の厚みと前記有機エレクトロルミネッセンス素子層の厚みの差は、0〜3μmの範囲内であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記透明基材と前記透明電極層との間にカラーフィルタ層と透明平滑化層とを備えるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記透明平滑化層と前記透明電極層との間に透明バリア層を備えるような構成とした。
【0007】
本発明の他の態様として、前記カラーフィルタ層と前記透明平滑化層との間に色変換蛍光体層を備えるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記透明基材と前記カラーフィルタ層との間に、所定の開口パターンを有するブラックマトリックスを備えるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記有機エレクトロルミネッセンス素子層は、白色発光、青色発光、赤色発光、緑色発光のいずれか、あるいは、青色発光、赤色発光、緑色発光が所定のパターンで組み合わされたものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記有機エレクトロルミネッセンス素子層は、青色発光であり、前記色変換蛍光体層は青色光を緑色蛍光に変換して発光する緑色変換層と、青色光を赤色蛍光に変換して発光する赤色変換層とを備えているような構成とした。
【0008】
本発明の有機エレクトロルミネッセント画像表示装置の製造方法は、透明基材上に複数のストライプ状の透明電極層を形成する工程と、前記透明電極層を覆うように全面に、後工程で形成する有機エレクトロルミネッセンス素子層と同じ、あるいは厚くなるように無機化合物膜に形成する工程と、前記無機化合物膜上の非発光領域にマトリックス状に絶縁層を形成し、前記透明電極層と直交する前記絶縁層上にストライプ状の隔壁を延設する工程と、前記絶縁層をマスクとして、露出している前記無機化合物膜をエッチングにより除去する工程と、前記透明電極層と直交するように、前記隔壁間に有機エレクトロルミネッセンス素子層と背面電極層とをこの順に積層する工程と、を有するような構成とした。
【0009】
本発明の有機エレクトロルミネッセント画像表示装置の製造方法は、透明基材上に複数のストライプ状の透明電極層を形成する工程と、前記透明電極層を覆うように全面に、後工程で形成する有機エレクトロルミネッセンス素子層と同じ、あるいは厚くなるように無機化合物膜に形成する工程と、前記無機化合物膜上の非発光領域にマトリックス状に絶縁層を形成し、該絶縁層をマスクとして、露出している前記無機化合物膜をエッチングにより除去する工程と、前記透明電極層と直交する前記絶縁層上にストライプ状の隔壁を延設する工程と、前記透明電極層と直交するように、前記隔壁間に有機エレクトロルミネッセンス素子層と背面電極層とをこの順に積層する工程と、を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記無機化合物膜は、前記透明導電層よりもエッチングレートの速いものとするような構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の有機エレクトロルミネッセント画像表示装置は、無機化合物膜の厚みが有機エレクトロルミネッセンス素子層の厚み以上であるので、この無機化合物膜上に積層された絶縁層の下面(無機化合物膜との界面)は、有機エレクトロルミネッセンス素子層の表面よりも高い位置にあり、絶縁層の側端部位が絵素(直接表示領域)に位置する有機エレクトロルミネッセンス素子層に直に接触することが防止され、これにより、絶縁層からの脱ガス成分が有機エレクトロルミネッセンス素子層、特に直接表示部位(絵素)に拡散することが抑制され、有機エレクトロルミネッセンス素子層の劣化が生じ難く、絵素縮小が防止され、高い画像表示品質を維持した信頼性の高いものとなる。
【0011】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント画像表示装置の製造方法では、無機化合物膜を介して絶縁層、あるいは絶縁層と隔壁を形成し、その後、露出している無機化合物膜を除去するので、絶縁層や隔壁の形成工程において有機物残渣等の汚染物が生じても、これらの汚染物は無機化合物膜とともに除去されるので、有機エレクトロルミネッセンス素子層を形成する面の更なる清浄化が可能となり、有機エレクトロルミネッセンス素子層の劣化が生じ難い有機エレクトロルミネッセント画像表示装置の製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。
[有機エレクトロルミネッセント画像表示装置]
図1は、本発明の有機エレクトロルミネッセント(EL)画像表示装置の一実施形態を示す部分平面図であり、図2は図1に示される有機EL画像表示装置のA−A線における縦断面図であり、図3は図1に示される有機EL画像表示装置のB−B線における縦断面図である。尚、図1では、後述する補助電極7、透明電極層8を示すために、有機EL素子層10と背面電極層11の一部を切り欠いた状態で示している。
【0013】
図1〜図3において、有機EL画像表示装置1は、透明基材2と、この透明基材2上に発光領域に対応した開口パターンを備えたブラックマトリックス3を介して帯状の赤色着色層4R、緑色着色層4G、青色着色層4Bからなるカラーフィルタ層4が設けられている。
このようなカラーフィルタ層4を覆うように透明平滑化層6が透明基材2上に設けられ、この透明平滑化層6上に補助電極7および透明電極層8が周辺の端子部から中央の画素領域まで帯状に配設され形成されている。
【0014】
また、本発明の有機EL画像表示装置1では、上記のように配設された帯状の透明電極層8と直交し、ブラックマトリックス3の開口部上に位置するように帯状の有機EL素子層10と背面電極層11とが形成されている。ブラックマトリックス3の開口部は、透明電極層8と背面電極層11とが交差する発光領域に位置している。そして、非発光領域にマトリックス状に積層配設された無機化合物膜12および絶縁層13と、帯状の透明電極層8と直交する絶縁層13上に位置するようにストライプ状に延設された隔壁15を備えている。この隔壁15の上部平面にはダミーの有機EL素子層10′と背面電極層11′とが形成されており、これらは、隔壁15をパターニング手段として利用した有機EL素子層10および背面電極層11の形成において、帯状のパターンを形成するために、不要な形成材料を透明電極層8上に到達しないよう隔壁15に付着させて排除した結果形成されたものである。尚、図1では、露出している無機化合物膜12と絶縁層13に斜線を付して示している。
【0015】
図4は図2に鎖線円で囲まれた部位の拡大断面図であり、上述のように、隔壁15をパターニング手段として利用して形成された有機EL素子層10と背面電極層11は、各絵素領域に位置する有機EL素子層10a、背面電極層11aと、無機化合物膜12の側端部位12aと絶縁層13の側端部位13aとに接触しながら絶縁層13上に乗り上げている有機EL素子層10b、背面電極層11bからなっている。
【0016】
このような本発明の有機EL画像表示装置1では、無機化合物膜12の厚みが有機EL素子層10の厚み以上であることを特徴とする。すなわち、図4に示されるように、無機化合物膜12の厚みT1は、有機EL素子層10の厚みT2よりも大きく設定されている。その結果、無機化合物膜12上に積層された絶縁層13の下面(無機化合物膜12との界面)と、有機EL素子層10の表面との間に、高さ位置間隙G(=T1−T2)が形成される。この高さ位置間隙Gが存在することにより、絶縁層13の側端部位13aは、絶縁層13上に乗り上げている有機EL素子層10bと接触するものの、各絵素領域に位置する有機EL素子層10aと直に接触することが防止される。これにより、絶縁層13からの脱ガス成分が各絵素領域の有機EL素子層10aに拡散することが大幅に防止され、有機EL素子層の劣化による絵素縮小が防止される。
