説明

有機デバイス構造体およびその製造方法

混合された有機層を持つことができる有機発光デバイスを提供する。このような有機発光デバイスの製造方法を提供する。第1の有機材料を溶液堆積して、パターン化された有機層を第1電極の上に形成する。溶液処理以外の手段で、第2の有機材料を第1の有機層上にこれと物理的に接触して堆積させ、第2の有機層を形成する。第2の有機層は、第1の有機層の上にブランケット層を形成する。次いで、第2電極を第2の有機層の上に堆積させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、同時に出願された特許出願第10/295,802号(整理番号第10052/3301)、および特許出願第10/295,808号(整理番号第10052/3501)に関連する。
【0002】
本発明は、有機発光デバイス(OLED)に関し、より具体的には混合された有機層を有する有機デバイス、およびこのような有機発光デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
有機材料を使用した光電子デバイスは、いくつかの理由でますます素晴らしいものになってきている。このようなデバイスを作るために使用される材料の多くが比較的安価なので、有機光電子デバイスは無機デバイスと比べてコストの点で有利になる可能性がある。さらに、可撓性などの本来の性質により、有機材料は、フレキシブル基板上への製造など特定の用途に非常に適したものになっている。有機光電子デバイスの例としては、有機発光デバイス(OLED)、有機フォトトランジスタ、有機光電池、および有機光検出器が挙げられる。OLEDについては、有機材料は従来の材料と比べて性能の点で有利な可能性がある。例えば、有機発光層が発光する波長は、一般的に、適切なドーパントを用いて容易に調整することができる。
【0004】
本明細書で用いる用語「有機」には、有機光電子デバイスの製造に使用できる高分子材料ならびに低分子の有機材料が含まれる。「低分子」とはポリマーではない任意の有機材料のことであり、「低分子」は実際上かなり大きいこともある。低分子は、ある状況では繰り返し単位を含むことがある。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いても、分子が「低分子」類から排除されることはない。低分子は、また、例えばポリマー骨格の側基としてまたは骨格の一部として、ポリマー中に組み込むこともできる。低分子は、また、コア部上に築かれた一連の化学シェルからなるデンドリマーのコア部としての役割も果たす。デンドリマーのコア部は、蛍光性または燐光性の低分子発光体とすることができる。デンドリマーは「低分子」とすることができ、OLED分野で現在使用されているすべてのデンドリマーは低分子であると思われる。
【0005】
OLEDでは、デバイスに電圧を印加すると発光する有機薄膜を使用する。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、およびバックライトなどの用途で使用され、ますます興味深い技術になってきている。一部のOLED材料および構成が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、米国特許第5,844,363号、第6,303,238号、および第5,707,745号に記載されている。
【0006】
OLEDデバイスは、一般に(いつもではない)少なくとも1つ以上の電極を通って発光するように設計されており、1つ以上の透明電極が有機光電子デバイスで有用である。例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)などの透明電極材料を下部電極として使用することができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、米国特許第5,703,436号および第5,707,745号に開示されたものなどの透明な上部電極も使用することができる。下部電極だけを通って発光するように設計されているデバイスでは、上部電極は透明である必要はなく、高い導電率を有する厚い反射金属層から作ることができる。同様に、上部電極だけを通って発光するように設計されているデバイスでは、下部電極は不透明および/または反射性であってもよい。電極を透明にする必要がない場合、層の厚みを増すと導電性を改良することができ、反射電極を使用すると、光を透明電極に向けて反射させることにより、もう一つの電極を通る発光量を増加させることができる。電極がどちらも透明な、完全に透明なデバイスも製作することができる。側面発光OLEDも製造することができる。このようなデバイスでは、一方の電極を、または両方の電極とも不透明または反射性とすることができる。
【0007】
本明細書で用いる「上部」とは基板から最も遠いことを意味し、一方「下部」とは基板に最も近いことを意味する。例えば、2つの電極を有するデバイスでは、下部電極は基板に最も近い電極であり、一般に、製造される第1の電極である。下部電極には、基板に最も近い下面と基板からより遠い上面の2つの表面がある。第1の層が第2の層の「上に配置される」と記述される場合、第1の層は基板からより遠くに配置される。第1の層が第2の層と「物理的に接触して」と明記されていない限り、第1の層と第2の層の間に他の層があることもある。例えば、間に様々な有機層があっても、陰極が陽極の「上に配置される」と記述することができる。
【0008】
OLEDの主要な目的の1つは、赤色、緑色および青色のピクセルをパターン化して堆積した、パターン化されたフルカラーフラットパネルディスプレイの実現である。気相堆積法では大面積の基板、例えば直径が約0.5メートルを超える基板にマスクを用いることは難しいので、溶液処理できる材料をインクジェット印刷して、ディスプレイをパターン化することが、大変有益であると思われる。インクジェット印刷技術は、ポリマー系の発光層を有するOLEDに使用される、溶液処理できるポリマーのパターン化に特に適していると思われる。しかしながら、このようなポリマー系システムで使用することができる材料の選択は、キャリヤー媒体として用いられる溶液が下層を溶解しないように選択されなければならないという事実によって、通常限定される。普通の選択は、正孔注入機能および正孔輸送機能を与えるためにPEDOT:PSS層を使用することである。PEDOT:PSSは水に可溶であるが、ポリマー系発光層の形成に用いられるある種の有機溶媒に不溶である。その結果、PEDOT:PSSを溶解することなしに、PEDOT:PSS上にポリマー系の層を堆積するのに溶液処理を用いることができる。
