説明

有機エレクトロルミネッセント素子およびその製造方法

【課題】均一な発光特性で安定に動作し、かつ寿命特性に優れた有機エレクトロルミネッセント素子を提供する。
【解決手段】本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、少なくとも一組の電極と、前記電極間に形成された複数の機能層とを具備し、前記機能層は少なくとも1種類の有機半導体からなる発光機能を有した層と、前記電極と前記発光機能を有した層との間に画素規制層を備え、発光領域の面積を規制するように構成した有機エレクトロルミネッセント素子であって、前記画素規制層の表面平均粗さ:Raが5.0nm以下となるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセント素子およびその製造方法にかかり、特に携帯電話用のディスプレイや表示素子、各種光源などに用いられ、低輝度から光源用途等の高輝度まで幅広い輝度範囲で駆動される電界発光素子である有機エレクトロルミネッセント素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセント素子は固体蛍光性物質の電界発光現象を利用した発光デバイスであり、小型のディスプレイとして一部で実用化されている。
【0003】
有機エレクトロルミネッセント素子は発光層に用いられる材料によって、いくつかのグループに分類することが出来る。代表的なもののひとつは発光層に低分子量の有機化合物を用いる低分子有機エレクトロルミネッセント素子で、主に真空蒸着を用いて作製される。そして今一つは発光層に高分子化合物を用いる高分子有機エレクトロルミネッセント素子である。
【0004】
高分子有機エレクトロルミネッセント素子は各機能層を構成する材料を溶解した溶液を用いることでスピンコート法やインクジェット法、印刷法等による成膜が可能であり、その簡便なプロセスから低コスト化や大面積化が期待できる技術として注目されている。
【0005】
典型的な高分子有機エレクトロルミネッセント素子は陽極および陰極の間に電荷注入層、発光層等の複数の機能層を積層することで作製される。以下に代表的な高分子有機エレクトロルミネッセント素子の構成およびその作製手順を説明する。
【0006】
まず陽極としてのITO(インジウム錫酸化物)を成膜したガラス基板上に電荷注入層としてのPEDOT:PSS(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸の混合物:以下PEDTと記載する)薄膜をスピンコートなどによって成膜する。PEDTは電荷注入層として事実上の標準となっている材料であり、陽極側に配置されることでホール注入層として機能する。
【0007】
PEDT層の上に発光層としてポリフェニレンビニレン(以下PPVと表す)およびその誘導体、またはポリフルオレンおよびそれらの誘導体がスピンコート法などによって成膜される。そしてこれら発光層上に真空蒸着によって陰極としての金属電極が成膜され素子が完成する。
【0008】
このように高分子有機エレクトロルミネッセント素子は簡易なプロセスで作製することが出来るという優れた特徴を備えており、様々な用途への応用が期待されているが、十分に大きな発光強度を得ることが出来ない点、および長時間駆動に際しては、寿命が十分でない点が改善すべき課題となっている。
特に、露光ヘッドなどにおいて露光用光源として用いられる場合には、高輝度特性が求められており、画素領域、画素面積および画素内の発光特性の制御性においても、更なる制御性の向上を求めて鋭意研究がなされている。
【0009】
典型的な高分子有機エレクトロルミネッセント素子は陽極および陰極の間に電荷注入層、発光層等の複数の機能層を積層することで作製されるが、画素領域を規定するために、陽極および陰極のいずれか一方と、発光層との間に、画素規制層として開口を有する絶縁膜を介在させるという方法を用いている。この構造では、開口に起因する段差を有する画素規制層上に発光層を形成しなければならないため、段差の大きさあるいは画素規制層表面の状態が、発光特性を大きく左右することになる。
【0010】
ところで発光層に用いられる高分子膜は、スピンコート法などによる塗布膜で構成されるため、画素規制層上に形成する場合にもカバレッジがよく、短絡防止機能は比較的高い。
一方、発光層に用いられる低分子膜は、蒸着膜で構成されることが多いため高分子膜に比べてカバレッジがわるく、成膜時にピンホールができやすく短絡の原因となりやすい、このため、画素規制層の膜質や膜厚が大きく特性を左右することになる。
このため、画素規制層の膜厚が大きいと、発光層の膜厚分布を生じてしまい、発光が不均一となる問題があり、これが寿命の低下につながることもあり、出来るだけ薄く形成する必要があった。
【0011】
このように、有機エレクトロルミネッセント素子には、低分子材料を発光層に使用したいわゆる低分子有機エレクトロルミネッセント素子と、高分子材料を発光層に使用したいわゆる高分子有機エレクトロルミネッセント素子というグループがあり、いずれにおいても発光特性改善の為に様々な提案がなされている。
【0012】
たとえば特許文献1では、画素規制層は用いられていないが、発光層を形成する下地表面についてもさまざまな改善がなされており、ITO電極に代えてあるいはITO電極上に、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)等の酸化物薄膜を積層した有機エレクトロルミネッセント素子が提案されている。
【特許文献1】特開平9−63771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、発光機能を有した層の膜厚が不均一であると、膜厚の薄い領域に電界集中が生じ、そこから劣化が始まることから、発光が不安定になりやすい。また、画素規制層の膜厚が大きいと膜厚分布を生じてしまい、発光が不均一となる。したがって100nm以下となるように薄く形成する必要があった。
【0014】
このように、発光機能を有した層が低分子層である場合にも高分子層である場合にも、画素規制層上に均一な膜を形成することが、長寿命でかつ安定で信頼性の高い有機エレクトロルミネッセント素子を提供するために必要な条件であった。
【0015】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、均一な発光特性で安定に動作し、かつ寿命特性に優れた有機エレクトロルミネッセント素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、少なくとも一組の電極と、前記電極間に形成された複数の機能層とを具備し、前記機能層は少なくとも1種類の有機半導体からなる発光機能を有した層と、前記電極と前記発光機能を有した層との間に画素規制層を備え、発光領域の面積を規制するように構成した有機エレクトロルミネッセント素子であって、前記画素規制層の表面平均粗さ:Raが5.0nm以下であることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、画素規制層の表面平均粗さ:Raを5.0nm以下となるように緻密な膜を用いることにより、この上層に形成される発光機能を有した層は膜厚分布を生じることなく、均一に形成される。したがって、画素規制層の膜厚を100nm以下と薄くしても、均一な発光機能を有した層を形成することができ、画素規制層自体の絶縁性も良好であるため、リーク発光を生じることもなく、良好な矩形の発光プロファイルを得ることができる。さらに、画素規制層の凹凸が低減され、かつ緻密な膜構造により両電極間の短絡も生じなくなる。また、画素規制層の凹凸が低減されることにより、膜の突発的な突起がなくなり、いわゆる非発光部である黒点(ダークスポット)の発生が抑制される。結果として、有機エレクトロルミネッセント素子中を流れる電流分布が均一となり長期に渡って均一な発光を得ることができる。また所望の光量を得るために無駄に明るく発光させる部分が不要となるため有機エレクトロルミネッセント素子の寿命をのばすことが可能となる。なお表面平均粗さ:Raが5.0nmを超えると、画素規制層として必要な絶縁性能が確保できなくなりリーク発光が生じてしまう。
【0018】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、上記有機エレクトロルミネッセント素子において、前記画素規制層の表面平均粗さ:Raが2.0nm以下であるものを含む。
この構成によれば、画素規制層の表面平均粗さ:Raを2.0nm以下となるように緻密な膜を用いることにより、この上層に形成される発光機能を有した層は膜厚分布を生じることなく、より均一に形成される。
したがって、上記構成による効果に加え、より均一な発光機能を有した層を形成することができ、より良好な矩形の発光プロファイルを得ることができる。さらに、画素規制層の凹凸が低減され、かつ緻密な膜構造により両電極間の短絡も生じなくなる。画素規制層の表面平均粗さ:Raが2.0nmを超えると、非発光部である黒点(ダークスポット)の一つの原因である突起の発生の確率が増す。2.0nm以下のほうがより黒点の抑制、リーク発光の抑制につながる。
【0019】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層の表面平均粗さ:Raが1.0nm以下であるものを含む。
この構成によれば、画素規制層の表面平均粗さ:Raを1.0nm以下となるようにさらに緻密な膜を用いることにより、この上層に形成される発光機能を有した層は膜厚分布を生じることなく、均一に形成される。したがって、画素規制層の膜厚を100nm以下と薄くしても、均一な発光機能を有した層を形成することができ、画素規制層自体の絶縁性も良好であるため、リーク発光を生じることもなく、良好な矩形の発光プロファイルを得ることができる。さらに、画素規制層の凹凸が低減され、かつ緻密な膜構造により両電極間の短絡も生じなくなる。また、画素規制層の凹凸が低減されることにより、膜の突発的な突起がなくなり、いわゆる非発光部である黒点(ダークスポット)の発生が抑制される。
【0020】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層の最大山高さ:Rpと最大谷深さ:Rvの絶対値の和が1nm以上20nm以下であるものを含む。
この構成によれば、画素規制層の最大山高さ:Rpと最大谷深さ:Rvの絶対値の和が1nm以上20nm以下となるように緻密な膜を用いることにより、この上層に形成される発光機能を有した層は膜厚分布を生じることなく、より均一に形成される。
【0021】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層の最大山高さ:Rpと最大谷深さ:Rvの絶対値の和が1nm以上10nm以下であるものを含む。
この構成によれば、画素規制層の最大山高さ:Rpと最大谷深さ:Rvの絶対値の和が1nm以上10nm以下となるように緻密な膜を用いることにより、この上層に形成される発光機能を有した層は膜厚分布を生じることなく、均一に形成される。したがって、画素規制層の膜厚を100nm以下と薄くしても、均一な発光機能を有した層を形成することができ、画素規制層自体の絶縁性も良好であるため、リーク発光を生じることもなく、良好な矩形の発光プロファイルを得ることができる。さらに、画素規制層の凹凸が低減され、かつ緻密な膜構造により両電極間の短絡も生じなくなる。また、画素規制層の凹凸が低減されることにより、膜の突発的な突起がなくなり、いわゆる非発光部である黒点(ダークスポット)の発生が抑制される。
【0022】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層を構成する薄膜のグレインの粒子径が5nm以上100nm以下であるものを含む。
この構成によれば、画素規制層を構成する薄膜のグレインの粒子径が5nm以上100nm以下となるように緻密な膜を用いることにより、この上層に形成される発光機能を有した層は膜厚分布を生じることなく、均一に形成される。粒子径が40nmを超えると、粒塊に起因する凹凸によって均一性が低下する。
【0023】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層を構成する薄膜のグレインの粒子径が5nm以上40nm以下であるものを含む。
この構成によれば、画素規制層を構成する薄膜のグレインの粒子径が5nm以上40nm以下となるように緻密な膜を用いることにより、この上層に形成される発光機能を有した層は膜厚分布を生じることなく、より均一に形成される。
【0024】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層を構成する薄膜の膜密度が2.0g/cm以上3.5g/cm以下であるものを含む。
この構成によれば、画素規制層を構成する薄膜の膜密度が2.0g/cm以上3.5g/cm以下となるように緻密な膜を用いることにより、この上層に形成される発光機能を有した層は膜厚分布を生じることなく、均一に形成される。したがって、画素規制層の膜厚を100nm以下と薄くしても、均一な発光機能を有した層を形成することができ、画素規制層自体の絶縁性も良好であるため、リーク発光を生じることもなく、良好な矩形の発光プロファイルを得ることができる。
【0025】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層の開口周縁と前記電極とのなす角が3から45度であるものを含む。