【0017】
上述の図4では、マトリックス状の絶縁層13のうち、隔壁15と平行(透明電極層8と平行)な絶縁層13について有機EL素子層10aとの関係を説明しているが、隔壁15と直交する方向(透明電極層8と直交する方向)の絶縁層13においても、絶縁層13の側端部位は、絶縁層13上を乗り越えるように形成されている有機EL素子層と接触するものの、各絵素領域に位置する有機EL素子層と直に接触することが防止される。
尚、上述の有機EL画像表示装置1は、透明基材2上にブラックマトリックス3、カラーフィルタ層4、透明平滑化層6が配設されているが、ブラックマトリックス3、カラーフィルタ層4、透明平滑化層6を備えないものであってもよい。この場合、図4の透明平滑化層6の位置に透明基材2が存在することになる。
【0018】
次に、本発明の有機EL画像表示装置1の各構成部材について説明する。
有機EL画像表示装置1を構成する透明基材2は、光透過性を有するガラス材料、樹脂材料、これらの複合材料からなるものを使用することができる。透明基材2の厚みは、材料、画像表示装置の使用状況等を考慮して設定することができ、例えば、0.1〜1.1mm程度とすることができる。
ブラックマトリックス3は所定のパターンで開口部3aと遮光部3bを備えている。図5は、透明基材2上にブラックマトリックス3を介してカラーフィルタ層4を形成した状態を示す部分平面図であり、ブラックマトリックス3の状態を示すために、赤色着色層4Rの一部を切り欠いた状態で示している。このようなブラックマトリックス3は、厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜パターン、あるいは、カーボン微粒子等の遮光性粒子を含有した樹脂層パターン等、いずれであってもよい。
【0019】
また、カラーフィルタ層4は、有機EL素子層10からの光を色補正したり、色純度を高めるものである。カラーフィルタ層4を構成する青色着色層4B、赤色着色層4R、緑色着色層4Gは、有機EL素子層10の発光特性に応じて適宜材料を選択することができ、例えば、顔料、顔料分散剤、バインダー樹脂、反応性化合物および溶媒を含有する顔料分散組成物で形成することができる。このようなカラーフィルタ層4の厚みは、各着色層の材料、有機EL素子層の発光特性等に応じて適宜設定することができ、例えば、1〜3μm程度の範囲で設定することができる。
【0020】
有機EL画像表示装置1を構成する透明平滑化層6は、カラーフィルタ層4以下の構成により段差(表面凹凸)が存在する場合に、この段差を解消して平坦化を図り、有機EL素子層10の厚みムラ発生を防止する平坦化作用をなす。このような透明平滑化層6は、透明(可視光透過率50%以上)樹脂により形成することができる。具体的には、アクリレート系、メタクリレート系の反応性ビニル基を有する光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂を使用することができる。また、透明樹脂として、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等を使用することができる。
このような透明平滑化層6の厚みは、使用する材料を考慮し、平坦化作用が発現できる範囲で設定することができ、例えば、1〜5μm程度の範囲で適宜設定することができる。
【0021】
有機EL画像表示装置1を構成する補助電極7は、一般には、金属材料が用いられ、金、銀、銅、マグネシウム合金(MgAg等)、アルミニウム合金(AlLi、AlCa、AlMg等)、金属カルシウム等を挙げることができる。このような補助電極7は、周辺の端子部から中央の画素領域までブラックマトリックス3の遮光部分上に位置するように配設されている。
また、有機EL画像表示装置1を構成する透明電極層8の材料としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、これらの混合物を使用することができ、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化第二スズ等の導電材料を挙げることができる。この透明電極層8は、周辺の端子部から中央の画素領域までブラックマトリックス3の開口部分上および上記補助電極7上に位置するように帯状に配設されている。このような透明電極層8はシート抵抗が数百Ω/□以下が好ましく、材質にもよるが、透明電極層8の厚みは、例えば、10nm〜1μm、好ましくは100〜200nm程度とすることができる。
【0022】
有機EL画像表示装置1を構成する有機EL素子層10は、発光層単独からなる構造、発光層の透明電極層8側に正孔注入層を設けた構造、発光層の背面電極層11側に電子注入層を設けた構造、発光層の透明電極層8側に正孔注入層を設け、背面電極層11側に電子注入層を設けた構造等とすることができる。
また、発光波長を調整したり、発光効率を向上させる等の目的で、上記の各層に適当な材料をドーピングすることもできる。
有機EL素子層10の発光層は、赤色発光、緑色発光、青色発光等の単色発光、または、赤色発光、緑色発光、青色発光が所定のパターンで組み合わされたもの、白色発光等、いずれであってもよい。また、白色発光の場合には、発光波長の異なる発光層を積層した構造、発光波長の異なる発光層を小領域に複数分割して配設した構造、発光波長の異なる材料を含有した構造等、いずれであってもよい。
【0023】
有機EL素子層10の各層に用いる発色材料、ドーピング材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子注入材料等は、下記に例示するような無機材料、有機材料いずれでもよい。また、有機EL素子層10の各層の厚みは特に制限はなく、例えば、5nm〜5μm程度とすることができる。
【0024】
(発色材料)
(1)色素系発色材料
シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等が挙げられる。
【0025】
(2)金属錯体系発色材料
アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポリフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属にAl、Zn、Be等、または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体が挙げられる。
【0026】
(3)高分子系発色材料
ポリパラフェニレンビニレン錯体、ポリチオフェン錯体、ポリパラフェニレン錯体、ポリシラン錯体、ポリアセチレン錯体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレン錯体等が挙げられる。
【0027】
(ドーピング材料)
ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポリフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等が挙げられる。
【0028】
(正孔輸送材料)
オキサジアゾール系、オキサゾール系、トリアゾール系、チアゾール系、トリフェニルメタン系、スチリル系、ピラゾリン系、ヒドラゾン系、芳香族アミン系、カルバゾール系、ポリビニルカルバゾール系、スチルベン系、エナミン系、アジン系、トリフェニルアミン系、ブタジエン系、多環芳香族化合物系、スチルベン二量体等が挙げられる。
また、π共役系高分子として、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリ(P−フェニレン)、ポリ(P−フェニレンスルフィド)、ポリ(P−フェニレンオキシド)、ポリ(1,6−ヘプタジエン)、ポリ(P−フェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレン)、ポリ(2,5−ピロール)、ポリ(m−フェニレンスルフィド)、ポリ(4,4′−ビフェニレン)等が挙げられる。
