説明

有機スルホン酸のアルカリ金属塩の処理方法、金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸及び有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤

【課題】電子、半導体及び精密加工分野等で使用可能なレベルにまで金属イオン濃度を低減することができる有機スルホン酸のアルカリ金属塩の処理方法、該処理方法によって得られる金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸及びかかる有機スルホン酸を用いることにより同様に金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤を提供する。
【解決手段】特定の有機スルホン酸のアルカリ金属塩を、強酸性カチオン交換樹脂を用いたイオン交換法に供し、該有機スルホン酸に対する金属イオン濃度を各金属イオン毎で200ppb以下となるように処理した。またかかる金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸を、特定の塩基性化合物で中和し、同様に金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機スルホン酸のアルカリ金属塩の処理方法、金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸及び有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤に関し、更に詳しくは、電子、半導体及び精密加工分野等で使用可能なレベルにまで金属イオン濃度を低減することができる有機スルホン酸のアルカリ金属塩の処理方法、該処理方法によって得られる金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸及びかかる有機スルホン酸を用いることにより同様に金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子、半導体及び精密加工分野等、様々な分野で不純物としての金属イオンの濃度を低減した界面活性剤が使用されており、かかる精製した界面活性剤を得るための方法が提案されている。例えば、非イオン界面活性剤については、イオン交換樹脂と機能性フィルターとを組み合わせて用いる方法(例えば特許文献1参照)、またアニオン界面活性剤については、一般的な濃縮、晶析、抽出による方法の他に逆浸透膜や限外濾過膜による方法(例えば特許文献2参照)、イオン交換膜を用いた電気透析による方法(例えば特許文献3参照)等が提案されている。
【0003】
しかし、前記のような従来法によると、非イオン界面活性剤の場合は望まれるレベルにまで金属イオン濃度を低減したものを比較的容易に得ることができるが、アニオン界面活性剤の場合は望まれるレベルにまで金属イオン濃度を低減したもの、より具体的には各金属イオン毎でその濃度をppb単位にまで低減したものを得ることが難しいという問題があり、なかでも有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤の場合は特に難しいという問題がある。
【特許文献1】特開2005−213200号公報
【特許文献2】特開平5−317654号公報
【特許文献3】特開昭62−63555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、電子、半導体及び精密加工分野等で使用可能なレベルにまで金属イオン濃度を低減することができる有機スルホン酸のアルカリ金属塩の処理方法、該処理方法によって得られる金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸及びかかる有機スルホン酸を用いることにより同様に金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく研究した結果、市場で入手が容易であり、また設備腐食等の問題が少なく、更に取扱いの容易な有機スルホン酸のアルカリ金属塩を原料として用い、これを特定のカチオン交換樹脂を用いたイオン交換法に供して処理すると、不純物としての金属イオンの濃度を各金属イオン毎でppb単位にまで低減した有機スルホン酸を得ることができ、またかかる有機スルホン酸を特定の塩基性化合物で中和すると、同様に金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤を得ることができることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、下記の化1〜化4のいずれかで示される有機スルホン酸のアルカリ金属塩を、強酸性カチオン交換樹脂を用いたイオン交換法に供し、該有機スルホン酸に対する金属イオン濃度を各金属イオン毎で200ppb以下となるよう処理することを特徴とする有機スルホン酸のアルカリ金属塩の処理方法に係る。
【0007】
【化1】

【0008】
【化2】

【0009】
【化3】

【0010】
【化4】

【0011】
化1、化2、化3及び化4において、
:炭素数4〜24の脂肪族炭化水素基
,R:水素原子、スルホ基又は炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基
,R,R,R:水素原子、スルホ基又は炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基
,R,R10,R11:水素原子、スルホ基又は炭素数4〜18の脂肪族炭化水素基
【0012】
また本発明は、前記の本発明に係る有機スルホン酸のアルカリ金属塩の処理方法によって得られる金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸に係る。
【0013】
更に本発明は、前記の本発明に係る金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸を、下記の化5で示される塩基性化合物、化6で示される塩基性化合物、5員環を有する有機環状塩基性化合物及び6員環を有する有機環状塩基性化合物から選ばれる一つ又は二つ以上の塩基性化合物で中和して成る有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤に係る。


