説明

有機ハロゲン化合物の無害化処理方法

【課題】 タール成分によって油水分離の操作が阻害される虞も少なく、無害化処理を円滑に行いうる有機ハロゲン化合物の無害化処理方法を提供する。
【解決手段】 絶縁油中で有機ハロゲン化合物とアルカリ金属とを反応させる反応工程と、前記反応工程にて生成した前記絶縁油中のハロゲン化アルカリ金属塩を水に抽出させるべく、前記反応工程を経た前記絶縁油に水を混合する水和工程と、該水和工程を経た前記絶縁油から水を分離し除去する油水分離工程とを備える有機ハロゲン化合物の無害化処理方法であって、前記油水分離工程の前に、前記水和工程にて混合する水によって生成しうる前記絶縁油中成分の加水分解物を酸の添加により水中に溶存させる酸添加工程と、該酸添加工程により水中に溶存した前記加水分解物を塩析により固形分として析出させる塩析工程とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機ハロゲン化合物の無害化処理方法に関し、詳しくは、絶縁油中で有機ハロゲン化合物とアルカリ金属とを反応させる反応工程を備えた有機ハロゲン化合物の無害化処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリ塩化ビフェニル(以下、「PCB」という場合がある。)類、ダイオキシン類等の有機ハロゲン化合物は、環境汚染物質として知られており、近年、これらの有機ハロゲン化合物を如何に安全に処理するかが問題となっている。特に、PCBは、非常に化学的に安定しており分解され難く、しかも、絶縁性(電気抵抗)が高いことから、従前においてはトランスやコンデンサー等の絶縁材料や熱媒体等として頻繁に用いられていたため、従前から使用されていたものに対して如何に処理するかが大きな問題となっている。
【0003】従来、この種の有機ハロゲン化合物、特にPCBの無害化処理方法としては、絶縁油中で有機ハロゲン化合物とアルカリ金属とを反応させて脱ハロゲン化を行う反応工程と、反応工程を経て、脱ハロゲン化合物(有機ハロゲン化合物が脱ハロゲン化された化合物)、ハロゲン化アルカリ金属等を含む絶縁油に水を混合し、絶縁油中に存在するハロゲン化アルカリ金属塩を水に抽出させる水和工程と、水和工程後に、脱ハロゲン化合物を含む絶縁油から、ハロゲン化アルカリ金属塩が溶存した水を分離し除去する油水分離工程とを備える方法が採用されている。尚、この方法に於いて、油水分離工程後には、通常、絶縁油及び水をそれぞれ別々に処理し、それぞれ最終的に廃棄したり回収したりしている。
【0004】ところで、上記従来の方法に於いては、水和工程の後に、絶縁油と水との界面(例えば、静置により油層と水層に分離させた場合には、油層と水層の界面)に絶縁油成分由来の粘性の高いタール成分の発生する場合がある。特に、絶縁油が古く劣化している場合には、前記タール成分が多量に発生する場合がある。そして、このタール成分は、油水分離工程を行う際、その高い粘性によって油水分離を行う槽内壁面に付着したり、分離した後の絶縁油及び水を槽外へ排出するための配管等を閉塞したりするなど、油水分離の操作を阻害し、無害化処理を円滑に行えないという問題を引き起こしている。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】そこで、上記従来の問題点に鑑み、本発明は、タール成分によって油水分離の操作が阻害される虞も少なく、無害化処理を円滑に行いうる有機ハロゲン化合物の無害化処理方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記従来の問題点に鑑み鋭意検討した結果、絶縁油には、経時的な酸化により形成されるエステル等の酸素含有成分が含まれており、特に、古く劣化した絶縁油にはより多くの酸素含有成分が含まれており、この酸素含有成分が水の存在下に加水分解され、油と水との境界域にアルカリ金属を中心とした粘性の高いミセルを形成し、これによって、タール成分が生成することを発見した。そして、更に検討を重ねた結果、下記手段により上記課題が解決されることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】即ち、本発明に係る有機ハロゲン化合物の無害化処理方法は、絶縁油中で有機ハロゲン化合物とアルカリ金属とを反応させる反応工程と、前記反応工程にて生成した前記絶縁油中のハロゲン化アルカリ金属塩を水に抽出させるべく、前記反応工程を経た前記絶縁油に水を混合する水和工程と、該水和工程を経た前記絶縁油から水を分離し除去する油水分離工程とを備える有機ハロゲン化合物の無害化処理方法であって、前記油水分離工程の前に、前記水和工程にて混合する水によって生成しうる前記絶縁油中成分の加水分解物を酸の添加により水中に溶存させる酸添加工程と、該酸添加工程により水中に溶存した前記加水分解物を塩析により固形分として析出させる塩析工程とを備えることを特徴とする。