【0029】
また、電荷移動高分子錯体として、ポリスチレン・AgC104、ポリビニルナフタレン・TCNE、ポリビニルナフタレン・P−CA、ポリビニルナフタレン・DDQ、ポリビニルメシチレン・TCNE、ポリナフタアセチレン・TCNE、ポリビニルアントラセン・Br2、ポリビニルアントラセン・I2、ポリビニルアントラセン・TNB、ポリジメチルアミノスチレン・CA、ポリビニルイミダゾール・CQ、ポリ−P−フェニレン・I2、ポリ−1−ビニルピリジン・I2、ポリ−4−ビニルピリジン・I2、ポリ−P−1−フェニレン・I2、ポリビニルピリジウム・TCNQ等が挙げられ、さらに、電荷移動低分子錯体として、TCNQ−TTF等が、高分子金属錯体としては、ポリ銅フタロシアニン等が挙げられる。
正孔輸送材料としては、イオン化ポテンシャルの小さい材料が好ましく、特に、ブタジエン系、エナミン系、ヒドラゾン系、トリフェニルアミン系が好ましい。
【0030】
(正孔注入材料)
フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、ポリシラン系、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー等の誘電性高分子オリゴマー等、を挙げることができる。
【0031】
さらに、正孔注入材料として、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物を挙げることもできる。上記のポリフィリン化合物としては、ポリフィン、1,10,15,20−テトラフェニル−21H、23H−ポリフィン銅(II)、アルミニウムフタロシアニンクロリド、銅オクタメチルフタロシアニン等を挙げることができる。また、芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−4,4′−ジアミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−[4(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン、3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン、4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、4,4′,4″−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン等を挙げることができる。
【0032】
(電子注入材料)
アルミリチウム、フッ化リチウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ニトロ置換フルオレン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、上記のオキサジアゾール環の酸素原子をイオウ原子に置換したチアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有したキノキサリン誘導体、トリス(8−キノリノール)アルミニウム等の8−キノリノール誘導体の金属錯体、フタロシアニン、金属フタロシアニン、ジスチリルピラジン誘導体等を挙げることができる。
【0033】
有機EL素子層10の形成は、隔壁15をマスクとして上述した材料を用いて真空蒸着法等により成膜して行うことができる。この方法では、画像表示領域に相当する開口部を備えたマスク(周辺部の補助電極7や透明電極層8からなる電極端子への成膜を防止するためのマスク)を介して成膜することによって、隔壁15がマスクパターンとなり、各隔壁15間のみを発光層材料が通過して透明電極層8に到達することができる。これにより、フォトリソグラフィー法等のパターニングを行うことなく、帯状の有機EL素子層10を形成することができる。このような隔壁15を用いた有機EL素子層10の形成では、図1および図2に示されるように、複数配列している障壁部15のうち、最も周辺部に位置している隔壁15の上部平面に、上記の画像表示領域の端部が位置しており、幅方向の約半分(画像表示領域側)のみにダミーの有機EL素子層10′が形成されている。
【0034】
有機EL画像表示装置1を構成する背面電極層11の材料としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、これらの混合物で形成される。具体的には、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。電子注入性および電極としての酸化等に対する耐久性を考えると、電子注入性金属と、これより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物が好ましく、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が挙げられる。このような背面電極層11はシート抵抗が数百Ω/□以下が好ましく、このため、背面電極層11の厚みは、例えば、10nm〜1μm、好ましくは50〜200nm程度とすることができる。
【0035】
上記の背面電極層11は、隔壁15をマスクとして上述の電極材料を用いて真空蒸着法、イオンプレーティング蒸着法等の方法により成膜して形成することができる。すなわち、隔壁15がマスクパターンとなり、各隔壁15間のみを電極材料が通過して有機EL素子層10上に到達することができる。そして、フォトリソグラフィー法等のパターニングを行う必要がないので、有機EL素子層10の特性を劣化させることがない。
【0036】
有機EL画像表示装置1を構成する無機化合物膜12は、上述のように、その厚みT1が有機EL素子層10の厚みT2以上であり、厚みT1は有機EL素子層10の厚みT2を考慮して適宜設定することができ、厚みの差(T1−T2)が0〜3μm、好ましくは1〜2μmの範囲となるように設定することができる。上記の差(T1−T2)は、無機化合物膜12上に積層された絶縁層13の下面(無機化合物膜12との界面)と、有機EL素子層10の表面との高さ位置間隙Gに相当するものである。無機化合物膜12の厚みT1が有機EL素子層10の厚みT2よりも小さいと、絶縁層13からの脱ガス成分が各絵素領域の有機EL素子層10aに拡散するおそれがあり、また、厚みの差(T1−T2)が3μmを超えると、絶縁層13上の乗り上げている背面電極層11に断線が生じやすくなり好ましくない。
このような無機化合物膜12としては、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、Ti、Ca、Mg等の酸化物や窒化物や酸化窒化物等を挙げることができる。
【0037】
有機EL画像表示装置1を構成する絶縁層13は、ブラックマトリックス3の遮光部上に位置するように無機化合物膜12を介して形成されている。この絶縁層13は、例えば、透明平滑化層6と同様の材料で成膜し、これをフォトリソグラフィー法を用いたパターンエッチングで所望の形状として形成することができる。このような絶縁層13の厚みは1〜5μm程度とすることができる。尚、絶縁層13は黒色であってもよく、この場合、上述の材料に、例えば、チタン窒化物、チタン酸化物、チタン酸窒化物等のチタン系黒色顔料の1種、あるいは2種以上、あるいは、青色着色剤、赤色着色剤、黄色着色剤の少なくとも2種以上を含有させることができる。
【0038】
有機EL画像表示装置1を構成する隔壁15は、上述のように、帯状の透明電極層8と直角に交差するように有機EL素子層10と背面電極層11とを帯状に形成するための隔壁パターンである。すなわち、隔壁15は、透明電極層8上に有機EL素子層10と背面電極層11を真空蒸着法等により形成する際のマスクの役割を果たすものである。このような隔壁15は、感光性樹脂をスピンコート、ロールコート、キャストコート等の方法で塗布して成膜し、これをフォトリソグラフィー法でパターニングして形成することができる。図2に示される例では、隔壁15は下すぼまりの逆台形状の断面を有しているが、このように、隔壁15を下すぼまり、もしくは、上すぼまりの形状とするには、所定の厚みに設けたポジ型またはネガ型の感光性樹脂層を、露光方向を変えて多重露光する方法、パターンをずらして異なる方向から多重露光する方法等により実現することができる。隔壁15の高さは1〜20μm程度、幅はブラックマトリックス3の遮光部の幅等に応じて設定することができ、通常、ブラックマトリックス幅よりも2μm程度細い幅とする。