【0009】
高性能OLED、特に高性能りん光発光OLEDは、通常、それぞれが別個の機能を行ういくつかの層の存在を必要とする。これは、それぞれの層の材料を多種多様な材料から自由に選択できることが極めて望ましいということを意味する。例えば、高性能りん光発光OLEDでは、通常、陽極層と発光層の間に2つの正孔輸送層を有することが望ましい。陽極層と直接接触している第1の正孔輸送層は、主としてその平坦化特性ならびにそのより有利な正孔注入特性のために用いられる。この層は、正孔注入層(HIL)と呼ばれることがある。発光層と直接接触させることができる第2の正孔輸送層(HTL)は、通常高い正孔伝導性を有するように選択される。この層は、少なくとも部分的に、電子および/または励起子をブロックする追加の機能を持つこともできる。
【0010】
溶液処理できる材料をパターン化することによって堆積したパターン化発光層を、他の方法で堆積させた発光層と組み合わせて用いたデバイスを持つことが望ましいであろう。これにより、パターン化発光層の材料を、その溶解度特性とは無関係に広範囲の材料から選択することができ、一方他の方法で堆積させた発光層は、溶液処理で堆積させるには適切でない材料を含むことができる。このようにして、幅広い光スペクトルを発光することのできるデバイスを実現することができる。
【特許文献1】特許出願第10/295,802号
【特許文献2】特許出願第10/295,808号
【特許文献3】米国特許第5,844,363号
【特許文献4】米国特許第6,303,238号
【特許文献5】米国特許第5,707,745号
【特許文献6】米国特許第5,703,436号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
混合された有機層を持つことができる有機発光デバイスを提供する。このような有機発光デバイスの製造方法を提供する。第1電極の上にパターン化された有機層を形成するため、第1の有機材料を溶液堆積する。第2の有機層を形成するため、第2の有機材料を溶液処理以外の手段により、第1の有機層上にこれと物理的に接触させて堆積させる。第2の有機層は、第1の有機層の上にブランケット層を形成する。次いで、第2電極を第2の有機層の上に堆積させる。
【0012】
特に、本発明の実施形態は、フルカラー有機発光ディスプレイにおいて、溶解処理可能な発光材料を含む第1の有機層を堆積させ、次いで溶液処理以外の手段によって第1の有機層の上に第2の有機層を堆積させることに関する。
【0013】
より具体的には、本発明の実施形態は、フルカラー有機発光ディスプレイにおいて、溶液処理を他の堆積技術と組み合わせて用いることに関する。
【0014】
本発明の実施形態の目的は、寿命が改良された有機発光デバイスの製造方法を提供することである。りん光発光デバイスの効率が改良されると、効率と実現される寿命との実際に有益な折り合いが付けられるので、こうした寿命の改良は一意的にりん光発光デバイスで実現することができる。このメリットは一意的にりん光材料の非常に高い効率に起因すると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
一般に、OLEDは、陽極および陰極の間に堆積され、これらと電気的に接続された少なくとも1つ以上の有機層を含む。電流を流すと、有機層内に、陽極は正孔を注入し、陰極は電子を注入する。注入された正孔および電子は、それぞれ反対に帯電した電極に向かって移動する。電子と正孔が同一分子上に局在化すると、励起エネルギー状態を有する局在電子正孔対である「励起子」が形成される。光電子放出機構によって励起子が緩和すると、光が放出される。場合によっては、励起子は、エキシマーまたはエキシプレックス上に局在化してもよい。熱緩和などの非放射機構も起こることがあるが、一般に望ましくないと見なされている。
【0016】
初期のOLEDは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、米国特許第4,769,292号に開示されているような一重項状態から発光する(「蛍光」)発光性分子を使用した。一般に、蛍光発光は10ナノ秒未満の時間フレームで起こる。
【0017】
最近は、三重項から発光する(「りん光」)発光材料が実証されている。いずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、Baldo等、「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」、Nature、vol. 395、151-154頁、1998(「Baldo-I」)、およびBaldo等、「Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence」、Appl. Phys. Lett.、vol. 75、No. 3、4-6頁(1999)(「Baldo-II」)を参照されたい。りん光を「禁制」遷移と呼ぶことがある。この遷移にはスピン状態の変化が必要であり、量子力学ではこうした遷移は支持されないと示されているからである。その結果、りん光は、一般に少なくとも10ナノ秒を超え、通常100ナノ秒を超える時間フレームで起こる。りん光の自然放射寿命が長すぎると、三重項は非放射機構によって崩壊する可能性があり、その結果光が放出されない。有機りん光は、非常に低い温度で、非共有電子対を有するヘテロ原子を含有する分子でもしばしば観察される。2,2’-ビピリジンはこうした分子である。非放射崩壊機構は通常温度依存性があり、その結果液体窒素温度でりん光を呈する材料が、室温ではりん光を発光しないことがある。しかし、Baldoが実証したように、この問題は、室温でりん光を発光するりん光性化合物を選択することによって対処することができる。