【0008】斯かる方法によれば、酸添加工程にて、タール成分の主成分たる絶縁油中成分の加水分解物を水中に溶存させることにより、タール成分の生成を抑制し、又は一旦生成したタール成分を分解することができ、しかも、その後の塩析工程により、前記加水分解物を粘性の低下した固形分として析出させることができるので、油水分離工程にて、タール成分が油水分離を行う槽内の内壁面に付着したり、その後の配管を閉塞したりするなど、タール成分によって、油水分離操作が阻害される虞が低減し、有機ハロゲン化合物の無害化処理を円滑に行うことができる。
【0009】本発明に於いては、前記酸添加工程は、水和工程の後に備えられ、該酸添加工程は、静置により前記絶縁油と前記水とを油層と水層とに層分離させた状態にて前記酸の添加を行う工程であるのが好ましい。斯かる方法によれば、静置により油層と水層とに層分離させた状態にて、タール成分の生成が十分に確認できるので、該タール成分を十分に消失又は低減させるように酸の添加を行うことができ、タール成分を十分に消失又は低減させるために必要とされる量の酸を確実に添加することができる。
【0010】本発明に於いては、前記塩析工程の後、前記油水分離工程の前に、前記固形分を濾過により除去する濾過工程を備えることが好ましい。塩析により析出した固形分は、タール成分に比して粘性が低いため、濾過用の目孔を閉塞する虞も無く、濾過によって簡便に分離除去することができると共に、後の油水分離をより一層容易に行うことができる。
【0011】本発明に於ける絶縁油としては、例えば、柱上トランス等に使用されていた絶縁油を挙げることができ、好ましくは、JIS C 2320 1種の鉱油、より好ましくは、同種2号のトランス油を挙げることができる。酸としては、無機酸が好ましく、無機酸としては、希塩酸、希硫酸等の前記加水分解物を水中に溶存させうる強酸を挙げることができる。有機ハロゲン化合物としては、例えば、PCB、ダイオキシン類、ハロゲンを有するジベンゾフラン類、ポリ塩化ベンゼン、塩化メチレン或いはこれらに含まれる塩素原子が臭素原子に置換された臭素化物等の有害な有機ハロゲン化合物を挙げることができる。PCBとしては、コンデンサー、トランス等の電気機器に使用されていたPCBや柱上トランスにて使用されていた絶縁油中に存在するPCBを挙げることができる。また、アルカリ金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム等を挙げることができ、中でも反応速度、取扱いの容易さからナトリウムが好ましい。これらのアルカリ金属は、通常、有機ハロゲン化合物中のハロゲン原子1原子モルに対して1〜50倍当量(化学当量の1〜50倍)、好ましくは、2〜20倍当量用いられる。また、これらのアルカリ金属は、通常、分散媒に分散されたアルカリ金属分散体の状態で使用される。分散媒としては、好ましくは絶縁油が使用され、より好ましくはJIS C 2320 1種の鉱油、特に、同種2号のトランス油が使用される。アルカリ金属分散体のアルカリ金属濃度としては、5〜50%程度が好ましく、アルカリ金属の平均粒子径としては、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。尚、平均粒子径は、顕微鏡測定法により測定される。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、PCBの無害化処理方法を例に取り、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0013】図1は、本実施形態に於けるPCBの無害化処理方法及びその装置を示す概略フロー図である。先ず、本実施形態のPCBの無害化処理方法を実施する装置について説明する。
【0014】該装置は、反応槽10を有し且つ反応槽10内にて絶縁油中のPCBとナトリウムとを反応させる反応部1と、反応部1を経た絶縁油を貯留する貯留槽21を有し且つ貯留槽21内の絶縁油から反応生成物たる塩化ナトリウムを抽出除去するアルカリ金属塩除去部20とを備えて構成されている。前記反応部1は、PCB含有絶縁油と、ナトリウム分散体と、水素供与体たるイソプロピルアルコールとを反応槽10に供給しうるように構成されている。