この構成により、画素規制層の内端における段差の低減をはかることができ、発光機能を有する層の膜厚が画素規制層のエッジ部において厚くなるのを抑制することが可能となり、画素規制層の開口部における発光層の膜厚分布を生じることなく、均一に形成される。したがって、均一な発光機能を有した層を形成することができ、良好な矩形の発光プロファイルを得ることができる。さらに、エッジ部に段差があると、洗浄不良における黒点の核となる塵やパーティクル等がエッジ部に残り易くなる課題がある。この構成により、エッジ部に極端な段差がないため、黒点の原因となる塵やパーティクルが残りにくくなる。
【0026】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層の開口周縁と前記電極とのなす角が3から10度であるものを含む。
この構成により、画素規制層の内端における段差の低減をはかることができ、発光機能を有する層の膜厚が画素規制層のエッジ部において厚くなるのを抑制することが可能となり、画素規制層の開口部における発光層の膜厚分布を生じることなく、均一に形成される。したがって、均一な発光機能を有した層を形成することができ、良好な矩形の発光プロファイルを得ることができる。さらに、エッジ部に段差があると、洗浄不良における黒点の核となる塵やパーティクル等がエッジ部に残り易くなる課題がある。この構成により、エッジ部に極端な段差がないため、黒点の原因となる塵やパーティクルが残りにくくなり、結果として良好な矩形の発光プロファイルを得ることができる。
【0027】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層の膜厚は少なくとも膜厚20nm以上100nm以下であるものを含む。
この構成により、画素規制層の開口部における発光層の膜厚分布を生じることなく、均一に形成される。したがって、均一な発光機能を有した層を形成することができ、良好な矩形の発光プロファイルを得ることができる。
【0028】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層表面全体を無機酸化物層で被覆され、この上層に発光機能を有した層が形成されたものを含む。
この構成により、画素規制層の内端における段差や画素規制層の凹凸が無機酸化物層によって緩和され、この上層に形成される発光機能を有した層の膜厚をより均一化することが可能となる。この無機酸化物層は正孔注入層であるのが望ましい。
【0029】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層が酸化シリコン膜であるものを含む。
【0030】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層が窒化シリコン膜であるものを含む。
この構成により、緻密性が高く、絶縁性の高い膜が形成されるため、画素規制層をより薄く形成することが可能となり、結果としてこの上層に形成される発光機能を有した層は膜厚分布を生じることなく、均一に形成される。したがって、画素規制層の膜厚を100nm以下と薄くしても、均一な発光機能を有した層を形成することができ、良好な矩形の発光プロファイルを得ることができる。
【0031】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記無機酸化物層がMoOであるものを含む。
この構成により、画素規制層の内端における段差や画素規制層の凹凸が無機酸化物層によって緩和され、この上層に形成される発光機能を有した層の膜厚をより均一化することが可能となる。さらに、MoOのように比抵抗の余り大きくない材料を用いているため
有機エレクトロルミネッセント素子の駆動電圧を上げることなく厚膜化が容易となる。厚膜化が可能となることで結果的に両電極間の短絡の発生を抑制することが可能となる。
【0032】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記MoO層の膜厚は10nm以上であるものを含む。
実験結果から、MoOの膜厚を厚くしたとき、比抵抗の増大を招くことなくより平坦化をはかることができる。10nmに満たないと、MoOが完全な薄膜ではなく島状に形成される部分が増大するため、有機エレクトロルミネッセント素子の発光効率や寿命を低下させてしまう。また、均一な膜が形成されないため、発光も不均一となる。さらにはあまりにも膜が薄いため両電極間の短絡の発生の抑制に寄与しなくなるという不都合がある。
【0033】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記発光機能を有した層が少なくとも1種の高分子発光材料を含むものを含む。
この構成によりスピンコート法やギャップコート法などの一様塗布型の工法を採用できるため、有機エレクトロルミネッセント素子を応用した装置などを安価に供給できる。
【0034】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記発光機能を有した層がフルオレン環を含む高分子化合物を含むものを含む。
【0035】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記発光機能を有した層が下記一般式(I)で表されるポリフルオレンおよびその誘導体(R1、R2はそれぞれ置換基を表す)を含むことを特徴とする。
【化3】

【0036】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記発光機能を有した層がフェニレンビニレン基を含むものを含む。
【0037】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記発光機能を有した層が下記一般式(II)で表されるポリフェニレンビニレンおよびその誘導体(R3、R4はそれぞれ置換基を表す)を含むことを特徴とする。
【化4】

【0038】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記機能層は、ホール注入側に配置された電荷注入層と、バッファ層と、発光機能を有した層とを順次積層して構成されたものを含む。
ここでバッファ層としては、正孔、電子のどちらか一方の注入輸送機能、もしくは正孔、電子どちらか一方のブロッキング機能を持たせた層を介在させるのが望ましい。バッファ層を入れることにより有機エレクトロルミネッセント素子の発光特性が向上し、長期に渡って安定な有機エレクトロルミネッセント素子が可能となる。
【0039】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記バッファ層は、高分子層で構成されるものを含む。
【0040】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記一組の電極のうちの一方の電極である陽極は透光性基板上に形成されており、前記陽極上に形成された無機酸化物層としてのMoO層と、ホール注入層と、前記発光機能を有した層と、前記ホール注入層に対向するように、前記発光機能を有した層の上に形成された電子注入層と、前記電子注入層上に配設され前記一組の電極のうち他方の電極である陰極とが順次積層形成されたものを含む。
この構成により、画素規制層の内端における段差や画素規制層の凹凸が無機酸化物層によって緩和され、この上層に形成される発光機能を有した層の膜厚をより均一化することが可能となる。さらに、MoOのように比抵抗が比較的に大きくない材料を用いているため有機エレクトロルミネッセンスト素子の駆動電圧を上げることなく厚膜化が容易となる。厚膜化が可能となることで結果的に両電極間の短絡の発生を抑制することが可能となる。
【0041】
また、本発明では、上記有機エレクトロルミネッセント素子が二次元に配列形成され、表示装置を構成している。
この構成により有機エレクトロスミネッセント素子を流れる電流分布が均一であるため、有機エレクトロルミネッセント素子の発光領域の劣化が均一であり、長期に渡って安定した表示装置を提供できる。
【0042】
また、本発明では、上記有機エレクトロルミネッセント素子が列状に配列され発光部を構成して、露光装置を構成している。
この構成により有機エレクトロスミネッセント素子を流れる電流分布が均一であるため、有機エレクトロルミネッセント素子の発光領域の劣化が均一であり、長期に渡って安定した露光装置を提供できる。
【0043】
また、本発明では、一組の電極の一方の電極の形成された基板表面に表面粗さRaが5.0nm以下となるように画素規制層を形成する工程と、この上に機能層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
この構成により、画素規制層の表面粗さが、緻密に形成されているため、機能層の膜厚を均一に形成することができる。
【0044】
また、本発明では、画素規制層の上層に無機酸化物層を形成する工程と、前記無機酸化物層上に機能層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
この構成により、画素規制層の表面粗さが、緻密に形成され、この上層に無機酸化物層を形成しているため、リーク発光と両電極間の短絡のさらなる低減をはかることができる。
【0045】
また、本発明では、上記有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法において、前記画素規制層を形成する工程が、画素規制層を成膜し、パターニングすると共に表面処理を行い、表面粗さを調整する工程を含む。
この構成によれば、画素規制層を成膜した後に、プラズマ処理などの表面処理によって所望の表面粗さを得ることにより、効率よく調整することが可能となる。
【0046】
なおここで、機能層は少なくとも1種類の高分子物質からなる発光機能を有した層と、少なくとも1種類のバッファ層と、少なくとも1種類の無機物からなる電荷注入層とを含むようにしてもよい。
この構成によれば、電荷注入層として無機物を用いることにより、発光強度が極めて大きく特性の安定な有機エレクトロルミネッセント素子を得ることができる。これは、2種類の高分子材料のクーロン相互作用による緩やかな結合が外れ易いPEDTのように電流密度の増大に際しても、不安定となったりすることなく、安定な特性を維持することができ、発光強度を増大することができるようになったためと考えられる。また、少なくとも1種類のバッファ層を用いることで、例えば電子の陽極への抜けを防止することができ、発光に寄与することなく電流が流れるのを防止することができる。このように少なくとも1種類の無機物からなる電荷注入層を備えることで、広範囲の電流密度に亘って素子の発光強度および、発光効率を高レベルに維持することができ、また、寿命も向上する。従って、高輝度に至るまで、幅広い輝度範囲にわたって安定に動作し、かつ寿命特性に優れた有機エレクトロルミネッセント素子を実現することができる。ここで、発光層は共役系高分子であるのが望ましい。
【0047】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記発光機能を有した層がフルオレン環を含む高分子化合物を含むものを含む。ここでフルオレン環を含む高分子化合物とは、フルオレン環に所望の基が結合してポリマーを構成しているものをいう。種々の基を結合した高分子化合物が市販されているが、詳細はわからないものが多いためここでは説明を省略する。
【0048】
なお、発光機能を有した層とは、単に発光機能のみを有した層に限定されるものではなく、電荷輸送機能など、他の機能を有しているものを含むものとする。なお以下実施の形態では発光層と簡略化する。
【発明の効果】
【0049】
本発明の有機エレクトロルミネッセント素子によれば、リークの発生もなく、安定に動作し、かつ寿命特性に優れているため、表示用途の温和な駆動条件域から、強電界、大電流、高輝度という厳しい条件を要する露光装置などの駆動条件下に至るまで安定した電荷注入と発光効率の維持を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0051】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における画像形成装置の露光部に設けられる光ヘッドの構成を示す断面図であり、光源としてのエレクトロルミネッセント素子110およびその周辺を示しており、光検出素子120を構成する各層の上下配置の関係が示されている。図2はその要部の上面図である。このエレクトロルミネッセント素子は、第1の電極111としての陽極と第2の電極113としての陰極と、これら電極間に形成された少なくとも1種類の有機半導体からなる発光機能を有した層すなわち発光層112とを備え、前記電極と前記発光機能を有した層との間に膜厚50nmの窒化シリコン膜からなる画素規制層114を備え、発光領域の面積を規制するように構成した有機エレクトロルミネッセント素子であって、図3(a)乃至(c)にこの画素規制層114表面の要部拡大電子顕微鏡写真を示すように、前記画素規制層の表面平均粗さ:Raが5.0nm以下となるように構成したことを特徴とする。図3(a)乃至(c)はそれぞれ1.5k倍、7k倍、50k倍の写真を示す。画素規制層114のパターンの下地に見えているのはITOからなる第1の電極111の表面である。この構成により、発光層112の膜厚が均一に形成される。比較のために図4(a)乃至(c)に、従来例の画素規制層114表面の要部拡大電子顕微鏡写真を示す。図4(a)乃至(c)は、それぞれ図3(a)乃至(c)に対応して倍率を変えたものである。これらの比較からも本願発明において表面の平滑性が良好であることがわかる。
【0052】
図3および図4に示されている有機エレクトロルミネッセント素子の画素規制層114表面を触針式表面形状測定器にて表面平均粗さを測定した結果、従来例の図4の画素規制層114表面の表面平均粗さは5.5nmであり、図3の画素規制層114表面の表面平均粗さは1.0nmであった。また画素規制層114表面の最大山高さ:Rpと最大谷深さ:Rvの絶対値の和は従来例の図4の画素規制層114表面では20.8nmであり、図3の画素規制層114表面では7.2nmであった。