【0018】
一般に、OLEDにおける励起子は、約3:1、即ち約75%の三重項と25%の一重項の比率で生成すると思われる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、Adachi等、「Nearly 100% Internal Phosphorescent Efficiency In An Organic Light Emitting Device」、J. Appl. Phys.、90、5048頁(2001)を参照されたい。多くの場合、一重項励起子は、「項間交差」によってそのエネルギーを三重項励起状態に容易に移動することができるが、一方三重項励起子は、そのエネルギーを一重項励起状態に容易に移動することができない。その結果、りん光OLEDでは理論的に100%の内部量子効率が可能である。蛍光デバイスでは、一般に三重項励起子のエネルギーはデバイスを加熱する無放射崩壊プロセスで失われるので、その結果内部量子効率ははるかに低くなる。三重項励起状態から発光するりん光材料を用いたOLEDは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、米国特許第6,303,238号に開示されている。
【0019】
りん光に先だって、そこから発光崩壊が起こる中間の非三重項状態への、三重項励起状態からの遷移が起こることがある。例えば、ランタニド元素に配位した有機分子は、しばしばランダニド金属上に局在化した励起状態からりん光を発光する。しかしながら、このような材料は、三重項励起状態から直接りん光を発光することはなく、その代わりランタニド金属イオンを中心とする原子励起状態から発光する。ユーロピウムジケトン錯体はこれらの化学種の一群を例示するものである。
【0020】
三重項からのりん光は、好ましくは結合によって、原子番号の大きい原子の直ぐ近くに有機分子を閉じ込めることにより、蛍光と比べて増強することができる。重原子効果と呼ばれるこの現象は、スピン-軌道結合として知られている機構によって生成される。このようなりん光遷移は、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)などの有機金属分子の、励起した金属-配位子電荷移動(MLCT)状態から観察される。
【0021】
図1は、有機発光デバイス100を示す。図面は必ずしも実物尺度で描かれていない。デバイス100は、基板110、陽極115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、および陰極160を含むことができる。陰極160は、第1の導電層162と第2の導電層164を有する複合陰極である。デバイス100は、上記の層をこの順に堆積させることによって製造することができる。
【0022】
基板110は、所望の構造特性をもたらす任意の適切な基板とすることができる。基板110は可撓性であっても剛性であってもよい。基板110は透明、半透明または不透明のいずれでもよい。プラスチックおよびガラスは好ましい剛性基板材料の例である。プラスチックおよび金属箔は好ましい可撓性基板材料の例である。基板110は、回路の製造を容易にするために半導体材料とすることができる。例えば、基板110は、その上に回路を製造し、引き続き基板上に堆積されるOLEDを制御することができる、シリコンウェーハとすることができる。他の基板も使用することができる。基板110の材料および厚さは、所望の構造および光学特性が得られるように選択される。
【0023】
陽極115は、正孔を有機層に輸送するのに充分な導電性を有する任意の適切な陽極とすることができる。陽極115の材料は、仕事関数が約4eVより高いことが好ましい(「高仕事関数材料」)。好ましい陽極材料としては、インジウムスズ酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AlZnO)などの導電性金属酸化物、ならびに金属が挙げられる。陽極115(および基板110)は、下部発光デバイスを製造するために、充分透明にすることができる。好ましい透明基板と陽極の組み合わせは、ガラスまたはプラスチック(基板)上にITO(陽極)を堆積させたものであり、市販されている。可撓性かつ透明な基板-陽極の組み合わせは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれた、米国特許第5,844,363号に開示されている。陽極115は、不透明および/または反射性とすることができる。反射性陽極115は、デバイスの上部からの発光量を増大させるため、一部のトップエミッション型デバイスに対しては好ましい。陽極115の材料および厚さは、所望の導電性および光学特性が得られるように選択される。陽極115が透明の場合は、所望の導電性を付与するのに充分な厚さと、所望の透明度を付与するのに充分な薄さとが必要な特定の材料では、所定の厚み範囲があることになろう。他の陽極材料および構造も使用することができる。
【0024】
正孔輸送層125は、正孔を輸送できる材料を含むことができる。正孔輸送層125は、真性(ドーピングなし)であってもよく、またはドーピングすることもできる。ドーピングは、導電性を高くするために使用することができる。α-NPDおよびTPDは、真性正孔輸送層の例である。p-ドーピングされた正孔輸送層の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれた、Forrestらの米国特許出願第10/173,682号に開示されているように、F4-TCNQをモル比50:1でドーピングしたm-MTDATAである。他の正孔輸送層も使用することができる。
【0025】