【0015】前記アルカリ金属塩除去部20は、貯留槽21内の絶縁油から塩化ナトリウム及び未反応のアルカリ金属(ナトリウム)を抽出すべく、貯留槽21内に水を供給することにより、絶縁油に水を混合する水和部2と、絶縁油中成分のアルカリ加水分解物を水に溶存させるべく、貯留槽21に希塩酸を供給することにより、絶縁油及び水和部2にて供給された水に希塩酸を添加する酸添加部3と、水に溶存したアルカリ加水分解物を固形分として析出させるべく、前記貯留槽21に塩化ナトリウムを供給することにより塩析を行う塩析部4と、塩析により析出した固形分を濾過により絶縁油及び水から分離除去する濾過部6と、固形分の除去された絶縁油及び水を、静置により油層と水層とに層分離させた状態から水を分離し除去する油水分離部5とを備えて構成されている。尚、油水分離部5により水の除去された残存油、即ち、脱塩素化合物たるビフェニルを含む絶縁油は、貯留槽21から排出され、周知の方法でビフェニルが取り除かれ、後処理が施されて廃棄又は回収されるように構成されている。
【0016】次に、上記装置を用いたPCBの無害化処理方法について説明する。本実施形態のPCBの無害化処理方法は、絶縁油中でPCBとナトリウムとを反応させる反応工程1と、反応工程1にて生成した前記絶縁油中の塩化ナトリウムを水に抽出させるべく、反応工程1を経た絶縁油に水を混合する水和工程2と、水和工程2を経た前記絶縁油から水を分離し除去する油水分離工程5とを備えてなり、更に、油水分離工程5の前に、前記水和工程2にて混合する水によって生成しうる前記絶縁油中成分の加水分解物を酸の添加により水中に溶存させる酸添加工程3と、該酸添加工程3により水中に溶存した前記加水分解物を塩析により固形分として析出させる塩析工程4と、塩析工程4の後に前記固形分を濾過により分離除去し回収する濾過工程6とをそれぞれ備えてなる。
【0017】以下、各工程について、更に詳述する。
〈反応工程1〉先ず、反応部1にて、予め反応に必要な化学当量より過剰のナトリウム分散体を入れた反応槽10に、PCB含有絶縁油と水素供与体とを供給し、反応熱を利用して、所定の温度になるまで加熱する。尚、PCB含有絶縁油としては、柱上トランス等から取り出されたPCBを含有する絶縁油や、トランスやコンデンサーから取り出されたPCBを希釈油たる絶縁油(JIS C 2320の鉱油)で希釈することにより調製したもの等を挙げることができる。ナトリウム分散体の分散媒としては、PCB含有絶縁油と同種の絶縁油を使用する。
【0018】斯かる操作により、PCBとナトリウムとは、円滑に絶縁油中で反応する。このとき、脱塩素化合物たるビフェニルラジカルは、イソプロピルアルコールから水素の供与を受けることにより、ビフェニルとして安定化され、その結果、ビフェニルの重合が抑制される。尚、反応後には、絶縁油中に、反応生成物たる塩化ナトリウム、ナトリウムアルコラート、ビフェニル、未反応のナトリウムが残存する。
【0019】<水和工程2>反応工程1後、反応槽10内の塩化ナトリウム等を含む絶縁油を貯留槽21に供給する。次いで、水和部2にて貯留槽21に水を供給することにより、絶縁油に水を混合する。斯かる操作により、絶縁油中に含まれる塩化ナトリウム、ナトリウムアルコラートが水に抽出され、未反応のナトリウムが水に分解されて抽出される。また、経時的な酸化によって絶縁油中に含まれている絶縁油成分たるエステル等が、未反応のナトリウムと水との存在下、アルカリ加水分解され、アルカリ加水分解物(カルボン酸、通常、水に溶けうる程度の低級脂肪酸)が生成する。次いで、絶縁油と水の混合液を静置することにより、油層と水層とを層分離させる。このとき、アルカリ加水分解物は、油層と水層との界面において、ナトリウムイオンを中心として周囲にカルボン酸イオンの配列した、タール成分たる粘性の高いミセルを形成する。
【0020】〈酸添加工程3〉次いで、酸添加部3にて、ミセルを水中に溶存させるべく、貯留槽21に希塩酸を添加する。尚、希塩酸の添加は、ミセルが完全に消失するまで行う。具体的には、水のpHが1〜6になるまで添加する。斯かる操作により、タール成分たるミセルは十分に分解され、アルカリ加水分解物は、カルボン酸又はカルボン酸イオンとなって水中に十分に溶存することになる。従って、塩析工程及び濾過工程において、タール成分を殆ど含まない状態で、固形分のみを効率よく析出させ、回収することができる。尚、アルカリ加水分解物の溶存により、水は白濁する。