【0039】
また、本発明の有機EL画像表示装置は、透明平滑化層6と透明電極層8(補助電極7)との間に透明バリア層を備えるものであってもよい。このような構造とすることにより、カラーフィルタ層4や透明平滑化層6からの脱ガス成分が各絵素領域の有機EL素子層10aに拡散することが防止され、有機EL素子層の劣化による絵素縮小が防止される。透明バリア層としては、上述の無機化合物膜12として挙げたシリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、Ti、Ca、Mg等の酸化物や窒化物や酸化窒化物からなる層とすることができる。
【0040】
また、本発明の有機EL画像表示装置は、カラーフィルタ層と透明平滑化層との間に色変換蛍光体層を備えるものであってもよい。図6は、このような色変換蛍光体層を備えた有機EL画像表示装置の一例を示す図3相当の縦断面図である。図6において、有機EL画像表示装置21は、透明基材22と、この透明基材22上に所定の開口パターンを備えたブラックマトリックス23を介して帯状の赤色着色層24R、緑色着色層24G、青色着色層24Bからなるカラーフィルタ層24が設けられている。
【0041】
このようなカラーフィルタ層24を覆うように色変換蛍光体層25が設けられている。色変換蛍光体層25は、赤色着色層24R上に赤色変換蛍光体層25R(青色光を赤色蛍光に変換する層)が設けられ、緑色着色層24G上に緑色変換蛍光体層25G(青色光を緑色蛍光に変換する層)が設けられ、青色着色層24B上には、青色変換ダミー層(青色発光をそのまま透過する層)25Bが設けられている。
この色変換蛍光体層25を覆うように、透明平滑化層26が透明基材22上に設けられ、この透明平滑化層26上に補助電極27および透明電極層28が周辺の端子部から中央の画素領域まで帯状に配設され形成されている。さらに、帯状の透明電極層28と直交し、ブラックマトリックス23の開口部上に位置するように帯状の有機EL素子層30と背面電極層31とが透明平滑化層26上に形成されている。また、マトリックス状の無機化合物膜32、絶縁層33を介して、帯状の透明電極層28と直交するように、隔壁35がストライプ状に形成されている。この隔壁35の上部平面にはダミーの有機EL素子層30′と背面電極層31′とが形成されている。
【0042】
このような有機EL画像表示装置21は、色変換蛍光体層25を備え、有機EL素子層30が青色発光である点を除いて、上述の有機EL画像表示装置1と同様である。したがって、透明基材22、ブラックマトリックス23、カラーフィルタ層24、透明平滑化層26、補助電極27、透明電極層28、背面電極層31、無機化合物膜32、絶縁層33、隔壁35は、上述の有機EL画像表示装置1を構成する透明基材2、ブラックマトリックス3、カラーフィルタ層4、透明平滑化層6、補助電極7、透明電極層8、背面電極層11、無機化合物膜12、絶縁層13、隔壁15と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0043】
上記の赤色変換蛍光体層25Rおよび緑色変換蛍光体層25Gは、蛍光色素単体からなる層、あるいは、樹脂中に蛍光色素を含有した層である。青色発光を赤色蛍光に変換する赤色変換蛍光体層25Rに使用する蛍光色素としては、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン等のシアニン系色素、1−エチル−2−[4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル]−ピリジウム−パークロレート等のピリジン色素、ローダミンB、ローダミン6G等のローダミン系色素、オキサジン系色素等が挙げられる。また、青色発光を緑色蛍光に変換する緑色変換蛍光体層25Gに使用する蛍光色素としては、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジノ(9,9a,1−gh)クマリン、3−(2′−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2′−ベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン等のクマリン色素、ベーシックイエロー51等のクマリン色素系染料、ソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116等のナフタルイミド色素等が挙げられる。さらに、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料等の各種染料も蛍光性があれば使用することができる。上述のような蛍光色素は単独、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。赤色変換蛍光体層25Rおよび緑色変換蛍光体層25Gが樹脂中に蛍光色素を含有したものである場合、蛍光色素の含有量は、使用する蛍光色素、色変換蛍光体層の厚み等を考慮して適宜設定することができるが、例えば、使用する樹脂100重量部に対し0.1〜1重量部程度とすることができる。
【0044】
また、青色変換ダミー層25Bは、有機EL素子層30で発光された青色光をそのまま透過してカラーフィルタ層24に送るものであり、赤色変換蛍光体層25R、緑色変換蛍光体層25Gとほぼ同じ厚みの透明樹脂層とすることができる。
赤色変換蛍光体層25Rおよび緑色変換蛍光体層25Gが樹脂中に蛍光色素を含有したものである場合、樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等の透明(可視光透過率50%以上)樹脂を使用することができる。また、色変換蛍光体層25のパターン形成をフォトリソグラフィー法により行う場合、例えば、アクリル酸系、メタクリル酸系、ポリケイ皮酸ビニル系、環ゴム系等の反応性ビニル基を有する光硬化型レジスト樹脂を使用することができる。さらに、これらの樹脂は、上述の青色変換ダミー層25Bに使用することができる。
【0045】
色変換蛍光体層25を構成する赤色変換蛍光体層25Rと緑色変換蛍光体層25Gは、蛍光色素単体で形成する場合、例えば、所望の開口部を備えたマスクを介して真空蒸着法、スパッタリング法により帯状に形成することができる。また、樹脂中に蛍光色素を含有した層として形成する場合、例えば、蛍光色素と樹脂とを分散、または可溶化させた塗布液をスピンコート、ロールコート、キャストコート等の方法で塗布して成膜し、これをフォトリソグラフィー法でパターニングする方法、上記の塗布液をスクリーン印刷法等でパターン印刷する方法等により赤色変換蛍光体層25Rや緑色変換蛍光体層25Gを形成することができる。また、青色変換ダミー層25Bは、所望の感光性樹脂塗料をスピンコート、ロールコート、キャストコート等の方法で塗布して成膜し、これをフォトリソグラフィー法でパターニングする方法、所望の樹脂塗布液をスクリーン印刷法等でパターン印刷する方法等により形成することができる。
【0046】
このような色変換蛍光体層25の厚みは、赤色変換蛍光体層25Rおよび緑色変換蛍光体層25Gが有機EL素子層30で発光された青色光を十分に吸収し蛍光を発生する機能が発現できるものとする必要があり、使用する蛍光色素、蛍光色素濃度等を考慮して適宜設定することができ、例えば、10〜20μm程度とすることができ、赤色変換蛍光体層25Rと緑色変換蛍光体層25Gとの厚みが異なる場合があってもよい。