【0053】
なおここで画素規制層114としての窒化シリコン膜は高密度プラズマを用いた低温CVD法によって膜厚50nm程度となるように成膜される。そしてフォトリソグラフィによるレジストパターンを形成し、開口形成のためのエッチングを行うが、最初異方性エッチングを行った後、等方性エッチングを行い、エッジの滑らかなパターンを形成する。このときパターンエッジにおける下地とのなす角は3度から10度程度となるようにする。
【0054】
この光ヘッドは、図2に示すように、エレクトロルミネッセンス素子110が、基板上に形成された光検出素子120を構成する薄膜トランジスタ(TFT)の上層に積層され、エレクトロルミネッセンス素子110の光検出素子120側に位置する第1の電極111としての陽極が光検出素子120の光電変換部全体を覆うように形成されるため、エレクトロルミネッセンス素子の第1の電極が、光検出素子の光電変換部全体に対向している。この構成により、第1の電極が光検出素子のゲート電極として有効に作用し、安定した電位であるこの第1の電極の電位によって光検出素子のチャネル特性の制御が確実となり、安定した発光特性をもつ光ヘッドを提供することが可能となる。また発光層を挟んで第1の電極に対向するように設けられる第2の電極113としての陰極が上層側に形成される。
【0055】
また、この光ヘッドでは、光検出素子120の素子領域を構成する多結晶シリコンの島領域121の外縁がエレクトロルミネッセント素子の光出射領域ALEの外側となるように形成されている。このように、段差を形成する結果となる光検出素子120の島領域121すなわちここでは、素子領域ARの外縁がエレクトロルミネッセント素子の光出射領域ALEの外側となるように形成し、エレクトロルミネッセント素子の光出射領域に相当する領域には段差はなく、発光層の下地は平坦面を構成しており、したがって光ヘッドの有効領域となる光出射領域では光ヘッドの発光層が均一に形成される。
【0056】
なお、ここで、本実施の形態のエレクトロルミネッセント素子の発光状態を図5(a)および(b)に拡大写真で示す。図5(a)、(b)は図3に示す有機エレクトロルミネッセント素子の発光状態を撮影したものである。図5(a)および(b)は撮像条件が異なるもので、図5(a)は顕微鏡の接眼部に所定のアダプタを介して通常のデジタルカメラで撮像したもの、図5(b)は所定の拡大光学系を有するCCDカメラで撮像したものである。また比較のために従来のエレクトロルミネッセント素子の発光状態を図6(a)および(b)に写真で示す。図6(a)および(b)は比較のために示す従来例のエレクトロルミネッセント素子の状態を示す図であり、この撮像条件は図5(a)、図5(b)に順じたものである。図6(a)、(b)は図4に示す有機エレクトロルミネッセント素子の発光状態を撮影したものである。
【0057】
また、図5(a)、図5(b)、図6(a)、図6(b)はともに、50nmの厚みを有する画素規制層によって略矩形形状、同一サイズの発光領域を形成した有機エレクトロルミネッセント素子の発光状態を観察したものである。
【0058】
図6(a)、図6(b)では、本来画素規制層によって電荷の注入が阻止されるべき部分(すなわち本来発光してはならない部分)で発光していることがわかる。この異常な発光部分は、まさに画素規制層の真上であって(図4(a)、図4(b)を参照し、図6(a)、図6(b)と比較することで明白である)、画素規制層を介してリーク電流が流れていることを意味する。これと比較して図5(a)、図5(b)では発光領域は画素規制層によって設けられた開口と完全に一致している。
画素規制層の表面を平滑化した本実施の形態のエレクトロルミネッセント素子によれば、リーク発光もなく明暗比の大きい発光状態を形成することが可能となる。
なお、すでに述べたように、図6(a)、図6(b)に示す有機エレクトロルミネッセント素子の画素規制層の表面平均粗さは5.5nmであり、画素規制層の表面の最大山高さと、最大谷深さの絶対値の和は従来例の20.8nmである。このような条件で作成された有機エレクトロルミネッセント素子を、後に説明する露光装置のような精密機器に採用することは難しい。
露光装置によって形成される個々の画素には極めて高い均一性が要求される。このために発光領域の形状は一定に形成されなければならない。リークのような不安定な状態が発生すると、この要件を満足し得ないのである。この観点から、露光装置のようなアプリケーションにおいては、図5(a)、図5(b)に対応して、画素規制層の表面平均粗さRa≦1.0nm、画素規制層の最大山高さ:Rpと最大谷深さ:Rvの絶対値の和≦10nm程度の精度が要求される。
しかしながら、例えば照明装置のように、個々の発光領域の形状に精度を要しないようなアプリケーションにおいては、図6(a)、図(b)に示すような発光状態であっても特に問題にはならない。この場合には画素規制層におけるリークは存在するが、リーク部分における発光輝度は小さなものであり、アプリケーションの使用目的になんら影響を与えず、かつ有機エレクトロルミネッセント素子を破壊に導くようなものでもない。この観点から、照明装置のようなアプリケーションにおいては、図6(a)、図6(b)に対応して画素規制層の表面平均粗さRa≦5.0nm、画素規制層の最大山高さ:Rpと最大谷深さ:Rvの絶対値の和≦20nm程度の精度を満たせば十分に実用に供することができる。
そしてこの中間に位置するのが、例えばディスプレイに代表される表示装置のようなアプリケーションである。表示装置では中間調(階調)の再現性が重要である。上述してきた画素規制層のリークに起因する発光の有無によって、厳密には各画素の発光輝度は変動する。しかしこの変動範囲が、表示装置の再現可能な輝度範囲(すなわちダイナミックレンジ)における1つの階調ステップ未満であれば、特に問題となることはない。通常の表示装置において、この階調ステップ数は64程度に設定される。この観点から、表示装置のようなアプリケーションにおいては、上述の露光装置と照明機器の中間である、例えば画素規制層の表面平均粗さRa≦2.0nm、画素規制層の最大山高さ:Rpと最大谷深さ:Rvの絶対値の和≦15nm程度の精度を満たせば十分に実用に供することができる。
【0059】
なお、画素規制層を所望の表面状態にするためには、窒化シリコン膜を成膜するプラズマCVD装置において例えば低温下で成膜することや、投入パワーを低く設定し、成膜速度を小さくすることや成膜時の導入ガスであるSiH4とNH3の混合比を変える具体的にはSiH4の割合を高くするなど成膜条件を調整することにより、実現可能である。また、画素規制層を成膜し、パターニングした後あるいはパターニングと同時にプラズマ処理などの表面処理を行い、表面粗さを調整することによっても、容易に実現可能である。また、前記成膜条件は各装置において各々な成膜特性を持ち高温下において成膜速度を大きくし成膜するほうがより平滑な表面状態を形成することもあり、これに限定されるものではない。また、成膜後にプラズマ処理などにより平滑化することも可能である。さらにまた、陽極と画素規制層との間に酸化モリブデンなどの無機酸化物層が形成されている場合には、表面処理を行う際に、プラズマ処理を行っても表面の劣化を生じることなく平滑化することが可能となり、画素規制層の端面も無機酸化物層表面とともに良好に平滑化される。これに対し、画素規制層の下層が高分子層の場合にはプラズマ処理によって劣化を生じる場合もある。
【0060】
なお前記実施の形態では、画素規制層として開口を有する絶縁層として窒化シリコン膜などの絶縁膜を介在させるという方法を用いているが、タングステンなどの遮光性の金属膜、あるいは遮光膜との積層体で構成してもよい。遮光性の金属膜を用いた場合には、発光領域はそのままで光出射領域を光学的に規定することになる。
【0061】
本実施の形態の光ヘッドは、図1に示すように、表面に平坦化のためのベースコート層101を形成したガラス基板100上に、光検出素子120と、エレクトロルミネッセント素子110とを順次積層するとともに、光検出素子120の出力に応じて、駆動電流または駆動時間を補正しつつ前記エレクトロルミネッセント素子を駆動するためのスイッチングトランジスタ130としての薄膜トランジスタと、この薄膜トランジスタに接続されたチップICとしての駆動回路(140)を搭載したものである。そして、光検出素子120はベースコート層101表面に形成された多結晶シリコン層からなる島領域ARを帯状のi層からなるチャネル領域を隔てて 所望の濃度にドープすることによりソース領域121S、ドレイン領域121Dを形成し、この上層に形成される酸化シリコン膜からなる第1の絶縁膜122、第2の絶縁膜123を貫通するようにスルーホールを介して形成された多結晶シリコン層からなるソースおよびドレイン電極125S,125Dで構成される。また、この上層に保護層124としての窒化シリコン膜を介して、エレクトロルミネッセント素子110が形成されており、陽極となるITO(インジウム錫酸化物)111、保護膜124、発光層112、陰極113の順に各層が積層形成されている。
【0062】
一方、光検出素子120を構成する各層は、駆動トランジスタとしての選択トランジスタ130と同一の製造工程で形成される。すなわちチャネル領域131Cをはさんでソース領域132S,132Dが、光検出素子の半導体島と同一工程で形成され、これにコンタクトするソース・ドレイン電極134S,134Dが積層され、ゲート電極133とで選択トランジスタとしての薄膜トランジスタを構成している。
これら各層は、CVD法による半導体薄膜の形成、フォトリソグラフィによるパターニング、不純物イオンの注入、絶縁膜の形成、など通例の半導体プロセスを経て形成される。
【0063】
ここで、ガラス基板100は無色透明なガラスの一枚板である。ガラス基板100としては、例えば透明または半透明のソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英ガラス等の無機酸化物ガラス、無機フッ化物ガラス等の無機ガラスを用いることができる。
【0064】
その他の材料をガラス基板100として採用することも可能であり、例えば透明または半透明のポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリフッ化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリレート、非晶質ポリオレフィン、フッ素系樹脂ポリシロキサン、ポリシラン等のポリマー材料を用いた高分子フィルム等、あるいは透明または半透明のAs23、As4010、S40Ge10等のカルコゲノイドガラス、ZnO、Nb2O、Ta25、SiO、Si34、HfO2、TiO2等の金属酸化物および窒化物等の材料、或いは発光領域から出射される光を、基板を介さずに取り出す場合には、不透明のシリコン、ゲルマニウム、炭化シリコン、ガリウム砒素、窒化ガリウム等の半導体材料、或いは顔料等を含んだ前述の透明基板材料、表面に絶縁処理を施した金属材料等から適宜選択して用いることができ、複数の基板材料を積層した積層基板を用いることもできる。
【0065】
またガラス基板100などの基板の表面あるいは基板内部には、後述するようにエレクトロルミネッセント素子110を駆動するための抵抗・コンデンサ・インダクタ・ダイオード・トランジスタ等からなる回路を集積化して形成しても良い。
【0066】
さらに用途によっては特定波長のみを透過する材料、光−光変換機能をもった特定の波長の光へ変換する材料などであってもよい。また基板は絶縁性であることが望ましいが、特に限定されるものではなく、エレクトロルミネッセント素子110の駆動を妨げない範囲或いは用途によって導電性を有していても良い。
【0067】
ガラス基板100の上には、ベースコート層101が形成される。ベースコート層101は、例えばSiNから成る第1の層と、SiOから成る第2の層の2つから構成される。SiN、SiOの各層は蒸着法等によっても形成できるが、スパッタ法により形成することが望ましい。
【0068】
ベースコート層101の上には、エレクトロルミネッセント素子110の選択トランジスタ130、及び光検出素子120が同一工程で形成される多結晶シリコン層を用いて形成される。エレクトロルミネッセント素子110の駆動用回路は、抵抗・コンデンサ・インダクタ・ダイオード・トランジスタ等の回路素子から構成されるが、光ヘッドの小型化を考慮すると薄膜トランジスタを用いることが望ましい。実施の形態1において光検出素子120は、図1から明らかなように発光層112を含むエレクトロルミネッセント素子110と、光の出力面となるガラス基板100の中間に位置しており、且つ光検出素子110の素子領域Aは光出射領域ALEよりも大きい。また光出射領域ALEは、光検出素子120の内側に存在するため、光を透過しない材料を光検出素子120に用いることはできない。したがって、発光層112から出力された光を妨げないようにするため、光検出素子120には透明性を有した材料を用いる必要がある。透明性を有した光検出素子120の材料としては、例えば多結晶シリコンを選択することが望ましい。
【0069】
実施の形態1では、ベースコート層101の上に一様な半導体層を形成した後、半導体層に対してエッチング加工を施すことにより、選択トランジスタ130及び光検出素子120を同じ層から形成している。同一の金属層から島状に独立した選択トランジスタ130及び光検出素子120の金属層を一括で形成する加工は、製造工数の削減と製造コストの抑制に有利である。なお光検出素子120において、光出射領域ALEから出力される光を受ける素子領域Aは光検出素子120となる島状に構成された多結晶シリコンまたは非晶質シリコンの表面である。