発光層135は、陽極115と陰極160の間に電流を通すと発光させることができる有機材料を含むことができる。蛍光発光材料を使用することもできるが、発光層135は、りん光発光材料を含有することが好ましい。このような材料に関連したより高い発光効率のため、りん光材料が好ましい。発光層135は、電子および/または正孔を輸送することができるホスト材料も含むことができる。ホスト材料は、光電子放出機構によって発光材料から励起子が緩和するように、電子、正孔、および/または励起子を捕捉することができる発光材料でドーピングされている。発光層135は、輸送特性と発光特性を併せ持つ単一材料を含むことができる。発光材料がドーパントであっても、あるいは主要成分であっても、発光層135は、発光材料の発光を最適化するドーパントなどの他の材料を含むことができる。発光層135は、合わせて所望の光スペクトルを発光することができる複数の発光材料を含むことができる。りん光発光材料の例としては、Ir(ppy)3が挙げられる。蛍光発光材料の例としては、DCMおよびDMQAが挙げられる。ホスト材料の例としては、Alq3、CBPおよびmCPが挙げられる。発光材料およびホスト材料の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれた、Thompsonらの米国特許第6,303,238号に開示されている。発光材料は、いくつかの方法で発光層135に含有させることができる。例えば、小さな発光分子はポリマー内に混合することができる。他の発光層材料および構造も使用することができる。
【0026】
電子輸送層145は、電子を輸送できる材料を含むことができる。電子輸送層145は、真性(ドーピングなし)であってもよく、またはドーピングすることもできる。ドーピングは、導電性を高くするために使用することができる。Alq3は、真性正孔輸送層の例である。n-ドーピングされた電子輸送層の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれた、Forrestらの米国特許出願第10/173,682号に開示されているように、Liをモル比1:1でドーピングしたBPhenである。他の電子輸送層も使用することができる。
【0027】
電子輸送層の電荷運搬成分は、陰極から電子輸送層のLUMO(最低非占有分子軌道)準位に電子を効率的に注入することができるように選択することができる。「電荷運搬成分」は、実際に電子を輸送するLUMOのベースとなる材料である。この成分は、ベースの材料でもよく、あるいはドーパントでもよい。有機材料のLUMO準位は、一般にこの材料の電子親和力によって特徴づけることができ、陰極の相対的な電子注入効率は、一般に陰極材料の仕事関数で特徴づけることができる。このことは、電子輸送層および隣接する陰極の好ましい特性は、ETLの電荷運搬成分の電子親和力および陰極材料の仕事関数で特定することができることを意味する。特に、高い電子注入効率を実現するためには、陰極材料の仕事関数は電子輸送層の電荷運搬成分の電子親和力より、約0.75eVを超えて高くないことが好ましく、約0.5eVを超えて高くないことがより好ましい。電子輸送層の電荷運搬成分の電子親和力が陰極材料の仕事関数より高いことが特に好ましい。同様の配慮は電子が注入されるいかなる層にも適用される。
【0028】
陰極160は、陰極160が電子を伝導することができ、これをデバイス100の有機層に注入することができるように、当分野で公知の任意の適切な材料または材料の組み合わせとすることができる。陰極160は、透明または不透明であってもよく、反射性でもよい。金属および金属酸化物は適切な陰極材料の例である。陰極160は、単一層であってもよく、複合構造であってもよい。図1は、薄い金属層162およびより厚い導電性金属酸化物層164を有する複合陰極160を示す。複合陰極では、より厚い層164の好ましい材料としては、ITO、IZO、および当分野で公知の他の材料が挙げられる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれた、米国特許第5,703,436号および第5,707,745号は、Mg:Agなどの薄い金属層と、その上層のスパッタ堆積した透明導電性ITO層とを有する複合陰極を含んだ陰極の例を開示している。下層の有機層と接触している陰極160の部分は、この部分が単一層陰極160であっても、複合電極の薄い金属層162であっても、あるいは何らかの他の部分であっても、約4eV未満の仕事関数を有する材料(「低仕事関数材料」)からなることが好ましい。他の陰極材料および構造を使用することもできる。
【0029】
阻止層は、発光層から出て行く電荷キャリヤー(電子または正孔)および/または励起子の数を減らすために使用することができる。電子阻止層130は、発光層135と正孔輸送層125の間に配置され、発光層135から正孔輸送層125の方向へ出て行く電子をブロックすることができる。同様に、正孔阻止層140は、発光層135と電子輸送層145の間に配置され、発光層135から電子輸送層145の方向へ出て行く正孔をブロックすることができる。阻止層は、また、励起子が発光層から外へ拡散するのをブロックするのに用いることもできる。阻止層の理論および使用は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれた、米国特許第6,097,147号およびForrestらの米国特許出願第10/173,682号に記載されている。
【0030】
一般に、注入層は、電極または有機層などの1つの層から隣接する有機層への電荷キャリヤーの注入を改良することができる材料からなる。注入層は、電荷輸送機能も行うことができる。デバイス100では、正孔注入層120は、陽極115から正孔輸送層125への正孔の注入を改良する任意の層とすることができる。CuPcは、ITO陽極115および他の陽極からの正孔注入層として使用することができる材料の一例である。デバイス100では、電子注入層150は、電子輸送層145への電子の注入を改良する任意の層とすることができる。LiF/Alは、隣接層から電子輸送層への電子注入層として使用することができる材料の一例である。他の材料または材料の組み合わせも注入層として使用することができる。特定のデバイスの構成に応じて、注入層は、デバイス100で示したものとは異なる場所に配置することができる。注入層の別の例が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれた、Luらの米国特許出願第09/931,948号に記載されている。正孔注入層は、スピンコートポリマー、例えばPEDOT:PSSなどの溶液堆積材料を含むことができ、あるいは気相堆積低分子材料、例えばCuPcまたはMTDATAとすることができる。