青色発光である有機EL素子層30は、上述の有機EL素子層10の材料から青色発光を適宜選択して形成することができる。発色材料としては、例えば、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤、金属キレート化オキシノイド化合物、スチリルベンゼン系化合物、ジスチリルピラジン誘導体、芳香族ジメチリディン系化合物等を挙げることができる。
【0047】
具体的には、2−2′−(p−フェニレンジビニレン)−ビスヘンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系; 2−[2−[4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾイミダゾール、2−[2−(4−カルボキシフェニル)ビニル]ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系; 2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジアゾール、4,4′−ビス(5,7−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、2−[2−(4−クロロフェニル)ビニル]ナフト[1,2−d]オキサゾール等のベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤を挙げることができる。
【0048】
また、上記の金属キレート化オキシノイド化合物としては、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)マグネシウム、ビス(ベンゾ[f]−8−キノリノール)亜鉛等の8−ヒドロキシキノリン系金属錯体やジリチウムエピントリジオン等を挙げることができる。
また、上記のスチリルベンゼン系化合物としては、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−メチルベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−エチルベンゼン等を挙げることができる。
【0049】
また、上記のジスチリルピラジン誘導体としては、2,5−ビス(4−メチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス(4−エチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス[2−(1−ナフチル)ビニル]ピラジン、2,5−ビス(4−メトキシスチリル)ピラジン、2,5−ビス[2−(4−ビフェニル)ビニル]ピラジン、2,5−ビス[2−(1−ピレニル)ビニル]ピラジン等を挙げることができる。
また、上記の芳香族ジメチリディン系化合物としては、1,4−フェニレンジメチリディン、4,4−フェニレンジメチリディン、2,5−キシレンジメチリディン、2,6−ナフチレンジメチリディン、1,4−ビフェニレンジメチリディン、1,4−p−テレフェニレンジメチリディン、9,10−アントラセンジイルジルメチリディン、4,4′−ビス(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル、4,4′−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル等、およびその誘導体を挙げることができる。
【0050】
さらに、発光層の材料として、一般式(Rs−Q)2−AL−O−Lで表される化合物も挙げることができる(上記式中、ALはベンゼン環を含む炭素原子6〜24個の炭化水素であり、O−Lはフェニラート配位子であり、Qは置換8−キノリノラート配位子であり、Rsはアルミニウム原子に置換8−キノリノラート配位子が2個以上結合するのを立体的に妨害するように選ばれた8−キノリノラート置換基を表す)。具体的には、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラーフェニルフェノラート)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム(III)等が挙げられる。
【0051】
青色発光の有機EL素子層30の構造が、発光層の透明電極層28側に正孔注入層を設けた構造、発光層の背面電極層31側に電子注入層を設けた構造、発光層の透明電極層28側に正孔注入層を設け、背面電極層31側に電子注入層を設けた構造等である場合、正孔注入層、電子注入層は、上述の有機EL素子層10の場合と同様とすることができる。
尚、上述の実施形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、また、上述の実施形態では、ブラックマトリックス3,23を介してカラーフィルタ層4,24等の各構成層が設けられているが、ブラックマトリックス3,23を備えない形態であってもよい。
【0052】
[有機エレクトロルミネッセント画像表示装置の製造方法]
図7および図8は、上述の有機EL画像表示装置1を例として、本発明の有機EL画像表示装置の製造方法の一実施形態を説明するための工程図である。
図7および図8において、まず、透明基材2上にブラックマトリックス3、カラーフィルタ層4、および透明平滑化層6を積層する(図7(A))。ブラックマトリックス3の形成は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより行なうことができる。また、カーボン微粒子等の遮光性粒子を含有させたポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂層を形成し、この樹脂層をパターニングしてブラックマトリックス3を形成してもよく、さらに、カーボン微粒子、金属酸化物等の遮光性粒子を含有させた感光性樹脂層を形成し、この感光性樹脂層をパターニングしてブラックマトリックス3を形成してもよい。
【0053】
また、カラーフィルタ層4は、例えば、顔料、顔料分散剤、バインダー樹脂、反応性化合物および溶媒を含有する顔料分散組成物を使用した顔料分散法により形成することができる。また、印刷法、電着法、転写法等の公知の方法によりカラーフィルタ層4を形成することができる。このようなカラーフィルタ層4の厚みは、各着色層の材料、有機EL素子層の発光特性等に応じて適宜設定することができ、例えば、1〜3μm程度の範囲で設定することができる。
【0054】
また、透明平滑化層6は、透明(可視光透過率50%以上)樹脂により形成することができる。具体的には、アクリレート系、メタクリレート系の反応性ビニル基を有する光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂を使用することができる。また、透明樹脂として、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等を使用することができる。
【0055】
次いで、透明平滑化層6上に複数の補助電極7(図示せず)と複数のストライプ状の透明電極層8を形成する(図7(B))。補助電極7は、例えば、金、銀、銅、マグネシウム合金(MgAg等)、アルミニウム合金(AlLi、AlCa、AlMg等)、金属カルシウム等の金属材料を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法により薄膜を形成し、これをフォトリソグラフィー法を用いたパターンエッチングで所望の形状として形成することができる。この補助電極7は、周辺の端子部から中央の画素領域までブラックマトリックス3の遮光部分上に位置するように形成する。
【0056】