【0070】
エレクトロルミネッセント素子110の発光層112に電界をかけるための選択トランジスタ130及び光検出素子120の上には、この酸化シリコン膜からなる第1の絶縁層122、第2の絶縁層123と保護層124とが、エレクトロルミネッセント素子の陽極としてのITO111との間でゲート絶縁膜として作用し、この膜厚による電圧降下によってITOの電位からの降下幅が決定される。このゲート絶縁膜3を構成する第1の絶縁層122、第2の絶縁層123と保護層124は、例えばSiO等から成り、蒸着法、スパッタ法等により形成される。
【0071】
また、選択トランジスタ130の真上にあるゲート絶縁膜としての第1の絶縁層122の表面にはゲート電極133が形成される。ゲート電極133の材料としては、例えばCrが用いられる。ゲート電極133は、蒸着法、スパッタ法等により形成される。
【0072】
ゲート電極133が形成された基板表面に、第2の絶縁層123が形成される。第2の絶縁層123は、これまで形成してきた積層体の全表面に渡って形成される。第2の絶縁層123は、例えばSiN等から成り、蒸着法、スパッタ法等により形成される。
【0073】
第2の絶縁層の上には、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dが形成される。光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sは光検出素子120のソース・ドレイン領域121S,121Dに接続されており、光検出素子120から出力される電気信号の伝達と光検出素子120の接地を行う。ソース電極134S及びドレイン電極134Dは、選択トランジスタ130のソース・ドレイン領域132S,132Dに接続されており、ソース電極134Sとドレイン電極134Dの間に所定の電位差を付与した状態で先述したゲート電極133に所定の電位を付与することで、選択トランジスタ130はスイッチング素子としての機能を有するようになり、発光素子としてのエレクトロルミネッセンス素子110の駆動を行う回路として動作する。光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dの材料としては、例えばCr等の金属が用いられる。
【0074】
図1に示すように、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極は第1の絶縁膜122及び第2の絶縁層123を貫通して光検出素子120の端部と接続されており、ソース電極134S及びドレイン電極134Dも同様に第1の絶縁膜122及び第2の絶縁層123を貫通して選択トランジスタ130の端部に接続されている。したがって、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dの形成に先立ち、第1の絶縁膜122及び第2の絶縁層123に対して、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sと光検出素子120を接続するためのスルーホール、ソース電極134S及びドレイン電極134Dと選択トランジスタ130を接続するためのスルーホールを設ける必要がある。このスルーホールは光検出素子120の表面と選択トランジスタ130の表面、即ち光検出素子120と光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sの接触面と選択トランジスタ130とソース電極134S及びドレイン電極134Dの接触面が露出するまでの深さを持ったものであり、光検出素子120及び選択トランジスタ130の端部の真上にエッチング加工等により設けられる。エッチングにはハロゲン系のエッチングガスを用いる。フォトリソグラフィにより、開口を形成したレジストパターンで表面を被覆した状態でエッチングガスを導入し、パターニングする。(第1の絶縁膜122及び第2の絶縁層123のスルーホールを開口する。)このとき、エッチングガスには光検出素子120及び選択トランジスタ130を構成する材料と化学反応を生じないものを選択する。
【0075】
光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sと光検出素子120の接触面、ソース電極134S及びドレイン電極134Dと選択トランジスタ130の接触面を露出させる加工が終了した後、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dを形成する。ソース電極134S及びドレイン電極134Dは、センサ電極となる金属層を第2の絶縁層123の表面、先述したスルーホールの表面及び両センサ電極、光検出素子120の表面及び選択トランジスタ130の接触面の表面に一様に形成した後、この金属層に対してフォトリソグラフィにより形成したレジストパターンをマスクとしてエッチングを施し、一様の金属層を光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dに分割することにより得られる。
【0076】
光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dが形成された後に、保護膜124が形成される。保護膜124は、例えばSiN等から成り、蒸着法、スパッタ法等により形成される。
【0077】
保護膜124の上には、陽極111が形成される。陽極111は、例えばITO(インジウム錫酸化物)から成る。陽極111の構成材料としてはITOの他にIZO(亜鉛ドープ酸化インジウム)、ATO(SbをドープしたSnO2)、AZO(AlをドープしたZnO)、ZnO、SnO、In等を用いることができる。陽極111は図1のように、光検出素子120に対して真上にあたる保護膜124の表面に形成される。図1に示すように、陽極111は保護膜124を貫通してドレイン電極134Dの端部に接続されている。したがって陽極111の形成の前には、保護膜124に対して陽極111とドレイン電極134Dを接続するためのスルーホールを設ける必要がある。このスルーホールはドレイン電極134Dの表面、即ちドレイン電極134Dと陽極111との接触面が露出するまでの深さを持ったものであり、ドレイン電極134Dの端部に真上にエッチング加工等により設けられる。このエッチング加工が施された後、陽極111の層が形成される。陽極111は蒸着法等によっても形成できるがスパッタ法により形成することが望ましい。なお実施の形態1では陽極111としてITOを用いている。
【0078】
陽極111が形成された後、画素規制層としての窒化シリコン膜114が形成される。画素規制層としての窒化シリコン膜114としては絶縁性が高く、絶縁破壊に対して強く、かつ成膜性が良くパターニング性が高いものが望ましい。画素規制層としての窒化シリコン膜114は、後述する発光層112と陽極111との間に設けられ、光出射領域ALEの領域外にある発光層112を陽極111から絶縁し、発光層112の発光する箇所を規制している。したがって、画素規制層としての窒化シリコン膜114に重なる発光層112の領域は非発光領域となり、画素規制層としての窒化シリコン膜114に重ならない領域が光出射領域ALEとなる。画素規制層としての窒化シリコン膜114は、発光層112の光出射領域ALEが光検出素子120の素子領域Aよりも小さくなるように規制し、且つ光出射領域ALEを光検出素子120の素子領域Aの内側に配置するように構成される。
【0079】
画素規制層としての窒化シリコン膜114が形成された後、発光層112が形成される。発光層112は無機発光材料、若しくは以降詳細に説明する高分子系、あるいは低分子系の有機発光材料から形成される。発光層112を形成する無機発光材料としては、チタン・リン酸カリウム、バリウム・ホウ素酸化物、リチウム・ホウ素酸化物等を用いることができる。発光層112を構成する高分子系の有機発光材料としては、可視領域で蛍光または燐光特性を有しかつ成膜性の良いものが望ましく、例えばポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン等のポリマー発光材料等を用いることができる。また、発光層112を構成する低分子系の有機発光材料としては、Alq3やBe−ベンゾキノリノール(BeBq)の他に、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジアゾール、4,4'−ビス(5,7−ベンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、4,4'−ビス〔5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル〕スチルベン、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ベンチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフィン、2,5−ビス(〔5−α,α−ジメチルベンジル〕−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2,5−ビス〔5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル〕−3,4−ジフェニルチオフェン、2,5−ビス(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、4,4'−ビス(2−ベンゾオキサイゾリル)ビフェニル、5−メチル−2−〔2−〔4−(5−メチル−2−ベンゾオキサイゾリル)フェニル〕ビニル〕ベンゾオキサイゾリル、2−〔2−(4−クロロフェニル)ビニル〕ナフト〔1,2−d〕オキサゾール等のベンゾオキサゾール系、2,2'−(p−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系、2−〔2−〔4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル〕ビニル〕ベンゾイミダゾール、2−〔2−(4−カルボキシフェニル)ビニル〕ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系等の蛍光増白剤や、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)マグネシウム、ビス(ベンゾ〔f〕−8−キノリノール)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウムオキシド、トリス(8−キノリノール)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、8−キノリノールリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノール)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノール)カルシウム、ポリ〔亜鉛−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリノニル)メタン〕等の8−ヒドロキシキノリン系金属錯体やジリチウムエピンドリジオン等の金属キレート化オキシノイド化合物や、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)2−メチルベンゼン等のスチリルベンゼン系化合物や、2,5−ビス(4−メチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス(4−エチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス〔2−(1−ナフチル)ビニル〕ピラジン、2,5−ビス(4−メトキシスチリル)ピラジン、2,5−ビス〔2−(4−ビフェニル)ビニル〕ピラジン、2,5−ビス〔2−(1−ピレニル)ビニル〕ピラジン等のジスチルピラジン誘導体や、ナフタルイミド誘導体や、ペリレン誘導体や、オキサジアゾール誘導体や、アルダジン誘導体や、シクロペンタジエン誘導体や、スチリルアミン誘導体や、クマリン系誘導体や、芳香族ジメチリディン誘導体等が用いられる。さらに、アントラセン、サリチル酸塩、ピレン、コロネン等も用いられる。あるいは、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム等の燐光発光材料を用いることもできる。高分子系材料、低分子系材料から成る発光層112は、材料をトルエン、キシレン等の溶媒に溶解したものをスピンコート法で層状に成形し、溶解液中の溶媒を揮発させることで得られる。
【0080】
また実施の形態1では、発光層112を便宜上単一の層として記述しているが、発光層112を陽極111の側から順に正孔輸送層/電子ブロック層/上述した有機発光材料層(ともに図示せず)の三層構造としてもよいし、発光層112を陰極113の側から順に電子輸送層/有機発光材料層(ともに図示せず)の二層構造、あるいは陽極111の側から順に正孔輸送層/有機発光材料層の2層構造(ともに図示せず)、あるいは陰極113の側から順に正孔注入層/正孔輸送層/電子ブロック層/有機発光材料層/正孔ブロック層/電子輸送層/電子注入層のごとく7層構造(ともに図示せず)としてもよい。またはより単純に発光層112が上述した有機発光材料のみからなる単層構造であってもよい。このように実施の形態1において発光層112と呼称する場合は、発光層112が正孔輸送層、電子ブロック層、電子輸送層などの機能層を有する多層構造である場合も含んでいる。後に説明する他の実施の形態についても同様である。
【0081】