【0014】
【化5】

【0015】
【化6】

【0016】
化5及び化6において、
12,R13,R14,R15,R16,R17,R18:水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基
【0017】
先ず、本発明に係る有機スルホン酸のアルカリ金属塩の処理方法(以下、単に本発明に係る処理方法という)について説明する。本発明に係る処理方法は、前記の化1〜化4のいずれかで示される有機スルホン酸のアルカリ金属塩を、強酸性カチオン交換樹脂を用いたイオン交換法に供し、該有機スルホン酸に対する金属イオン濃度を各金属イオン毎で200ppb以下、好ましくは100ppb以下となるよう処理する方法である。
【0018】
本発明に係る処理方法に供する有機スルホン酸のアルカリ金属塩は化1〜化4のいずれかで示される有機スルホン酸化合物のナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩等のアルカリ金属塩である。
【0019】
化1で示される有機スルホン酸において、Rとしては、1)ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等の炭素数4〜24のアルキル基、2)ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基等の炭素数4〜24のアルケニル基が挙げられる。なかでも、炭素数8〜18のアルキル基が好ましい。
【0020】
化2で示される有機スルホン酸において、R及びRとしては、1)水素原子、2)スルホ基、3)メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基,テトラデシル基,ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基の炭素数1〜18のアルキル基、4)エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等の炭素数2〜18のアルケニル基が挙げられる。
【0021】
化3で示される有機スルホン酸において、R、R、R及びRとしては、1)水素原子、2)スルホ基、3)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素数1〜8のアルキル基、4)エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等の炭素数2〜8のアルケニル基が挙げられる。なかでも、Rがイソプロピル基又はブチル基であって、残りのR、R及びRが水素原子、スルホ基、イソプロピル基又はブチル基であるものが好ましい。
【0022】
化4で示される有機スルホン酸において、R、R、R10及びR11としては、1)水素原子、2)スルホ基、3)ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の炭素数4〜18のアルキル基、4)ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等の炭素数4〜18のアルケニル基が挙げられる。
【0023】
本発明に係る処理方法に供する強酸性カチオン交換樹脂としては、いずれも市販されている商品名で、デュオライト C255LFH(米国ローム・アンド・ハース社製)、アンバーライト IR−124、IR−120B(共に米国ローム・アンド・ハース社製)、ダイヤイオン SK−110、SK−1B(共に三菱化学社製)等のスルホン酸型強酸性カチオン交換樹脂を使用できる。またダイヤイオン WK11(三菱化学社製)等の弱酸性カチオン交換樹脂、ダイヤイオン CR11(三菱化学社製)等のキレート樹脂、ダイヤイオン PA312(三菱化学社製)等の塩基性アニオン交換樹脂であっても、これらを前記のスルホン酸型強酸性カチオン交換樹脂と組み合わせて使用することもできる。複数のイオン交換樹脂を組み合わせて使用する場合は、複層又は混合のいずれの系でも使用できる。このような予め混合されたイオン交換樹脂としては、デュオライト MB5113(米国ローム・アンド・ハース社製)や、アンバーライト MB−2(米国ローム・アンド・ハース社製)が市販されている。
【0024】
有機スルホン酸のアルカリ金属塩を強酸性カチオン交換樹脂を用いたイオン交換法に供するに際して、該有機スルホン酸のアルカリ金属塩は溶媒に溶解した溶液とする。かかる溶媒としては、1)水、2)メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール等の炭素数1〜4の低級アルコール、3)エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等の炭素数2〜4のグリコール、4)プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、5)乳酸エチル(EL)、乳酸メチル、乳酸ブチル等の乳酸エステルが挙げられる。これらの溶媒は被精製物である有機スルホン酸のアルカリ金属塩の均一な溶液が得られる範囲内において、単独で使用することができ、また二種類以上を混合して使用することもできる。なかでも、水、2−プロパノール又はこれらの混合物が好ましい。
【0025】
溶媒に溶解した有機スルホン酸のアルカリ金属塩の溶液の濃度は5〜40質量%とするのが好ましく、10〜30質量%とするのがより好ましい。
【0026】
また溶媒に溶解した有機スルホン酸のアルカリ金属塩の溶液を強酸性カチオン交換樹脂と接触させてイオン交換処理する具体的な方法としては、バッチ法、カラム法が適用できるが、なかでもカラム法が好ましい。
【0027】
更に溶媒に溶解した有機スルホン酸のアルカリ金属塩の溶液を強酸性カチオン交換樹脂と接触させてイオン交換処理する際の空間速度(SV)は0.01〜6.0とするのが好ましく0.1〜6.0とするのがより好ましい。
【0028】
本発明に係る処理方法では、以上説明したイオン交換処理により、有機スルホン酸に対する金属イオン濃度を各金属イオン毎で200ppb以下、好ましくはNa、K、Ca、Mg、Mn、Fe、Al、Cu、Zn、Ni及びCrの金属イオン濃度を各金属イオン毎で100ppb以下となるようにする。
【0029】
本発明において、各金属イオンの濃度は原子吸光分光測定法により測定して求めることができる。なお1ppbは1μg/Lの濃度を示す。
【0030】
次に、本発明に係る金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸について説明する。本発明に係る金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸は、以上説明した本発明に係る処理方法によって得られるものである。