また、透明電極層8は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化第二スズ等の仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、これらの混合物を用いて真空蒸着法、スパッタリング法により薄膜を形成し、これをフォトリソグラフィー法を用いたパターンエッチングで所望の形状として形成することができる。この透明電極層8は、周辺の端子部から中央の画素領域までブラックマトリックス3の開口部分上および上記補助電極7上に位置するように帯状に形成する。透明電極層8は、シート抵抗が数百Ω/□以下が好ましく、材質にもよるが、透明電極層8の厚みは、例えば、10nm〜1μm、好ましくは10〜200nm程度とすることができる。
【0057】
次いで、透明電極層8を覆うように全面に無機化合物膜12を、後工程で形成する有機EL素子層10よりも厚くなるように形成する(図7(C))。無機化合物膜12は、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、Ti、Ca、Mg等の酸化物や窒化物や酸化窒化物等の材料を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法等の方法により形成することができる。特に、透明電極層8よりもエッチングレートの速い材料を使用することが好ましく、例えば、透明電極層8が酸化インジウムスズ(ITO)である場合、シリコン酸化窒化物等の材料により無機化合物膜12を形成することが好ましい。
この無機化合物膜12の厚みは、後工程で形成する有機EL素子層10の厚み、透明電極層8とのエッチングレートの差等を考慮して適宜設定することができ、例えば、有機EL素子層10の厚みとの差が0〜3μm、好ましくは1〜2μmの範囲となるように設定することができる。
【0058】
次に、無機化合物膜12上の非発光領域にマトリックス状に絶縁層13を形成し、透明電極層8と直交する絶縁層13上に隔壁15を延設する(図8(A))。絶縁層13は、例えば、透明平滑化層6と同様の材料で成膜し、これをフォトリソグラフィー法を用いたパターンエッチングで所望の形状として形成することができる。この絶縁層13は、無機化合物膜12を介してブラックマトリックス3の遮光部上に位置し、厚みは1〜5μm程度とすることができる。
また、隔壁15は、感光性樹脂をスピンコート、ロールコート、キャストコート等の方法で塗布して成膜し、これをフォトリソグラフィー法でパターニングして形成することができる。尚、隔壁15を、図2に示されるように下すぼまりの逆台形状の断面を有するもの、あるいは、上すぼまりの形状とするには、所定の厚みに設けたポジ型またはネガ型の感光性樹脂層を、露光方向を変えて多重露光する方法、パターンをずらして異なる方向から多重露光する方法を用いることができる。このような隔壁15の高さは1〜20μm程度、幅はブラックマトリックス3の遮光部の幅等に応じて設定することができ、通常、ブラックマトリックス幅よりも2μm程度細い幅とする。
【0059】
次いで、絶縁層13をマスクとして、露出している無機化合物膜12をエッチングにより除去する(図8(B))。このように無機化合物膜12を除去することにより、上記の絶縁層や隔壁の形成工程で無機化合物膜12上に有機物残渣等の汚染物が存在しても、これらの汚染物は無機化合物膜12とともに除去される。したがって、後工程で有機EL素子層10を形成する面の清浄化が可能となる。
無機化合物膜12の除去に使用するエッチング液としては、例えば、フッ酸系エッチング液や、CF4、SiF6等のフッ素系ガス等を用いたドライエッチング等を挙げることができ、ドライパターニングが可能なドライエッチングが好ましい。
【0060】
次に、透明電極層8と直交するように、隔壁15間に有機EL素子層10と背面電極層11とをこの順に積層して、本発明の有機EL画像表示装置1が得られる(図8(C))。
有機EL素子層10の形成は、隔壁15をマスクとし、所望の発光層材料を用いて真空蒸着法等により成膜して行うことができる。この方法では、画像表示領域に相当する開口部を備えたマスク(周辺部の補助電極7や透明電極層8からなる電極端子への成膜を防止するためのマスク)を介して成膜することによって、隔壁15がマスクパターンとなり、各隔壁15間のみを発光層材料が通過して透明電極層8に到達することができる。これにより、フォトリソグラフィー法等のパターニングを行うことなく、帯状の有機EL素子層10を形成することができる。
【0061】
また、発光層単独からなる有機EL素子層10ではなく、発光層の透明電極層8側に正孔注入層を備えた構造、発光層の背面電極層11側に電子注入層を備えた構造、発光層の透明電極層8側に正孔注入層を備え背面電極層11側に電子注入層を備えた構造等の有機EL素子層10を形成する場合には、それぞれ正孔注入層材料、電子注入層材料を用いて真空蒸着法等により成膜することにより、上記の発光層と同様に、帯状パターンを形成することができる。
【0062】
背面電極層11は、例えば、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等の仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、これらの混合物を用いて形成することができる。また、電子注入性および電極としての酸化等に対する耐久性を考えると、電子注入性金属と、これより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物が好ましく、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物等を用いて形成することができる。
【0063】
背面電極層11の形成では、隔壁15をマスクとして上述の電極材料を用いて真空蒸着法、イオンプレーティング蒸着法等の方法により成膜することができる。これにより、フォトリソグラフィー法等のパターニングを行う必要がないので、有機EL素子層10の特性を劣化させることがない。このような背面電極層11はシート抵抗が数百Ω/□以下が好ましく、このため、背面電極層11の厚みは、例えば、10nm〜1μm、好ましくは50〜200nm程度とすることができる。
このような本発明の製造方法により作製された有機EL画像表示装置1は、製造工程中の絶縁層や隔壁の形成で発生した有機物残渣等の汚染物を除去する作用をなす無機化合物膜12が、有機EL素子層10よりも厚い膜として絶縁層13の下層に存在しており、これにより、絶縁層13からの脱ガス成分が有機EL素子層10に拡散することが抑制される。
尚、上述の製造方法は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、隔壁15を形成する前に、絶縁層13をマスクとして、露出している無機化合物膜12をエッチングにより除去し、その後、絶縁層13上に隔壁15を形成してもよい。
【実施例】
【0064】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
(ブラックマトリックスの形成)
透明基材として、150mm×150mm、厚み0.7mmのソーダガラス(セントラル硝子(株)製Sn面研磨品)を準備した。この透明基材を定法にしたがって洗浄した後、透明基材の片側全面にスパッタリング法により酸化窒化複合クロムの薄膜(厚み0.2μm)を形成し、この複合クロム薄膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、複合クロム薄膜のエッチングを行って、80μm×280μmの長方形状の開口部を、上記の80μm開口辺方向に100μmピッチ、280μm開口辺方向に300μmピッチでマトリックス状に備えたブラックマトリックスを形成した。
【0065】
(カラーフィルタ層の形成)
赤色、緑色、青色の3種の着色層用感光性塗料を調製した。すなわち、赤色着色層用感光性塗料は、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等の単品、あるいは、2種以上の混合物からなる着色材をバインダー樹脂に分散させたものとした。バインダー樹脂としては、透明な樹脂(可視光透過率50%以上)が好ましく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の透明樹脂が挙げられる。また、着色材の含有量は、形成された着色層中に5〜50重量%含有されるように設定した。