上述した機能層における正孔輸送層としては、正孔移動度が高く、透明で成膜性の良いものが望ましくTPDの他に、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物や、1,1−ビス{4−(ジ−P−トリルアミノ)フェニル}シクロヘキサン、4,4',4''−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N',N'−テトラキス(P−トリル)−P−フェニレンジアミン、1−(N,N−ジ−P−トリルアミノ)ナフタレン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)−2−2'−ジメチルトリフェニルメタン、N,N,N',N'−テトラフェニル−4,4'−ジアミノビフェニル、N、N'−ジフェニル−N、N'−ジ−m−トリル−4、4'−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾ−ル等の芳香族第三級アミンや、4−ジ−P−トリルアミノスチルベン、4−(ジ−P−トリルアミノ)−4'−〔4−(ジ−P−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン等のスチルベン化合物や、トリアゾール誘導体や、オキサジザゾール誘導体や、イミダゾール誘導体や、ポリアリールアルカン誘導体や、ピラゾリン誘導体や、ピラゾロン誘導体や、フェニレンジアミン誘導体や、アニールアミン誘導体や、アミノ置換カルコン誘導体や、オキサゾール誘導体や、スチリルアントラセン誘導体や、フルオレノン誘導体や、ヒドラゾン誘導体や、シラザン誘導体や、ポリシラン系アニリン系共重合体や、高分子オリゴマーや、スチリルアミン化合物や、芳香族ジメチリディン系化合物や、ポリ−3,4エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、テトラジヘクシルフルオレニルビフェニル(TFB)あるいはポリ3−メチルチオフェン(PMeT)といったポリチオフェン誘導体等の有機材料が用いられる。また、ポリカーボネート等の高分子中に低分子の正孔輸送層用の有機材料を分散させた、高分子分散系の正孔輸送層も用いられる。またMoO、V、WO、TiO、SiO、MgO等の無機酸化物を用いることもある。またこれらの正孔輸送材料は電子ブロック材料として用いることもできる。
【0082】
上述した機能層における電子輸送層としては、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、シロール誘導体からなるポリマー材料等、あるいは、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−(パラ−フェニルフェノレート)アルミニウム(BAlq)、バソクプロイン(BCP)等が用いられる。またこれらの電子輸送層を構成可能な材料は正孔ブロック材料として用いることもできる。
【0083】
発光層112が形成された後、陰極113が形成される。陰極113は、例えばAl等の金属を蒸着法等によって層状に形成することにより得られる。有機エレクトロルミネッセンス素子110の陰極113としては仕事関数の低い金属もしくは合金、例えばAg、Al、In、Mg、Ti等の金属や、Mg−Ag合金、Mg−In合金等のMg合金や、Al−Li合金、Al−Sr合金、Al−Ba合金等のAl合金等が用いられる。あるいは、Ba、Ca、Mg、Li、Cs等の金属、あるいは、LiF、CaOといったこれら金属のフッ化物や酸化物からなる有機物層に当接する第1の電極層と、その上に形成されるAg、Al、Ag、In等の金属材料からなる第2の電極とからなる金属の積層構造を用いることもできる。
【0084】
図1に示すような実施の形態1の光ヘッドは、有機エレクトロルミネッセント素子の選択トランジスタ130側から光を出力する方式を採用しており、このような有機エレクトロルミネッセント素子の構造をボトムエミッションという。ボトムエミッション構造は、ガラス基板100の側から光を取り出すため、既に述べたように光検出素子120は透明度の高い材料、例えば多結晶シリコン(ポリシリコン)で構成される必要がある。多結晶シリコンで構成された光検出素子120は非晶質シリコン(アモルファスシリコン)で構成したものと比較して光電流の生起能力が低いという問題があるが、例えばコンデンサ(図示せず)を有機エレクトロルミネッセント素子110の近傍に設け、光検出素子120から出力された電流に基づく電荷をコンデンサに所定期間蓄積して、その後に電圧変換を行なうような処理回路を設けることで解決することができる。ボトムエミッション構造の場合は、光を取り出す側の電極(陽極)の透明化が容易なため、製造が簡単になる利点がある。
【0085】
図2は、本発明の実施の形態1における光ヘッドの光検出素子近傍の構成を示した平面図である。
【0086】
図2に示すように実施の形態1の光ヘッドは、複数のエレクトロルミネッセント素子110を主走査方向(素子列の方向)に配置して構成されており、1つの発光領域(光出射領域ALE)に対して、1つの光検出素子120を対応させて配置している。このような構造とすることで、光検出素子120によって各有機エレクトロルミネッセント素子110の発光光量を独立して計測できる。即ち同時に複数の有機エレクトロルミネッセント素子110の光量を計測することが可能となり、計測時間を大幅に短縮できる。
【0087】
図2では、光検出素子120、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、光出射領域ALE、素子領域A、発光層112の陽極となるITO(インジウム錫酸化物)111、コンタクトホールH及びドレイン電極134Dの相互関係が示されている。光検出素子120は、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sと接続されている。光検出素子出力電極としてのドレイン電極125Dは、光検出素子120が光の補正のために出力する電気信号を補正回路(図示せず)に伝達する電極である。この電気信号を基に、補正回路が生成するフィードバック信号が決定され、このフィードバック信号を基に光の補正に必要な処理が行われる。実施の形態1ではこのフィードバック信号に基づいて各エレクトロルミネッセント素子110の発光光量を補正するようにしており、図示しないドライバ回路によって各エレクトロルミネッセント素子110を駆動する電流値を制御している。このように実施の形態1では光検出素子120の出力に基づいて発光光量を制御しているが、フィードバック信号に基づいて各エレクトロルミネッセント素子110の駆動時間を制御する、いわゆるPWM制御を行なうように構成してもよい。
【0088】
光検出素子接地電極としてのソース電極125Sは、光検出素子120の接地を行う電極である。発光素子としてのエレクトロルミネッセント素子110の陽極であるITO(インジウム錫酸化物)111は、選択トランジスタ130のドレイン電極134Dと接続されており、エレクトロルミネッセント素子110はドレイン電極134Dを介して選択トランジスタ130で制御されている。
【0089】
図1、図2に示すように実施の形態1の光ヘッドは、島状に形成された多結晶シリコン(ポリシリコン)から構成される光検出素子120を主走査方向に列状に配置し、各有機エレクトロルミネッセント素子110においては画素規制層としての窒化シリコン膜114により光出射領域ALEが制限された発光層112の下部に光出射領域ALEよりも大きな素子領域Aを有した光検出素子120を配置したことが分かる。光出射領域ALEよりも光検出素子120の素子領域A(島状に形成された多結晶シリコンの島状部分)を大きくすることで、発光層112の局所的な層厚の変化を抑えることができ、発光層112を流れる電流の偏りを抑えることができる。したがって、均一な発光分布と寿命の向上を実現した光ヘッドを製造することができる。
【0090】
さらに、実施の形態1の光ヘッドに搭載される島状に構成された光検出素子120の素子領域Aは発光領域すなわち光出射領域ALEに比べて大きいため、発光層からの出力光を光の補正に用いる電気信号へと効率的に変換することができる。
【0091】
次に、本発明の光ヘッドで用いられる光量補正回路について説明する。光量補正回路は、図7に等価回路を示すように、チャージアンプを備えた駆動用IC150と、この駆動用IC150の入力端子に接続されるように前述したガラス基板100に集積化して形成された補正回路部Cとで構成され、この補正回路部Cは前述したスイッチングトランジスタ130と、光検出素子120と、この光検出素子に並列接続され、光検出素子の出力電流をチャージするコンデンサ140とで構成される。このコンデンサ140は図1の断面図に図示していないが、光検出素子のソース電極134S,ドレイン電極134Dにそれぞれ接続されるようにこれらと同一工程で形成された導電性膜で、第1および第2の絶縁膜122,123を挟むことによって形成されている。
【0092】
ここで光検出素子は、光検出素子は、エレクトロルミネッセンス素子からの光によって多結晶シリコン層121iで光電変換が行われ、ソース領域からドレイン領域に流れる電流を光電流として取り出すことにより、光量を検出するものである。しかしながら、前述したように、エレクトロルミネッセンス素子110の陽極であるITO電極111をゲート電極とし、このゲート電極の電位によって光検出素子のチャネル領域である多結晶シリコン層121iに電界がかかり、これにより、ドレイン電流Iが流れることになる。このドレイン電流Iが上記光電変換電流に付加されることになるため、ドレイン電極125Dからセンサ出力として補正回路部C(図7参照)に出力される光電変換電流は実際の光電変換電流にドレイン電流Iを加えたものとなる。このため光量検出精度が低下するという問題がある。このゲート電圧Vgとドレイン電流IDとの関係を測定した結果を図8に実線で示す。この図から明らかなように、この薄膜トランジスタのドレイン電流が0である領域すなわち、トランジスタの動作がオフとなる領域(OFF領域)で使用するのが望ましい。
【0093】
望ましくは、図8に破線で示すように、ゲート電位をマイナス方向にシフトさせるようにすることにより、薄膜トランジスタをOFF領域で使用することができ、暗電流をほとんど皆無とすることができる。
また、この光検出素子を構成する薄膜トランジスタのチャネル領域となる多結晶シリコン層121i全体がエレクトロルミネッセント素子の陽極であるITO電極で完全に覆われている状態が、ゲート電界によってチャネルを制御するのにより有効である。
本発明では、光検出素子の出力を高精度に検出することは極めて重要であるため、光検出素子を構成する薄膜トランジスタをOFF状態で検出することが重要である。
また、この光検出素子を構成する薄膜トランジスタのチャネル領域121iとなる多結晶シリコン層全体がエレクトロルミネッセント素子の陽極であるITO電極で完全に覆われている状態が、ゲート電界によってチャネルを制御するのにより有効である。
【0094】
そしてこの光検出素子の出力は図9(a)乃至(g)にタイミングチャートを示すように選択トランジスタ130のスイッチングにより、コンデンサ140に所望の回数分の点灯時間分チャージされた電流を取り出すことにより、高精度の光量検出が可能となる。ここで図9(a)は、チャージの状態を示す図、図9(b)は、選択トランジスタの動作を示す図、図9(c)は、エレクトロルミネッセント素子の点灯タイミングを示す図、図9(d)は、容量素子140の電位を示す図、図9(e)は、オペアンプの出力電圧を示す図、図9(f)は、データの読み出し動作を示す図、図9(g)は、光量検出信号を示す図、である。
なお、光検出素子の出力を高精度に検出することは極めて重要であるため、光検出素子を構成する薄膜トランジスタをOFF状態で検出することが重要である。したがって、光検出素子のゲート電位を調整することにより、所望の検出精度を得ることができる。
【0095】
まず、選択トランジスタ130がONとなり、容量素子140に初期電圧Vrefをチャージする(S1:リセットステップ)。
そして、この選択トランジスタ130がOFFとなると、容量素子140にチャージされた電荷は光検出素子120を流れる光電流により減少する(S2:点灯ステップ)。
この状態でチャージアンプ150のスイッチSWがOFFとなり、チャージアンプは測定可能な状態となる(S3:測定開始ステップ)。
そして、選択トランジスタ130がONとなり、容量素子140で失われた電荷はチャージアンプの容量素子Crefから供給される。その結果チャージアンプ150のオペアンプの出力電圧Vr0は上昇する。この期間も光検出素子の光電流は流れVr0は上昇する(S4:電荷転送ステップ)。
そして選択トランジスタ130がOFFとなり、Vr0が確定する。この電圧をADコンバータで取り込み、測光動作が終了する(S5:リードステップ)。
【0096】
なお本発明の実施の形態1の変形例として、図10に示すように、ガラス基板の裏面側にクロム薄膜からなる遮光膜104を形成し、この開口により第2の光出射領域ALE1を規定している。この第2の光出射領域ALE1を前記実施の形態1で説明した画素規定部としての窒化シリコン膜114の開口よりも小さく形成することにより、窒化シリコン膜114に起因する発光層の段差部を光出射領域から除外することができ、発光層をより均一化することが可能となる。他の構成については前記実施の形態1と同様である。
【0097】
(実施の形態2)
次に本発明の図11は、光ヘッドをトップエミッション構造で構成した場合の断面図である。トップエミッション構造とは、ボトムエミッション構造とは逆に発光層112から出力された光を発光層112の上部にある陰極側に出力する形式のことである。図7の構成では、ガラス基板100の上に金属から成る反射層105を設け、光の出力が陰極側にされる構造になっている。
【0098】