【0021】〈塩析工程4〉次いで、水中に溶存したアルカリ加水分解物を固形分として析出させるべく、塩析部4にて塩化ナトリウムを貯留槽21に添加することにより、塩析を行う。斯かる操作により、水中に溶存したアルカリ加水分解物は、ミセルよりも粘性の低い固形分(カルボン酸ナトリウム)として、主に油層と水層との界面に析出する。
【0022】〈濾過工程6〉次いで、貯留槽21内の絶縁油及び水から塩析工程4により析出した固形分を、濾過部6にて濾過することにより取り除く。例えば、塩析後の固形分を含む絶縁油と水との混合液を貯留槽21の外部に配された濾過部6としてのメッシュフィルター等の濾過器に通すことにより、固形分を回収し、固形分の取り除かれた混合液を貯留槽21に戻す。尚、固形分は、そのまま一般廃棄物として処理しうる。
【0023】〈油水分離工程5〉次いで、濾過工程6により固形分の取り除かれたビフェニルを含む絶縁油及び水を、貯留槽21内にて静置することにより、油層と水層に層分離させる。そして、油水分離部5にて、層分離した状態から水を分離し貯留槽21から排出する。斯かる操作により、絶縁油中に含まれていた塩化ナトリウムは、水に溶存した状態で水と共に取り除かれる。次いで、水と分離されたビフェニルを含む絶縁油を、廃棄し、又は、回収のうえPCBの希釈油として再利用する。一方、貯留槽21から排出した水を、蒸留等により精製して水和工程2にて絶縁油に混合する水として再利用し、酸を蒸留等により回収し、酸添加工程に再利用する。
【0024】尚、本実施形態の有機ハロゲン化合物の無害化処理方法は、上記の如く構成されたが、本発明は、本実施形態に限定されず適宜設計変更可能である。例えば、本実施形態は、反応工程1に於いて、PCBを希釈する希釈油及びナトリウムの分散媒として絶縁油を使用することにより、絶縁油中でPCBとナトリウムとを反応させたが、何れか一方のみに絶縁油を使用することにより、絶縁油中でPCBとナトリウムとを反応させる場合であっても本発明の意図する範囲内である。また、塩析工程4に於いて、固形分を析出させるべく、塩化ナトリウムを用いたが、本発明に於いては、塩化ナトリウムに替えて、塩化カリウム等の他の塩を用いてもよい。但し、有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン化に用いたアルカリ金属と、酸添加に用いた酸とによって生成する塩と同種のものを用いるのが好ましい。更に、本実施形態に於いては、水素供与体として、イソプロピルアルコールを用いたが、他のアルコール、水、第一級アミン、第二級アミン等を用いても良い。尚、他のアルコールとしては、直鎖又は分枝の炭素数1〜5の低級アルコールを、好ましくは、分枝の第二級又は第三級アルコールを挙げることができ、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、sec−ペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール等を挙げることができる。これらの水素供与体は、有機ハロゲン化合物のハロゲン原子1原子モルに対して、通常、1.0〜2.5倍当量が反応工程において使用される。
【0025】また、本実施形態における有機ハロゲン化合物の無害化処理方法に於いては、水和工程2の後、タール成分が析出した状態で酸添加を行う酸添加工程3を備えたが、本発明に於いては、反応工程1の後、水和工程2の前に酸添を行う酸添加工程3を備える場合であってもよい。また、水和工程2にて絶縁油に混合する水に予め酸を添加しておき、水和工程2に於ける水の混合と同時に酸添加を行う酸添加工程3を備える場合であってもよい。
【0026】更に、本実施形態に於いては、油水分離工程5の前に濾過を行う濾過工程6を備えたが、油水分離工程5の後に濾過を行う濾過工程6を備える場合であっても、また、濾過工程6を備えない場合であっても本発明の意図する範囲内である。斯かる場合であっても、残存する固形分は、タール成分よりも粘度が低いことから油水分離工程5に於いて、油水分離を行う槽内の内壁面に付着したり、後の配管を閉塞したいする等、油水分離操作の阻害される虞が低減する。