【0066】
緑色着色層用感光性塗料は、ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料、ハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等の単品、あるいは、2種以上の混合物からなる着色材をバインダー樹脂に分散させたものとした。バインダー樹脂としては、上記の透明樹脂が挙げられ、着色材の含有量は、形成された着色層中に5〜50重量%含有されるように設定した。
青色着色層用感光性塗料は、銅フタロシアニン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等の単品、あるいは、2種以上の混合物からなる着色材をバインダー樹脂に分散させたものとした。バインダー樹脂としては、上記の透明樹脂が挙げられ、着色材の含有量は、形成された着色層中に5〜50重量%含有されるように設定した。
【0067】
次に、上記の3種の着色層用感光性塗料を用いて各色の着色層を形成した。すなわち、ブラックマトリックスが形成された上記の透明基材全面に、緑色着色層用の感光性塗料をスピンコート法により塗布し、プリベーク(80℃、30分間)を行った。その後、所定の着色層用フォトマスクを用いて露光した。次いで、現像液(0.05%KOH水溶液)にて現像を行い、次いで、ポストベーク(100℃、30分間)を行って、ブラックマトリックスパターンに対して所定の位置に帯状(幅85μm)の緑色着色層(厚み1.5μm)を形成した。
同様に、赤色着色層の感光性塗料を用いて、ブラックマトリックスパターンに対して所定の位置に帯状(幅85μm)の赤色着色層(厚み1.5μm)を形成した。さらに、青色着色層の感光性塗料を用いて、ブラックマトリックスパターンに対して所定の位置に帯状(幅85μm)の青色着色層(厚み1.5μm)を形成した。
【0068】
(透明平滑化層の形成)
ノルボルネン系樹脂(JSR(株)製ARTON)をトルエンで希釈した透明平滑化層用塗布液を、スピンコート法によりカラーフィルタ層上に塗布し、硬化処理(230℃、30分間)を行って透明平滑化層(厚み1μm)を形成した。
【0069】
(補助電極の形成)
次に、上記の透明平滑化層上の全面にスパッタリング法によりクロム薄膜(厚み0.2μm)を形成し、このクロム薄膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、クロム薄膜のエッチングを行って、補助電極を形成した。この補助電極は、透明平滑化層上に、カラーフィルタ層の各着色層と平行に形成されたストライプ状のパターンであり、幅15μmでブラックマトリックスの遮光部上に位置し、透明基材周縁部の端子部では幅が60μmのものとした。
【0070】
(透明電極層の形成)
次いで、上記の補助電極を覆うように透明平滑化層上にイオンプレーティング法により膜厚150nmの酸化インジウムスズ(ITO)電極膜を形成し、このITO電極膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、ITO電極膜のエッチングを行って、透明電極層を形成した。この透明電極層は、カラーフィルタ層の各着色層と平行に形成された幅80μmの帯状パターンであり、各着色層上に位置するとともに、上記の補助電極に重なるものであった。
【0071】
(無機化合物膜と絶縁層と隔壁の形成)
上記の透明電極層を覆うようにプラズマCVD法によりシリコン窒化物からなる薄膜を形成して、厚み1μmの無機化合物膜を形成した。
次いで、上記と同じ透明平滑化層用塗布液を使用し、スピンコート法により無機化合物膜を覆うように塗布した後、ベーク(100℃、30分間)を行って絶縁膜(厚み1μm)を形成した。次に、この絶縁膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、絶縁膜のエッチングを行って、無機化合物膜上に絶縁層を形成した。この絶縁層は、ブラックマトリックスの開口部に、絶縁層の開口部が位置するように配置され、絶縁層の開口部は、ブラックマトリックス開口部よりも大きい90μm×290μmの長方形状とした。
【0072】
次に、隔壁用塗料(日本ゼオン(株)製フォトレジスト ZPN1100)をスピンコート法により絶縁層を覆うように全面に塗布し、プリベーク(70℃、30分間)を行った。その後、所定の隔壁用フォトマスクを用いて露光し、現像液(日本ゼオン(株)製ZTMA−100)にて現像を行い、次いで、ポストベーク(100℃、30分間)を行った。これにより、絶縁層上に隔壁を形成した。この隔壁は、高さ10μm、下部(絶縁層側)の幅15μm、上部の幅26μmである形状を有するものであった。
【0073】
(無機化合物膜の除去)
次いで、上記の絶縁層と隔壁をマスクとし、CF4ガスを用いたドライエッチングにより、露出している無機化合物膜を除去した。これにより、絶縁層の下層(厚み1μm)としてのみ無機化合物膜が存在するものとなり、同時に、後工程で有機EL素子層が形成される面の清浄化が行なわれた。
【0074】
(有機EL素子層の形成)
次いで、上記の隔壁をマスクとして、真空蒸着法により正孔注入層、発光層、電子注入層からなる有機EL素子層を形成した。すなわち、まず、4,4′,4″−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミンを、画像表示領域に相当する開口部を備えたマスクを介して200nm厚まで蒸着して成膜し、その後、4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルを20nm厚まで蒸着して成膜することによって、隔壁がマスクパターンとなり、各隔壁間のみを正孔注入層材料が通過して透明電極層上に正孔注入層が形成された。
次に、上記と同様に、隔壁をマスクとして、有機発色材料を300nmまで蒸着して成膜することにより発光層を形成した。
【0075】
さらに、トリス(8−キノリノール)アルミニウムを20nm厚まで蒸着して成膜することにより電子注入層とした。
このようにして形成された有機EL素子層(厚み540nm)は、幅約280μmの帯状パターンとして各隔壁間に存在(一部は絶縁層上に乗り上げて存在)するものであり、隔壁の上部表面にも同様の層構成でダミーの有機EL素子層が形成された。そして、有機EL素子層の表面と、上述のように形成された絶縁層の下面(無機化合物膜との界面)との間には、460nmの高さ位置間隙が形成され、絶縁層の側端部位が有機EL素子層に直に接触しないものであった。
【0076】
(背面電極層の形成)
次に、画像表示領域よりも広い所定の開口部を備えたマスクを介して上記の隔壁が形成されている領域に真空蒸着法によりマグネシウムと銀を同時に蒸着(マグネシウムの蒸着速度=1.3〜1.4nm/秒、銀の蒸着速度=0.1nm/秒)して成膜した。
これにより、隔壁がマスクとなって、マグネシウム/銀混合物からなる背面電極層(厚み200nm)が有機EL素子層上に形成された。この背面電極層は、幅280μmの帯状パターンとして有機EL素子層上に存在するものであり、隔壁の上部表面にもダミーの背面電極層が形成された。
以上により、本発明の有機EL画像表示装置を得た。
【0077】
[実施例2]
無機化合物膜の厚みを540nmとした他は、実施例1と同様にして、本発明の有機EL画像表示装置を作製した。この有機EL画像表示装置では、有機EL素子層の表面が、絶縁層の下面(無機化合物膜との界面)の位置となっており、絶縁層の側端部位が有機EL素子層に直に接触しないものであった。
【0078】
[比較例1]
無機化合物膜を形成しない他は、実施例1と同様にして、比較の有機EL画像表示装置を作製した。この有機EL画像表示装置では、絶縁層の側端部位が有機EL素子層に直に接触するものであった。
【0079】
[比較例2]