この構造を採用した場合は、図示するように有機エレクトロルミネッセント素子110の発光層112で生起した光のうち、光検出素子120とは反対の方向に出射された光で図示しない感光体(後に説明する図13の28Y〜28Kを参照)を露光することとなる。一方、発光層112にて生起される光は露光に供する方向とは逆方向、即ち光検出素子120側にも出射されており、この光を光検出素子120で受光することとなる。
【0099】
トップエミッション構造を採用した場合、露光に供する光は光検出素子120を透過する必要がないため、光検出素子120は透明度の高い多結晶シリコンを敢えて用いる必要はなく、光電流の生起能力が高い非晶質シリコン(アモルファスシリコン)で光検出素子120を構成するとよい。
【0100】
さてトップエミッション構造を実施するためには、陰極を透明な金属材料で構成する必要があるが技術的に難しい。そこで図11のように、ごく薄いAl、Ag等の金属層(薄膜陰極)113aとITOのような透明電極113bとを積層させて陰極として用いている。金属層113aはごく薄いため、透光性が確保された陰極が実現できる。トップエミッション構造は、ボトムエミッション構造に比べて製造工数が増えるため製造コストは増加するが、発光効率の良い光ヘッドを構成することができる。
【0101】
以上詳細に光ヘッドを構成するエレクトロルミネッセント素子110および光検出素子120の構成および作用について説明した。実施の形態1では光ヘッドにおける発光素子(エレクトロルミネッセンと素子)列を一列として説明したが、これを複数列に構成して発光光量を実質的に高めるように構成してもよい。
【0102】
また上述してきたエレクトロルミネッセンス素子110と光検出素子120の構造については、これを2次元的に配置して表示装置に応用することももちろん可能である。
【0103】
なお本発明の実施の形態2の変形例として、図12に示すように、ガラス基板の裏面側にクロム薄膜からなる遮光膜106を形成し、この開口により第2の光出射領域ALE1を規定している。この第2の光出射領域ALE1を前記実施の形態1で説明した画素規定部としての窒化シリコン膜114の開口よりも小さく形成することにより、窒化シリコン膜114に起因する発光層の段差部を光出射領域から除外することができ、発光層をより均一化することが可能となる。他の構成については前記実施の形態1と同様である。
【0104】
(実施の形態3)
図13は本発明の光ヘッドを用いた画像形成装置21の構成を示した図である。図13において、画像形成装置21は装置内にイエロー現像ステーション22Y、マゼンタ現像ステーション22M、シアン現像ステーション22C、ブラック現像ステーション22Kの4色分の現像ステーションを縦方向に階段状に配列し、その上方には記録紙23が収容される給紙トレイ24を配設すると共に、各現像ステーション22Y〜22Kに対応した箇所には給紙トレイ24から供給された記録紙23の搬送路となる記録紙搬送路25を上方から下方の縦方向に配置したものである。
【0105】
現像ステーション22Y〜22Kは、記録紙搬送路25の上流側から順に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を形成するものであり、イエロー現像ステーション22Yは感光体28Y、マゼンタ現像ステーション22Mには感光体28M、シアン現像ステーション22Cには感光体28C、ブラック現像ステーション22Kには感光体28Kが含まれ、更に各現像ステーション22Y〜22Kには図示しない現像スリーブ、帯電器等、一連の電子写真方式における現像プロセスを実現する部材が含まれている。
【0106】
更に各現像ステーション22Y〜22Kの下部には感光体28Y〜28Kの表面を露光して静電潜像を形成するための露光装置33Y、33M、33C、33Kが配置されている。なお実施の形態1で示した光ヘッドは、露光装置33Y、33M、33C、33Kに搭載されている。
【0107】
さて現像ステーション22Y〜22Kは充填された現像剤の色が異なっているが、構成は現像色に関わらず同一であるため、以降の説明を簡単にするため特に必要がある場合を除いて現像ステーション22、感光体28、露光装置33のごとく特定の色を明示せずに説明する。
【0108】
図14は本発明の実施の形態2の画像形成装置21における現像ステーション22の周辺を示す構成図である。図14において、現像ステーション22の内部にはキャリアとトナーを混合物である現像剤26が充填されている。27a、27bは現像剤26を攪拌する攪拌パドルであり、攪拌パドル27aと27bの回転によって現像剤26中のトナーはキャリアとの摩擦によって所定の電位に帯電されると共に、現像ステーション22の内部を巡回することでトナーとキャリアが十分に攪拌混合される。感光体28は図示しない駆動源によって方向D3に回転する。29は帯電器であり感光体28の表面を所定の電位に帯電する。30は現像スリーブ、31は薄層化ブレードである。現像スリーブ30は内部に複数の磁極が形成されたマグロール32を有している。薄層化ブレード31によって現像スリーブ30の表面に供給される現像剤26の層厚が規制されると共に、現像スリーブ30は図示しない駆動源によって方向D4に回転し、この回転およびマグロール32の磁極の作用によって現像剤26は現像スリーブ30の表面に供給され、後述する露光装置によって感光体28に形成された静電潜像を現像するとともに、感光体28に転写されなかった現像剤26は現像ステーション22の内部に回収される。
【0109】
33は既に説明した露光装置である。実施の形態1の光ヘッドを搭載した露光装置33を応用した画像形成装置21は、既に述べたように露光装置33が長期に渡って安定に潜像を形成できるため、製品寿命が長く、さらに実施の形態1の光ヘッドを搭載した露光装置33は所望の形状の静電潜像を長期にわたって得られるために常に高画質の画像を形成することができる。
【0110】
さて実施の形態2における露光装置33は有機エレクトロルミネッセント素子を600dpi(dot/inch)の解像度で直線状に配置したもので、帯電器29によって所定の電位に帯電した感光体28に対し、画像データに応じて選択的に有機エレクトロルミネッセント素子をON/OFFすることで、最大A4サイズの静電潜像を形成する。この静電潜像部分に現像スリーブ30の表面に供給された現像剤26のうちトナーのみが付着し、静電潜像が顕画化される。
【0111】
感光体28に対し記録紙搬送路25と対向する位置には転写ローラ36が設けられており、図示しない駆動源により方向D5に回転する。転写ローラ36には所定の転写バイアスが印加されており、感光体28上に形成されたトナー像を、記録紙搬送路25を搬送されてきた記録紙に転写する。
【0112】
以降図13に戻って説明を続ける。
【0113】
これまで説明してきたように、実施の形態2における画像形成装置21は複数の現像ステーション22Y〜22Kを縦方向に階段状に配列したタンデム型のカラー画像形成装置であり、カラーインクジェットプリンタと同等クラスのサイズを目指すものである。現像ステーション22Y〜22Kは複数のユニットが配置されるため、画像形成装置21の小型化を図るためには現像ステーション22Y〜22Kそのものの小型化と共に、現像ステーション22Y〜22Kの周辺に配置される作像プロセスに関与する部材を小さくし、現像ステーション22Y〜22Kの配置ピッチを極力小さくする必要がある。
【0114】
オフィス等においてデスクトップに画像形成装置21を設置した際のユーザの使い勝手、特に給紙時や排紙時の記録紙23へのアクセス性を考慮すると、画像形成装置21の底面から給紙口65までの高さは250mm以下にすることが望ましい。これを実現するためには画像形成装置21の全体の構成の中で現像ステーション22Y〜22K全体の高さを100mm程度に抑える必要がある。
【0115】
しかしながら既存の例えばLEDヘッドは厚みが15mm程度あり、これを現像ステーション22Y〜22K間に配置すると目標を達成することが困難である。本発明者等の検討結果によれば露光装置33の厚みを7mm以下とすると、現像ステーション22Y〜22K間の隙間に露光装置33Y〜33Kを配置しても現像ステーション全体の高さを100mm以下に抑えることが可能である。
【0116】
37はトナーボトルであり、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーが格納されている。トナーボトル37から各現像ステーション22Y〜22Kには、図示しないトナー搬送用のパイプが配設され、各現像ステーション22Y〜22Kにトナーを供給している。
【0117】
38は給紙ローラであり、図示しない電磁クラッチを制御することで方向D1に回転し、給紙トレイ24に装填された記録紙23を記録紙搬送路25に送り出す。
【0118】
給紙ローラ38と最上流のイエロー現像ステーション22Yの転写部位との間に位置する記録紙搬送路25には、入口側のニップ搬送手段としてレジストローラ39、ピンチローラ40対が設けられている。レジストローラ39、ピンチローラ40対は、給紙ローラ38により搬送された記録紙23を一時的に停止させ、所定のタイミングでイエロー現像ステーション22Yの方向に搬送する。この一時停止によって記録紙23の先端がレジストローラ39、ピンチローラ40対の軸方向と平行に規制され、記録紙23の斜行を防止する。
【0119】
41は記録紙通過検出センサである。記録紙通過検出センサ41は反射型センサ(フォトリフレクタ)によって構成され、反射光の有無で記録紙23の先端および後端を検出する。
【0120】
さてレジストローラ39の回転を開始すると(図示しない電磁クラッチによって動力伝達を制御し、回転ON/OFFを行う)記録紙23は記録紙搬送路25に沿ってイエロー現像ステーション22Yの方向に搬送されるが、レジストローラ39の回転開始のタイミングを起点として、各現像ステーション22Y〜22Kの近傍に配置された露光装置33Y〜33Kによる静電潜像の書き込みタイミングが独立して制御される。
【0121】
最下流のブラック現像ステーション22Kの更に下流側に位置する記録紙搬送路25には出口側のニップ搬送手段として定着器43が設けられている。定着器43は加熱ローラ44と加圧ローラ45から構成されている。加熱ローラ44は表面から近い順に、発熱ベルト、ゴムローラ、芯材(共に図示せず)から構成されている多層構造のローラである。このうち発熱ベルトは更に3層構造を有するベルトであり、表面に近い方から離型層、シリコンゴム層、基材層(共に図示せず)から構成される。離型層は厚み約20〜30マイクロメートルのフッ素樹脂からなり、加熱ローラ44に離型性を付与する。シリコンゴム層は約170マイクロメートルのシリコンゴムで構成され、加圧ローラ45に適度な弾性を与える。基材層は鉄・ニッケル・クロム等の合金である磁性材料によって構成されている。
【0122】
26は励磁コイルが内包された背面コアである。背面コア46の内部には表面が絶縁された銅製の線材(図示せず)を所定本数束ねた励磁コイルを加熱ローラ44の回転軸方向に延伸し、かつ加熱ローラ44の両端部において、加熱ローラ44の周方向に沿って周回して形成されている。励磁コイルに半共振型インバータである励磁回路(図示せず)から約30kHzの交流電流を印加すると、背面コア46と加熱ローラ44の基材層によって構成される磁路に磁束が生じる。この磁束によって加熱ローラ44の発熱ベルトの基材層に渦電流が形成され基材層が発熱する。基材層で生じた熱はシリコンゴム層を経て離型層まで伝達され、加熱ローラ44の表面が発熱する。
【0123】
47は加熱ローラ44の温度を検出するための温度センサである。温度センサ47は金属酸化物を主原料とし、高温で焼結して得られるセラミック半導体であり、温度に応じて負荷抵抗が変化することを応用して接触した対象物の温度を計測することができる。温度センサ47の出力は図示しない制御装置に入力され、制御装置は温度センサ47の出力に基づいて背面コア46内部の励磁コイルに出力する電力を制御し、加熱ローラ44の表面温度が約170゜Cとなるように制御する。
【0124】
この温度制御がなされた加熱ローラ44と加圧ローラ45によって形成されるニップ部に、トナー像が形成された記録紙23が通紙されると、記録紙23上のトナー像は加熱ローラ44と加圧ローラ45によって加熱および加圧され、トナー像が記録紙23上に定着される。
【0125】
48は記録紙後端検出センサであり、記録紙23の排出状況を監視するものである。52はトナー像検出センサである。トナー像検出センサ52は発光スペクトルの異なる複数の発光素子としてのエレクトロルミネッセント素子(共に可視光)と単一の受光素子(光検出素子)を用いた反射型センサユニットであり、記録紙23の地肌と画像形成部分とで、画像色に応じて吸収スペクトルが異なることを利用して画像濃度を検出するものである。またトナー像検出センサ52は画像濃度のみならず、画像形成位置も検出できるため、実施の形態1における画像形成装置21ではトナー像検出センサ52を画像形成装置21の幅方向に2ヶ所設け、記録紙23上に形成した画像位置ずれ量検出パターンの検出位置に基づき、画像形成タイミングを制御している。
【0126】
53は記録紙搬送ドラムである。記録紙搬送ドラム53は表面を200マイクロメートル程度の厚さのゴムで被覆した金属製ローラであり、定着後の記録紙23は記録紙搬送ドラム53に沿って方向D2に搬送される。このとき記録紙23は記録紙搬送ドラム53によって冷却されると共に、画像形成面と逆方向に曲げられて搬送される。これによって記録紙全面に高濃度の画像を形成した場合などに発生するカールを大幅に軽減することができる。その後、記録紙23は蹴り出しローラ55によって方向D6に搬送され、排紙トレイ59に排出される。
【0127】