【0031】
正孔注入層(HIL)は、陽極から正孔注入材料への効率的な正孔注入をもたらすように、陽極表面を平坦化またはウェットにすることができる。正孔注入層は、HOMO(最高占有分子軌道)エネルギー準位を有する電荷運搬成分を持つこともできる。このエネルギー準位は、本明細書記載の相対イオン化ポテンシャル(IP)エネルギーで定義されるように、HILの片側に隣接する陽極層、およびHILの反対側の正孔輸送層と好適に適合するものである。「電荷運搬成分」は、実際に正孔を輸送するHOMOのベースとなる材料である。この成分は、HILのベースの材料でもよく、あるいはドーパントでもよい。ドーピングされたHILを用いることにより、ドーパントをその電気特性で選択し、ホストをぬれ性、可撓性、靭性などの形態学的特性で選択することができる。HIL材料の好ましい特性は、正孔を陽極からHIL材料内へ効率的に注入することができることである。特に、HILの電荷運搬成分のIPは、陽極材料のIPより約0.7eVを超えて高くないことが好ましい。電荷運搬成分のIPは、陽極材料より約0.5eVを超えて高くないことがより好ましい。同様の配慮は正孔が注入されるどの層にも適用される。HIL材料は、従来の正孔輸送材料の正孔伝導度より実質的に低い正孔伝導度を持つことができるので、こうしたHIL材料は、通常OLEDの正孔輸送層に用いられる従来の正孔輸送材料からさらに区別される。本発明のHILの厚みは、陽極面を平坦化またはウェットにするのに役立つように充分厚くすることができる。例えば、非常に平滑な陽極面では10nmほどの薄いHIL厚みも許容できる。しかしながら、陽極面は非常に粗くなりやすいので、場合により50nmまでのHIL厚みが望ましい可能性がある。
【0032】
保護層は、その後の製造プロセス中、下層を保護するのに用いることができる。例えば、金属または金属酸化物の上部電極の製造に用いられるプロセスは、有機層を損傷する恐れがあり、保護層を用いてこうした損傷を減少または排除することができる。デバイス100では、保護層155は、陰極160の製造中、下層の有機層への損傷を減少することができる。保護層は、この層がデバイス100の動作電圧を著しく高くしないように、この層が輸送するキャリヤーの種類(デバイス100では電子)について、高いキャリヤー移動度を有することが好ましい。CuPc、BCP、および様々な金属フタロシアニンは、保護層に使用することができる材料の例である。他の材料および材料の組み合わせも使用することができる。保護層155の厚さは、有機保護層155を堆積した後で行う製造プロセスによって、下層がほとんどまたはまったく損傷しないように充分厚いことが好ましいが、デバイス100の動作電圧を著しく増大させるほど厚くしないことが好ましい。保護層155は、ドーピングしてその導電性を高めることができる。例えば、CuPcまたはBCP保護層155はLiでドーピングすることができる。保護層のより詳細な説明は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれた、Luらの米国特許出願第09/931,948号に記載されている。
【0033】
図2は、反転OLED200を示す。このデバイスは、基板210、陰極215、発光層220、正孔輸送層225、および陽極230を含む。デバイス200は、上記の層をこの順に堆積することによって製造することができる。最も普通のOLED構成では陰極が陽極の上に配置されており、デバイス200では陰極215が陽極230の下に配置されているので、デバイス200は「反転」OLEDと呼ばれることがある。デバイス100に関して説明したものと同様の材料を、デバイス200の相当する層でも用いることができる。図2は、デバイス100の構造から一部の層を取り除く方法の一例を提供する。
【0034】
図1および2に示した単純な層構造は、非限定的な実施例を介して提供することができ、また本発明の実施形態を様々な他の構造と関連させて用いることができることが分かる。記載の特定の材料および構造は本質的に例示的なものであり、他の材料および構造も使用することができる。種々記載された様々な層を結合させることによって機能的OLEDを実現することができる。あるいは設計、性能、およびコスト要因に基づいて複数の層を完全に削除することもできる。特に記載されていない他の層を含めることもできる。具体的に記載された材料以外の材料を使用することもできる。本明細書に提供された実施例の多くは、様々な層が単一の材料を含むと記載されているが、ホストとドーパントの混合物などの材料の組み合わせ、あるいはより一般的に混合物を使用することもできることを理解されたい。また、これらの層は様々な副層を持つこともできる。本明細書の様々な層に与えられた名称は、厳密に限定することを目的とするものではない。例えばデバイス200では、正孔輸送層225は正孔を輸送し、正孔を発光層220に注入する。したがって、正孔輸送層または正孔注入層と説明することができる。一実施形態では、OLEDは、陰極と陽極の間に配置された「有機層」を有すると説明することができる。この有機層は、単一層を含むこともでき、あるいは、例えば図1および2に関して説明したように、異なる有機材料の複数層をさらに含むこともできる。