【0031】
本発明に係る処理方法によって得られる金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸は、使用目的により、濃縮、希釈、場合によっては乾燥し、使用に供する。
【0032】
最後に、本発明に係る有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤について説明する。本発明に係る有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤は、前記の本発明に係る金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸を特定の塩基性化合物で中和して成るものである。
【0033】
有機スルホン酸の中和に供する塩基性化合物は、前記の化5で示される塩基性化合物、化6で示される塩基性化合物、5員環を有する有機環状塩基性化合物及び6員環を有する有機環状塩基性化合物から選ばれる一つ又は二つ以上の塩基性化合物である。
【0034】
化5で示される塩基性化合物において、R12、R13及びR14としては、1)水素原子、2)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基、3)ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシイソプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシイソブチル基等の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基が挙げられる。なかでも、R12、R13及びR14が、1)全てが水素原子、2)任意の二つが水素原子及び残りの一つがエチル基、3)任意の一つが水素原子及び残りの二つがエチル基、4)全てがエチル基、5)任意の二つが水素原子及び残りの一つがヒドロキシエチル基、6)任意の一つが水素原子及び残りの二つがヒドロキシエチル基、又は7)全てがヒドロキシエチル基である場合のものが好ましい。具体的に化5で示される塩基性化合物としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン又はこれらの任意の混合物が好ましい。
【0035】
化6で示される塩基性化合物において、R15、R16、R17及びR18としては、1)水素原子、2)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基、3)ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシイソプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシイソブチル基等の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基が挙げられる。なかでも、R15、R16、R17及びR18のすべてが同時に水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基である場合のものが好ましい。具体的に化6で示される塩基性化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド又はこれらの任意の混合物がより好ましい。
【0036】
有機スルホン酸の中和に供する有機環状塩基性化合物としては、1)ピロール、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、イミダゾール、ピラゾール、フラン、オキサゾール、イソオキサゾール、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアゾリン、チアゾリジン等の5員環を有する複素環式化合物、2)ピリジン、ピリジル、ピリジレン、ピペリジン、ピペリジル、ピリダジン、ピラジン、ピペラジン、ピリミジン、シトシン、チミン、モルホリン、チオモルホリン等の6員環を有する複素環式化合物が挙げられる。なかでも、ピロール、ピリジン又はこれらの混合物が好ましい。
【0037】
以上説明したような塩基性化合物は特級又は一級の試薬や電子材料用グレードとして市販されている物が使用できる。また中和方法それ自体については特に限定するものではなく、通常の中和方法が適用できる。
【0038】
本発明に係る有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤は、半導体製造プロセスの各工程で用いる洗浄液や表面処理液、ホトレジストプロセスの処理液、剥離液、現像液、洗浄液、及びコート剤、電池、コンデンサ及びキャパシター等の電解液や電極製造組成物、種々のコート剤、インクや塗料における顔料やカーボンブラックの分散剤、ナノテクノロジーにおけるカーボンナノチューブ、フラーレン及び金属ナノ粒子の分散剤、色素増感型太陽電池における酸化チタンの分散剤等、多くの分野において有用である。
【発明の効果】
【0039】
以上説明した本発明によると、電子、半導体及び精密加工分野等で使用可能なレベルにまで金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸を得ることができ、またこれを用いて同様に金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤を得ることができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするために実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0041】
・試験区分1:有機スルホン酸のナトリウム塩の処理
実施例1
ブチルスルホン酸ナトリウム塩50gを純水150gに溶解し、25%水溶液の試料を調製した。強酸性カチオン交換樹脂として予め1N希塩酸を用いてH型に再生しておいたアンバーライト IR−124Na(米国ローム・アンド・ハース社製の商品名)を用い、その200mlを垂直にセットした内容量300mlカラムに充填し、4000gの純水で十分に洗浄した後、24時間静置した。試料及びカラム内の水温を15〜25℃の範囲内で一定の温度に保温し、空間速度(SV)0.6で試料をカラムに通して金属イオン濃度を低減したブチルスルホン酸を得た。結果を表1に示した。
【0042】
実施例2〜145及び比較例1〜8
実施例1と同様にして実施例2〜145及び比較例1〜8を行ない、各例の有機スルホン酸を得た。各例の内容と結果を表1〜表4にまとめて示した。