54はフェイスダウン排紙部である。フェイスダウン排紙部54は支持部材56を中心に回動可能に構成され、フェイスダウン排紙部54を開放状態にすると、記録紙23は方向D7に排紙される。このフェイスダウン排紙部54は閉状態では記録紙搬送ドラム53と共に記録紙23の搬送をガイドするように、背面に搬送経路に沿ったリブ57が形成されている。
【0128】
58は駆動源であり、実施の形態1ではステッピングモータを採用している。駆動源58によって、給紙ローラ38、レジストローラ39、ピンチローラ40、感光体(28Y〜28K)、および転写ローラ(36Y〜36K)を含む各現像ステーション22Y〜22Kの周辺部、定着器43、記録紙搬送ドラム53、蹴り出しローラ55の駆動を行っている。
【0129】
61はコントローラであり、外部のネットワークを介して図示しないコンピュータ等からの画像データを受信し、プリント可能な画像データを展開、生成する。
【0130】
62はエンジン制御部である。エンジン制御部62は画像形成装置21のハードウェアやメカニズムを制御し、コントローラ61から転送された画像データに基づいて記録紙23にカラー画像を形成すると共に、画像形成装置21の制御全般を行っている。
【0131】
63は電源部である。電源部63は、露光装置33Y〜33K、駆動源58、コントローラ61、エンジン制御部62へ所定電圧の電力供給を行うと共に、定着器43の加熱ローラ44への電力供給を行っている。また感光体28の表面の帯電、現像スリーブ(図11における図番30を参照)に印加する現像バイアス、転写ローラ36に印加する転写バイアス等のいわゆる高圧電源系もこの電源部に含まれている。
【0132】
また電源部63には電源監視部64が含まれ、少なくともエンジン制御部62に供給される電源電圧をモニターできるようになっている。このモニター信号はエンジン制御部62おいて検出され、電源スイッチのオフや停電等の際に発生する電源電圧の低下を検出している。
【0133】
以上の説明においては本発明をカラー画像形成装置に適用した場合について説明したが、たとえばブラックなど単色の画像形成装置に適用することもできる。また、カラー画像形成装置に適用した場合、現像色はイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色に限定されるものではない。
【0134】
本発明の画像形成装置21は、発光分布が均一で、耐久性に優れた露光装置33Y〜33Kを搭載しているため、画質と耐久性に優れている。
【0135】
なお、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記発光機能を有した層が下記一般式(I)で表されるポリフルオレンおよびその誘導体(R1、R2はそれぞれ置換基を表す)を含むものを含む。
【化5】

【0136】
本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記発光機能を有した層がフェニレンビニレン基を含むものを含む。
【0137】
本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記発光機能を有した層が下記一般式(II)で表されるポリフェニレンビニレンおよびその誘導体(R3、R4はそれぞれ置換基を表す)を含むものを含む。
【0138】
【化6】

【0139】
本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、バッファ層が、バッファ層の電子親和力をあらわすエネルギー値の絶対値(以下電子親和力と表現する)が前記発光機能を有した層の電子親和力よりも小さい材料を使用したものを含む。
この構成により、電荷の抜けをブロックすることができ、電荷が発光層内で有効に発光に寄与するようにすることができる。
【0140】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、電荷注入層が、酸化物を含むものを含む。
なお、ここで用いられる酸化物としては、クロム(Cr)、タングステン(W)、バナジ
ウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフ
ニウム(Hf)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、トリウム(Tr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni
)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、錫(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)あるいは、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までのいわゆる希土類元素などの酸化物を挙げることができる。なかでも酸化アルミニウム(AlO)
、酸化銅(CuO)、酸化シリコン(SiO)は、特に長寿命化に有効である。
【0141】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、電荷注入層が、遷移金属の酸化物を含むものを含む。
【0142】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、電荷注入層が、モリブデンまたはバナジウムの酸化物からなるものを含むものを含む。
【0143】
このように特に、電荷注入層は、モリブデン、バナジウムなどをはじめとする遷移金属の酸化物の中から選択して使用することが出来る。
例えば遷移金属の化合物は、複数の酸化数をとるため、これにより、複数の電位レベルをとることができ、電荷注入が容易となり、駆動電圧を低減することができる。
【0144】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、電荷注入層が、窒化物を含むものを含む。
【0145】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、電荷注入層が、遷移金属の窒化物を含むものを含む。
【0146】
また、窒化物には非常に多くの種類があり、その多くが機能材料として活用されている。主にスパッタリングやCVD法によって成膜を行うことができる。半導体として用いられ
るものから、非常に絶縁性の高いものまでさまざまな化合物が知られているが、種々の実験の結果、絶縁性の高い化合物については成膜の際にその膜厚をおおむね5nm付近以下にすることでキャリア注入が可能になることがわかった。具体的な化合物として以下のものを挙げることができ、好ましくは窒化チタン(TiN)である。TiNは非常に堅牢な材料として知られており、熱に対して安定である。
【0147】
この他、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、窒化珪素(SiN)、窒化マグネシウム(MgN)、窒化モリブデン(MoN)、窒化カルシウム(CaN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タンタル(TaN)、窒化バナジウム(BaN)、窒化亜鉛(ZnN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化鉄(FeN)、窒化銅(CuN)、窒化バリウム(BaN)、窒化ランタン(LaN)、窒化クロム(CrN)、窒化イットリウム(YN)、窒化リチウム(LiN)、窒化チタン(TiN)、およびこれらの複合窒化物等も適用可能である。
【0148】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、電荷注入層が、酸窒化物を含むものを含む。
【0149】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、電荷注入層が、遷移金属の酸窒化物を含むものを含む。
例えば、ルテニウム(Ru)の酸窒化物結晶Ru4Si2O7N2等も極めて耐熱性(1500℃)が高く安定な物質であることから薄く成膜することにより、電荷注入層として適用可能である。この場合はゾルゲル法で成膜した後、熱処理を行なうことにより成膜することができる。
【0150】
この他、バリウムサイアロン(BaSiAlON)、カルシウムサイアロン(CaSiAlON)、セリウムサイアロン(CeSiAlON)、リチウムサイアロン(LiSiAlON)、マグネシウムサイアロン(MgSiAlON)、スカンジウムサイアロン(ScSiAlON)、イットリウムサイアロン(YSiAlON)、エルビウムサイアロン(ErSiAlON)、ネオジムサイアロン(NdSiAlON)などのIA、IIA、IIIB族の元素を含むサイアロン、または多元サイアロン等の酸窒化物が適用可能である。これらはCVD法、スパッタリング法などで形成可能である。この他、窒化珪素酸ランタン(LaSiON)、窒化珪素酸ランタンユーロピウム(LaEuSiON)、酸窒化珪素(SiON3)等も適用可能である。これらはおおむね絶縁体であることが多いため、膜厚は1nmから5nm程度と薄くする必要がある。またこれらの化合物はエキシトンの閉じ込め効果が大であり、電子注入を行なう側に形成してもよい。
【0151】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、電荷注入層が、遷移金属を含む複合酸化物を含むものを含む。
【0152】
理由は明らかではないが、電荷注入層に、遷移金属を含む複合酸化物を用いた場合、発光強度を大きく向上することができた。
また、複合酸化物には非常に多くの種類があり、そのうち多くのものが電子的に興味深い物性を持っている。具体的には以下のような化合物を挙げることができるが、これらはあくまでその一例である。
【0153】
例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)の他、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、ビスマス酸化鉄(BiFeO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、バナジウム酸ナトリウム(Na3VO4)、バナジウム酸鉄(FeVO3)、チタン酸バナジウム(TiVO3)、クロム酸バナジウム(CrVO3)、バナジウム酸ニッケル(NiVO3)、バナジウム酸マグネシウム(MgVO3)、バナジウム酸カルシウム(CaVO3)、バナジウム酸ランタン(LaVO3)、モリブデン酸バナジウム(VMoO5)、モリブデン酸バナジウム(V2MoO8)、バナジウム酸リチウム(LiV2O5)、珪酸マグネシウム(Mg2SiO4)、珪酸マグネシウム(MgSiO3)、チタン酸ジルコニウム(ZrTiO4)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、マグネシウム酸鉛(PbMgO3)、ニオブ酸鉛(PbNbO3)、ホウ酸バリウム(BaB2O4)、クロム酸ランタン(LaCrO3)、チタン酸リチウム(LiTi2O4)、銅酸ランタン(LaCuO4)、チタン酸亜鉛(ZnTiO3)、タングステン酸カルシウム(CaWO4)等が可能となる。
【0154】
これらのいずれを用いることでも本発明を実施することができるが、好ましくはたとえばチタン酸バリウム(BaTiO3)を挙げることができる。BaTiO3は代表的な誘電体であって、高い絶縁性を持つ複酸化物であるが、種々の実験を行なった結果から薄い膜で用いられる場合にはキャリア注入を行うことが可能であることがわかった。BaTiO3やチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)は化合物として安定であり、かつ誘電率が非常に大きいので効率的なキャリア注入を行うことが可能である。成膜に際してはスパッタリング法、ゾルゲル法、CVD法など適宜選択可能である。
【0155】
また本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記バッファ層が、ホール注入側に配置された電荷注入層と発光機能を有した層との間に配置されるものを含むものを含む。
この構成により、電子の抜けをブロックすることができ、電子が発光機能を有した層内で有効に発光に寄与するようにすることができる。
【0156】
また本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記バッファ層が、高分子層で構成されるものを含むものを含む。
この構成により、バッファ層を塗布法で形成することができるため、真空工程を経ることなく形成することができる。
【0157】
また本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記陽極が透光性基板上に形成されており、前記電荷注入層が、前記陽極上に形成されたホール注入層と、前記発光機能を有した層を介して前記ホール注入層に対向するように、前記発光機能を有した層の上に形成された電子注入層とで構成され、前記電子注入層上には陰極が形成されたものを含むものを含む。すなわち、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、透光性基板上に形成された陽極と、前記陽極上に形成されたホール注入層と、前記ホール注入層上に形成されたバッファ層と、前記発光機能を有した層を介して前記ホール注入層に対向するように、前記発光機能を有した層上に形成された電子注入層と、陰極とで構成されたものを含む。
この構成により、電子の抜けを生じ易いホール注入層側に電子ブロック層等のバッファ層が形成されており、かつこれらの層の上に発光機能を有した層が形成されるため、発光機能を有した層がホール注入層の成膜時にダメージを受けるのを防止することができる。