【0035】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれた、Friendらの米国特許第5,247,190号に開示されたような高分子材料(PLED)からなるOLEDなど、具体的記載のない構造および材料も用いることができる。別の例を介して、単一有機層を有するOLEDも使用することができる。OLEDは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれた、Forrestらの米国特許第5,707,745号に記載されたように積層することができる。このOLED構造は、図1および2に示した単純な層構造から外れているかもしれない。例えば、基板は、何れも参照によりその全体が本明細書に組み込まれた、Forrestらの米国特許第6,091,195号に記載されているようなメサ構造、および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号に記載されているようなピット構造など、アウトカップリングを改良するための傾斜した反射面を含むことができる。
【0036】
具体的な指示がない限り、様々な実施形態のどの層も任意の適切な方法で堆積させることができる。有機層については、好ましい方法としては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれた、米国特許第6,013,982号および第6,087,196号に記載されたような熱蒸着、インクジェット、参照によりその全体が本明細書に組み込まれた、Forrestらの米国特許第6,337,102号に記載されたような有機気相堆積(OVPD)、および参照によりその全体が本明細書に組み込まれた、米国特許出願第10/233,470号に記載されたような有機気相ジェット印刷(OVJP)による堆積が挙げられる。他の適切な堆積方法としては、スピンコーティングおよびその他の溶液系プロセスが挙げられる。溶液系プロセスは、窒素または不活性雰囲気で行うことが好ましい。その他の層については、好ましい方法としては熱蒸着が挙げられる。好ましいパターン形成方法としては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれた、米国特許第6,294,398号および第6,468,819号に記載されたようなマスクを通した堆積、常温圧接、およびインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連したパターン形成が挙げられる。その他の方法も使用することができる。堆積される材料は、この材料が特定の堆積方法に適合するようにこれを改質することができる。例えば、分枝または非分枝のアルキル基およびアリール基などの置換基、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むものを低分子に使用して、これらが溶液処理に耐える能力を高めることができる。炭素20個以上を有する置換基も使用することができる。3〜20個の炭素が好ましい範囲である。非対称の材料は再結晶化する傾向が低いので、非対称構造を有する材料は対称構造を有するものより溶液処理性が優れている。デンドリマーの置換基を用いて、低分子が溶液処理に耐える能力を高めることができる。
【0037】
本発明の実施形態に従って製造されたデバイスは、フラットパネルディスプレイ、コンピュータモニター、テレビ、大型屋外広告板、屋内または屋外照明および/または信号用の光、ヘッドアップディスプレイ、完全透明ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンター、電話機、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)、ノートパソコン、デジタルカメラ、カメラ一体型ビデオ、ビューファインダ、マイクロディスプレイ、自動車、壁、劇場または競技場の大面積スクリーン、あるいは標識を含めた様々な消費者製品に組み込むことができる。パッシブマトリックスおよびアクティブマトリックスを含めた様々な制御機構を用いて、本発明に従って製造されたデバイスを制御することができる。多くのデバイスは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)などの人間にとって快適な温度範囲で使用するためのものである。
【0038】
本発明に記載の材料および構造は、OLED以外のデバイスにも使用することができる。例えば、有機太陽電池および有機光検出器などの他の光電子デバイスもこの材料および構造を使用することができる。より一般には、有機トランジスタなどの有機デバイスは、この材料および構造を使用することができる。
【0039】
図3は、正孔輸送層の上にこれと物理的に接触して、パターン化された発光層を溶液堆積した、本発明の実施形態を示す。デバイス300は、基板310の上に製造される。基板310には、陽極320を塗布する。基板および陽極層は、任意の適切な材料から選択することができる。次いで、正孔輸送層330およびドーピングされていない発光性ホスト材料の層340をこの順で陽極320の上に堆積する。
【0040】
次いで、層340の上にこれと物理的に接触して、発光領域351および352をさらに含むパターン化発光層を溶液処理によって堆積する。次いで、別の発光層360を溶液処理以外の手段によって堆積して、発光領域351および352を含むパターン化発光層の上にこれと物理的に接触してブランケット層を形成する。発光層360は、陰極383の下に配置された活性領域353を含む。この領域は、デバイスを動作させたとき、層360の発光する領域になる。発光層360には、任意の適切な材料を使用することができる。例えば、発光層360は、熱気相堆積などの手段によって堆積することができる。それぞれ赤色、緑色、および青色の発光材料を含む領域351、352、および360を堆積することによって、フルカラーディスプレイを製造することができる。
【0041】