【0043】
【表1】



















【0044】
【表2】
















【0045】
【表3】






【0046】
【表4】

【0047】
表1〜表4において、
〜R11:化1〜化4中の記号
SV:空間速度
IPA:2−プロパノール
Bu:1−ブタノール
EG:エチレングリコール
PG:プロピレングリコール
EL:乳酸エチル
【0048】
・試験区分2:有機スルホン酸の金属イオン濃度の測定
実施例1〜145及び比較例1〜8で得た有機スルホン酸の金属イオン濃度をファーネス原子吸光光度計:4110ZL(Perkin Elmer社製の商品名)を使用し、グラファイトファーネス式フレームレス原子化法による原子吸光分析法によって測定した。測定結果を表5〜表8にまとめて示した。
【0049】
【表5】



















【0050】
【表6】


















【0051】
【表7】












【0052】
【表8】

【0053】
・試験区分3:有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤の製造
実施例146
実施例1で得た金属イオン濃度を低減したブチルスルホン酸220gに、塩基性化合物として29%アンモニア水(関東化学製のELグレード)6.9gを攪拌しながら滴下し、pHが6.0〜8.0となるよう中和して、濃度23%のブチルスルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤を得た。
【0054】
実施例147〜289及び比較例9〜16
表13〜表16に記載の塩基性化合物を用い、実施例146と同様にして実施例147〜289及び比較例9〜16の有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤を得た。実施例146も含め、各例で用いた塩基性化合物の内容を表9〜表12にまとめて示した。
【0055】
【表9】