ここで陰極としては、電子の注入を容易にするためのカルシウム(Ca)層やバリウム(Ba)層など仕事関数の小さい層を発光層側に配した多層構造体として形成するのが望ましい。
【0158】
本発明で用いる上記化合物においては価数の異なる化合物も存在し易く、例示したもの以外にも価数の異なる化合物の形をとるものも含むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明のエレクトロルミネッセント素子は、光ヘッド及び画像形成装置として、複写機、プリンタ、マルチファンクションプリンタ、ファクシミリなどに適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明の実施の形態1に記載の光ヘッドを構成するエレクトロルミネッセント素子110およびその周辺の断面図
【図2】本発明の実施の形態1に記載の光ヘッドの光検出素子近傍の構成を示した平面構成説明図
【図3】本発明の実施の形態1に記載の光ヘッドに用いられるエレクトロルミネッセント素子の画素規制層の表面物性を示す写真
【図4】従来のエレクトロルミネッセンス素子の画素規制層の表面物性を示す写真
【図5】本発明の実施の形態1に記載の光ヘッドに用いられるエレクトロルミネッセント素子の発光状態を示す写真
【図6】従来の光ヘッドに用いられるエレクトロルミネッセント素子の発光状態を示す写真
【図7】本発明の実施の形態1に記載の光ヘッドの光量検出回路の等価回路図
【図8】本発明の実施の形態1に記載の光ヘッドの光検出素子の特性を示す図
【図9】本発明の実施の形態1に記載の光ヘッドの光量検出フローを示す図
【図10】本発明の実施の形態1に記載の光ヘッドの変形例を示す断面図
【図11】本発明の実施の形態2に記載の光ヘッドをトップエミッション構造で構成した場合の断面図
【図12】本発明の実施の形態2に記載の光ヘッドの変形例を示す断面図
【図13】本発明の光ヘッドを用いた画像形成装置21の構成図
【図14】本発明の実施の形態3に記載の画像形成装置21における現像ステーション22の周辺を示す構成図
【符号の説明】
【0161】
100 ガラス基板
101 オーバーコート層
110 エレクトロルミネッセンス素子
111 陽極
112 発光層
113 陰極
114 画素規制層
120 光検出素子
121 多結晶シリコン層
121S,D ソース・ドレイン領域
121i チャネル領域
122 第1の絶縁層
123 第2の絶縁層
124 保護層
125S、D ソース・ドレイン電極
130 駆動トランジスタ
131 活性層
132S,D ソース・ドレイン領域
133 ゲート電極
134S、D ソース・ドレイン電極
21 画像形成装置
22 現像ステーション
22Y 現像ステーション
22M 現像ステーション
22C 現像ステーション
22K 現像ステーション
23 記録紙
24 給紙トレイ
25 記録紙搬送路
26 現像剤
27a 攪拌パドル
27b 攪拌パドル
28 感光体
28Y 感光体
28M 感光体
28C 感光体
28K 感光体
29 帯電器
30 現像スリーブ
31 薄層化ブレード
32 マグロール
33 露光装置
33Y 露光装置
33M 露光装置
33C 露光装置
33K 露光装置
36 転写ローラ
37 トナーボトル
38 給紙ローラ
39 レジストローラ
40 ピンチローラ
41 記録紙通過検出センサ
43 定着器
44 加熱ローラ
45 加圧ローラ
46 背面コア
47 温度センサ
48 記録紙後端検出センサ
52 トナー像検出センサ
53 記録紙搬送ドラム
54 フェイスダウン排出部
55 蹴り出しローラ
56 支持部材
57 リブ
58 駆動源
59 排紙トレイ
61 コントローラ
62 エンジン制御部
63 電源部
64 電源監視部
65 給紙口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一組の電極と、前記電極間に形成された複数の機能層とを具備し、
前記機能層は少なくとも1種類の有機半導体からなる発光機能を有した層と、
前記電極と前記発光機能を有した層との間に画素規制層を備え、
発光領域の面積を規制するように構成した有機エレクトロルミネッセント素子であって、前記画素規制層の表面平均粗さ:Raが5.0nm以下である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項2】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層の表面平均粗さ:Raが2.0nm以下である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項3】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層の表面平均粗さ:Raが1.0nm以下である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層の最大山高さ:Rpと最大谷深さ:Rvの絶対値の和が1nm以上20nm以下である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項5】
請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層の最大山高さ:Rpと最大谷深さ:Rvの絶対値の和が1nm以上10nm以下である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層を構成する薄膜のグレインの粒子径が5nm以上100nm以下である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項7】
請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層を構成する薄膜のグレインの粒子径が5nm以上40nm以下である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層を構成する薄膜の膜密度が2.0g/cm以上3.5g/cm以下である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層の開口周縁と前記電極とのなす角が3から45度である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項10】
請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層の開口周縁と前記電極とのなす角が3から10度である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層の膜厚は膜厚20nm以上100nm以下である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項12】
請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層表面全体を無機酸化物層で被覆され、この上層に発光機能を有した層が形成された有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層が酸化シリコン膜である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層が窒化シリコン膜である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項15】
請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記無機酸化物層がMoOである有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項16】
請求項15に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記MoO層の膜厚は10nm以上である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記発光機能を有した層が少なくとも1種の高分子発光材料を含む有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項18】
請求項17に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記発光機能を有した層がフルオレン環を含む高分子化合物を含む有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項19】
請求項18に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記発光機能を有した層が下記一般式(I)で表されるポリフルオレンおよびその誘導体(R1、R2はそれぞれ置換基を表す)を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子。
【化1】

【請求項20】
請求項17に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記発光機能を有した層がフェニレンビニレン基を含む有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項21】
請求項20に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記発光機能を有した層が下記一般式(II)で表されるポリフェニレンビニレンおよびその誘導体(R3、R4はそれぞれ置換基を表す)を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子。
【化2】

【請求項22】
請求項1乃至21のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記機能層は、ホール注入側に配置された電荷注入層と、バッファ層と、発光機能を有した層とを順次積層して構成された有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項23】
請求項22記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記バッファ層は、高分子層で構成される有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項24】
請求項17に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記一組の電極のうちの一方の電極である陽極は透光性基板上に形成されており、
前記陽極上に形成された無機酸化物層としてのMoO層と、
ホール注入層と、
前記発光機能を有した層と、
前記ホール注入層に対向するように、前記発光機能を有した層の上に形成された電子注入層と、
前記電子注入層上に配設され前記一組の電極のうち他方の電極である陰極とが順次積層形成された有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項25】
請求項1乃至24のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子が二次元に配列形成された表示装置。
【請求項26】
請求項1乃至24のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子が列状に配列され発光部を構成した露光装置。
【請求項27】
請求項1乃至26のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法であって、
前記一組の電極の一方の電極の形成された基板表面に表面粗さRaが5.0nm以下となるように画素規制層を形成する工程と、
この上に機能層を形成する工程とを含む有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法。
【請求項28】
請求項27に記載の有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法であって、
画素規制層の上層に無機酸化物層を形成する工程と、前記無機酸化物層上に機能層を形成する工程とを含む有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法。
【請求項29】
請求項27または28に記載の有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法であって、
前記画素規制層を形成する工程は、画素規制層を成膜し、パターニングすると共に表面処理を行い、表面粗さを調整する工程を含む有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法。
【請求項30】
少なくともひとつの電極と、
この電極を介して電荷の注入によって発光する発光機能を有する層とを備えた有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記電極から前記発光機能を有する層への電荷の注入を規制する、表面平均粗さ:Raを5.0nm以下に構成した画素規制層を備えた有機エレクトロルミネッセント素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−287558(P2007−287558A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115856(P2006−115856)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】