領域351および352などのいくつかの発光領域を溶液堆積させ、次いで別の技術で層360などの別の発光層をブランケット堆積させることによって、溶液処理および第2の技術の利点の多くが得られる。例えば、インクジェット印刷を用いて領域351および352を堆積させることにより、比較的安価な技術で優れた解像度のパターン形成を実現することができる。次いで、層360を、熱気相堆積または有機気相堆積などの非溶液系技術によってブランケット堆積させることができる。これにより層360では、溶液系技術に伴うどんな欠点も回避される。しかし、溶液系プロセスに伴う安価なパターン形成を保持することができる。領域351および352が存在しないところだけで層360が発光するように材料を選択することによって、ブランケット堆積されたとしても、層360には効果的にパターンが形成される。したがって、シャドウマスクまたは非溶液系技術に伴うその他のパターン形成技術を使用することなく、層360を堆積することができる。
【0042】
多くのデバイスでは、少なくとも1つ以上の発光材料を気相プロセスで製法することが有利であると思われる。特に、りん光発光材料、青色発光材料、特に青色発光りん光材料は、青色発光材料のバンドギャップが広いために、および/またはりん光材料の励起子の寿命が長いために、溶液処理の結果導入される不純物の影響を特に受けやすいと思われる。一実施形態では、赤色および緑色発光りん光材料を溶液処理によってパターン形成領域内に堆積し、次いで青色りん光材料を非溶液系プロセスによってブランケット堆積することができる。別の実施形態では、赤色および緑色発光蛍光材料を溶液処理によってパターン形成領域内に堆積し、次いで青色蛍光材料を非溶液系プロセスによってブランケット堆積することができる。別の実施形態では、発光蛍光材料を溶液系プロセスによって堆積し、次いでりん光材料を非溶液系プロセスによってブランケット堆積することができる。発光層360の堆積に溶液処理以外の技術を用いることによって、層360について溶液処理の欠点を回避することができる。具体的に説明されていないその他の実施形態も実行することができる。
【0043】
次いで、発光層360の上に電子輸送層370を堆積する。そして、電子輸送層370の上に陰極381、382、および383を堆積する。基板310、陽極320、正孔輸送層330、電子輸送層370、および陰極380には、任意の適切な材料および堆積技術を用いることができる。一実施形態では、領域351および352を除くすべての有機層を、気相堆積などの非溶液系プロセスによって堆積する。別の実施形態では、複数の層を溶液堆積することができる。
【0044】
図3の実施形態では、層340、351、352、および360には、電子移動度より著しく高い正孔移動度を有するホスト材料を選択することが望ましいと思われる。このような材料では、大部分の再結合および励起子形成は、発光ドーパントが最も濃縮されやすい、層340、領域351、352、および360の上部近くで行われると思われる。さらに、電荷キャリヤーおよび/または励起子を捕捉する発光ドーパントを使用することが望ましい。その結果、キャリヤーおよび励起子は、他の層、または充分な発光ドーパントを含んでいない層340、領域351、352、および360の部分に漏れることができない。
【0045】
図3の実施形態に記載の方法は、図3に関して説明した特定の層に限定されるものではない。例えば、具体的に説明していない層を含めることもでき、説明した層を除外することもでき、かつ層の順序を変えることもできる。
【0046】
本明細書に記載の溶液処理方法は、1つのデバイスで複数回使用することができ、これらを組み合わせることもできる。例えば、正孔注入層および正孔輸送層を製造し、次いでパターン化発光層を溶液堆積し、引き続き、図3に関して説明したように、別の発光層を熱気相堆積することができる。
【0047】
本明細書で用いる「溶液処理可能」とは、溶液もしくは懸濁液の形態で、液体媒体に溶解もしくは分散できること、または液体媒体で輸送できること、および/あるいは液体媒体から堆積できることを意味する。
【0048】
本明細書に記載の様々な実施形態は、実施例として示しただけであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことは言うまでもない。例えば、本明細書に記載の材料および構造の多くは、本発明の精神を逸脱することなく、他の材料および構造で置き換えることができる。本発明が機能する理由に関する様々な理論は、限定を意図するものではないことは言うまでもない。例えば、電荷移動に関する理論は限定を意図するものではない。
【0049】
材料の定義
本明細書で用いる略語は以下の材料を意味する。
CBP: 4,4'-N,N-ジカルバゾール-ビフェニル
m-MTDATA: 4,4',4"-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン
Alq3: 8-トリス-ヒドロキシキノリンアルミニウム
Bphen: 4,7-ジフェニル-l,l0-フェナントロリン
n-BPhen: n-ドープBPhen (リチウムをドーピング)
F4-TCNQ: テトラフルオロ-テトラシアノ-キノジメタン
p-MTDATA: p-ドープm-MTDATA (F4-TCNQをドーピング)
Ir(ppy)3: トリス(2-フェニルピリジン)-イリジウム
Ir(ppz)3: トリス(1-フェニルピラゾロト,N,C(2')イリジウム(III)
BCP: 2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン
TAZ: 3-フェニル-4-(1'-ナフチル)-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール
CuPc: 銅フタロシアニン
ITO: インジウムスズ酸化物
NPD: ナフチル-フェニル-ジアミン
TPD: N,N=-ビス(3-メチルフェニル)-N,N =-ビス-(フェニル)-ベンジジン
BAlq: アルミニウム(III)ビス(2-メチル-8-キノリナト)4-フェニルフェノラート
mCP: 1,3-N,N-ジカルバゾール-ベンゼン
DCM: 4-(ジシアノエチレン)-6-(4-ジメチルアミノスチリル-2-メチル)-4H-ピラン
DMQA: N,N'-ジメチルキナクリドン
PEDOT:PSS : ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホネート(PSS)の水性分散液
【0050】