無機化合物膜の厚みを300nmとした他は、実施例1と同様にして、比較の有機EL画像表示装置を作製した。この有機EL画像表示装置では、絶縁層の側端部位の一部が有機EL素子層に直に接触するものであった。
【0080】
[評価]
上述のように作製した有機EL画像表示装置(実施例1,2、比較例1,2)の透明電極層と背面電極層に直流8.5Vの電圧を10mA/cm2の一定電流密度で印加して連続駆動(20日間)させて、絵素縮小の程度を下記の基準で判定した。その結果、本発明の有機EL画像表示装置(実施例1,2)では、絵素縮小は発生しなかった。
【0081】
しかし、比較例1の有機EL画像表示装置では、50%の絵素縮小が見られ、また、比較例2の有機EL画像表示装置でも、30%の絵素縮小が見られた。
(絵素縮小の判定基準)
絶縁層で区切られた透明電極層の面積S1に占める、有機EL素子層が発光
せずに黒く認識される部位の面積S2の比率(S2/S1×100)を算出
して絵素縮小の判定とする。
【産業上に利用可能性】
【0082】
有機エレクトロルミネッセント画像表示装置の製造において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の有機エレクトロルミネッセント画像表示装置の一実施形態を示す部分平面図である。
【図2】図1に示される有機エレクトロルミネッセント画像表示装置のA−A線における縦断面図である。
【図3】図1に示される有機エレクトロルミネッセント画像表示装置のB−B線における縦断面図である。
【図4】図2に鎖線円で囲まれた部位の拡大断面図である。
【図5】透明基材上にブラックマトリックスを介してカラーフィルタ層を形成した状態を示す部分平面図である。
【図6】本発明の有機エレクトロルミネッセント画像表示装置の他の実施形態を示す図3相当の縦断面図である。
【図7】本発明の有機エレクトロルミネッセント画像表示装置の製造方法の一実施形態を説明するための工程図である。
【図8】本発明の有機エレクトロルミネッセント画像表示装置の製造方法の一実施形態を説明するための工程図である。
【図9】従来の有機エレクトロルミネッセント画像表示装置の一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1,21…有機エレクトロルミネッセント画像表示装置
2,22…透明基材
3,23…ブラックマトリックス
4,24…カラーフィルタ層
4R,4G,4B,24R,24G,24B…着色層
6,26…透明平滑化層
7,27…補助電極
8,28…透明電極層
10,30…有機エレクトロルミネッセンス素子層
11,31…背面電極層
12,32…無機化合物膜
13,33…絶縁層
15,35…隔壁
25…色変換蛍光体層
25G…緑色変換蛍光体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、該透明基材上に設けられたストライプ状の複数の透明電極層と、非発光領域にマトリックス状に配設された無機化合物膜と該無機化合物膜上に配設された絶縁層と、前記透明電極層と直交する方向で前記絶縁層上にストライプ状に延設された隔壁と、該隔壁間において前記透明電極層と直交する方向に順次延設積層された有機エレクトロルミネッセンス素子層と背面電極層と、を少なくとも備え、前記無機化合物膜の厚みは前記有機エレクトロルミネッセンス素子層の厚み以上であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセント画像表示装置。
【請求項2】
前記無機化合物膜の厚みと前記有機エレクトロルミネッセンス素子層の厚みの差は、0〜3μmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセント画像表示装置。
【請求項3】
前記透明基材と前記透明電極層との間にカラーフィルタ層と透明平滑化層とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセント画像表示装置。
【請求項4】
前記透明平滑化層と前記透明電極層との間に透明バリア層を備えることを特徴とする請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセント画像表示装置。
【請求項5】
前記カラーフィルタ層と前記透明平滑化層との間に色変換蛍光体層を備えることを特徴とする請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセント画像表示装置。
【請求項6】
前記透明基材と前記カラーフィルタ層との間に、所定の開口パターンを有するブラックマトリックスを備えることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント画像表示装置。
【請求項7】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子層は、白色発光、青色発光、赤色発光、緑色発光のいずれか、あるいは、青色発光、赤色発光、緑色発光が所定のパターンで組み合わされたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント画像表示装置。
【請求項8】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子層は、青色発光であり、前記色変換蛍光体層は青色光を緑色蛍光に変換して発光する緑色変換層と、青色光を赤色蛍光に変換して発光する赤色変換層とを備えていることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント画像表示装置。
【請求項9】
透明基材上に複数のストライプ状の透明電極層を形成する工程と、
前記透明電極層を覆うように全面に、後工程で形成する有機エレクトロルミネッセンス素子層と同じ、あるいは厚くなるように無機化合物膜に形成する工程と、
前記無機化合物膜上の非発光領域にマトリックス状に絶縁層を形成し、前記透明電極層と直交する前記絶縁層上にストライプ状の隔壁を延設する工程と、
前記絶縁層をマスクとして、露出している前記無機化合物膜をエッチングにより除去する工程と、
前記透明電極層と直交するように、前記隔壁間に有機エレクトロルミネッセンス素子層と背面電極層とをこの順に積層する工程と、を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセント画像表示装置の製造方法。
【請求項10】
透明基材上に複数のストライプ状の透明電極層を形成する工程と、
前記透明電極層を覆うように全面に、後工程で形成する有機エレクトロルミネッセンス素子層と同じ、あるいは厚くなるように無機化合物膜に形成する工程と、
前記無機化合物膜上の非発光領域にマトリックス状に絶縁層を形成し、該絶縁層をマスクとして、露出している前記無機化合物膜をエッチングにより除去する工程と、
前記透明電極層と直交する前記絶縁層上にストライプ状の隔壁を延設する工程と、
前記透明電極層と直交するように、前記隔壁間に有機エレクトロルミネッセンス素子層と背面電極層とをこの順に積層する工程と、を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセント画像表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記無機化合物膜は、前記透明導電層よりもエッチングレートの速いものとすることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセント画像表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−286226(P2006−286226A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100969(P2005−100969)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】