【0027】また、本実施形態に於いては、水和工程の後、酸添加工程の前に、静置により油層と水層に分離させ、水層たるアルカリ性の水の一部を除去しても良い。斯かる方法によれば、水の一部を除去することにより、アルカリ性の水の量が減少することから、酸添加工程に於いて、タール成分を水中に溶出させるべく添加する酸の量を低減することができる。この方法に於いては、除去した水を、油水分離工程にて分離された酸性の水に混合しても良い。斯かる方法によれば、除去した水を油水分離にて分離された酸性の水の中和に利用でき、油水分離工程にて分離された酸性の水をアルカリを用いて中和する場合に於いては、別途使用するアルカリ量を少なくとも低減することができる。
【0028】
【実施例】実施例攪拌器及び温度計を取り付けた20L反応装置(反応槽)に、20ppmのPCBを含む劣化絶縁油18kgを仕込み、反応系内を窒素ガスで置換後90℃に加熱した。その後、分散媒としてトランス油(JIS C−2330 1種2号)を用いた濃度31wt%のナトリウム分散体144g及びイソプロピルアルコール20mlを添加し、90℃、1時間の条件下で反応させた。反応後50℃以下に冷却したのち、反応後の液を炭酸ガスと共に、水の入った水和槽(貯留槽21)内に供給し、水和処理を行った。水和処理後、静置により油層と水層に分離させたところ、油層と水層の界面に200mlのタール成分が生成した。次いで、水和槽内に希塩酸を添加し、水和槽内の水のpHを2〜5に調整した。これによって、水は白濁し、タール成分が水中に溶出した。次いで、水和槽内に塩化ナトリウム20gを攪拌しながら添加した。水層と油層の界面に固形分が数g析出した。次いで、濾過器に通し固形分を分離除去した。分離除去した固形分は、タール成分に比して、粘性が低く、濾過器を閉塞することも無かった。
【0029】
【発明の効果】以上のように、本発明に係る有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理方法によれば、タール成分によって油水分離の操作が阻害される虞も少なく、無害化処理を円滑に行いうるという利点を有する。また、タール成分によって油水分離の操作が阻害される虞が少ないことから、、絶縁油を回収して希釈油等に再利用する場合には、その操作をも円滑に行いうるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の有機ハロゲン化合物の無害化処理方法及び該方法を実施する装置を示す概略フロー図。
【符号の説明】
・・・反応工程(反応部)、2・・・水和工程(水和部)、3・・・酸添加工程(酸添加部)、4・・・塩析工程(塩析部)、5・・・油水分離工程(油水分離部)、6・・・濾過工程(濾過部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 絶縁油中で有機ハロゲン化合物とアルカリ金属とを反応させる反応工程(1)と、前記反応工程(1)にて生成した前記絶縁油中のハロゲン化アルカリ金属塩を水に抽出させるべく、前記反応工程(1)を経た前記絶縁油に水を混合する水和工程(2)と、該水和工程(2)を経た前記絶縁油から水を分離し除去する油水分離工程(5)とを備える有機ハロゲン化合物の無害化処理方法であって、前記油水分離工程(5)の前に、前記水和工程(2)にて混合する水によって生成しうる前記絶縁油中成分の加水分解物を酸の添加により水中に溶存させる酸添加工程(3)と、該酸添加工程(3)により水中に溶存した前記加水分解物を塩析により固形分として析出させる塩析工程(4)とを備えることを特徴とする有機ハロゲン化合物の無害化処理方法。
【請求項2】 前記酸添加工程(3)は、水和工程(2)の後に備えられ、該酸添加工程(3)は、静置により前記絶縁油と前記水とを油層と水層とに層分離させた状態にて前記酸の添加を行う工程である請求項1記載の有機ハロゲン化合物の無害化処理方法。
【請求項3】 前記塩析工程(4)の後、前記油水分離工程(5)の前に、前記固形分を濾過により除去する濾過工程(6)を備える請求項1又は2記載の有機ハロゲン化合物の無害化処理方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2003−305139(P2003−305139A)
【公開日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−112282(P2002−112282)
【出願日】平成14年4月15日(2002.4.15)
【出願人】(000192590)神鋼パンテツク株式会社 (534)
【Fターム(参考)】