特定の実施例および好ましい実施形態に関して本発明を説明したが、本発明はこれらの実施例および実施形態に限定されないことは言うまでもない。したがって、当分野の技術者には明らかなように、本発明の請求範囲には、本明細書記載の特定の実施例および好ましい実施形態からの変形物も含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】分離した電子輸送層、正孔輸送層および発光層、ならびに複数の他の層を有する有機発光デバイスを示す図である。
【図2】分離した電子輸送層を持たない反転有機発光デバイスを示す図である。
【図3】第2の有機層と物理的に接触した第1の溶液堆積有機層を有する有機発光デバイスを示す図である。
【符号の説明】
【0052】
100, 200, 300 有機発光デバイス
110, 210, 310 基板
120 正孔注入層
125, 225, 330 正孔輸送層
130 電子阻止層
135, 220, 360 発光層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極と、
前記下部電極の上に配置されており、第1の光スペクトルを発光することができる第1の領域を含むパターン化された第1の有機層と、
前記下部電極の上に配置されており、第2の光スペクトルを発光することができ、前記第1の有機層の上にこれと物理的に接触して配置された第2の有機層と、
前記第2の有機層の上に配置された上部電極とを含む有機発光デバイス。
【請求項2】
前記パターン化された第1の有機層が、第3の光スペクトルを発光することができる第2の領域をさらに含む請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項3】
前記第1、第2、および第3の光スペクトルが、それぞれ異なるものである請求項2に記載の有機発光デバイス。
【請求項4】
前記第1の光スペクトルが、赤色である請求項2に記載の有機発光デバイス。
【請求項5】
前記第2の光スペクトルが、青色である請求項2に記載の有機発光デバイス。
【請求項6】
前記第3の光スペクトルが、緑色である請求項2に記載の有機発光デバイス。
【請求項7】
前記第1の有機層が、溶液処理で堆積されたものである請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項8】
前記溶液処理が、インクジェットによるものである請求項7に記載の有機発光デバイス。
【請求項9】
前記第2の有機層が、熱気相堆積で堆積されたものである請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項10】
前記上部電極が、インジウムスズ酸化物を含む請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項11】
前記上部電極および下部電極が、前記有機層に電気的に接続されている請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項12】
前記第1の有機層が正孔輸送層であり、前記第2の有機層が発光層である請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項13】
前記第2の有機層が、発光材料の純物質層を含む発光層である請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項14】
前記下部電極と前記第1の有機層の間に配置された第3の有機層をさらに含む請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項15】
前記第3の有機層が正孔輸送層であり、前記第1の有機層が発光層である請求項14に記載の有機発光デバイス。
【請求項16】
前記第3の有機層が正孔注入層であり、前記第1の有機層が発光層である請求項14に記載の有機発光デバイス。
【請求項17】
前記第3の有機層が電子阻止層であり、前記第1の有機層が発光層である請求項14に記載の有機発光デバイス。
【請求項18】
前記下部電極と前記第3の有機層の間に配置された第4の有機層をさらに含む請求項14に記載の有機発光デバイス。
【請求項19】
前記第4の有機層が正孔輸送層であり、前記第3の有機層が電子阻止層である請求項18に記載の有機発光デバイス。
【請求項20】
下部電極を基板の上に堆積させる工程と、
第1の光スペクトルを発光することができるパターン化された第1の有機層を、前記下部電極の上に堆積させる工程と、
前記下部電極の上に配置されて、第2の光スペクトルを発光することができる第2の有機層を、前記第1の有機層の上にこれと物理的に接触させて堆積させる工程と、
上部電極を前記第2の有機層の上に堆積させる工程とを含む有機発光デバイスの製造方法。
【請求項21】
下部電極を基板の上に堆積させる工程と、
第1の領域が第1の光スペクトルを発光することができ、第2の領域が第3の光スペクトルを発光することができる2つの領域を含むパターン化された第1の有機層を、前記下部電極の上に堆積させる工程と、
第2の光スペクトルを発光することができる第2の有機層を、前記第1の有機層および前記下部電極の上に堆積させる工程と、
上部電極を前記第2の有機層の上に堆積させる工程とを含む有機発光デバイスの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−506791(P2006−506791A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553599(P2004−553599)
【出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/036170
【国際公開番号】WO2004/047196
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(503055897)ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション (61)
【Fターム(参考)】