【0056】
【表10】

【0057】
表9及び表10において、
12〜R18:化5及び化6中の記号
【0058】
【表11】

【0059】
【表12】

【0060】
・試験区分4:有機スルホン酸アンモニウム塩の評価
・金属イオン濃度の測定
実施例146〜289及び比較例9〜16で得た有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤の金属イオン濃度を、前記の有機スルホン酸の金属イオン濃度の測定方法と同様にして測定した。結果を表13〜表16にまとめて示した。
【0061】
・分散性の評価
実施例146〜289及び比較例9〜16で得た有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤を温度50℃の恒温槽中で30日間密閉して保存した。保存前後の試料を使用して5%水溶液を調製し、300mlを500mlビーカーにとり、直径5cmの4枚羽根のインペラーを使用して100rpmで撹拌した。この水溶液中に40℃の粘度が10mm/sの鉱油を1滴添加して5分間攪拌を継続した。撹拌を止め、直後と10分後の分散性を目視で確認し、以下の基準で評価した。結果を表13〜表16にまとめて示した。
◎:直後及び10分後の双方で均一に分散しており、保存の前後による差が殆ど認められない。
○:直後及び10分後の双方で少し分離しており、保存後の方が分離がやや大きい。
×:直後及び10分後の双方で明らかに分離が認められ、保存後の方が分離が明らかに大きい。
【0062】
・耐変色性の評価
実施例146〜289及び比較例9〜16で得た有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤を温度50℃の恒温槽中で30日間密閉して保存した。保存前後の試料をイオン交換水で希釈し、JIS K0071−1に準じてハーゼン標準比色液と比較してハーゼン単位色数を測定した。ただし、ハーゼン標準比色液の中間にあるものは、中間の値を採用した。保存前後のハーゼン単位色数の差の絶対値を求め、耐変色性を以下の基準で評価した。結果を表13〜表16にまとめて示した。
◎:色数の差の絶対値が5以下
○:色数の差の絶対値が10〜15以下
×:色数の差の絶対値が20〜35以下
【0063】
【表13】

















【0064】
【表14】



















【0065】
【表15】














【0066】
【表16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化1〜化4のいずれかで示される有機スルホン酸のアルカリ金属塩を、強酸性カチオン交換樹脂を用いたイオン交換法に供し、該有機スルホン酸に対する金属イオン濃度を各金属イオン毎で200ppb以下となるように処理することを特徴とする有機スルホン酸のアルカリ金属塩の処理方法。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

(化1、化2、化3及び化4において、
:炭素数4〜24の脂肪族炭化水素基
,R:水素原子、スルホ基又は炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基
,R,R,R:水素原子、スルホ基又は炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基
,R,R10,R11:水素原子、スルホ基又は炭素数4〜18の脂肪族炭化水素基)
【請求項2】
有機スルホン酸のアルカリ金属塩を、水、炭素数1〜4の低級アルコール、炭素数2〜4のグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル及び乳酸エステルのなかから選ばれる一つ又は二つ以上の溶媒で希釈して濃度5〜40質量%の均一溶液とし、次いで空間速度が0.01〜6.0の範囲内で強酸性カチオン交換樹脂層に通液して処理する請求項1記載の有機スルホン酸のアルカリ金属塩の処理方法。
【請求項3】
溶媒が水、2−プロパノール又はこれらの混合物である請求項2記載の有機スルホン酸のアルカリ金属塩の処理方法。
【請求項4】
有機スルホン酸に対するNa、K、Ca、Mg、Mn、Fe、Al、Cu、Zn、Ni及びCrの各金属イオン濃度を100ppb以下となるように処理する請求項1〜3のいずれか一つの項記載の有機スルホン酸のアルカリ金属塩の処理方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つの項記載の有機スルホン酸のアルカリ金属塩の処理方法によって得られる金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸。
【請求項6】
請求項5記載の金属イオン濃度を低減した有機スルホン酸を、下記の化5で示される塩基性化合物、化6で示される塩基性化合物、5員環を有する有機環状塩基性化合物及び6員環を有する有機環状塩基性化合物から選ばれる一つ又は二つ以上の塩基性化合物で中和して成る有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤。
【化5】

【化6】

(化5及び化6において、
12,R13,R14,R15,R16,R17,R18:水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基)
【請求項7】
塩基性化合物が、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド及びテトラブチルアンモニウムヒドロキシドから選ばれる一つ又は二つ以上である請求項6記載の有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤。
【請求項8】
有機環状塩基性化合物がピロール、ピリジン又はこれらの混合物である請求項6記載の有機スルホン酸アンモニウム塩型界面活性剤。

【公開番号】特開2009−143842(P2009−143842A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322732(P2007−322732)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000210654)竹本油脂株式会社 (138)
【Fターム(参考)】